緋道の神器


        第四十二話  恥じらいの先輩



 神治は、学校の植物園へ来ていた。
 緑と接していると落ち着くため、時折訪れているのだ。
 一人で居たい時は、近くの森へ行ったりもするのだが、そうでも無い時は、こちらで植物を眺めて楽しんでいるのである。
 周囲には沢山の植物が存在しており、見事に手入れされている様子に感嘆の思いを抱く。
 これほど見事であるのに、それを自分と同じ高校生の園芸部員達が世話しているのだから大したものだろう。
 何度も訪れているせいか、園芸部員達とも親しくなっており、そういう意味でも居心地の良い場所となっていた。
 時折手伝ったりするため、園芸部に入るように薦められることもあったが、さすがに本格的に世話をするとなると大変そうなので断っていた。
 目の前では制服姿の女子生徒が水撒きをしており、神治は近くのベンチに腰掛けながら、その様子をボーッと眺めていた。
 笑みを浮かべ、楽しそうにホースを操っているその女子生徒は、一つ上の二年生であり、名前を岡嶋琴巴(おかじまことは)といった。
 かなりの美人であり、腰の辺りまで伸びた長く美しい黒髪と、常に泣きそうな、弱々しい雰囲気を持った顔が特徴の少女だった。
 特に印象的なのがその胸の膨らみであり、驚くほどの大きさがあるため、初対面であれば誰もがまずそこに目をやるほどだった。
 何しろ本当に大きいのだ。
 神治も巨乳の女性は何人か知っているが、日本人でここまで大きい女性は他に知らなかった。
 本来であれば誇れる要素だと思うのだが、大人しい性格の琴巴は、その事をかなり恥ずかしがっていた。
 胸を見られていると気がつくと、慌てて隠すようにしていたし、胸のことで何か言われると、顔を赤くして困ったようにしていたからだ。
 そうした態度がまた可愛らしかったため、男子生徒からはかなり人気を得ているのだった。
 神治にしても、園芸部に来る理由の一つとして琴巴を、というか、琴巴の胸を見たいというのがあったのである。
 今も琴巴が動くたびに胸元の膨らみが揺れたため、その事に興奮を高めていた。
 あの乳房を背後から両手で鷲掴み、揉みしだいたらどれほど気持ちがいいだろう。あれだけの大きさであれば、きっと揉みがいがあるに違いない。
 などという事をぼんやり考えながら、実際は出来ないでいる状況にさらに興奮を高めていく。
 自らの持つ神の力を使えば、強引にそうする事も出来ただろうが、あえてしない事を神治は自らに課していたため、普通の男子高校生と同じく、見て満足するしかなかった。
 とはいえ、それだけでも琴巴の胸は素晴らしかったのだが。
 水撒きが終了したのか、琴巴は水道の蛇口を閉めると、続けて空の植木鉢を整理し始めている。
 今他の部員達は別の場所へ行っていたため、大変そうに思えた神治は作業を手伝ってあげることにした。
 部員ではないのだからしなくても構わないのだが、琴巴の泣きそうな感じの顔を見ていると、どうにも手伝ってあげたくなるのだ。
 何よりそうして手伝うと、琴巴の胸を近くで見られるという利点もあったため、積極的に手伝いたくなったのである。
「あ、ありがとうございます」
 神治が手伝い出すと、か細い、可愛らしい声でお礼を告げてくるのにゾクリとする。
 琴巴の声にはどこか男心を擽る部分があり、聞いているだけでそそられるのだ。
 柚華のように何か特殊な力があるという訳ではなく、単純な声の魅力としてそうなるのである。
 琴巴の体が動くたびに胸の膨らみがフヨンっと揺れ、その様子を盗み見ながら植木鉢を片付けていく。
 やはり何度見ても凄い迫力だと思った。
 この大きさであれば、服の上からであろうと十分に自慰のオカズとして役立つだろう。そうしている男子生徒は多いに違いない。
 などと本人が知ったら顔を真っ赤にして恥ずかしがり、怒るであろうことを想像しながら、植木鉢の片付けを終える。
「助かりました。ありがとうございます……今お茶を煎れますから飲んで行って下さい」
「ああ、すみません。いただきます」
 琴巴と共に、近くにある小屋へ入って椅子に腰を下ろす。
 そこは園芸部が使っている物置のような場所であり、休息用にお茶やお菓子が置かれてあった。
「どうぞ……」
 差し出されたお茶を受け取りながら、目の前に存在する大きな胸に視線を向ける。
 制服の上からでも分かるその大きさは、何度見ても飽きない素晴らしさがあった。
「あのぉ……緋道くんって、結局誰と付き合ってるんですか?」
 不意にそんな事を聞かれたため、思わず飲みかけたお茶を吹き出しそうになった。
「な、何でいきなりそんなこと……驚いたなぁ、もう」
「ごめんなさい。突然すぎましたね……私、水撒きしている間、ずっとその事を考えていたから、ついその流れで聞いちゃったんです」
 琴巴にはそういうところがあった。自分の考えに浸り、それを他人にも口にしてしまうのだ。ゆえにかなりの天然であると周囲には認識されているのである。
 そうした点も可愛さとなって、男子生徒から人気を得ていたりもするのだが。
「っていうか、その聞き方だと、付き合っているように思える相手が何人もいるみたいじゃないですか」
「だってそういう噂があったもので。違うんですか?」
「噂って……一体どんなのですか?」
「う〜〜んっと、同じクラスの可愛い女の子と、別のクラスの可愛い女の子、それから海棠先生とも付き合ってるって……いわゆる三股してるってもっぱらの噂です」
「それって単に同じ部活ってだけじゃないですかもしかして。海棠先生は顧問だし、他の二人も部員ですよ。まあ、その二人ってのが別の人なら違いますが」
「多分合ってます。緋道くんは同じ部活の女子と、顧問の先生をたらしこんでるって事になってますから」
 ある意味間違っていない内容に苦笑する。実際、神治は三人と肉体関係を持っているからだ。
 それに彼女達の自分に対する態度は、明らかに普通ではなかったから、そうした噂が立っても仕方ないのかも知れない。
「ああ、そう言えば、凄く可愛い男子とも怪しいなんて話もありましたね」
 その言葉に思わずまた吹き出しそうになりながら、よもやホモ疑惑まで起きているとは予想外だった。
 普通に考えれば、男同士で仲が良いからといってそんな噂は起きないだろう。やはり朱理が可愛いのでそんな事になっているに違いなかった。
「それで結局誰と付き合ってるんですか?」
「誰とも付き合ってませんよ。みんな友達です。先生とも仲良くしてもらっているだけですから」
「本当ですかぁ?」
「本当ですってば。先輩だって園芸部のみんなと仲いいじゃないですか。それで『全員と付き合っている』なんて言われたらどう思います?」
「確かにそうですねぇ。そんなの無いって答えます」
「そうでしょう? そういう事ですよ。勝手な憶測ってやつです」
「なるほど。まあ、噂ですものね。でもそうなると、どうして緋道くんにだけそんな噂がたつんでしょう。ただ仲がいいだけなら他の人でもそういう噂があってもおかしくないでしょうから」
「そうですね。あってもおかしくないですよね。例えば先輩なんか、何人も男をたらしこんでるって噂があっても納得しちゃいますよ」
「え〜〜? 何でですか?」
「そりゃもう、もちろん……可愛いからですよ」
 一瞬視線を胸元へ動かしながらそう告げる。
 本当は「オッパイが大きいから」と付け足したかったが、そんな事を言ったら怒られるので黙っていた。
 この巨大な膨らみは、十分に男を惹き付ける魅力になっているのは間違いないのだ。琴巴がその気になれば、多くの男を虜にできるだろう。
「やだ、もう。緋道くんってホント口が上手いですよね。だからモテるんですね」
「だから違いますって」
 冗談っぽく告げてくるのに苦笑しながら返す。
 琴巴が楽しそうに笑うと、胸元の膨らみもそれに合わせてタプンっと揺れたため、思わず見入ってしまった。
(ホント、これだけで男は夢中になっちゃうよなぁ……)
 胸が大きいだけでなく、美人であり、さらに性格も淑やかで控えめな琴巴は、多くの男が理想とする女性像だろう。
 そんな相手とこうして親しくしていられるというのは、実に幸せなことだと改めて思った。
「ま、先輩の場合、ちゃんと決まった相手がいる訳ですから、そうした噂も起きないでしょうけど」
 琴巴には、以前から付き合っている男子がいた。
 これほど可愛いのだから当然なのだが、最初に聞いた時は少々ショックを受けたものだ。
 だがのろける際の琴巴の様子が実に幸せそうだったため、最近は微笑ましく感じられるようにもなっていた。
 今もその事を話題にすることで、さらに楽しい雰囲気にしようと思ったのである。
「あ、はい……そうですね……」
 だが予想に反してそれは上手くいかなかった。
 琴巴は急に元気がなくなったように声を小さくすると、辛そうに俯いたからだ。
 突然の変化にどうしたのかと驚く。これまで恋人の話題を振って暗くなることなどなかったからだ。
「あの、先輩……彼氏さんと何かあったんですか?」
「え?……いえ、何もありませんよぉ」
 驚いたように顔をあげながら笑みを浮かべるその表情は、どう見ても無理をしている感じだった。何かあったのは確実だろう。
「そんな顔されたら何かあったって思っちゃいますよ。喧嘩でもしたんですか?」
「喧嘩なんて……喧嘩なんてしてません……ただちょっと……」
「ただちょっと、何です?」
 琴巴は困ったように俯くと、どうしたらいいのか分からない様子で視線を彷徨わせている。どうやら言いにくい内容らしい。
「もしかして、エッチなことですか?」
「えぇっ? な、何で分かったんですかぁっ?」
 琴巴は驚いたように大声をあげた。当てずっぽうで告げてみたのだが、どうやら正解だったらしい。
「いや、先輩ってそういうの苦手そうだから。恋人関係で喧嘩以外の悩みというと、そういう事かなぁって思ったんですけど……当たっちゃいましたね……」
「はぅ……当たっちゃいました……」
 困ったように肩を落とす姿が何とも可愛らしい。同時に胸元の膨らみがポヨンっと揺れるのにそそられてしまう。
「それでどういう事なんですか? もしかして無理矢理エッチなことしようとしてくるとか?」
「う……そうです……何で分かるんですか?」
「いや、先輩みたいに可愛い女の子と恋人になったら、したくなるよなぁ、と思ったもんで」
「や、やっぱり男の子ってそうなんですか? エッチなことをしたくなるんですか?」
「したくなります」
「くぅ……そうなんですか……」
 神治が断言すると、琴巴は泣きそうな顔で首をカクンっと落とした。
「じゃあ、やっぱり私がいけなかったんですね。恋人関係になればしたくなる事を嫌がっていたんですから……」
「いや、別に嫌がってもいいと思いますけど」
「そうなんですか? でも恋人なんだから受け入れないと駄目なんじゃないでしょうか?」
「いくら恋人だからって嫌なものは嫌でしょう。それを我慢して受け入れたって先輩が辛いだけですよ。そんな関係、駄目だと思います」
「はぁ……確かにその通りですね。私、彼が凄く不満そうな顔をするたびに、自分がいけないんじゃないかってずっと思ってきたので……だから私は恋人として失格なんじゃないかと悩んでいたんです。彼のことが好きなら、受け入れられないのはおかしいって……」
「別に恋人になったからって何でもしてあげなきゃいけないってことはないでしょう。嫌なことは嫌で当然なんですから」
「でもそれだと……嫌われるんじゃないかって……」
「それくらいで嫌うなんてあり得ないですよ。本当に先輩のことが好きなら、先輩が嫌がっているってことも分かってくれるはずです」
「そ、そうでしょうか……」
「絶対そうです。だから先輩は気にせず、エッチなことが受け入れられるようになるまで断ればいいんですよ。大丈夫です。それで嫌われたりしませんから」
「はい、ありがとうございます」
 琴巴は神治の言葉に少し安堵したようにすると笑みを浮かべた。
 その顔は何とも可愛らしく、思わずドキリとしてしまう。
 このような美少女を恋人にしているなど、何と羨ましいことか。
 そして胸元の大きな膨らみに視線を移してから、この胸を揉みたくなるのも当然だろうな、とも思った。
 琴巴の話によると、性的なことをされかけたようだが、果たして胸は揉まれたのだろうか。それともそうされる前に止めたのだろうか。そんなことが気になった。
 何にせよ、いつかは琴巴も性的なことを許可するのだろうから、恋人の男はこの魅惑的な肉体を自由に貪ることができるのだ。
 そう考えると強い悔しさが湧き起こってくる。
 以前の自分であれば、強引にでも琴巴をその気にさせ、抱いていただろう。
 そうすればこの美人で豊満な胸の持ち主を自分に夢中にさせる事も可能な訳だ。
