緋道の神器


        第四十話  肉誘の女教師



「緋道くんってホント素晴らしいよね。私、どうしてこんなに素晴らしい人がこの世に存在しているのかって思うと、凄く不思議に感じちゃう」
 目の前に座る歩美はそう呟くと、こちらをジッと見つめてきた。
 その瞳は「キラキラ」という擬音が聞こえてくるのではないかというほどに輝いており、神治に対する熱い想いを感じさせた。
 それは一見、恋愛感情の発露のように受け取れそうであったが、よくよく注視してみれば、それとは異なる雰囲気があるのが分かった。
 恋愛感情などよりもっと強い執着と、強い崇拝の念があるのが感じられるのだ。
 神治としては、そんな歩美には少々辟易してしまうところもあったが、自分を慕ってくる態度には男として嬉しさを感じる部分もあった。
 そもそも他にもそういった状態の女性が何人か居たため、最近ではあまり気にならなくなっていたのだ。
「そうした人とこうして一緒に居られるってのは、ホント幸せだと思うんだ。私は同じ想いを抱く人をもっともっと集めたい。今はクラブ活動でしかないけど、将来的には大きな組織にして、緋道くんのために尽くすんだよ。いいと思わない?」
 歩美は隣に目を向けると、柚華に同意を求めるようにして尋ねている。
「うん、そうだね。いいと思う。今は私たち高校生だから難しいけど、卒業したらそういう組織にするってのもいいと思うよ。そうすればずっと緋道くんと一緒に居られるし」
 柚華は嬉しそうに頷くと、うっとりとした瞳でこちらを見つめてきた。
 歩美ほどではないが、柚華の態度にも神治に対する崇拝の雰囲気があった。
 最近は歩美と絡むことが多いせいか、影響を受けてあからさまにそうした言動をするようになっていたのだ。
 特に柚華はちょくちょく神治に抱かれているため、神治の中にある神性に触れる機会が多く、意識的な意味では歩美よりも強いと言えただろう。
 以前から二人きりになると、凄く従うような態度を見せていたのである。
「おいおい、組織って……そんなもんどうやって作るんだよ。大体二人しか居ないのに話がデカすぎるぞ」
 神治は呆れたように呟いた。
 たった二人しかいない状態なのに、どうしてそこまで大きなことを言えるのだろう。
「大丈夫だよぉ。緋道くんの事を崇拝する人は沢山居るから。私には分かるんだ、緋道くんはそうした魅力に溢れてるって。知り合う人の中には、私たちと同じようになる人が絶対いるはずだもん。実は緋道くんが気づかないだけで、もう結構いたりしてね」
 確かにそれは当たっていた。
 学校の外であれば、二人のような態度をとる人間が何人かいたからだ。
 中でも一人は新興宗教にハマりやすい質であり、歩美の提案を聞かせたら嬉々として組織を作ろうとするに違いない。
 だがその事を歩美に話したら、大変な事になりそうに思えたので黙っておくことにした。
 神治としては、普通の高校生活を送りたいのだ。
 二人の自分に対する態度を考えると、すでに普通とは言えなくなっているようにも思えたが、現在の状況はクラブ活動の一環として受け入れることができていたので問題は無かった。
 願わくは、学校ではこれ以上、自分を崇拝するような人間が出てこないことを祈るばかりだ。
 同じ学校の女子を抱くこと自体はある程度妥協してしまっている部分もあるのだが、その後に歩美たちのような態度を取られては困るからである。
「あれ? 緋道くん呼ばれてるね。何だろう?」
 そんな事を考えていると、不意に校内放送が流れ、それが自分を呼び出す内容であったため驚いた。
 そのような経験などこれまで無かったので、一体何事だろうと身構えてしまう。
 教師に呼び出されるような覚えなど無かったからだ。
「よく分からないけど、取り敢えず行ってくるよ。呼び出されたのは確かなんだから」
「そうだね。行った方がいいよ」
 柚華がそう言いながらジッと見つめてくる。
 その瞳には熱いものが感じられ、思わず昨日の交わりの際の様子を思い出した神治は肉棒を硬くしてしまった。
「緋道くぅん。早く戻ってきてねぇ。私、待ってるからぁ」
 それを見透かしたように、歩美が甘えるように言ってくる。
 以前から柚華ばかりを抱いているのを不満に思っているため、そうした雰囲気に敏感になっているのだろう。
「待っている」という言葉に、「抱かれるのを待っている」という意味が込められているのが何となく分かった。
 最近歩美を抱いてあげていないため、何とか機会を作ってあげないとな、と思いつつも、そういった事をしていては、益々普通の高校生活から離れてしまうとも思った。
 まあ、そうなったらそうなったで諦めるしかないのだが、出来るだけそうならないようにしたいものだと思いつつ、神治は部室を出て行くのだった。


 神治は生徒指導室の前に立つと、大きく深呼吸をした。
 生徒指導室と言えば、何か問題を起こした際に呼び出されるイメージがあったため、自分は何かしただろうかと改めて考えてみるが、特に思い当たることは無かった。
 一体何故呼び出されたのか分からなかったが、もしかしたら大したことではないのかも知れない。
 そう前向きに考えつつ、軽くノックをしてから部屋へ入っていく。
 中には見慣れない女性教師が立っており、なかなかの美人であるため嬉しさが起きてくる。
 年齢は二十代後半くらいだろうか、腰の辺りまで伸びている綺麗なストレートロングの黒髪が印象的で、それによって顔の美しさがより強まっているように思えた。
 紺のスーツがよく似合っており、胸元が大きく山を描いているところから巨乳であることが分かる。
 タイトスカートに包まれた尻もぷっくりと膨らんでいて、何とも触り心地が良さそうであり、全体的に肉感的な印象を抱かせる女性だった。
 これは男子生徒に人気があるだろうな、などと思いながら、自分も惹かれ始めているのを認識する。
 どうにも男という生き物は、魅惑的な肉体を持つ女性に対してそうなってしまうようだ。
 そんな事を思いつつ、女性教師に勧められるままテーブルの前にある椅子に腰を下ろす。
 女性教師は反対側の椅子に座ると、ジッとこちらを見つめ、探るような視線を向けた後、少ししてから大きく息を吐き出し、ゆっくりと話し始めた。
「私は海棠麻衣(かいどうまい)です。あなたのクラスは担当していないので知らないでしょうけど、現代文を主に教えています。あなたはC組の緋道神治くんで間違いないですね?」
「はい、そうです」
 神治が応えると、麻衣は軽く頷いた。
「今日あなたを呼び出したのは、少し確認をしたかったからなの。同じクラスの未生歩美さんとのことなんだけど。正直に答えてね。あなた、彼女と付き合っているの?」
 予想外の質問に驚く。何故そんな事を聞いてくるのだろう。
「いえ、付き合ってません」
「本当に?」
「はい」
「そう……では、あなたは彼女に好意を持っている? 恋人にしたいとかそういう想いはない?」
「無いです」
「……即答ね。彼女は凄く魅力的だと思うけど、そういう気持ちにはならないってこと?」
「そうです……って、何でそんなことを聞くんですか? 俺と未生さんの関係が何か問題なんですか?」
 訳の分からない質問に、神治は少し苛立って尋ねた。
「ごめんなさいね。少し聞き方がマズかったかしら。でも今まさにあなたが言った通りで、未生さんとあなたの関係を問題にしているの」
「え?」
「文芸部の部室で未生さんとしたこと、と言えば分かるかしら?」
 そう言われても分からなかった。
 部室で歩美とするのはクラブ活動だが、それが何か問題あるとは思えなかったからだ。
「ふ〜〜、何故すぐに分かってもらえないのか不思議だけど……仕方ないわ、説明しましょう。緋道くん、あなた文芸部の部室で、未生さんと性的な行為をしたでしょう?」
「あ……」
 言われた瞬間思い出す。
 少し前、歩美にせがまれて部室でセックスをしたのだ。
 しかしそれはその一回切りで、後は普通にクラブ活動をしていたため、すっかり頭から抜けていたのである。
「忘れていたって感じね。そこがどうにも驚きだけど、もしかしてあなた、ああいう事をしょっちゅうしているの? だからすぐに分からなかったとか?」
 鋭い質問にぎくりとする。
 確かに神治にとり、学校でセックスする事自体は緋道村で慣れ親しんでいたため、特に記憶に残るようなことではなかった。
 無論、村の外の学校でしたのは初めてだったが、そうは言っても時間が経ってしまえば印象は薄れてしまうものだ。
「実はそうなんです。と言ったら驚きますか?」
「それは驚くわ。でもまあ、それは置いておいて、今は未生さんとの問題。あなたは彼女とは付き合っていないし、恋人にしたいと思うほどの気持ちも無い。なのに性的な行為はした。しかも学校で。それが良くないことだっていうのは分かるわね?」
「分かります」
「それなら宜しいです。それを分かって欲しかったのよ。もちろん今後はしては駄目よ? あなた達は学生なんですから、そういった事をするのは褒められた事じゃないの。興味があるのは仕方がないけど、夢中になっては駄目。分かるわね?」
「はい……」
 麻衣に諭されるまでもなく、村の外、特に学校ではセックスを大っぴらにするつもりは無かった。
 歩美とのことはついしてしまったのであり、同じ事をするつもりは無かったのだ。
 とはいえ、歩美に迫られてしまえば怪しくはあったのだが。
 だがこうして教師に見つかってしまうことがあるとすれば、歩美も自重してくれるだろう。
 などと考えていた神治は、そう言えば何故歩美との行為がバレてしまったのかと不審に思った。
 あの時は周囲に結界を張り、誰も近寄れないようにしていたはずだからだ。
「あの、先生……どうして俺と未生さんが部室でしていたの、知ってるんですか?」
「え? ああ、そう言えば話してなかったわね。私、あの時部室に居たのよ。ほら、あそこって本棚が並んでいる一角にスペースが空いているでしょ? そこで本の整理をしていたら、あなた達が入ってきて、ああいう事を始めた訳。私の居たのってちょうど死角になっていたみたいで、全然気がつかないから参っちゃったわ」
 なるほど、それならば納得だった。初めから中に居たとなれば、結界が意味をなさなくても当然だからだ。もう少し気をつけるべきだったろう。
