緋道の神器


        第四十八話  憧れの肉体



 ホテルの一室で、神治は冴美を抱いていた。
 均整の取れた見事な裸身を晒し、豊満な乳房を揺らして悶えるその姿は、実に淫靡であり、見ているだけで肉棒が猛ってくるほどだ。
 細身でありながら肉付きの良い肢体は、四十歳を過ぎているとは思えない若さが感じられ、美しい顔と相まって、男を惹き付ける魅力に溢れていた。
 肉棒をくわえ込む蜜壺は、強く弱く、嬲るように締め、吸い付いてきており、入れているだけでも射精してしまいそうなほどに心地良かった。
 男慣れしたその肉体は、こちらが与える刺激に敏感に反応を示し、その悶え、喘ぎの全てが、さらなる愛撫を促すためのものとなっていて、まさに男を魅了する肉体の持ち主と言えただろう。
「あっ、ああっ……いいわ、いいのよ、あんっ……そうやってもっと、ああっ……もっとお願ぁい……」
 こちらを見つめ、誘うように、それでいて甘えるように喘ぐその姿は、身を委ねたくなりながらも、逆に支配したくなる衝動も呼び起こした。
 肉体関係を持つようになってから大分経つが、冴美は未だに神治のことを初心な少年のように導いてくるところがあり、さらにその一方で、頼れる男のように慕ってきたりもするという、二面性のある態度を見せていた。
 それは年上の女性には多かれ少なかれ存在している部分なのだが、企業の社長として社会的に成功している女性だけに、そうしたギャップが魅力として強く感じられていた。
 冴美を抱く際には、年上の女性に甘える心地良さと、優れた女を屈服させる爽快感の両方が存在していたのだ。
 さらに多くの恋人を得てきた経験からか、抱かれる手管に優れており、男心を擽るような言葉や仕草をよくしてきていた。
 単に媚びているという訳ではなく、男を乗せるのが上手いのであり、抱いている相手に自信を抱かせるというか、やる気を出させるのに手慣れている感じなのだ。「自分のような優れた女を抱けているのだから、あなたは凄い男なのよ」と言われているような気がして、実際そうなのだと誇らしくなってくるのである。
 そうした高揚感を得られるのが、冴美を抱いている際の魅力と言えただろう。おそらくこれまで冴美の恋人になった男達も、そうして彼女に夢中になっていたに違いない。
「ああっ、凄い、凄いわ、あんっ……神治くん凄いのぉ、あっ、あっ……どうしてこんな、ああっ……もうおかしくなっちゃうぅっ……」
 頭を左右に振り、両腕をこちらの背中に回し、両脚を腰に絡ませて、冴美は激しく悶えた。
 強く抱き締められる事で、柔らかな女肉の感触が強まり、まるで全身が冴美に包まれているような錯覚が起きてくる。
 母に近い年齢であるせいか、母性愛のような、全てを委ねたくなる安堵感も感じられており、それは熟女とセックスする際によく起きる感覚ではあったが、冴美との場合は特に強いように思えた。
 本質的に甘えん坊である神治にとって、冴美のように頼れる女性には依存する意識が高まるせいだろう。甘えるように抱き、それでいて従える悦びも得る事の出来る冴美のような熟女は、実に心地良い存在だったのだ。
「あんっ、ああんっ……もう駄目、ああっ……もう駄目よ、あっ……もう私イっちゃう、ああっ……イっちゃうの、あっ、ああっ……」
 限界が近いのか、冴美は何度も顎を仰け反らせ、耐え難いようにして体を震わせている。
 膣内も強烈に締まり上がり、肉棒が激しく嬲られるのに射精感が急激に高まっていく。
「冴美さんっ……出します、出しますからっ……俺もうっ……出しますよっ……」
「いいわ、来て、あっ、ああっ……神治くんの白いの、あっ、ああんっ……私の中に、あんっ……私の中に思い切り出してぇっ……」
 今まで以上に強く抱き付かれ、体全体が柔肉に包まれる状態になる。
 その熟れた女肉は、若い男を取り込もうとするかのように微妙に蠢き、快感神経を強く刺激してくる。
 我慢しきれないほどに射精の衝動が高まり、神治はこれで最後だとばかりに、腰を激しく前後させていった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……いいっ、いいっ、いいぃんっ……神治くんっ、神治くんっ、神治くぅんっ……あっ、あっ、あぁああああああああああっ!」
「冴美さんっ!」
 互いの名前を呼び合いながら、強く抱き締め合った瞬間、神治は肉棒の栓を解放した。
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドクドク……。
 激しい勢いと多量の精液が迸り、冴美の膣内へ注がれていく。
 肉棒が律動するたびに強烈な快感が走り抜け、目の前の素晴らしい女を手に入れた実感に、体が悦びに打ち震えていった。
 数度の射精を繰り返し、最後の放出を終えると、力を抜いて身を委ねる。
 柔らかな女肉が受け止め、そのしっとりとした肌の感触に、ホッとするような心地良さが湧き起こった。
 どうして女の体というのは、触れているだけでこうも気持ちがいいのだろう。本当に不思議な事だった。
 特に美しくて頭が良い女性となると、格別の悦びがあるように思えた。
 優れた女に精液を注ぎ込む悦び。
 それは他の事とは比較にならない、おかしくなりそうなほどの素晴らしさがあった。
 これまで自分は、そんな行為を何度もしてきた。
 多くの女を抱いてきたのだ。
 そしてこれからも、多くの女を抱いていくだろう。
 冴美のような優れた女を、沢山抱いていくのである。
 その力と手段が、自分にはあるのだから……。
「神治くぅん……凄いわぁ……やっぱりあなたは最高よぉ……もうたまらないのぉ……」
 冴美が笑みを浮かべながら、嬉しそうに抱き締めてくる。
 こうして冴美に褒められると、実に気分が良かった。
 やはり社会的に成功している女性だけに、賛辞の言葉がより心地良く聞こえるためだろう。
 これは最初に抱いた頃から変わらない、冴美との交わりにおける魅力だった。
「冴美さんも最高ですよ。たまらないです」
「ふふ、ありがとう。今まで色々な人に同じ様なこと言われてきたけど、神治くんに言われると、特別な感じがして凄く嬉しくなるわ……あなたって、本当に不思議な子よね……」
 冴美はうっとりとした表情を浮かべながら、こちらの顔をジッと見つめている。
 その瞳は潤みきっており、神治に全てを捧げたいとする意思が感じられた。
「私、あなたに色々してあげたくなっちゃってるわ。あなたが喜んでくれると、おかしくなるくらい嬉しくなっちゃうから……セックスしてるのだってそう。私の体であなたが悦んでくれるのが嬉しくて、抱きたいと思ってくれるのが嬉しくて。だからこうして何度も求めてくれると、凄く凄く嬉しくなっちゃうの。もう私の全てを貰って欲しいって思うくらいに……ううん、違うわね。すでに私の全てはあなたの物なのよ。あなたの物になってるの。だからこうして抱いてくれるのが、存在価値を認めてもらっているように思えて、たまらなく嬉しくなっちゃうんだわ……」
 凄く納得したような表情で、冴美は何度も頷いている。
 そうした意識は部の民としてのものであり、神治にとって馴染みになりつつある事だった。
 とはいえ、自分に対して「全てを捧げたい」と言ってくるのには未だ慣れる事はなく、少し引いてしまう部分もあった。あまりに強い執着は、相手に対する責任を感じさせるためだろう。
 特に冴美は、何かを捧げようとする傾向が強いように感じられた。頻繁にプレゼントをしてきたり、外食に誘ってきたりと、神治に物質的に奉仕してくる事が多かったからだ。
 それだけ「自身の存在を認めて欲しい」という意識が強いのかも知れない。
「前に依子が言ってた『神様』ってのも、今は本当のことだってよく分かるわ。あなたは神様なのよ。私にとっての神様。だからこんなにも全てを捧げたくなっちゃうんだわ」
 冴美はこちらをうっとりとした表情で見つめ、甘えるように頬ずりしてきている。
 その頭を優しく撫でながら、神治は優れた女を己の物としている満足感に浸った。
 自分の母親と同じくらいの年齢の女性が、こうして甘えるようにしてくるというのは、普通に考えたら異常な事だろう。しかも男女関係としての感覚だけでなく、宗教的な要素も入っているとなれば余計だった。
 単に好みの少年と肉体関係になっているだけであれば、冴美もここまでおかしくはなっていないに違いない。神と部の民としての繋がりが、こうした異常な状態を生んでいるのだ。
「それでね……神様の神治くんに、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「何ですか?」
 不意にそれまでと異なり、躊躇した様子で告げてきたため驚く。いつもハッキリと物事を口にする冴美にしては珍しい態度だったからだ。
「その……私の友人に会ってもらえないかと思って……この間、ついあなたの事を話しちゃったのよ……そしたら凄く興味持たれちゃって……あ、神様とかそういう事は言ってないから安心して。理解の無い人に言っても変人扱いされるだけだって分かってるから。依子に散々恥ずかしい目に遭わされてるから、そこら辺はわきまえているわ」
 一瞬「神様が居る」とかそういう話をされたのかと思って心配になったが、そうではなかったため安堵する。
 確かに依子の事で経験しているのであれば、不用意な事は言わないだろう。何より冴美の性格としても、不用意な発言は慎む印象があった。
「彼女、私に年下の恋人が出来たと思ってるのよ。そうじゃないって何度も説明したんだけど、全然信じてくれなくて。照れ隠しだと思われてるのよね。それで今度一緒に食事をする時に連れてきてって言われちゃって……あ、もちろん神治くんが嫌なら別にいいのよ。私だってあなたをそんな見せ物みたいにしたくないし……ただ、出来れば来てくれると嬉しいなぁって……」
 その言い方には、いつもと違って「気乗りしない事を仕方なくしている」といった雰囲気があったため、珍しく思うと共に妙な可愛らしさを覚えた。
 強気の性格で、人の意見に流されない冴美をこのような状態にしているとは、その友人というのは一体どのような人物なのだろう。
 興味が湧いた神治は、是非とも会ってみたくなった。
「別にいいですよ」
「いいの? 本当に? ありがとう、助かるわ」
 神治が了承の言葉を告げると、冴美はホッとしたように息を吐き出している。
 そうした安堵した様子というのも珍しかったため、何だか可笑しくなってしまった。よほどその友人に対しては弱いという事なのだろう。
「その人とは、いつからの付き合いなんですか?」
「高校の時からよ。昔から彼女って凄く押しが強くて。いくら理屈で説明しても『それがどうしたの』って感じで聞いてくれなくて……ホント参っちゃうのよねぇ……」
 なるほど、どうやらその人物は依子と似たタイプという事らしい。人の言うことを聞かない、という点で依子も同じだからだ。
 論理的に物事を考える冴美としては、どうにも対処がしにくい相手なのだろう。
 しかしそうした二人と仲良くしているのだから、苦手意識を持ちつつも惹かれてしまう、といったところなのかも知れない。
「それじゃ、今度の土曜の昼はどうかしら? 一応彼女からその日なら空いてるって言われてるんだけど」
「大丈夫ですよ」
「そう。ならその日に……いつものところで待ってて。迎えに行くから」
「分かりました」
 神治が返事をすると、冴美は疲れたように大きく息を吐き出した。
「ごめんなさいね。本当はあまり会わせたくないんだけど、会わせないでいたらそれこそ大変だから……」
「別に構いませんよ。俺もその人に会ってみたいですし」
「そう言ってくれるのはありがたいんだけど……でも嫌な想いをさせちゃうんじゃないかと思って。きっと彼女、あなたに色々聞いてくると思うし……その、私との関係とか……」
「恋人じゃないかって事ですか?」
 先ほど言っていた言葉を思い出しながら尋ねる。
「ええ……こうした関係になってるんだから、端から見たら恋人に思われても仕方ないでしょうけど……でもやっぱり歳の差を考えると、認めるのはどうかと思うし……私は良くてもあなたには良くない事だわ」
「俺は気にしませんけど」
「駄目よ。あなたには将来があるんだから、恋愛は恋愛できちんとしなくちゃ。私とのことは恋愛とは別に考えてね? そうじゃないとあなたのご両親に申し訳ないわ……私にも娘がいるからそう思うの。あの子の恋人が、父親と同じくらいの年齢の男性だなんて凄く嫌だもの……」
 確かに親子ほど年齢の離れた異性と恋愛しているというのは、あまり宜しくない事だろう。本当に恋人同士になっているのならともかく、自分たちの関係はそうではないのだから余計だった。神治の性欲処理を冴美がしている、という異常なものであり、大っぴらに出来る事ではなかった。
 とはいえ、冴美が自分に示している好意には、それ以上のものを感じさせる部分があったため、彼女が恋愛状態にあると思われても仕方ないのだろうが。
「私とあなたはあくまで友人。世間に対してはそれで通さないと駄目。あなたの将来のためにならないわ」
 大人の立場から諭してくる冴美に嬉しくなってくる。年上女性に世話を焼かれる事には、甘えたくなるような喜びを覚えるからだ。
「それじゃ土曜日は宜しくね。本当、申し訳ないんだけど」
 困ったような表情を浮かべながら告げてくるのに苦笑してしまう。
 いい加減割り切っても良いと思うし、普段の冴美であればとっくにそうなっているだろうに、未だ引きずっている所に、その友人に対する意識が現れているように思えて面白かった。
 神治はそれが顔に出ないよう抑えながら、「大丈夫ですよ」と告げつつ、慰めるつもりでその柔らかな肉体を優しく抱き締めてあげるのだった。


 土曜日。
 案内されて訪れたレストランは、かなり高級な店だった。
 冴美と付き合うようになってから、こうしたレストランへ来る事が増えてはいたが、それでもまだ慣れるには至っていなかった。どうにも緊張してしまうのだ。
 特に今は昼時であったため、店内には客が沢山おり、この中で食事をするのかと思うと少々気が引けた。
 しかし予約した席へ向かっていくと、個室のフロアへ入ったため、どうやら他人の目は気にしないで済むのだと分かって安堵する。
 しかし部屋の中へ入った途端、別の意味で緊張する事になった。
 何しろそこに居たのは、あまりに予想外な人物だったからだ。直接逢ったことは一度も無いが、昔からよく知っている女性だったのである。
「ようこそ。あなたが神治くんね。私は冴美の友人の、桐生玲子(きりゅうれいこ)よ。宜しくね」
 椅子から立ち上がって自己紹介したその女性、玲子は、軽く頭を下げてから微笑んだ。
 その瞬間、周囲に華やかな雰囲気が広がり、部屋の明かりが強まったような錯覚を覚える。魅了の「気」が放たれたせいだ。
 これまで様々な種類の女性と逢ってきたが、ここまで華やかさを持った人物は初めてだった。
 これは魅了の「気」を放出したせいだけではなく、表情や仕草、髪型に化粧、そして身につけている服に至るまで、人を惹き付けるための要素が散りばめられている影響だろう。
 仕事柄、そうした事に気を遣っているに違いなかった。彼女の仕事は、まさに人を魅了する事が重要視され、そのための技術を必要とするものだからだ。
 玲子の仕事、それは女優業だった。
 芸能界に疎い神治でも、彼女の事はよく知っていた。
 頻繁にテレビなどで話題になっていたし、出演した映画やドラマが必ずヒットすると言われるほどの凄まじさであり、優れた演技力から数多くの賞を受賞していて、老若男女問わず多くのファンを得ている人気女優だったのである。
 その有名人が、まさか今回紹介される冴美の友人とは思ってもみなかった。
 常識外のことにはよく出くわしているものの、さすがに幼い頃からテレビなどで見てきた人気女優が目の前に居ることには、衝撃的な驚きがあった。
 テレビで見ている時も綺麗な人だと思ってはいたが、こうして生で対面すると、その美しさがより強く感じられ、心臓の鼓動が速くなる。