 何とも素晴らしい状態だったが、やはり強引さを伴う行為はあまりしない方が良いように思えた。
 何より他に好きな異性がいる場合は、相手に対しても悪いことになるのだから良くないだろう。
 すでに関係が悪化しているのならまだしも、琴巴達はそこまで悪くなっている訳ではないのだから、しない方が良いに決まっていた。
(そういや先輩の彼氏って、どんなヤツなんだろうなぁ……)
 これまで色々話を聞いてはきたが、それは全て琴巴の印象によるものであったため、ある意味話半分として捉えるべきだと思っていた。
 琴巴は相手に対する恋愛感情が強いから、一般的に悪い部分も良いように解釈している可能性があったためである。
 もしその彼氏というのが、体目当てのどうしようもない野郎だとしたら、許し難いことになった。
 エッチなことをしたがるというのも、そこら辺がどうであるかによって印象が変わるだろう。
 普通の男子高校生として当然のレベルなのか、それとも体目当ての強引なものなのか。
 それが気になった神治は、少し調べてみようかと思った。
「先輩の彼氏って、何て名前でしたっけ?」
 取り敢えず名前を知らなかったため尋ねてみる。以前聞いたような気もしたが、すっかり忘れていたのだ。
「え? 藤平統真(ふじひらとうま)くんですけど」
「クラスはどこでしたっけ?」
「D組ですけど……何でそんなこと聞くんですか?」
「いや、先輩の彼氏がどんな人なのか知りたくなったもんで。だから写真あったら見せて下さい」
「ええっ? やだ、何で急に……もう、そんなの恥ずかしいですよぉ」
「あれだけ散々のろけ話をしといて、今更恥ずかしいもないでしょう」
「のろけって……そんなのしてないですぅ」
「あのですね。自分の彼氏との楽しい様子を語るってのは、普通のろけって言うんです。先輩しまくったじゃないですか」
「う……確かに……でもそれでも恥ずかしいです……」
「遠くから見るだけだからいいでしょ? 別に話しかけたりしませんから」
「うぅ……分かりました。緋道くんには相談に乗ってもらいましたし、しょうがないです……」
 琴巴は恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうに携帯電話をいじり、藤平統真の写真を見せてくれた。
 そこには琴巴と仲良さげにツーショットで映っている男の姿があった。
 顔立ちはさほど良いという訳ではなかったが、悪いという訳でもなく、強引さはあまり感じさせない、どちらかと言えば大人しそうな雰囲気を持った男だった。
(ふむ……写真で見る感じでは、先輩に合ってそうに思えるな……あとは実物だけど……)
 それは実際見てみないことには分からないだろう。
「それじゃ明日にでも教室へ行って挨拶してきますね。いつも岡嶋先輩にはお世話になってますって」
「やだぁ、止めて下さいっ。そんな事したら怒りますからねぇっ」
 慌てる様子を可愛らしく感じつつ、この愛らしい先輩を悩ませている男とは一体どんなヤツなのかと思った。実物も問題なければ良いのだが。
 そんな事を思っていると、外で数人が楽しげに会話している声が聞こえてきた。園芸部員達が戻ってきたのだ。
「い、今のはみんなに内緒ですからね?」
「分かってます」
 神治の言葉に安堵したように息を吐く琴巴を見つめつつ、神治はこの素敵な先輩には幸せになってもらいたいものだ、と思うのだった。


 二年生の教室が並ぶ階の廊下。
 神治は昼休みを利用して、琴巴の恋人を確認しようとしていた。
 二年生の階に一年生である自分が来るには少々抵抗があったが、何か用事がある振りをしながら歩いていく。
 二年D組と書かれた教室の前まで来ると、開いているドアから中を覗き込む。
 写真に映っていた藤平統真と同じ顔が居ないか見回すと、教室の中央にそれらしき人物がクラスメートと話しているのが見えた。
(なるほど、あれか……)
 写真を見た時と変わらない、問題無さそうな印象を覚える。
 だがそれはあくまで印象であり、会話すらしていない状態では当てにならないだろう。
 しかし神治にはそれでも分かることがあった。「気」の状態だ。
 細かいことまでは分からないが、その人物がどういった状態にあるのか、大まかなことが分かるのである。
 特に今回の目的は性に関すること、つまり淫の「気」の状態がどうであるかを調べれば良かったため、それは神治にとって得意分野だった。
 淫の「気」が溢れんばかりになっていれば、この藤平という男は、琴巴に対していやらしい事ばかり考えている、つまり恋愛感情などは二の次になっている事になるだろう。
 そんな状態で琴巴がエッチな行為を断り続ければ、理不尽な態度をとる可能性があった。
 逆に「気」が普通の状態であれば問題が無いことになった。
 そこら辺がどうなっているかと、藤平の「気」の状態を見てみると、少々淫の要素が多いようではあるが、切羽詰まった状態というほどではなかった。
 これならば十分理性の方が強いだろうから、特に問題はないだろう。
 とはいえ、元々が体目当てで近づいてきたような男であればどうしようもないのだが。
(そこは賭けかな……先輩の男運がどうであるかだね……)
 悪質な男で無いことを祈りつつ、取り敢えずの目的を果たした神治は、自分の教室へ戻ろうと歩き始めた。
 上級生の教室が並ぶ廊下に居るのはやはり落ち着かないため、自然と歩く速度も速くなる。
「何をしているんだっ」
 突然響いた声にギョッとする。
 教師らしいその声に、自分が怒られたのかと思い振り返ると、どうやら別の生徒が対象のようだった。
 見れば、少し離れた所で五十歳くらいの男性教師が眉を釣り上げながら、一人の女子生徒を睨んでいた。
「ピアスは禁止だと何度言ったら分かるんだっ? そんなものをしてくるんじゃないっ」
 どうやら校則違反を見とがめたらしい。
 しかしその女子生徒は、見つかったことに悪びれる様子もなく、ふて腐れた感じで視線をそらしている。
 男性教師の言葉からして校則違反の常習者らしいから、普通に叱られた程度では気にもしないのだろう。
 容姿におしゃれな雰囲気があったため、おそらく日頃からファッションに関することで校則違反をしているに違いない。
 男性教師はそのまま説教を続けているが、女子生徒は聞いていないような態度を取るため、怒りのボルテージが上がっているように見えた。
「遠田先生は相変わらずだね」
 不意に聞こえた声に驚いて横を見ると、いつの間にか傍に男子生徒が立っていた。制服の印から二年生だというのが分かる。
「遠田先生は学年主任なんだよ。その上真面目な性格で、規則は守るべきって意識の強い人だから、校則違反には敏感なんだね」
 薄く笑みを浮かべながらそう語る男子生徒の顔は、何とも綺麗だった。男でも見惚れてしまうほどの美形なのだ。
 男でここまで綺麗な顔立ちというのは、芸能人以外で見るのは初めてだった。
「花塚さんはおしゃれ好きでね、そのせいでしょっちゅう校則違反をしているから、遠田先生としては目の離せない生徒の一人になってるんだよ。まあ、ここまで叱るのが頻繁だと、もう名物みたいなもんだね。二年生名物、花塚さんを叱る遠田先生の日常って感じかな」
 そう告げる上級生の脇を、二人連れの女子生徒が通り過ぎるが、その視線がずっと彼に向けられているのに驚く。
 さすがイケメンといったところだろうか。漫画やアニメでは見たことのある状況だったが、よもや現実で出くわすとは思ってもみなかった。
「それで君は、藤平くんに何か用があったんじゃないのかい? ずっと見ていたようだったが」
 不意に話題を変えて尋ねてくるのに意表を突かれる。さらに内容が自分が藤平を見ていたことに関することであったため驚いた。
「用って訳じゃないですよ。ちょっと顔を見たかっただけですから」
 気を取り直してそう答える。
 それにしても、どうしてこんな事を尋ねてくるのだろう。藤平の友人なのだろうか。
「ほぉ、顔をね……何でまた」
「知り合いの人の、まあ、何というか彼氏だと聞いたもので」
「彼氏……ふ〜〜ん、じゃあ、君はその知り合いだという人のことが好きなのかい?」
「そうですね。好きですよ」
 即答すると、その上級生は意外そうな表情を浮かべた後、ニヤリと笑った。
「君は面白いね。そういう事を即答するとは。異性に対して好きかどうかと聞かれたら、普通はもっと動揺するものだが……ではその好きというのは、恋愛的にという意味なのかな?」
「違います。友人として、ですね」
「ふむ、やはり動揺がないね。君はどうやらそういう事に慣れている、というより、感覚が普通の人とは違う感じがするな。実に面白い」
 上級生は腕を組むと、今度は小さく笑った。
「先輩は、藤平さんの友達ですか?」
「友人、とはちょっと違うかな。まあ、知り合い程度だね。個人的に親しくしようという意思はないし」
「藤平さんってどんな人ですか?」
「ふむ、君は彼のことが気になる訳か。恋敵だから、ではない訳だよね?」
「ええ、どちらかと言えば、恋人の人と上手くいけばいいと思っているんですけど」
「つまり先ほど言っていた知り合いの女性と、藤平くんとの関係が微妙な訳か。それで気になった君は、藤平くんについて知りたくなった、というところかな?」
「その通りです」
 全くその通りであったため驚く。この程度の会話でよくもそこまで推測できるものだと感心してしまう。
「ならば僕に分かる程度で教えてあげても良いが、今はちょっと忙しくてね。それに君とはゆっくり話してみたいし。だから後日で良いかな?」
「いいですよ」
「そうか、それではこちらから連絡するよ。僕の名前は矢神秋羅(やがみあきら)。二年A組だ」
「俺は緋道神治です。一年C組です」
 互いに自己紹介をしつつ、携帯の番号とメールアドレスを交換し合う。
「じゃあ、緋道くん。また後日会おう」
「分かりました」
 秋羅は手を軽く振ると去っていった。
 それを見送る神治は、一体この人は何者なのだろうと思いつつ、何とも面白い感じの人だとも思った。
 ふと気がつくと、通り過ぎる女子生徒数人が、秋羅の方へ視線を向けているのが見えた。
 やはりイケメンは違うな、とまた思いつつ、何とも羨ましいものだと感じる。
 とはいえ、そうした嫉妬心がさほど強くならないのは、自分自身多くの女性に慕われているせいだろう。
 緋道村という環境、そして神の力により、自分は同世代の若者の中では、飛び抜けて性の経験が多いに違いない。
 秋羅はセックスの経験はどうなっているだろう。まだ童貞なのだろうか。それとも沢山の女性と経験があったりするのだろうか。
 これまで他人の性の経験など考えたことはなかったが、珍しく顔のいい男と知り合ったため、そんな事が気になった。
 そしてもし自分が緋道村の当主ではなく、神の力も無かったとしたら、セックスをすることは出来ているのだろうかとも思った。
 そもそも恋人は出来ていただろうか。
 有希とは相思相愛な訳だが、それも緋道村ならではの環境があったから付き合えるようになったと言えるので、もしそうした状況でなかったとしたらどうなっていたのだろう。
 あまり積極性の無い自分では、恋愛的なことは経験できていないかも知れない。
 そう考えると、改めて緋道村へ戻って良かったと思った。
 自分は緋道村という存在があったからこそ、ここまで充実した性生活を送れている。
 しかし村の外で暮らしている同じ年頃の男達はそうではなかった。
 思春期の、ヤりたい盛りであるにも関わらず、全くセックスできない状態になっているのだ。
 それは実に辛いことのように思えた。
 もし緋道村の外にも、村と同じような環境があったりしたら、多くの男が助かるのではないだろうか。
 そんな事を考え、それは素晴らしそうだと思いつつも、無茶な想像であるとも思った。
 いくら何でも「誰とでも気軽にセックス出来る」などという事を、普通の社会が受け入れるはずがないからだ。非常識だとして一蹴されるだろう。
 では、同好の士のみを集めた秘密クラブのようなものであればどうだろうか。
 それならば良さそうに思えたが、何となくイメージ的に風俗店のような感じがして違う気がした。
 風俗店は、あくまで男が一方的に性欲を発散させる場であり、そこには女性が楽しむという雰囲気は無かった。
 それでは緋道村のような、男女が互いにセックスを楽しむような雰囲気とは違うことになるだろう。
 自分が求めているのは、男女共に楽しめる、遊技のような感覚でセックスをする環境なのだ。一方的であってはならないのである。
 脳裏に浮かぶのは、自分が幼馴染み達と楽しくセックスしている様子だった。
 友情を深めるために、遊びのようにして交わる。
 それこそが緋道村におけるセックスの良さだった。
 もしそんな雰囲気のクラブが創れれば、多くの男女が幸せになれるに違いなかった。