「でもどうして部室に? 本の整理って、何で先生がしてたんですか?」
「え? 知らなかったの? 私は文芸部の顧問なのよ。だからたまに部室へ行ってそういう事をしてたんだけど……ああ、そう言えばあなたは最近入部したんだったわね」
 それは意外だった。まさかこの女性教師が顧問だったとは。
「本来ならこのことは学校へ報告するべきなんだけど、あなたは分かってくれたみたいだからしません。でもだからって同じ様なことをしては駄目よ? 今回はあくまで特別に、なんですから」
「分かってます。するつもりはありません」
 そう神治が言い切ると、麻衣は満足したように頷いた。
「それならもう帰って宜しいです。ご苦労様でした」
「ありがとうございました。失礼します」
 神治は頭を下げると立ち上がり、ドアを開いてからまた一礼して、生徒指導室を出た。
 ドアを閉めながら、何とか無事罰せられずに済んだことにホッとする。
 歩美とのことがバレたのが分かった時には冷や汗ものだったが、相手が麻衣だったことが幸運だった訳だ。彼女には感謝しなければならないだろう。
 それにしても、初めて逢ったが何とも美人でエッチな体をした先生だった。
 年上で、自分好みの知的な女性であるのも良かったため、神治は麻衣を抱きたくなった。
 しかし相手は教師でこちらは生徒という立場であるのだし、何より自分がそうした状況を望んでいないのだから諦めるしかないだろう。
 緋道村の外、特に学校では性的行為は慎むべきなのだ。以前、自分でそう決めたのである。
 とはいえ、あの肉体は魅力的だった。
 抱き締めて胸を揉みしだき、首筋に舌を這わせながら尻を撫でたら最高に違いない。
 特にスーツ姿というのが大人の女性の印象を強め、そんな相手を陵辱するのは実にそそると思った。
 実際にする訳にはいかなかったが、せめて妄想の中だけでも楽しもうと思った神治は、麻衣をネタに肉棒を硬くしつつ、部室へと向かっていくのだった。


 その日から神治は、麻衣に雑用の手伝いをやらされることが多くなった。
 歩美との事を報告しないでいてあげるのだからそれくらいしなさい、という理由でこき使われているのだ。
 しかし若くて美人な女性教師の頼みであれば、そんな理由が無くても喜んで手伝っただろう。
 何より麻衣のような豊満な肉体をした女性と身近に接せられるというのは、最近神治が楽しんでいる「見ているだけで触れられない興奮」が味わえたため良かった。
 実際麻衣と一緒に作業をしていると、大きな胸の膨らみが間近に迫ったり、形の良い尻が突き出されたりしている様を見ることが多く、そのたびに「手を出したくても出せない」という焦らされる状態に襲われ、肉欲が激しく高まった。
 以前の自分であれば、場所や状況をわきまえず襲いかかってしまっただろうが、そうならずに居られることに感慨深い想いを抱く。
 緋道村へ戻った頃から考えると何とも成長したものだ。
 逆に少し前であれば全く欲情しなかった訳で、自分は極端から極端へと変化しているのだなと思う。
 そして現在、そうした事を乗り越え、適度に興奮出来る状態、つまりは普通の男子高校生並の興奮と理性を保てている訳で、それは実に喜ばしいことだった。
「あらかた片付いたかな。ありがとう、助かったわ」
 麻衣はそう告げると、肩にかかった長い黒髪を払ったため、その仕草に思わずドキリとする。
 別にどうという行為ではないのだが、麻衣がするとどこか色っぽさを感じさせるのだ。
 やはり美人でスタイルの良いことが、肉欲を刺激するのかも知れない。
 姿勢良く立っているため、こちらに突き出される形になっている大きな胸の膨らみもそれを助長しているだろう。
 白いブラウスの胸元が大きく膨らんでいる様というのは、何ともそそるのだ。胸の部分だけ服が引っ張られているようになっているのがたまらないのである。
「これはお礼よ。飲んでちょうだい」
 麻衣はペットボトルのお茶を差し出すと、近くにあった椅子に腰を下ろした。
 その際に脚を組んだため、タイトスカートから伸びる綺麗な太ももが露わになり、肉欲が高まった。
 やはりこの先生はたまらないな、などと思いつつ、ペットボトルを受け取った神治は椅子に座った。
 これまで何度こうして麻衣に対して肉欲を高ぶらせただろう。
 そのたびに「手を出せない」という状態に新鮮な興奮を覚えたものだ。
 いや、「昔親しんだ興奮」と言うべきか。緋道村へ戻るまでの自分は、今のような状態で女性に対して興奮していたのだから。
 それが今や一部限定とはいえ、女性を好き放題に抱けているのだから凄いことだろう。
 その限定の中に、麻衣を入れようと思えばいくらでも出来る訳だが、それを敢えてしないのが今の神治のやり方だった。
 というか、そうして限定を保っていなければ、以前のようにセックス自体に興味が薄れかねなかったからである。
 何よりこうして抱けない鬱憤がたまっていると、いざ女性を抱ける時に強く興奮するため、そういう意味でも「抱かないでいる」というのはセックスを楽しむ上で良かったのだった。
 やはり人間、抑え付けられていたものが解消された際に一番興奮するのかも知れない。
 スポーツで例えるなら、最初からボロ勝ちしているよりも、大差で負けていた状況から逆転した時の方が興奮が高いのと同じ様なものだろうか。
 そうした何かを打ち破る行為にこそ、人は喜びを感じるように思えたのである。
「そういえば、前から気になってたんだけど、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「何ですか?」
「あなたって、未生さんと須田さんと仲がいいけど、どちらとも付き合ってないの?」
「付き合ってませんよ」
「そうなの……前に未生さんについては聞いたけど、須田さんに対してはどうなの? 恋人にしたいとか思わないの? あれだけ可愛いんだし、普通は恋人にしたいって思うでしょ?」
 その質問に思わず苦笑してしまう。
 以前歩美にも似たような事を聞かれたからだ。
 やはり可愛い女の子ともなれば、普通は恋人にしたくなるものだからだろう。
「思わないですね。須田さんは確かに可愛いですけど、恋人にしたいってのとは違いますから。友達として一緒にいると楽しいんですよ」
「普通はそれほど仲が良かったら、そのまま『恋人にしたい』ってなると思うのだけど」
「まあ、俺は普通じゃないんでしょう。恋愛感情ってのはそういうのとは違うと思ってますから」
「ふ〜〜ん、なるほどね。何とも珍しいわ……だけどそのせいなのかしらね、恋人でも恋愛的に好きでもない女の子と、学校で性的な事をしちゃったのは」
 少し皮肉げな口調で麻衣が告げてくる。
「あ〜〜、その事は本当に済みません。もうしてませんから」
「うん、宜しい。ホントああいう事はいけないのよ。まあ、あなたは真面目だから、約束したことは守ってくれるって信用してるけど……」
 その言葉に嬉しくなってくる。
 ただ「抱かない」という趣旨の受け取り方が異なっているという意味では申し訳なさがあった訳だが。
 歩美とはあの後もセックス自体はしていたからだ。
 とはいえ、学校でしなければ、麻衣もそれほど問題視はしないだろう。
「実はね、こうして雑用を手伝ってもらっているのも、あなたという人間を確認したかったからなの……何度も手伝わされて、それでどういった態度をとっているか。それであなたという人間が分かるから……あと一緒に居ることで約束を思い出してもらうって意味もあるけどね」
 なるほど、この雑用の手伝いにはそういった思惑があった訳だ。
 だが麻衣ほどの美人の頼みであれば、喜んで手伝う男子生徒は多そうだから、あまり意味はないように思えたが。
 そんな事を考えていた神治は、ふと以前から気になっていたことを尋ねてみたくなった。
「そういや、何であの時、俺と未生さんがしてるのを止めなかったんですか?」
「え?」
「だって先生、あの場に居たんですよね? だったらすぐに止めればいい訳じゃないですか。それを何でしなかったのかなぁ、って」
 性的行為が終わるまで待つ必要など無い、というか、性的行為自体をさせないことの方が教師としては大事なのだから、何故そうしなかったのか気になっていたのである。
「ああ、そのことね……う〜〜ん、何て言うのかな、ちょっと声をかけられなかったのよ……自分でも理由はよく分からないんだけど、何故か出来なくて……気がついた時にはあなた達が居なくなっていて……全く自分でも何やってるんだろうって後悔したわ」
 麻衣は困ったような表情を浮かべて呟いている。
 どうやら何となく声を掛けられなかったということらしい。
 だがそれは少しおかしな感じがした。
 行為を見た瞬間は「驚いたことで呆気に取られた」ということで分かるが、そのまま放置するというのはよく分からないからだ。
 もしかして麻衣は処女なのだろうか。
 性的経験がなく、また他人のそうした場面を見たこともないとすれば、初めて目にしたセックスの様子に圧倒されてしまってもおかしくないからだ。
 どうすれば良いのか分からずオロオロしている内に、行為が終わってしまったとすれば納得できたのである。
「それにしてもあなたって、あんな可愛い女の子二人と仲がいいなんて、凄く幸せなんじゃない?」
「え? そうですか?」
「そこで疑問形で反応するってのが面白いわよね。もしかしてこれまで可愛い女の子とばかり付き合ってたから、そういう感覚が麻痺してるとか? 普通なら羨ましい状況ってやつよ、あなたの今の状態って」
 苦笑しながら言ってくるのに、どう応えたものかと思う。
 言われてみると、確かにこれまで美女や美少女ばかりと付き合ってきたような気がする。
 感覚が麻痺しているというのは、あながち間違っていないのかも知れない。
「あなたって何だかモテそうな感じがするもの。妙な雰囲気があるのよね。つい何かしてあげたくなるというか……実は未生さんとの事を学校へ報告しなかったのも、そのせいかもって思えてるのよ」
「え?」
「あの時『私がこの生徒をちゃんと導いてあげなきゃ』みたいな想いが起きてね……学校へ報告したら、ただ処分されて終わってしまうかも知れないから、それじゃいけないって……『私がちゃんと指導するんだ。ちゃんとした高校生にしてあげるんだ』ってね……それって教師としては当たり前のことなんだけど、何だかそうした想いが凄く強かったように思えたのよ」
