緋道の神器


        第四十六話  深夜の来訪者



 ベッドの上で裸になり、胡座をかいた神治の股間に、齋が顔を押しつけていた。
 彼女は一見十四、五歳に見えるが、実はまだ十一歳の小学生だ。
 実年齢よりも上に見られる容姿であり、さらに精神的にも大人びていて、喋り方も独特であるため、年相応に見られることはほとんどないらしい。
 肉体的にも成熟しており、胸元にある膨らみはかなり大きく、手に余るほどの豊満さは、小学生とはとても思えなかった。
 真っ白な肌に覆われた体に、腰の辺りまで伸びた黒髪がかかっているのが色っぽく、小さな桜色の唇を大きく広げ、淫猥な肉棒を口に含んでいる姿は、見た目以上に大人びた印象を与えた。
 ただでさえ年相応に見えないというのに、している行為が小学生らしからぬものであるのだから当然だろう。
 自分は子供相手に何をさせているのか、という今更ながらの想いを抱きつつ、神治は綺麗な黒髪を梳るように撫でた。
 小さな頭がくすぐったげに動き、「ん、んん……」と気持ち良さそうな声を漏らすのに愛おしさを覚える。
 美しく整った顔がこちらを見上げ、うっとりとした表情を浮かべているのに満足感が起きてくる。
 亀頭に舌が絡みつき、吸い付いてくる刺激に少し体を硬直させながら、かなり上達している口技に少女の成長を感じつつ、そうさせたのが自分である事に悦びを覚える。
 初めて抱いてからかなりの回数交わり、「どうしたらお兄さんは気持ち良くなる?」と尋ねてくるのに答えていく内に、見事なまでに上手くなったのだ。
 性行為に不慣れな少女に、男への奉仕を仕込んだことは達成感を感じさせ、齋が幼いだけに悦びも大きかった。
 自分と性行為をする幼い少女は他にも居たが、抱く前から性的知識や経験が豊富な者が多く、そうでなかったのは妹の舞美くらいなものであったため、そういう意味で新鮮なこともあるだろう。
 何よりこちらを気持ち良くさせようと熱心に奉仕してくるのが可愛らしく、「これでいい?」という感じで上目遣いで見つめ、それに無言で頷いて応えると、嬉しそうに微笑むのがたまらなかった。
 そうした表情をすると年相応の幼さが感じられ、いたいけな少女に肉棒を咥えさせているのだという現実が強く認識され、背徳感が湧き起こった。
 肉欲が昂ぶったせいか、それそろ入れたくなった神治は、齋の頭を両手で持ち上げるようにして肉棒から放すと、名残惜しそうに最後まで舌を伸ばしてくるのを嬉しく思いつつ、今度はこちらが気持ち良くしてあげるのだと優しく抱き締めた。
「お兄さん、大好き」
「俺も齋が大好きだぞ」
 目の前にある可愛い顔を眺めつつ、頬ずりしてその滑らかな肌の感触を味わう。
 そうしているとギュッとしがみついてきたため、こちらも強く抱き締めながらゆっくりとベッドへ押し倒す。
 細い両脚を左右に開き、容姿とは異なって幼さを感じさせるピンク色の秘所を眺めながら肉棒を近づけると、ズブリっといった感じで膣襞が亀頭を包み込み、奥へ奥へと誘うように蠢くのにうっとりとした快感を覚えた。
 齋のここは名器であり、入れるだけでも気持ちの良さが格別なのだ。
「はぅ……お兄さんのが入ってくると、それだけでおかしくなりそ……」
 ぼんやりとした顔で、虚ろな瞳を向けながらそう告げてくるのに苦笑する。
 異能の力のある齋は、神治の力を感じやすい体質であるため、こうして繋がり合うだけでも強い反応を示すのだ。
 その影響なのか齋自身の力も強くなっているようで、最近では人の心を感じられたり、癒しを与えることが出来るようになったらしい。
 実際先日も、神治の友人達の心を感じ、癒すことをしていたのだ。
「そう言えばあのお姉さん、あれからどうしてる?」
「ん? お姉さん?」
「雪花さん。最近は大丈夫かなぁ、と思って」
 神治が雪花のことを思い出したせいか、その事を感じたらしい齋は、そう尋ねてきた。雪花には癒しの力が効かなかったこともあったせいか、気に掛けているようなのだ。
「まあ、いつも通りだよ。相変わらず胸が小さいことは気にしているみたいだけど」
 大きな胸に対するコンプレックスはどうしてもぬぐえないようで、いくら「小さくても好きだ」と言っても納得しないのだ。
「私なんかは小さい方が良かったんだけど……でもそれ言ったら怒られちゃうよね」
 大きければ大きいなりに悩みがある訳だが、それは小さい人間からすると贅沢な悩みという事になるだろう。
「でもお兄さんが優しくしてるから、前よりは落ち着いているんでしょ?」
「優しくか……俺は前と変わらないけどね」
 そう言いながらゆっくりと腰を動かし出す。
 肉棒が膣襞と擦れる快感が押し寄せ、自然と口元がだらしなく緩む。
「あっ、あんっ……ふふ、嘘付いても駄目だよ。あっ、ああっ……お兄さん、前より雪花さんのこと、あっ、あぅっ……好きになってるの伝わってくるよ」
「え? そうなのか?」
「うん。凄く大切に想ってるよ。それは雪花さんにも伝わってると思う。あっ、あぅっ……それいい、ああっ……」
 少し強めに突き込むと、嬉しそうに喘ぐのを可愛らしく感じつつ、もっと気持ち良くしてやろうとさらに腰を振っていく。
 自分では以前と変わらないと思うのだが、やはり抱いたことで違っているのだろうか。
 だが考えてみれば、部の民として目覚めた雪花とは魂の繋がりを得ているのだから、その事で大切に思う気持ちが強まっていてもおかしくはなかった。
「自分のことって、結構分からなかったりするんだよね。あっ、やんっ……私にしても、どうしてこんなに、あぅっ……お兄さんに惹かれちゃうのか分からないもん、あっ、あんっ……それ凄い、ああっ……こうして抱かれてからは、あぅっ……お兄さんの凄い力が入ってくるから分かるけど、ああっ……逢う前から凄く求めちゃってたのって不思議なことでしょ? やっ、やんっ……入ってくるぅ、ああっ……凄いよぉっ……」
 齋はセックスの際に神治の力をかなり吸収するため、その影響で常人よりもかなりおかしな状態になった。
 それは巫女の資質であり、巫女とは神に惹かれるものであるため、その事を考えれば納得は出来たが、では何故巫女は神に惹かれてしまうのか、という事になると分からなかった。
 部の民にしても同じで、何故神に惹かれるのか、神に全てを捧げたいと欲するのか、そうした事への理由は不明だった。
「好きっ、好きだよぉっ……お兄さん大好きぃっ……やっ、やぁっ……もっと、あっ……もっとちょうだい、ああっ……もっともっともっとぉ、あぅっ、はぅっ……お兄さんの力がぁ、やっ、やぁんっ……」
 神治の力に過敏に反応しているのか、異常なまでに喘ぎ悶える齋を苦笑気味に眺めつつ、そんな風に淫靡に狂っている少女の姿に強烈な満足感を覚える。
 胸元では豊満な乳房がプルンプルンと揺れており、その実年齢とのギャップを思わせる様子に肉棒が猛っていった。
「凄いっ凄ぉいっ、あっ、ああっ……お兄さんで一杯、あんっ……私の中、あっ、あっ……お兄さんで一杯だよぉ、やっ、やぁっ……」
 頭を左右に激しく振り、長い黒髪を乱しながら齋は悶え狂った。
 揺れ動く乳房を両手で鷲掴むと、指が柔肉に食い込み、そのいやらしさに鼻息が荒くなる。
 滑らかな肌と強い弾力をした膨らみは、そうしているだけで心地良さが押し寄せてきた。
 十一歳の少女の肉体に魅了され、夢中になって腰を振っている自分。
 何と異常な状況だろうと思うが、止められないほどの良さがその体にはあった。
 肉棒に吸い付き、締め付け、嬲ってくる蠢きは、幼い少女とは思えないほどの素晴らしさがあり、意識しなくとも腰の動きが激しさを増してしまう。
 何より可愛らしい顔が淫靡に歪み、求めるように潤んだ瞳で見つめてくるのに、おかしくなりそうなほどの興奮が湧き起こった。
 いつまでもこの幼く美しく淫らな少女を抱いていきたい。
 そうした想いが押し寄せ、神治は何度も何度も肉棒を叩き付けていった。
「いいっ、いいよぉっ……あっ、ああっ……お兄さんいいのぉっ……もう駄目、ああっ……もう駄目ぇ、あっ、あんっ……私イっちゃう、あっ……私イっちゃうから、ああっ……私イっちゃうのぉっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
「くっ!」
 細い体が硬直した瞬間、幼い膣内に精液を放つ。
 ドクドクドクと精が迸り、可愛らしい少女の中に注いでいるのだと思うと、強烈な満足感が押し寄せてきた。
 齋を己の物としている悦びが溢れ、何度も何度も射精を繰り返していく。
 それをピクピクと痙攣しながら受け入れている齋は、か細い声を漏らし、うっとりとした表情を浮かべていた。
 神治の力が大量に入り込んでいるため、通常以上に意識が朦朧としているのだ。
 しばらくして射精を終えると、脱力して倒れ込み、脇に転がる。
 呼吸を整えながら体を横に向けた神治は、年齢に不似合いな大きな乳房に手を置いて、そのムニュムニュとした心地良い感触を味わっていった。
「あぁ……力が……力が凄いよぉ……」
 齋は辛そうに呟いているが、これは許容量を超えた力を与えられた事によるものだった。
 その解消には余分な力を吸ってあげる必要があったため、神治は可愛らしく勃起している乳首を口に含むと、優しく吸い上げていった。こうしていると力を吸い取ることが出来るのだ。
 齋の表情が和らいだものとなり、楽になったのが分かったところで吸うのを止める。
「お兄さんに抱かれるのって嬉しいけど、力が凄く入って来ちゃうのだけは困るなぁ」
「ごめんな。俺がコントロール出来ればいいんだけど、齋くらい相性がいい相手だと難しいみたいなんだよ。齋の方が吸収してきちゃうみたいでさ」
 以前未迦知神に聞いたことを思い出しながら謝る。
 これを何とかするには、齋の方の許容量を増やすしかないらしい。つまりは巫女としての能力を上げることだ。
 その事に関しては、葉那に指導してもらおうかとも考えているのだが、緋道村のことを話すのは躊躇していた。さすがに小学生相手では刺激が強すぎるように思えたからだ。
「私の方が吸収しちゃうんじゃしょうがないよね。お兄さんの力って凄く気持ちいいから、そうなっちゃうのも分かるけど……」
 快楽の余韻を残した美少女が惚けた表情でそう告げてくると、何とも言えない色気があってたまらなかった。
「齋の体も気持ちいいからな。俺もつい張り切っちゃうんだ。それに凄く可愛いし。してる時もエッチだしな」
 頭を撫でながら、顎の下をペロペロと舐めると、齋はくすぐったそうに体を震わせた。
「ふふ、もっと言って。お兄さんに褒められると凄く嬉しい」
「そうか? 齋は凄い美少女だし、頭もいいし、体もエッチで最高だ。うん、可愛い可愛い」
 胸の膨らみを揉みしだきつつ、体を押しつけて擦り付けるようにすると、滑らかな肌と擦れて心地良かった。幼いだけに肌の感触が絶品なのだ。
「幸せ……私、お兄さんに愛されて凄く幸せだよ。こんな幸せでいいのかって思うくらい……今まで力のせいで嫌な想いしてきたけど、今は力のおかげでこんなに幸せなんだよね」
 齋は幼い頃から異能の力に目覚めていたため、様々な組織から利用されてきた。
 母親である依子が宗教にハマりやすい質であるのが大きい訳だが、その依子も今は神治に心酔していたため、問題は無くなっていた。
「お兄さんの周りには、力を持った人が集まるようになるかも知れないね。雪花さんも力持ってたし」
「聖川さんが力を持ってるのか?」
「何か壁みたいなものを感じたよ。あれがあるから私の力が効かなかったんだと思う」
 確かに雪花には「気」を操る能力があった。武道で培ったものではあるが、使い方によっては異能の力としても使えるだろう。
 というか、あの小柄な体で男を吹き飛ばす時点で、異能の力と言えるようにも思えたが。
「でも気をつけてね。世の中には悪いことに力を使っている人も居るから。お兄さんは凄い力を持ってるし、そういう人達が利用するために近づいてくるかも知れないよ」
 齋は不安そうな表情を浮かべて見つめてくる。自分が幼い頃から利用されてきただけに心配なのだろう。
「そうだな。気をつけるよ」
「怖い人も居るからね。本当に気をつけてよ」
 かなり真剣に言ってきているのに「大げさだな」と思いつつ、そこまで心配してくれている事に嬉しくなった。
 とはいえ、これまで命に関わる経験は何度かしていたし、その相手も人外の存在ばかりであったため、人間が相手ではあまり危機感は起きなかったが。
 しかしそんな事は齋には分からないのだから、あまり軽く受けても良くないだろう。
「分かった。気をつける」
 真面目な顔をして告げると、齋はようやくホッとしたように息を吐き出した。
「齋も気をつけろよ。いくらお母さんが宗教をやらなくなったからって、齋に力があるのは変わらないんだからな。変なヤツが寄ってくるかも知れないし」
「うん。気をつける」
「力と関係ないことでも気をつけるんだぞ。齋は凄く可愛いんだから。普通に痴漢にも気をつけろ」
「うん。そっちも気をつける。ありがとね」
 心配されたのが嬉しかったか、微笑みながら体を寄せてくるのを可愛らしく思う。
 実際齋は何度か痴漢まがいの事をされそうになった経験があるらしい。異能の力があるので未然に防いではいるそうだが、そういう事が起きる事自体、嫌なものだろう。
「最近お兄さんが力をくれてるせいか、そういうのが前より分かるようになったんだ。エッチな意識を持っている人が近づいてきたら、それとなく離れるようにしてる」
「そうか、それなら安心だ」
「うん。私にエッチなことしていいのはお兄さんだけだもん。他の人になんか絶対させないんだから」
 甘えるように頬ずりしながら言ってくるのに愛おしさが高まっていく。
 同時に肉棒も硬く大きくなっていき、齋を抱きたい想いが沸々と湧き起こってきた。
「あ、おっきくなってる。ね、またしたいの? 私を抱きたい?」
 可笑しそうに笑いながら誘ってくるのに、少女の中にある女を感じてドキリとする。
 容姿が大人びているだけに、こうした態度をとると様になるのだが、それでいて少女っぽさも感じさせるため、妙な興奮が起きるのだ。
「当然だろ。齋はエッチで可愛いんだから。何度でも抱きたくなるんだよ」
 そう言いながら覆い被さり、肉棒を可憐な膣穴へと押し込んでいく。
「あぅんっ……やぁ、もういきなりぃ……お兄さんってばせっかちだよね」
「齋を抱きたくなるとそうなるんだ。早く抱きたいからね」
「ふふ、嬉しいな。じゃあ、早く気持ち良くして」
「分かってるよ。それじゃ思いきりいくぞ」
 首に腕を絡ませながら可愛らしく求めてくるのに頷きつつ、神治は勢い良く腰を振っていくのだった。


 夜の十一時。
 神治は、これから足を踏み入れるマンションを見上げ、暗闇にそびえ立つ姿に感嘆の息を漏らした。
 四十階建てのそのマンションは、見るからに高級そうな印象を持たせる外観になっており、その点では自分の住んでいるマンションと変わらないのだが、やはり高さによって迫力が出ている感じがした。
 何故このような場所へこのような時間に来ているのかと言えば、沙璃香から「相談したい事があるので来てくれませんか?」といった内容のメールをもらったからだ。
 中学生が高校生を呼び出すには非常識な時間だったが、いつもは絵文字やふざけた文体で書いてくる沙璃香が、用件だけを告げてくる質素な書き方をしていたため、その事に真面目さを感じ、何か重要なことなのだろうと応じたのである。
 待ち合わせの場所へ着くと、普段着姿の沙璃香が立っていた。
 これまでセーラー服姿しか見ていなかったため、その服装に新鮮な想いを抱く。
 中学生にしては少々派手な印象を覚えるが、まだ幼さを感じさせる部分も残っていることから奇妙な魅力が存在し、腰の辺りまで伸びた美しい黒髪と相まって、かなりの美少女であるのを改めて認識させられる。
 だがそんな容姿とは裏腹に、沙璃香の表情は暗かった。
 活力を感じさせるいつもの雰囲気が消えているのだ。相談事というのはやはり重い話なのかも知れない。
「緋道さん、来てくれてありがとうございます」
 声も普段と違って力が無かった。溜め息をつくようにして発声しているのだ。