 とはいえ、自分にはそうしたものを運営する才能はなかったし、そもそも面倒くさがりであるから無理だろう。
 しょせんはただの空想だった。こうだったらいいなぁ、という、思春期の少年にありがちの夢でしかないのである。
 何とも馬鹿らしい妄想を繰り広げているな、などと思っていると、不意に遠田教師の声が耳に響いた。
「放課後呼び出すからなっ。ちゃんと残っているんだぞっ」
 どうやらこの場での説教は終わったらしい。
 花塚という名前らしい女子生徒はその言葉を聞くと、それまで背けていた顔を遠田教師に向け、上目遣いで睨むような表情をすると、プイッと行ってしまった。
「返事くらいしなさいっ」
 その背中に向けて叫んだあと、困ったものだといった感じで首を振りながら遠田教師がこちらへ振り返ったため、慌てて視線をそらす。
 一瞬、遠田教師の顔が見え、それが何とも苦笑いのようにも見える歪んだものであったのが印象的だった。
 言うことを聞かない生徒の指導をしなければならない教師という職業は大変だな、と思いつつ、先ほどの秋羅とのやりとりを思い出す。
 取り敢えず藤平のことについて聞ける人間と連絡が取れるようになったのは収穫だった。
 秋羅が藤平のことをどれほど知っているのか分からなかったが、何かしらでも分かれば今よりはマシだろう。それだけでも藤平の様子を見に行った甲斐があったというものだ。
 これで何か琴巴の役に立てれば良いのだが……。
 そんな事を思いながら大きく息を吐き出した神治は、午後の授業は何だったっけ、と考えながら、階段を降りていくのだった。


 目の前には、私服姿の琴巴が歩いていた。
 フリルの付いた白いブラウスに、花柄のスカートを身につけた姿は、見慣れなさも相まって、何とも可愛らしさを感じさせた。
 腰まである長い黒髪が歩くたびに左右に揺れており、それを見つめている神治は、今日の琴巴の様子を思い返していた。
 園芸部の用具の買い出しがあり、神治は手伝いとしてかり出されたのだが、集合場所へやって来た時から、琴巴はいつもと違っていた。
 時折ぼんやりしており、その際の表情が実に暗かったのだ。
 それはこれまでに無いほどの酷さであり、神治は琴巴の居ない所で、園芸部員達と何度も心配をしていた。
 原因はやはり彼氏との関係が上手くいっていないことだろうか。
 先日アドバイスしたことが、もしかしてマイナスの結果を生み出したのではないかと思うと、助言した人間としては気になるところだった。
 藤平に関しては、秋羅から何か聞ける予定だったが、どうにもあれ以後連絡がもらえず、未だ話を聞けていない。
 他の誰かに藤平について聞いておけば良かったかもと思ったが、どのみちいくら藤平のことを調べたところで、何か口出し出来る立場ではないのだから意味はないだろう。
 恋愛関係というのは当人同士の問題なのだから、神治が何かしても結局どうしようもないのだ。しょせん心配を安心に変えるくらいの話でしかなかったのである。
 とはいえ、様子がおかしいとなれば、何かできるのではないかと思うのが人情というものだろう。
 実際琴巴の様子は、見ていると辛くなるほどなのだ。
 今日の買い物にしても、琴巴の様子は変だった。
 部活で必要な用具とは別に個人的な買い物をしており、それ自体は他の部員もしていることなので問題は無かったのだが、その量というのが多すぎた。
 とても一人では持ち帰れる量ではないにも関わらず、郵送しようとせず、どうしても持ち帰るといって聞かなかったのである。
 心配した部員数人が一緒に帰ろうと言ったのだが、琴巴はやんわりと、それでいて頑として断ったため、結局残ったのは神治一人だった。
 本来は神治の申し出も断りたいようだったが、さすがに一人では持ちきれない量だという認識はあったらしく、仕方なさそうに同行が許されたのだ。
「ここが私のうちですよぉ」
 振り返り、そう告げてくる琴巴の様子には、やはり暗い部分が強く感じられた。
 明るく振る舞ってはいるものの、日頃の彼女を知る者が見れば、明らかに様子がおかしいのが分かるだろう。
 以前より暗さが少しずつ増していったように思えていたのだが、それが特に酷くなっているように思えた。
「こっちが庭ですから、荷物はそこへお願いしますね」
 そう言われた神治は、「分かりました」と小さく返事をすると、先行する琴巴についていった。
 琴巴の家はかなり大きく、親が金持ちであることが分かった。
 庭も家がもう一軒建てられるのではないかと思えるほどの広さがあり、多くの植物が繁茂している。
 植物好きの琴巴が世話しているのだろう、実に手入れが行き届いている感じだった。
 荷物を指示された場所へ置くと、琴巴は「ありがとうございます」とお礼を言い、飲み物を飲んでいくように告げた。
 このまま帰るのは心配だったため、辞退することなく受け入れ、家の中へと入っていく。
 案内されて琴巴の部屋へ着くと、待っているように言われ、一人で部屋へ残される。
 女の子の部屋らしく、可愛い小物やヌイグルミが置かれてはいるが、それ以上に植物や花の植木鉢が多くあるのが印象的だった。
 周囲は静かであり、家に入った時に何の反応も無かったところから、他に誰も居ないらしい。
 少しすると、ティーセットを持った琴巴が戻ってきた。
 紅茶を注ぎ、「どうぞ」と差し出してくるのに頷きつつ、数口飲む。
「わざわざ家まで運んでくれてありがとうございます……」
「いえ、量が多かったですからね。先輩だけじゃ無理ですよ」
 思っていたより喉が渇いていたことに気がつきつつ、礼を言ってくる琴巴に答える。
「そう、ですよね……私馬鹿だなぁ。何であんなに買っちゃったんだろ……みんなにも止められたのに……」
 琴巴は暗い表情を浮かべながら俯いている。
 いつも明るく楽しげにしている印象があるだけに、そうした雰囲気は何とも不安を感じさせた。
「彼氏さんと、何かありました?」
 聞くべきかどうか迷ったが、やはり聞かないわけにはいかないだろうと尋ねてみる。十中八九その問題であろうし、助言した以上、責任を感じたからだ。
「……」
 琴巴は何も言わずに黙っている。
 上手くいっていれば何か話すだろうから、やはり失敗したということだろう。
 どうすればいいのか困ってしまう。失敗した以上、琴巴と恋人との関係はこじれているはずだからだ。いや、下手をしたらすでに別れている可能性もあった。
「浮気、してるんです……」
「え……?」
 不意に発せられた言葉に硬直する。よりにもよって最悪な結果を聞かされたからだ。
 振られたのなら関係が無くなる訳だから切替も可能だろうが、付き合ったままの状態で別の女に取られたというのは、恋人関係としては最悪の状況であり、どうすればいいのか分からない最大のこととも言えた。
「事実なんですか? 先輩の勘違いの可能性は?」
「あり得ません。私、見ました、というか聞きましたから」
「聞いたって、どういう……噂話じゃないですよね?」
「はい……私、彼の家に行ったんです。その、前もって知らせずに……それで家のインターフォンを鳴らそうとしたら、中から声が聞こえてきて……それが女の子の声で……最初は普通の会話だったんですけど……途中からその……女の子の変な声が聞こえてきて……か、彼がその子とその……エッチな事をしているのが分かったので……」
 最悪だった。
 どうやら藤平という男は、別の女とすでに肉体関係に至っているらしい。
 それを偶然とはいえ聞いてしまうとは、琴巴も何と不運なことだろうか。
「やっぱり私が断っていたのがいけなかったんでしょうか……もっと早く彼のしたいようにさせてあげていれば……」
「それは違います。先輩は悪くないですよ」
「でもだから他の女の子とあんな……やっぱり私です。私が悪いんです。私がいけないんですよっ」
 琴巴は泣きそうな顔をして叫ぶと、体を小刻みに震わせながら俯いた。
 何を言えばいいのか分からなかった。
 というより、こうした状況で神治に何かを言う資格はなかった。何しろ神治にしても、恋人以外の女性と何度も肉体関係を結んでいるからだ。
 抱けない女より抱ける女。
 藤平がそう判断して琴巴以外の女性と肉体関係に走ったのは理解できる。
 いくら相手を思いやる気持ちがあったとしても、それだけでは済まないのが男の性欲というものだろう。
 何かきっかけ、例えば相手の女性に誘惑されるようなことでもあれば、フラフラと誘いに乗ってしまう可能性はあった。
 どのような経緯で浮気をすることになったのか分からないが、その事実を琴巴が知った今となっては、どうでもいい事でもあった。
 理由はどうあれ、藤平は琴巴を裏切ったのだ。二人の関係はこれでお終いだった。
「男の子って、やっぱりエッチなことをしたいんですね……恋人を作るのも、そうした事をしたいからなんでしょう?……みんなみんな頭はエッチなことで一杯で、そればっかり考えてる……だからっ、恋人になったらエッチなことをさせてあげないといけないんですっ。私みたいにそれを嫌がっていると、こんな風に他の女の子に取られてっ……取られてしまうんです……」
 琴巴は体を強く震わせながら辛そうに叫んでいる。最後は悲しさが増したのか、力を抜いて呟くようにして言葉を発していた。
「私がエッチなことをさせてあげていたら……どうなっていたんでしょう……緋道くん、あなたならどうですか? 私と恋人になって、それで私があなたの望む通りにエッチなことをさせてあげたら……他の女の子とエッチなことをしますか……?」
 身を乗り出すようにして尋ねてくるのにどうしたものかと困る。
 本来であれば「しない」と答えるべきところなのだが、神治は複数の女性を相手にしているため、そうは言えなかったからだ。
 実際、恋人である有希とは何度も性行為をしているが、他の女性ともしているのであり、とても琴巴の望む解答を言える立場ではなかった。
 しかしそれは緋道村の常識からくる行動であり、もしそうした事が無かったとしたら、どうだっただろう。
 有希一筋を貫ける、と言えれば良かったが、自分は性的な事に関して自制心の足りないところがあったから、全く自信はなかった。
 そういう意味で藤平を責めることはできないのだ。
 目の前に居る琴巴は、性的にあまりに魅惑的な存在だった。
 かなり美人の顔立ちに、どこか泣きそうな雰囲気を思わせる表情は嗜虐心をそそり、肉付きのいい体、特に胸の膨らみは、凶器とも言うべき強烈な存在感で性欲を刺激してくる。
 今も体が動く度に揺れているのが目に映り、そのことで落ち着きが無くなりそうになるほどだった。
 このような相手に対し、全く性に慣れていない男子高校生が毎日のように接するとなれば、エッチなことがしたくてたまらなくなっても当然だろう。
 しかし琴巴は頑なにそれを許してくれない。
 そうなれば、抑えられた性欲は欲求不満を強め、恋人関係をギクシャクさせてもおかしくなかった。
 そんな状況で、別の魅力的な女の子と関わりを持ち、相手が性行為を許してくれるとしたら……。
 本来であれば我慢できるとしても、欲求不満が募った状態であれば無理かも知れない。
 それは性欲をコントロールできず、強姦した経験のある神治だけに嫌というほど分かることだった。
「するんですね……そうですよね……やっぱりエッチなことがしたいですものね……」
 黙っていたことを肯定と受け取ったのだろう、琴巴はそんな事を言ってくる。
 だがそれは本当のことであったため、反論することはできなかった。
「どうしてそうなんでしょう?……何でそんな、男の子ってエッチなことがしたいんでしょうか?……ただ恋人として楽しく過ごすだけじゃ、どうして駄目なんでしょう?……私、分かりません……」
 悲しく呟く琴巴は、さらに身を乗り出してきた。
 美しくも悲しげな顔が迫り、同時に豊満な胸の膨らみが圧迫感を感じさせるほどに意識された。
 鼓動が激しくなり、思わず抱き締めたくなる衝動が湧き起こる。
 恋人関係ともなれば、こうした状況はよくあるだろう。それでいて何も手出しできないというのは、かなりの辛さに違いなかった。
 神治は藤平に対して同情の念を抱いた。
 恋人なんだからいいじゃないか。そう思いながら迫り、悲しく嫌がられて諦める。そうした事の繰り返しがされてしまえば、始めは好意を抱いていたとしても、やがて嫌になるかも知れない。
 恋愛感情と肉欲は別物だとしても、自分たちの年頃では好きな相手と性行為をしたくなるのは自然なことだ。
 せめて琴巴がここまで魅惑的な肉体でなければ良かったのかも知れない。
 見ているだけで性欲が高まるこの肉体は、性行為抜きの恋人にするにはあまりに辛すぎる相手と言えただろう。
「緋道くんも私としたいですかっ? エッチなことっ。こうしてるとしたくなっちゃいますかっ? 恋人じゃなくても、したくなっちゃうんですかっ?」