 年齢は四十歳を超えているはずだったが、三十代前半にしか見えず、その若々しい美貌は、腰まである長い黒髪の美しさと相まって、まさに理想の女性像といった雰囲気を醸し出していた。
 高級そうなドレスに身を包んだ肢体は、実に魅力的な凹凸を示しており、特に胸元の豊満な膨らみと、引き締まった腰のラインには、男の肉欲を強く刺激するものがあった。
 目の前に立たれているだけで圧倒されるような感覚を覚えるほどであり、とにかく全てにおいて魅力を感じさせる女性と言えただろう。
「えっと……まさか桐生さんだとは……その、初めまして……」
「あら、もしかして私のこと伝えてなかったの? 彼、凄く驚いちゃってるけど」
 玲子は面白がっているような表情を浮かべながら、冴美に問いかけている。
「そう言えば忘れてたわ。友人として紹介する事ばかり考えていて、仕事のことはすっかり頭から抜けちゃってた……」
 失敗した、という感じで呟いた冴美は、大きく息を吐き出して脱力している。
 今回の件を話した時の状態を考えれば、そうしたミスも仕方のない事だろう。何しろずっと「会わせたくない」という事ばかりが意識にあったように思えたからだ。
「冴美にしては珍しいわね。まあ、仕事で会う訳じゃないんだし、別にいいんじゃない? それにこうして会えばすぐに分かることだしね。それよりも座ったら? 神治くんもどうぞ」
 席を指し示してくる動作一つにしても、実に華麗な雰囲気を感じさせるものがあった。それは意識して行っているというより、身につけたものが自然に出ているという感じだった。
「改めましてこんにちは。今日はあなたと会えるのを楽しみにしてたわ。あの冴美が夢中になってる男性はどんな人なのかと思っていたのよ」
 そう言いながら、ジッとこちらを見つめてくるのに思わずたじろいでしまう。実に強烈な意思を感じさせる視線だったからだ。
 その様子が可笑しかったのか、玲子が小さく笑みを浮かべるのに強く惹き付けられる。何とも溜め息が出そうになるほどに、色気を感じさせる微笑みだったからだ。
 対面してからまだ一分も経っていないというのに、すっかり玲子の魅力にハマっているのが分かった。
 これは異能の力があるゆえではなく、技術としてそうさせられているのだ。
 確かに魅了の「気」を発してはいるが、それはかなりの少量であり、それだけでここまでの状態になる事はなかった。長年女優として身につけてきた人を惹き付ける技術、それにやられているのである。
「確かに冴美が夢中になるだけの事はあるわね。一見普通の男の子だけど、何か光るものを感じるもの」
 急に褒められたため、驚きつつも嬉しくなった。玲子ほどの美人に好意的な言葉を告げられればそうなって当然だろう。
「これはお世辞じゃないわよ。私はお世辞は言わないから。あなた、大人しそうに見えるけど、実は狼になっちゃうタイプでしょ」
 その言葉にドキリとする。実際自分は性欲をコントロール出来ず、強姦してしまった事が何度かあったからだ。
「図星って顔してるわね。なるほど、子供だけど大人な男を見せてくれたりするのね。主にベッドの上で」
「玲子っ。そういう言い方は失礼よっ」
 冴美が慌てた様子で反発しているが、その顔は真っ赤になっており、玲子の指摘が事実であると認めているようなものだった。
「ふ〜〜ん、やっぱりしちゃってるのね。冴美ったら、年上好きだとばかり思ってたけど、本当は年下、それも少年がツボだった訳か……それならあの惚気ぶりも納得だわ。ベッドで狼になった彼に襲われてるんじゃ、そりゃ女として夢中になっちゃうわよねぇ。若いから凄いんでしょうし」
「な、何言ってるの……そんな事してないわよ。お、おかしなこと言わないで……」
 冴美は必死に否定しているが、しどろもどろで言っているのでは説得力は無かった。
 どうにもすっかり玲子のペースであり、普段はキビキビとしている冴美が、まるで初心な少女のようにさせられてしまっている。
「やっぱり神治くんを連れてきてもらって正解だったわね。愛しの彼の前では、敏腕社長も乙女になっちゃって、隠し事も全然出来なくなっちゃってるもの。これでようやく曖昧だった事がハッキリして良かったわ。そう、この子に身も心も夢中って訳か」
 楽しげに笑みを浮かべながら、玲子はテーブルに置かれたカップを手に取ると、ゆっくりと珈琲を口に含んでいる。
「恋人じゃないから……恋人じゃないからね?……それだけは分かってお願い……」
 冴美は懇願するように告げている。先日気にしていたように、神治の将来を案じ、自身との関係が公にならないようにしているのだろう。
 その気遣いに嬉しくなるが、ここまでくると「恋人ではない」と認識してもらうのは難しいように思えた。
「別にいいじゃない歳の差なんて。まあ、冴美はそういうところ気にするから仕方ないでしょうけど。でもどのみち恋人は片方の気持ちだけじゃなれないものなんだから、問題は神治くんよ。ね、どうなの? 冴美のこと、恋人って思ってる?」
「いえ、恋人とは思ってません」
 事実であるため即答する。変に言い淀むと、それこそ勘違いされてしまうからだ。
 これまでの冴美とのやり取りを見たところ、玲子は読心術にかなり長けており、少しの動揺からでも内心を読み取ってしまうように思えた。
 そうした人間観察の鋭さが、あの優れた演技に繋がっているのかも知れない。
「ふ〜〜ん、どうやら本当に違うみたいね。問題はやっぱり歳の差? あなたからすれば、自分の母親と同じくらいの年齢ですものね。抵抗があって当然だけど、そこら辺どうなの?」
「歳の差、とも言えるし、そうでないとも言えるかも知れません。冴美さんにはどうしても甘えてしまいますから。それって歳が凄く離れているせいってのもあると思うんですけど、頼りになる性格ってのもあると思うんです。俺、そういう女性には甘えてしまうところがあるので……恋愛って、甘える対象じゃなく、恋する対象でしょう? 俺にとって冴美さんは、恋するよりも甘える対象なんですよ。凄く素敵な女性ですから」
「なるほど、そういう事ね。マザコンの気があるって事か。あなた、お母さん大好きでしょ?」
「玲子っ、失礼よっ」
 冴美が怒った様子でたしなめているが、事実であるから否定は出来なかった。実際自分は母が大好きであるからだ。
「いえ、桐生さんの言うとおりです。俺、マザコンだって自覚ありますし。そのせいで年上の女性に弱いですしね。だから冴美さんとの事も、凄く幸せなんですよ」
 視線を冴美へ向けながら告げると、彼女は恥ずかしそうに俯いている。
「へぇ、冴美がメロメロになってる。なるほど、こういうのに弱い訳か。意外な面だわ。驚いちゃった」
 玲子は可笑しそうに笑みを浮かべながら、再びカップを手に取って珈琲を口に含んでいる。
「やっぱり面白いわねあなた。そういう事を動揺せずに言えるなんて。普通マザコンなんて否定する事じゃない?」
「まあ、そうでしょうけど、そこら辺はもうどうでもいいっていうか、ある意味達観しちゃってるんですよ。マザコンだと思いたければ思えばいい、みたいな感じというか。実際マザコンだって思われても、それで何か困るって訳でもありませんしね」
 すでに学校では、ロリコンだとかハーレムの主だとか散々言われているのだ。そこにマザコンが加わったところで今更でしかないだろう。
「そこまで言い切れちゃうってのも凄いわね。あなた、やっぱり普通とは違うわ。よっぽどの自信家、というより、こういう事に関して何か突き抜けた意識があるっていうか……ふふ、魅力的ね。なるほど、冴美が夢中になるのも納得だわ」
 微笑みながら見つめてくるその瞳には、先ほどよりも強い意思を感じさせる光があった。
 興味津々というか、新しいおもちゃを見つけた子供のような雰囲気があったのだ。
「ちょっと玲子、神治くんに変なことしないでよ? この子は芸能界の人間じゃないんですからね。普通の男の子なの。ちょっかい出していい相手じゃないんだから」
「すでにちょっかい出してる冴美に言われたくないけどね。天下の女社長さまが、自分の娘より年下の男の子を誘惑しちゃってるんだからねぇ」
 強い口調で告げた冴美だったが、玲子の返しに恥ずかしそうに視線をそらしている。
 世間体を気にする冴美としては、神治との関係を「宜しくないこと」として認識しているため、そこを指摘されると何も言えなくなってしまうのだろう。
「冴美は神治くんの恋人じゃないんだから、私が神治くんとセックスしたって何も文句は言えないのよ。まあ、普通なら『子供に手を出すな』って事になるんでしょうけど、冴美にはそれを言う資格は無いものね。何しろ自分が手を出しちゃってる訳だし。だから私が同じことをしても、それを批判できない訳よ」
 続けて告げられた言葉に、冴美は俯いて辛そうにしている。己のしている事を客観的に認識させられた事で、改めて自身の行状の非道徳性を感じたに違いない。
 こうした容赦の無さというか、遠慮なしに告げてくるところは冴美にもある部分ではあったが、玲子はさらにそれが強いように思えた。
 普段であれば冴美も何かしら言い返したりしているのかも知れないが、今回の件では弱みがあるせいか、一方的にやられてしまっている感じだった。
「神治くん。私、あなたのこと気に入ったわ。今度二人きりで逢いましょう?」
 玲子の言葉に、冴美は慌てた様子で顔を上げた。その表情は困っているような悲しんでいるような、何とも言えない雰囲気があった。
「凄い顔。ホント夢中なのね。でも私じゃなくたって、こういう事はあり得るのよ? 神治くんだって高校生なんですもの、好きな子が出来たらデートだってするでしょうし」
「そ、そんなの分かってるわよ。神治くんに恋人が出来たってちゃんと受け入れるわ。祝福だってしてあげるんだから」
「本当に? だって抱いてもらえなくなるのよ。女として耐えられるの?」
「そ、それは……だ、大丈夫よ。耐えられるわ……」
 視線を落ち着き無くさまよわせながら呟いている様子からは、とても耐えられるようには思えなかった。
 それも当然だろう。抱かれている時の冴美は、実に幸せそうに気持ち良くなっていたからだ。それを止めるというのは辛過ぎるに違いない。
 現実としては、すでに恋人が居る状態で抱いている訳で、玲子の指摘は意味の無いものになっているのだが、まさかその事を告げる訳にもいかなかったため、黙って成り行きを見守るしかなかった。
「でももし冴花ちゃんと付き合うようになったらどうするの? あの子が『ママ、私の恋人の神治よ。宜しくね』とか紹介してきたら? 部屋でキスしてるところとか、セックスしている現場を見ちゃったりしたら? それでも耐えられる? あなたの神治くんが、冴花ちゃんに取られちゃうのよ? 女として耐えられるの?」
「た、耐えるわよ……耐えるってば……っていうか、何でそこで冴花が出てくるのよ。あの子が神治くんと恋人になる訳ないじゃない。凄く男嫌いなのは知ってるでしょ?」
 神治としても意表を突かれた。まさか例えとして冴花を出してくるとは思わなかったからだ。
「別にそんなのいつ変わるか分かったもんじゃないじゃない。実際あなただって、今まで『男なんて目的のための手段』みたいなこと言ってたくせに、神治くんには乙女しちゃってメロメロになってるじゃないの。冴花ちゃんだって、突然神治くんの事が好きになって恋してもおかしくないわよ。何しろあなたの血を引いてるんだから男の好みが似てて当然だしね。出会いにしたって、母親の知り合いなんだから接点として十分でしょ? それとももう紹介したの? 『ママの新しい恋人よ』って」
「してないわよっ。するにしたってそんな言い方する訳ないでしょっ。恋人だなんて言ったら、またあの子に軽蔑されちゃうわ。最近ようやく前みたいに話してくれるようになったのに……」
 冴美は強く反発しつつも、すぐに落ち込んだ様子で俯いている。現実として冴花に軽蔑される事をしてしまっているため、申し訳なさを感じているのだろう。
「でも冴花ちゃんって、もう恋してるんじゃないかしら? この間会った時、何かそんな感じがしたのよね」
 玲子の言葉にギョッとなる。部の民として目覚めている冴花の言動には、恋愛と勘違いさせる要素があったからだ。
 ああした性格であるため隠しているとは思えたが、観察眼の鋭い玲子にかかれば、あっさり見抜かれてしまうに違いない。
「え?……な、何言ってるのよ。そんなのあり得ないわ。あの子が恋なんかする訳ないじゃない。冴花なのよ?」
 冴美は呆れたような苦笑を浮かべている。
 年頃の娘が恋をしているという事を、ここまで否定する母親も珍しいだろう。
 それほど冴花の男嫌いは凄まじい訳だが、その事を知っている神治にしても、母親の言葉としてどうなのかと思った。
「あなたね。さすがにそれは冴花ちゃんに失礼よ。あの子だって女なんだから、魅力的な男の子と会えば、それまでの男嫌いなんか吹き飛んで夢中になっちゃうわよ。むしろ反動で普通よりも凄くなる可能性だってあるわね」
「そ、それはそうだけど……でも冴花なのよ? あの子が男の子に夢中になるなんて、そんな事あり得るかしら……?」
 まだ納得出来ない様子で呟いている冴美の態度に、思わず吹き出してしまいそうになった。
「でも様子がおかしかったのは確かよ。時々心ここにあらず、って感じで遠くを見るような目をしてたし。あれは恋だと私は踏んでるんだけどね……まあ、何かちょっと違うような感じもしたんだけど、あの年頃じゃああなるのは恋かなぁ、って……」
 恋と断定せず、「何か違う」と勘ぐっている辺りに、玲子の観察眼の凄さが感じられた。
 もし一緒に居る時間が長くなれば、恋ゆえの言動ではないと気づくのではないだろうか。
「試しに神治くんと会わせてみるってのはどう? もちろん私も同席させてね。そうすれば冴花ちゃんが神治くんをどう思うのかも分かるし。もし一目惚れしても分かるから、すぐに教えてあげるわ……ふふ、もしそうなったら、親子で一人の男を巡って争うことになるのね。面白そう」
「止めてよそんなこと言うの。冗談が過ぎるわよ」
「あら、私は冗談だなんて思ってないわよ。実際会わせてみればいいじゃない。それで冴花ちゃんが神治くんの事を気に入ったら、結婚させちゃいなさいよ。そうすれば冴美だって神治くんと一緒に暮らせるのよ。凄くいいでしょ?」
「え? そ、それは……って、何言ってるのよっ。そんなの出来る訳ないでしょっ」
「凄く嬉しそうな顔してから否定しても全然説得力ないわよ。内心『今度会わせてみようかな』とか思ってるんでしょ? それで『どうすれば冴花が神治くんの事を気に入るかしら?』とか考えてたりして」
「ち、ち、違うわよっ。そんなこと考える訳ないでしょっ」
 大声で否定はしているが、顔を真っ赤にしながら落ち着き無く叫んでいるため、図星であるのは明らかだった。
 ここまで冴美が可愛らしくなっているというのは初めて見たため、普段とのギャップから強い魅力を覚えた。抱いている時にも似た感じになる事はあったが、普通の状態で慌てふためいているというのが新鮮だったのだ。
 それにしても、普段からこの調子だとすれば、今回の件を冴美が断り切れなかったというのも納得だった。玲子の観察眼と頭の回転の良さからすれば、そうそう太刀打ち出来るとは思えなかったからである。
「それじゃこの件はこれくらいにして、そろそろ何か注文しましょう? お腹空いちゃった」
 そう告げた玲子は、近くに置いてあるメニューを取り上げると、料理を選び始めた。
 ようやく別の話題へ変わる事に安堵したのか、冴美は脱力すると大きく息を吐き出している。
 その疲れた様子に何だか可笑しくなってしまった。
「ああ、そうそう、二人が会う日取りが決まったら教えてよね。絶対よ?」
 追い打ちをかけるように告げる玲子に、冴美は完全に撃沈していた。
 桐生玲子という女性は、何ともまあ、凄い人だった。
 テレビなどで観ている時も凄い女優だと思ってはいたが、人間としてもかなりの人物である事がよく分かった。
 今回はからかう趣旨で話がされていたが、これがもっと真面目な話題だったとしても、玲子は話の主導権を握るに違いない。
