●パナマ運河委員会
アメリカ政府期間であるパナマ運河委員会が、1979年10月1日より始まったパナマ運河条約履行後の20年間、運河の運営に当たっています。
委員会は両国どちらかの国籍を持つ9名のメンバーにより管理されており、最初の10年間は事務官の肩書きでアメリカ国籍保持者が会長を務めました。
1990年1月1日付けで条約に規定されたとおり、パナマ国籍保持者が事務官に就任しました。
この委員会は1979年10月1日に運河区域局とその運営体と共に解散された前パナマ運河会社に替わるものです。
条約で決められたとおり、1999年12月31日にアメリカがパナマへ運河を委譲します。
委員会では、運河の歴史が始まって以来の優れた航行水路としての伝統を継承し、世界貿易に奉仕することを約束しており、整備、近代化、
訓練プログラムへの慎重な投資でこれからも世界貿易のために不可欠な実用的な経済基幹として存続することでしょう。
●運河の現状
大西洋と太平洋の最も狭い境界部分に位置するユニークなパナマ運河は、今世紀の大半,世界経済および商業開発に顕著な効果を波及してきました。
この二つの偉大な海洋をつなぐ比較的経済的な短距離の航行路を提供することにより、運河は世界貿易の形態を変え、発展国の成長を促進し、
また、世界のかけ離れた地域の経済拡張の主要な起動剤となってきました。
例えば、アメリカから日本へ石炭積載船が東海岸からパナマ運河を通ると、全水路を使う他の最短ルートに比べて約3000マイルの節約になりますし、
また、エクアドルからヨーロッパへバナナを輸送する船の場合、約5000マイルが節約されます。
運河を航行する船の大半はアメリカの東海岸と極東を行き来するものが断然に多く、次いで西海岸およびカナダとヨーロッパを結ぶ航行が盛んです。
しかし、それに比例して、その他の地域や中南米の近隣諸国も、経済開発や貿易拡張の促進のためこの水路への依存度が増してきています。
1914年8月15日に初めて運河か開通して以来、80万隻以上の船が優れた航行サービスをこの水路で利用しています。
最近の航行船数や大型船の増加にもかかわらず、一隻の船の航行の所要時間は24時間弱です。
この驚くべきパフォーマンスは迅速な航行サービスを提供して、しかも航行要求に応えるように考案された改善の実行を、適切に行う専門化のチームによります。
毎年1000万ドルいじょうをかけてパナマ人向けの運河運営および整備のためのトレーニング・プログラムが行われています。
今日,経験を積んだスタッフ全体の91.2%以上がパナマ人で、運河運営には欠かせない高度の技術が要求される職務についています。
毎年、運河を航行する何千隻の船のうち、大洋を航行する船の23%は、水路航行の可能な最大大型船であるパナマックス・サイズの船です。
依頼に応じて保証された優先航行権のある航行予約制度の利用も可能です。
運河改善は、世界ビジネスの中で、更に高まっているパナマックス船の役割に反映されています。
パナマ運河を利用する全水路のルートの使用は,今後も世界貿易のための重要な経済輸送手段として続くことでしょう。
●メンテナンス
パナマ運河のような大規模でしかも複雑な運営には、高い効果、効率をうるため24時間のメンテナンスが非常に大切です。
運河の運営には,毎年約4億5千万ドルが投入され、その内、約1億ドルが水路のメンテナンスと改良に使われています。
主要水路の定期的な浚渫作業により年間を通して乾季の間でも39.5フィートの最大水深が確保されています。
パナマ運河委員会が十分なメンテナンスの必要性を認識し,強調しているので、斜接門、チェンバー、排水渠、
バルブのオーバーホールが水門の状態をベストに保つために定期的に計画,実行されています。
●改善
パナマ運河の世界貿易の中での大きなシェアを維持するため、パナマ運河委員会では水路の主要改良工事や改善策を定期的に施工しています。
増加する航行船と大型船舶のためによりパワーのあるタグボートや蒸気船を購入、
大型船舶の夜間の航行をより安全にするハイマスト照明により全水門およびアプローチが明るくなりましたし、
係留ステーションの敷設により太平洋側の水門がより有効に利用することができます。
また、更に深くなった水路により,最大限の水深を利用しての航行が可能になり、シンクロリフトによる運河機材のメンテナンスおよび修理が便利になり、
以前にも増して高い水準を維持する海上交通管理センターに設置された最新のコンピューター、国際標準に沿ったブイ等により大幅に改善が行われています。
●運河の物理的特徴
パナマ運河は、大西洋の深海から太平洋の深海に、50マイルに渡ってのびています。
北米大陸と南米大陸のつながる長くて険しいパナマ地峡(イスマス)の最も狭く、低い部分が切り開かれ、
当初の海抜は、大陸分水嶺と交差しているところが312フィートの大変険しい峡谷でした。
運河は北西部から南東部へ通じており、大西洋は太平洋の33.5マイル北、27マイル西より流入しています。
二つの大洋の玄関口の間の飛行距離は43マイルです。