 さらに顔を近づけ、触れんばかりの距離まで体を寄せながら、琴巴は怒っているような口調で告げてくる。
 甘い香りが漂い、肉欲が激しく昂ぶってくる。
 これはキツかった。こんな事をされて我慢するのは大変だろう。手を出さないでいた藤平とは、自制心の塊なのではないかと思えた。
 それとも少しは何かしたのだろうか。例えば今目の前に迫るこのオッパイを触ったり揉んだりしたのだろうか。
 その様子を想像すると、激しい興奮が湧き起こった。
「男の子って変ですっ。いやらしいですっ。私、納得できませんっ。どうしてしないと駄目なんですかっ? 普通に付き合うだけでいいじゃないですかっ。エッチなことなんて結婚してからで十分ですっ。どうしてそうしてくれないんですかっ」
 激しく叫びながら琴巴はさらに体を寄せてきた。
 このままだと接触してしまいそうだったので、慌てて後ろへ逃れるようにして動く。
「私ってっ、エッチなことできないなら要らないような女ですかっ? そんなに魅力ないですかっ? 私は体だけが全てなんですかっ? 体以外は魅力の無い女なんですかっ?、私はっ、キャッ……」
 あまりに興奮し過ぎたのと、無理な体勢になっていたため、琴巴はバランスを崩して倒れ込んできた。
 こちらも変な姿勢を取っていたため、支えることが出来ずに床へ押し倒される。
 途端、甘やかな弾力のある肉の感触が広がり、興奮が高まった。
 特に胸元では柔らかな二つの膨らみが感じられたため、股間の一物が硬く大きくなった。
 思わず背中に手を回し、抱き締めそうになるのを抑える。
 ここでそんな事をしては、「自分は体が全て」という琴巴の考えを補強してしまう事になりかねないだろう。
「緋道くん……こんな私、嫌いですか?」
 くっつきそうな距離にある美しい顔が歪み、涙声で尋ねてくる。
「嫌いな訳ないじゃないですか」
 それは嘘偽りの無い言葉だった。
 これほど美しくてスタイルが良く、淑やかで優しくて可愛らしい女性を嫌いになれるはずがなかった。
「じゃあ、好き?」
「好きですよ」
 そう告げると、琴巴は嬉しそうに微笑んだ。
 だが泣きそうな顔ではあるため、どこか悲しげな雰囲気が漂っている。
「本当に?」
「本当に」
 不意に琴巴の顔が無表情になる。
 そしてそのままジッと見つめてきたため、どうしたのかと心配になった。
「本当に私のこと、好き?」
「はい、好きです。俺は先輩のことが好きですよ」
 再びそう告げると、琴巴はスッと視線を外した。
 しばらくそうしていたかと思うと、また視線を戻し、ゆっくりと微笑んだ。
 それは何やらゾクッとするような、奇妙な感覚をもたらす笑みだった。
「なら……いいですよね……」
 何がいいのだろう、と思った瞬間だった。
 不意に唇がふさがれた。
 目の前に悲しげな美しい顔が迫っており、柔らかな感触が唇に広がっている。
 琴巴にキスをされていた。
 あまりに突然の展開に呆然としたが、自棄になったゆえの行為なのかも知れない。
 恋人ではない相手とキスをするなど、琴巴のこれまでの言動からあり得ない事だったからだ。
 こうした事は良くないのだが、止める気にもなれなかった。
 自分はそのような資格は無いと思うし、それゆえに何を言っても説得力の無い言葉になりそうだったからだ。
 何より琴巴とキスできているという状況に、興奮しているのも大きかった。
 恋人が居る以上、絶対にこうした関係になるとは思えなかった相手とキスしているのだ。
 それは何とも言えない禁断の味がする行為だったのである。
「んっ……んんっ……んふっ……」
 舌が入り込んできて、こちらの舌に強く吸い付いてくる。
 琴巴がこのようなキスをしてくるとは思わなかったため驚く。
 さすがにキスはしているだろうとは思ったが、よもやディープキスまで経験済みとは予想外だったのだ。
 ここまでしておいて、そこから先は拒否してきたのだろうか。
 それでは確かに藤平もおかしくなってしまうだろう。
 何しろ琴巴とのキスはたまらなく良かったからだ。
 技術的にはたどたどしくて大したことは無いのだが、その必死になって求め吸い付いてくる様子が、何とも言えずそそるのである。
 さらにこちらに体重を乗せてくると、弾力のある柔らかな肉が、じんわりと広がるように触れている部分に快感をもたらした。
 この肉を、女肉をもっと味わいたいと求めるのは当然のことだろう。
 体が勝手に動き、琴巴を強く抱き締めてしまう。
 してはいけないと思っていた行為を、無意識の内にしてしまった。
 それだけ琴巴の肉体は、男を誘う強烈な魅力に溢れていたのだ。
 ギュッと抱き締めると、女肉のたまらない感触が強まり、頭が朦朧とするほどに心地良さが広がった。
 欲しい……。
 この女が欲しい……。
 抑えきれないほどの欲情が湧き起こり、神治は自らも舌を絡ませ、吸い付いていく行為を始めた。
「んんっ……んっ、んっ、んんぁっ……」
 零れ出る可愛らしい吐息を聞きながら、顔を左右に入れ替え、唇を擦り付け、舌に強く吸いきつつ、むしゃぶりつくようにして琴巴の唇を味わっていく。
 柔らかな女肉に擦り付けるようにして体を動かし、その魅惑の肉体を触感で味わう。
 何と気持ちのいい体だろうか。
 今までこれを放っておいたなど、自分は何と愚かだったのだろう。
 もっと早くに手を出し、さっさと自分の女にしておけば、琴巴も藤平との事で悲しまずに済んだであろうに。
 恋人になるつもりは無いが、快楽という悦びを与えれば、それで幸せになれるという認識が神治の中にはあった。
 実際自分はそうであるし、抱いている女性達は皆そうなのだ。
 だから琴巴もその仲間に入れてあげるのだ。自分が抱き、神の快楽を与えることで、恋人関係などというものよりも幸せを与えるのである。
 それこそが自分が琴巴にしてあげられることだろう。
 今まで自分は何をしていたのか。どんな人間なのか知りもしない男に、素敵な琴巴を任せようとしていたなど、あまりに愚かすぎることだった。
 これからは自分が幸せにしてあげるのだ。強烈な快楽を与えることで、琴巴を幸せにしてあげるのである。
 神治の中では、琴巴に対する強烈な執着と愛情が起きていた。
 琴巴と知り合ってから、ずっと手を出さずに居たことへの後悔と、積もり積もった肉欲が、キスをされたことで爆発し、暴走しているように思えた。
 普段ならもう少し落ち着いて対処したであろうに、それが出来なくなっているのだ。
 もう抱かずには居られなかった。
 琴巴を抱く。
 この素晴らしい肉体を持つ少女を自分の物にするのである。
 そう決めた神治は、キスをしたまま転がって位置を入れ替えると、琴巴にのし掛かる状態になった。
 強く舌を絡ませながら、ずっと触れたくて仕方のなかった胸の膨らみへと手を伸ばしていく。
 柔肉に指が食い込んだ瞬間、何とも心地いい感触が指先に感じられ、力を入れて揉むと、蕩けるような気持ちの良さが手のひらに広がった。
「んんっ、んっ……んんっ……」
 一瞬体を硬直させた琴巴が、逃げるようにして体を動かすが、そのまま揉み続けると大人しくなった。
 フリルのついた白いブラウスのボタンを上から順に外していき、中へと手を差し入れる。
 ブラジャー越しに乳房を掴むと、ムニュリとした感触と共に、柔らかく肉が潰れるのが伝わってくる。
 琴巴が体を震わせ、モジモジと動くのが可愛らしくもいやらしい。
 唇を放して体を起こすと、眼下には服をはだけた状態で頬を上気させ、呼吸を乱している琴巴の姿が目に映った。
 白く美しい豊満な膨らみの一部が生で見えることに興奮を覚える。
 これまで服の上からしか見たことのなかった乳房を、今自分は一部とはいえ生で見ているのだ。何と素晴らしいことだろう。
「駄目です……こんなのは駄目ですよぉ……」
 それまでの行動とは正反対なことを告げてくる琴巴に苦笑する。自ら誘っておいて今更何を言っているのだろう。
 目をそらしながら告げ、眉根を寄せて悩ましげにしている様子には何ともそそるものがあり、ここで止めるなど無理なことだった。
「何言ってるんですか。先輩がしてきたんですよ」
「それはその……勢いというか、ついしてしまったんです。でもこれ以上は駄目……したら駄目です……」
 困ったように視線を彷徨わせながら、己のしてしまった事を言い訳する姿が可愛らしく、益々肉欲が昂ぶっていく。
「でも俺、もう止まれません……先輩としないでいたら、おかしくなっちゃいます」
「そんな……お願いです。もうしないで、駄目……」
「先輩、それは酷いですよ。ここまで誘っておいて途中で駄目だなんて……もしかして彼氏にも同じことしたんですか? 自分から舌入れるキスして、胸に触るのを許しておいて、そこから先は駄目だとか」
「か、彼とはこんな……凄いことまでしてません。キスだって、軽く合わせるくらいで……む、胸だって触らせたことなんかありません……なのに私……何であんな……したことないのに何で……」
 琴巴は混乱したように呟いている。
 どうやらディープキスはしたことが無かったらしい。
 確かにぎこちなさがあったため、慣れていないとは思ったが、まさかしたこと自体が無かったとは驚きだった。
 それなのに何故してきたのだろう。
 奥手の琴巴が、いくら自棄になったとはいえ、自らそこまでするというのは謎だった。
「先輩、俺とこういう事するの、嫌ですか?」
「緋道くんだから嫌って訳じゃないです。私はこういう事はしてはいけないと……学生の間はエッチなことはいけないと思います……」
 弱々しく答える琴巴の瞳の奥に、欲情の光が灯っているのを神治は見逃さなかった。
 琴巴も年頃の女の子なのだ。刺激を与えられれば快感を覚え、それを気持ち良く感じるのである。
 彼女を押しとどめているのは、強い道徳的意識だろう。体は愛撫を求め、心もそれに流されそうになっているのを、理屈で抑えているのだ。
 ならば抑えきれないほどの快楽を与えれば、琴巴は受け入れてくれるのではないか。
 そう思うと肉欲が昂ぶった。
 性行為を否定する相手を快楽によって籠絡する。
 それは以前何度か味わった魅惑の行為だった。
 いつの間にか神治の中でそうした衝動は起きなくなり、逆に女性を安易に抱く事に躊躇するようになっていたのだが、今それが復活していた。
 ほんの少し前までは無かった「無理矢理にでも抱きたい」という強い想いが起こっているのである。
 琴巴の存在がそうさせているのかも知れない。
 嗜虐心をそそる泣きそうな表情を浮かべ、豊満な肉体を押しつけてキスまでしておきながら、これ以上しては駄目だと否定する。逃げるように動いたりはするが、本気で拒否の意思は示してこない。
 そうしたどこか「もっとして欲しい」と暗に言っているかのような態度は、男を興奮させるものと言えただろう。
 無意識の内にしているのだろうから、何とも天然の誘惑資質をもった女性と言わざるを得なかった。
「でも気持ち良かったでしょう?」
「え?」
「俺とキスして、抱き合って、気持ち良くなかったですか?」
「……」
「俺は気持ち良かったですよ。先輩とこんな風にできて、凄く幸せです。してみたいとずっと思ってましたし」
「緋道くん……」
「あ、勘違いしないで下さい。別に体だけに対してそんなこと思った訳じゃないですから。先輩が素敵で、その上体も魅力的だから、それでしたくなったんです。嫌な相手じゃいくら体が良くたって、したくならないですよ。一緒に居て楽しくて、幸せな気持ちになれる、そんな先輩だから、エッチなこともしたくなったんです。先輩という女の子の全てが欲しくなったから、抱き締めてキスして、エッチなこともしたくなったんです」
「……」
 琴巴は黙ったままジッと見つめてきた。
「先輩はエッチなことに凄く抵抗があるみたいですけど、実際してみてどうでした?」
「え……?」
「抱き締められて胸に触られて、嫌でしたか?」
「そ、それは……」
「正直に言って下さい」
「……嫌じゃ、無かったです……」
 少し逡巡した後、琴巴は小さく呟いた。
「いつもは……その、彼に胸を触られそうになると、凄く嫌だったんですけど……緋道くんにされる時は、そんなに嫌な感じがしなくて……何でだか分からないんですけど、逆に安心するような、幸せな気持ちになれたんです……それで実際に触られても、全然嫌じゃなくて、むしろ嬉しくなるような……って、わたし、何言ってるんでしょう。わ、忘れて下さい……」
 琴巴は慌てた様子で視線をそらすと、頬を赤くしながら横を向いた。
 その様子は何とも可愛らしく、抱き締めたくてたまらなくなった。
「忘れるのは無理ですよ。先輩、凄く可愛かったですし」
「う……そんなこと言わないで下さい……私はもう……」
「もっとしたくはないですか?」