 それは人を従える才能であると言え、もし政治家になったら相当なやり手になりそうな気がした。
 従姉の静も同じ才能を持っているように思えたが、玲子は芸能界という人の欲が渦巻く世界で揉まれてきた分、重みを感じさせる部分があった。
「あなたって、やっぱり面白いわね」
 不意にそんな事を言いながら、玲子がジッと見つめてきたためドキリとする。
 心の底まで見透かしているようなその視線に、激しい動揺が起こり、同時に惹き付けられている自分を認識する。
 まるで強い魅了の「気」を浴びせられたような気がしたが、実際は微量なものでしかなく、普通であれば少し好意を感じる程度のものでしかないだろう。
 それを上回るほどの技術、人を魅了する仕草や表情などといった事の集大成が、今自分に向けられているのだ。
 普通の人間であれば、それによって玲子に夢中になっているに違いない。それほどの技術力を彼女は身につけているからだ。
「やっぱり面白いわ……ふふ、気に入っちゃった」
 玲子はそう呟きながら微笑むと、再び視線をメニューへ戻している。
 その態度に冴美は不安そうな目を向けていたが、何か言ったらやぶ蛇だと分かっているのか、そのまま黙っているようだった。
 その様子を見ながら、何とも凄く魅力的で面白くて凄い人と知り合えたものだな、と思った神治は、さて何をご馳走になろうかと、メニューに目を向けるのだった。


 二時間ほどで食事は終わった。
 今は会計を済ませ、入り口付近のフロアで玲子と二人、トイレへ行った冴美を待っている。
 冴美はなかなか戻って来なかったが、おそらくトイレで気持ちを切り替えているのだろう。何しろ食事の間中、玲子によるからかいが延々と続いたため、彼女の精神的疲労はかなりのものになっているに違いないからだ。
 普段はそうした事はなく、討論の形になるようなのだが、今回の件では冴美に弱みがあるため、一方的に責められまくったという訳だ。
 その事で気分を良くしたらしい玲子は、「次も神治くんを招待するわね」と口にして、冴美をさらに追い詰めていた。
 何とも悪趣味な人だな、と思いつつも、本気の悪意が込められている訳ではない事から、これも友人としてのやり取りなのだろうと思う。自分にしても、友人達と似たような会話をした覚えがあったからだ。
 そんな事を考えながら、何気なく玲子の方へ視線を向けた神治は、改めて彼女の魅力に感銘を受けた。
 美麗な顔に、スタイル抜群の体。そして芸能人特有の華やかなオーラ。
 まさに人を惹き付ける要素を兼ね備えた女性だった。
 先ほどまでは「玲子が冴美をからかう」といった友人同士の楽しいやり取りの中に居たせいか、そうした事はあまり意識されなかったのだが、こうして黙って立っている姿を眺めていると、何とも強烈に魅了されるものが感じられた。
 意識も肉欲に染まり始めており、先ほどまではしなかった性的視線を向ける行為をしてしまっている。
 あの豊満な胸を好き放題揉みしだき、肉付きのいい両脚を開いて怒張を押し込んだら、どんなに気持ちがいいだろう。均整の取れた見事な肉体をくねらせ悶えさせ、美麗な唇から甘い喘ぎを引き出したら、どれほど興奮するだろうか。
 そうした妄想を逞しくさせていると、肉棒が猛ってたまらなかった。
 何より玲子の場合、演技とはいえセックスの様子を見た事があったため、余計に妄想が強まっているように思えた。
 昔彼女が出演した映画の中に濡れ場のあるものがあり、それを自慰のオカズとして何度も利用させてもらった経験があるのだ。
 映画の内容は、「父親の愛人である女性に憧れを抱いていた大学生の息子が、ある嵐の夜、半ば強引にその女性と結ばれる」といったもので、背徳性と熟女相手の筆下ろし、といった部分に強烈に刺激を受けた。
 性行為に至るまでの愛人女性の仕草などから伝わってくる色気は強烈で、その美麗な裸身や、喘ぎや悶えにしても、熟女の魅力を強烈に魅せたものになっていた。
 セックスしたことのなかった神治にとり、玲子演ずる愛人の姿はあまりにいやらしく魅力的であったため、「自分も初めては、こんな女性としてみたい」という想いを抱いたのだった。
 実際あのシーンで何度自慰をし、射精した事だろう。
 擬似的とはいえ、玲子に対して精を放ちまくっていたため、その相手がこうして横に並んで立っている事には、何ともむず痒いというか、恥ずかしさと申し訳無さを感じさせるものがあった。
 何しろ当人の知らないところで自慰の対象にしていたというのには、あたかも寝ている間に犯してしまったかのような感覚があったからだ。
 さらに一方的な事ではあるが、性欲を処理してもらったのだと考えると、玲子はまさに「お世話になった相手」という事になる訳で、そんな女性と親しくなったという事には、
妙な感覚を抱かせる部分が存在していたのである。
「なんかエッチなこと考えてない?」
 不意にかけられた声に意識を戻した神治は、その内心を見透かした言葉に激しく動揺してしまった。
 慌てて視線を向けると、美しい顔が楽しげに微笑みを浮かべながら、こちらを見つめていた。
「私の映画のエッチなシーンでも思い出してた? この服の下には、あの綺麗な裸があるんだ、とか」
 まさにその通りである指摘に驚愕してしまう。
 観察眼に優れた女性だと思っていたが、まさかろくに話もしていない状態でここまで見抜くとは、あまりに凄すぎだろう。
「あら、図星なの? 結構当てずっぽうだったのに当たっちゃったのね。驚いちゃった」
 可笑しそうに笑う玲子の言葉に力が抜ける。
 よもや適当に考えて告げただけだったとは、まさにしてやられた、という感じだった。
「年頃の男の子なら、考えるのはエッチな事だと思ったのよ。当たってなくても面白い反応してくれるんじゃないかと思ってたんだけど、本当にそうだったなんてね……ふふ、いけない子ね」
 甘ったるく囁いてくるのに心臓が強く跳ねる。何しろあの映画の愛人のような、強烈な色っぽさを感じさせる雰囲気があったからだ。
「ね、私の映画観てくれてるの? それでエッチなシーンを何度も観ちゃったりしてた? 私の裸とか、セックスしてるシーンで、オナニーしてたりするのかしら?」
 少し体を寄せ、顔を近づけながら尋ねてくるのに、鼓動が激しく高鳴る。
 魅惑的な肉体が接触せんばかりになり、アップになっても衰える事のない美しい顔が迫ってくるのに、強い悦びと興奮が湧き起こってくる。
 この程度の事など慣れているはずだったが、激しく動揺してしまっているのに驚く。
 何しろ顔が熱くなり、微妙に体も震えていたからだ。呼吸も乱れて落ち着きが無くなっており、まるで童貞少年のような状態になっていたのである。
 いくら玲子が魅力的で、昔理想の初体験の相手として夢見ていた女性だからといって、この反応はあまりに過敏すぎるだろう。
「やだ、可愛いわね。そんな反応されるとは思わなかったわ。あなた冴美としてるんじゃなかったの? それとも肉体関係はまだなのかしら? 冴美があんなにメロメロになってるのは、てっきりセックスしてるからだと思ってたんだけど……」
 不思議そうに呟きながらジッと見つめてくるのに、益々鼓動が激しくなっていく。
 美しい顔と、魅惑的な肉体に迫られ、思わず抱き締めたくなる衝動が起きてくるのを必死に抑える。
「まあ、いいわ。それでどうなの? 私のエッチなシーンでオナニーした事あるの? ね、教えて」
 冴美との関係よりも、自慰について追求をしてきたのは、そちらの方がからかい甲斐があると判断したからに違いない。何しろ今の自分は、その事で激しく動揺していたからだ。観察眼の鋭い玲子がそれを見逃すはずが無かった。
「その様子じゃ、してるのね? それも凄く。私のエッチな姿で、何回も何回も射精しちゃったんでしょ?」
 何も言っていないのに、まさにその通りの指摘をしてくるのに再び驚愕する。
 何故ここまでこちらの思考を読めるのだろう。
 顔も凄く熱くなっているのが感じられ、おそらく真っ赤になっているに違いなかった。これでは本当に初心な童貞少年でしかなかった。
「ふふ、ホント可愛いわ……ね、これからうちに来ない? もちろん冴美には内緒で。もっとあなたの事を知りたいの……」
 色っぽく囁いてくるのに、股間の一物がビクンっと反応を示す。
 元々こうした熟女の優しい誘いには弱いところがあったが、それが強烈になっているように思えた。
 初めて伯母に誘惑された時の事が頭に浮かび、玲子ともセックス出来そうな雰囲気になっている事に、激しい昂ぶりが起きた。
 実際今の誘いはそうとしか受け取れないだろう。玲子はセックスしようと誘っているのだ。
 もちろん断る理由など全く無かった。むしろ是非ともしたいくらいだった。
 何しろ玲子は童貞時代に理想の初体験の相手として夢見ていた女性なのであり、そんな相手を抱けるとなれば、それはまさに夢が叶う状況だったからだ。
「……お邪魔させてもらいます……」
 息を詰まらせながら小さく呟くと、玲子は嬉しそうに微笑んだ。
 その笑みがまた強烈に肉欲を刺激し、肉棒が激しく律動する。
 本当におかしかった。
 何故ここまで初心な状態になってしまっているのか。
 動揺しまくりの自分に戸惑いを感じつつ、トイレから戻ってきた冴美がこちらへ近づいてくるのを目にした神治は、今の事がバレないようにしなければと、落ち着くために深呼吸を繰り返すのだった。


 あれから一旦冴美と別れ、再び店の前へやって来た神治は、そこから玲子と一緒にタクシーで彼女の自宅へと向かった。
 着いた先は、いわゆる億ションと呼ばれる高級マンションで、そこの最上階に玲子の部屋があるらしかった。
 エレベーターで最上階まで上がり、先導する玲子に続いて廊下を歩いていく。
 目の前で形のいい尻が揺れており、そのまるで誘っているような動きに、思わず背後から襲いかかりたくなる衝動を覚えてしまう。
 どうにも映画の事を思い出してからというもの、肉欲が高まり過ぎている感じだった。玲子に対する性的衝動が昂ぶっているのだ。
 何をそんなに興奮しているのかと思うのだが、どうしても抑えられないのであり、玲子を、その魅惑的な肉体を、早く己の物としたくて仕方のない想いが、沸々と湧き起こっていたのである。
 このままでは宜しくないだろう。何しろあまり興奮しすぎた状態では、恥ずかしい失敗をしかねなかったからだ。
 特に自分は興奮が行きすぎると暴走する事がよくあったため、そんな事になっては、また未迦知神に皮肉げに叱られかねなかった。
 それはご免被りたいと、落ち着くために深呼吸して精神を集中し、肉欲をコントロールするようにしていく。
 すぐに効果は現れ、平静な状態になっていくのが感じられた。
 これで一安心、と大きく息を吐き出し、安堵の想いを抱く。
 だが次の瞬間、妙な感覚を覚えたため、思わず足を止めてしまう。
 何やら周囲に、嫌な「気」が漂っているのを感知したからだ。
 つい先ほどまでは、興奮していて注意力が散漫になっていたせいか分からなかったのだが、宜しくない印象の「気」が、フロアに存在しているのが分かったのである。
「どうかしたの?」
 かけられた声に顔をあげると、玲子が少し離れた所で怪訝なそうな表情を浮かべているのが見えた。足を止めていたので不審に思われたのだろう。
「何でもないです。こういうマンションは初めて入ったので珍しくて……」
 そう言い訳をしながら、周囲に視線を向け、物珍しく見ているフリをする。
 そして目に入った部屋の表札が、何も記載されていないものである事に気づいて少々意外感を抱いた。以前観たテレビ番組で、こうした億ションというのは今人気があるので、すぐに完売するような話をやっていたからだ。
 無論単に表札を出していないだけ、とも考えられたが、その部屋には空き室特有の雰囲気があったため違うように思えた。住んでいるのであれば存在するはずの、人の「気」の残滓が感じられなかったのである。
「この部屋って、誰も住んでないんですか?」
「え?……ああ、そうよ。前は住んでたんだけどね、出てちゃったの。ちなみにその部屋だけじゃなく、この階の住人は、私以外みんな出てちゃってるわよ」
 その言葉に驚く。
 何故そのような事になっているのだろう。入居者が居なかったというのならともかく、一旦住んだのに出て行く、しかも玲子以外が全て、というのは奇妙な話だった。
「他の階もそうなんですか?」
「いえ、他の階は全部住んでるわよ。この階だけ何故か空きまくりなのよねぇ。どうしてだと思う?」
「え? それはその……人死にでもあった、とか……?」
 よくある入居者が少なくなる理由を挙げてみるが、それだと同じ階の住人全てが出て行くものとしては微妙な感じもした。
「人は死んでないわね。それならまだ分かりやすいんだけど、変な理由なのよ。何でも『幽霊が出るから』って事らしいわ」
「幽霊、ですか?」
「そう、幽霊。まあ、はっきり見た人は居ないみたいなんだけど、どうもこの階へ来ると嫌な感じがするらしいのよ。それで薄気味悪いから嫌になって出て行っちゃうらしいのね」
 なるほどそれなら納得だった。何しろ先ほど自分も、その「嫌な感じ」というのを感知したからだ。おそらくある程度霊的な資質のある人間には、この嫌悪感を抱かせる「気」が感じられるに違いない。
 それほど強い「気」ではないが、毎日生活する場所ともなれば、嫌悪感が積み重なってたまったものではない状態になるのは理解出来た。
「最初は新しく入ってくる人が居たんだけど、その人もすぐに出て行っちゃってね。そういう事が続いたせいで、すっかり『幽霊の出る階』みたいな噂が出来ちゃって、誰も入らなくなっちゃった訳。不動産屋さんも困ってたわ」
「桐生さんは平気なんですか?」
「私はそういうの気にしないから。というか、嫌な感じってのを感じたことないしね。だから出て行く人の気が知れないのよ」
 確かに玲子の気質であれば、感じたことのない「嫌な感じ」など気にもしないだろう。どうやら彼女は霊的な事に対して相当に鈍感らしい。
「もしかして神治くんも感じたの? 『嫌な感じ』を。それで今止まってた訳?」
 相変わらずの鋭い指摘に驚く。まさにその通りだったからだ。
「やっぱりそうなのね。それじゃどうする? このまま帰る? それとも私の部屋へ来る?」
 色っぽい微笑みを浮かべながら、何とも肉欲を擽る表情と声音で尋ねてくるのにゾクッとなる。
 この誘いを断れる男など居やしないだろう。いくら「嫌な感じ」を覚えたとしても、それを無視するのに十分な魅力があったからだ。
「いえ、行きます。桐生さんの部屋へ伺わせていただきます」
「そう。嬉しいわ」
 満面の笑みで告げられるのに、心臓が強烈に鼓動した。
 まるで少女のような可憐な笑顔であり、それには強い嬉しさを呼び起こすものがあった。
 色気と可憐さ。その二つが玲子の中には共存しているようだった。
 いや、これも女優としての技術なのかも知れない。それだけのものを彼女は身につけているのだ。
「それじゃ早く部屋へ行きましょう。これ以降は『帰る』なんて言っちゃ駄目よ? 私をガッカリさせないでね?」
 言われなくとも帰る気など毛頭無かった。
 確かに嫌悪感をもたらす「気」の存在は気にはなるが、無視出来るレベルのものでしかなかったし、何より興奮状態にあった時は認識すらしていなかったのだから問題ないだろう。
 それにこれから自分は素晴らしい行為をするのだ。玲子とセックスするのである。
 その事と比較すれば、嫌な「気」の存在などどうでもいいと言えた。
 嫌な感じがするから何だというのだ。それ以上に気持ちのいい事をすれば、意識から消えるに決まっているだろう。
 そう考えながら期待を膨らませた神治は、再び歩き出した玲子の後に付いていった。
 少しして部屋の前へ到着すると、ドアが開かれ、中へ入るよう促される。
 軽く頭を下げてから足を踏み入れると、背後でドアの閉まる音が響いた。
(う……)
 その瞬間、突如として強烈な嫌悪感が湧き起こった。
 部屋の奥から大量の嫌な「気」が押し寄せ、体にまとわりついてきたのだ。
 体に震えが走り抜け、思わずよろけてしまう。
(何だ、これは……?)