「いいんだよ。沙璃香ちゃんにはこの間楽しませてもらったし」
「あ、あれは、私たちの方が楽しませてもらったので……逆にお礼したいくらいですから……なのに相談に乗ってもらうなんて申し訳なくて……」
 先日神治は、沙璃香とその友人達を相手にセックスしまくった。
 沙璃香達はファッションモデルをしているほどの美少女であり、セックスにも慣れていたことから、かなり楽しめたのだ。
 何より複数の少女に奉仕してもらう、一度に相手をする、といった事をしたため、それが実に良かったのである。
 沙璃香達も神治とのセックスを気に入ったようで、これからも相手をしてくれる事になっており、特に沙璃香は異能の力がある事もあって、部の民として覚醒したことから、神治に執着するようになっていた。
 それだけに自分の方からお願いごとをするのが心苦しいのだろう。
「俺は沙璃香ちゃんが辛くなっているのは嫌だからね。明るくしてくれている方が嬉しいんだ。だからもし沙璃香ちゃんが辛くなる何かがあるのなら、何とかしてあげたい。そうすると俺が嬉しいんだよ」
 そう告げながら優しく頭を撫でると、沙璃香は小さく笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。そう言ってもらえて楽になりました。緋道さんが力になってくれるなら、何とかなるって気がして安心してきました」
「そこまで言われちゃうと逆に困っちゃうけどね。俺に何か出来るか分からないし」
 何しろ自分はまだ高校生。他人の相談に乗れるほど人生経験がある訳でもないし、内容によっては力になれないかも知れないのである。
「緋道さんなら大丈夫ですよ。それにこの問題は他の人じゃ多分無理ですから」
「どういった事なの?」
「私の友達なんですけど、ちょっと変な事になってて……詳しくは部屋へ着いてから話しますけど、いわゆる霊とかの話なんです」
 なるほど、そういった類の問題という訳だ。
 それならば確かに他の人間では解決しにくいだろう。神治にしても得意という訳ではなかったが、少なくとも異能の力が無い人間よりは慣れていることだった。
「まあ、霊とかはよく分からないけど、何かアドバイスは出来るかも知れないか……それで部屋は何階なの?」
「あ、四十階です。そこに一人で住んでるんです」
 最上階の部屋に一人暮らしとは、これまた凄いことだ。よほど金持ちのお嬢さんなのだろうか。
 しかし沙璃香の友人であればまだ中学生だと思うのだが、一人暮らしとはどういう事情があるのだろう。
 そんな事を思いながらエントランスへと入る。
 壁際に設置されているインターフォンへ向かった沙璃香が、番号を押して友人を呼び出しているのを眺めながら、さてどんな事になるんだろうな、と神治は少々身構えるのだった。


 案内された部屋は、ピンク色を基調とした装飾がされており、あちこちにフリルの付いた物が見えていて可愛らしさに溢れていた。
 美子ちゃんが好きそうだなぁ、と思いつつ、正面に座っている十四、五歳くらいの少女に視線を向ける。
(まさか、彩乃ちゃんとはね……)
 神治は相手のことを知っていた。いや、直接の知り合いという訳ではなく、一方的に知っているという意味でだ。
 日本人で彼女を知っている人間は多いだろう。何しろテレビによく出ている芸能人だからだ。
 沙璃香はファッションモデルをしているため、芸能人の友人くらい居ても不思議ではなかったが、まさか人気アイドルの末川彩乃(すえかわあやの)とは思ってもみなかった。
 だがこれで一人暮らしの謎が解けた。おそらく彩乃は親元を離れて東京へ出てきているのだろう。確か彩乃が所属している事務所はかなりの大手であったため、この程度のマンションくらいは所有していてもおかしくないからだ。
「あの、こ、こんばんは……末川彩乃です」
 彩乃は大人しい口調で挨拶をし、ぺこりと頭を下げてきた。
 テレビだともっと元気な感じだが、あれは作っている部分なのだろう。素は大人しい性格なのかも知れない。
 さすがはアイドルだけあり、生で見るとかなり可愛らしかった。
 肩までの長さの髪に、小さめの丸顔。そのくせ瞳はやたらと大きく黒々としており、まさに美少女という言葉がピッタリだった。
 神治にしても好みの顔であり、何より普段テレビで見ている芸能人が目の前に居るということには刺激的なものを感じた。
「こんばんは。緋道神治です」
 挨拶を返しつつ、伝わってくるどこかきらびやかな雰囲気に面白さを覚える。これがいわゆる芸能人オーラというものだろうか。
 大人しい性格に思えるのに、そうした部分があるのは、日頃から多くの人の注目を集め、魅了しているためだろう。
 実際発せられている「気」にしても、男を引き付ける淫の「気」が感じられ、これが仕事中ともなれば大きくなるに違いない。
「彩乃ちゃん、緋道さんはね、すっごい力持ってる人なんだよ。だから安心してね。絶対何とかしてくれるから」
 沙璃香は励ますようにそう告げているが、彩乃はあまり納得できない様子で俯いている。
「ホントに凄いんだから。芽依(めい)ちゃん達がやってるのとは違うからね。緋道さんは本物だから。あっちはインチキだけど、緋道さんは本物なんだから。絶対だから」
 彩乃の反応が芳しくないせいか、沙璃香は熱心に神治が本物だと語っている。
 それにしても「あっちはインチキ」というのはどういう意味だろう。
 芽依というのは、彩乃が所属しているアイドルグループ「イロス」のメンバーに思えたが、彼女の方は別の何かと関わっているという事だろうか。
「うん。私もあっちは何だか嫌だったから……でも芽依ちゃん達に誘われてたから、もし沙璃香ちゃんが「行っちゃ駄目」って強く言ってくれなかったら行っちゃってたよ。ありがとう」
「私の言うこと聞いてくれたの彩乃ちゃんだけだもんね。芽依ちゃんたちは『大丈夫』とか言っちゃって、結局完全にハマっちゃってるんだから……いい? もし来るように言われても、絶対あっちに行っちゃ駄目だからね。あっちは完全に詐欺なんだから」
 何やら詐欺被害に遭いそうな友人を説得している内容になっていたため、「あっち」というのは問題がある所なのだろうか。
「その『あっち』ってのは何なの? 芽依ちゃん達、ってことは、イロスの他のメンバーの話?」
 説明してもらおうと口を挟むと、ハッとしたように彩乃がこちらを見た。
 黒くて大きな瞳に見つめられるのにゾクッとする。どうやら魅了の力があるらしい。
(この子、少しだけど眼力があるな。こりゃアイドル向きだわ……)
 見るだけで相手を魅了する事の出来る力「眼力」
 神治が使うと発情状態にまでさせる事が可能だが、彩乃のはドキリとさせる程度だ。
 とはいえ、そうした感覚を覚えた相手は、彩乃の事を強く意識するようになるだろう。
 イロスの中でも彩乃がダントツの人気を誇っている理由が分かった気がした。
「そうなんです。芽依ちゃん達って、ヤバい宗教に入っちゃってるんですよ」
「宗教?」
 まさか宗教とは思ってもみなかったため驚く。大人ならともかく、子供がそういったものに入るという印象がなかったからだ。
「凄く怪しげな宗教なんですけどね、芽依ちゃん達にはそれが分からないらしくて、すっかりハマっちゃってるんです。もう見るからに怪しいのに、何であんなとこ行っちゃうかなぁ」
「沙璃香ちゃんは不思議な力があるから……でも普通の人は分からないんだから仕方ないよ」
「でも彩乃ちゃんは分かってくれたじゃない。それなのに芽依ちゃん達ときたら、『大丈夫大丈夫ぅ』とか危機感ない感じで……あ〜〜、もうっ。思い出したら腹立って来ちゃった」
 プンスカという擬音が聞こえてきそうな感じで沙璃香は憤っている。自分の心配を軽く扱われたのが悔しいのだろう。
 彩乃が行かなかったのは沙璃香の忠告もあるだろうが、異能の力があったからという事もあるに違いない。それによって相手の胡散臭さを感じ取り、行く気にならなかったという所ではないだろうか。
「それで、俺はどうすればいいの? 他のイロスのメンバーの説得って訳じゃないよね?」
「あ、はい。今日は彩乃ちゃんのことで……ほら、彩乃ちゃん……」
「う、うん……」
 沙璃香が促すものの、彩乃は気が進まないようにして黙っている。
 何か言いにくいことなのだろうか。だが話してくれなければ事情が分からないため困ってしまった。
「恥ずかしいのは分かるけど、ちゃんと話さないと駄目だよ。緋道さんは凄い人だから絶対大丈夫だって」
 何度かそうして沙璃香が促したが、彩乃の態度は変わらなかった。
 それも仕方ないだろう。恥ずかしい事であればあるほど、見ず知らずの相手、しかも男に話すのは辛いに違いないからだ。沙璃香は神治に信頼を置いているが、彩乃にとってはどこの誰であるのか分からない相手なのである。
(こりゃ今日は何もしないで終わりかな。まあ、アイドルを生で見られたってだけでも良かったけど……)
 そんな事を思いながら、出されていた紅茶をちびちびと飲む。
 しばらく経っても平行線の状態は変わらなかったため、いつしかティーカップは空になっていった。
「あ、おかわりを入れてきます……」
 その事に気づいたのか、彩乃は皆のティーカップをお盆に乗せると、少し落ち着きの無い様子でキッチンへと向かった。
 場の空気が重かったため、何かする事で変えたかったのかも知れない。
 少しすると戻ってきたが、その途中、不意に彩乃が表情を曇らせたため、どうしたのかと思う。
 その時彼女はある方向へ視線を向けていたのだが、そちらにあるのは隣室のドアであったため、その部屋に何かあるのだろうか。
 そう思って意識を向けてみると、妙な感覚が起きた。
 それまで感じられなかった「気」が、それも淀んだ「気」が感じられたのだ。
 それは清純が売りのアイドルには不似合いなもの、淫の「気」だった。
 性行為の際に発生した淫の「気」が停滞して溜まっているのであり、以前その状態が酷くなっている部屋を見たことがあるが、それと似た雰囲気が感じられたのである。
「あの部屋に、何かあるの?」
 神治の指摘に、彩乃はビクッと体を震わせた。
「え? どうして分かったんですか?」
 黙っている彩乃の代わりに、沙璃香が驚きの声をあげている。
「ちょっと気になる感じがしたんでね。今回の話って、あの部屋のこと?」
「はい、そうなんです。言いにくいことなんですけど、実は彩乃ちゃん、あの部屋で変な夢を見てて……」
「沙璃香ちゃんっ」
 事情を話そうとする沙璃香を、彩乃が慌てて止めている。
「ごめん。でも話さないと分からないじゃない。彩乃ちゃんが言いにくいなら、私が話すから」
「で、でも……男の人に言うのは……」
「そりゃそうだけど。でも連れてくるのは男の人だって、あらかじめ言っておいたじゃない」
「私、大人の人だと思ってたから……同じくらいの歳の人にはちょっと……」
 彩乃はそう呟くと、困ったように下を向いている。
 沙璃香にしても、彩乃の意思を無視してまで話すことには抵抗があるのか、止められると踏ん切りがつかないようだった。
「今、夢って言ったけど、問題はその夢の内容って事かな? 言いにくいのなら詳しく話さなくてもいいけど、要するに彩乃ちゃんにとって嫌な夢を見る、ってこと?」
 神治の言葉に、彩乃は困ったように視線を彷徨わせた。
 しかし少しすると覚悟したらしく、小さく首を縦に振っている。
 おそらく夢の内容は性的なものだろう。あの部屋の淫の「気」の溜まり具合からして、そうした夢を見ても不思議ではないからだ。
 それゆえに男の自分には話しにくいという事に違いない。淫夢でも見ているのだろうか。
「あの部屋は寝室かな? あの部屋で嫌な夢を見るの?」
「はい……あの部屋で寝た時だけ何故か見るんです。仕事で外泊した時は大丈夫なんですけど……あの部屋で寝ると必ず見るんです。それも夢に思えないくらいリアルに感じられるのを……それも決まって夜の十二時に……」
「え? 寝てるのに時間が分かるの?」
「あ、すみません。ベッドの傍に置いてある時計を見ると必ず十二時なので……夢の中での話ですけど……夢の中でも私、あの部屋で寝てるんです。だから凄くリアルに感じちゃって……」
 なるほど、それは確かにそうだろう。
 寝た時の状況と同じとなれば、現実のように感じられても不思議はないからだ。
「つまり彩乃ちゃんは、夢を現実のように感じちゃっている訳か。そこが問題って事かな?」
「夢だって自覚はあるんですけど、凄くリアルな感じなので、どうしても夢だとは思えなくて……でも現実のはずもないので、凄く混乱しちゃってるんです……」
「なるほどね……つまり今回の相談は、嫌な夢を見るあの部屋を何とかして欲しいって事かな。確かに寝室が使えないんじゃ困るもんね。じゃあ、今はこの部屋とかで寝てるの?」
 神治が尋ねると、彩乃は辛そうな表情を浮かべて押し黙った。
 特に変な質問でも無かったと思うのだが、何かマズかったのだろうか。
「別の部屋で寝ても、朝になるとあの部屋で寝てるんだそうです……」
 沙璃香の言葉に息を飲む。
 何やら話が怪談ネタになってきた。一体どういう事なのだろう。
「それって寝ぼけて間違えたとかじゃなく?」
「私も最初は寝ぼけたのかと思ったんです。でも毎日同じことが続くとそうも思えなくて……それに私、元々寝ぼけるって事が無いんです。だからどうしてこんな事になってるのか分からなくて……」
 神治にしても、夜中にトイレへ行って戻る時に部屋を間違えた、といった経験は無かった。一度起きるとある程度意識がハッキリするからだ。
 彩乃が同じタイプだとすれば、寝ぼけて間違えたという事は無いに違いない。しかも毎日となれば余計にあり得ないだろう。
「それに私……最近十二時まで起きていられないんです」
「え?」
「起きていようって思ってても絶対無理で、十二時近くになると必ず意識が無くなって……ここで本を読んでいても、気がつくと朝になってて、あの部屋のベッドで寝てるんです……前はそんなこと無かったのに、あの夢を見るようになってから、絶対十二時より遅くまで起きていられなくなって……だから夢の中で、時計が十二時になっているのが凄く怖くて……」
 彩乃は泣きそうな顔をして呟いている。
 確かにゾッとする話だった。怪談として聞くのであれば面白いかも知れないが、実際に体験しているとなれば怖くてたまらないだろう。
「緋道さん、これってただの夢じゃないですよね? 実際十二時に何か来てるんだと思うんです。幽霊か何か悪いモノが……だから私、緋道さんに除霊でも何でもいいから、とにかく何とかしてもらいたくて今日お呼びしたんです」
 沙璃香は心配そうに彩乃を見つめながら告げている。
 なるほどこれはオカルトな状況だった。確かに普通の人間では対処できないだろう。
 とはいえ、神治としても幽霊相手は自信が無かった。
 これまで非常識な出来事は色々経験してきたが、幽霊と関わりを持ったことは無かったからだ。
「俺は除霊なんて出来ないよ」
「大丈夫です緋道さんなら。今までしたこと無くても何とかなりますって」
 沙璃香の根拠の無い言葉に呆れるが、そこまで信頼してくれていると思うと嬉しくもなった。
「取り敢えず部屋を見れば何か分かるかも知れませんよ。だから見てみてください。いいよね彩乃ちゃん、緋道さんに部屋を見てもらっても」
 沙璃香の言葉に、彩乃は辛そうな表情を浮かべた。
 性的な夢を見ている場所だとすれば当然の反応だろう。それに「男に寝室を見せる」という事にも抵抗があるに違いない。
 しかし彩乃はすぐに小さく頷くと、立ち上がって部屋の入り口まで移動した。
 だがそこからはどうにも踏ん切りが付かないようで、ドアを見つめたまま固まってしまっている。
「彩乃ちゃん」
 沙璃香の呼びかけにようやく覚悟が決まったのか、彩乃はゆっくり部屋のドアを開けると、中が見えるように脇へよけた。
 部屋は六畳ほどの広さで、寝室らしく中央に大きなベッドが置かれてあった。
 周囲には特に物は無く、ベッドの傍にある目覚まし時計が目に付くくらいだ。これが夢の中で十二時を指しているという時計だろう。
「入っていいかな?」
 そう尋ねると小さく頷いて了承してきたため、神治はゆっくりと足を踏み入れた。
(ん……?)