「え?」
「エッチなことされても嫌じゃなかったんでしょう? ならもう少ししてみたいと思いませんか?」
「な、何を言ってるんです。緋道くんとは友達なんですから、そんな事するなんておかしいですよ」
「そうですね。そうなんでしょうね……でも考えてみて下さい。ここに居るのは俺と先輩だけです。だから黙っていれば誰にも分からないんですよ」
「誰にも分からない……」
「そうです。だから誰にも知られずに、ちょっと試してみることも出来るんです。友達だけどエッチなことを……嫌じゃなかったんでしょう?」
「そ、それはそうですけど……」
「ならしてもいいじゃないですか。今後のためにも慣れておくのはいいと思いますよ」
「そんな、慣れるだなんて……こういう事はそんな風に考えるものじゃ……」
「でもしてみたいでしょう?」
「……」
 琴巴は押し黙った。
 本心ではしてみたいのだろう。しかしこれまで自分が守ってきた道徳観から許されないと考えているに違いなかった。
 ならば少し強引であっても、してしまえば受け入れるのではないだろうか。
 そう考えた神治は、無理矢理にでも抱いてしまうことにした。
「俺は……先輩としてみたいです」
「あっ、緋道くん駄目っ……」
 勢い良くのし掛かり、白く艶めかしい首筋に唇を寄せて優しく舐めると、琴巴は体をピクっと震わせた。
 そのまま顎の線をなぞるように舌を這わし、軽く吸い付いていく。
「いやっ……やぁ……」
 擦れた声を漏らしながら頭を左右に振り、逃げるように体を上へ動かしている。
 それを追いかけるようにして体をずらし、耳たぶを甘噛みしながら、量感のある乳房に手を伸ばす。
「あんっ……駄目、そんな……緋道くぅんっ……」
 乳房を少し強めに掴むと、琴巴は体を硬直させて顎を仰け反らせた。
 ブラジャーの下に手を差し入れ、直接乳房を回すように揉みしだきながら、頂点にある乳首を指でつまんで捻っていく。
「あっ、やっ……それ、あんっ……」
 泣きそうな顔を紅潮させ、体をピクピクと震わせながら喘ぐ姿には、実にたまらないものがあった。
 普段が淑やかなだけに、性的に乱れる様には強烈な淫靡さが感じられた。
 ブラジャーを下にずらすと、タプンっといった感じで乳房が顕わになった。
 その巨大な肉の塊は、横になっても形を崩しておらず、見事なまでの美しさを保って存在している。
 その頂点にはこれまた綺麗な乳首があった。
 真っ白な膨らみと桜色をした突起の組み合わせは実に美しく、美人の琴巴にピッタリなその造形に思わず見とれてしまう。
(これが、先輩のオッパイ……)
 出会ってからずっと見たかった膨らみが、今目の前にあった。
 期待を裏切らない、いや、期待以上の素晴らしさに感動を覚えつつ、それ以上に湧き起こってくる肉欲に体を震わせる。
 ゆっくりと手を伸ばし、両手で双乳を鷲掴み、回すようにして揉むと、何とも言えない心地良い感触が手のひらに広がった。
「あっ、ああっ……駄目、やぁっ……」
 可愛らしく喘ぐ琴巴の姿に、股間の一物がいきり立ち、早く入れたくてたまらなくなってくる。
 その気持ちを抑え込み、強弱を付けながら乳房を揉みしだいていく。
 手が動くたびに美しい膨らみが形をゆがめ、桜色をした突起が位置を変えるのを、鼻息を荒くしながら眺める。
 何と美しくもいやらしい物体なのだろう。こうした素晴らしい乳房に触れるというのには、実にたまらないものがあった。
「あんっ、やっ……いや、ああっ……」
 プクッと膨らんできた乳首に吸い付くと、琴巴がそれまで以上に体を震わせるのに興奮を覚える。
 この美しく、可憐で淑やかな先輩を、自分は徐々に支配していっているのだと思うと、何とも言えないワクワク感があった。
 乳首を転がすようにして舐め回し、思い切り吸い上げながら放すと、プルンっと乳房が揺れるのが楽しい。
 左右の膨らみを回すように揉みしだきながら、交互に吸い付き放すのを繰り返すと、琴巴が顎を大きく仰け反らせ、「やぁ……駄目ぇ……あぁ……」と甘く泣き声を漏らすのが強烈にそそった。
 この先輩は、何と男心を擽る仕草をするのだろう。見ているだけで射精してしまいそうになるほどそれはたまらなかった。
 いよいよ大事な部分を見るのだと下へ移動し、スカートを捲り上げてパンティに手をかける。
「やぁ……駄目ぇ……」
 恥ずかしげに手を押さえてくるのを優しく払いのけながら、勢い良くパンティを引き下ろしていく。
 顔を近づけ、秘所を眺めると、そこには何とも美しい襞があった。
 顔も体も美しい琴巴は、女の部分も綺麗だった。
 使われていない、まさに処女の美しさを持ったその襞は、触れるのに躊躇と興奮を呼び起こすものがあった。
 この部分を自分が蹂躙しても良いのかという気持ちと、そうせずには居られない衝動が混在して興奮を呼び起こしていく。
 処女を相手にする際の何とも言えない悦びを感じつつ、神治はゆっくりと指を近づけていった。
「あっ……そこは駄目、やっ……緋道くぅんっ……」
 優しく襞を撫でさすると、琴巴が体を震わせた。
 泣きそうな顔でこちらを見つめ、「駄目」と言いつつも「もっとして下さい」と告げているような目を向けてきている。
 その視線に興奮を覚えながら敏感な突起に触れると、ビクンっと体が大きく反応を示した。
「あんっ、あっ……やだ、あっ……何これ、あぁっ……」
 初めて経験するらしい快感に、琴巴は驚いたような表情を浮かべ、刺激を与えられるたびに体を強く震わせている。
 さらに気持ち良くしてあげようと、突起に舌を這わせると、体の動きが激しくなり、声も甘く大きくなった。
「やっ、やぁっ……あっ、ああんっ……」
 舐めるたびに体が跳ね、手を震わせて悶える様に、普段の淑やかな様子とのギャップを感じ、興奮が高まっていく。
 今琴巴を性的に狂わせているのは自分なのだ。
 自分の与える刺激で悶えが強まり、喘ぎが大きくなるのである。
 何と素晴らしい状態だろう。
 これぞ女を支配している瞬間だった。
 あとは己のモノである証を打ち込むだけだった。
 すでに痛いほど勃起している股間の一物を、この美しい膣襞の中へと押し込むのである。
 ズボンとパンツを下ろすと肉棒を持ち、そのまま秘所へと近づけていく。
 亀頭の先が膣穴へ触れた瞬間、琴巴がピクッと反応し、こちらを見つめてきた。
「入れますよ、先輩……」
「い、入れるって……そんな駄目、やっ……嫌ぁ……」
 言葉は否定的だが、本気で嫌がっているとは思えない弱々しい抵抗を示してくるのに苦笑する。
 琴巴はずっとそうだった。
 本気で嫌がる態度を全く示してこないのだ。
 口では「駄目」とか「嫌」とか言いつつ、強く抵抗を示さないというのは、男を誘う状態になってしまうだろう。
 神治が普段より妙に興奮してしまっているのも、琴巴のそうした態度が大きかったに違いない。
 ゆっくりと肉棒の位置を調整し、膣穴へと押し込んでいく。
 ズブリ……。
「あ……やぁ……」
 異物の入り込んでくる感触に恐怖を覚えているのか、琴巴の表情は引きつっていた。
「大丈夫ですよ、先輩……痛くしないですから……」
 そう呼びかけながら、痛みを与えない「気」を送り込みつつ腰を前へと進めていく。
 強い締め付けが肉棒を覆い、それと共にヌメヌメと襞が絡みついてくるのに気持ちの良さを覚える。
 実に良い感触であることに、さすが先輩だ、などと意味不明なことを思いつつ肉棒を全て収めた神治は、一旦動きを止めると大きく息を吐き出した。
 琴巴が悲しそうな表情を浮かべ、あらぬ方向を見ているのに罪悪感を覚える。
 だがそれ以上に琴巴と一つになれたことへの喜びは大きかった。
 何しろ素敵な先輩なのだ。そんな女性を自分のモノに出来た事は、男として誇らしさを感じずには居られないことだった。
「先輩の中、凄く気持ちいいですよ。最高です」
「……そ、そんなこと言わないで下さい……」
 恥ずかしそうに告げてくるのに益々肉欲が昂ぶる。
 琴巴はこうした態度をとるとたまらない良さがあり、男を誘う術を無意識の内に心得ているとしか思えないほどだった。
「でも事実ですから。俺、先輩と一つになれて幸せです」
「一つ……?」
「そうですよ。こうして繋がってるじゃないですか。俺と先輩は今一つになっているんです」
「私と、緋道くんが……一つに……」
「そう……こうしていると先輩の事が強く感じられます。温かくて優しい、素敵な先輩のことが……」
 実際肉棒は温かさに包まれ、膣襞に優しく絡みつかれていた。
 まるで琴巴の性格を表すように、淑やかな控えめさを感じさせる膣内だった。
 実に心地良いのだ。
 それでいて、たまらなく気持ち良く、早く腰を動かして擦りたくもなる魅力に溢れているのが最高だった。
「もう我慢できないです。動きますよ?」
「え? ちょっと待、あっ……やだ、あっ……あぁっ……」
 腰を動かし出すと、琴巴が可愛らしく喘いだ。
 痛みを感じさせない「気」を送り込んでいるため、初めてであっても気持ち良くなっているらしい。
「あっ、やっ……何でこんな、あんっ……わたし変、あっ……わたし、ああっ……わたしぃっ……」
 押し寄せてくる快感をどう処理して良いのか分からないのか、琴巴は意味不明の言葉を発しながら、体をクネクネと動かしている。
 膣内で擦れる肉棒は、蕩けるような快感に包まれており、腰が持って行かれるのではないかと思えるほどの気持ちの良さには、実にたまらないものがあった。
 容姿や仕草だけでなく、体の中身においても、琴巴は男を夢中にさせる魅力に溢れていた。
「あんっ、あんっ、ああんっ……緋道くん、やっ……あっ、ああっ……駄目、嫌、あぅっ……こんなの嫌ぁっ……あっ、ああっ……」
 泣きそうな顔で頭を左右に振り、逃れるようにして体を動かして悶える琴巴の姿は、肉棒を突き込まずには居られない魅力を感じさせた。
 嫌がっているようでいて求めているように見える琴巴の言動は、「もっともっと気持ち良くしてあげたい。感じさせたい」という想いを刺激し、腰の動きを激しくさせる効果があった。
 従順に受け入れられるよりも、こうしてちょっとした抵抗と否定の言葉を示されるのは、男を狂わす魅惑の行為と言えただろう。
 さらにはこちらの突き込みに合わせて、豊満な乳房がタプンタプンと揺れ動いており、そのことでも興奮は高まった。
 両手で鷲掴みにし、その感触を味わうと、手のひらが心地良い快感に包まれる。
 また、その刺激が琴巴をさらに感じさせるのか、喘ぎと悶えがいやらしさを増していくのにおかしくなりそうになった。
 何と素晴らしくいやらしい存在なのだろう。
「はぅっ、はぁんっ……やっ、やぁっ……緋道くん、ああっ……緋道くぅんっ……」
 泣きそうな顔を向けられ、潤んだ瞳で見つめられると、今すぐにでも精を注ぎ込みたくてたまらなくなった。
 この弱々しくて可愛らしい、淑やかでいやらしい存在の中に射精したくて仕方がなかった。
 そう思うと途端に限界が近づいてくる。
 本来であればもっと耐えられるはずだったが、精を放ちたい想いが強まったため、そういう状態へと変わったのだ。
 このまま一気に琴巴の中へ精液を注ぎ込む。
 そう思った神治は、腰の動きを一層速めていった。
「あっ、あっ、ああっ……わたし、あっ……わたし駄目、ああっ……わたしぃっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
「くっ!」
 琴巴が絶頂に至るのと同時に精を放つ。
 ドクドクドクと注がれていく精液を感じながら、押し寄せてくる快感に浸る。
 精神的に高揚していたこともあり、気持ちの良さには格別のものがあった。
 眼下では、頬を上気させ、朦朧とした様子で脱力している琴巴の姿があった。
 精が迸るたびに、ピクッと体を反応させているのは、己の中に注がれている精液の存在を認識しているのだろう。
 その様子は、琴巴という女を己のモノとした実感をもたらし、何とも言えない満足感を覚えさせた。
 少しして射精を終えると、ゆっくりと琴巴の横に倒れ込む。
 荒い呼吸を整えつつ、隣に居る愛らしい少女の姿を見つめる。
 放心したように天井を見つめるその顔は、いやらしくも美しかった。
 このような素晴らしい相手とセックスできたことに喜びを覚える。
 やはり素敵な女性は抱きたかった。
 抱かないでいるなど勿体なさ過ぎるだろう。
 これまで頑張って我慢してはきたが、もしかしたら初めから無理な話だったのかも知れない。
 何しろ今までにしても、抱きたくなった相手は結局抱いているのだ。
 その事を考えると、我慢するのが馬鹿らしいことのように思えたのである。
「わたし……浮気してしまいました……」
 ぽつりと呟く琴巴に、どうしたものかと思う。
 確かにこれは浮気だった。