 あまりに予想外の状況に、危険信号が脳内に点滅した。
 さすがにこの「気」の量は異常だった。これほどの嫌悪感をもたらす「気」が存在するなど、まともな状態ではないだろう。
 このままこの部屋に居続けるのは危険だった。すぐに出るべきだ。
 本能が逃走を選択し、部屋から出ようと体が勝手に動き、ドアのノブに手を掛ける。
「どうかしたの?」
 だが次の瞬間、玲子に腕を掴まれたためギョッとなった。
「何か忘れ物? それともやっぱり帰るつもり?」
 にこやかな笑みを浮かべながら尋ねてくるのに、体が強く硬直する。
 表情は笑顔だったが、目は笑っていなかったからだ。瞳から強烈な光が放たれており、暗に「逃がさないわよ」と告げているのが感じられてくる。
「まさかそんな事ないわよね。だってこれから私と、凄く楽しい時間を過ごすんですもの。ね、そうでしょう神治くん」
 甘く囁いてくる声に、ゾクッとした快感が走り抜ける。
 その声音には雄を魅了する響きがあり、聞いた瞬間股間の一物が強く反応を示した。
 肉欲が勢い良く高まって呼吸が乱れ、目の前の魅惑的な肉体を抱き締めたい想いで一杯になっていく。
「さ、上がって」
 腕を引っ張られたため、バランスを崩して前のめりに倒れそうになる。
 それを玲子が受け止めたことで、体の前面に気持ちのいい女肉の感触が広がった。
 そのうっとりするような柔らかさに、肉棒がビクンビクンと震えまくる。
「ふふ、大丈夫? でももうちょっと待ってね。まだここじゃ駄目よ」
 股間の反応を感じたらしい玲子に楽しげにそう告げられ、恥ずかしくなりながら体を離し、促されるまま靴を脱いで奥へと入っていく。
 すでに部屋から出ていく意識は無くなっていた。
 先ほどはいきなり大量の嫌な「気」を浴びたため動揺したが、この程度無視すればいいだけの話だからだ。これから体験する魅惑のひとときと比べれば、どうでもいい事だろう。
 リビングへと案内され、ソファに腰を下ろすと、玲子は「私は着替えてくるから」と告げて別室へ行ってしまった。
 一人になった神治は、大きく息を吐き出してから、何とはなしに周囲を眺めた。
 億ションだけあってかなり豪華な造りの部屋になっており、それはさすが日本で最も人気と実力のある女優の自宅と言えただろう。
 設置された家具にしても、全てが高級感の漂うものになっていて、まさに一流の人間が住む一流の部屋という雰囲気があった。
 だが部屋に満ちている「気」はそうした印象とは真逆の、実に嫌な状態になっていた。外の廊下で感じたよりもかなり強く、大量の嫌悪感をもたらす「気」が存在していたからだ。
 普通の人間ならば耐え難いレベルであったため、このような部屋でよくも暮らせるものだと驚いてしまう。いくら霊的な事に鈍感だとしても、これほどの強い嫌な「気」で満ちていては、さすがに何かしら感じるはずだからだ。
 そもそも何故この部屋は、このような「気」で満ちているのか。何かしら原因があるはずだから、調べた方が良いだろうか。
 そう思った神治は、「気」の発生源を探ろうと、意識を広げ、周囲の状況を感知しようとしてみた。
「お待たせ」
 だがその瞬間声が聞こえたため、一気に意識が引き戻される。
 視線を向けると、玲子が珈琲カップの乗ったトレイを持って立っているのが見えた。
 その姿に思わず惹き付けられてしまう。
 何故なら彼女の身につけている服が、実に魅惑的なものだったからだ。
 体にフィットするタイプのワンピースで、凹凸のラインがハッキリと分かる状態になっており、大きく開いた胸元では生の豊満な乳房の谷間が見えていた。
 スカート部分もタイトな短い作りになっている事から、肉付きの良い太ももが眩しく目に映り、思わずむしゃぶり尽きたくなる衝動を覚えた。
 晒されている肌の白さと、柔らかそうな肉の雰囲気、特に胸元のそれは、強烈に肉欲を刺激してたまらなかった。
 しかも大人の色気に溢れた玲子が着ている事で、その魅力は凄まじいほどになっており、男であれば誰もが肉欲をたぎらせる姿と言えただろう。
 歩くたびに胸元の膨らみが揺れ、太ももが微妙に隠れたり現れたりする様子に、肉欲が激しく高まっていく。
 呼吸が乱れ、今すぐにでも抱き付き押し倒したい衝動で頭がおかしくなりそうだった。
 ソファの前まで来た玲子は、珈琲カップを手に取ると、ゆっくりとテーブルの上へ置いている。
 その際に胸元がたわみ、乳房がさらに見える状態になったため、鼻息を激しく吹き出してしまう。
 あと少しでブラジャーが見えるのではないか、という所で姿勢が戻ったのに残念な想いを抱きつつ、夢中になって見つめていた事に気づいて驚く。
 乳房など見慣れているはずだというのに、何をこんなに興奮しているのか。これでは童貞少年の反応ではないか。
 まるで一度も生の乳房を見たことがなかった頃のように、焦らされて誘惑される事に激しく興奮しているなど、自分は一体どうしてしまったのだろう。
 予想外の己の反応に動揺しつつ、このままでは良くないと、大きく息を吐き出して落ち着こうとしてみる。
 だが次の瞬間、玲子が隣へ腰掛けて来たためギョッとなった。
 ソファが弾み、接触寸前の距離まで体が寄せられるのに、心臓の鼓動が激しく昂ぶる。
 童貞少年のような反応をしてしまう事に違和感を抱きつつ、視線は意識せずとも玲子の動きを追っていた。
 美麗な指が珈琲カップを手に取り、ゆっくりと口元へと運んでいくと、形のいい赤い唇が少し歪んでカップに接触した。
 腕の動きに合わせて乳房の谷間が少し形を変え、脚を組んだ事で、二本の美麗な太ももが付け根付近まで顕わになった。
 それらの様子に心臓がバクバクと鼓動し、おかしくなりそうな衝動が押し寄せ、呼吸が乱れ、手が震えまくった。
 興奮が凄まじく高まり、他の事がどうでも良くなっていくのが感じられていく。
 すでに「気」の発生源を探る事など、どこかへ吹っ飛んでしまっていた。
「ねぇ、触ってもいいのよ? そうしたいんでしょう?」
 優しく囁いてくるのに、強烈な悦びと共に心臓が激しく鼓動した。
 玲子ほどの美女に「体に触れていい」と言われるなど、これほど男冥利に尽きる事はないだろう。しかもその先に性行為が待っているのは明らかなのだ。
 優れた女性に己の遺伝子を注ぎ込む行為。
 それは生殖本能として、男が最も求める事であり、最高の悦びになる事でもあった。
 さらにその対象が、昔から理想の相手として求めていた女性となれば、強烈な幸福感が起こって当然だった。
「き、桐生さぁん……」
 体ごと玲子の方へ向き直り、震えている手を差し出していく。
 ゆっくりと胸元の膨らみへ近づけ、下からすくい上げるようにして接触させると、手のひらに柔らかな感触が広がり、乳房が歪んで盛り上がったため鼻息を吹き出す。
「ふふ、玲子でいいわよ。あなたとは男と女の関係になるんですもの。そうしないと気分出ないわ」
 楽しげに微笑みながら、玲子は手を背中に回して引き寄せてきた。
 互いの体が接触し、女肉の柔らかな感触が伝わってくるのにうっとりとなる。
「でもどうして……こんな、俺なんかと……」
 豊満な乳房をヤワヤワと揉みながら、気になっていた事を問いかける。
「あなたのこと、気に入ったからよ。最初に言ったでしょ、『光るものを感じる』って。それに実際話してみて好みの男の子だって思ったしね。私、好みの男性とはセックスするの。そうするとその人のことがよく分かるから」
 美しい顔が近づき、長い睫毛をした瞼がゆっくり閉じていく。
 唇が押しつけられると共に、体が引き寄せられて抱き締められた。
「んっ……んふ……んんっ……」
 舌が入り込んできて口内を舐め回し、こちらの舌に絡んでくる。
 背中に回された腕に力がこもり、柔らかな体が押しつけられ、その心地良い感触に気持ちの良さが広がっていった。
「んんっ……んっ……」
 少し強めに乳房を揉むと、玲子はピクッと体を震わせ、舌を強く吸い上げてから顔を左右に入れ替えるようにし、そのままのし掛かってきた。
 ソファに押し倒される状態になりながら、服の上から乳首を探り、捻るようにして摘んでいくと、玲子は鼻息を大きく吹き出し、少し目を開けてこちらを見つめてきた。
「んぅっ、んふ……いいわぁ、あなたとのキス。何だか凄く気持ちいい。こっちがリードしてるはずなのに、触れてるだけでイかされちゃいそう……なるほどね、冴美はこれにやられちゃってる訳か。ふふ、よく分かったわ。っていうか、やっぱりあなた、してるわよねセックス。慣れてる感じがするもの。なのに何でそんな初心な感じなの? 演技には見えないし。演技なら私はすぐに分かるもの。ね、どうして?」
 覆い被さる状態になった玲子は、こちらを見下ろしながら不思議そうに尋ねてくる。
 確かに演技であれば、玲子ほどの女優であればすぐに見抜くだろう。しかし神治は素で初心な状態になっていたため、彼女が疑問を抱くのも当然だった。
「俺にもよく分かりません。何でだか玲子さんの事、凄く意識しちゃってて、ドキドキして止まらないんです。玲子さんと一緒に居るだけで、おかしくなっちゃいそうな感じなんです」
 そう告げると、玲子は一瞬困ったような表情を浮かべた後、小さく笑みを浮かべた。
「何よその、可愛い台詞。そんな風に言われたら、もっと色々させてあげたくなっちゃうじゃない。もちろんそのつもりなんだけど、でももしその気が無かったとしても、きっと抱かせてあげたくなっちゃうわね……あなたって、年上殺しの才能あるわ。大抵の女はコロっといっちゃうんじゃない?」
 確かにこれまで年上の女性には可愛がられてきた覚えがあった。
 だがそれは、自分が子供である事からそうなっていたのだと考えていたため、「年上殺しの才能」などと言われると、何とも苦笑してしまう感じがあった。
「あん、その目、それが駄目なのよ。あなたに見つめられると、何だかゾクゾクきちゃうのよね。凄く可愛がってあげたくなっちゃうの。冴美もこれでたらしこんだんでしょう? 悪い子ね」
 優しく、そして色っぽく囁いてくるのに、心臓の鼓動が跳ね上がった。
 玲子に子供扱いされ、可愛がられると、それだけで甘えるようにして求めたくなってしまうのだ。彼女の方こそ年下殺しの才能があるのではないだろうか。
「もうこんなになってる。凄く硬いわ。我慢できなくなってるんじゃない?」
 ズボンのベルトが緩められ、パンツの中から肉棒が顕わにされた。
 元気よく屹立した一物はビクンビクンと脈打っており、その様子を楽しげに見つめている玲子の姿に興奮が高まっていく。
「ふふ、気持ち良くしてあげるからね……」
 そう呟き、美麗な唇を大きく開いた玲子は、嬉しそうな笑みを浮かべながら肉棒を咥え込んできた。
 途端、温かで湿った感触に包まれたため、その気持ちの良さにうっとりしつつ、大きく息を吐き出す。
 亀頭に舌が絡みつき、ゆっくりと舐め吸ってくるのに、たまらない心地良さが押し寄せてくる。
 さすが男性経験が多いのか、その舌の動きは男の弱い部分を知り尽くしている感じで、ツボを外さない見事なものだった。
 今日本で最も美しく、優れた女優にフェラチオをされているのだと思うと、強い興奮が湧き起こり、それだけで射精してしまいそうだった。
 長い黒髪をかき上げながら、チュポチュポと肉棒を吸っているその姿には、美しさと淫靡さが混ざり合っており、男の求める理想の女性像とも言うべき素晴らしさがあった。
 こうした様子を見せられて、玲子に惹かれない男など皆無だろう。熟女としての魅力に溢れたその肉体に、自身の精液を注ぎ込みたいとする強い衝動を抑えられる男など、居やしないからだ。
「んんっ……まずは私の口に、んっ……ちょうだい、んふっ……あなたの白いの、んんっ……私の口に出して、んっ、んんぅっ……」
 上目遣いで甘えるように言われると、強い悦びが湧き起こった。
 玲子のような気の強い女性の口に射精する、それも本人からおねだりされて、という状況は、男としての支配欲、征服欲を強烈に刺激するものがあった。
 多くの男に求められ、賛美されている、優れた女性である玲子の口内に射精する。
 それは普通であれば、決して出来ない事だろう。
 しかし今の自分はそれが出来るのだ。しかも玲子の方から望まれてだ。
 それはまさに、玲子を己の物とし、自由にしている感覚をもたらしてたまらなかった。
 昔からテレビで観、理想の初体験の相手として憧れ、自慰の対象としてきた女性をここまで好きにしているとは、何と素晴らしいことだろうか。
 射精感もギリギリまで高まっており、あと少しで我慢できなくなるのは明らかだった。
 このまま一気に、この美しくもいやらしい、憧れの女性の口に精液を注ぎ込む。
 その事で頭を一杯にしながら玲子を見つめていると、彼女は笑みを浮かべ、強烈に吸い上げてきた。
 玲子の瞳は「いいのよ。いらっしゃい」と告げているように感じられたため、甘えたくなるようなその微笑みに促されるようにして精を放つ。
 ドピュッドピュッドピュッ……。
 三連続で肉棒が律動し、勢い良く精液が迸った。
 強烈な気持ちの良さと共に射精が繰り返され、大量の精液が美麗な口に放出されていくのが感じられる。
 美しい顔を歪ませながら、それでいて嬉しそうに嚥下していく玲子の姿に、たまらない満足感と快感が押し寄せてきた。
 ついに憧れの玲子の口に射精したのだ。何と素晴らしい事だろう。
 強い悦びに包まれながら最後の射精を終えると、大きく息を吐き出し、体の力を抜いてソファに身を委ねる。
「……沢山、出たわね……ふふ、凄いわ……」
 玲子は精液を嚥下し終えると、今度は肉棒を綺麗にするように舐め回してきた。
 射精したばかりの敏感なところにそれをされ、強い刺激を得ると共に、肉棒が瞬く間に回復していくのが分かった。
 玲子の舐め方の上手さが、よりそれを促したという部分もあっただろう。何より神治の心と体が、今度は玲子自身を味わいたいと欲しているというのも大きいに違いなかった。
 とにかく射精しても治まらないほどに興奮が高まっているのであり、今すぐ玲子を抱きたくてたまらなくなっていたのである。
「じゃあ、続きはベッドでね……じっくり楽しみましょう?」
 優しげな笑みを浮かべ、手を掴んで引き起こしながら告げてくる玲子に、コクコクと首を縦に振って答える。
 やはり童貞少年のような反応になっているのに恥ずかしさを覚えつつ、手を引かれるまま寝室へと向かっていく。
 ドアが開かれると、そこは六畳ほどの広さになっていて、中央に大きなベッドが置かれてあるのが見えた。
 これからあのベッドの上で玲子とセックスするのだと思うと、興奮が激しく高まり、早く目の前の魅惑的な肉体を押し倒したくてたまらなくなった。
 その衝動を「あと少しの辛抱だ」と押さえ込んだ神治は、先に入っていた玲子に続いて、部屋の中へと足を踏み入れていった。
(!……)
 次の瞬間、予想外の衝撃を覚えたため体が硬直した。
 嫌悪感をもたらす「気」が、それも今までとは比較にならない量と濃さのものが、押し寄せてきたのだ。
 一気に頭が冷め、肉欲が消え去っていく。
 危険を告げる信号が脳内で点滅し、自分が異常な状況になっているのが認識される。
 いや、これはこの部屋へ入った時から感じていたはずの事だった。それをいつの間にか忘れてしまっていたのだ。
 何故これほどの嫌な「気」の存在を忘れていたのだろう。意識せずとも強烈に感じられてしまうこの嫌な「気」の存在を。
 通常であればあり得ないはずの事を怪訝に思いつつ、冷静になった意識を集中し、部屋の中へ探知の「気」を走らせる。
 もしかしたらこの部屋こそが、これまで感じていた嫌な「気」の発生源なのではないだろうか。これほどの濃密な「気」の状態となれば、そうであってもおかしくないからだ。
 意識を集中し、何か原因になる物はないかと探っていく。
 だが予想に反し、何も感知する事はなかった。
 原因と思える物は特に存在しておらず、異常なまでの「気」の状態を除けば、何の変哲も無い部屋でしかなかったのだ。
 そうしている間も大量の嫌な「気」が体にまとわりついてきており、無性にこの部屋から立ち去りたい衝動が湧き起こっていく。
 無意識の内に体が後ずさるが、実際には下がることは出来なかった。
 何故なら、まるで腰の辺りに何かつっかえがあるかのようにして、後退する事を妨げられていたからだ。
「どうしたの? 早くベッドへ行きましょ」
 不意に腕を引っ張られたため、思わずよろけてしまう。
 だがよろけた理由はそれだけではなかった。背後から腰の辺りを押されたような感覚があったのだ。
 慌てて振り返るが、そこには何も存在していなかった。
 しかし気のせいだとするには、あまりにハッキリとした感覚であったため、薄気味悪さを覚える。
 嫌悪感をもたらす「気」の存在といい、やはりこの部屋には何かあるのだ。
