Today's Moon -- 今日の月
2005.02.01:デザインリニューアル
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2005年2月2日(水) 火星の砂(Science@NASA)

Propellant Transporters月ではなく火星がメインの話ですが、「惑星上の砂の挙動」は興味がある分野なので、全文訳の形で掲載します。
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このシナリオを考えてみてほしい。時はおよそ2030年。地球から6ヶ月の航海ののち、
あなたを含む宇宙飛行士たちが火星に降り立つ最初の人類となった。あなたは赤い砂煙の大地に降り立ち、あなたたちの到着以前に送られたたくさんの掘削機械たちを眺めている。
あなたの耳に響いているのは管制塔からの最後のメッセージだ。
「お前に課せられたミッションは地球に帰ってくることだ。火星の砂から酸素と燃料を取り出して。。。幸運を祈る。」
岩と砂の惑星から原料を採掘するということは簡単なことに聞こえるかもしれない。私たちは地球でそれを行ってきているので、火星でも簡単なはずだとおもうだろう。だがそれは思ったほど簡単なことではない。粉体の物理学は何もわかっていないのだ。
粉体物理学は、とうもろこしの粒から砂粒やコーヒーを挽くことまで、粉についての科学である。それらはありふれた物質だが、その挙動を予測するのはとても難しい。粉体あるときは固体のように振る舞い、次の瞬間には流体のように振舞うからだ。
これは砂利を満載したダンプカーを考えてみるとわかりやすい。
ダンプカーが砂利をおろそうと荷台を傾けると、最初は砂利は落ちてこない。だが、ある角度になると突然土砂崩れのように砂利が落ちてくる。
粉体の物理学を理解することは、粒径の小さな物質−たとえば火星のような細かい砂、の集合体を扱う機器の設計には欠かせないことである。

問題は、コーネル大のジェンキンス教授が言うように、地球でさえ「粉体の挙動は気体や流体ほどわかっていないので、工場の設備もあまり効率的ではありません」ということである。
「石炭を原料とする発電施設は液体やガスを原料とする発電施設より効率がわるく故障率も高いのです。」したがって「私たちは火星で同じように材料を精製することができるでしょうか?」と彼は言う。

掘削を考えて見よう。「もしあなたが火星で溝を掘ろうとすると、どのくらいの角度まで崩れないかのか、どのくらいまで崩れないで安定してるのか?」コロラド大のステアー教授は言う。そこにははっきりとした答えがまだないのである。火星の砂と岩石について私たちはまだ充分な知識がないのである。
火星の地表面の機械的挙動については「ローバの掘削試験やその他の採取機器のデータからある程度情報があるが」、とステアー教授は言うが、「もっと深くなると、コアサンプルデータが必要になる。」のである。
NASAのフェニックス火星ランダー(2008年打ち上げ)はおよそ30cmの掘削を行う予定で、2009年の火星科学探査では岩石コアサンプルを切り出す予定である。両方のミッションから新しいデータが得られるはずだ。

次の問題は、掘削部分とベルトコンベアーの輸送部分をもつ「採掘装置」である。火星の砂についての知識は効率性と保守のために欠かせない知識である。
「私たちはなぜ時々掘削機が詰るのかはっきりわかっていないのです」ジェンキンス教授は言う。実際地球上でも、詰りはたびたび起こるが、大体ハンマーが近くにあり、ハンマーでたたくことでその詰まりを解消している。火星では、装置を管理する人間が少ししかいないので、掘削機自体が自立的に効率的に動けるようにしておきたい。ジェンキンスらはなぜ詰りが発生するのか研究を始めた。

そして材料の輸送の問題がある。火星ローバのスピリットとオポチュニティは今までほとんど故障がない。だがそのサイズはオフィス机ほどで重さは大きな大人程度だ。「ベビーカーと火星の砂と岩を運べる頑丈な輸送車を比べると、輸送車の方が動き回るのは難しい。」ステアー教授は説明する。1960年の初頭、科学者たちは月や他の惑星上のゆるい砂の上を太陽エネルギーで走るローバについて研究を始めた。彼らは「火星の砂から得られる最大反力は0.2psi」と計算した。
特に坂を上ったり降りたりするときはさらに小さくなる。この低い抵抗値はスピリットとオポチュニティで確認されている。

回転抵抗が0.2psiしかないということは、ビークルの重量を軽くするか複数のホイールまたはキャタピラで荷重を分散させなければいけないことを示している。接触圧力を少なくすることは、タイヤが砂にめり込むのを防いだり、表層(砂が固まった薄い層、地球上で風に吹かれた雪にできる薄い層のようなもの)を壊さないために重要である。

「そうすると人や重量物を運ぶビークルは直径4〜6mのホイールをもつ必要がある。」ステアー教授はいう。

または金属メッシュのキャタピラやアポロのルナローバのようなホイールが必要だろう。キャタピラのようなものが重量物の運搬には適しているのかもしれない。

火星の風は細かい砂を時速50kmで、火星の地表に撒き散らし、あらゆる隙間に入り込み、全てのものを埋め、視界を数メートルに低下させる。ジェンキンス教授らは地球での砂と埃の風による輸送と、火星の砂丘の移動の物理を研究し、将来の居住地候補としてどこが的確に風を防げるか(例えば巨大な岩の風下など)検討している。

地球では完璧な知識がなくても大丈夫だが、火星では不十分な知識は効率を低下させ、
宇宙飛行士たちの呼吸や地球に帰るための燃料にするための掘削作業を困難にするだろう。
(写真:ステアー教授らが検討するキャタピラ形ローバ)