 その瞬間、妙な抵抗を受けたため驚く。
 どうやらそれは結界のようだった。この部屋を覆うようにして何かの結界が張られているのだ。
 そして中は、予想以上の淫の「気」に満ちていた。
 先ほど感知したものとは比較にならない強い淫の「気」が充満しているのだ。おそらく結界のせいで外からは分からないようになっていたのだろう。
「うわ、何これ……?」
 部屋へ入ろうとした沙璃香は、顔をしかめると慌てて後ずさった。異能の力があるだけに、強い淫の「気」を感じて驚いたのに違いない。
「凄く嫌な感じがする。この部屋ってこんな風になってたんだ。入るまで分からなかったよ。これじゃ益々何かあるって事じゃん」
 沙璃香の言葉に心の中で同意する。
 確かにこれは何かありまくりだった。そもそも結界が自然に張られるはずも無いのだから、人為的なものであるのは明らかだった。
「緋道さん平気なんですか? よく中に居られますね」
「まあ、何とかね。でも二人は入らない方がいいな」
「言われなくても入りません」
 沙璃香は顔をしかめたまま呟いている。
 しかし彩乃の方は、神治の言葉が聞こえなかったようにフラフラと部屋へ入ろうとしたため、慌てて肩を押さえて止める。
 それでも無理矢理入ろうとしてきたため、強めに押して部屋から少し離す。
 見れば目が虚ろになっており、意識が混濁しているのが感じられた。
「彩乃ちゃんっ」
 沙璃香が大声で呼びかけると、彩乃は体をピクッと震わせ、少しすると気がついたのか、驚いた顔をして視線を彷徨わせている。
「あ……え? わ、私……」
「緋道さん、これって……」
 沙璃香が恐怖の表情を浮かべて尋ねてくるのに、頷いて応える。
 彩乃の様子は、何かしらの精神制御をされている感じだった。
 無意識の内に部屋の中へ入ろうとした点からして、そういった暗示をかけられているといったところか。
 これが他の部屋で寝ても、朝になるとここで目覚める理由に違いなかった。
 そんな事を考えつつ、再び部屋の中へ足を踏み入れた神治は、注意深く辺りを見回してみた。
(ん、何だ……?)
 ベッドが接している壁の部分に違和感を覚えたため、意識を集中させる。
 近づいてよく見てみると、どうやら空間の歪みがあるのが分かった。
 瞬間移動をする際に起きるものと似ていたため、何かがこの部屋へやって来ているのは明らかなようだった。
 それが幽霊なのか生きている人間なのかは不明だが、とにかく何かが現れているのだ。
 こうなってくると、彩乃が体験しているのは、夢ではなく現実の出来事であるように思えてきた。
 夢のように感じているのは、おそらく精神制御の影響で半覚醒状態となり、ハッキリと認識出来ていないせいだろう。
 そう考えつつ他に無いかと探ってみると、部屋の隅に何かの術の残滓が感じられた。
 それは神治にとって馴染みのある、淫の「気」を高める術だった。これによってこの部屋は、異常なまでに性的に高められているのだ。
 他のことと合わせて考えていくと、どうやらこの部屋には、合理的に強姦するための仕掛けが施されている、という感じだった。
 決まった時刻に相手の意識を奪い、特定の部屋へ誘導し、強制的に欲情させるとなれば、そう考えるのが妥当だからだ。
 おそらくここに現れる存在は、彩乃を犯しているに違いなかった。
 このような事を普通の人間が出来るはずもないから、相手は何かしらの力の持ち主に思えた。それも悪意のある人間だ。もしくは悪霊と言うべきか。
 前者であれば対処出来るが、後者であればどうすればいいのか分からなかった。
 生きている相手であれば、化け物とも渡り合ったことがあるので自信があったが、幽霊となると未知の存在だからだ。果たして死者に対し、自分の力は効果があるのだろうか。
 そんな不安を抱いたが、かといって辛そうにしている彩乃を放っておくことも出来ないため、何とかするしかないだろうと腹をくくる。
(気合い、入れないとな……)
 そう思いながら続けて調査をした後、他には何もないようだと判断した神治は、部屋の外へ出た。
「この部屋に何かあるのは確かみたいだね。でも詳しくは分からないから、後は実際十二時に何が起きるのか調べてみようと思うんだけど」
「はい、宜しくお願いします。良かったね彩乃ちゃん。緋道さんが何とかしてくれるって」
 そこまでは言っていないのだが、沙璃香の中ではすでに神治が解決する事になっているらしい。
「よ、宜しくお願いします」
 彩乃は小さく呟くと、ペコリと頭を下げている。
 すがるような目で見つめられると、本当に何とかしてあげなくてはという気持ちが強まった。
 彩乃にはそうした庇護欲を擽る部分があり、そこもアイドルとして人気を得ている理由の一つなのだろう。
「十二時前に意識が無くなるんだよね。あともう少しか……取り敢えずあっちの部屋で待ってようか」
 神治の促しに沙璃香と彩乃は従い、三人は元の部屋で時間が来るのを待つことにした。
 時刻は十一時三十分。彩乃の話が事実であれば、後三十分ほどで何かが起きるはずだった。
 待つ間、沙璃香が気を遣って色々話をしたが、あまり盛り上がらなかったのは仕方がないだろう。
 そうして長く感じられる時間が過ぎると、いよいよ時刻は十二時になろうとしていた。
 三人の視線は壁にかかった時計に集中し、長針と短針が重なり合う瞬間を待っている。
「!……」
 不意に沙璃香の息を飲む声が聞こえたため視線を向けると、彩乃が立ち上がり、フラフラと歩いているのが見えた。どうやら始まったらしい。
 目は虚ろになっていて、先ほど強引に部屋へ入ろうとした際と同じ状態になっているのが分かる。
 寝室のドアを開けて中へ入っていったため、神治も後に続いたが、沙璃香は部屋の入り口で躊躇したように立ち止まった。やはり入りたくないのだろう。
 手振りでそこに居るよう指示してから、視線を彩乃へ戻し、彼女がベッドの上で仰向けに横たわるのを確認する。
 その後はジッとしたまま動かなかったため、神治は近くの床に腰を下ろすと、何が起きても対応できるよう、意識を鋭敏にして待つ事にした。
 視線を空間の歪みのある場所へ向け、注視する。何か起きるとすればここに違いないからだ。
 物音しない静けさの中、徐々に彩乃の呼吸が乱れていくのが分かる。
 部屋に充満している淫の「気」の影響で欲情し始めたのだろう。時折体をモジモジとくねらせているのは、体が火照ってきているために違いない。
 何もされていないにも関わらず、すでに呼吸は色っぽさを感じさせるものになっており、体の動きも淫らな雰囲気を纏い始めていた。
 可愛い容姿の少女がそうしている姿にはたまらないものがあり、思わず肉欲が高まりそうになるが、それを強引に抑え込む。
 彩乃の存在をただの物体のように認識し、意識を周囲の変化のみに集中させるようにしていく。
 余計な事に乱されない状態にしつつ、壁にある空間の歪みをジッと見つめ続ける。
 そうして少しした頃だろうか、ついに変化が起き始めた。
 空間の歪みが強くなり、ハッキリと分かるほどに壁がグニャグニャとした状態になったのだ。まるで生き物のように脈動しており、それが嫌悪感を覚えさせる。
 続けて歪みから何かが現れてくるのが見えた。
 最初もやのような塊だったそれは、ゆっくりと形を持ち始め、やがて人間の姿になっていった。
 ただぼんやりとしていて、個体を識別できる要素は確認できなかった。一応目と口だけは、それと分かるように穴が見えたが、後は輪郭ががっちりしている様子から、男だと推測できる程度だ。
 さらに背後が透けて見えていることから、実体でないのは明らかだった。幽霊男、といったところだろうか。
「!……」
 沙璃香の息を飲む声が聞こえる。ある程度異能の力のある彼女には知覚出来ているのだろう。
 そしてそれに反応したのか、こちらを向いた幽霊男は、神治と沙璃香の存在に気づくと、驚いたようにして硬直した。
 だがすぐに力を抜くと、沙璃香をジッと見つめるように、そちらの方へ顔を向けている。
 男の目は黒い穴でしかなかったが、それでも意思を感じさせるものがあり、悪意に満ちているのが伝わってきた。
 沙璃香はそれを感じ取ったのか、それとも単に得体の知れない存在への恐怖からか、呼吸を激しく乱して震えている。
 その様子に満足したらしい男は、ニンマリといった笑みを浮かべた。
 黒い穴でしかない口が笑みを形作るのは何とも不気味であり、沙璃香は小さく悲鳴の声を漏らした。
 幽霊男はその事でさらに悦びを覚えたようで、笑みを浮かべたまま体を小刻みに震わせている。声は聞こえないが、おそらく笑っているのだろう。
 それは実にいやらしさを感じさせるものであり、もしかしたら沙璃香も毒牙に掛けようと思っているのかも知れない。何しろ彼女は十二分に可愛らしい容姿をしているからだ。
 一方で神治を無視しているのは、男はどうでもいいと思っているのだろう。通常であれば男の存在は障害になる訳だが、実体が無いとすれば、現実の腕力など意味をなさないからだ。
 何にせよ油断してくれているのはありがたかったため、神治はそのまま何もせず様子を伺うことにした。
 幽霊男は彩乃に視線を戻すと、その体に手を伸ばし、いやらしく撫でるような動きをした。
 驚いたことに、男の手が彩乃の体に入り込むようになっており、その事からやはり実体の無い存在であるのが分かる。
 だが彩乃には触れられている感触があるのか、それとも何かしらの刺激を与える効果があるのか反応を示しており、呼吸も徐々に乱れていっていた。
 幽霊男の手が胸の辺りで乳房を掴むような動きをすると、それに合わせて彩乃がピクっと体を震わせ、「あ……」といった可愛らしい吐息を漏らした。
 まるで実際に乳房を愛撫されているとしか思えない反応なのだが、男の手は彩乃の体にめり込むようになっており、その異常すぎる光景に、神治は驚愕の想いを抱いた。
 幽霊男は彩乃の反応に満足げな笑みを浮かべると、さらに乳房を揉むように手を動かし、自らの顔を埋めるようにし、体全体を擦り付けるようにしていっている。
 その動き全てにおいて、男の体が彩乃の中に入り込み、融合しているように見えるのが気色悪さを感じさせる光景になっていた。
「あ……あぁっ……」
 異常な行為であるにも関わらず、彩乃は快感を得ているらしく、体をクネクネといやらしく動かしながら、時折ピクッと震えを示し、与えられる刺激に反応を示している。
 幽霊男は呼吸を乱しているように肩を大きく揺らしており、そのまるで実体があるかのような動きに、神治は強い奇妙さを覚えた。
 それと同時に、いい加減止めるべきである事に気がつく。
 あまりに異常な光景につい見とれてしまっていたが、これは強姦なのだ。早く行為を止めなければいけないだろう。
 そう思い、立ち上がって男の体に手をかけようとするが、何の手応えもなく空を切る。というより、体の中に手が入り込んでいる状態だった。
 やはり何もない。実体のない存在なのだ。これでは止めようがなかった。
 幽霊男は神治の動きに気がつくと、面倒くさそうにこちらをチラリと見た後、肩をすくめたようにしながら、再び彩乃に対する行為を続けていった。
 その態度に怒りを覚え、何度か男の体に触れようとしてみるが、やはり何の手応えも起きなかった。
 そうしている間も彩乃の体は蹂躙され、可愛らしくもいやらしい声が部屋に響き渡っていく。
「!……」
 不意に沙璃香の息を飲む声が聞こえたため、どうしたのかと思うが、すぐにその理由が分かった。
 幽霊男の股間辺りの輪郭が、まるで一物がそそり立っているかのように突きだしていたからだ。
 ぼんやりとしか形は分からないが、明らかにそれは肉棒だった。それもかなりの長さ、太さである。
 幽霊男はそれを彩乃の股間へ擦り付けるようにし、そのたびに小刻みに体を震わせている。
 少しすると、のし掛かるように体を寄せ、肉棒を押し込むような動きをした。
「あぅっ……あっ、あぁんっ……」
 その瞬間、彩乃がまるで実際に肉棒を入れられたかのような硬直を示し、甘い声を漏らすのにゴクリと唾を飲み込む。
 それはあまりに異常な光景だった。
 実体の無い男に愛撫され、実体の無い肉棒を押し込まれて喘ぎ悶える少女。
 まさに幽霊に犯されている、と言ったところだろう。
 そして彩乃はこの状況を夢のように感じているのだ。リアルに感じているらしいから、今もある程度意識があるのかも知れない。
「あっ、あぁっ……あっ、あんっ……」
 幽霊男の腰が前後に動き出し、それに合わせて彩乃が喘ぎ悶えている。
 本当にセックスをしているようなその反応に驚きつつ、どうしてそうなっているのかと疑念を抱く。
 実体が無い以上、肉体に対する刺激は無いはずだからだ。
 しかし彩乃はまるで肉体に刺激を与えられているかのような反応を示しており、そこには何か理由があるはずだった。
 そもそもこの男はどういった存在なのか。
 本物の幽霊なのか、それとも何かしらの術で幽霊のような状態になっているのか。
 そうした疑問が頭の中をグルグルと回っていく。
 そんな事を考えていると、幽霊男の腰の動きが激しさを増していっているのが見えた。
 まもなく射精するといった雰囲気だが、実体の無い存在でそのような事があるのだろうか。
 幽霊男の体が大きく硬直し、頭を仰け反らせる状態になった。
 ガクガクと小刻みに震えており、まさに射精しているといった感じだ。
 そしてその瞬間、輪郭がそれまでより増したように見えた。存在感が強まった、と言うべきか。
 もしかしたら今なら触れられるのではないか。
 そう思った神治は、意識を集中させて幽霊男の肩に手を伸ばしてみた。
(触れたっ……)
 予想通り触れることが出来たのに驚喜する。確かに手のひらに何かが触れている感触があるのだ。
 そのまま両肩に手を置くと、勢い良く引っ張ってみる。
 すると幽霊男は後ろに倒れ、両脚を開いただらしない格好で寝そべった。
 その目は驚いたように見開かれ、硬直している。