 引っ張られるままベッドの傍まで移動すると、そこで玲子は手を放し、見せつけるようにしてゆっくりと服を脱ぎ始めた。
 徐々に顕わになっていく白い肌に、意識せずとも視線が集中し、思考がボヤけてくる。
 異常な状況に注意しなければならないのだが、目の前の魅惑的な肉体を見ていると、それがどうでも良いことのように思えてきてしまう。
 頭の中で危険信号が激しく点滅しているが、それ以上に玲子に対する肉欲が昂ぶり、心臓がバクバクと鼓動し、股間の一物が猛りまくっていく。
 一糸まとわぬ姿をさらした玲子は、笑みを浮かべると、ゆっくりこちらへ近づいてきた。
 歩く度に形の良い豊満な乳房が揺れ、見事に引き締まった腰のラインが目に映っているのに、女体の美しさを改めて認識する。
 これまで何人もの女性の裸を見てきたが、その中でもトップクラスの素晴らしい肢体だった。
 昔映画で何度も見た裸身よりも、遙かに魅惑的な肉体がそこにはあった。やはり映像と実物とでは、与えられる刺激が段違いなのだろう。
「さ、あなたも脱いで。裸になって気持ち良くなりましょ」
 優しくそう告げ、こちらの服に手をかけて脱がしてくるのに、されるがままになってしまう。
 頭の片隅でもう一人の自分が、「この部屋は良くない。早く出るんだ」と叫んでいるが、それを敢えて無視する状態になっていた。
 憧れの女性に服を脱がしてもらっている状況が、強烈な甘えの意識を呼び起こし、全てを委ねたくなる衝動を呼び起こしていたのだ。
 このまま玲子に包まれ、その柔らかな肉体の中に入り込みたい。
 まるで幼い頃に戻ったかのような、甘えることへの欲求が強く昂ぶり、危険だとする認識を消し去っていく。
「神治くんは甘えん坊なのね。益々可愛いわ……それじゃこの後も、私が優しく気持ち良くしてあげるから……」
 こちらの服を全て脱がした後にそう告げた玲子は、両腕を絡ませるようにして背中へ回してくると、優しく抱き締めてきた。
 しっとりとした肌と擦れ、柔らかな肉が潰れる感触に、蕩けるような快感が押し寄せ、体の前面が女肉に覆われるのにうっとりとなる。
 美しい顔が迫り、唇が押しつけられて舌が入り込み、口内を舐め回されて舌に吸い付かれるのに、さらに意識が朦朧としていく。
 貪られるようなキスをされながら、引っ張られて玲子の上へ倒れ込むと、その極上のクッションを思わせる感触に気持ちの良さが溢れた。
「あなたの好きにしていいのよ。私の体、神治くんの物だから……」
 甘く囁かれ、その言葉にドクンっと心臓が跳ねる。
 憧れの玲子をいよいよ抱けるのだという状況に、激しい興奮が湧き起こっていく。
 危険を知らせる意識は、すでに遠いものとなってしまい、まともな思考すら出来なくなっている状態だった。
 玲子を抱きたい意識で一杯になり、肉欲の衝動に包まれていくのが感じられる。
「れ、玲子さぁん……」
 情けない呼び声を発しながら体を起こすと、横たわっている美しい女体が目に映った。
 改めて見てもやはり素晴らしい肉体だった。
 白く柔らかく均整の取れたその肢体は、男の肉欲を強烈に刺激する魅力に溢れており、この裸身を見て我慢出来る男など居やしないだろう。
 胸元へ手を伸ばし、生の乳房を鷲掴むと、指先がふにゅりと肉に食い込んで、心地良い感触が手のひらに広がった。
 そのまま揉むのを繰り返し、形の変化する膨らみに興奮を高めながら、中央にある突起を口に含んでいく。
「あっ……はんっ……」
 強く吸い付き、舌先で回すように舐めると、玲子が可愛らしい声をあげた。
 大人の女性のこうした声は、普段隠している女の部分を顕わにしたように感じられて最高だった。
 快感をさらに与え、玲子の女としての姿をもっと見てみたい。
 そんな想いが湧き起こり、乳房を激しく揉みしだきながら、乳首を吸って舐め回すのを繰り返していく。
「あっ、やぁっ……あっ、あんっ……」
 顎を仰け反らせ、少し逃げるようにしながら可愛らしく喘ぐ玲子の姿に、彼女を支配している実感が込み上げ、男としての悦びが溢れた。
 やはり女性がこちらの与えた刺激で乱れる姿は、何度見ても気持ちの良いものだった。
 特にずっと憧れてきた玲子ともなれば、その快感は強烈なものになっており、落ち着きが無くなっていくのが感じられた。
 自分でもどうしてここまで夢中になってしまうのか不思議なほど、玲子に対しては初心な反応になっていた。
 しかしそれは快楽という意味で考えれば、気持ちの良さが上がっている状況であるため、何も問題の無い事でもあった。
「あっ、あんっ……いいわぁ、神治くぅん、あっ、ああっ……もっとよ、あんっ……もっとしてぇ……」
 甘えるように誘い、さりげなく愛撫しやすいよう体を動かしてくる玲子は、抱いていて実に心地良い相手だった。
 何しろこちらが「こうして欲しい」と思える反応を示し、言葉や仕草にしても、男心を的確に擽るものになっていたからだ。まさに男にとって、「こんな女とセックスしたい」と思わせる良さがあったのである。
 優れた女優である事を考えれば、それらは全て計算尽くの演技かも知れなかったが、そうであっても構わないと思えるほどの素晴らしさがあった。本気か演技かなどどうでも良くなるほどに、玲子の魅せる姿は、まさに性的な女としての魅力に溢れていたからだ。
 また「それほどの女を抱けている」という事が、男としての自尊心を刺激し、強烈な誇らしさと悦びを得てもいた。
 その上「憧れの女性」という要素も加わり、さらには異常に興奮が高まっている事もあって、神治はかなりおかしくなっている自分を感じていた。
「れ、玲子さぁん……凄い、凄いです」
 まるで童貞だった頃に戻ったかのように、女体の素晴らしさに感動している感覚があった。
 初めて女の体に触れたあの時、伯母に誘惑され、その熟れた肉体を貪った時のような悦びが押し寄せ、爆発しそうなほどになっていた。慣れたはずの女体が新鮮に目に映り、玲子の反応一つ一つに、未知の悦びを味わっているような、そんな奇妙な状態になっていたのだ。
 首筋に舌を這わせて舐め回し、再び乳房に戻ってから、今度は下半身へと移動する。
 太ももに数ヶ所吸い付き、舐めた後、そのまま一気に足先まで唾液で塗装するようにして舌を這わせていく。
 玲子の体全てを味わいたい、己の物にしたいとする欲求から、とにかくその美麗な肉体を求めずにはいられなくなっていた。
「ああんっ……もっと落ち着いて、あっ……大丈夫よ逃げないから、あっ、あんっ……ちょっと、やっ……もう、可愛いんだからぁ……」
 快感の喘ぎをあげながらも、こちらの荒っぽい愛撫を受け止め、優しく甘えさせるように告げてくるのに嬉しさが溢れてくる。
 その事で益々童貞のような感覚が強まっていき、「自分はこの素晴らしい大人の女性相手に、初めてを捧げるのだ」といったおかしな想いまで起きていた。
 伯母との初体験の際に感じたような新鮮な悦びが押し寄せ、落ち着き無く、ただ女体を貪ることしか出来なくなっていた。本当に自分はどうしてしまったのかと思えるほどに、童貞のような状態になっていたのだ。
 そのせいか、もう我慢が出来なくなっており、早く入れたくてたまらなくなった。
 抑えきれない衝動に流されるまま、肉付きのいい両脚を開いて秘所を顕わにする。
 熟女らしい使い込まれた襞が目に映り、すでに潤みを帯びている肉襞が、誘うようにヒクヒクと蠢いている様に、「ここに入れたい。入れたらどれほど気持ちがいいだろう」という想いで一杯になった。
「いいのよ、いらっしゃい……神治くんの大きいの、私の中に入れてちょうだい……」
 こちらの想いを見透かしたように、玲子が優しく甘く誘いの言葉をかけてくる。
 それは男の欲情を刺激する声音であり、女の媚びに溢れた、魅惑的なものだった。
 神治は落ち着き無く首を縦に振ると、唾をゴクリと飲み込み、膝立ちになって挿入の体勢をとった。
 屹立した肉棒は、これから己が入り込む場所への期待からビクンビクンと震えており、先端からは先漏れの液が垂れていた。
 亀頭を膣穴へ近づけてから、一度大きく深呼吸をする。
「さ、いらっしゃい。私の中へ、入ってきて……」
 妖しい笑みを浮かべながら、いやらしく誘ってくる玲子にもう一度頷き、腰を前へと押し出していく。
 ズブリといった感触と共に、肉棒が膣穴へ入り込んだのが分かった。
 途端、快感が股間に溢れ、背中を駆け抜けて脳に達していく。
 何度も経験しているはずの気持ち良さだったが、今のこれはまるで初めて経験したような、そんな新鮮な、未知のものに思えて仕方なかった。
 実際体は、その刺激的な快感を存分に堪能しようとするかのように、硬直して動かなかった。
 そのまま徐々に体が馴染んでいくのが感じられ、ゆっくりと息を吐き出す。
「いいわぁ……あなたのオチンチン、入っただけで、凄くいぃ……」
 うっとりとした表情を浮かべながらそう告げられるのに、男としての自尊心が満足の想いを抱く。
 嬉しさから自然と腰が前へと動き、肉棒がゆっくり収まっていった。
「あ……はぁ……おっきぃ、あぁ……硬いわぁ……あ、あふ……私の中、擦られちゃってるぅ……」
 襞をかき分けながら徐々にハマっていく肉棒の感触に、玲子は甘ったるい吐息を漏らして体を震わせている。
 その様子は実に色っぽく、大人の女性を支配している感覚を強めて誇らしさが高まった。
 やはり熟女を抱くのには、若い女性を抱く際には存在しない悦びがあった。
 それは自分より立場が上の存在を征服している快楽と言えるものだろう。普通であれば、年上として敬わなければならない相手を従えている事が、気持ちの良さとして感じられるのだ。特に玲子は社会的地位も高く、能力的にも優れていたため、その想いは強くなっているように思えた。
 この女性を、もっともっと自分にひれ伏させたい。
 そうした強い衝動が湧き起こり、腰が勝手に前後に動き出していく。
「あっ、あっ、あんっ……いいわ、あっ……そうよ、そうして、ああっ……凄く上手、あっ……いいのぉ……」
 うっとりとした表情を浮かべながら、優しく誘うように告げてくる玲子に、強い甘えの意識と嬉しさが湧き起こった。
 優れた年上女性が自分を認め、褒めてくるというのには、何度経験しても慣れることのない喜びがあった。熟女に甘えながら導いてもらい、快楽に染まりたいとするマザコン的意識が刺激を受けているのかも知れない。
 肉体的にも、その熟れた柔らかな肉の感触は、こちらの荒々しい性衝動を包み込み、優しく吸収してくれる心地良さが感じられ、全てを委ねたくなる感覚があった。
 熟女とセックスする際は、多かれ少なかれそうした状態になっている訳だが、玲子との場合は、特にそれが強くなっている気がした。まるで母親を求める幼児のような意識になっているのだ。
「玲子さぁん、うぅ……玲子さぁん……」
 無茶苦茶に腰を振り、抜き差し擦ることで起きる快楽を味わう事しか頭に無い状態になっている。
 玲子の膣内で与えられる快感は、まるで初めてそれを知った時のような新鮮さがあり、夢中になって貪ってしまっていた。
 今の自分は、技術も何もなく、ただ肉棒を叩き付け、発生する気持ちの良さを求める意識しか無くなっていた。経験豊富であるはずなのに、完全に童貞少年の初体験のようになっていたのだ。
 だがその事が恥ずかしいという訳ではなく、むしろ喜びがあった。
 それはいつも伯母を抱く時に呼び起こされる初体験をした際の想いであり、それがより強くなっている感じだった。
 まさに今初めて女を抱いているような、そんな錯覚が、それも錯覚とは思えないほどに強烈な現実感のあるものとして感じられていたのである。
 それを証明するかのように、射精感までもがすでに限界になっており、必死に耐えなければならない状態になっていた。
「もう出そうなのね? いいわよ、出して、あっ、ああっ……あなたの出したい時に、あんっ……出していいのよ、ああっ、ああんっ……」
 色っぽく眉根を寄せながら、優しげにそう促してくるのに、強烈な嬉しさが込み上げてくる。
 玲子は自分の全てを許してくれる。全てを受け止めてくれるのだ。
 甘えられる女性相手のセックスに、マザコン的意識が歓喜の叫びを上げていた。
 この優しくも温かい、柔らかで素晴らしい女性の中に、自分の全てを吐き出したい。
 心地良い快楽が意識を蕩けさせ、ただ腰を振り、目の前の女体から快楽を得る事しか考えられなくなっていく。
 膣内の肉棒は、温かで柔らかな襞にもみくちゃにされ、吸い付かれ、我慢の限界に達していた。
 後は一気に精液を、自身の甘えと悦びの証を放出するだけだ。
 意識せずとも腰の動きが加速し、強く大きく肉棒を叩き付けていく。
「あっ、あっ、ああっ……凄いわ、ああっ……凄いの、あんっ……こんな凄いの初めてぇっ……」
 激しい突き込みに頭を何度も仰け反らせながら、玲子はいやらしく喘いだ。
 長い黒髪を振り乱し、シーツをギュッと握り締めて悶えるその様子は、映画で観た演技でのものとは全く違っていた。
 これこそが、玲子の女としての素の姿なのだ。
 男に身を委ね、快楽を貪る姿なのだ。
 許された男のみが目にする事が出来る、有名女優の真の乱れた姿なのである。
 それを自分は知った。
 玲子を一人の女として抱いたのだ。
 昔から憧れていた女優であり、魅力的で理想の女性だった玲子を、ついに己のモノとしたのである。
 その精神的快楽は、肉体的快楽を強烈に高め、射精感を一気に限界一杯にまで押し上げていった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……駄目っ、駄目っ、駄目ぇっ……わたしもう、ああっ……わたしもう、ああっ……わたしもう駄目なのぉっ……やっ、やんっ、やぁあああああああっ!」
 幼い少女のような可愛らしい絶頂の叫びを耳にした瞬間、肉棒の栓は一気に崩壊し、意識する間も無く精が放出された。
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドク……。
 肉棒が何度も何度も律動し、そのたびに快感の塊が脳に襲いかかってくる。
 膣内がウニュウニュと蠢き、強い吸引と共に肉棒を締め付けてくるのに、おかしくなりそうなほどの気持ちの良さを覚えていく。
 体の中身全てを吐き出しているような錯覚を抱きつつ、快楽で朦朧としている視界の中で、玲子の綺麗な容姿を認識する。
 自分は今、美しくもいやらしく、そして優れた女性である玲子の中へ精液を吐き出している。その美麗な肉体の中へ、己の遺伝子を注ぎ込んでいるのだ。
 何と素晴らしい事だろう。
 あまりに幸せすぎる状況だった。
 そんな感慨を抱きながら繰り返し射精を行った神治は、しばらくしてようやく精を放ち終えると、脱力して倒れ込んだ。
 柔らかな女肉が受け止めてくれ、その心地良い感触に大きく息を吐き出す。
 目の前では、ボーッとした顔の玲子が、微笑みを浮かべながら荒い呼吸を繰り返していた。
 少しして背中に腕が回り、抱き締められると共に、頭を優しく撫でられるのに、ホッとした想いを抱く。
「ね、気持ち良かった?」
「はい。凄く気持ち良かったです」
「そう。私も凄く気持ち良かったわよ……あなたって凄くいいわ。こんなに気持ち良かったのは初めて……ふふ、冴美が夢中になってるのが凄く納得出来ちゃった……」
 甘えるように体全体を擦り付けてくるのに、ゾクリとした快感が起きてくる。
 しっとりとした肌と柔らかな女肉の感触に、肉棒があっという間に力を取り戻していくのが感じられた。
「もう元気になってる。凄いのね……って、私さっきから『凄い』しか言ってないわ。それだけあなたにおかしくさせられちゃってるって事ね。このオチンチンにそうされちゃったのよ……ホントいけない子。でも素敵な子ね。私、あなたに夢中になっちゃってるわ……ね、そういうのは嫌? 私があなたに夢中になるのって困る?」
「全然困りません。むしろ凄く嬉しいです。俺、昔から玲子さんの事、映画で観てきて、ずっと憧れてたんです。だからセックス出来たのって凄く嬉しいですし、それで玲子さんが俺に夢中になってくれたなんて、凄く嬉しいですよ」
「ふふ、私もそう言ってもらえて凄く嬉しいわ……ね、それじゃもっとしましょう? あなたが満足するまで、私のこと、好きなだけ抱いていいから……ううん、私が満足するまで抱いて欲しいの。そうしてくれるかしら?」
「もちろんです。玲子さんが満足するまで、俺、何度でも抱きますよ。いえ、抱かせて下さい」
 おねだりするように誘ってくる玲子を、強く抱き締めながらそう応える。
 憧れの女優にここまで求められるとは、何と幸せな事だろうか。
 理想的な熟女を好きなだけ抱くことが出来る。
 何度も甘えるようにして抱き、魅惑的な肉体を思う存分味わう事が出来るのだ。