「そうなんですか……」
「それにあなたって……いえ、何でもないわ……」
 続けて麻衣は何か言いかけたが、そのまま押し黙った。
 そしてこちらをジッと見つめてくると、真剣な眼差しで何かを探るようにしている。
「ふ〜〜、やっぱり普通の高校生よね。気のせいだったのかな……」
 少ししてからそう呟くと、不審そうな表情を浮かべている。
「何ですか先生、人の顔見て勝手に納得しないで下さいよ」
「あ、ごめんなさい……何だか前に見た時の印象と違っていたから……」
「前に見た時の印象?」
「その……未生さんとしていた時の、ね……いえ、忘れて。あのことはあまり話すべきじゃないから……」
 麻衣は恥ずかしそうにそう言うと、慌てたようにして立ち上がった。
「そろそろ部活に行った方がいいんじゃない? 未生さん達が待ってるわよ」
 確かに時計を見るとそんな時間だった。
 麻衣の言っていたことは気になったが、本人に語る意思がないのだから無理矢理聞く訳にもいかないだろう。
「そうですね、俺もう行きます。それじゃ」
「ええ、手伝ってくれてありがとう」
 手を振って見送る麻衣に、同じようにして応えつつ、神治は部屋を後にするのだった。


 ある日曜日。神治は本屋へ向かって歩いていた。
 シリーズで出ている小説の最新刊が発売したので、それを買おうと思っていたのだ。
 こうして一人で出かけていると、何とも気楽な感じがして楽しくなってくる。
 普段は幾人かの女性の買い物に付き合ったり、色々連れ回されているため、一人で居ることが少なかったからだ。
 無論、そういう場合は一緒に居る女性とセックスする事になるので、それはそれで楽しかったのだが、それ以前の事で気を遣ったりする事があったため精神的に疲れたりしたのである。
 しかし今日はそういった事も無く、ただ呑気に買い物を出来るので気楽だった。
 鼻歌交じりに歩きつつ、自分好みの女性は居ないかと、行き交う人々にそれとなく視線を走らせる。
 これは緋道村で女性を沢山抱いた時に身についた癖だった。
 あの時は眼力の力を使って無理矢理欲情させ、抱きまくったものだったが、村の外で同じ事をする訳にはいかないし、そんなつもりも無かったため、これは単に見るだけというものでしかなかった。
 普段女性を好き放題抱いているせいか、抱けない状況で女性を選別する行為には妙な楽しさがあったのだ。
 手を出せない、というのが刺激となって興奮を呼ぶのである。
 これまで村の外で関係を持ってきた女性達にしても、そうした要素を伴っていることがあったため、その禁忌を破って抱いたことに興奮があったように思えた。
 少々強引にしてしまった事があったのも、それが原因と言えただろう。
 だが興奮があるからといって、あまり大っぴらにしてしまうとリスクが高くなるのも当然で、先日の歩美との件にしても、そのために危うく大事になるかも知れなかったのだ。
 麻衣が報告しないでくれたから良かったものの、報告されていたら停学になっていたかも知れないのである。
 そういう意味で気を引き締めると共に、改めて麻衣に対して感謝の念を持った。
 それと同時にその肉付きのいい肉体が脳裏に浮かぶ。
 スーツに包まれた女肉は何とも豊満で、そのまま抱いたら実に気持ち良さそうだった。
 これまで何度も視姦してきたが、いつまで経っても飽きることはなかった。
 それだけ麻衣の肉体は、見ているだけで興奮を誘うものだったからだ。
 抱けていない、というのが興奮をより誘っているのかも知れない。
 経験していない未知の肉体だからこそ、どうなっているのかと期待が高ぶるのだろう。
 とはいえ、実際に抱くつもりは無かったのだが。
 もう学校関係者相手にセックスはしない方がいいだろうと思っていたからだ。
 あまり身近な存在と性的関係を持ちすぎると、何かの拍子に大事になりかねないからである。柚華と歩美だけにしておくのが無難だろう。
 そんな事を考えながら歩いていると、目の前を見知った顔が横切るのが見えた。
(あれ? 先生?)
 それは麻衣だった。
 学校で見慣れたスーツ姿と異なり、薄手のブラウスに膝丈のスカートというラフな格好をしているが、その魅力的な容姿を見間違えるはずがなかった。
 何故このような所に居るのかと驚いたが、もしかしたら近所に住んでいるのかも知れない。
 ちょうど麻衣に対して肉欲を高ぶらせていたため、挨拶でもしながらその肉体を眺めさせてもらおうと思った神治は足を速めた。
 もう少しで追いつく、という距離まで進んだ時、不意に妙な感覚を覚える。
 何やら歪んだ「気」を感じたのだ。
「気」の有りかを探ってみると、それは麻衣の近くに居る男から発せられているのが分かった。
 その男は麻衣のことをジッと見つめており、どうやら麻衣の後をつけているらしい。
 年齢は自分と変わらないくらいに見えたため、もしかして同じ学校の生徒で、自分と同じように麻衣に挨拶でもするつもりなのかとも思ったが、それにしてはその男の雰囲気はおかしすぎた。
 粘着質な視線を麻衣に送っており、それにはどことなく危険なものが含まれているように感じられたのだ。
 気になった神治は、男の後を付けながら麻衣を追うことにした。
 麻衣には恩があったし、それ以前に美人の女性が何かされたりでもしたら腹が立つだろう。
 そんな事を思いながらしばらく歩いていると、麻衣はあまり人気の無い通りへと入っていった。
 昼間とはいえ、怪しい男に後を付けられているのに何と危険なことを、と思いつつ、男が同じ通りへ入っていくのを確認した後、神治も足早にそちらへ向かう。
 角を曲がった瞬間、予想通り男が麻衣に接触しているのが見えた。
 声が小さいためよく聞こえないが、態度から麻衣が嫌がっているのが分かる。
「知らないって言っているでしょうっ? あなたは何なのっ?」
 麻衣の怒りを含んだ声が聞こえてきた。
「僕はあなたの教え子だって言ったじゃないですか。先生こそどうして僕のことを知らない振りするんです?」
 男はニヤニヤした表情を浮かべながら、麻衣の言葉に応えている。
「だけどあなたは違う高校へ通っているって言ったじゃないの。それでどうして私の教え子なのよ」
「嫌だなぁ、高校じゃないですよ。家庭教師ですってば。昨日だって僕の家に来て、僕の部屋で勉強を教えてくれたじゃないですか」
「私はそんな事してませんっ。人違いですっ」
「人違いじゃないですよ。あなたは確かに僕の家庭教師をしている先生です」
 その言葉に麻衣は困惑したように視線を彷徨わせている。会話が成立していない事にどうすればいいのか困っているのだろう。
 どうやら相手は思い込みの激しいタイプで、麻衣のことを自分の家庭教師だと認識しているらしい。
「先生は昨日、僕に色々教えてくれたじゃないですか。勉強だけじゃなく、凄く気持ちのいいことを……ご両親には内緒よって言いながら、僕を抱き締めてキスしてくれて、それで僕に女の体を教えてくれました……僕、今朝からその事で頭が一杯で、もう我慢できないんです。だからこれから僕の家に来て下さい。また教えて下さい、お願いします」
 男はギラついた目を向けながら、麻衣の手を取ろうとしている。
「嫌っ。止めて下さいっ。私そんな事してないわっ。人違いよっ」
「何でそんな事を言うんですか? ふふ、分かってますよ。先生はいつもそう言って僕に意地悪するんですから。でもすぐ優しくしてくれるんですよね。そんな所が僕は大好きです。だから早く行きましょう?」
 男の、麻衣の反応を全く無視した言動に神治は呆気に取られつつ、世の中にはこうした危ない人間が居るのだな、と思った。
 そして早く助けてあげなければと、麻衣の傍へと近づいていった。
「どうしたんですか?」
 声をかけると、二人の視線がこちらへ向く。
 麻衣は一瞬安堵の表情を浮かべたが、すぐに困ったようにして視線をそらしている。
 この様な状況を見られたのが恥ずかしいのだろう。
 男の方は興味なさそうにすぐに麻衣の方へと視線を戻し、再び同じ様な言葉を繰り返し始めた。
 男にとり、神治の存在などどうでもいいに違いない。
 麻衣の方は、神治の存在を気にして、先ほどより強く言えない状態になっている。
 とはいえ、強く言ったから男が言動を改めるとは思えなかったが。
 ここで神治が麻衣の代わりに何か言ったとしても効果があるとは思えなかったし、さてどうしたものかと思いつつ男を見つめた神治は、妙な事に気がついた。
 男の持つ「気」の状態が異常に思えたのだ。
「気」が停滞しているのである。
 これが先ほど男を見かけた時に気にかかった部分だろう。
 通常、人間の持つ「気」は体全体に広がる形で存在しているのだが、男の「気」は股間の辺りに集中しており、そこから淀みを帯びた状態で頭の辺りに流れていっているのだ。
 もしかしたら、それが男がおかしな言動をしている原因なのかも知れない。
 股間に漂う「気」は淫の「気」が主であり、それが淀んだ状態となって頭に届いているとなれば、脳に何かしら影響を与えている可能性があった。
 先ほど男が口にした肉欲を伴った妄想を、現実のように感じてしまっているのはそれが原因なのかも知れなかった。
 となると、この「気」の状態を何とかすれば、男は少しはまともになるのではないだろうか。
 とは思ったが、ではどうすればいいのだろう。これまで他人の「気」を操ったことなどなかったからだ。
「昨日の先生はあんなに優しかったじゃないですか。僕のチンポを美味しそうに舐めて、大きいわ、逞しいわ、って言ってくれて……それで僕、すぐに我慢できなくなっちゃったんですよ」
 男の言葉に嫌悪感が湧き起こる。
 実際にしたことならともかく、男の言っているのは妄想でしかない。
 自分の妄想を他人に、しかも妄想の対象者に聞かせるなど悪趣味としか言いようが無いだろう。
 神治にしても麻衣に対して妄想を繰り広げたが、それを伝えることが相手にどんな想いを抱かせるかくらいは分かった。
「それから先生は、その大きなオッパイで僕のを挟んで揉んでくれたんですよ。僕はそれがたまらなく……」
(五月蠅いっ)
 心の中で叫ぶと同時に力のこもった「気」の塊を男に向かって放つ。
