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太陽の寿命の推定

宇宙の不思議」に太陽が石炭の燃焼、核融合反応の場合での寿命が示されていました。核融合の実際計算は省略されていましたが、これを検証してみます。

考え方は、単位時間当たりの太陽の放出エネルギーで太陽の持っているエネルギーを割れば時間を求めることができます。

まず、単位時間当たりの太陽の放出エネルギーを計算してみます。これには太陽定数を使います。太陽定数とは太陽光線に垂直な地球上の1cmに1分間降り注ぐエネルギーのことです。実際の測定は難しそうですが、なんとなく測れそうなので詳細は省略します。理科年表にも記載があるようですが、約 2 cal cm−2min−1です。

ここで、太陽を中心にして、太陽ー地球を半径とする球を考えます。この球の面の1cmに注がれるエネルギーが太陽定数となります。逆に言えば太陽定数にこの球の表面積を乗じたものが1分当たりの太陽の放出エネルギーとなります。太陽ー地球の距離は1.5 X 1013cmなので、

球の表面積 = 4 π r =4 X 3.14 X ( 1.5 X 1013) = 2.8 X 1027cm になります。

従って、

太陽から毎分放出されるエネルギー = 2 cal cm−2min−1 X 2.8 X 1027cm = 5.6 X 1027cal min−1となります。

続いて、エネルギーの総量を求める準備として、太陽の質量を求めます。万有引力と遠心力を使います。太陽と地球の質量をそれぞれ M、m、万有引力定数(*1)を G、太陽と地球の距離を r、地球が太陽の周りを回る角速度を ω とすると

太陽と地球間の万有引力 = G X ( M X m ) / r

地球が太陽を中心に円運動している時の 遠心力( = mrω ) とこれが釣り合っているので

G X ( M X m ) / r = mrω     ∴M = r ω / G

となりなす。実際に計算します。地球は1年で太陽を1周しているので

角速度を ω = 2 π / (365 X 24 X 60 X 60) = 2.1 X 10−7

万有引力定数に 6.7 X 10−6を代入して計算すると、

M = ( 1.5 X 1013) X (2.1 X 10−7) / 6.7 X 10−6 = 2.0 X 1030 kg


これで前準備が完了しました。続いて、核融合での質量損失を計算してみます。質量損失を 凾 とすると、この損失によって発生するエネルギーは凾高となります。これを毎分放出されるエネルギーとすれば

凾高 = 5.6 X 1027cal=2.35 X 1027J      (∵ 1cal = 4.2J)

c = 3 X 10m/sを代入すると

凾 = 2.35 X 1027 / ( 3 X 10) = 2.6 X 1011kg

毎分これだけの質量が減少しているので、全質量がエネルギーに変換されるには、現在の質量 / 毎分の質量損失として

2.0 X 1030 / 2.6 X 1011 = 7.76 X 1018

年に換算すると1.46 X 10年となります。


ちなみに、太陽のエネルギーの発生を石炭の燃焼とすれば、石炭1gから約7000calのエネルギーが発生するので毎分5.6 X 1027calのエネルギーを発生させるには

5.6 X 1027 / 7000 = 8 X 1023

が必要になります。

太陽の質量 2.0 X 1030 kgが全て石炭とした場合は

2.0 X 1030 / 8 X 1023 =2.5 X 10分 = 1.73 X 10日 = 4.7 X 10

つまり、5000年程度で燃え尽きてしまうことになります。


(*1)万有引力定数は非常に小さい値で、どのように測定するのか興味があり、別途検討(調査)予定です。

{2006/08/02]

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