 それはあまりに素晴らしすぎる事だろう。
 そのたまらない状況に涎を垂らしそうになりながら、神治は痛いほどにいきり立った肉棒を持つと、再びその熟れた膣の中へと押し込んでいくのだった。


「あんっ、ああんっ……いいわ、いいのぉっ……もっとよ、もっとしてぇ……」
 甘ったるい褒め言葉と共に、均整のとれた肢体が体の上で乱れていた。
 横たわった神治に跨った玲子は、長い黒髪を振り乱し、いやらしい笑みを浮かべながらリズミカルに腰を前後させている。
 こちらを見下ろす姿は、女王のような気高さを感じさせつつも、菩薩のような慈愛に溢れていた。
(ああ……これってあの映画と同じだ……俺、あの映画と同じになってる……)
 脳裏に浮かぶのは、中学生の頃繰り返し観、そして散々自慰のネタにした玲子出演の映画だった。
 玲子演ずる父親の愛人と、大学生の息子との濡れ場だ。
 横たわった息子の上に愛人が跨り、熱心に腰を振って悶えるシーンは一番のお気に入りであり、射精する際はいつもそこでしていた。
 玲子のような有名女優の裸、特に豊満な乳房がよく見えるこの体位での描写は、童貞中学生だった自分にとって強烈な興奮をもたらすものだったし、何より「背徳的な肉体関係」という設定が強烈にそそったため、他のオカズとは比較にならない素晴らしさがあったのだ。
 自分も将来こんな体験がしてみたい。
 そう何度も思ったものだったが、それが今実現していた。それも愛人役をしていた女優その人と、という状況でだ。
 映画では玲子を正面から映す視点だったが、今は見上げる状態になっており、優しく温かな瞳がこちらを見下ろしている。
 そこは背徳行為に苦悩した表情を浮かべていた映画とは違っている部分だったが、その事が気にならないほどに幸せな気持ちで一杯だった。
 こうして玲子と繋がり合い、快楽を与え合い、見つめ合っていると、自分の全てが玲子に依存し、委ねている嬉しさが込み上げてくる。
 あれから何度も交わっているが、抱けば抱くほどにそうした意識は高まり、玲子を求め、このままずっとセックスしていたくて仕方のない気持ちが溢れていた。それだけ玲子との交わりは心地良く、安堵感と快楽の混ざり合った、強烈に素晴らしいセックスとなっていたのだ。
 肉体的な快楽だけで言えば、神とのセックスの方が強いと言えただろう。
 しかし玲子との交わりには、心の快楽とも言うべき要素があった。
 母や伯母を抱く際に存在する、甘えの快楽。熟女に母性を求め、満たされるマザコン的快楽だ。
 それに初体験の際に認識した女体の素晴らしさ、あの感動的な心地良さも起きているのであり、言わば童貞を失った際に得たセックスへの歓喜といったものが、津波のように押し寄せてきていたのだった。
 未知だった女体の素晴らしさを知った感動。その悦びを何度も経験していると言えばいいだろうか。
 すでに慣れたはずの女の体が、凄く新鮮に、魅惑的に思えているのであり、その事から心身共に玲子への執着が強烈になって、満足する事なく何度も求める状態になっていたのである。
「ああっ、凄い、凄いわ、あんっ……神治くん凄くいいっ……わたしっ、わたしぃ、あっ、あぅっ……イっちゃう、イっちゃうのぉっ……あっ、あっ、あぁあああああああっ!」
「うぅっ!」
 玲子が絶叫を上げながら体を仰け反らせた瞬間、膣内が強く締まり上がり精が迸った。
 それは神治の意思で放ったというより、無理矢理吸い出されたような感じであり、その不意打ちとも言うべき射精の快感に、衝撃的な気持ちの良さが押し寄せてくる。
 玲子と繋がり合い、その胎内に射精するのは、何度経験しても蕩けるほどに心地良い行為だった。筆下ろしの時の、初めて女の中に精を放っているような、そんな新鮮で魅惑的な、強烈過ぎる快感が、心と体に襲いかかってきていたのだ。
 そしてそれゆえに止めることが出来ず、何度も何度も玲子を求め、その膣に精液を注ぎ込みたいと欲していた。
 射精を終えると、膣内がいやらしく蠢きだし、それによって肉棒があっという間に回復していく。
 そうした肉体的な刺激だけでなく、目の前にある玲子の包み込むような慈愛に満ちた表情を見ていると、自分の全てを委ね、甘えるようにして抱きたくてたまらなくなった。
「玲子さぁん……」
 幼児のような口調で呼びかけながら体を起こし、美しく柔らかな肉体を抱き締める。
 顔を双乳に押しつけ擦り付け、そのまま乳首を口に含んで数度吸引すると、頭に手が置かれて優しく撫でられ始めた。
 その赤ん坊のようにされている状態が凄く心地良く、強烈な安堵感が押し寄せてくる。
 それと共に、膣内に収まっている肉棒がビクンビクンと震えを示し、この安心出来る女体の中へもっともっと精を放ち、自分の全てを注ぎ込み、一つになりたいとする想いが強く湧き起こってきた。
 子宮という生命を生み出す場所へ戻りたいと欲する衝動が起きている感じであり、それは母を抱く際に抱く思慕であったが、近い年齢であるせいか、玲子に対しても似たような感覚が起きているようだった。
 抱いている最中、ずっと母性を感じている事も大きいのだろう。甘えながら快楽を味わいたいとする、母や伯母とセックスする際に得ている悦びを感じていたのだ。
 しかもそれが強烈になっていたため、今の自分は玲子にかなり依存している状態と言えた。
 とにかく玲子を求め、玲子と触れていなければ安心出来ない、幼子のような感覚を伴いながら抱き続けていたのである。
「玲子さぁん……俺、もっともっと玲子さんが欲しいです。玲子さんの中に入りたくてたまらないです……チンポだけじゃなく、俺の全てを玲子さんの中に、玲子さんの中に入れたい。俺の全部を入れたい……玲子さんに俺の全てを貰って欲しいです……ああ、玲子さん、玲子さぁん……」
 魂すら捧げたくなるような強烈な依存心が湧き起こり、強く抱き付きながら押し倒していく。
 普段部の民の女性達が告げてくる言葉を、自身が口にしている事に苦笑の想いを抱くが、それだけ玲子に対しては、異常なまでに執着を得ていた。
 何故そうなっているのか分からなかったが、何にせよ心地良くて幸せな気分になっているのは確かだった。
「いいわ、いらっしゃい。私の中に入ってきて……オチンチンだけじゃなく、神治くんの全てを私にちょうだい……あなたの全部を包んで、受け入れてあげる……あなたの全てを貰ってあげるわ……」
 優しく甘く囁くように告げながら、玲子は強く抱き締めてきた。
 背中に両腕が回り、腰に両脚が絡んで、体全体で包むようにしてくるのに、強烈な幸福感を抱く。
 玲子の言葉通り、己の全てが玲子の中に取り込まれたかのような錯覚が起こり、強い安堵を覚えながら、腰を勢い良く前後に動かし始める。
「あっ、あっ、ああっ……そう、そうよ、あんっ……そうしてもっと奥に、ああっ……私の中に入ってきてぇ……」
 すでに目一杯奥まで挿入している以上、さらに奥へは入れない訳だが、是非ともそうしたいという想いから、貫かんばかりに肉棒を叩き付けていく。
 一物の付け根と秘所が強くぶつかり合い、鈍い痛みが起きる。
 しかしそれが気にならないほどに、夢中になって腰を振りまくっていた。そうしていれば、いつかもっと奥へと入り込めるのではないかという想いがあったからだ。
 その願いが通じたのか、不意にググッと奥へ収まっていくような感覚が起きた。
 肉体的にあり得ない現象であるため、おそらく意識の高まりからくる錯覚なのだろうが、そうだとしても実現した事に嬉しくなる。
 喜びは錯覚を助長するのか、肉棒が膣の奥よりさらに進み、子宮の中まで入り込んで、突き抜けていっているような感覚を覚える。
 体の一部が重なり合い、より深く奥まで自分の全てが収まっている感じであり、玲子の奥の奥まで入り込み、体が融合して一体化しているような、そんな状態になっていた。
 完全に錯覚、というより幻覚と呼べる状態だったが、それでも叶った願いに喜びは強まっていった。
「ああっ、入って来る、あっ、あんっ……神治くんが入って来るわぁっ……凄い、ああっ……こんな奥まで、あんっ……入って来ちゃってるぅ、あっ、ああっ……神治くんが全部入ってきて、あんっ……私と一つに、あっ、ああっ……私と一つになっちゃってるぅっ……」
 どうやら玲子も同じ錯覚を得ているらしく、甘く喘ぎながらそんな事を呟いている。
 何故このような状態になっているのか訳が分からなかったが、凄く気持ちがいいというのだけは確かだった。
 疑問はあったが、それがどうでも良くなるほどに、押し寄せてくる快楽は強烈であり、このままもっと玲子と一体化し、さらに気持ち良くなりたくてたまらなかった。
 そうした想いが腰の動きを速め、大きく強く肉棒を叩き付けていく。
「あんっ、ああっ……凄い、ああっ……凄くいい、ああっ……神治くんと一つになってるの、ああっ……すっごく気持ちいいわぁっ……」
 玲子の表情は虚ろなものと化しており、明らかに快楽でおかしくなっている状態だった。
 彼女の腕と脚に力がこもり、引き込もうとする動きをしてくると、実際に奥へと入り込んでいく感覚が起き、体の前半分が混じり合って、一体化しているような認識を得た。
「やっ、やぅっ……何か変、ああっ……わたし変よ、あんっ……神治くんと本当に一つに、ああっ……体がくっついちゃってるみたいに思えてる、やっ、やぁんっ……それに、ああっ……もう気持ち良すぎて、あんっ……おかしくなっちゃうぅっ……」
 先ほどまで真横から聞こえていた玲子の声が、頭の中で響いているような感じがあった。
 視線を横へ向ければ、確かにそこに玲子の顔があり、唇も動いているのだが、声自体はそこからは聞こえず、頭の中へ直接響いてくるのだ。
 おかしい。
 明らかにおかしな状態だった。
 しかしそうであっても、いやだからこそなのか、感じている快楽は、これまでとは比較にならないほどに高まっているように思えた。
 本来常人でしかない玲子相手に、ここまで意識が快楽に染まるなどあり得ない事だった。
 しかし現実として、抑えようとしても抑えられないほどに気持ちの良さが押し寄せ、それに流されてしまっている。
 部屋の中は異常なほどの淫の「気」で溢れており、肉欲が昂ぶって止まらない状態になっていた。
「あんっ、やっ……凄くて、あっ……凄い、ああっ……こんなの凄すぎて、あんっ……わたしもう駄目ぇっ……」
 玲子は自身の状態に恐怖を感じているのか、それともおかしくなったゆえか、強くしがみつき、引き寄せてきた。
 その事で一体化がさらに進んだように思え、もうどこからが自分で、どこからが玲子なのか分からないほどに、互いの肉体の境目を認識出来なくなっていた。
 肉棒を突き込んでいるはずが、突き込まれているような感じもし、自分が自分を抱いているような、そんな訳の分からない感覚になっていたのだ。
 そして気持ちの良さもそれに合わせて強まっており、意識の全てが快楽に染まっていくのが感じられた。
「ああっ、あぅっ……やんっ、やぁっ、やぁんっ……イくっ、イっちゃう、ああっ……わたしどこかイっちゃうぅ、やっ、やぁっ……わたしの全部がどこかへ、ああっ……どこかへイっちゃうよぉっ……」
 幼さを感じさせる喘ぎを漏らしながら、玲子の、いや、神治の体が激しく悶えた。
 すでに一つになっているとしか思えない肉体は、与え、与えられる快感で満ちており、迫ってくる射精感と絶頂感に、己の全てがどこかへ吹き飛んでしまうような感覚で一杯だった。
 これまで経験した事のない未知の快楽。
 それが目前まで迫っていた。
「ああぅっ、ああっ……はぅっ、はっ、はぁんっ……わたし、ああっ……わたしもう、あんっ……わたしもう飛んじゃうぅっ……あっ、ああっ……あぁああああああああああっ!」
「うぁああああああっ!」
 二人の、だが一人に思える絶叫が響き、同時に精が迸った。
 精液を吐き出す感覚と、注がれている感覚が同時に押し寄せ、意識が強烈な快楽に染まっていく。
 肉棒が律動するたびに気持ちの良さが脳を揺さぶり、子宮が収縮を起こして体全体に悦楽が駆け抜け、意識が真っ白になり、強烈な快感以外、何も感じられなくなっていった。


 あれからどれくらい経ったろうか。
 ぼんやりする頭でそう考えた神治は、不意に自分が普通ではない状態になっている事に気づいて驚いた。
 視点がやたらと高い位置にあり、天井から部屋を見下ろしていたのだ。
 無意識の内に宙に浮く術を使ってしまったのだろうか。
 そう考えてみるが、視線をベッドへ向けた瞬間、ギョッとなると共に、その考えが間違っているのを理解する。
 何しろそこには、紛れもない自身の姿があったからだ。
 四つんばいになった玲子の背後で、熱心に腰を振っている己の姿だ。撮影した動画を見ているかのように、セックスしている自分を客観的に目にしていたのである。
 天井付近で浮いているはずなのに、ベッドの上でも玲子とセックスしている。
 まるで己が二つに分裂してしまったかのようであり、実に不思議な感じだった。
 何がどうなっているのかと一瞬混乱しそうになるが、これもいつもの非常識な事だと納得し、状況を把握しようと努める。
 少し考えてから、ふとある事に思い至った。
 もしかするとこれは、魂と肉体が離れている状態、つまり幽体離脱をしているのではないだろうか。
 最近その言葉をよく耳にし、また実際にしていた人間と関わった経験から、そうした推測が思い浮かんだ。
 事実、意識の存在するこちらの体は透けていて、いかにも幽体という感じだったし、フワフワとして地に足が付いていないというのもそれを思わせた。
 ただ気になるのは、こちらの意思とは関係なく、肉体が勝手にセックスを続けているという点だった。
 そうした状況自体はよくある事ではあったが、その様子を離れた場所から客観的に見ている、という事に奇妙な感じを覚えたのだ。
 何故このような状態になっているのか。
 そんな疑問が起きてくるが、何にせよ早く体へ戻った方が良いだろう。魂と肉体が離れているというのには、あまり良い印象を覚えなかったからだ。
 そう考え、体の方へ近づいていこうとした瞬間だった。
 不意に妙なモノが目に映ったため、ギョッとなって動きを止める。
 肉体の腰の辺りに、何か長いロープのような、よく分からないものがくっついているのが見えたのだ。色も黒みを帯びた赤というか、肉の色と言うべきか、どうにも生々しい雰囲気のモノが存在していたのである。
 しかも微妙に震えを示していたため、まるで生物の一部であるかのように思えて気味が悪くなった。
 例えるならアニメや漫画に出てくる触手の化け物、といったところだろうか。まさにそんな感じのモノが、自分の腰にくっついていたのである。
 よく見れば、触手はもう一本存在し、そちらは玲子の腰へと繋がっていた。
 二本の触手はベッドの傍にある壁へと伸びていて、そこから生えているような感じだった。
 一体これは何なのか。
 何故自分と玲子の腰にくっついているのか。
 そう考えながら触手の様子を見ていると、ふとある事に気づいたため硬直する。
 自分と玲子の体の動きと、触手の蠢きが一致しているように見えたのだ。
 というより、触手の蠢きに合わせて自分たちの体が動いている、と表現した方がいいだろうか。まるで触手に操られて動いているような、そんな印象を覚えたのである。
 まさかそのような事はあり得ないだろう、と思ってはみるが、事実目の前ではそうとしか思えない動きが繰り返されていた。
 ふいに脳裏に、昔見たホラー映画の一シーンが浮かぶ。
 この触手のような気持ち悪い宇宙生物に寄生され、次々と人が襲われる内容のものだ。
 あの映画のように、自分と玲子も触手に寄生されかけているのではないか。
 その想像にゾッとなる。
 早くこの触手を引きはがさなくては。
 恐怖から幽体が勝手に動き、震える手が触手を掴んでいく。
(!……)
 瞬間、凄く嫌な感触が手のひらに起こり、それと同時に、股間に強烈な快感が走り抜けた。
 予想外の刺激に驚き、思わず手を放してしまう。
 今のは何なのか。
 実に強烈な嫌悪感と快感だった。
 特に快感の方は凄まじく、もし幽体ではなく肉体で触れていたら、瞬間的に射精してしまったのではないかと思えるほどのものがあった。
 これほどの快感を与えてくるとは、この触手はどういう存在なのか。
 疑問と恐怖で頭が混乱しそうになる。
 だが怖じ気づいてはいられなかった。
 早く引きはがさなければ、先ほど想像したホラー映画のような状況にならないとも限らないからだ。
 大きく息を吐き出すようにし、意を決して再び触手を掴んでいく。
 瞬間、先ほどと同じように強烈な嫌悪感と快感が起こるが、今度は事前に分かっていたため、意識を強く持って耐えつつ、何とか引き離そうとしていく。