「うぅっ!」
 その瞬間、男は体を硬直させ、ビクビクと震えた。
 少しすると力を抜いて呆けた表情を浮かべている。
 射精したのだ。
 男の言葉に苛ついたため、黙らせようと、以前ヨーロッパで覚えた強制的に射精させる技を使ったのである。
 相手を射精させるという意味で少々気色の悪い技なのではあるが、男性に対しては凄まじく有効な技であったし、神治としてはそれくらいしか黙らせる方法を知らなかった。
 しかしその事で、男の「気」を処理する方法を思いつく。
 男の「気」が淀んでいるのは、股間の辺りに停滞してしまっているのが原因なのだから、外部から大量の「気」を送り込めば解消されるのではないかと思ったのだ。
 要はゴミの詰まった下水管に大量の水を流し込んで押し出すのと同じ要領だろうか。
 そう考えた神治は、手のひらを男の股間に向けてかざすと、一気に「気」を放った。
「うわぁっ!」
 すると男の体が浮き上がり、数メートル後方まで勢い良く吹っ飛んでいった。
 地面に尻餅をつく形で倒れた男は、何が起きたのか分からない様子で視線を落ち着き無く動かしている。
 それを見ている麻衣も驚いた表情を浮かべていた。
 当然だろう。何しろ突然人間が吹き飛んだのだから。
 神治にしてもここまでの事が起こると思わなかったため驚いていた。
 射精を促す場合と異なり、大量の「気」のみを放つ行為にはこうした事が伴うということだろうか。
 そう言えば以前、未迦知神に同じ様なことをされたのを思い出した。
 ある程度「気」を操れれば、こういう事も可能になるということだろう。
 そう納得しつつ、当初の目的は達せられたかと男を見ると、股間に停滞していた「気」が通常の量になっているのが分かった。
 どうやら上手くいったらしい。
 あとはこれで男の言動が変わっていれば良いのだが……。
 神治が視線を向けると、男は慌てたようにして立ち上がり、きょろきょろと周囲を落ち着き無く見回した後、麻衣の方を見ると慌てたように視線をそらし、何も言わずに立ち去っていった。
 これでは確認が出来なかったが、取り敢えず現状の麻衣の危険は去ったためホッと胸をなで下ろす。
「大丈夫でしたか先生」
「……え? あ……ああ、はい。大丈夫です……それより今の……」
「一体何なんでしょうね。ああいう人のやることは訳が分かりませんよ。突然何をしているんだか」
「そ、そうね……何なのかしら……全く訳が分からないわ……」
 麻衣は困惑した様子ではあったが、元々常軌を逸した人間の行動など理解できるはずもないと思ったのだろう、無理矢理納得しているようだった。
「それにしても緋道くん、どうしてここに? いきなり居たから驚いたのよ」
「俺、この近所に住んでいるんですよ。買い物へ行こうとしてたら偶然先生が通りかかって。それで挨拶しようと思ったら、変な男が先生の後付けてるじゃないですか。ビックリしましたよ。ああいうのをストーカーって言うんですかね。初めて見たけど怖いですね。会話が成立しないってのがこれほど怖いとは思わなかったです」
「!……そうね……怖かったわ……」
 麻衣は男に言い寄られていた時の事を思い出したのか、表情を曇らせて両手で体を抱き締めるようにしている。
「それよりありがとう、助けてくれて。本当に助かったわ」
「いえ、俺はただ立ってただけですし、何もしてませんから」
「それでもありがたかったの。ああいう時、誰かが傍に居てくれるだけでも心強いんだから……あ、そうだこれからうちへいらっしゃいな。せめてものお礼にケーキでもご馳走するから。ほらこれ」
 麻衣は片手に持っていたケーキが入っているらしき箱を持ち上げた。
「え? そんないいですよ」
「遠慮しないでいらっしゃい。これはお礼なんだから」
 そう言いながら微笑む麻衣の表情にはどこか硬さがあり、まだ恐怖から回復してないのが分かった。
 おそらく一人になるのが怖いのだろう。あの男が戻ってくる可能性もあることを考えれば当然だった。
 停滞していた「気」は消えたものの、それで男がまともになっているかは分からないのだ。
 もしあの男が自宅まで押しかけたりしたら、先ほどより恐ろしい状況になりかねなかった。ストーカーだけに住所を知っている可能性もあるのである。
 ここは少しの間、一緒に居てあげた方がいいかも知れなかった。
「分かりました。じゃあ、お邪魔します」
 神治がそう告げると、麻衣はホッとしたように笑みを浮かべ、「それじゃこっちよ」と神治を促して歩き出した。
 時折存在を確認するようにこちらへ視線を向けてくるのは、やはり不安なのに違いない。
 ならば麻衣が落ち着くまで傍に居てあげるのも、先日の恩を返すことになると思った神治は、出来るだけ麻衣の視線に触れるようにしながら歩いていくのだった。


「そこに座ってて」
 近くにあったマンションへ着き、部屋へ入ると、麻衣はテーブルの傍に置いてあるクッションを示しながらそう告げた。
 そのまま自らは「お茶の準備をするから」と言いつつ、ケーキの箱を持ってキッチンへと向かっている。
 その様子をぼんやりと眺めていた神治は、薄手のブラウスに膝丈のスカートといった麻衣の服装に意識を向けると、学校で見慣れたスーツ姿も良いが、こうしたラフな格好もなかなか可愛いな、などと思った。
 大きな胸がブラウスを押し上げており、きゅっと締まった腰のラインがたまらず、何よりぷっくりと膨らんだ尻は、スカートに見事な曲線を描いていて肉欲を誘った。
 時折長い黒髪をかきあげる仕草がたまらず、その横顔を見ているだけで肉棒が疼くほどだ。
 やはり麻衣には、男の欲情を高めてしまう要素があるのだろう。何しろこれまで何度もこうした状態になっているからだ。
 本人は意識していないのだろうが、男を無意識に誘ってしまう雰囲気があるのである。
 あの男がおかしくなってしまったのも、それが原因なのかも知れない。
「お待たせ。さあ、食べてね」
 そんな事を思っていると、麻衣が戻ってきてケーキをテーブルの上に置き、紅茶をカップに注いでいる。
 その手が微妙に震えている事から、まだ安心出来ていないのが分かった。
「先生、大丈夫ですか?」
 心配して声をかけると、麻衣はビクッと体を震わせた後、困ったようにして俯いた。
「大丈夫よ。心配しないで……って、心配しちゃうわよね、こんなんじゃ。私は先生なのに、生徒に心配させちゃうなんて教師失格だわ……」
「そんな事ないですよ。あんな事があったんですから仕方ないです。男だって怖いんですから、女性の先生が怖いのは当たり前ですよ」
「ありがとう。でもだからって生徒に傍に居てもらうなんて、やっぱり駄目よ。ごめんなさい。あなたを誘ったのは私が怖かったからなの。お礼にケーキをご馳走するなんて言い訳よ。ホントどうしようもない先生ね……」
 落ち込んだ様子で呟く麻衣に、神治は強い義憤を覚えた。
「先生だからって関係ないです。先生は女性なんですから……俺はまだ子供ですけど、男ですからね。だから先生を守ります。いくらでも頼って下さい」
 そう強く告げると、麻衣はハッとしたように顔を上げた。
「ふふ、あなたって不思議ね。あなたにそう言われると、凄く頼りたくなっちゃうわ。あなたなら全てを任せても安心できる、そんな感じがしたの。未生さんもそんな所に惹かれているのかしら……」
 麻衣はそう呟きながら、潤んだ瞳でこちらを見つめてきた。
 そこには女の媚びが感じられ、麻衣が男として神治を意識しているのが分かった。
 歩美のことを持ち出したのも、意識が性的なものに向いたからだろう。
「どんどん頼って下さい。先生みたいな美人に頼られるなんて、男として凄く嬉しいですから」
「ふふ、ありがとう。なら少し、頼らせてもらおうかしら……しばらく一緒に居てもらえる?」
「はい、全然構いません。というか、先生と二人きりで居られるのなんて嬉しいですよ。いつも一緒に居るときも凄く嬉しいんですから。こんな美人な先生と二人きりだ、って」
「やだ、何言ってるのよもう。私とあなたは先生と生徒なんですからね、変なこと考えちゃ駄目」
「そうは言っても考えちゃいますよ。先生は魅力的ですから」
 神治がそう告げると、麻衣は困ったようにして俯いた。
 そして暗い表情になると、小さく唇を震わせている。
「……さっきの人も……そんな風に考えてたりしたのかしら……」
 その言葉と反応に、神治は自分の言葉の迂闊さを悔いた。
 考えてみれば、今自分が口にしたような内容は、先ほどの男が言っていたのと方向性として同じだからだ。
 直接的ないやらしい言葉を使っていないだけで、想いとしては似通っているのである。
 あの男はそれが暴走したがゆえに、ああした事をしてしまったのだろう。
「すみません、俺……」
「いいのよ、気にしないで。あなたは違うから。あなたはあんな事しないでしょう? 逆に助けてくれたんだし。あなたが現れた時、凄く嬉しかったんだから。あなたには本当に感謝してるの」
 麻衣は慌てたように顔をあげると、微笑みながらそう告げてきた。
 しかしその表情は硬く、どう見ても動揺しているのが分かる。
 せっかくあの男の事を忘れようとしていただろうに、思い出させてしまったのは失敗だった。
「あなたの姿が見えた時、それまで凄く怖かったのが和らいだのよ。もう大丈夫だ。緋道くんが居てくれるから、もう大丈夫だってね……不思議ね。あなたは高校生でまだ子供なのに、教師で大人の私が、あなたの姿を見たら安心しちゃうなんて……」
「知り合いだったからじゃないですか。一人きりだと不安でも、誰か居てくれると安心感が出てくるっていうか、さっき先生も似たようなこと言ってたじゃないですか」
「それもあるとは思うけど……でもそういうのとは別にね、あなたが凄い存在に思えたの……頼りになる存在が来てくれて、私を助けてくれるって感じで……安心したのよ……」
 麻衣はこちらに視線を向けると、潤んだ瞳でジッと見つめてくる。 
 そこには強い動揺の光があり、思っていた以上に麻衣の心が恐怖に包まれているのが分かった。
「でも駄目ね……体はまだ震えてる。あなたと一緒に居て安心感はあるんだけど、体は駄目なの……ほら、震えているでしょう?」
 そう言うと手を掴んでくる。
 強い震えが伝わってきて、内面の恐怖が感じられた。