 恐怖を感じたのか小刻みに震えており、何かを喋るようにして口を動かしている。声は聞こえないが、唇の形から「何で?」と言っているようだ。
 やがて慌てた様子で四つんばいになると、自分が現れた空間の歪みの方へと移動し始めた。逃げるつもりなのだろう。
 そうはさせじと、神治は男の足を掴んで引っ張ろうとしたが、手は空を切った。また掴めなくなっているのだ。
 どうやらただ掴むだけでは駄目なようだった。意識を集中させる必要があるのだろう。
 そう思い、意識を強めながら掴んでみると、今度は手のひらに感触が起きた。
 幽霊男はその事に狂乱せんばかりに暴れたため、放されないよう慌てて強く掴む、というか意識を強く集中させるが、それが精一杯であり、引き留めるほどの力は出せず、男の逃げる動きに引っ張られてしまう。
 そうこうしている内に、空間の歪みまで辿り着かれてしまった。
 次の瞬間、男の体が歪み始め、出てきた時と同じように消えていくのが分かる。このままでは逃げられてしまうだろう。
(逃がすかっ……)
 そう思った瞬間、周囲が異なる場所になったため硬直する。
 どういう事なのかと驚くが、すぐに幽霊男と一緒に移動したのだと理解した。
 逃がすまいという意識が強まったため、無意識の内に瞬間移動の力を使ったのだろう。
 行き先が分からない状態だったが、幽霊男の足を掴んでいたことで、同じ場所へ移動したに違いない。
 実際目の前では、幽霊男がヨタヨタと四つんばいで動いており、傍にあるベッドへ上がっている。
 そこには二十代前半くらいの男が横たわっていて、幽霊男がその体に重なるようにすると、痙攣が走り抜けた。
 どうやらこれが幽霊男の本体らしい。つまり生き霊だったという訳だ。
 おそらく何かしらの手段によって幽霊状態となり、彩乃の部屋を訪れていたのだろう。
 しかし一体どうやってそうしたのか。
 そんな疑問を抱きながら部屋の様子を見回していると、不意に妙な「気」を感じたため、視線をそちらへ向けてみる。
 そこにはガラスで出来た三角錐の置物が置かれてあり、「気」はそこから発せられているようだった。
 手にとってみると、強い「気」が伝わってくるのが感じられ、何かの術が仕込まれているのが分かった。
 さらによく調べてみると、普段自分が瞬間移動する際に使っている「気」の波動と似ていたため、おそらくこれが幽霊男を移動させている道具なのだろう。
 ベッドで横たわっている男からは並の「気」しか感じられないため、こうした道具を使わないと移動出来ないに違いない。
 つまりこの置物の中の術を壊せば、この男は彩乃の部屋へ移動出来なくなるのだ。
 そう思った神治は、手のひらに「気」を集中すると、置物へ一気に放出させた。
 置物の中の術が壊れるのが知覚され、ただの物になったのが分かる。
 これでもうこの男は、彩乃の部屋へは行けなくなった訳だ。
 無論同じ物を手に入れれば別だが、そうなっても防ぐ方法はあるので問題はなかった。
 要は彩乃の部屋の方へ結界を張ってしまえば良いのだ。入ろうとしても入れなくしてしまえば良いのである。
 そういう意味ではこの置物の中の術を壊す必要は無かった訳だが、気分の問題というやつだ。何よりこちらが結界を張るまでの時間稼ぎにはなるだろう。
「! お、お前っ。何でここに……」
 不意に声が聞こえたため視線を向けると、目を覚ました幽霊男が驚愕の表情を浮かべてこちらを見つめていた。
「どうして居るんだよ?……か、体あるし……」
 男は動揺した様子で、神治が肉体ごと移動している事を指摘している。
 あの三角錐に仕込まれた術のレベルでは、幽霊状態での移動しか出来ないため、今目にしている状況が信じられないのだろう。
「ば、化けモンだ……」
 何とも酷い事を言うものだと思いつつ、強姦魔に好かれるつもりもないので、気にせず彩乃の寝室へ戻ることにする。
 このような場所に長居しても意味はないし、すでに移動の手段は破壊したのだから成果としては十分だった。幽霊状態になる方法は分からなかったが、どのみち彩乃の部屋へは入れなくなるのだから、無視しても問題はなかった。
 戻ることを意識すると、一瞬にして風景が変わり、元の部屋へ移動したのが分かる。
 続けて目の前の状況を認識した神治は、少々マズい事になっているのに気がついた。
 沙璃香が驚愕の表情を浮かべて硬直していたからだ。どうやら消えて再び現れたのを見られてしまったらしい。
 瞬間移動の事はあまり言いたくないため、どうしたものかと思う。
 彩乃は未だ朦朧とした様子なので大丈夫だろうが、沙璃香には何かしら誤魔化しの言葉を告げなくてはならないだろう。
「あ……ひ、緋道さん……緋道さん、居た……良かった消えちゃったと思った……」
「消えてなんかいないよ。大丈夫だって」
「で、でも今確かに消えて……」
「目の錯覚じゃないかな。変な状態になっていた訳だし、消えたように見えてもおかしくないからね」
 少々無理があるかと思いつつ告げると、沙璃香は一瞬ポカンっとした表情を浮かべた後、納得したように小さく頷いた。
「そ、そうですよね……消えるなんてあり得ないですよね……やっぱり目の錯覚だったんだ。あ〜〜、安心した……」
 胸に手をやりながら、ホッとしたように息を吐き出している。
 微妙な言い訳だったが、沙璃香が納得しているのならこれでいいだろう。
 まあ、人が消えるなどという現象を信じるよりも、目の錯覚の方が理解しやすいのだからそうなっても当然だったが。人は己が信じやすいものを信じるものなのである。
「あれってやっぱり幽霊だったんですか? 彩乃ちゃんは幽霊に何かされて、それであんな風になってたんですか?」
「そうだね。あれは幽霊だと思う」
 生き霊である事は告げない方がいいだろう。
 生き霊となると、生きている人間にされていた事になり、現実に強姦されたのと同じような印象を与えかねないからだ。
 それならば幽霊にしておいた方が「肉体的には無事だった」と思えることができ、精神的に良いと思えたのである。
「でも緋道さん、彩乃ちゃんから引き離してましたよね? 何でそんなこと出来たんですか? 霊能力?」
「まあ、そんなもんかな。最初は掴めなかったんだけど、頑張ってたら何か掴めたんだよ」
「凄いですねぇ。やっぱり緋道さんは凄いです」
 沙璃香はうっとりとした表情を浮かべ、感動したように呟いている。
「取り敢えず、後で幽霊が入って来られなくなる道具と、この部屋の状態を改善する道具をもらってくるよ。そういうの持ってる知り合いが居るから」
「本当ですか?」
「うん。それを置けば大丈夫になると思う」
「うわ〜〜、凄いです。さすが緋道さんです。素晴らしいです」
 尊敬の眼差し、を超えて崇拝するような視線になっているのに苦笑する。
 部の民としての意識があるせいか、沙璃香はきっかけがあるとそういった状態になるのだ。
「俺はもらってくるだけだよ。別に凄くないって」
「でもどうすればいいのか分かるんですし、そういうのを持っている知り合いも居るんですから凄いですよ」
 確かに全く知識の無い人間からしてみれば大したものであるのかも知れない。
 もし数年前の、何も知らない頃の自分であれば、同じように凄いと思ったに違いないからだ。
 そう思うと、何と変わったものだと改めて感慨を覚えた。
「彩乃ちゃんにも後で教えてあげなきゃ。緋道さん、彩乃ちゃんどうですか? 大丈夫そうですか?」
 部屋へ入れないため、沙璃香はベッドの様子を伺うようにして尋ねている。
 見れば彩乃は幸せそうな笑みを浮かべて眠っていた。
 幽霊男が去った事で何も意識せずに眠れているのだろう。
 淫の「気」が残っているため、いくらかの影響はあるだろうが、直接何かされているよりは問題ないはずだった。
「大丈夫みたいだよ。気持ち良さそうに寝てる」
「良かった。もうこれからは大丈夫ですもんね。凄く安心しました」
 ホッと息を吐き出しながら嬉しそうに微笑む沙璃香を見ていると、良いことをしたのだという達成感が強く感じられて嬉しくなった。
 自分は一人の少女を淫夢から、精神的な強姦から救うことが出来たのだ。それは実に素晴らしいことだろう。
 それを完璧にするには明日にでも、というよりすでに今日だが、この部屋の浄化をし、結界を張る必要があった。
 帰ったら早速未迦知神に相談しよう。
 そう思った神治は、もう一度彩乃の寝顔を眺めると、その幸せそうな笑みを見つめ、満足感を覚えながら寝室から出て行くのだった。


 数日後。
 神治はイロスのコンサートが開かれている会場へ来ていた。
 先日のお礼にと、彩乃に招待されたのだ。
 周囲は大音量の演奏と歌声、観客の歓声が混じり合い、頭がクラクラするほどになっていた。
 静かな場所が好きな神治としては少々辟易する部分もあったが、その熱気にワクワクしているのも確かだった。 
 舞台上ではイロスのメンバー四人が歌い踊っていて、その見事なパフォーマンスに感嘆の想いを抱く。
 少女達の年齢は十四、五歳ほどで、皆可愛らしい顔立ちをしており、幼さを伴う華やかさに溢れていた。
 赤と黒を基調とした制服風の衣装を身につけた姿は実に愛らしく、ヒラヒラとした短いスカートから伸びる太ももの白さは、男の獣欲を十分に刺激するものがあった。
 軽やかな動きで踊り、甘ったるい声で歌っているその姿は微妙な色気を感じさせ、同じ年頃の少年はもとより、成人男性をも惹き付ける魅力があると言えただろう。
 事実会場に来ているのは成人男性が多く、彼らはサイリュームを熱心に振って少女達を凝視し、熱狂的な声援を送っている。その姿は、まさに少女達に魅入られたものだ。
 人気絶頂のグループ「イロス」は、そうしたアイドルとしての魅力を十二分に兼ね備えた存在だった。
 神治はその中で、中心となって歌い踊っている彩乃を見つめていた。
 先日知り合った少女だが、こうして見ていると別世界の住人のように思えてくる。
 活発に歌い踊るその姿は、直接接した際に感じた大人しげな雰囲気とは異なるものがあり、男を蕩けさせる笑みを浮かべ、潤んだ瞳を周囲に向ける様子には、強烈に惹き付けられるものを感じさせた。
 まさにこの年頃の少女のみが持つ、内に籠もった色気が存在し、その妖精のような魅力には抗いがたいものがあった。
 もし自分に異能の力や、これまでの経験が無ければ、熱烈なファンになっていたかも知れない。それほどまでに強い魅力があったのだ。
 実際彩乃が手を振ったり視線を向けたりすると、その方向に居るファンの男達は激しくどよめいており、それと共に彼らの発する強い淫の「気」が津波のように押し寄せてきたため、非常に苦しくなるほどだった。
 これまで他人の淫の「気」を感じたことは何度もあったが、ここまで大量の強烈なものを浴びるのは初めてであり、それが一人の少女に向けられているのかと思うとゾッとなる。
 これがアイドルというものなのだろうが、よくもまあ耐えられるものだと感心してしまう。
 これほど強い淫の「気」、つまり性欲の対象として見ている男が多いとなれば、中にはろくでもない事を考える人間が居ても不思議ではないだろう。
 あの幽霊男にしても、そうした想いが暴走し、あのような事をしでかしてしまったのかも知れない。
 とはいえ、幽体離脱や空間転移を使って強姦する、というのは普通ではない事ではあったが。
 あの空間転移を可能とする道具は、一体どこから入手したのか。あのような物、手に入れようと思ってもなかなか手に入れられる物ではないだろう。
 それをあの男はどうやって入手したのか。
 気になるところではあったが、そこまで調べる気にはなれなかったし、何より突き止めてどうするのか、という想いもあったため、何もしない事にしていた。
 どのみち今の彩乃の部屋は、悪意を持つ人間は入れないようになっていたため問題は無かったからだ。
 あの日の翌日、正確には同じ日の夜と言うべきか、再び彩乃の部屋を訪れた神治は、未迦知神のアドバイスに従って、部屋の浄化と結界の解除、そして新たな結界を張る作業を行った。
 部屋の浄化には、緋道村でも使っている特殊な仕掛けを施した人形を用い、一定方向へ「気」を誘導することで、淫の「気」の淀みを無くす流れを作った。
 これにより、時間はかかるが、しばらくすれば部屋から淫の「気」は無くなるはずだった。
 結界に関しては、まず従来のものを破壊し、続けて彩乃に悪意を持つ存在が入れない結界を張った。
 この新しい結界は、神治の「気」を込めた石を使ったものであり、全ての部屋を覆うかなり強固なものとなっていた。
 未熟とはいえ神の「気」に基づくものであるから、相手が人間である限り破ることは出来ないだろう。あの幽霊男ももう来れないという訳だ。
 寝室へ誘導されてしまう精神制御については、よほど強いものがかけられていない限り、しばらくすれば普通の状態になるという事だった。
 少しの間は続いてしまうかも知れないが、もはやあの部屋へ移動しても襲われることはないのだから問題ないだろう。
 つまり彩乃に相談された悩みは、これで全て解決したという訳だ。
 そうなると彩乃と逢えなくなるため残念だったが、アイドルという人気商売である事を考えればそれも仕方なかった。男である自分が周囲を彷徨いては、何かと面倒なことになりかねないからだ。
 コンサートに招待してもらったのが最後の関わりだろう。
 そんな事を考えながら舞台の彩乃を見つめた神治は、その魅力溢れる姿に満足の想いを抱いた。
 そこには可愛らしい笑顔があり、見ているだけで幸せな気分になった。
 まさにアイドルは、人を幸せにする職業だった。
 会場にはその幸せに浸った男達が何千人とおり、それを守ったのは自分なのだと思うと誇らしさを覚える。
 今後逢うこともないだろうが、影ながら応援していこう。
 そう思った神治は、歌い踊っている彩乃の姿を見つめつつ、盛り上がっているコンサートを楽しんでいくのだった。


 それからまた数日が経ったある日。
 神治は、家で静と夕食を食べながらテレビを見ていた。
 画面に映っているのは情報番組で、いつもただ何となく流しているといった程度のものだ。