 しかし触手は思ったよりもしっかりくっついていて、力を込めても動かなかった。
 その間も凄まじい嫌悪感と快感が幽体に走り抜けており、油断していると力が抜けそうだった。
 それに何とか耐えつつ、必死に引っ張っていると、不意に目の前にある自分の体が硬直したため驚く。
 続けてガクガクと震えが走り抜け、口から呻き声が漏れ聞こえた。
 どうやら射精をしているらしい。
 玲子も絶頂の叫びを上げ、仰け反って喘いでいた。
 自身の射精の瞬間を客観的に目にするというのは何とも奇妙な感じだったが、興味を引かれる事でもあったため、思わず見入ってしまう。
 そしてある事に気づいた神治は、恐怖のあまり手を放してしまった。
 触手の蠢きがそれまでと違って、膨張と収縮を小刻みに繰り返しており、まるでポンプが水を吸引するような動きになっていたのだ。
 それはまるで、自分たちの体の中から何かを吸い出しているようであり、その想像に背筋が凍り付く。
 恐ろしさに幽体を震わせながら、それを振り払うようにして再び触手を掴むと、それまで以上に力を込め、思い切り引っ張る。
 ズルリという気持ちの悪い感触と共に触手が腰から離れるのが見え、自分の体が小さく痙攣を示し、玲子の腰を抱えた膝立ち状態のまま固まった。
 触手が離れると同時に動きを止めたという事は、やはり操られていたのかも知れない。
 その推測に気色悪さと恐怖を感じつつ、続けて玲子にくっついている触手の方も一気に引き離していく。
 玲子の唇から「ああぅ……」という小さな呻きが漏れ、そのまま脱力したように動きを止めた。
 自由になった二本の触手は、見失った獲物を探すように宙でウネウネと蠢いており、その気色の悪い様に吐き気を催す。
 このようなモノが触れていたとは、何と気持ち悪い事だろう。しかも自分たちの体を操り、体内から何かを吸い出していた可能性もあるのだからたまったものではなかった。
 もう二度と体に触れさせてなるものか。
 そう決意し、自分と玲子の体の周囲に小さな結界を張っていく。
 それが功を奏したらしく、触手は二人の体に近づく事はあっても、接触する事は出来なくなった。
 ホッと息を吐き出して力を抜きつつ、この触手をどうしたものかと考える。
 このままここに放置しておく訳にもいかないし、かといって追い払う方法など分からなかった。
 そもそもこれは一体何なのだろう。
 現実では見たことも聞いたことも無い、フィクションの中の存在としか思えない生物だったが。
 とはいえ、事実目の前に居る以上、否定する事は出来なかった。
 この触手は確かにそこに存在し、自分と玲子に取り憑いていたのだ。
 その事に改めて気色の悪さを覚えつつ、未練がましく二人の体の回りで蠢いている様子を注視していく。
 次の瞬間、不意に触手の動きが止まったためギョッとなった。 
 もしや攻撃してくるのでは? と思い幽体に力を入れて身構えるが、予想に反し、触手はこちらへ向かってくることなく、逆に離れる動きを示した。
 まるでホースが巻き取られるようにして移動し、壁の辺りまで到達した部分は、吸い込まれるようにして消えていっていた。
 突然のことに呆気に取られつつ眺めていると、あっという間に触手の全てが消えてしまった。
 少しの間様子を伺っていたが、特に何も起きなかったため、安堵の息を吐き出しつつ、触手が消えた壁の近くへと寄ってみる。
 どうなっているのかを調べてみると、そこには「気」の淀みが存在していた。
 それは瞬間移動する際の「気」に似たものであったため、おそらくその類の術が使われていたのだろう。
 どうやらあの触手は、別の場所からこの部屋へ空間転移して来ていたらしい。
 何故この部屋へ現れたのかは不明だが、再び入ってこられないようにした方が良いのは明らかだった。いくら玲子が霊的な事に鈍感とはいえ、ああして何か吸い出されるような事をされていたとすれば、悪影響が無いとは言えないからだ。
 取り敢えずの応急処置として、簡易の結界を張ることにし、壁周辺に処置をしていく。
 作業を終え、これで一安心と大きく息を吐き出すようにすると、改めて何とも非常識過ぎる出来事だったという想いを抱く。
 これまで色々と似たような経験をしてきたが、ここまで気持ち悪いのは初めてだった。
 一体あの生物は何なのか。
 どうして自分や玲子に取り憑いていたのか。
 疑問はいくらでもあった。
 しかしこうして考えていても答えが出るはずもなかったため、取り敢えずは体へ戻ろうと、自身の体に幽体を重ねるようにしてみた。以前幽霊男がそうして体に戻っているのを見ていたからだ。
 実際それは上手くいき、すぐに肉体の感覚が感じられてきた。
 途端、激しい疲れが押し寄せ、すぐさまベッドへ横倒しになる。
 荒い呼吸をしながら、数度セックスした程度ではあり得ないその疲労に、強い恐怖心を抱く。
 どう考えても今の状態は、あの触手の影響であるように思えたからだ。やはり肉体に何かされていたのかも知れない。
 その事にブルッと体を震わせつつ、そう言えば玲子は大丈夫だろうかと心配になった。
 神である自分は問題なくとも、常人でしかない玲子には、何か不具合が生じている可能性があったからだ。
 しかし次の瞬間、隣から大きな寝息が聞こえてきたため安堵の息を吐き出した。
 顔を覗き込むと、熟睡しているようで、玲子は気持ち良さげな表情を浮かべていた。あまりに疲れたため、体が休息を求めたのだろう。
 自分もかなり眠くなっていて、目を開けているのが辛いくらいだった。今までは触手への警戒から気が張っていたが、安心したせいか眠気が襲ってきたのだ。
 少し休んだ方がいいと判断した神治は、夜までには目を覚まさなきゃな、などと考えつつ、意識の手綱を手放していくのだった。


 あれから緋道村へ赴いた神治は、今日起きた事を未迦知神に報告する事にした。
 あまりに訳の分からない状況だったし、何より触手の存在が謎であったため、話しておいた方が良いと思ったのだ。
 だが何か話すまでもなく、未迦知神は開口一番、次のようなことを告げてきた。
「神治よ、何じゃその『気』は? そのようなモノとどこで出会うた」
 どうやら触手の「気」が体に残っていたようで、普通ではない出来事に出くわしたのをすぐに察したらしい。
 その事を「さすがだ」と思いつつ、これならば話が早いとばかりに詳しい説明をしていく。
「なるほどの、面白い事になっておるな。空間転移をして獲物を得るか。そのような事をしておる淫妖がおるとはの」
 未迦知神の呟きに、予想外の単語を聞いたため驚く。
「淫妖って……あの触手が淫妖だって言うんですか?」
「さようじゃ」
 その言葉を意外に思う。自分の知っている淫妖は、姿が見えず、幻影を用いて獲物を襲う生物だったからだ。
「でもあの触手は幻影なんか使わなかったですし、姿だって見えましたよ」
「村に現れる淫妖とは別物という事じゃな。今回お主が出会おうたのは、異なる種類の淫妖じゃろう」
「異なる種類って……淫妖って色々いるんですか?」
「さよう。『淫妖』という呼び名は、性的な化け物の総称じゃからの。ゆえに様々な種類がおるのよ」
 それは初耳だった。
 だが動物にも様々な種類がいるのだから、淫妖がそうであっても不思議ではないだろう。そして今日自分は、緋道村に現れるタイプとは異なる淫妖と出くわしたという訳だ。
「交わりの際におかしな感覚を覚えて異常に興奮したのであろ? 特にお主にとって欲情しやすい母親への思慕的肉欲を強く刺激されたというのは、意識の深いところまで読み取られたゆえとしか思えん。そうして獲物を最も快楽に狂う状態に染め、生命力をより放出させるのは淫妖の手口じゃからな。その触手はどう考えても淫妖じゃわい」
 なるほど、あの時やたらと興奮し、玲子に対してマザコン的肉欲が強まったのは、あの触手のせいだったという訳だ。
「おそらく部屋へ入った際にでも憑かれたのじゃろうて。お主は大量の『気』に動揺しておったようじゃから、いくらでもそうする隙はあったであろうからの」
 確かにあの時は、あまりの「気」の凄さに注意力が散漫になっていたため、そうされていても気づけない可能性はあった。
「部屋から出ようとした際に邪魔をされたのじゃろ? せめてその時に気づけなければな。何かの存在を感知したのだとすれば、しっかりと調べなければいかんわ。全く何をやっておるのやら」
 呆れたように言われてしまうのに縮こまる。全くその通りの未熟な失敗だったからだ。
「とはいえ、それ以前に術中にハマっておったのだとすれば、気づけなくとも仕方ないがの」
「え? どういう意味ですか?」
「お主は部屋へ入るよりも前に、すでに淫妖の術にかかっておったという事じゃ。おそらく食事の際にでもやられたのじゃろう」
「それってつまり、あのレストランに淫妖が居たって事ですか?」
 それは何とも恐ろしい想像だった。
 あのように多くの人間が訪れる場所に淫妖が居るなど、あまりに危険すぎる事だからだ。
「そうではない。淫妖自体はその場に居なかったじゃろう。一緒に居ったおなごにやられたのよ」
「おなごって、玲子さんですか? それってどういう……」
「おそらくそのおなごは、淫妖の木偶(でく)にされておったのじゃろう」
「木偶……?」
「淫妖の虜にされた人間の事じゃ。何かしらの術を仕込まれ、獲物を誘い込むよう操られる存在じゃな」
 その言葉に絶句する。淫妖の虜にされ、操られるなど、そのような事があるのだろうか。
「お主が部屋へ誘われる直前に、そのおなごの事を強く意識するようになったのも、術が発動したせいだと考えるとしっくり来るしの」
 言われてみれば、食事の後、二人きりになった際に急に玲子を性的に意識するようになった。
 それまでそんな事は全く無かったのに、突然そうなったのだ。童貞の頃の玲子に対する性的憧れが強く思い出され、彼女に対する肉欲が高まったのである。
 あれが術の影響だとすれば、そうした急激な変化も納得出来ることになった。
「以前から部屋の周辺に嫌悪を与える『気』が存在していたという事からしても、その部屋が淫妖の狩り場となっていたのは確実じゃろう。淫妖の狩り場の中で暮らすなど、木偶にでもされておらねば無理じゃからな。いかに鈍感じゃというても限度というものがあるからの。実際お主が部屋で感じた『気』は、常人が耐えられるものではなかったのであろ?」
 確かにあの大量で強烈な嫌悪感をもたらす「気」の中で生活出来るなど、あまりに異常すぎた。いくら玲子が霊的なことに鈍感だとしても、あの「気」の状態はそれ以上に強烈なものがあったからだ。まともな感覚であれば、とても暮らしていく事など出来ないに違いない。実際同じ階の住人は、皆気味悪がって引っ越してしまっているのだ。
「でもその狩り場、ですか? どうして玲子さんの部屋がそんな状態に……っていうか、淫妖ってそういう習性のある生き物なんですか?」
 村へ現れる淫妖は、道ばたでいきなり襲ってくることが多く、その場所もまちまちで、狩り場のような特定の場所で襲うという話は聞いたことがなかった。
「都会のように人も多く建物も多い場所じゃと、隠れて獲物を襲うのが多い感じじゃな。その方が退治されにくいゆえ、奴らなりの知恵というか本能によるものなのじゃろう。それに今回のような淫妖は、ちびちびと生命力を吸う種類じゃからの。一度に奪う量が少ないゆえ、獲物の数を増やそうとし、木偶にしておる獲物に、新たな獲物を連れてこさせるのよ」
「つまり玲子さんは、そうした淫妖に取り憑かれていて、それで俺を新しい獲物として淫妖に差し出すために誘ってきたって事ですか?」
 そう考えると恐ろしさを覚えたが、それとは別に悲しくもなった。
 何しろ今の理屈からすれば、玲子は自分を気に入って誘惑してきたのではなく、淫妖の獲物になるのであれば誰でも良かったという事になるからだ。
「何を残念そうな顔をしておる。己が誘われたのが淫妖に操られたせいだと知って落胆しておるのか? ふん、自意識過剰なやつめ。少しくらいおなごに不自由せんようになったからといって、調子に乗っておるからそんな風になるのじゃ。いい気味じゃの」
 皮肉げに言われてしまい、恥ずかしくなって縮こまる。
 それは否定できない指摘だったからだ。もうかなりの間、気に入った女性とは必ずセックスしてきたため、「自分の魅力で抱けて当然」という意識になっていたように思えたのだ。
「まあ、お主のことも気に入っておったとは思うがの。いくら淫妖が意識を操れるとはいえ、気に入らぬ相手に抱かれる事を強要出来るほどの力があるとは思えぬゆえ。せいぜい男を求める意識に抑えを効かなくさせる程度のものじゃろうて」
 その言葉にホッとなる。あの時の玲子の誘惑が全て操られてしていたこと、つまり嘘だとするのは悲しすぎたからだ。しかしそれが単に欲情に抑えが効かなくなった、という事であれば、自分への好意に嘘は無いことになるため嬉しかったのである。
「だからといって調子に乗るでないぞ。そうした事が油断に繋がり、今回のようにあっさりと淫妖に取り憑かれてしまう結果になるのじゃからな。反省せい」
「はい……」
 結局叱られてしまった事にガックリとなる。
 普段は甘い未迦知神だが、こと修行と女性関係に関しては厳しい部分があった。特に女性を軽く扱うような意識に対してはかなり厳しいのだ。
 今回の事を戒めとして、そうした意識を持たないよう、注意していかなければいけないだろう。そうでなければいつまで経っても未迦知神に叱られてしまうし、何より油断による失敗などもうしたくはなかったからだ。
「それにしてもその淫妖、何故そのおなごの部屋へ現れたのかの。その部屋というのは、それほど淫の『気』で淀んでおったのか?」
「いえ、嫌な『気』は凄かったですけど、淫の『気』は特に……」
 淫妖は淫の「気」に惹かれて現れるが、あのマンションにしろ玲子の部屋にしろ、特に強い淫の「気」は感じられなかった。
 無論、ある程度の淫の「気」は存在していたが、それは淫妖が現れた結果としてのものであるように思え、元々あの場所がそうした状態だったという感じではなかった。
 実際あの淫妖が去った後は、淫の「気」が薄くなったくらいなのである。
「そうなると、淫妖が現れた原因は『場』ではない事になるな……もしやそのおなご、元々何かしら淫妖と因縁があるのやも知れんな……」
 未迦知神の呟きに嫌な感じを覚える。何しろ淫妖と因縁があるというのは、自分にも当てはまる事だったからだ。
「因縁、ですか?」
「うむ。一度淫妖に関わると、別の機会にまた淫妖と関わる、という事はよくあるでな。そのおなごが過去にそうした経験をしておっても不思議ではない」
 事実まさに自分は今回そうなっていたため、否定出来ない推測だった。
「淫妖の残した淫の『気』が、別の淫妖を引き寄せると言われておるな。ゆえにそのおなごも、下手をしたらまた別の淫妖に襲われる可能性もある訳じゃ。ゆえにしばらくは気をつけてやることじゃな」
 その言葉に頷く。だが自信を持って「守ります」と言えないのが悲しいところだった。
 本来自分は神であるのだから、淫妖など余裕で退治出来る力があるのだが、淫妖に対する苦手意識からそれが出来ないのだ。今回の件にしても、いくら突然だったとはいえ、対処するどころか、淫妖に好き放題されてしまったのだから、あまりに情けない事と言えただろう。
「何じゃ、まだ淫妖が相手となると駄目か? お主自身が淫妖と一体化しておるというのに、妙な話じゃわい」
 呆れたように言われてしまうのに恥ずかしくなる。
 だがどうしても駄目なのだから仕方ないだろう。それだけ穂智過に襲われた記憶は、強く心に刻み込まれているのだ。
「今回は上手く出来たではないか。追い払えたのであろう? 少しは自信を持てんのか?」
「それはそうなんですけど……」
「力としては十分にあるのじゃがな。まあ、お主は暴走せんとあまり力を使えんから仕方ないかの。平常心でも十分に力を発揮出来れば良いのじゃが、追い詰められんと出せんからのぉ。ほんに情けない事じゃ。未熟じゃわい。これからも精進せいよ」
「は、はい……」
 再び叱られてしまった事に悲しくなりつつ、全くその通りでしかない事に益々悲しくなる。
「今回幽体になった感覚を思い出して力を使うようにするのじゃな。肉体に縛られた意識からの脱却こそが、自在に力を使えるようになる道ゆえ」
 未迦知神の言葉に頷きつつ、これからはそう意識していこうと肝に銘ずる。
 幽体での感覚は、今でもぼんやり覚えているが妙な感じだった。フワフワと宙に浮いており、文字通り地に足が付いていないのだ。
 幽霊男がしていた事から考えれば、物を擦り抜ける事も可能で、おそらく壁なども通り抜けられるのだろう。まさに肉体、というか物質に縛られない状態だった。