2005年2月2日(水) ベンチャー企業,新月輸送システムを提案(SPACE DAILY)

Propellant TransportersLTS(Lunar Transportation Systems)という宇宙関連ベンチャー企業が月-地球間輸送システムを提案。
このシステムでは燃料輸送ロケット(写真)が使われる。これは地球中高度軌道(MEO)からL1ポイントや月軌道上にある燃料ステーションまでの輸送が可能とのこと。詳しいことはLTSホームページへ。ここには脚付の月着陸機なども紹介されている。
ちなみにLTSの創立者の一人のキスラー氏はキスラー航空宇宙社も立ち上げており、再利用型ロケットなども提案している。

2005年2月3日(木) NASA、鉱物マッピング装置搭載を提案(NASA)

Propellant TransportersASAは2007年打ち上げ予定のインド宇宙研究機構(ISRO)の月探査機Chandraayan-1に鉱物マッピング装置(M3:Moon Mineralogy Mapper)
を搭載することを提案した。
M3は月の鉱物資源マップを作成するのが目的である。
「月表面の地質や鉱物分布を詳しく調べることは科学的も価値がある」とのこと。
M3を搭載するかどうかについてはこれからNASAとISROの間で話し合いが行われるらしい。

2005年2月11日(金) SMART-1運用軌道へ降下(SSC)

SMART-1 desemding to operational orbit2月10日SMART-1の電気推進が切り替えられ運用軌道への降下が始まった。
3月1日には近月点(Perilune)が1100kmから473kmへ、遠月点(Apolune)が4900kmから2800kmの運用軌道に達する見込み。
その後9月半ばには近月点300km、遠月点3000kmに達するのでその前に電気推進再着火を行う予定とのこと。

2005年2月16日(水) Brain Bites-疑問に答える1分間のビデオ解説が登場(NASA)

Brain BitesNASAのサイトにBrain Bitesという教育コンテンツが登場。宇宙のFAQ集になってます。主な質問は以下。
「ロンチウインドウってなに?」
「ISSではどこの時間をつかっているの?」
「宇宙でボルトを回すとどうなる?」
「火星にいくにはどのくらいかかる?」
「宇宙でお風呂はどうするの?」などなど。
月に関しては「どうして月の表しか見えないの?」。月の自転と公転の関係がアニメでわかりやすく説明されています。
あと「真空ではどうなるの?」の解説ビデオの中でアポロ15号で月面で実際に行われたハンマーと鳥の羽の落下デモが使われています。
どれも凝ったセットで実写やアニメを交えたわかりやすい説明になっています。

2005年2月17日(木) SMART-1ミッション延長を承認(ESA)

SMART-1 mission extended2005年2月10日、ESAの科学委員会はSMART-1ミッションの1年延長を満場一致で可決したとのこと。これでミッションは2006年8月まで伸びることになった。
延長ミッションは、観測軌道と軌道とそのときの月表面に対する太陽入射角の違いから2つのフェーズに分けられている。最初のフェーズでは、月の南半球の観測を行う。次のフェーズでは北半球の高解像度観測を行う。この観測はその後の月探査機(Selene、Chandrayyan-1、Chang'E、LRO、Moonriseなど)にも利用される予定。
SMRAT-1の電気推進は現在再び点火され、2月末には観測軌道へ達する見込み。

2005年2月28日(月) 自信を取り戻した日本、2025年までに月面基地建設(MOON DAILY)

Japan'sMOON DAILYにHII-Aの打ち上げ成功に沸く日本からもたらされた、日本の長期ビジョンについての情報が掲載されています。
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日本は2003年の衛星打ち上げの痛手から立ち直り、2025年までに有人月面基地をそして衛星による災害警報システムを構築するとのこと。

「私たちはそれも3月末に宇宙開発委員会に提出する長期ビジョンのひとつの大きな目標だと思っています。」とJAXA関係者は言う。
また2015年までに災害情報を衛星から携帯電話に配信するシステムの構築も目指していると彼はいった。
「私たちはまだ長期ビジョンを作成中です。それに盛り込みたいことはたくさんある」

毎日新聞のレポートによると、JAXAは5年から10年以内にロボットによる月探査を、その後有人月探査技術の開発を目指している。これを実現するために、スペースシャトルのような独自の有人宇宙機の開発を進める。

この日本の積極的な姿勢は土曜日に純国産H-IIAロケットによる運輸多目的衛星の打ち上げ成功によるところが多い。この成功は日本の宇宙関係者の自信、ハイテク国家としての評判を取り戻すことになった。
2003年11月、情報収集衛星を搭載したHII-Aは、2つの補助ロケットの切り離し失敗が原因で、打ち上げ10分後に爆破された。またその1ヵ月後中国がアメリカ、旧ソ連に続く3番目の有人宇宙飛行に成功し自信を喪失していた。

アメリカは2008年までに月衛星を、そしてその次の年には着陸ミッションを予定している。2015年までに有人月探査を、ジーン・サーナン(アポロ17号船長)が月に降り立ジーン・サーナン以来はじめて行う予定。(写真:SRB-1A分離時の画像)
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JAXAが発足して以来取り組んできた長期ビジョンが今月末には発表されます。かなり盛りだくさんな野心的な計画になるのかもしれません。とにかく期待したいものです。
Foter -- フッター
Akiary v.0.51