「不思議ね……あなたの手を握っていると、凄く安心できる……あなたから強い力を感じるの……だからね、少し頼らせて……こんなこと先生としては駄目だと思うけど、そうすれば立ち直れる気がするから……」
 そのまま両手で包むようにして握ってくると、ゆっくり撫でてきた。
 その動きには、どこかねっとりとした淫靡なものを感じさせる部分があったため、少し興奮してしまう。
 女の本能が、男の庇護を求めてそうした雰囲気を発しているのかも知れない。
「本当、ごめんなさいね……私は先生なのに……生徒のあなたにこんな風に頼って……」
「いいんですよ。いくらでも頼って下さい……俺、先生にならいくら頼られても構いませんから……」
 神治はそう言いながら、空いている手を麻衣の手に重ねた。
「!……あなたに触れられるとどうして……どうしてこんなに……」
 麻衣は何かに耐えるようにして体を震わせると、俯きながら呟いている。
 そこには追い詰められた雰囲気があり、さらには淫の「気」が高まっているのが分かった。
「ああっ……もう駄目、駄目よっ……私駄目なのぉっ……」
 そう叫ぶと同時に、麻衣は勢い良く抱きついてきた。
 その体が微妙に震えているのが伝わってきたため、強い庇護欲が湧き起こってくる。
「ああ……やっぱり安心できる。こうしてあなたに抱きついていると凄く安心できる……どうしてなのかしら。あなたは年下の男の子で、生徒なのに、どうしてこんなに……」
 震える体を押し付けるようにして麻衣は強く抱き締めてきた。
 柔らかな肉の感触が伝わってきたため、股間の肉棒が硬く大きくなっていくと共に、初めて見た時から触れたくてたまらなかった肉体に今抱かれているのだと思うと、満足感が込み上げてくる。
「本当、不思議……あなたとこうしてると私、教師だってことを忘れて、一人の女に戻っちゃう……あなたの前だと、何もかもさらけ出して、全てを委ねたくなっちゃうわ……」
 潤んだ瞳を向け、言葉通り女の媚びを露わにしながら、麻衣はジッと見つめてきた。
 ただその表情には恐怖が伺えたため、少し混乱しているらしいのが分かる。
 あの男に植え付けられた恐怖のせいで、一種の錯乱状態になっているのだろう。
「いけないことなのに……先生として駄目なのに……あなたは生徒なのに……でも私、もう駄目なの……駄目……」
 麻衣は神治の顔を両手で挟むようにして持つと、泣きそうな顔で見つめてきた。
 それは教師としての責任・立場に対する意識よりも、恐怖から逃れたい思いが勝った瞬間だった。
「だから、ごめんなさい……」
 そう告げたかと思うと、麻衣は勢い良く唇を重ねてきた。
 強く抱き締められると共に、舌が入り込み、激しく絡んでくる。
「んっ、んんっ……んふっ……」
 荒々しく口内を舐め回し、強く擦りつけるようにして体を押し付け、熱い吐息を漏らしていく。
 それは激情をぶつけてくるような、そんなキスだった。
 己の中にある恐怖をぬぐい去ろうとしているかのように、夢中になって吸い付き、体を擦りつけてくるのだ。
 神治は突然のことに驚いていたが、強い肉欲を覚えてもいた。
 教師と生徒という関係で、こうした行為に及んでいることに背徳的な興奮を感じたからである。
 こうなれば麻衣を抱かずにはいられなかった。
 おそらく麻衣は意識を快楽に染めることで恐怖を消し去りたいと思っているのだろうし、ならばそうしてあげるのが信頼された男としての役目だと思ったのだ。
「んっ、んんっ……んっ……」
 麻衣は顔を左右に入れ替え、荒々しいキスを繰り返してくる。
 抱き締めてくる力も強く、神治は徐々に床に押し倒され、のし掛かられる状態になった。
 体全体に柔らかな女肉の感触が広がり、肉棒が硬く大きくなっていく。
 特に胸元で潰れている乳房の存在感は、肉欲を強く刺激し、抑えられない衝動を呼び起こしていった。
「んんっ、んっ、んぁっ……んっ、んふぅっ……んっ、んっ、んんぅっ……」
 麻衣の鼻からは荒い吐息が漏れ、口内を貪るようにして舐めてくる。
 擦りつけてくる女肉が勃起した肉棒を擦り、蕩けるような快感を生んでいる。
 神治を逃すまいと押さえつけるようにしながら唇を貪ってくるその様は、必死さを感じさせ、それだけ麻衣の感じている恐怖が強いものだというのが分かった。
 ならば強烈な快楽を与え、恐怖など感じられなくなるほど無茶苦茶にしてやるのがいいだろう。
 そう考えた神治は、こちらからも激しく舌を吸い、口内を舐め回し始めた。
 すると麻衣が負けじとさらに動きを強めてきたため、尻に手を伸ばしてギュッと掴む。
 一瞬動きが止まるが、すぐさま口の動きが再開され、互いに快楽を与え、得られる行為に気持ちの良さが強まっていく。
「んっ、んんっ……んっ、んふっ、んぁっ……あっ、あっ、ああんっ……」
 頃合いを見計らい、体をごろりと回転させて上下の位置を入れ替えつつ、豊満な乳房を揉みしだくと、甘い喘ぎが麻衣の口から漏れた。
 手のひらに伝わってくる感触は極上で、熟しかけた女性独特の柔らかさに溢れていて気持ちいい。
 先ほど触れた尻の感触もそうだが、何とも肉付きのいい体をしており、これほどの肉体を味わえることに悦びが溢れてくる。
 ブラウスのボタンを外すと、水色のブラジャーに包まれた膨らみが露わとなり、その魅惑的な存在感にごくりと唾を飲み込む。
「あっ、あっ……あんっ、ああっ……やっ……」
 ブラジャー越しに揉みしだきながら、膨らみに舌を這わすと、可愛らしい声が耳に響き、それを楽しみつつ徐々にブラジャーを引き下げていく。
 現れた桜色の乳首に吸い付き、舌で弾くようにして舐め回すのを何度も繰り返す。
「あんっ、やっ、ああっ……やっ、はぅっ、はぁっ……」
 手に余るほどの大きさのある膨らみは、柔らかさに溢れており、それでいて弾力も心地良さがあるため揉むのを止められなかった。
 口に含んだ突起を舐め、吸い付くたびに快感が口に広がっていく。
 熟しかけの膨らみは、何とも男を魅了する素晴らしさがあると言えただろう。
「あふっ、あっ、ああっ……駄目、やっ、やぁっ……」
 スカートの中に手を伸ばし、秘所を撫でると、麻衣の体がビクビクっと震えた。
 そのままパンティの中に指を入れ、クリトリスに刺激を与えると、さらにそれが激しくなった。
「やんっ、やっ……あっ、あっ、ああんっ……そんな駄目、あっ……そんなの駄目よ、ああっ……そんな風にしちゃ駄目ぇっ……」
 秘所に対する愛撫に、麻衣は頭を左右に振りながら甘い声を発し、肉付きのいい脚をクネクネと動かした。
 その様子が何ともいやらしく、早く肉棒を入れたくてたまらなくなってくる。
「わたしどうしてこんな、やぅっ……こんなの初めて、あんっ……こんなに気持ちいいの、ああっ……凄いわぁっ……」
 ピクっ、ピクっ、と体を痙攣させつつ、麻衣は困惑したように喘いでいる。
 どうやらこうした快感を味わうのは初めてらしい。やはり処女なのかも知れない。
 年上の女性、しかも教師の初めてをいただく。
 それは何とも興奮を誘う状況であり、たまらなくなった神治は、スカートを捲り上げてパンティを引き下ろすと、ズボンとパンツを脱いで、細い両脚の間に腰を入れた。
「入れますよ、先生」
「!……」
 その言葉に麻衣は一瞬硬直したが、すぐにコクリと頷いた。
 その様子に可愛らしさを覚えつつ、肉棒を秘所へと近づけていく。
「あぅんっ……」
「うぅっ……」
 亀頭の先がハマると、互いの頭が仰け反った。
 蕩けるような快感が全身を走り抜けるのを感じながら、ゆっくりと肉棒を押し込んでいく。
「いぅっ……痛っ……いっ、うっ……」
 やはり処女だったらしく、麻衣は苦悶の表情を浮かべて喘いでいる。
 肉棒も強く締め付けられており、その初々しい膣の感触に興奮が高まっていく。
 見た目はいやらしさに溢れた肉体をしているというのに、男のモノを受け入れるのは初めてなのだ。
 そのギャップに肉欲が激しく高ぶった。
「あっ……あぅっ……何これ、あっ……急に気持ち良くなって、ああっ……気持ちいぃ、あっ、ああっ……」
 痛みを和らげる「気」を送り込み、快感だけを感じられるようにしてやると、麻衣は驚いたようにして喘いだ。
 その表情は快楽に蕩け始めており、何とも言えない淫靡さが漂い始めていた。
「あっ……ああっ……おっきぃ……あっ、あっ……太いよぉっ……」
 ぞりぞりと膣襞をかき分けながら進む肉棒の感触に、麻衣は体を震わせながら、たまらないといった感じで呟いている。
 肉棒が全て収まると一旦動きを止め、大きく息を吐き出す。
 眼下では、泣きそうな表情をした麻衣が、あらぬ方向を見ながら荒い呼吸をしているのが見えた。
 ついに入れた。麻衣を自分のモノにしたのだ。
 ずっと抱きたいと思っていた相手であり、年上の女性、しかも教師を征服したことに強烈な満足感が押し寄せてくる。
 何より膣の感触が素晴らしく、容姿の魅力を裏切らないその快感にうっとりとなった。
 やはり見た目の印象通り、麻衣はいやらしい肉体の持ち主だった。
 これからもっともっと開発してやらなければならないだろう。
「あんっ、あんっ、ああっ……やっ、やっ、やぁんっ……」
 腰を動かし始めると、さらに気持ちの良さが増し、蕩けるような快感が股間から湧き登ってきた。
 眼下には快楽に歪んだ美しい顔があり、その潤みを帯びた瞳と、だらしなく開かれた口は淫靡な雰囲気を感じさせた。
 腰を動かすたびに、はだけたブラウスから覗く豊満な乳房が揺れ、振動が伝わってくるのに、互いの肉体が繋がっている実感を得る。
 自分は今この魅惑的な肉体をした美女とセックスをしているのだと思うと、精神的な快感が高まっていく。
「あっ、ああっ……いいっ、あっ……いいの、あんっ……いいよ緋道くぅんっ……」
 何より相手は教師だった。
 自分は直接の教え子という訳ではなかったが、教師相手に肉棒を押し込み、甘く喘がせているのだと思うと激しい興奮が湧き起こってくる。
 やはり「してはならない」といった相手とのセックスは肉欲が高ぶるものだ。
 緋道村にも教師は居たが、彼女たちとしても今得ている快楽は得られないだろう。
「教師と生徒はセックスをしてはならない」といった倫理観の存在する村の外であるからこそ、気持ちの良さが増すのである。
