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重力エネルギー

宇宙の話でよく出てくる重力エネルギー。少し古い雑誌ですがNewton 数学でわかる宇宙と自然の不思議―なぞとき感覚で挑戦! の中の「宇宙を計算しょう」で何回か出てきましたが、導出方法が示されてなかったので試みてみました。

( 2010/11/10 )

質量が M、Δm、距離が X 離れた物質について位置エネルギーを求めます。二つの物質の間には万有引力が働き、

引力 = G

M・Δm


X

2

G : 万有引力定数

万有引力

質量 M

X

質量 Δm

[ 図1 ]

万有引力

q

p

p → q へ移動

[ 図2 ]

この力で p から q まで移動したとすれば、仕事量=力×距離より ( [ 図2 ] 参照 )

仕事量 =

q

p

G

M・Δm


X

2

dx

G・M・Δm

[

-

1


X

]

q

p

= G・M・Δm

(

-

1


q

+

1


p

)

ここで p→∞、すなわち引力のなくなる無限遠を基準とし、q を X に置き換えると

仕事量 = G

M・Δm


X

これが小さな質量Δmの位置エネルギーで距離 x の関数となります。地球上での位置エネルギー u = mgh はこれから導かれ近似式*1です。

万有引力

ΔV

[ 図3 ]

これを基に同一物質でできた半径 r の物体とそれに接する極小のΔVを想定します( 上図参照 )。半径 r の物体の質量をm( r)、物質の密度をρとすると極小のΔVの質量はρ・ΔVとなります。従ってこの極小の物体の位置エネルギーは

位置エネルギー = G

m( r) ・ρ・ΔV


r

通常は万有引力が中心に向かって働くので中心のほうが密度は高くなりますが全て一様でρと仮定すれば

m( r) = ρ

4


3

πr

3

(

ρ×体積

)

これを上式に代入し、整理すると、

位置エネルギー = G

m( r)・ρ・ΔV


r

= G ρ

4


3

πr

3

ρΔV

1


r

4


3

Gπρ

2

r

2

ΔV

ここで半径 Rの物体を考えます。上記の位置エネルギーを半径の R まで、及び全表面に渡って計算すれば重力エネルギーが求まります。極座標を使って積分すると、

重力エネルギー =

R

0

π

0

0

4


3

G・π・ρ

2

・r

2

r

2

sinθdrdθdψ


( A )

*1

4


3

G・π・ρ

2

R

0

r

4

dr

π

0

sinθdθ

0

4


3

G・π・ρ

2

[

r

5


5

]

R

0

×

[

-cosθ

]

π

0

×

[

ψ

]

0

4


3

G・π・ρ

2

×

R

5


5

×

2

×

16


3

G・π

2

・ρ

2

×

R

5


5

= G

16π

2

ρ

2

R

6


9

×

3


5×R

3


5

G

M

2


R

M

2

= (ρ

4


3

πR

3

)

2

16

π

2

ρ

2

R

6


9

上記は「全国物理コンテスト 物理チャレンジ! 過去問題集 2008年度 論理問題の 問9 及び 理論問題解答と配点」を参考に作成しました。また、東京大学の蜂巣泉氏のホームページには講義録(ノート) 宇宙科学 I (PDF)の中では重力を求めるポアソン方程式を導き、これより重力エネルギーを求める方法が記述されています。講義録(ノート)なのでなくなる(リンク切れ)かもしれませんがその時はごめんなさい。

*1 近似式 mgh の導出:  地球の質量を M 半径を R、物の質量を m 高さを h とすれば

地上での位置エネルギー = - G

M m


R + h

- ( - G

M m


R

) = G

M m h


( R + h ) R

G

M


R

2

m h

= m g h

R » h より

( R + h ) R

R

2

G

M


R

2

≡ g

*2 極座標の積分を使った( A )式の r2sinθdrdθdψ について困った方は「極座標 積分」等のキーワードでWeb を検索すれば説明が見つかりますのでそれを参考にしてください。

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