平均の大きさの船舶の場合、運河航行には約9時間かかります。
この短い時間の間、乗船客は世界で実際に作動している現代の不思議の一つを目の当たりにすることができます。
主要な特徴は二つのターミナル港、一方が海水位の水路の短い部分、水門が二つある水路3本、そしてガツン湖とゲイラード・カット(水路)です。
大西洋から入る船は、クリストバル防波堤のあるリモン湾から水路に入ります。
大西洋側の運河水路の海水位部分は長さ6.5マイル、幅500フィートで、その大部分には海水位よりほんの数フィート上にあるマングローブの自生する湿地があります。
船はガツン水門で三段階にわたり85フィート上昇あるいは下降します。
各々の水門のチェンバーは、幅110フィート長さ1000フィートで、ガツン水門の全長はアプローチ壁を含み1.2マイルです。
●ガツン湖とダム
ガツン水門からゲイラード水路の北方まで23.5マイルにのびるガツン湖面積が163.38平方マイルで、ガツン水門に隣接するシャグレ川にダムが造成されたためにできました。
ダムの二つの翼壁と水吐き口は、1.5マイルの土を集積したものです。
ダムの幅は基礎部が約0.5マイルで上部が100フィート、つまり海抜105フィートでガツン湖の通常水位より20フィート高くなります。
●ゲイラード水路ゲイラード・カット(Gaillard Cut)
歴史、珍しい地質、そして大陸分水嶺を分断するという事実により、ゲイラード水路は運河を航行する乗船客の方々には特別の興味を喚起するものです。
運河建造時にはクレブラ水路(Culebra Cut)と呼ばれ、
その後,運河工事の責任者であったエンジニアのデイビッド・デューボーズ・ゲイラード大佐にちなんでゲイラード水路と名付けられました。
この水路部分は長さ8マイルで、その大半は岩,頁岩を削ったものです。
ここが主要な掘削工事が必要とされたところで、工事中破壊的な土砂崩れが起こりましたが、そのすぐ後に運河が開通されました。
船はシャグレ川がガンボアで運河に流れ込むこの水路に入ります。
運河の他のどの部分にもまして、ゲイラード水路では巨大な掘り割り水路の印象を受けることでしょう。
ペドロミゲル水路に到着する間での短い距離の間,船は水路の中では最高峰である海抜587フィートのゴールド・ヒルを左に見ながら通過します。
ゴールド・ヒルの反対側の西側にはコントラクターズ・ヒルがあります・
当初410フィートの海抜でしたが安定性を得るために、1954年370フィートになりました。
ゲイラード水路は、はじめに300フィート幅に掘削されましたが、
1930年、1940年代にはゴールド・ヒルのすぐ北の部分が大型船航行のために500フィートに拡張されました。
2001年11月には、運河で最も狭いゲイラード水路を、約3億ドルかけて、40メートルに拡幅して、192メートルにする工事が完了しました。
全長約80キロメートルの運河で、この部分だけは幅が狭く一方通行しかできなかったのですが、これですれ違いが可能となり、通行能力は20%増しました。
太平洋に向かう船はゲイラード水路の南にあるペドロミゲル水門に入ります。
ペドロミゲル水門は長さ約0.8マイルです。
通過する船はこの後、二段階にわたって1マイル余りの長さのミラフローレンス水門で海水位まで下げられます。
ミラフローレンス水門は、太平洋の潮位が急激に変化するため、運河の中の水門では一番高いものです。
カットとは、人口通路または水路を意味する技術用語です。
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ゲイラード水路拡幅について 運河委員会
●通行料(1998/1/1より実施)
貨物:パナマ運河ネットトンにつき 2.57ドル
バラスト:パナマ運河ネットトンにつき 2.04ドル
その他:排水量トンにつき 1.43ドル
●最大許容サイズ(通常の航行の場合)
船幅 32.3m
長さ 294.1m(船のタイプによる)
水深 12m
パナマックスサイズとは、パナマ運河を通過できる船の最大サイズのことで最大許容サイズである。
●主な積載貨物
穀物 23.2%
石油と石油製品 14.4%
燐酸鉱物と種々肥料 13.1%
その他 49.3%
●主な貿易ルート(統計の比率)
アメリカ東海岸 - 極東 43.9%
ヨーロッパ - アメリカ・カナダ 8.6%
アメリカ東海岸 - 南米西海岸 8.6%
その他 38.9%
●パナマ運河への距離(海里)
グイヤキル 824
香港 9,195
ニューオリンズ 1,444
ニューヨーク 2,018
ノーフォーク 1,822
ロッテルダム 4,842
サンフランシスコ 3,245
横浜 7,682
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パナマ運河委員会(英語・スペイン語)
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