「先生っ……先生気持ちいいよっ……先生のここ、あったかくて、俺のを締め付けてきて、うぅっ……たまらないっ……」
 そう叫んだ瞬間、麻衣の体が激しく震えた。
 おそらく「先生」と呼びかけたことで、自分がセックスをしている相手が生徒である事を思い出し、背徳感を覚えたに違いない。
「言わないで、あっ……駄目、先生って言わないで、やっ……言われたら私、あぅっ……言われたら私ぃっ……」
 今更ながら、己が禁忌を破っていることに罪悪感を覚えたのか、そんな事を言ってくる。
 だが「先生」と言わなければセックスしている事実が消えるはずもないのだから意味は無いだろう。
「でも先生は先生だからっ……他の言い方なんて出来ないですっ……先生っ、先生っ……」
「あんっ、ああっ……駄目なのに、あっ……駄目なのに何で、やっ……言われるとわたし、ああっ……言われるとわたし駄目になっちゃぅっ……」
 やはり禁忌を破っていることに快感を得ているのか、先ほどより喘ぎと悶えが激しくなった。
 その様子に肉棒がグンッと力を増し、自然と腰の動きが激しくなっていく。
「ああっ、あっ、あんっ……やだ凄い、あぅっ……凄いよ緋道くぅん、あっ、ああっ……緋道くんの凄いぃっ……」
 麻衣は激しく左右に頭を振り、長く美しい黒髪を乱している。
 綺麗な瞳からは涙が流れ、得ている快感がかなりのものであるのが感じられた。
「先生のここも凄いよ、うっ……俺、先生の中に入れられて、こんな気持ち良くしてもらって、うぅっ……凄い幸せですっ……俺、先生の生徒で良かったぁっ……」
「嫌っ、先生って言わないで、あぅっ……言っちゃや、ああっ……言っちゃ嫌よぉっ……」
 神治の言葉に麻衣は体をビクビクビクッと震わせ、両手で顔を覆うようにしている。
 だが否定の言葉とは裏腹に、麻衣の膣は先ほどより肉棒に強く絡みつき、激しく吸い付いてきていた。
 背徳感が快感を高め、肉体に作用しているのだろう。
「先生気持ちいい、うっ……気持ちいいよぉ、うぅっ……先生の中凄い気持ちいいっ……」
「ああっ、やっ、やぁっ……先生って言われるとわたし、あぅっ……駄目になっちゃう、あっ、ああっ……駄目に、あんっ……どんどん駄目になっちゃうぅっ……やっ、やっ、やぁんっ……」
 精神的な高揚が強烈になったのか、麻衣は頭を激しく左右に振りながら、だらしない表情を浮かべて悶え狂っている。
 膣の感触も蕩けるようなものになり、吸い付いてくる襞の気持ちの良さに、神治も頬を緩めた。
「先生っ……先生っ……先生の中気持ちいいっ……」
「あぅっ、あんぅっ、ああぅんっ……やぅっ、やっぅ、やぁぅっ……言わないで、ああっ……言わない、あんっ……言わやぁっ……ひゃぅっ、ひゃぁんっ……」
 激しい突き込みと「先生」という呼びかけに、麻衣は狂ったように悶えまくった。
 細い腕が背中に回り、肉付きのいい太ももが腰に絡みついて強く引き寄せられる。
 目の前に迫った美しい顔は、快楽に蕩け、だらしなく呆けていた。
 強烈な精神的・肉体的快感。さらに淫の「気」を大量に与えたために意識が朦朧としているに違いない。
 神治は美しい女性教師の乱れ狂う様を満足げに見下ろしながら、股間に押し寄せてくる快感に呻きをもらしながら耐えた。
 快楽に意識が染まり始めた頃から、肉棒を包む襞の動きが活発になり、実にたまらない気持ちの良さを感じたからだ。
 どうやら麻衣の肉体には、自らが快楽に染まれば染まるほど、相手をしている男に与える快感が増す資質があるらしい。
 何とも気持ち良くさせ甲斐のある肉体だった。
 まさに一度知ったら忘れられない、抱くのを止められない体と言えただろう。
「先生っ、先生っ……先生いいよぉっ……先生俺、うぅっ、たまらないですっ……」
 腰を激しく振りながら、泣きそうな声で叫ぶ。
 実際、蕩けるような快感が押し寄せており、それは何とも最高だった。
 人間のレベルとしてはかなりのものと言えただろう。
 快楽に染まってからの麻衣の肉体は、恐ろしいほどに強烈なものになっていたのだ。
「あんっ、あんっ、ああんっ……いいっ、いいっ、いいぃっ……それいいの、ああっ……いいんのぉっ……」
 突き込みに合わせて頭が仰け反り、指が絨毯をひっかく。
 股間では肉棒が膣襞にぐにゅぐにゅと絡みつかれ、勢い良く吸い付かれ、腰を持って行かれるのではないかと思うほどの気持ちの良さが押し寄せていた。
 まさに名器。
 この膣は名器と言えただろう。
 男を狂わせる淫惑の蜜壺だ。
 この中に肉棒を挿入する機会を得たことに、神治は強く感謝した。
「やっ、やんっ……やぅっ、やっ……わらしもうらめ、あっ……らめらよぉ、あっ、あぐっ……もうらめらろぉっ……ひゃぅっ、ひゃぁっ……」
 長い黒髪を振り乱し、美しい顔を淫靡に染めながら、麻衣は舌の回らない様子で喘ぎ悶えている。
 しがみついてくる熱く火照った肉体は、触れているだけで気持ちの良さを伝え、女の蜜に溢れた膣は、肉棒が蕩けてしまうのではないかと思えるほどの快楽を与えてきていた。
 神治は己の限界が急激に高まっているのを感じ、このまま一気にこの桃源郷とも言うべき蜜壺に精を放とうと腰を振っていった。
「ああっ、ああっ、ああんっ……はぅっ、ひゃぁっ……ひゃぅんっ……らめっ、イくっ……イくよぉっ……やぁっ、やっ、やぁああああああああああんっ!」
「うぉぅっ!」
 麻衣の絶叫と共に膣内が急速に締まり上がり、恐ろしいまでの吸引が起きたため、神治は半ば強制的とも思える感じで精を放った。それほどの容赦の無さがあったのだ。
 ドピュッ、ドピュッ、ドピュッ、ドピュッ……。
 精液が迸るたびに、強烈な快感が全身を走り抜け、神治は体をガクガクと震わせながら何度も何度も射精を繰り返していった。
 普通の人間を相手にこれほどまでに激しい気持ちの良さを感じるのは久々であり、麻衣の肉体が異常とも思える資質を持っているのを認識する。
 そしてそんな相手とセックス出来たことに激しい悦びが湧き起こった。
 眼下では、体をピクピクと震わせた麻衣が、「あ……ああ……」と甘い吐息を漏らしており、その様子を見ているだけで射精の勢いが増していく。
 しばらくして全ての精を放ち終えた神治は、脱力しつつ、柔らかで温かな肉体に身を預けた。
 しかしすぐに体を起こすと、すでに復活している肉棒を持ち、再び秘所へと押し込んでいった。
 快楽の余韻を引きずっている膣内は、蕩けるような気持ちの良さで一杯であり、入れただけで射精しそうなほどの良さがあった。
 この素晴らしき感触。
 これをもっと味わいたい。
 そう思った神治は、両手を床に付くと、最初から全力とばかりに激しく腰を振っていくのだった。


「あっ、あっ、ああっ……」
 何も身に付けない状態でベッドに横たわった麻衣は、同じく裸の神治が突き込んでくる肉棒の一突き一突きにか細い声を漏らしていた。
 その瞳は朦朧としており、意識が快楽に浸っているのが分かる。
 今の麻衣は、ただ肉体に与えられる刺激に反応するだけの状態になっていた。
 精神は快楽の蜜漬けになっており、神治の与える刺激だけが全てになっているのだ。
 あれから何度も抱き、その都度淫の「気」をかなり与えた結果、こうした状態となったのである。
 少しやりすぎかとも思ったが、麻衣は恐怖から逃れるためにセックスを求めたため、そうした方が良いだろうと判断したのだ。
 麻衣が快楽に染まれば染まるほど、その気持ちの良さが肉体に作用して、こちらも強い快感を得られる点も大きかった。
 何とも男を狂わす淫蕩な肉体の持ち主と言えただろう。
「やっ、やっ、やぁっ……はぅっ、はっ、はぁんっ……」
 突き込みに合わせ、形の良い唇から甘い吐息が漏れており、モデルとしても十分に通用するであろう知的な美しい顔が快楽に歪んでいる。
 潤んだ瞳は焦点の合わない状態で宙を見つめていて、意識が朦朧としているその様子には、何とも言えない淫靡さがあった。
 染み一つ無い真っ白な肌は快楽の桜色に染まっており、胸元にある形のいい大きな膨らみは、突き込みに合わせてたぷんたぷんと揺れ動いている。
 上方へ伸びる脚は、理想的とも言うべき細さをしていて、神治の腰が動くたびにブラブラと揺れ、時折足の指が開いたり閉じたりしているのがいやらしい。
 実に見事な素晴らしい肉体だった。
 こんな女性を自由に出来ている今の状況に、神治は強い悦びを覚えた。
「先生っ……気持ちいいですっ……先生の中、凄くいいですっ……」
 そう告げると、虚ろな瞳に光が戻り、体がピクピクと反応を示す。
 麻衣はほとんどの言葉に反応を示さなくなっていたのだが、「先生」という呼びかけには反応したのだ。
 おそらく「先生」という呼びかけは背徳感を刺激するものであるため、快楽に染まった精神が受け付けるのだろう。
 実際その言葉を聞いた瞬間、膣の蠢きが激しさを増し、喘ぎも大きくなるのである。
 まさに麻衣は「教師と生徒の禁断の関係」というシチュエーションに浸っているに違いなかった。
 それは神治も同じであったため、何度も「先生」と呼びかけ、自分が「許されないことをしている」という意識を持ちながらセックスを続けていたのだった。
「あんっ、あんっ、ああっ……もっと、あぅっ……もっと、ああっ……もっとぉっ……」
 ぼんやりとした表情のまま、求めるようにして声が発せられ、細い腕が伸びて背中に回り、グイと引き寄せられる。
 意識は朦朧としていても、快楽を得ようとする無意識の働きがこうした事をさせるのだろう。
「先生っ……先生の体、うぅっ……いいですっ……先生っ……先生ぃっ……」
 肌が密着し、擦れることで起きる刺激に神治は顎を仰け反らせた。
 麻衣の肌はこれまた絶品で、触れているだけで射精感が高まるほどだった。
 そして「先生」という呼びかけに膣内が反応し、肉棒がグニュグニュと絡みつかれるのにたまらない気持ちの良さを覚える。
 目の前に迫る美しい顔は満足げな笑みを浮かべており、己の与える快楽が麻衣を悦ばせているのが実感となって感じられた。
 やはり女性を満足させている状態というのは、男にとって最高の気分を味わえるものなのだろう。
 性行為は本能の中で最も重要な部分であるため、そうした想いは強くなるのに違いなかった。
「あぅっ、あっ、ああんっ……やっ、やぁっ、やぁんっ……」