 今も面白くもない旅の情報が紹介されているのをボーッと眺めつつ、時折静が番組にツッコミを入れるのを聞きながらご飯を口に運ぶ、といったいつも通りの夕食風景が展開されていた。
「……イロスのこの曲は売れ行きが好調であり、今日はそのイロスの四人にインタビューしてきました……」
 不意に聞こえてきた「イロス」という言葉に耳をそばだたせる。
 テレビへ視線を向ければ、赤と黒を基調とした制服風の衣装を身に纏ったイロスが、インタビューを受けている様子が映っていた。
 中央には彩乃の姿があり、その実に可愛らしい姿に自然と頬が緩む。
 以前はそのような事は無かったのだが、やはり直接逢ったことで意識しているのかも知れない。
 インタビューの内容は、売れ行きが好調な曲についての話で、これは人気映画の主題歌になっている事から、かなりのヒットになっているものだった。
 神治もサビ程度なら口ずさめるほどであり、ヒット曲があまり無い昨今の音楽市場を考えれば大したものと言えるだろう。
 彩乃は質問に答えながら時折笑みを浮かべるのだが、それが非常に可愛らしく、確実に以前よりも魅力が増しているように思えた。まさに輝いているといった感じだろう。
「この真ん中の子、最近可愛くなったわよね。何か輝いてるっていうか」
「え?」
 不意に静がそう告げてきたため、内心を見透かされたように感じた神治は、少し動揺した反応を示してしまった。
「あら? 神ちゃんイロスに興味あるの? というか、真ん中の子にってことかな。この子神ちゃんのタイプ?」
 鋭い静にはそれだけで十分だったようで、彩乃に意識を向けているのに気づかれてしまった。
 こうなるともはや誤魔化しが効かないのは、幼い頃からの経験で分かっている事だ。
「いや、この間偶然逢ったからさ。それでちょっと気になって……」
「へぇ、逢ったんだ。じゃあ直接見てるのよね。それで余計に可愛いって思ってるの? やっぱりタイプ?」
「ま、まあ、タイプと言えばタイプだけど……」
「そうよね、この子って一見活発な感じに見えるけど、普段は大人しそうだもの。神ちゃん大人しい子、好きだもんね」
 彩乃の素の性格を見抜くとはさすがだと思いつつ、神治は早くこの話題が終わってくれることを願った。
 彩乃との関わりは他言出来ない内容であったため、追求されると困ったし、静に追求されると答えないで済ますというのは難しかったからだ。
「それにしても、何だかホント前より輝いてるわよね。何かあったのかな? 恋してるとか? アイドルでも恋はするでしょうからねぇ。神ちゃんはショックかも知れないけど」
「別にファンって訳でもないからどうでもいいよ。アイドルだって、恋をして幸せになれるならいいんじゃないの?」
 取り敢えず会った件について追求されない事にホッとしつつそう答える。
 内容にしても、実際本当に思っていることでもあった。
 あのような出来事があったことを考えれば、恋でもしてそちらに意識が集中した方がいいからだ。幸せであれば嫌なことなど思い出さないで済むだろう。
「確かにそうだけど、アイドルやってるんだし、やっぱり恋はマズいわよね。多くの男の妄想の恋人として夢を売っているんだから、恋愛沙汰は御法度よ。大体最近のアイドルはそうした心構えってのがなってないのよね。仕事としてやっているって意識が低いっていうか……」
 何やらアイドルの心構えについて語り出した静に苦笑しつつ、再び視線をテレビ画面の彩乃へ向ける。
 そこには笑顔が眩しい魅力的な姿が映っていた。
 これほど輝いているのだから、幽霊男のことは意識しないで済んでいるのだろう。
 それは本当に良かったと思えることだった。いくら肉体が無事とはいえ、陵辱されていた記憶はあるのだから、辛いはずだからだ。
 あのような事はずっと思い出さず、これからもアイドルとして頑張っていって欲しいものだ。
 そんな事を考えながら、静のアイドル論に耳を傾けつつ、すでに別の内容に変わっている番組をぼんやり眺めていると、不意にメールの着信音が鳴ったため、ケータイを取り出す。
 見れば送り主は沙璃香であり、内容を読むと次のようなことが書かれてあった。
【彩乃ちゃんが、緋道さんに改めてお礼がしたいので、部屋へ来て欲しいって言ってます】
 たった今テレビで観ていた相手の話題である偶然に面白さを感じつつ、お礼という言葉に苦笑する。
 すでに言葉でのお礼としては部屋の浄化の際に散々言われていたし、形としてのお礼も、先日コンサートに招待してもらった事で十分だった。
 これ以上気を遣わせるのは逆に申し訳ないと思えたため、辞退する方が良いだろうと判断し、断りのメールを送ることにする。
 しかし返信してから少しすると、再び沙璃香からメールが届いた。
【彩乃ちゃん、どうしてもお礼がしたいって言ってます。もう一度直接逢って、きちんとお礼がしたいんだって言って……】
 随分と真面目な子だと思いつつ、続けて文章を読んだ神治は、その意外な内容に驚いた。
【それであの……何か凄いんです彩乃ちゃん。最近緋道さんのことばかり話してて、緋道さんが凄いって、素晴らしいって言ってて……お礼ってのは口実で、本当は緋道さんに会いたいんだと思います……私もその気持ち、凄く分かるので……だからお願いします。会ってあげて下さい】
 神治は少し考え込んだ。
 これはどういう事だろう。彩乃の様子は、まるで部の民のようではないか。
 そう言えば部屋の浄化の際に逢った時も、しつこいほどに感謝の言葉を述べていたが、部の民として目覚めていたためだとすれば納得だった。
 もしそうだとすると、何故目覚めたのだろう。
 異能の力があるとはいえ、セックスした訳ではない彩乃がそうなるのは不自然だった。
 もしや相性がよほど良い、つまり神性を感じやすい資質があるという事なのだろうか。そうした人間は、近づいただけでも部の民として目覚めるからだ。
 実際友人の朱理がそうであったし、巫女の資質のある齋に至っては、出会う前から神治のことを認識し、慕っていたくらいなのである。
 とはいえ、彩乃は逢ってすぐの頃にはそのような反応はしていなかったため、目覚めたのはその後であるように思えた。つまり朱理や齋の場合とは少々異なっていると言えただろう。
 そうなると原因が分からない事になったが、何にせよ興味が湧いたのは確かだった。
 これはもう一度逢って、彩乃の様子を確認するべきだろう。
 そう結論づけた神治は、了承の返事を送るべくメールを打つことにするのだった。


 再び逢う約束をした日の夜。
 神治は彩乃のマンションを訪れていた。
 呼び鈴を鳴らして少し待つとドアが開き、目の前に現れた彩乃の姿に少し驚く。実に派手な格好をしていたからだ。
 それは赤と黒を基調とした制服風の服であり、先日テレビで見た衣装のようだった。
 間近で見ると迫力があるのが感じられ、そのせいなのか彩乃の可愛さが高まっている印象を覚えた。
 さすがはアイドルの衣装としてデザインされただけの事はあるな、などと感心しながら挨拶をし、促されるまま中へと入っていく。
「それって衣装だよね? 何でそんなの着てるの?」
「今新曲の練習してて、衣装も試しに着てるんです。この衣装も新作なんですよ」
 同じ衣装だとばかり思っていた神治は間違えた事を恥ずかしく感じつつ、「テレビで着ていた衣装」と言わなくて良かった、と思った。
 部屋へ足を踏み入れると、中に沙璃香の姿が無かったためいぶかしく思う。約束では先に来ているはずだからだ。
「沙璃香ちゃんは遅れてるのかな?」
「沙璃香ちゃんは来ません。私がそうお願いしましたから」
「え? 何で?」
「緋道さんと二人きりで逢いたかったからです」
 その言葉に驚きつつも半ば納得する。やはり彩乃は部の民として目覚めているようだ。
 沙璃香を呼ばなかったのは、神治に対する執着が強くなっている事から、邪魔者無しで逢いたい気持ちがあったせいだろう。
「何で俺と二人きりで逢いたいなんて思ったの?」
「分かりません。何でだかそうしたくてたまらなくなったんです……あの日、私夢で見たんです。緋道さんが凄く輝いているのを……輝いている緋道さんが私を助けてくれて、それに凄く感動して、後でそれが夢じゃなくて現実だって沙璃香ちゃんに教えてもらって……沙璃香ちゃんもその輝きのこと知ってて……その時は見えなかったみたいなんですけど、輝いてる姿は知ってるって言って……それで私、やっぱり本当なんだ、緋道さんは輝いている存在なんだ、凄い人なんだって思って……それで何度も思い出したりして……そうしている内に、凄く逢いたいって気持ちが強くなって……緋道さんともっと一緒に居たくて、緋道さんのために何かしたくて……爆発しそうなくらいに想いが強まって……それで沙璃香ちゃんにお願いして、二人きりで逢えるようにしてもらったんです……」
 夢見るような表情を浮かべ、彩乃は憑かれたようにして喋っている。
 その瞳は強く潤み、神治に服従したいと欲する光を放っていた。
 そうした様子や「輝いて見える」というのは、部の民の女性達がよく告げてくる内容であったため、彩乃が部の民として目覚めたのは確実なようだった。
 そうなってくると、どうしてセックスをした訳でもないのに目覚めたのかが気になった。
 輝きを見たのが助けた時だとすると、その際に何かあったのだろうか。セックスしていなくとも神治の神性を感じとる何かが起きたのだろうか。
 考えてみればあの状況はかなり特殊だったから、そういった事があっても不思議ではなかったが。
「私と逢うの、嫌だったですか?」
 神治が黙っていたせいか、彩乃は悲しげな表情を浮かべて尋ねてきた。
 その潤んだ瞳からは強烈な魅了の力が発せられており、心臓が強く跳ねる。
 どうにも以前より魅了の力が増しているようだ。これも部の民に目覚めた影響なのだろうか。
「そんな事ないよ。嬉しいって」
「良かった……ご迷惑だったらどうしようって思ってたんです……」
 ホッとした様子で、嬉しそうに笑みを浮かべるのに心臓の鼓動が速まる。
 そして胸の前で手を組み、体を少し揺らしながら上目遣いでジッと見つめられると、蕩けそうな感覚を覚えた。
 やはり魅了の力が増しているらしい。
 何しろ体の動き全てが魅了の力を発している、といった感じであり、強烈に惹き付けられているのが分かるからだ。
「それで今日はその、美味しいケーキがあるんです。前に出た番組で食べたんですけど、凄く美味しかったので……それで緋道さんにも是非食べて欲しくて……」
「へ〜〜、そりゃいいね」
「本当は自分で買ってきたかったんですけど、ちょっと行けなくて……それでマネージャーさんに頼んじゃったんです……お礼のために買うのに、人任せなんていけないと思うんですけど、どうしても行けなかったので……その、すみません……」
 彩乃はかなり申し訳なさそうな様子で謝り、悲しげに俯いている。
 そこまで恐縮する必要は無いと思うのだが、おそらく部の民として目覚めたばかりで、神治に対する想いが過敏になっているのだろう。
「別に謝る必要なんてないよ。誰が買ってきたって同じケーキなんだし」
「で、でも、お礼の気持ちを表すんですから、やっぱり自分で買ってこないと……」
「俺は美味しいケーキが食べられれば十分だって。彩乃ちゃんが用意してくれたおかげで食べられるんだから、彩乃ちゃんのおかげだよ」
「あ、ありがとうございますっ」
 神治が気にしていない旨を告げると、彩乃は表情を明るくさせ、眩しいほどの笑顔を見せた。
 潤んだ瞳からは強い魅了の力が発せられており、その事で股間の一物がビクンっと反応を示す。
 これはかなりの力だった。何しろドキリとさせるだけでなく、欲情までさせているからだ。もし自分でなければ、頭が肉欲で一杯になってしまっているだろう。
「それじゃ、早速用意してきますね」
 彩乃はそう告げると、ウキウキとした様子でキッチンへ向かった。
 その後ろ姿を眺めていると、魅了の力を浴びたせいか、どうにも意識が性的な方へ向いてしまう。
 細身でありながらほんのりと肉のついている体に、プックリと膨らんだ形のいい尻。
 プリーツスカートから伸びる白く細い太ももは眩しく目に映り、全体的に何とも抱き締めて舐め回したくなる衝動を覚えさせた。
 これだけでも男の劣情を擽るのに十分だというのに、その上魅了の力を無意識の内に発しているのだから強烈だった。
 これはアイドルとしては良いかも知れないが、日常生活においては面倒ごとが増えるのではないだろうか。
 周囲に居る男達を無意識の内に誘惑している状態になっていないかと心配になってくる。
 そんな事を考えていると、彩乃が紅茶とケーキをお盆に乗せて戻ってきた。
 歩くのに合わせて胸の膨らみが微かに揺れているのがそそり、可愛らしい顔がこちらを見つめてくるのにドキリとしてしまう。
 黒々とした大きな瞳は、それだけで魅力的だというのに、潤んだ状態でうっとりとした視線を向けられてはたまらなかった。
 何より眼力の力が強烈になっているせいか、股間の一物は今や完全に勃起してしまっていた。
(これは凄いな。思っていた以上に力が強くなってる。コントロールする方法を教えてあげないと危ないぞ)
 やたらと欲情させる力を振りまいていては、下手をしたら襲われてしまうだろう。そのような目には遭わせたくなかった。
 そう思いながら出されたケーキを一口食べてみると、程良い甘さと何とも言えない味わいが口内に広がったため驚く。これは確かにかなり美味しいケーキだった。
「凄く美味しいねこれ。うん、美味しいよ」
「うわぁ、喜んでもらえて嬉しいですぅ」
 神治が感想を述べると、彩乃は両手を胸の前で組み、ポーッとした表情を浮かべて微笑んだ。
 その際に強烈な魅了の力が瞳から発せられたため、肉棒がビクンっと大きく震えてしまう。
 思わず大きく息を吐き出してしまい、己がかなり興奮してきているのを自覚する。
 こうなってくると彩乃を抱きたくてたまらなくなってきた。
 すでに部の民に目覚めている事を考えれば、求めれば彩乃は喜んで応じるだろう。ならば今すぐにでもそうするべきだ。
