[ レポート集 ]

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手話の理解も左脳優位
〜脳での文章理解は手話と音声で完全に同じ〜
東京大学大学院総合文化研究科
酒井 邦嘉 助教授


日本手話による文章理解が音声と同じ左脳優位であることを科学的に証明


<論 文>
イギリス ブレイン誌(Brain)オンライン版に発表 (2005/2/23)
Sign and speech: amodal commonality in left hemisphere dominance for comprehension of sentences  Brain Advance Access published online on February 23, 2005
 日本語版 2003年3月15日
   「手話の理解も左脳優位
   〜 脳での文章理解は手話と音声で完全に同じ 〜
<抜 粋>

「日本手話が音声言語と同等な神経基盤を持つことが、科学的に実証されたのは意義深い。なぜなら、発展途上国に限らず、わが国においても、ろう者が手話を母語として獲得することの必要性がほとんど認識されていないのが現状だからである。実際、大半のろう学校では、今なお「口話法(読唇術と発声訓練)」や「対応手話(シムコム)」が主流であって、日本手話や筆談の使用が制限されている。日本語対応手話は、すでに日本語を身につけた中途失聴者が補助的に使う方法で、文法の要素をできるだけ省いているために原理的に不完全な言葉であり、乳幼児の言語獲得には不適切である。近年、全国の産科病院で『新生児聴覚スクリーニング検査』が実施されるようになったにもかかわらず、多くの医師が手話の必要性を認識していないために、ろう児の言語獲得は危機的状況にあると言わざるを得ない。聞こえない子供たちのための教育環境の整備は、一刻を争う焦眉の急である。今後、この先駆的な研究成果が突破口になって、ろう教育や医療現場の改善へとつながることが期待される。」

「平成15年5月27日、全国のろう児とその親たち107人が、「日本手話をろう教育の選択肢のひとつとすること」を求め、日本弁護士連合会に対し人権救済の申し立てをした【参考:全国ろう児をもつ親の会編『ろう教育と言語権』明石書店、平成16年】。これは、ろう者の視点に立った改革の確実な前進の兆しであったが、未だ具体的な勧告はなされていない。」

「手話がろう者に必要な言語であるということは、地球が太陽のまわりを回っているのと同じくらい確かなことです。言語権の保障を訴える本書は、ろう教育の転回となるでしょう。」
『ろう教育と言語権』全国ろう児をもつ親の会編(明石書店)帯文
<掲載記事>
2005年3月12日 日本経済新聞(夕刊)
2005年3月15日 朝日新聞(朝刊)

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