 小刻みに腰を叩き付け、体を擦りつけるようにして動くと、体全体に快感が走ってたまらなかった。
 全身を包み込む柔らかな女肉が何とも心地良く、神治は激しい勢いで肉棒を叩き付けていった。
 その刺激に麻衣は顎を仰け反らせ、体を強く硬直させている。
「先生、次は後ろから、バックでやらせて下さい」
 そう耳元に囁きかけてから起き上がり、麻衣を四つんばいにさせる。
「先生」と呼びかけると麻衣は反応を示し、神治の言う通りに動くのだ。
 ただ意識が朦朧としているため、その動きはヨロヨロとしており、何とも操り人形のような不安定さがあった。 
 しかしそうした部分が妙な興奮を誘い、神治はいきり立つ肉棒を持つと、勢い良く貫いていった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……あっ、あっ、ああっ……」
 白い背中に長い黒髪がかかっているのが色っぽく、ぷっくりと膨らんだ尻が何ともいやらしい。
 最初に会った時から気に入っていた尻を撫でながら、激しく腰を動かしていると、麻衣が可愛らしく喘ぐのに嬉しさが高まっていく。
 自分を指導していた女性教師が、今やこちらの思う通りに動き、いやらしく体をくねらせ、時折もっとして欲しいとばかりに虚ろな目を向けている。
 それは何ともたまらず、神治は落ち着かない衝動を覚えながら腰を振っていった。
「先生気持ちいいですかっ?……俺は凄く気持ちいいですっ……先生の中ってたまらないですっ……先生の体全部、すっごく気持ちいいですっ……」
「あぅっ、あっ、ああんっ……いいっ、いいっ、いいよぉっ……凄くいいのぉっ……凄くいいっ、凄くいいぃんっ……」
 神治の質問に甘く喘ぎながら麻衣は応えた。
 相変わらず「先生」と呼びかけると膣内が締まり上がり、強い刺激が肉棒に押し寄せてくるのがたまらなかった。
「じゃあ、もっとして欲しいですよねっ?……俺、先生のために頑張りますからっ……どんどんしてあげますっ……」
「はぅっ、はっ、はぁんっ……もっと、あっ……もっとして、ああっ……もっとお願いぃっ……やっ、やっ、やぁんっ……」
 激しくなった突き込みに、麻衣は両腕を崩し、腰を高く掲げる体勢になった。
 美しい曲線を描く尻は、そうすると魅力を増し、なだらかな坂を描く背中と共に神治の肉欲を刺激した。
 押し寄せる快楽に耐えるように枕をギュッと掴み、頭を左右に振る姿は射精感を高め、神治はこのまま一気に精を放とうと腰の動きに力を入れていった。
「先生っ……先生俺っ……俺もう出るっ……もう出るからっ……先生ぃっ……」
「あんっ、あんっ、ああっ……わたしも、あっ……わたしももうイくっ……もうイくよぉっ……緋道くんっ、緋道くんっ、緋道くぅんっ……やっ、やっ、やぁあああああああああっ!」
「うぅっ、先生ぃっ!」
 互いを呼び合う叫びが部屋に響き、急激に収縮した膣の動きに我慢の限界を迎えた神治は、一気に精を放った。
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドクドク……。
 激しい勢いで精液が迸り、極上の膣へと注がれていく。
 何度放ってもその感触は絶品で、射精している最中に押し寄せる気持ちの良さは素晴らしかった。
 これがたまらないため、何度も抱いてしまっていたのだ。
 精を放ち終えても、すぐさま肉棒が硬くなってしまうのである。
 最後の射精を終え、温かで柔らかな肉体の上に倒れ込むと、麻衣がぼんやりとした瞳でこちらを見つめているのと目が合った。
「ふぁ……綺麗……光ってて凄いぃ……緋道くん綺麗だよぉ………」
 麻衣は感動したような表情を浮かべ、熱い視線を向けている。
 先ほどから何度も同じ様なことを言っているところから、どうやら神治の中にある神性を感じているらしい。
 これは部の民となる女性に現れる反応であったため、麻衣もその資質があったようだ。
「わたしぃ……緋道くんの物だよぁ……緋道くぅん、わたしをもっと緋道くんの物にしてぇ……」
 己が神治の所有物だと告げ、その寵愛を受けたいと告げてくるのに喜びが溢れてくる。
 また一人、部の民を得た。
 その確信に神治は嬉しさを覚えた。
 そのまま起き上がり、再び肉棒を押し込んでいく。
「あぁ……嬉しい……緋道くぅん……」
 少女のような笑みを浮かべて喜ぶ麻衣を見つめつつ、神治は勢い良く腰を振っていくのだった。


 翌日、学校へ行った神治は、麻衣に呼び出された。
 生徒指導室へ赴くと、麻衣は恥ずかしそうにこちらを見つめ、自分が動揺したあまり、とんでもない事をしてしまったと謝ってきた。
 教師として許されない事をしてしまったと言うのだ。
 しかし神治と結ばれたことは全く後悔していないし、これから自分は神治のために生きていく、といった事を告げてきた。
 神性に触れたことで、神治に従う意識に目覚めたらしい。
 実際こちらを見つめる瞳には、歩美達と同じ光があった。
 元々麻衣にはそうした資質があったようで、あの時歩美との行為を止めなかったのも、すでに神治の力に魅了されていたためらしかった。
 神治がセックスしている姿を見ているだけで感じてしまい、身も心も快楽に包まれていたというのだ。
 そのせいでその時は止める気になれず、後になってから「注意しなければ」と思ったと言うのである。
 しかもその時に「これでまた逢える」といった想いがあったらしく、神治と話している最中は、嬉しくて仕方がなかったらしい。
 当時は何故そうした想いが起きたのか分からず混乱したが、今考えると、神治への強い想いからそうなったのだというのが分かったそうだ。
 以前神治の顔を見ながら「前に見た時と印象が違う」といった事を話していたが、それはセックスをしている際の印象のことだというのである。
 セックス中は神性が強まっていることが多いため、その時の状態と比較したとすれば、確かに印象が違っていて当然だろう。
 そうしたことから、麻衣は無意識の内に神治を頼る意識を持つようになり、その結果として、ストーカーに恐怖を与えられた際に神治を求めたらしかった。
 その事は嬉しいことであったが、その一方、自分が普通の高校生活からどんどん離れて行っている事に、神治は微妙な想いを抱いた。このままでは村に居るのと似たような状態になってしまうからだ。
 女性を抱けるのが普通の状態になってしまうと、セックスに対する意欲がまた無くなってしまうだろう。
 そういう意味から、麻衣とはあまりセックスをしない方がいいと考えた神治は、数日経った現在、麻衣を抱くことはしていなかった。
 あれほど気持ちのいい肉体を抱かないというのは結構辛いものがあった訳だが、普通は抱けないのが当たり前であり、そういう生活を求めて村を出たのだから我慢するべきだろう。
 そもそも学校の外では複数の女性と関係を持っている訳で、その時点ですでに「普通の高校生活」というのは意味が無くなりつつあるのだから、本来ならばそちらも何とかすべきだった。
 しかしさすがに全ての女性との関係を絶ってしまうのはキツすぎたし、何より女性達が気の毒になってしまう。何せ今までかなり調子に乗って、自分に夢中になるよう淫の「気」を与えてきたからだ。それを突如として絶っては、女性達に物凄い欲求不満を招きかねないだろう。
 だから学校の外の女性に関しては一応これまで通りとし、学校関係者で新しく得た女性達とはセックスをしないようにしようと考えていたのである。
 麻衣に関しては、彼女自身が「教師と生徒でセックスをするのは良くない」と考えていたため、敢えて気にしなくても問題は無かった。
 何しろ当人が「あの時だけの過ち」として処理しているくらいだったからだ。
 しかし神治に対しては従う気持ちがあったため、一緒に居られないことが寂しいらしく、これまでと同じく雑用を一緒にしてくれるように頼んでくることがあった。
 学校で必要以上に親しくできない教師という立場としては、そうした言い訳を作らなければ一緒に居られないからである。
 雑用自体は面倒なことであったが、麻衣の気持ちを可愛く思っていた神治は、出来るだけ手伝ってあげることにしていた。
 そんな訳で、今日も部活に出る少し前の時間、神治は生徒指導室で麻衣に頼まれた雑用をしていたのだった。
 傍には麻衣が座っており、時折熱い視線を送ってきている。
 その瞳は欲情に濡れており、明らかに欲求不満な状態になっているのが分かる。
 やはり過剰に快楽漬けにしたのが良くなかったのかも知れない。
 あの時は自分の物にするのが楽しくて、つい淫の「気」を大量に与えてしまったのだが、性的関係を絶つ予定の麻衣相手にすることではなかっただろう。
 そうした判断の甘さが、まだまだ自分は修行不足だと自覚する部分なのだった。
「先生、終わりましたよ」
 その呼びかけに、麻衣は体をビクッと震わせると、複雑そうな表情で微笑みを浮かべている。
 どうもあれ以来、神治に「先生」と呼ばれると、瞬間的に快感が全身に走り抜けるらしい。
「どうもありがとう緋道くん」
「それじゃ今日はこれでいいですか? そろそろ部活に行かないと」
 そう言って立ち上がろうとすると、麻衣が何か言いたげに視線を向けてきたため動きを止める。
「まだ何かあります?」
「いえ、そうじゃなく……緋道くんって、未生さんとまだしてたりするのかと思って……その、性的なことをね……」
「してないですよ。先生と約束しましたから」
「そう……」
 突然の質問を意外に思いつつ正直に応えると、麻衣は少し残念そうな表情を浮かべた。約束を守っているのに何故そんな顔をするのだろう。
「でも、未生さんって可愛いじゃない? それにあれだけあなたの事を慕っているし……この間、未生さんと話をしたら、やたらとあなたの事を素晴らしいって言ってたわ。それはもう強い口調でね……」
 自分の居ないところでもそういう事を言っているのかと苦笑してしまう。何とも困ったものだ。
「そんな女の子にお願いされたら、やっぱりしてしまうんじゃないの? この間みたいに……」
 麻衣は探るような目つきで見つめながらそう尋ねてくる。
「そりゃ普通ならそうなってしまうかも知れませんけど、先生との約束がありますから。ちゃんと未生さんにも言いました。そういう事はしないって」