 そうした想いが湧き起こるが、一方でさすがに節操がなさすぎるという意識もあったため、自制する事にする。
 何より今はせっかく美味しいケーキを食べているのだから、十分に味わった方がいいだろう。
 そう思った神治は、意識を性欲から食欲へ切り替える事にした。
 するとあれほど高まっていた肉欲が治まり、股間の一物も小さくなっていった。
 こういう状況で抑えられるようになるとは、我ながら成長したものだと感心しつつ、ゆっくりとケーキを食べていく。
「あの、緋道さん。ケーキを食べ終わった後に、ちょっと聴いていただきたいんですけど、いいですか?」
「え? 何?」
「その、新曲を……まだ発表してないのなんですけど、緋道さんに聴いてもらいたくて……私一人で歌うので変かも知れませんけど……」
 どうやら先ほど練習していたという新曲のことらしい。
 トップアイドルの発表前の新曲を、アイドルの自室で一人きりで聴く。
 それは実に贅沢なことに思えた。
「そりゃ嬉しいなぁ。是非聴かせてよ」
「はいっ。頑張って歌いますっ」
 にこやかに微笑む彩乃の顔は、強烈な魅力に溢れていた。何より魅了の力が強風のように押し寄せてきたため、思わず呼吸が苦しくなったほどだ。
 この数分の間で、益々力が強まったのではないだろうか。
 再び肉欲が高まりそうになるが、それを押さえ込み、黙々とケーキを食べていく。
 彩乃は落ち着かない様子でケーキを食べ終えると、「準備をしますね」と言って席を立った。
 そのまま少し離れた所にあるコンポへ移動し、歌う準備をしている。
 神治がケーキを食べ終え、紅茶を飲み始めると、彩乃はマイクを持って立ち上がり、ペコリと頭を下げた。
「それでは新曲を歌わせていただきます。聴いて下さい」
 コンポのリモコンが操作され、部屋に曲が流れ始める。
 彩乃はそれに合わせて体を揺らしていたが、前奏が盛り上がるのに合わせて軽やかに踊り出した。
 瞳からは強烈な魅了の力が放たれており、それはこれまでとは比較にならないほどの強さになっていた。
 続けて可愛らしくも甘ったるい歌声が響き始めると、その誘うような声音にゾクッとした快感を覚える。微かではあるが、声にも魅了の力があるようだ。
 さらに体全体から淫の「気」が出ているらしく、彩乃が動く度にそれが波のように押し寄せてきた。
 瞳、声、体から発せられる波動は、強烈な魅惑のオーラとなり、こちらの体を包み込んで圧迫するようにしてきている。
 どうやら彩乃は、歌い踊ることによってその魅了の力を最大限に発揮する事が出来るらしい。
 これまでテレビや離れた所でしか見てこなかったが、目の前で歌い踊られる事による力の影響はかなりのものがあった。
 この間のコンサートの時にもこれが発揮されていたのだろう。
 あの場では様々な「気」が氾濫していたため気づかなかったが、こんなものを浴びせられては、並の人間では彩乃に夢中になっても不思議はなかった。
 イロスをトップアイドルに押し上げ、メンバーの中でも彩乃がダントツの人気を誇っているのは、この力のおかげという訳だ。
 歌う前と歌っている今とでは、力の強さは桁違いであり、歌い踊っている時の彩乃の力は、人間レベルでは相当に強いものがあった。まさにアイドルになるために生まれてきたという感じだろう。
「ありがとうございましたっ……どうでしたか緋道さん?」
 曲が終わり、お辞儀をした彩乃が少し不安そうな顔で尋ねてくる。
「いや、凄いね。初めてこんな近くで聴いたけど凄いよ。これは凄い」
 アイドルの申し子としか言いようのない彩乃の能力に感嘆の言葉を述べる。無論歌や踊りも見事であったため、その事でも褒めてはいたが。
「ありがとうございます。緋道さんにそう言っていただいて嬉しいです」
 瞳を潤ませ、惚けたように微笑むのに心臓が跳ねる。何と男の肉欲を刺激する表情をする少女なのか。
 思わず股間の一物が硬くなりそうになるが、それを慌てて抑えつつ、何事も無かったように紅茶を飲む。
「それであの……こんなこと言うのは図々しいと思われるかも知れないんですけど……どうしても我慢できなくて……緋道さんにお願いがあるんです……」
「ん? 何だい?」
 体をモジモジさせながら、頬を赤らめて告げてくるのにゾクリとした感覚を覚える。
 歌い踊った事で高まった魅了の力の余韻が残っているのか、強い魅惑のオーラが押し寄せてきているのだ。
「あの……この間緋道さんに助けていただいて、私、凄く感謝してます……あれから何も起きなくなって、普通に寝られるようになって、ホント感謝してもしきれないくらいです……ただ、私どうしても気になっちゃって……あの夢でされたこと……今でも引きずってて、どうしても忘れられないんです……」
 暗い表情を浮かべながら、彩乃は辛そうに話している。
 テレビで観た時はもう大丈夫になったと思ったが、やはりまだ駄目だったらしい。
 年頃の少女が、肉体は無事とはいえ精神的に陵辱されていたのだから、それも当然のことではあったが。
「私、あれから色々考えたんです。あの夢のこと……幽霊が来てたって教えてもらいましたけど、それってあの夢が現実の事だったんじゃないかって……あの夢でされていた事って、現実だったんじゃないかって、そう思うようになって……」
 確かに現実ではあった。
 実際彩乃は幽霊男と接触したことで、肉体を反応させていたからだ。
 しかしそれは、幽霊男が彩乃の意識に働きかけ、興奮した状態にさせた結果として起きたものでしかなく、体自体に何かをされた訳ではなかった。例えるなら「いやらしい映像を見せられて、体が興奮状態になった」というようなものだろう。
 とはいえ、他人によって強制的にそうした状態にさせられたと考えれば、割り切るのは難しいかも知れない。
「幽霊だから体には何もされてないってのは分かるんですけど、でも魂は汚されちゃったんじゃないかって……相手は幽霊なんだから、魂に色々されちゃったんじゃないかって……だから私の魂って、凄く汚れちゃったんじゃないかって、そう思うと凄く辛くて……」
 彩乃の推測はある程度当たっていた。
 幽霊男は魂、つまり幽体となってこの部屋を訪れ、同じく彩乃の幽体に触れることで、魂に対して性的な刺激を与えていたからだ。
 だがその事で魂が汚れるという事はなかったため、気にしなければ何の問題もない事でもあった。
 神治はそうした事を、先日未迦知神に教えてもらったのだ。
 しかし理屈では理解出来たとしても、感情的には無理だろう。ゆえにいくら言葉で説明したとしても、彩乃が納得するとは思えなかった。
 やはりこういう事は、本人が受け入れられる何かが必要なのだ。
「それであの……それで私……緋道さんなら大丈夫じゃないかって……汚れちゃった私の魂を、綺麗にしてくれるんじゃないかって、そう思ったんです……あの時、緋道さんが助けてくれた時……緋道さん、凄く綺麗に輝いてました……それでその光を受けた時、私の中の何かが、同じように輝いていくのが感じられたんです……あれって魂なんじゃないかって……私の魂はあの時、緋道さんの輝きを受けて少し浄化されたんじゃないかって……だからあの輝きをもっと浴びれば、私の魂は綺麗になるんじゃないかって、そう思うんです……だからお願いです。緋道さんの素晴らしい輝きを、もっと私の魂に浴びせて下さいっ」
 彩乃はそう叫ぶと、突然こちらへ倒れ込んできた。
 接触した体の前面に柔らかな肉の感触が溢れ、体重が掛かることでムニュリといった気持ちの良さが伝わってくる。
 少女の甘い体臭が鼻を擽り、サラサラの長い髪が肌に触れてくるのに、おかしくなりそうな興奮が湧き起こった。
 その魅惑的な肉体の魅力に、股間の一物が硬く大きくなっていく。
「私……私……駄目なんです。もうおかしいんです……緋道さんが輝いている姿を思い浮かべると、体が熱くなって、自分を抑えられなくなって……緋道さんにその……だ、抱いて欲しいって思っちゃうんです……抱いてもらえたら、きっと私の中が輝きで一杯になって、それで魂が綺麗になるんだって……緋道さんと一つになれば、そうなるんだって、そう思うんです……ああ、もう駄目です……私、おかしくなってます……狂っちゃってます……私は緋道さんに狂っちゃってるんですぅ……」
 彩乃はそう言いながら、強くしがみつき、体を押しつけてくる。
 泣きそうな表情を浮かべた可愛らしい顔が至近距離に迫り、潤んだ瞳が熱い視線を向けてくるのに心臓が激しく鼓動する。
 欲情を感じさせる吐息が首筋にかかり、微妙に動く女体の感触に、頭が肉欲に染まっていくのが分かる。
 この彩乃の状態は、おそらく部の民として目覚めた事と、「輝きを浴びれば魂が綺麗になる」といった思い込みが合わさり、神治に対する強い執着が呼び起こされているためのものだろう。
 さらにそれが異性を求める最も分かりやすい衝動、肉欲として現れ、欲求不満状態となっているのだ。
「ああ……緋道さんの体……素晴らしいです。蕩けちゃいます……触れているだけでこんなに気持ち良くて……どうしてこんな、あぁ……こんなに素晴らしいの……?」
 悦に入っている様子で彩乃は呟いている。
 もうそれだけで達してしまうのではないかと思えるほどに、強烈な興奮状態にあるようだった。
「緋道さん……あぁ……緋道さん……もう我慢できません……抱いて下さい……私を緋道さんの物に……私を緋道さんの一部にして下さいぃっ……」
 そう叫んだ彩乃は、唇を重ねてきた。
 柔らかな感触と、微かな震えが伝わってくる。
 その初々しくも積極的な行為に驚きつつ、完全に自分の虜となっている様子に嬉しくなる。
 もうこの少女は自分の物なのだ。このまま好きなように出来るのである。
 人気絶頂のアイドルが自分に夢中だというのは、実に優越感を刺激する状況であり、何とも素晴らしいことだった。
 少しして唇を放した彩乃は、小さく息を吐き出すと、惚けた表情でジッと見つめてきた。
 それは幸せ一杯という様子ではあったが、物足りなさを感じさせる雰囲気もあり、実際すぐさま再び唇を重ねてきたところからも、神治を求めずには居られない衝動に包まれているのが分かった。部の民ゆえの、主を求める強い衝動によるものだ。
 今度は強く重ね、擦るように触れさせてきており、そこには少しでも神治に触れていたい、くっついていたいという必死さを感じさせるものがあった。
 やがておずおずといった感じで舌が入り込んできて、こちらの舌を突き、絡ませてくるのに心地良い快感を覚える。
 もうここまで来たらヤるしかないだろう。彩乃を抱くのだ。
 知り合って間もないことや、アイドルという職業である事から、性的行為はすべきではないと思っていたのだが、彩乃の方からこれほど積極的に求められては仕方なかった。
 とはいえ、こうなった事を喜んでいない訳でもなかった。
 何しろ彩乃は凄く可愛いし、何より今最も人気のあるアイドルだ。
 多くの男が求める少女を、己の物と出来る機会なのである。
 燃え上がらないはずがなかった。
「んんっ……んっ、んぁっ……んぅっ……」
 こちらから舌を絡めていくと、彩乃は一瞬体を硬直させたが、すぐに身を委ねるようにして力を抜いた。
 そのままキスを繰り返しつつ、胸元の膨らみに手を伸ばして掴むと、ピクッと震えを走らせるのが可愛らしい。
 思ったよりも量感のある乳房に満足しながらヤワヤワと揉みしだいていくと、彩乃が細かく震えてしがみつくようにしてきた。
 その反応の良さに満足感を覚え、ゆっくりと床へ押し倒していく。
「ああ……凄いです……凄い輝いてます……緋道さんが凄く輝いてますぅ……」
 ぼんやりとした口調で彩乃は呟いている。
 このまま性行為を続けていけば、望み通りに輝きを浴びせる状態になるのだろう。
 それが救いになるというのも奇妙な感じがしたが、彩乃にとってはそうなのだから気にしても仕方がなかった。
 そんな事を考えつつ、制服風の衣装に手をかけ、ボタンを外していく。
 服の間から真っ白な肌と、可愛いブラジャーに包まれた柔らかそうな膨らみが目に映る。
 ヒラヒラとした短いスカートが捲れ上り、青と白の縞々パンティが見えるのがいやらしい。
 白く肉付きのいい太ももが顕わとなり、クネクネと動いているのに肉欲がたぎっていく。
 乱れた髪のかかった顔は火照っていて、それが可愛らしい顔をさらに可愛らしくする効果を生み、落ち着かない衝動を呼び起こしていった。
 この体を自由にしていい。
 そう思うと股間の一物は痛いほどにいきり立った。
「やっ……はぅ……」
 首筋に舌を這わせながらブラジャーを押し下げ、現れた程良い大きさの乳房を揉んでいく。
 手のひらにムニュリといった乳肉の潰れる感触が広がり、その心地良さにうっとりとなる。
 ピンク色の乳首はすでにツンっと立ち上がっており、その可愛らしく欲情を示す様に鼻息が荒くなった。
「やんっ……あっ、やぁっ……」
 舐めてから吸い付き、チュパチュパと口の中で転がすように刺激を与えていくと、彩乃は頭を仰け反らせて喘いだ。
 手を軽く握り締め、イヤイヤといった感じで体を震わせているのが愛らしい。
 可愛い顔が淫らに歪み、目に涙を浮かべて悶える様には、中学生とは思えない色っぽさがあった。
 やはり幽体でとはいえ、男の愛撫を経験してきたせいだろう。
 肉体的には処女であっても、精神的な意味ではすでに何度もセックスをしてきているのだ。
 そんな事を考えつつ下半身に移動し、青と白の縞々パンティを脱がして秘所を顕わにする。
 彩乃は「いやぁ……」と恥ずかしげに脚を閉じようとしたが、すぐに力を抜いた。
 恥ずかしさよりも、主たる神に抱かれたいとする部の民の意識が勝っているのだろう。
 顔を近づけて見ると、綺麗なピンク色をした襞が目に映った。
 さすが肉体的には処女であるせいか、年相応の美しさのある秘所に感嘆の息を漏らしつつ、唇を近づけて舌を這わせていく。
「あっ……やっ、そこはっ……」
 ビクンっと体を震わせ、彩乃は大きく仰け反った。
 脚が閉じられ、顔が太ももに挟まれるのに気持ちの良さを覚える。