「そういや何で俺、幽体になったんでしょう? 普通にセックスしてただけなんですけど。これもやっぱりあの淫妖のせいなんでしょうか?」
「無関係とは言えんじゃろうな。無意識の内に危険を察知し、淫妖から逃れようとしたとも考えられるからの。実際幽体になった事で淫妖の呪縛を逃れ、対処する事も出来た訳じゃしな。相変わらず自覚無しに上手い事するヤツじゃわい。そういう意味では大物じゃよお主は」
 苦笑されながら言われるのに恥ずかしくなる。
 状況に合わせて予想外の異能の力が発動するのは、これまでも何度かあった事であり、その度に未迦知神にからかわれるように指摘されていたのだ。
「まあ、単にあまりに気持ち良すぎてそうなったとも考えられるがな。お主はそのおなごにかなり入れ込んでおったようじゃからの。そこに淫妖の快楽が加わったとなれば、天にも昇る心地良さとばかりに、魂が抜け出たとしてもおかしくないゆえ。実際スケベなお主であれば、そちらの方が正解に思えるわ」
 可笑しそうに笑いながら告げられるのに恥ずかしさが増す。自分でも快楽が原因で幽体離脱した方があり得そうに思えたからだ。
 実際それだけの気持ち良さが玲子とのセックスにはあった。やはり童貞時代の思い出が作用していたのが大きいのかも知れない。
「それにしても、お主が昔、自慰の対象として夢中になったおなごか。ふむ、どのような者か興味が湧くのぉ。その映画、儂も観てみようかの」
「う……それは勘弁して下さい……」
 からかうように告げられるのに顔が熱くなる。
 性的なことには慣れたはずだったが、セックスを経験していない頃の思い出となると、どうにも恥ずかしさが伴ったからだ。
 セックス自体を見られるのは気にならなくなったが、「自慰をする際に夢中になった素材」を見られることには、耐え難い感覚があったのである。
「良いではないか。お主の初々しい頃を知りたいのよ。今やすっかり可愛げがなくなりつつあるからの。儂に入れただけで精を漏らしておった頃が懐かしいわ。そうそう、最初の時は無理矢理襲われたのであったな。儂の体に夢中になって、必死にしがみついてきたのじゃった。うんうん、懐かしいのぉ」
 未迦知神の言葉に恥ずかしさが凄まじく高まる。
 未経験な頃の思い出と同じく、経験不足な頃の思い出というのも羞恥心を感じさせたからだ。
 何より未迦知神との初体験は、意識を失った状態での強姦という、酷すぎるものであったため余計そうなった。
(考えてみたら俺、有希ちゃんとの初めてもそんな感じだし、しずねぇとのもそうだった。母さんとのもそうだよな……ホント酷い状態でしてばっかりだ……)
 今更ながら、自身の未熟さ溢れる思い出に、恥ずかしさが最高潮に達した。
「おお、何とも顔が真っ赤じゃ。久しぶりじゃのぉ、お主のそういう顔は。良いぞ良いぞ。昼間おなごと交わった際も、そんな顔をしておったのか? 見てみたかったわい」
「からかわないで下さいよ、もう……」
 楽しげに笑みを浮かべながら告げてくるのに、恥ずかしさと共に嬉しさを覚える。
 未迦知神とは、こうして話しているだけでも幸せを感じることが出来た。
 いや、一緒に居るだけで良かったのだ。
 思えばここまで成長出来たのも、全て未迦知神のおかげだった。
 自分はこの美しい女神に見守られながら、人として、そして神として成長してきたのである。
 これからもきっと、いや絶対にそうして成長していくのだろう。
 そんな事を考えながら、温かな表情でこちらを見つめている未迦知神の姿に嬉しさを感じた神治は、続けて発せられるからかいの言葉に、苦笑しながら応じていくのだった。


「あっ、あっ、ああっ……」
 ベッドの上で艶めかしく悶える白い肉体を眺めながら、神治は勢い良く腰を振っていた。
 突き込みに合わせて豊満な乳房がタプンタプンと揺れ動き、その振動が伝わってくる事に、今自分がこの女性と繋がっている実感を得る。
 あれから玲子とは、こうしてセックスをする関係になっていた。
 あの日の交わりですっかり神治に夢中になった玲子は、休みの日や、仕事の合間などに呼び出して、抱くことを求めてきたのだ。
 昔から憧れていた有名女優を何度も抱けている現状に、信じられない想いを抱きつつも、それゆえに強烈な満足感と喜びを得てもいた。
 多くの男が憧れ、抱きたいと欲する女性を自由にしている優越感。これは芸能人を相手にするようになってから何度も感じている悦びだったが、さらに玲子とのセックスには、母や伯母を抱く際と同じ、全てを受け止め、甘えさせてくれる安堵感もあったため、かなり夢中になっている部分があった。
「あんっ、あっ……いいっ、いいのぉっ……神治くんいいわぁ、あっ、あっ……素敵よぉっ……」
 潤んだ瞳でこちらを見つめ、いやらしく誘うように呼びかけてくる玲子の姿に、股間の一物がグンっと力を増す。
 今の言葉や表情、そして仕草は、昔何度も自慰のネタとして観た映画の中で、玲子演ずる女性が、愛人の息子との交わりの際に言う台詞だった。
 記憶するほどに繰り返し観、射精してきたシーンであったため、条件反射的に興奮が高まっていく。
 玲子の事だから、おそらくこちらのそうした反応を期待し、意識してしているのだろう。あまりに映画そのまま過ぎたため、偶然にしてはあり得なかったからだ。
「玲子さんっ……玲子さぁんっ……」
 神治もそれに応えようと、濡れ場での息子の様子を思い出しながら叫び、がむしゃらに腰を動かしていく。
 その事に玲子は楽しげに笑みを浮かべながら、両腕をこちらへ伸ばしてきた。
 これも映画の流れ通りで、神治が体を寄せると、背中に両腕が回り、腰に両脚が絡みついて、強くしがみつかれる状態になった。
「こんなのいけないのに、ああっ……あなたとこんな風になって、あぅっ……許されないわぁっ……」
 また映画の台詞が発せられた。
 背徳感を感じさせるこの台詞が、神治は昔からお気に入りだった。
 父親の愛人を寝取り、自分に夢中にさせている悦び。
 他の男から奪いとった、それも立場が上の父親という存在から奪い取った状況が、強烈な刺激となって感じられたのだ。
 さらに年上の女性を従え、甘え、ねだらせるようにして抱いているその状況は、当時中学生だった自分にとり、実に魅惑的な男女関係に思えた。
 大人の女性が、遙かに年下の男に対し、あのように甘える態度を見せるのかと、これがセックスの快楽なのかと、そう衝撃を受けたのである。
 自分もいつか、大人の女性に導かれ、童貞を捨ててみたい。
 大人の女性を従え、好きなように体を貪ってみたい。
 そうした夢を抱き、それが出来たらどれほど幸せだろうと思っていた。
 そしてそれは、伯母との初体験で実現する事となった。
 しかも近親相姦という背徳感を伴うものとしてであったため、まさに映画に似た悦びを得られたのだ。
 伯母との初体験に強く興奮を感じられた要因の一つに、この映画があった事は確実だろう。玲子は言わば、間接的に初体験を素晴らしいものにしてくれた恩人なのだ。
 そして今自分は、その恩人であり、憧れた女優でもある玲子と、こうして交わっている。あの頃抱いてみたいと欲していた女性の体を貪り、怒張した肉棒を押し込んで快楽を味わっているのだ。
 それは何とも言えない感動のような感覚があり、他の女性とでは味わえない良さがあった。
 そうした自身の悦びと、玲子への恩返しの想いから、神治は出来るだけ気持ち良くしてあげるのだと、特に力を入れて抱くようにしていたのだった。
「ああっ、いいわ凄くいい、あっ、あっ……こんなにされちゃうと私、ああんっ……おかしくなっちゃうぅっ……」
 与えられる快楽が強まったせいか、玲子は映画の事を忘れて激しく悶えた。
 映画の再現も嬉しくはあったが、こうして素の喘ぐ姿を見るのも良かった。
 玲子の女優としての濡れ場を見た人間は多いだろうが、一人の女性として悶え喘ぐ姿を知る者は少ないからだ。そしてこれほどまでによがり狂う姿を見た者となれば、自分だけなのではないかと思え、凄く嬉しかったのである。
「光が、ああっ……輝いているわ、あっ、あんっ……神治くんが輝いてるのぉ、やぅっ……凄いのぉっ……」
 玲子がうっとりとした表情を浮かべ、こちらを見つめてくる。
 その瞳には強い依存の光があり、部の民としての意識が感じられた。
 玲子はすでに部の民に目覚めていて、こうして自分を呼び出すようになったのも、主たる神の物になりたいと欲する衝動が起きているせいだった。
 どうやら最初に交わった際に神性の光を見ていたようで、あの時激しく乱れていたのは、何も淫妖の影響だけではなく、神との出会い、そして神に抱かれる事への喜びから、強烈な幸福感を得ていたためらしかった。
 実際こうして自分に抱かれれば、普通では味わえない強烈な快楽を得られるのであり、その上至高の幸福感も伴うであるのだから、夢中になっても当然だろう。
 部の民が神に抱かれるというのは、そうした精神、肉体ともに充足出来る行為になっていたのである。
 神治にしても、玲子を抱く事には特別な想いがあった。
 何しろ昔から憧れていた有名女優が、自分の部の民になっているのであり、その事には強烈な満足感をもたらすものがあったからだ。
 しかも単に「抱きたい」という望みが叶っただけでなく、心から自分に付き従う存在になっているのだから余計だった。
 まさに今の自分は、中学時代の切ない願いを、理想以上の形で実現した状態になっていたのだった。
「うふんっ、凄くいい、やぁっ……神治くんの素敵すぎて、あっ、ああっ……もう蕩けちゃうわぁ……」
 甘ったるく呟きながら、艶めかしく体をくねらせ、肉棒を引き込む動きをしてくるのに思わず頭を仰け反らせる。実に良い快感が走り抜けたからだ。
 玲子は肉体的な良さとしても素晴らしさがあった。元々の資質もあるのだろうが、技術的にも優れているのであり、男が悦ぶツボを心得ているというか、触れている部分を実に巧みに動かしてくるのだ。
 演技力があるというのは、肉体をどう動かせば良いのかを熟知しているとも言える訳で、それゆえに男に快楽を与える挙動も把握しているのだろう。
 玲子の凄いところは、自身が快楽で朦朧としている状態であっても、それをしてくる点だった。それゆえに、彼女を抱く際の快感は、精神肉体共に素晴らしさを伴う魅力的なものになっており、ここ最近玲子に呼び出されるのを楽しみにしているのも、セックス自体が凄く気持ち良いためでもあった。触手の淫妖に何かされていた時のような、おかしくなるほどの衝動は存在しないが、とにかく抱きたくてたまらない相手だったのである。
「あっ、ああっ……神治くぅん、やっ、やぁっ……もっとよ、もっと、ああんっ……ね、もっとしてお願ぁいっ……」
 玲子が可愛らしい口調で告げてくるのに、普段とのギャップから興奮が高まる。
 自然と腰の動きが激しくなり、淫の「気」も強めに送る状態になった。
「ああんっ、あっ、あんっ……やだ凄い、ああっ……凄いわ、凄いの、あぅんっ……神治くん凄いぃっ……」
 頭を左右に振り、長い髪を乱しながら喘ぎ悶える玲子の姿は実にいやらしく、美貌の熟女がこうして淫らにしている様子には、いつ見てもたまらないものがあった。
 中学時代、繰り返し観てきた映画での姿よりも、格段に乱れが激しい状態に、演技ではなく素の玲子を抱けているのだという実感が湧いてくる。
「あんっ、あんっ、ああんっ……もう駄目、あっ、あっ……もう駄目よ、ああっ……私もう駄目なのぉっ……イっちゃうっ、イっちゃうっ、イっちゃうぅっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
 玲子の絶叫が部屋に響き、硬直した体が跳ね上がった。
 膣内が締まり上がり、強烈な気持ち良さに引き出されるようにして精を放つ。
 勢い良く迸る精液と、それと共に脳に快感が押し寄せ、心と体が蕩けていくような感覚を味わっていく。
 ドクンドクンと肉棒が律動し、その度に放出される精液を感じながら、神治は惚けた表情でこちらを見上げ、体を震わせている玲子を見つめた。
 これほどの優れた女性を抱いている自分は、何と凄いのだろう。
 そうした男としての自信が込み上げ、嬉しさで一杯になる。
 だがそれとは別に、情けなさも感じていた。
 玲子を抱く際には、どうしてもあの日の出来事、淫妖に取り憑かれていた時の事が思い出されるからだ。
 自然と視線が壁の方へと向き、そこから生えていた触手の姿が脳裏に浮かぶ。
 淫妖に好き放題されてしまった自分。
 能力的には上であるのに、それを生かすことなく取り憑かれてしまったとは、何と情けないことか。
 部屋に強固な結界を張ったため触手は現れなくなっていたが、もし再び接触する事になったとして、果たして自分は対処出来るのだろうか。
 そう考えるとあまり自信は無かった。
「もう、他のこと考えてちゃ嫌よぉ。私の事だけ考えてぇ」
 甘ったるい声と共に、玲子がギュッと抱き締めて来たため意識を戻す。
 相変わらずの察しの良さに苦笑しつつ、柔らかな肉の感触に包まれた事で、不安な気持ちが薄らいでいくのが感じられた。
 同時に雄としての猛りが湧き起こり、この美しい女性を二度と淫妖の獲物になどしてたまるか、という想いが押し寄せてきた。
 玲子は自分の物なのだ。淫妖が触れていい女ではないのである。
 そうした想いを抱きながら豊満な乳房をギュッと掴むと、「ああんっ」といった色っぽい声が聞こえ、玲子がいやらしく体をくねらせるのに支配欲が刺激を受ける。
 優れた女を好きにしている現実を認識する事で、弱気になった心が奮い立っていくのが分かる。
 玲子を抱いていると、強い安心感と共に、男としての自信が凄まじく強まっていくのだ。
「凄いわぁ……胸を揉まれただけでまたイっちゃいそう……どうしてこんなに凄いの? 私、あなたに夢中よぉ……」
 吐息混じりの声でそう囁かれ、益々男としての自信が膨らむ。
 昔から憧れ、いつかは抱いてみたいと夢見てきた女優、桐生玲子は、今や完全に自分の物だった。
 すでに数え切れないほどの精をその膣へと注ぎ込んでいるのであり、それは玲子の映画を観ながら自慰をしていた頃には想像も出来ない状況だった。
「ね、もう一回いいでしょ? 私したくてたまらないわ。あなたに抱かれたくてたまらないの。だってあなたと繋がってると、凄く幸せな気持ちになれるんですもの。そのためなら私、何だってする。あなたの望むこと、何だってするから。だから抱いて。これからもずっと、私の事を愛し続けてぇ……」
 甘えるように、そして必死さを感じさせる様子で玲子は抱き付いてくる。
 神の寵愛を得たい、捨てられたくないとする意識がそうさせるのだろう。
 日本で最も知られ、優れた女優である玲子にそこまで言わせている事に、自尊心が強烈に擽られ、肉棒が激しくいきり立っていく。
 玲子とのセックスに夢中になってしまう原因はここにあった。
 元々抱くことなど絶対出来ないと思っていた高嶺の花の存在であるがゆえに、これほど強く求められて抱ける事に凄まじい悦びが起きるのだ。
 この優れた女性が自分の物なのだという実感を、もっともっと得たいという意識が強まり、いつまでも肉棒が硬く大きくなるのである。
 ここ数日の玲子とのセックスは、本当に素晴らしく、夢のようだった。
 自分はこれからも、この憧れの女性を抱き続け従えていこう。
 そう改めて認識した神治は、包み込むような笑顔でこちらを見つめている玲子に笑みで応えると、その気持ちのいい肉体に再びのし掛かっていくのだった。












あとがき

 今回は女優、それも熟女です。
 ここのところ若い女の子ばかりだったので、久々に楽しかったですね。
 やはり年上の誘惑は良いですからねぇ。
 しかも神治の意識も童貞時代に戻したので、筆下ろし的な楽しみも描けました。
 さらにマザコン的要素も描いて、何というか、年上女性の旨味をつぎ込んだ感じにしてみました。
 玲子を理想的な女性として描きたかったので、そこにはやはり母性を感じさせる部分も必要だろうと思ったのですな。
 まあ、他の要素も入れたので、そこら辺はあまり強調出来なかったような気もしますが、ある意味人間としては最高の女性として描けたのではないかと。

 淫妖ネタに関しては、そろそろそっち方面の話も入れたくなったので入れました。
 というのも、今回の話は、「女優が怪しげな存在に襲われる」という某作品のネタを元に考えたものでしたので。
 そこに私が昔観た映画のネタも混ざってますね。
 神治の思い出に関しては、私の思い出を過剰に表現した感じですか。
 アダルトビデオなんか見られない頃は、セックスを見るとしたら映画でしたからねぇ。
 家族に隠れてエッチな映画をよく見たものですよ。
 その内他の映画ネタに関しても、何かで出したいと思っております。
(2016.11.11)

一覧へ   トップへ