 恋人が居る状態で他の男に抱かれているのだから当然だろう。
 しかし藤平との関係からすると、すでに崩壊していたようにも思えるので、正確には浮気とは言えないようにも思えたが。
「すみません。先輩があんまり可愛かったので……」
「わたし、嫌だって言ったのに……」
 どこか拗ねた口調で告げてくるのにホッとする。どうやら本気で怒ってはいないように思えたからだ。
「でも先輩、凄く気持ち良さそうでしたよ?」
「!……そ、そんなことありません……」
 神治の指摘に、琴巴は顔を真っ赤にしている。
「エッチなこと、まだ嫌ですか?」
「……今はそうでもないです……でも恥ずかしいです……」
 顔を背けながら呟くのを可愛らしく思う。
 だが嫌悪感は無くなったというのは良いことだった。
 それならば、今後また恋人が出来た時には、さほど抵抗なく受け入れられるはずだからだ。
 その想像をすると少し辛かったが、それまでは自分が琴巴を自由にしたい。
 そう思うと肉欲が昂ぶり、またしたくなった神治は、再びその柔らかな女肉にのし掛かっていった。
「緋道くん?」
「もう一回いいですか? 俺、もっと先輩と気持ち良くなりたいんです」
「そ、そんな、駄目ですよ。私と緋道くんはそんな関係じゃ……」
「そういう関係でしょう? 確かに恋人じゃないですけど、体を繋げ合った間柄です。そんな関係、先輩は嫌ですか?」
「嫌、なはずなんですけど……不思議です。緋道くんが相手だとあまり嫌に思えません。どうしてなんでしょう……?」
 琴巴は不思議そうに首をかしげている。
 神治にも理由は分からなかったが、そう感じてくれているのなら問題はなかった。
「ならもう一回もいいでしょう? 嫌じゃないならいいですよね?」
「で、でも……その……怖いから止めて下さい……」
「怖い? 俺、怖かったですか?」
 確かに無理矢理抱いたのだから、そう思われても仕方なかった。しかしセックス中の琴巴からはそうした雰囲気は感じられなかったため意外に思えた。
「いえ、緋道くんが怖いんじゃなくて……自分自身が怖いんです……その……緋道くんに色々されると、わたし、何かおかしくなっちゃって……それが怖いの……」
 恥ずかしそうに告げてくるのに喜びを覚える。
 どうやら琴巴は、感じすぎてしまったため、それが怖いと言っているらしい。
 経験の無い快楽の刺激に恐怖を覚えているのだろう。
 それは男にとって賛辞といえる言葉だった。
「大丈夫ですよ。そういう事もありますから。俺だってかなりおかしくなってましたし。先輩があんまりに凄いから」
「凄い? 私、凄いんですか?」
「そうですよ。こんなに抱きたくてたまらなくなる女の子なんてそうそう居ません。俺、先輩に夢中ですから」
「な、何を言ってるんですか……」
「だからいいですよね? 一緒におかしくなりましょう?」
「で、でも……」
「俺、もう我慢できません」
「あ、駄目……緋道く、やぁっ……」
 首筋に舌を這わせると、琴巴は可愛らしく悶えた。
 その様子には最初の頃にあった嫌悪を示す雰囲気は無かった。
 むしろこちらを受け入れるような体の動きをしている。
 言葉は相変わらず否定の内容だが、逆にそれがそそる行為となっているのだからたまらなかった。
 神治はいきり立つ肉棒を持つと、再び琴巴の中へと入っていくのだった。


「あっ、あっ、ああっ……」
 ベッドの上で裸身でくねる琴巴の姿は、まさにいやらしさの塊だった。
 腰を動かすたびに肉付きの良い体が跳ね、豊満な乳房が波打つようにして揺れる様子は、それだけで射精してしまいそうなほどに魅惑的だった。
 染み一つ無い真っ白な肌は極上と言える感触があり、生まれたままの姿になっても、その魅力を削ぐ要素は何一つ無く、逆に高めるばかりであるのが恐ろいほどだ。
 これまでこのような肉体が隠されているとは知らずに、友人として付き合ってきたが、一度この美麗で淫猥な肉体を知ってしまっては、抱かずに居るなど不可能だろう。
 実際、すでにかなりの回数抱いてしまっていた。
 初めは性に臆病な状態を、快楽を教えることで改善しようという意図もあって抱いたのだが、今ではすっかり神治自身が抱きたくてたまらなくなっていた。
 それだけ裸となった琴巴の肉体は素晴らしく、何度でも抱きたくなる衝動を呼び起こす魅力に溢れていたのである。
「やっ、嫌ぁっ……こんなの、あっ、ああっ……駄目です、やぁっ……」
 特にこうして未だに否定の言葉を発してくるのがたまらなかった。
 もう何度も抱かれ、慣れてきているはずであるのに、琴巴はいつまで経っても「嫌」とか「駄目」とか言うのだ。
 自分には恋人が居るし、神治とはセックスをする関係ではないのだから、してはいけないのだと頑なに思っているらしい。
 射精を終えるたびにそう言われ、「もう止めて下さい」とも告げられるのだが、そのくせ本気で抵抗したり、嫌悪感を示したりはしないのだから、本心ではしたい気持ちがあるのだろう。
 恋人に体を許さなかった理由も、そうした理屈を重視する性格ゆえだった訳だから、今している事に関しても、同じように「自分には恋人がいる」「神治とは友人でしかない」という理屈で否定しているのかも知れない。
 とはいえ、そうした否定がこちらを燃え上がらせる結果に繋がっているのだから、まさに見事なまでに天然の誘惑資質としか言いようがなかった。
「あんっ、あっ……緋道くぅん、ああっ……やっ、そこ、あんっ……駄目っ、駄目ですよぉ、あっ、ああんっ……」
 否定の言葉を発しながら、それとは裏腹に強く抱き付いてくるのに興奮が湧き起こる。
 この嫌よ嫌よも好きの内を体現したかのような態度には、たまらない良さがあった。
 それを何度も味わいたくて、気がつけば夢中になって抱いてしまっていたのである。
「やっ、あっ、ああっ……凄い、あっ……緋道くんが凄い、あんっ……緋道くん凄いですぅっ……」
 頭を左右に振り、甘く喘ぐ姿が可愛らしい。
 長い黒髪が乱れ、汗で額に張り付いているのが色っぽく、普段の淑やかな姿とかけ離れたその様子は、自分だけが知っている琴巴なのだという認識を強めて最高だった。
 特に胸元で揺れる大きな白い肉の塊は、タプンタプンと自己主張を繰り返しており、両手で掴むと吸い込まれる柔らかさと、強く押し返してくる弾力があって素晴らしかった。
 この手に余る双乳に直に触れる行為には、男として満足感を強く刺激するものがあった。
 ギュッと握りしめると、美麗な乳首が尖りを増し、吸い付いて下さいと言わんばかりの形状になるため、口に含んで舐め回し、吸っていく。
「ああんっ……やっ、はぅっ……そんな、あっ……強いですぅ、あぁっ……」
 ピクピクと体を震わす琴巴の様子に、さらに吸い込みを強め、乳房を荒々しく揉みしだいていく。
 悩ましげに眉根を寄せ、口をだらしなく緩めながら快楽に浸る琴巴の姿には、いやらしさと美しさを兼ね備えた素晴らしいものがあった。
 このままもっともっと琴巴の乱れた姿を見たい。気持ちの良さで染め、自分に夢中にさせたい。
 そうした想いに包まれながら、激しく腰を叩き付けていく。
「あんっ、あんっ、ああんっ……綺麗、あぁっ……綺麗です、あんっ……緋道くんが、あっ、ああっ……凄く綺麗、やぁっ……」
 うっとりとした表情で見つめてくる瞳には、快楽とは異なる光があった。
 それはこれまで幾人かの女性で経験したことのあるものであり、神治の神性に惹かれ、魅了された状態のものだった。
 どうやら琴巴も神治から神性を感じているらしい。
「綺麗」という言葉は、神性が輝いて見えているために違いない。これまで何度かそうした言葉を聞いた事があるからだ。
 琴巴も神治の部の民となるのだろう。
 自分に従うか尋ねれば、素直に頷くに違いなかった。これだけ快楽に染めた中で神性を感じた以上、逆らえるはずがないからだ。
 何とも洗脳しているようで嫌な感じもしたが、部の民の女性達に言わせれば、今まで感じたことのない幸福感を得られるとの事なので、悪いことではないのかも知れない。
 琴巴は自分のモノ。
 そう考えると、肉欲が激しさを増した。
 従える意識が強まったせいか、それを実感しようと後背位で抱きたくなった神治は、一旦動きを止め、後ろ向きにしてから四つんばいにした。
 こうして獣のような姿勢にさせて抱くと、支配している気分が高まって気持ちいいのだ。
 背後から両手で乳房を鷲掴みし、ゆるゆると揉みしだくと、たまらない感触が手のひらに溢れた。
 重力のせいか、仰向けの時よりも体積を増した乳房に満足感が高まる。
 そのまま肉棒を押し込んでいくと、琴巴が「ああんっ……」と可愛らしく喘ぎ、頭を仰け反らせた。
 長く美しい黒髪が真っ白な背中に掛かり、それが何とも言えない美しさと淫靡さを醸し出している。
「こんな格好……は、恥ずかしいですぅ……」
 振り返り、顔を赤くしながらそう告げてくるのに可愛らしさを覚える。
「エッチですよ先輩……俺、たまらないです……」
「止めて下さい……こんな格好じゃ駄目……嫌ですぅ……」
「そんなこと言って、本当は凄くいいんでしょ? 締め付けがさっきより強いですよ」
「違います……そ、そんなことありません……」
 消えそうな声でそう告げては居るが、尻をひくひくと震わせているのは、早く快感を得たいと体が欲しているせいだろう。
「本当ですかぁ?」
 そう言いつつ腰を少し引いてから勢い良く突き込む。
「ああんっ……はぅ……いぃ……」
 思わず漏らしたらしい言葉に苦笑する。いきなりの一撃だっただけに、抑えられなかったに違いない。
「いいんですね? この格好でするのが気持ちいいんですね?」
「え? ち、違います。今のは違うんです。こんな格好では嫌なんですぅ……」
 幼子のように頭を左右に振りながら、否定の言葉を述べるのが何とも可愛らしい。
 こうした幼さを感じさせるところも琴巴の魅力と言えただろう。
「でも先輩、嫌だって言ってますけど、さっきから凄く気持ち良さそうにしてるじゃないですか。もっとして欲しいんでしょう?」
「違います違います。したくありません」
「そうなんですか? 俺とするのは嫌ですか? 俺は男としては魅力ないですか?」
「そ、そういう事じゃないです。緋道くんは素敵な男の子です。前からそう思ってましたけど、今はもっと凄く素敵だなぁって思ってます。信じられないくらい素敵で……って、そうじゃなく、いくら素敵な相手でも、こういう事をするのは良くないって言ってるんです」
 うっとりとした表情で途中まで褒め称えたのは、部の民としての言葉だろう。すでに神治の神性に魅了されているため、そうした言葉が自然と口から出るのだ。
「でも俺は先輩としたくてたまらないですよ。駄目ですか?」
「駄目です。いけないんです」
「でも俺は素敵なんですよね? 素敵な相手ならいいじゃないですか。先輩は素敵な相手とエッチするのは嫌なんですか?」
「い、嫌じゃないですけど……でもいけないんです……したらいけないんですよぉ……」
 すでに行為自体を嫌悪していない発言に苦笑してしまう。
 無意識に言ってしまったのだろうが、それは何とも嬉しい事だった。
 そして泣きそうな顔をしながら、困ったように呟く姿は何とも可愛らしかった。
 こうして必死に言葉で否定を繰り返す琴巴を見ていると、肉欲が益々昂ぶり、肉棒が痛いほどいきり立った。
 否定しているのに、結果として男を誘う状態になってしまうというのは、実に理不尽と言えただろうが、それが琴巴の資質なのだろう。
「いけないけど、しちゃってますね。俺、それでおかしくなってます。ずっと憧れてた先輩と、いけないことしてるから凄くたまらないです。我慢できないです。抱きたくて仕方ないです」
 そう言いながら腰を動かし出す。
 途端、肉棒が強烈な快感に包まれた。膣襞と絡みつくことで、その刺激はたまらない良さに溢れるのだ。
「あっ、あっ……止めて下さい、あんっ……こんなこともう、はぅっ……そ、そんなに強くしたら、ああんっ……」
 ズンっ、ズンっ、と力強く突き込むと、可愛らしい頭が仰け反った。
 耐えるようにして白く豊満な肉体がプルプルと震えているのがいやらしい。
 すでに何度も抱いたことで、神治の与える刺激に敏感になっているのだろう。
 それは琴巴を自分のモノに出来た証に思えて最高だった。
「やっ、やぁっ……それ、それぇ、あぅんっ……緋道くぅん、あっ、ああっ……凄いですぅ、やっ、やぁんっ……」
 先ほどの否定の言葉はどこへやら、押し寄せる快楽に琴巴は蕩けているような声を発した。
 美人で淑やかな琴巴が、白く美しい裸身を晒しながら四つんばいとなり、背後から肉棒を突き込まれ、長い黒髪を振り乱して喘ぐ。
 その姿には強烈な淫靡さがあった。
 普段がいかにもお嬢様然とした雰囲気であるため、こうして快楽に乱れる様には、見ているだけで射精してしまいそうなほどのいやらしさがあった。