 そのまま舌を這わせて愛撫していくと、彩乃は頭を左右に激しく振り、「あっ、あぁっ……」といった可愛らしい声をあげて悶えまくった。
 制服風の衣装をはだけ、股間を丸出しにしながらいやらしく喘ぎ悶えるトップアイドル。
 多くのファンが、自慰のネタとし、夢でもいいからセックスしたいと求めてやまない少女を、今自分は好き放題嬲っているのだ。
 そう思うと強烈な優越感が生まれ、精神的な快感で一杯になった。
 やはり特別な存在を己の物とするのは気持ちが良かった。
 何しろトップアイドルなどという、滅多にお目にかかれない相手を好きにしているのだ。その満足度はかなりのものがあると言えるだろう。
 そしていよいよ処女を奪うのである。トップアイドルの処女をもらうのだ。
 その事にいつもと異なる興奮を覚えながらズボンとパンツを下ろすと、肉棒を取り出して挿入の体勢をとる。
 それを認識したらしい彩乃は、少し不安そうな表情を浮かべながらも、それでいて嬉しそうに微笑んだ。
 処女を失う恐怖と共に、主たる神の物となる悦びを感じているに違いない。
 その己に従う態度に嬉しくなりつつ、肉棒を膣穴へと近づけていく。
「入れるよ……」
 そう告げると、彩乃はコクリと頷き、目を瞑って身構えた。
 亀頭の先端が秘所に触れ、柔らかい膣穴の感触を認識した瞬間、腰を前へと進める。
「!……」
 声にならない悲鳴を上げ、彩乃は体を硬直させたが、それに構わずゆっくりと肉棒を押し込んでいく。
「あ……いぅ……」
 彩乃は吐息のような声を漏らし、痛みに耐えるようにして床に爪を立てている。
 体を小刻みに震わせ、目に涙を浮かべつつも、嬉しそうに笑みを浮かべているのが何とも愛らしい。
 それは実に嗜虐心を擽る反応であり、もっと見てみたいとも思ったが、痛がっているのは可哀想であったため、緩和する「気」を送ってあげることにする。
「や……はぅ……」
 すると今度はいやらしさを感じさせる吐息が漏れ、快感を得ているのが分かった。
 それに安心して肉棒を奥まで押し込むと、強い締め付けが感じられ、その処女らしい感触に、己が彩乃の初めての男になったのだという実感を得た。
 眼下では小さな体を震わせ、初めての体験にボーッとした表情を浮かべている彩乃の姿があり、それは普段よりも幼さを感じさせ、愛らしさが強まっているように思えた。
 この可愛い少女をもっと陵辱したい。甘い喘ぎを上げさせ、いやらしく悶えさせたい。
 獣欲がたぎり、無茶苦茶にしたいという衝動が湧き起こってくる。
「あっ……あぁっ……あんっ……」
 それに押されるまま腰を前後させ始めると、彩乃は快感の声を発し、顎を仰け反らせた。
 肉棒は膣襞と擦れることで気持ちの良さを生んでおり、その素晴らしい感触に頬が緩む。
 自然、腰の動きも激しさを増していき、彩乃は突き込みに合わせて淫らに体をくねらせ、いやらしい喘ぎを漏らし続けた。
「ああっ、あんっ……いいっ、いいよぉっ……あっ、あはぁっ……いいのぉ、凄くいいぃっ……」
 かなり乱れた状態になっており、それはまさに快楽に浸っている姿と言えただろう。
 初めてであるはずなのにこのように乱れ具合が激しいのは、やはり幽霊男との経験で快楽に敏感になっているせいかも知れない。
「あぅっ……あっ、ああんっ……凄い、ああっ……凄いのぉ、やぁっ……凄くて、あっぐっ……凄いよぉっ……」
 肉棒が突き込まれるたびに大きく仰け反り、頭を左右に激しく振り、その小さな体で快感を逃さず受け止めようとしている姿は、あまりに淫らだった。
 それに誘われ、益々腰の動きを強めつつ、肉棒に絡みついてくる膣襞の蠢きに気持ちの良さを覚える。
「あんっ、ああっ……あはぅっ……もっと、ああっ……もっとぉ、やっ、やぁんっ……もっとお願いしますぅっ……あぐっ、ああっ……もっと、あっ……もっとわたしをぉっ……」
 彩乃の乱れは激しくなってきた。
 求めるように、というよりがっつくようにしてこちらの体を引き寄せ、腰を振ってくるのだ。
 幽霊男との経験があるとはいえ、この感度の良さは意外であり、また強くそそられるものを感じさせた。大人しい性格だけに、淫らに乱れる姿に興奮を覚えるのである。
 自分の与える刺激に過剰に反応を示すその様は、支配欲、征服欲を刺激して、もっとおかしくさせたいという欲求を強めた。
 さらに膣内の感触は良さを増しており、肉棒は蕩ける快感で一杯だった。
 強く吸い付き、逃がすまいと咥え込んでくるその蠢きは、並の膣ではあり得ない気持ちの良さがあり、これはまさに名器と言えただろう。
「ああっ、あんっ……あっ、あっ、ああっ……凄くいぃ、あっ……凄く良くて、ああっ……凄いよぉ、やっ、やぁっ……もっと、あんっ……もっとお願いですぅっ……」
 甘ったるく、そしていやらしい口調で求め、背中に腕を回し、腰に脚を絡みつかせ、しがみつきながら快楽を貪る彩乃の姿は、普段アイドルをしている際に感じさせる清純さからはかけ離れたものがあった。
 ファンは知らない淫靡な姿。
 その状態にしているのが自分なのだと思うと、強い優越感が押し寄せ、益々肉棒が猛っていく。
「ああぅっ、ああんっ……あんっ、あんっ、ああっ……わたし、あっ……わたしぃっ……やぅっ、やぐっ……あぃっ、あぁぅっ、ああああああああぁっ!」
 切羽詰まったように喘ぎ悶えた後、大きく叫んだ彩乃は体を硬直させた。絶頂に至ったらしい。
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドクドク……。
 それに合わせて精を放つと、強烈な快感が脳を襲い、蕩けるような気持ちの良さに包まれていく。
 大きく体を震わせながら何度も何度も精液を放出し、少しして最後の射精を終えた神治は、脱力して柔らかな女肉の上に倒れ込んだ。
 呼吸を整えつつ体を起こして彩乃を見ると、トロンっとした表情を浮かべ、こちらをだらしなく見つめているのと目が合った。
「あぁ……輝きがぁ……凄い綺麗ですぅ……緋道さんの輝きが、私の中に入ってきますぅ……」
 満足げに呟きながら、彩乃はうっとりと微笑んでいる。
 どうやら自分は今輝いているらしい。
 自覚が無いためよく分からなかったが、それによって彩乃が不安を解消できるのだとすれば問題なかった。
 何より部の民として目覚めているのだから、そうでなくても抱かれる事で精神的な安定を得られるだろう。
「緋道さん……もっとお願いします……私をもっともっと緋道さんの物にして下さい……緋道さんの輝きを沢山浴びせて欲しいんです……私の中に輝きを沢山……」
 潤んだ瞳で見つめられ、抱いて欲しいと強く求められると肉欲が高まった。
 この誘いを断れる男などそうは居ないだろう。
「じゃあもう少し続けようか……彩乃ちゃんを気持ち良くしてあげるね?」
「はい。お願いします」
 嬉しそうに頷く彩乃に微笑み返し、すでに硬く大きくなっている肉棒を持つと、再び膣穴へと押し込んでいく。
 その事で可愛らしくもいやらしい吐息が漏れ聞こえるのに悦びを覚えつつ、これから何回抱けるだろうか、などと時計を見ながら思った神治は、腰を激しく動かしていくのだった。


 白いシーツの上で、それ以上に真っ白な肌を晒した彩乃が淫らに悶えていた。
 布団を敷いて裸同士で絡み合ってから、もうかなりの回数セックスを繰り返している。
 彩乃は神治に抱かれれば抱かれるほど己の魂が綺麗になると信じているようで、いつになっても求めてくる事を止めなかった。
 部の民として目覚めている事から、主たる神に愛されることを欲している部分もあるのだろうが、まさに神治に抱かれることに執着しているという感じだった。
 ゆえに止めようと思ったら、こちらから提案するしかないのだが、可愛い彩乃におねだりするように求められては、止めることなど出来なかった。
 何よりトップアイドルである事が「滅多に抱けない相手」という感覚をもたらすせいか、抱ける時に抱いておかなければ、という意識を強めているようで、止まらなくなってしまっている部分もあった。
 部の民に目覚めているのだから、望めば抱ける対象になっている事は理解しているのだが、それでもアイドルというブランドは稀少な存在として肉欲をそそっており、普段テレビで観ている肉体を自由に出来ているという状況は、思ったよりも興奮を刺激するようだった。
 ファンは決して見ることのない彩乃の裸を自分は眺め、それどころか撫で回し揉みしだき、舐めて吸い付き、肉棒を押し込んで喘がせ悶えさせている。
 多くの男が求めてやまない少女を、今自分は好きにしているのだ。これほど優越感を刺激する状況はなかった。
 何しろ数十万人の男が欲する女を己の物としているのである。その精神的快感たるやかなりのものがあると言えただろう。
 それに加え、彩乃の肉体自体も素晴らしかった。
 まだ性徴途上な部分はあるものの、逆にそれゆえに少女と女との狭間の魅力が存在しており、背徳的な肉欲を呼び起こしていたのだ。
 何より膣内の感触は絶品で、中で擦れている肉棒は蕩けるような快感を与えられていた。
 湿りを帯びた肉の襞が、吸い付き嬲ってくる気持ちの良さは、思わず涎が垂れてしまうほどであり、今後さらに磨きをかけていけば、男を魅了してやまない膣に性徴するのは明らかだった。
 そしてそうさせるのは自分なのであり、それを味わうのも自分なのだ。何と素晴らしいことだろう。
「ああっ、あんっ、あんっ……いいっ、いいの、あぁっ……いいよぉっ……」
 強い独占欲を抱きながら腰を前後に激しく振っていくと、彩乃は白い肉体を淫らにくねらせ、涙声で可愛らしく喘いだ。
 もうすっかり神治の動きに敏感になっており、肉棒を軽く突き込むだけで絶頂に至りそうなほどの乱れを見せるようになっていた。
 快感に顔を歪ませつつ、「幸せ一杯」と主張するようにだらしのない笑みを浮かべている姿を見ていると、それだけで満足感が押し寄せてくる。
 この少女は、もう自分以外は目に入らないだろう。
 その確信が高まり、改めて部の民を得たことの悦びを実感する。
 女を己一人の物とすること。
 それが出来るのは、男にとって最高に幸せなことだった。
 そして自分にはそうした女が沢山いる。
 それはあまりに素晴らしいことだった。
「やぅっ、やっ、やぁんっ……はぅっ、はっ、はぁんっ……」
 肉棒の突き込みに合わせて悶え喘ぐ彩乃の姿は、可愛らしくも淫靡だった。
 幼さの残る顔が淫らに歪み、もっとして欲しいと求めて潤む瞳は、色香に溢れた光を放っていた。
 眼力の力が強まっているのか、見つめられるだけで射精感が一気に高まり、その刺激にうっとりするような快感が押し寄せてくる。
「ああっ、あっ……輝いて、あんっ……輝いてる、あぁっ……輝きが私の中にぃっ……」
 神治の感じる快楽が高まると輝きも増すようで、先ほどから気持ちの良さを強く感じると、彩乃はそう叫んで悶えた。
 そしてその事で乱れ具合も激しくなり、体を大きく仰け反らせ、頭を左右に振って短い髪を乱しまくった。
 シーツを掴んで引き寄せる手に力がこもり、「あっ、ああっ……」と喘ぐ声の艶が増していく。
 肉棒への刺激も強まり、これでもかとばかりに嬲ってくる。
 前へ押し出すとさらに奥へと引き込み、抜こうとすると逃がすまいと吸引してくるその蠢きは、腰が持って行かれるような快感を呼び起こし、朦朧とする気持ちの良さをもたらした。
 彩乃が乱れれば乱れるほど、膣内の食いつきも激しさを増し、抑えきれないほどに射精感が高まっていく。
 少し前まで処女だったとは思えない淫らでねっとりとした刺激に、神治は夢中になって腰を振っていった。
「あんっ、ああんっ……緋道さん、ああっ……緋道さ、やぁんっ……わたし、あぅっ……わたしもう、ああっ……わたしもう駄目ですぅっ……やっ、やっ、やぁああああああああんっ!」
「!……」
 彩乃の絶頂に合わせて精を放ち、射精の快感に浸る。
 ドクドクドクと放出されていく精液をぼんやり認識しつつ。押し寄せてくる気持ちの良さにうっとりとなる。
 多くのファンが処女だと疑ってやまない彩乃の膣に、今自分は精液を放出しているのだ。清純なはずのアイドルの膣を汚しまくっているのである。
 何という裏切り行為だろう。
 自分は彩乃のファンの想いをないがしろにし、その清らかな肉体へ精液を注ぎ込んでいるのだ。
 そうした後ろめたさを伴う優越的な想いが快感を呼び起こし、射精に勢いが増していく。
 もう何度目か分からない精の放出だったが、このことが毎度頭をよぎり、射精の最中に肉棒が硬度を高めていった。
(この女は……俺の物だ……)
 彩乃の可愛らしくも淫靡な顔を見つめつつ、最後の放出を終えると倒れ込む。
 荒い呼吸を繰り返しながら、こちらの体を受け止める柔肉の感触に気持ちの良さを抱いた神治は、もっともっとこのアイドルである少女の肉体を味わっていくのだと、肉欲を高めていくのだった。


 それから数日が経ったある日。
 神治は、布団の上で胡座をかきながらテレビ画面を見ていた。
 そこに映っているのはイロスの新曲プロモーションビデオであり、彩乃に「是非観て下さい」と言われたものだ。
 イロスの四人が歌い踊っているのだが、数種類の異なる衣装と背景、シチュエーションがタイミング良く切り替わっていて、実に見事な作りになっていた。
 十四、五歳の美少女達が歌い踊り、楽しげにしている様は微笑ましく、観ているだけで幸せな気分になってくる。
 特に浜辺でビキニの水着を着て遊んでいる姿は魅力的だった。
 四人の少女の真っ白な肌が晒され、細長い腕と脚が活発に動き、大きさの異なる胸の膨らみが揺れるのに興奮が高まっていく。
 幼さを残しつつも女として性徴している肢体には、成人女性には無い内に籠もった色気が感じられ、背徳的な魅力があった。
 四人の中でも、やはり彩乃は格段に輝いており、意識せずとも目が動きを追ってしまうほどだ。
 視線を下へ向ければ、画面に映っているのと同じ肢体があり、小さな頭が股間に寄っているのが見える。
