僕のシネマパラダイス番外編


その1,アイちゃんはさっさと嫁に行き。

  21〜2歳ぐらいの頃、グループ交際をしていて、その中の「アイちゃん」という女の子
 と、二人で映画を見に行く事になった。
  大阪梅田の「阪急プラザ劇場」という所で、見た映画は「ザ・カンニングIQ=0」という
 コメディ映画。日曜日のお昼という事もあって、満員で座れるところがない。「しょうがな
 いから立ってみようか?」と思いきや、アイちゃんは中央通路をスクリーンに向かって歩
 いていき、通路の真ん中あたりにハンカチを敷いて「ここに座ろう。」と言った。
  最初は恥ずかしかったけど、そのあと僕らのマネをして、通路に座る人がチラホラ。..
 映画をみている時も、アイちゃんは手をたたいて、大笑いしていた。..それほど美人じゃ
 なかったけど、彼女の明るくて気さくな性格が好きだった。
  映画の後も、二人で飲みに行き、いろんな話をした。..僕はこの時、アイちゃんとの間
 に、赤い糸があるのでは?と思っていた。...
  しかし、アイちゃんはその後すぐに、九州の実家に帰り、お見合いし即結婚。...
 今頃きっと、気さくで豪快な「お母ちゃん」になってる事だろう。
  二人の思い出の場所「阪急プラザ劇場」も今はもう無い。「ザ・カンニングIQ=0」も、
 それほど大した映画じゃなかったけど、僕にとっては、アイちゃんとの思い出が刻まれた
 一本になった。

その2,もぎりのおばちゃん前編。

  小学生の頃の話、家の近所にあった東映系の映画館で、長編まんが映画「太陽
 の王子ホルスの冒険」が封切られた。
  どうしても見たかったのに、当時はおこずかいも少なくて、家も貧しかったから、
 おふくろがお金をだしてくれなかった。...そしていよいよ最終日、もう一人同じ様な
 境遇の友人と、映画館のスチール写真の前で「見たいな〜。」と言っていたら、
 もぎりのおばちゃんが手招きしてくれて、「あんたらこの映画見たいんやろ?」
 「うん、けどお金もってないねん。」「もう今日で終わりやし、今空いてるから入っ
 てもええよ。」と言ってくれて、こっそりタダで入れてもらった。
  映画も良かったけど、このおばちゃんの優しさがすごくうれしかった。...
 その後、映画人口の衰退とともに、その映画館も無くなってしまった。
 あれから約30年、娘といっしょにこの映画をビデオで見た時、あのもぎりのおば
 ちゃんの事を思い出した。...

その3,もぎりのおばちゃん後編。

   高校1年生の頃の話、友人3人と初めて18才未満禁止映画(ポルノ映画)を見
 に行った。本当はまだ15〜16才なのに、年齢を偽って入場するという犯罪行為に、
 映画館の前で入場券を買う勇気が無くて、3人ともちゅうちょしていたら、もぎりの
 おばちゃんが手招きしてくれて、「あんたら、見るんやったらさっさと入場券買いや!」
 と言ってくれたので、決心がついた。...
  初めて見たポルノ映画も良かったけど、18才未満と知りながら、入場を許してくれ
 た、このもぎりのおばちゃんの優しさがすごくうれしかった。その後、日活映画の倒産
 や、アダルトビデオの普及とともに、ポルノ映画もすたれてしまった。
  あれから約25年、女房・子供が留守中に、こっそりと古い日活ポルノをビデオで見た
 時、あのもぎりのおばちゃんの事を思いだした。...


その4,毒をもって毒を制す。

   高校生の頃の話、中間テストの真っ最中、テスト勉強はいつも「一夜づけ」で、明日
 は苦手な科目だというのに、なんか勉強に集中できなくて、「もうどうでもエエわ〜。」と、
 ブラリと映画を見に行った。...
  見た映画は「松方弘樹」主演の「脱獄広島死刑囚」という、バイオレンスハードなやくざ
 映画と「東京ふんどし芸者」という、いかにもエッチなポルノコメディの二本だて。
 見終わった後、頭スッキリ、気分サッパリで、その日の夜は自分でも怖いくらい勉強に
 集中できて、テストの結果も予想以上の結果だった。...
  担当の先生からも「今回はよう頑張ったな。やればできるやないか〜。」と言われ、
 「はい!松方弘樹と、ふんどし芸者のおかげです!。」とはさすがに言えなかったけど、
 「毒をもって毒を制す」とは、まさにこの事ではないかな。

その5,月夜の下で「映画の夕べ」

   昔は夏休み中に、近所の空き地や公園で、夜になると「映画の夕べ」(ドライブイン
 シアターの様なもの)なる催しがよくあった。
  もちろん入場料はなくて、タダだから町内の人が老若男女を問わず、たくさん見物に
 やってくる。近所のおっちゃん・おばあちゃんや、学校の同級生たちもみんなそろって
 地面にゴザを敷き、うちわ片手に月夜の下での即席の映画会を楽しんだ。
  上映される映画は、子供向けのまんが映画や記録映画が中心だったけど、大人も
 子供もみんないっしょに、同じ映画で盛り上がった。...
 映画が終わってからも、友達と遊んで夜を過ごし、家に帰るのが遅くなって親によく叱
 られたけど、いつも楽しみにしていた。
  今ではこんな催しをやってる所って無いと思うけど、町内の人がみんな一緒になって、
 映画を楽しめた時代があった事を幸せに思う。

その6,たまたま覗いてしまった「禁断の世界」
 
  
今ではもう無くなったけど、昔近所にあった映画館は、昼間は普通の映画を上映し、
 夜6時くらいになると、時々成人向け映画をやっていた。
 それを知らずに映画館へ入った友達の「S君」は、「まんが映画を見に行ったのに、途中
 からすごいエッチな映画をやりよるねん。なんか、睡眠薬を飲まされた女の人が、男の人
 に真っ裸にされてな、その男の人が、女の人のおっぱいやお尻にキスしたりするねん・・・」
 と、なんか悪い事でもしてしまったかの様な神妙な顔つきで、たまたま覗いてしまった禁断
 の世界の事を僕らに話してくれた。
 まだ小学4年生ぐらいで、そういう世界の事を理解していなかった僕らにとって、S君の話は
 不思議この上ない物だった。だけど好奇心旺盛だった僕らは、S君の話してくれた禁断の世界
 を、ちょっと覗いてみたいとも思っていた。
 だけどその後、問題になったのか、そういう時間差上映はされなくなった。
 やがて僕らが禁断の世界に足を踏み入れるのは、それから6年後であった。...


Take,1〜 5

Take,6〜10

Take,11〜15

TopPage