 実際いつもより射精までの間隔が短いのだ。それだけ興奮しているのだろう。
「あっ、あんっ……緋道くんが輝いて、ああっ……わたしの中に、あぅっ……凄いのが、やぁっ……入って、あっ……入ってますぅっ……」
 突き込みの激しさに体を前後させながら、こちらへ振り返り、うっとりとした表情を浮かべて讃えるようにして告げてくる。
 その姿は、完全に部の民として神治に染まった女のものだった。
 この愛らしい女をもっともっと自分のモノとしたい。
 そのためには精液を沢山注ぎ込まなくては。
 そう思った神治は、さらに腰の動きを荒々しくしていった。
「あっ、あっ、ああんっ……いいっ、いいっ、いいですぅっ……緋道くんの、ああっ……緋道くんのをもっとぉっ……もっと下さいぃ……」
 両腕を崩して上半身をベッドへ押しつけ、可愛らしい尻を突き出す体勢になりながら、琴巴は神治を求める言葉を発した。
 ずっと否定の言葉を告げていた事を考えると、それは何とも魅惑的な一言として耳に響いた。
 射精感が一気に高まり、精を放ちたくてたまらなくなる。
 このまま淫の「気」を大量に注ぎ込み、狂わんほどの快楽の中に琴巴を堕とし入れる。
 そう考えながら小さな腰を強く掴み、それまで以上に肉棒を激しく突き込んでいく。
「あぅんっ、あっ、あはぁっ……凄いっ、凄いっ、凄いですぅっ……緋道くぅん、ああんっ……やっ、やっ、やぁあああああああんっ!」
「うぅっ!」
 絶叫と共に膣内が締まり上がり、それに耐えかねた神治は一気に肉棒の栓を解放した。
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドクドク……。
 凄まじい勢いで精液が迸ると共に、頭の中が真っ白になるほどの快楽が押し寄せてくる。
 眼下では、シーツをギュッと握りしめ、射精のたびに裸身をピクピクと震わせて悶える琴巴の姿があった。
 全てをこちらに委ねたその様を見ていると、己のモノとした実感が感じられて最高だった。
 続けざまに押し寄せる射精の快感に浸りながら、神治はこれからも琴巴を抱いていきたいと思うのだった。


 そこは園芸部が管理している植物園。
 目の前では、制服姿の琴巴が水撒きをしており、近くのベンチに座っている神治は、それを不安な気持ちで眺めていた。
 あの日、無理矢理な形で肉体関係を持った訳だが、その事について琴巴は何も言ってこなかった。
 神治の中の神性を感じたことから、好意はかなり高まっていると思えたが、それでも嫌な想いをさせたことには変わりないのだから、気にしている可能性はあるだろう。
 特に恋人に対する裏切りにこだわりのある琴巴であれば、他の女性達よりもその事を重く受け止めていてもおかしくなかった。
 藤平との間もどうなったのか気になっていた。
 あれからその事について何も話してくれないので知らないのだ。
 一体どうなったのだろう。
 振ったのだろうか、振られたのだろうか。
 気になって仕方がなかった。
 そんな事を思いながら眺めていると、どうやら水撒きが終わったようで、琴巴がこちらへ近づいてきた。
 歩いているだけで大きな胸の膨らみがポヨンポヨンと揺れており、その事にゴクリと唾を飲み込む。
 この間はあの膨らみを生で見、手に触れ、揉みしだき、吸い付いたのだと思うと、それだけで肉棒が硬くなりそうになった。
 常に泣きそうな雰囲気のある美しい顔が快楽に染まり、こちらの一突き一突きで悩ましげに歪んだのを思い出すと、今すぐにでも肉棒を押し込みたくなる。
 以前から見ているだけで欲情した容姿だったが、抱いたことによりそうした衝動が強まったように思えた。
 とはいえ、もう琴巴を抱く訳にはいかなかった。
 あの時は興奮から屁理屈をこねて正当化してしまったが、自分はあまり安易にセックスをしてはマズいのだ。
 いつでもどこでも誰とでも出来るとなれば、セックスに飽きを感じ、意欲を削ぎかねないからである。
 しかしそんな想いとは裏腹に、すでに数人の女性と学校で性行為をしてしまっている。
 このままし続けては、それこそ緋道村に居るのと変わらなくなってしまうだろう。それでは村を出てきた意味が無かった。
 ゆえに学校では普通の高校生として過ごすのだ。
 もう手遅れかも知れないが、出来るだけそうしたいと神治は改めて思っているのだった。
「緋道くん。お茶にしませんか?」
「え? でも俺、何も手伝ってませんし、ごちそうになる訳には……」
「いいんです。ちょっと話したい事があるんですよ……みんなはしばらく戻ってきませんし、いいでしょう?」
「まあ、そういうことなら……」
 ついに来たか。神治はそう思った。
 改まって「話したい事がある」となれば、話題は先日のことだろう。
 いよいよ無理矢理抱いたことに関して何か言ってくるに違いなかった。
 これまでの経験上、問題なく受け入れてもらえているはずだったが、相手は少し変わった部分のある琴巴だ。もしかしたら泣かれる、などという事もあるかも知れない。
 そうなったらどうしようか、と考えながら、琴巴の後へ続いて物置の小屋へと入る。
 テーブルの上にお茶が置かれ、二人とも椅子に腰掛けると、琴巴は大きく深呼吸してから話し始めた。
「私、彼と別れました……」
 言われた瞬間、ついにそうなったか、と納得する一方、少々予想外だったため驚く。
 すでに相手が浮気をし、自らも浮気をしたのだから、それで付き合い続けるというのは、真面目な琴巴の性格からして無理に思えていた訳だが、いざ恋人関係を解消するという事になれば、積極的になれない性格であるのも分かっていたからだ。
 別れるにしても、もう少し時間がかかると思っていたのである。
「この間の俺とのことが原因ですか?」
「違います。確かに緋道くんとのことは関係してますけど、この間のことで別れた訳じゃありません。私の気持ちとして、もう彼とは付き合う気が無くなったんです……気づいたんです。私、彼と恋人でいることに執着していただけだったって。本当はもうとっくに私の中で彼に対する想いは冷めていたんです。ただ『恋人で居なければ』という義務みたいな意識があって、それで今まで付き合い続けようとしていたんです。浮気までされてたのに、ホント馬鹿ですよね……」
 俯きながら語る琴巴の表情には、少し辛そうな雰囲気はあったが、悲しみのようなものは感じられなかった。
 きっと言葉通りの気持ちなのだろう。
 実際琴巴の恋愛としての感情が冷めていて、執着のみで恋人に対する想いがあったのだとしたら、神治の中の神性に触れたことで、それがどうでもいいものである事に気づいてもおかしくはなかった。
 藤平との関係を支えていたものが義務的な執着でしかなければ、より大きな執着的存在である神の存在を得た以上、そういった物が馬鹿らしく感じられるのも当然だったからだ。
 何しろ部の民にとり、神に仕えることこそが喜びになるからである。
「振ったんですか?」
「ええ、振りました。『もう別れましょう』って言いました。彼、それを聞いたら凄く驚いて色々言ってきましたけど、『浮気しましたよね。私見たんです』と言ったら黙ってしまって。少ししたら『分かった』とだけ言って行っちゃいました」
 淡々と語る琴巴の姿には、以前藤平に執着し、苦悩していた様子は欠片も感じられなかった。
 このような態度をとられては、藤平も二の句が継げないだろう。何より浮気をしていた事実を告げられては反論も出来ないに違いない。
 そもそも藤平にしてみれば、浮気をしていたところからも琴巴に対する恋愛感情は冷めていたのだろうから、この事はある意味渡りに舟だったと言えるのかも知れない。
「それは良かったですね。って、そういう言い方をしちゃマズかったですか……」
「いいんですよ。私、全然気にしてませんから。むしろ彼と別れられてスッキリしてます。何でこんな事で悩んでいたんだろうって思えるくらいに、今は凄く清々しいです」
 そこまで吹っ切れているのなら安心だった。それまでの苦悩を考えると、別れたとしても辛さを感じている可能性があったからだ。
「何よりこうして緋道くんの傍に居ると、凄く幸せな気持ちになるんです。緋道くんと一緒に居られるのが幸せなんです。こんな気持ち初めて……」
 そう言いながら潤んだ瞳でジッと見つめてくるのに動揺する。
 こうした態度を取られるのには慣れてきたはずだったが、琴巴にはどこか他の女性達には無い、肉欲を刺激する雰囲気があったからだ。
 脳裏には、先日何度も見た、嫌がりつつも感じている琴巴の乱れる姿が浮かんでいた。
 またそうした姿を見てみたい。
 もしこの場で襲いかかったら、琴巴はどう反応するだろうか。
 嫌がりつつも激しく乱れるのだろうか。
 その姿を想像すると、肉棒が硬くなるのを抑えられなかった。
 実際襲いかかっても、琴巴は受け入れるだろう。
 何しろすでに部の民として目覚めているのだ。
 主たる神の要求に逆らうはずがないのである。
 だがそうでありながらも行為を拒絶する態度は取るはずだった。
 本気で拒絶する訳ではなく、恥ずかしさからそうするのだ。
 そしてそうした態度こそが、神治が求めるものだった。
 嫌がりつつも感じる姿。
 それがあるゆえに、抑えられないほどに肉欲が昂ぶってしまうのである。
 すでに神治の中から、先ほど考えていた「学校では抱かない」という決意はどこかへ消えていた。
 しょせん自分は、目の前に美味しそうな女体が現れれば抱かずには居られないのだ。
 そもそも性の神たる未迦知神の眷属であることを考えれば、性行為に躊躇するなど馬鹿らしいとも言えた。
 もっと積極的に抱く方が性の神と言えるのではないか。
 それこそが自分が神として成長する道だろう。
 などと抱くことを正当化する考えを思いつくと、益々肉欲が昂ぶっていく。
 そして学校という場所で抱くという行為にも興奮を覚えていた。
 今まで何人かの女性を学校で抱いたが、その際に感じる興奮は別の場所でする時よりも高かったのだ。
 やはり「誰かに見つかるかも知れない」という想いが興奮を高めるのかも知れない。
 そしてそれこそが、琴巴を抱く際に重要な要素に思えた。
 先日の琴巴は、「恋人が居るのに抱かれている」という人間関係による背徳感から乱れていた訳だが、それが無くなった今乱れさせるには、「学校で抱かれている」という、場所による背徳感を与えるのが良いように思えたからだ。
 琴巴が嫌がる状況を作り、そこで抱く行為。
 それこそが琴巴の魅力を十二分に引き出すための舞台装置に思えたのである。
「先輩、俺と居ると幸せなんですか?」
「はい、凄く幸せです……こんな事を普通に言えちゃうのが不思議ですけど……私、本当に凄く幸せなんです」
 恥ずかしそうに俯きながら、そう告げてくる琴巴の姿は非常に可愛らしかった。
 この可愛らしい女の子を、淫らに喘がせたい。
 嫌がるのを無理矢理犯したい。
 神治は強烈に高まった肉欲に素直に従って立ち上がると、琴巴の隣の椅子へと腰掛けた。
「緋道くん?」
 不思議そうに、それでいて嬉しそうに尋ねてくる琴巴の肩へ手を回す。
「先輩。俺、先輩が欲しくなっちゃいました。この間みたいなこと、またしてもいいですか?」
「な……だ、駄目ですよ、何言ってるんですか。ここは学校ですよ? それにここじゃ部員のみんなが戻ってきます」
 それまでのうっとりとした様子が青ざめ、慌てたように否定してくるのを嬉しく思う。
 やはり琴巴はこうでないと駄目だった。
 いくら部の民として従うようになっていたとしても、嫌がるそぶりをしてくれないといけないのだ。
 それこそが神治が抱きたい琴巴の姿なのだから。
「じゃあ、別の場所でなら、抱いてもいいってことですか?」
「え?……いえ、そういう事じゃなく……えっとその……確かにそういう風に取れますけど……でも……そうですね、はい……抱かれても……私、いいかなって思ってます……凄くはしたないですけど……緋道くんなら……嬉しい、ですから……」
 混乱した様子で苦悩しながら、それでいて行為自体に対しては否定してこないのに満足感を覚える。
 神治に抱かれること自体は、して欲しくてたまらなくなっているのだろう。
 嬉しそうに頬を赤く染めているのがその証拠だった。
 何と可愛らしい女性なのだろうか。
 このような姿を見せられては、益々抱かずには居られなかった。
「で、でも……ここでじゃ駄目です。こんな所じゃ誰かに見られてしまいます……そんなの私、耐えられません……」
 しかし学校で抱くことに関しては、頑として否定してきた。
 それは神治が己に課した決まりと同じであったため、本来ならばちょうど良い助言となっていただろう。
 しかしすでに神治は、学校で琴巴を抱きたくて仕方が無くなっていた。