 可愛らしい顔が笑みを浮かべ、小さな唇が肉棒を咥え込んでいる様は実に卑猥だった。
 首筋まで伸びた綺麗な黒髪が頭の動きに合わせて揺れ、そのたびに気持ちの良さが股間から押し寄せてくる。
 頭を優しく撫でてあげると、彩乃が「んっ、んんっ……」といった声を漏らし、嬉しそうに笑みを浮かべるのが愛らしい。
 ファンの男達は、彩乃の水着姿などから今自分がされている事を思い浮かべ、その現実では叶わぬ状況に精を迸らせているのだろう。
 そう考えると、己は何と素晴らしい状況に居るのかと思えてくる。
 何しろ彼らの憧れの少女に肉棒を咥えさせ、熱心に舐めさせているのだから。
 これも彩乃が部の民として目覚めたおかげだった。
 神治の中に存在する神性を認識し、それに従う状態になる者。
 それが部の民であり、これまで部の民として目覚めさせる方法はセックスだった訳だが、彩乃の場合は違っていた。
 彼女はセックスをする前から部の民として目覚めており、目覚めているがゆえにセックスを求めてきたのだ。
 一体何が彩乃を部の民へと目覚めさせたのか。
 輝きを見た、つまり神性を見たと彩乃は言っており、それは他の部の民の女性達と変わらなかったが、抱かれる前に見た、という点で違っていた。
 彩乃はどうしてセックスと無関係に神性を見ることが出来たのか。
 その事を未迦知神に尋ねてみると、どうやら幽体が関係しているようだった。
 彩乃は毎夜のごとく幽体に触れられていた事で、幽体に対する刺激に敏感になっていたため、神治が意識を集中した際に、それによって強まった神性に反応を示したらしい。
 しかも半ば幽体離脱状態になっていた事で、普通の人間よりもダイレクトに神性を感じた結果、過剰な反応を示すようになったのだろうという事だった。
 他の部の民の女性達に比べ、少々暴走気味になっているのもそれが原因のようで、今も肉棒を頬張っている彩乃の様子からは、鬼気迫るものが感じられた。
 表情は笑顔なのだが、どことなく切羽詰まったような必死さがあり、そうせずには居られない、しないで居たら死んでしまう、といったような雰囲気があるのである。
 実際焦点の合わない瞳で肉棒を見つめ、ニンマリといっただらしのない笑みを浮かべており、時折呟いている言葉にしても、かなりイってしまっている雰囲気を感じさせるものがあった。
「うふ……緋道さんの輝いてます、んんっ……ふふ、綺麗、んんぅっ……緋道さんの、んっ……凄く綺麗……んんっ、んふっ……それを舐めてる私の体も、んっ……輝いててぇ……あはぁ……もっと、もっと輝きを下さいぃ……」
 トロンっとした表情でそうした事を口にしているのは、正直なところ気味悪くもあったが、元々が可愛らしいせいか妙な魅力を感じさせた。
 実際彩乃のそうした様子を見ていると、肉欲がたぎってくるのだ。
 自分に凄く夢中になっている姿に思えるからかも知れない。
「んんぅ……ふぁ……輝きだぁ……あはぁ……緋道さんの輝きぃ……凄いよぉ……はむ、んふ……んふ、んぁ……」
 亀頭の先から付け根までを、ねっとりとした動きで舐め回し、愛おしそうに何度もキスしてくるのがたまらない。
 続けて肉棒全体を包むように口に含み、中身を吸い出そうとするかのような強い吸引をされると、思わず射精したくなる衝動が押し寄せてきた。
 技術的には拙いものだったが、ぼんやりとした雰囲気と、おかしくなっている口調が妙な色気を醸しだし、強い興奮を呼び起こしていた。
 可愛らしい少女が惚けた様子で、うっとりと肉棒を見つめながら熱心に吸い付く様は何ともたまらず、痛いほどに勃起してしまう。
「んふっ……んんっ、んぐっ……んぁ……んんぅ……」
 彩乃は神治の股間に這いつくばり、美麗な尻を高く掲げて揺らしつつ、頭を小刻みに動かして肉棒を舐めている。
 その頭を優しく撫で、サラサラの髪の感触を味わいながら、神治は肉棒を擦ってくる粘膜の刺激に頬を緩めた。
 それにしても何と贅沢な状況だろう。
 トップアイドルの新曲プロモーションビデオを見ながら、そのアイドル自身にフェラチオをさせている。
 多くの男が求める少女だけに、感じられる優越感には強烈なものがあった。
「んんっ……緋道さんぅ……素敵ですぅ、輝いてますぅ……凄いですよぉ……」
 上目遣いでこちらを見上げ、ぼんやりした顔でニヤァといった笑みを浮かべる彩乃の姿は、肉欲をそそる魅力に溢れていた。
 この女の中に肉棒を押し込みたい。
 肉棒を突き込んで擦り上げ、快感で喘がせ、悶え狂わせたい。
 そうした想いを抱かせる、淫靡な雌の魅力があった。
 それに逆らうことなく従おうと思った神治は、プロモーションビデオが終わるのに合わせて体を起こすと、彩乃を抱きかかえるようにして布団の上に押し倒した。
「やんっ……入れてくれるんですねぇ。うふ、嬉しぃ……」
 心の底から嬉しいのだと思わせる蕩けた笑みを浮かべ、迎え入れるように両腕を広げる彩乃の姿は実にいやらしかった。
 目の前には、プロモーションビデオで歌い踊っていた肢体が横たわっており、可愛い衣装やビキニの水着に包まれていた肉体が全てさらけ出されていた。
 裸身を覆う真っ白な肌は健康的な色香を感じさせ、幼さの残る体の線と、微妙に女として性徴している肉付きのアンバランス感がそそり、背徳的な興奮を呼び起こしていく。
「ビデオ、凄く可愛かったよ。新曲もいい感じだし、これならまたヒットするんじゃないかな」
 プロモーションビデオを観る前に、「観終わったら感想を聞かせて下さい」と言われていたのを思い出し、そう告げる。
「ありがとうございますぅ……ふふ、褒めてもらっちゃったぁ……幸せぇ……」
 両手を胸の前で組み、うっとりとした表情を浮かべながら嬉しそうに微笑むのが愛らしい。
 寄せられたことで量感を増した乳房と、その頂点にある桜色の乳首の美麗さが肉欲をそそり、若さ、というより幼さを感じさせるか細い肢体に獣欲が刺激を受ける。
 細長い両脚を左右に開いてピンク色の襞を顕わにすると、彩乃は「いやぁ……」と恥ずかしげに呟きつつも、されるがままにしている。
 すでに濡れ濡れの膣穴は、神治の肉棒を得たいとヒクヒク蠢いており、その淫靡な様子は、幼い容姿とのギャップとなって興奮を強めた。
「あぅんっ……あはぁ……入った、入りましたぁ……緋道さんのがまた私の中にぃ……あっ、ああっ……凄い、凄いですぅ、やっ、やぁっ……」
 肉棒を入れると、彩乃は体を仰け反らせながら歓喜の声を上げ、幸せそうな笑みを浮かべた。
 膣内も歓迎の蠢きを示しており、グニュグニュと肉棒に絡みつき吸い付いて、奥へ奥へと入るよう誘ってきていた。
 いや、これは強引に引き込んでいる、と言った方が正しいかも知れない。何しろそれほどまでに気持ち良く、押し込まずには居られない衝動が押し寄せてきていたからだ。
「輝きが凄いですぅ、あぁ……これでまた魂が綺麗に、あんっ……また綺麗になりますぅ、あはぁ……ありがとうございますぅ、あっ、あぁっ……」
 肉棒を入れると輝きが強くなるようで、それまで以上に彩乃は感激の声を上げている。神治の神性は性欲と繋がりがあるためそうなるのだろう。
「あっ、ああっ……やっ、やっ、やぁんっ……」
 そんな事を考えながら腰を動かし出すと、可愛らしい喘ぎが小さな唇から零れた。
 白い頬を上気させ、イヤイヤというように頭を左右に振りながら悶える姿にゾクリとした興奮を覚える。
 肉棒も膣襞に絡みつかれ、嬲られており、その蕩けるような気持ちの良さに涎が出そうになる。
 やはり彩乃の膣内は素晴らしかった。まさに名器と呼ぶにふさわしいものだろう。
 人間レベルではかなりのものであり、セックスの経験が増えれば増えるほど、その良さは強まっているように思えた。
 顔も体も魅力的であり、さらにトップアイドルという要素まであるこの少女を抱けていることには、他の女性を抱く時には無い優越感があった。
 このような少女と出会えたことは、まさに幸運なことと言えただろう。
 何より部の民に目覚めたということは、これから彩乃は、自分を求め、自分に尽くし、自分のために生きていく事になるのだ。
 そう思うと、優れた女を手に入れた悦びに、嬉しさで一杯になっていく。
「あっ、ああんっ……いいっ、いいよぉっ……緋道さんのいぃっ……やっ、やぅっ……オチンチンが気持ちいいのぉっ……」
 可愛らしい少女が「オチンチン」と言ってくることに興奮が起きる。
 普段であれば口にしないであろう言葉を、自ら自然に発している様子は、それだけ彩乃を快楽に狂わせている証に思えた。
 そしてその原因となっているのが、幽体で感じている刺激のせいらしかった。
 彩乃は幽体で快感を得る経験が多かったためか、肉体への刺激よりも、むしろ幽体への刺激に強く反応を示す状態になっているのだ。
 そしてもちろん肉体への刺激にも反応するため、その両方が作用する事により、通常よりも強い快感を得ることとなり、結果として激しく乱れるのである。
「あぅっ、あっ、あはぁっ……ひぐっ、ひぅっ、ひぃんっ……」
 不意にひきつけを起こしたように体を震わせるのに慌てる。
 まだ神治は幽体に対して慣れていないせいか、意識せずに過剰に刺激を与えてしまう事があったため、時折こうした反応を起こさせてしまうのだ。
 今後幽体に対して慣れていけば問題なくなるのだろうが、今はまだ注意が必要であり、その練習も兼ねて、最近は彩乃を抱くようにしていた。
 というより、修行としてそうするよう未迦知神に命じられていたのだ。
 しかしそれが無くとも抱いていたのは間違いないだろう。何しろ彩乃は十二分に魅力的な存在だったからだ。
「あんっ、あっ……やっ、やぁっ……凄い、ああっ……凄いですぅ、やっ、やぅっ……」
 突き込みを激しくすると、彩乃は短い髪を振り乱し、可愛らしく喘ぎ悶えた。
 細長い両腕を背中へ絡ませ、しがみつくようにしながら、もっとして欲しいとばかりに腰を振っており、大きめの黒々とした瞳が快楽に潤んで、「私はあなたの物です」と訴えるように熱い視線を向けてくるのに嬉しさが込み上げてくる。
「やっ、やぅっ……好きですっ、大好きです、あっ、ああっ……緋道さんが大好きですぅっ……私を、やっ……私をもらって下さいぃっ……」
 強い愛情を感じさせる言葉を発し、神治の物になりたいと叫ぶ姿には、心臓を強く鼓動させる効果があった。
 すでに態度で伝わってきてはいるが、こうして言葉として言われると、実感が強く湧いて嬉しくなるのだ。
 何より「好きです」と言われるのは普通の状態でも嬉しいのに、それがセックスの最中となると強烈な悦びを感じさせた。
 多くのファンに愛されるアイドル、末川彩乃。
 彼女は神治の物だった。
 魂から神治の所有物となった存在だ。
 何と素晴らしいことか。
 悦びが興奮を高め、肉棒への刺激と相まって射精感が強まっていく。
 このまま一気に精を放とうと、神治は腰の動きに力を入れていった。
「あっ、あっ、ああっ……好きですっ、愛してます、やっ、やぁっ……緋道さんに抱かれて、あんっ……わたし、わたし幸せです、やっ、やんっ……だからもっと、ああっ……だからもっと、ああんっ……わたしを、わたしを愛してぇっ……はぅっ、はひっ……ひぅっ、ひぃやぁっ……」
 狂気に満ちた瞳を向け、逃がすまいと両腕両脚を絡みつかせ、痙攣を起こしながら喘ぐその様は、鬼気迫るものがあって恐怖を感じさせるほどだった。
 これは幽体への刺激が過剰になっているために起きているのだろう。愛の告白に、肉体による快感という組み合わせが、神治から抑制する意識を奪ってしまったのだ。
 己はやはりまだまだ未熟だ、と思いながら幽体への刺激を抑えるようにすると、喘ぎと悶えは少し治まったが、それでも絶頂に近づいているせいか興奮は最高潮になっていった。
「あっ、あっ……あんっ、ああっ……もうっ、もぉっ……やっ、やぅっ……緋道さんっ、緋道さんっ、緋道さぁんっ……やっ、やっ、やぁああああああああんっ!」
 絶叫と共に強くしがみつかれ、膣内が収縮した事で肉棒の受ける刺激が強烈になった。
 精を放つ、というより吸い出されるような感覚で射精が行われ、押し寄せてくる快感に身を委ねる。
 ドクドクドクと迸る精液の感覚を意識しながら、それに合わせて発生する快楽で心と体が一杯になっていく。
 目の前には可愛らしい顔をこれでもかとばかりに蕩けさせ、だらしない笑みを浮かべて、「あ……あぁ……」と甘い吐息を漏らす彩乃の姿があった。
 この少女は自分の物だった。
 多くの男に求められ、自慰のネタにされ、妄想の中で数多く犯されているトップアイドル。
 そんな少女を自分は現実に抱き、その清純であるべき膣に何度も精液を注ぎ込んでいる。
 何と素晴らしく、優越感を刺激する行為なのか。
 これからも彩乃を抱き、その愛らしい肉体を抱き、清純な肉体を汚していこう。
 肉体を汚すことで魂が浄化される。
 矛盾としか思えない行為だが、彩乃はそれを求めていた。
 ゆえに自分はその望みを叶え、抱いていくのだ。
 彩乃に愛され、もっともっと己の物としていくために……。












あとがき

 アイドルでございます。
 やはりエロ物をやるとしたらアイドルはヤりたいですよね。
 世間的に認められた可愛さを己の物とする。
 そこには高嶺の花を得る快感があってたまらないのですな。
 今回の話には他にも幽体離脱ネタがありましたが、こうしたオカルト系のエロスというのは好きなので入れてみました。
 現実では触れることの出来ないアイドルを幽体になって犯しにいく。
 もし出来るとしたら、どれほどの人が実行せずに居られるのか。
 何しろ絶対に捕まらない、相手にもバレない状態ですからね。
 今回は、そうした悪魔の誘惑に乗ってしまった男の様子を描いてみた訳です。
 神治がある意味堂々とヤっているだけに、堂々とヤれない男の暴走ってところですか。
 そうした歪んだ男の夢というのも、妄想ならば有りってことですわ。
(2015.3.31)

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