 何しろ誰かに見られるかも知れない、という場でこそ、琴巴の真価が発揮されるからだ。
 琴巴の魅力を十分に堪能するには、琴巴が安心して抱かれる場所でしては駄目であり、琴巴が忌避する、止めて欲しいと思える場所で抱かなければ楽しめないのである。
 何とも酷い発想な訳だが、そうした状況で、嫌がりながらも感じる琴巴の姿を想像すると、それだけで肉欲が激しく昂ぶった。
「大丈夫、部員以外は来ないですよ。部員のみんなにしたって、まだ戻ってくる時間じゃないでしょう? もし戻ってきてもすぐに止めればいいんです。ここは外から見えにくいけど、こちらからはよく見えるのは先輩も知ってるじゃないですか」
 周囲を木々で囲まれたこの小屋は、外から中の様子を見るのは難しかったが、小屋の窓からは通路に誰かがやって来たのはすぐに分かった。以前そうした話をした事があったのだ。
「確かにそうですけど……でも無理に今しなくてもいいじゃないですか……後で私の家に来てくれれば……今日は誰も居ないですから……」
 魅惑的な誘いに嬉しくなるが、それでは琴巴が嫌がらないため十分に楽しめないことになった。
 あくまで嫌がる琴巴を抱くのが目的なのである。
「それまで我慢できないんです。俺、先輩が水撒きしている姿を見ていたら、たまらなくなっちゃったんです。先輩の胸、凄いんですもん」
「あっ……駄目です、あんっ……緋道くん、嫌ぁ……」
 肩に回した手を下ろし、脇の下から持ち上げるようにして胸の膨らみを掴むと、琴巴が可愛らしい声を漏らした。
 制服越しに張りのある乳房の感触が伝わり、手のひらが心地良さに包まれる。
 大きな膨らみに指が食い込んでいる様を見ているだけで、興奮が高まり、色々せずには居られない衝動が湧き起こった。
「やっ……緋道く、あっ……こんなとこで、あんっ……駄目ですよぉ……」
 首筋に唇を寄せ、軽く舌を這わせながら胸を揉みしだくと、琴巴は可愛らしい声を上げて逃げるように動いた。
 目の前には桜色をした小さな唇があり、それが小刻みに震えているのを見ていると、吸い付きたくてたまらなくなった。
「んっ……んんっ……んんぁぅ……」
 唇が合わさった瞬間、細身の体が硬直したが、すぐにそのままこちらに身を委ねてくる。
 肉付きの良い体が押し付けられ、その感触に心地良さを覚えた。
 舌を絡ませながら口内を優しく擽り、制服の中に手を差し入れ、ブラジャー越しに乳房を掴む。
 柔らかな、それでいて弾力のある膨らみは、極上の感触を手のひらに伝えてきた。
「んふっ……んんっ……んぁんっ……」
 ブラジャーの中へ指を入れ、乳首を摘むようにして捻ると、琴巴が跳ねるようにして動き、強くしがみついてきた。
 小さく震えているのが愛らしく、そうした様子をさらに見たくなった神治は、片手をスカートの中へ差し入れていった。
「あっ、あぅんっ……やっ、駄目ですぅ……」
 パンティの上から秘所をなぞると、ビクンビクンっと体に震えが走り抜ける。
 敏感な部分を指で回すようにして刺激し、耳たぶを甘く噛むと、琴巴は顔を真っ赤にさせて可愛らしく喘いだ。
「緋道くんエッチですぅ……やっ、やぁんっ……駄目っ、嫌ぁっ……そんな風にされたらわたし、あっ、ああんっ……」
 嫌がりつつも体を押し付け、もっとして欲しいとばかりに甘えた声を上げるのに興奮が高まっていく。
 表面上は否定するのに、実際は求めてくるこの態度が、強烈に肉欲を刺激し、琴巴を抱かずには居られない衝動を呼び起こす要因となっていた。
 それを無意識にしてくるのだから、琴巴はまさに天然の淫女と言えただろう。
 見た目淑やかでお嬢さま然とした雰囲気があるのだが、いやらしい事をされて激しく嫌がると、途端に男を狂わせる淫靡な魅力を放つのである。
 快感に顔を歪ませ、泣きそうな表情を浮かべながら「止めて、嫌」と喘ぐその姿には、肉棒をいきり立たせる魅力に溢れていた。
 この様な姿を見せられて、止めることが出来る男など居やしないだろう。
 琴巴を抱けるのであれば、これまで自らに課してきた決まりを破るなどどうでも良いことだった。
 そしてそうした「許されない事をしてしまう」という意識が高まると、さらに興奮が強まった。
 それほどまでしても抱く価値のある女体なのだという意識が、本能に刺激を与え、性欲を活性化するのかも知れない。
 貴重な女、つまりはそうそう手が出せない女を手に入れる機会なのだという事が興奮を高めるように思えた。以前からそうしたシチュエーションであると興奮が激しくなっていたからだ。
「先輩。俺、もう我慢できないです……」
 そう言いながら制服のスカートを捲り上げ、パンティを脱がすと、自分もズボンとパンツを下ろして肉棒を取り出す。
「嫌……駄目ですぅ……こんな所でするなんて駄目ですよぉ……」
 否定の言葉を口にしつつ、軽く逃げるような動きをしてくるのを押さえながら、傍にあるベンチにゆっくりと押し倒していく。
 肉付きのいい真っ白な太ももを左右に開き、間に腰を入れると、琴巴が泣きそうな顔をしながら潤んだ瞳でジッとこちらを見上げてくるのに心臓が強く跳ねた。
 何とそそる表情なのだろう。それだけで肉棒が激しく震えるほどた。
「駄目ですか? 俺とするのは嫌ですか?」
「嫌、じゃないですけど……でも恥ずかしいんです……」
「恥ずかしがっている先輩、すっごく可愛いですよ。だから俺、たまらなくなっちゃうんです。これがこんな風になってるのも、先輩のせいなんですから」
 そう言いながら、いきり立った肉棒を目で示す。
「ふぁ……おっきいです……それに凄く震えてます……」
 目を丸くして肉棒に見とれる様子は、まるで幼児が珍しい物と対した際の驚きに似ていた。
 幼さを感じさせる中に雌としての欲情が漂っており、そのアンバランスな雰囲気に益々肉棒が猛ってくる。
「先輩の中に入りたくてこうなってるんです……だからいいでしょう?」
「で、でもぉ……」
「入れますよ?」
「……」
 返事が無いことを了承と受け取った神治は、秘所へと肉棒をゆっくり押し込んでいった。
「あ……」
 亀頭がハマった瞬間、小さな頭が仰け反る。
 そのままズブズブと奥まで進めていくと、「あ……あぁ……」と甘い吐息を漏らしながら、肉付きのいい体が震えた。
 肉棒全てを収めると、一旦動きを止めて大きく息を吐き出す。
「入ってますぅ……緋道くんのが……駄目なのにぃ……」
 結合部を見つめながら、困ったようにして呟いているのが可愛らしい。
「でも、嫌だって言いませんでしたよね?」
「そ、そうですけど……でもやっぱりこんな場所でしちゃうなんて……」
「興奮するでしょ?」
「!……」
 琴巴はその言葉に顔を真っ赤にすると、目をそらして恥ずかしそうにしている。
 桜色に染まった頬が愛らしく、動かないでいるのが我慢できなくなった神治は、ゆっくりと腰を前後させ始めた。
「あっ、あっ、ああっ……緋道くん、やっぱり駄目、あっ……こんなとこで駄目ですよぉ、やっ、やぅんっ……」
「ここまでしておいて何を言ってるんですかっ……もう止まれませんよっ……先輩の中に出すまで止まれませんっ……」
「そんな、あっ……出すなんて、あんっ……誰か来ちゃうかも知れないのにぃ、あっ、あぅんっ……」
 不安げに視線を入り口に向けながら呟くが、強く肉棒を突き込まれると頭を仰け反らして喘ぐ。
 その様子が神治の中の「誰かが来たら大変だ」という想いを強め、興奮を激しく高めた。
 腰の動きも強く大きくなり、膣襞との擦れから起きる快感も増して、神治はだらしなく頬を緩めた。
 普段の淑やかな雰囲気とは裏腹に、肉棒を咥え込んだ琴巴の膣内は、セックスに長けた熟女のように蕩けるような刺激を与えてきた。
 先日抱いた際も、抱けば抱くほどそれが増したため、つい何度も抱いてしまった部分があったのだ。
「先輩の体、最高に気持ちいいですっ……たまりませんっ……」
「嫌ぁっ、そんなこと、あんっ……言わないで、ああっ……駄目、やっ、やぁんっ……」
 恥ずかしげに顔を背けながらも、その表情は嬉しそうな雰囲気があった。
 それはそうだろう。すでに部の民として目覚めているのだから、主である神に褒められて嬉しくないはずはないのだ。
 他の女性ならば素直に喜びを告げてくるのだが、琴巴はそういった事ができない性格のため否定の言葉を発しているに違いなかった。
 何より自分たちは恋人ではないのだから、恋人以外の男に抱かれていることを認める訳にはいかないという理屈も働いているのだろう。
 恋人ではない相手とセックスをする事への嫌悪が起きつつも、その一方で部の民として主と交わることへの喜びを感じ、混乱しているのかも知れない。
「あっ、あんっ……いけないのに、ああっ……駄目なのに、あんっ……わたし何でこんな、ああっ……緋道くんっ、緋道くんが欲しいのぉっ……」
 求めるようにして強く抱き付いてくるのを心地良く感じる。
 頭では否定しても、心と体が欲しているのだろう。
 強烈な快楽を得られることに、逆らえる心と体などそうは無いのだ。
 人間は気持ちのいいことには抗えない生物だからである。
 何より神と部の民としての繋がりを持っているのであるから、魂レベルでの欲求となっているのであり、それを否定することは不可能と言えただろう。
 琴巴の心と体と魂は、神治を求め、神治に愛されることを喜びとする存在となっていたのだ。
 それを最も簡単に実感できるのがセックスであり、今琴巴はそれを味わっていたのである。
「俺が欲しいのなら、どんどんあげますよっ……ほらっ、ほらぁっ……いいでしょっ? こうするのいいでしょぉっ?」
「あんっ、あんっ……そんな、やっ……駄目、嫌ぁっ……あっ、ああんっ……凄い、ああぅっ……緋道くん凄い、あっ……緋道くん凄いよぉっ……やっ、やぁんっ……」
 ズンズンっとリズム良く突き込むと、琴巴は背中に回した手に力を込めてきた。
 眉が悩ましげに歪み、桜色の唇が否定の言葉を発するが、すぐさまそれは歓喜の言葉へと変わっている。
 未だに理屈ではいけないと考えているが、それ以上の喜びがセックスを肯定する意識となっているのだろう。
 してはいけないが、したくて仕方がない。
 そうした矛盾した状態に強烈な快楽を感じているに違いなかった。
 それは神治もこれまで何度も経験してきたことであるため、その良さが凄く分かった。
 そうした精神的な気持ちの良さに加え、神の与える快楽を味わっているのだから、琴巴は蕩けるような快楽の中に身も心も魂も染まっているはずだった。
「あぅっ、あっ、ああんっ……わたしもう、ああっ……わたしもう駄目、あっ、あっ……イっちゃう、あんっ……イっちゃうよぉ、ああんっ……イっちゃうのぉっ……やっ、やっ、やぁああああああああああんっ!」
「ぐっ!」
 叫びと共に豊満な肉体が硬直し、膣内の締め付けが強烈になった瞬間、神治は精を放った。
 勢い良く迸る精液と、それと同時に押し寄せてくる快感を味わいながら、目の前にある美しい顔に見とれる。
 ピクンピクンと体が小刻みに震え、悩ましげに眉を歪めつつ、だらしなく唇を緩めているその様は、見事なまでに男に身を委ねた女の姿だった。
 何度見てもそうした様子はたまらなく満足感を感じさせる素晴らしいものがあった。
 しばらくしてから射精を終えると、ゆっくりと力を抜く。
 耳元に可愛らしい吐息が聞こえ、この美しい少女を己の物とした実感が湧き起こってくる。
 白い頬が桜色に染まり、潤んだ瞳がぼんやりと見つめてくるのに愛らしさを覚える。
「緋道くぅん……大好きぃ……」
 小さく呟かれた声に微笑みを浮かべつつ、これからもこの美しい先輩を愛していくのだと神治は思うのだった。












あとがき

 今回は、他人の女を奪う快感を味わうのと、嫌よ嫌よも好きの内、を体現しているようなお嬢さんとする内容にしてみました。
 肉体的にも魅力ありまくりで、現実にこんな女性が居たらたまらんでしょうな。我慢できずに襲いかかっても不思議じゃありません。
 とはいえ、最近落ち着いてきた神治としては、自分から襲うということはしないため、女性の方から襲わせる形にしてみました。
 でも途中で「やっぱりこれ以上は」と躊躇されたため、「そんなの無いでしょ」と襲ってしまうオチになった次第。
 まあ、いくら自棄になっても、琴巴の性格からして最後までは自分からしないと思いましたのでね。
 それに嫌がっているのを無理矢理、という流れにもしたかったので、こんな風になった訳です。
 部の民になっても積極的にならない人も居ていいかなぁ、と思い、さらにそうした態度こそが魅力になるのも良いだろうと思ってこんな感じにしてみましたがいかがだったでしょう。
(2013.11.30)

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