 実は「学校では」という制限付きではあるのだが、その事は言わない方がいいだろう。麻衣の立場からすれば、高校生同士が性行為をしているというだけでも問題であるからだ。
「そう……」
 やはり残念そうに呟く麻衣を面白く感じる。
 どうしてそうした反応になるのだろうか。
 これではまるで、神治が歩美とセックスしていることを期待しているかのようではないか。
「俺が未生さんとしている方が、先生はいいんですか?」
「え?」
「だってそんな顔してますよ。『何でしてないんだろう?』って感じの……」
「嘘っ。そ、そんな……ち、違うわ。してない方がいいの。それでいいのよ……」
 神治の言葉に、麻衣は慌てたように否定している。
 これはどう見ても図星だろう。
 しかし何故そんな風に思っているのだろうか。
「ただあなたくらいの年頃だと、大変なんじゃないかって……その、この間私とした時も凄かったし……そんな人がしてないんじゃ大丈夫なのかなって……」
 なるほど、どうやら麻衣は、神治が欲求不満になっているのではないかと思っている訳だ。
 確かに多くの女性を相手にしていることを知らなければ、そういう事も気になってくるだろう。
「大丈夫ですよ。ちゃんと処理してますから。問題ないです」
「処理……そうよね、そうするわよね……でもその……自分でするので大丈夫なの?……誰かにしてもらわなくても……」
「処理」というのを自慰だと解釈したらしい麻衣は、頬を赤らめながらそう告げてきた。
「いや、まあ、そりゃ誰かにしてもらえばいいですけどね。でもそうすると先生との約束を破ってしまいますし……」
 柚華とはセックスをしているのだから、正式な意味では約束を守っていない訳だが、神治としては「学校で」という意味で守るつもりだったのだ。
「私との、約束……?」
 神治の言葉に、麻衣はぼんやりとした声で呟いている。
 何やら様子が変だった。どうしたのだろう。
「そうですよ、約束です」
「どんな約束だったっけ……?」
 さらに呆けたような様子で言ってきたのに驚く。
 先ほどまで約束について理解した状態で会話していたというのに、突然分からなくなっているのだ。
「未生さんと性的行為をしないって約束です」
「そう……そうだったわね……」
 神治の説明に、心ここにあらずといった様子で反応する麻衣の様子は完全におかしかった。
 目が虚ろになり、体が微妙に震えていて、呼吸が荒くなっているのである。
 しかしその事で、神治は何が起こっているのかが分かった。
 これは欲求不満からくる状態だった。
 麻衣は欲求不満が強くなり、そのせいでおかしくなっているのだ。 
 体が欲情し、抑えられなくなっているのである。
「だったら……未生さんとしなければ、約束を守っていることになるわよね……」
「え? まあ、そう言われればそうですが……」
 本来の趣旨としては、「性的行為をしない」という事なのだが、言葉だけで考えれば間違ってはいないだろう。
「それじゃ……私と……私とするのは、約束には含まれないわよね……」
「ええ……まあ、そうなると思います」
 その直接的な言い方に苦笑する。
 どうやら麻衣の欲求不満はかなりのものになっているらしい。
 様子がおかしくなるほどのものなのだから、それも当然だろう。
 だが麻衣の教師としての倫理観の強さから、こうした事を言ってくるとは思わなかった。
 とはいえ、一度は破ってしまった教師としての倫理観なのだから、その事に期待するのは間違いだったのだろう。
 見れば、すっかり体が欲情に染まった状態になっているのが分かった。
「それなら……私が……緋道くんのために、してあげます……」
 麻衣はぼんやりとした口調でそう呟くと、のろのろとしゃがみこみ、ズボンのチャックを下ろして肉棒を取り出してきた。
 嬉しそうな吐息を漏らし、うっとりとした表情で肉棒を見ている。
 そしてそのままゆっくりと、震える手で肉棒をしごき始めた。
「緋道くんの……緋道くんのおちんちん……」
 虚ろな目で呟きながら、唇を大きく開いて肉棒を口に含んでいく。
 ぬめりを帯びた粘膜の感触に気持ちの良さが広がり、神治は快楽の息を漏らした。
「んぐっ、んっ……んんっ……んっ、んぐっ、んふぅっ……」
 次の瞬間、麻衣の頭が勢い良く動き出し、肉棒を夢中になって舐め始めた。
 口に含まずには、舐めずには居られないといった様子で、必死になって肉棒にむしゃぶりついているその姿は、とてもまともな状態であるようには見えなかった。
 狂気に満ちたその様子は、完全に神治の肉棒の虜になっていると言えただろう。
 どうやら思っていた以上に麻衣を狂わせてしまったらしい。
 やはり淫の「気」を大量に与えたのがマズかったのだろう。
 セックスの後、自分に執着を抱くようになる人間は多かったが、これほどまでに夢中になるのは初めてだった。
 まさに神治の肉棒無しでは生きていけないというような、鬼気迫る雰囲気があったのである。
「んぐっ、んぐっ、んぐっ……んっ、んっ、んんぅっ……んぁっ、んぁっ、んぁはぁっ……」
 激しく肉棒を出し入れし、亀頭を舌で包むようにしながら、裏筋を突くようにして舐めてくる。
 紺のスーツに身を包んだ美女が、長い黒髪を振り乱し、夢中になって肉棒にむしゃぶりつく様は、凄まじい淫靡さに溢れていた。
 美しい顔からは、肉棒が愛おしくてたまらないといった想いが伝わり、その狂気に満ちた執着に神治の興奮は高まっていった。
 かつてこれほどまでに自分の肉棒を求めてきた相手はいなかった。
 まさに麻衣は、神治に狂っていると言えただろう。
「先生……」
 神治が呼びかけると、麻衣は肉棒を口に含んだままこちらに視線を向け、潤んだ瞳で見つめてきた。
 それはまさに自分に従う、全てを捧げる女の姿そのものだった。
 これほど愛らしい存在は他に無いに違いない。
 そう思った神治は、麻衣を抱かずにはいられなくなった。
 ここまで執着の想いをぶつけられて、何もしないでいるなど不可能だったからだ。
「先生っ……」
 もう一度強めに呼びかけると、麻衣を立たせて抱き締める。
 そのまま唇に吸い付きつつ、紺のスーツの上から豊満な乳房を揉みしだいていく。
「んんっ……んっ、んっ……んふぅっ……」
 キスをしながら近くにある机に横たえ、スーツの上着とブラウスのボタンを外していくと、薄水色のブラジャーに包まれた乳房が現れた。
 服をはだけ、乳房をさらしているその姿は、教師という職業も相まって強く興奮を誘うものがあった。
 学校の教室で、教師がスーツ姿を乱しながら机の上に横たわっているというのは、何ともそそるものがあったのだ。
 しかもその表情は淫靡に染まっており、早く抱いて欲しいとねだっている。
 興奮を高めた神治は、タイトスカートに手を入れるとパンティを脱がし、肉付きのいい両脚を左右に開いて間に腰を入れていった。
 すでに硬くそそり立っている肉棒は、女体の中に入れるのだと歓喜に震えている。
「早くぅ……早くお願いぃ……緋道くぅん……」
 可愛らしい声でおねだりしてくる麻衣に頷きながら、一気に肉棒を押し込んでいく。
「あぅんっ……あっ、あっ、ああっ……いいっ、いいっ、いいぃっ……」
 そのまま腰を動かし出すと、麻衣は待ちに待っていた物を得られた悦びに震えている。
 その嬉しそうな顔は、抱いてあげて良かったと思わせるに十分なものがあった。
 学校では抱かないと決めていたにも関わらず、またそれを破ってしまった事を気にしていたが、今の麻衣の表情を見られたことで悔いはなかった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……緋道くん、ああっ……緋道くん、あっ……緋道くぅんっ……」
 潤んだ瞳で見つめ、肉棒で貫かれていることが嬉しくてたまらない、とばかりに喘ぐ麻衣の姿は、強い満足感を与えてきた。
 これをもっと見てみたい。
 自分にもっと夢中になる姿を見てみたい。
 神治はそう思いながら腰を激しく振っていった。
「やっ、やぁっ……凄いっ、凄いよぉっ……緋道くんの、あんっ……やっぱり凄いぃっ……これが、あっ……これがずっと欲しかったのぉっ……」
 細い腕と脚が逃がすまいというようにして絡みつき、グイと引き寄せてくる。
 美しい顔が目の前に迫り、その快楽に歪んだ泣き顔に興奮が高まっていく。
 肉棒を包む膣襞もヌメヌメと吸い付いており、その気持ちの良さに思わず頭を仰け反らせる。
「ひゃぅっ、ひゃっ、ひゃぁんっ……あぅっ、あっ、ああっ……」
 頭を左右に振り、長い黒髪を乱しながら悶える麻衣の姿は最高だった。
 女教師然とした服装がより興奮を高め、生徒である自分が先生を抱いているのだという意識が強まってたまらなかった。
 やはりこうしたシチュエーションによる悦びは最高だった。
 本来許されない状況、許されない相手と交わる時、人は強烈な快感を得るのだ。
 その証拠に、先日抱いた時よりも気持ちの良さは高まっていたのである。
「先生っ……先生俺、気持ちいいよっ……気持ちいいっ……」
「ああんっ……先生も、あっ……先生も気持ちいいわ、あんっ……緋道くんのおちんちんが気持ちいいのぉっ……」
「先生」という呼びかけに麻衣の体が激しく震えたかと思うと、膣内がキュウっと締まりあがった。
 やはりそう呼ばれることに強い興奮を覚えるのだろう。
 そしてそれをさらに高めようとするかのように、自らを「先生」と呼ぶのにいやらしさを覚える。
 麻衣と自分は先生と生徒。
 その関係でセックスをしている。
 しかも学校で。
 その状況を意識すればするほど、興奮が高まり快感が増していった。
「先生っ……先生の中っ、あったかくて俺のを締め付けてきて、うぅ……最高だぁっ……」
「緋道くんのも、あっ……緋道くんのも最高よ、ああんっ……先生を貫いて、あんっ……先生の中を擦って、あっ……先生凄く気持ちいいのぉっ……」
 見つめ合い、体を擦りつけ合い、神治と麻衣は悶え狂った。
 互いの与える快楽が、互いの悦びを呼び起こし、絶頂へと導いているのが分かる。
 このまま一気に最後まで至るのだ。
 そう思った神治は、勢い良く肉棒を叩き付けていった。
「あんっ、あっ、ああっ……先生もう駄目、あっ……先生もう駄目なの、ああんっ……先生もう駄目だよぉっ……やっ、やっ、やぁああああああああああっ!」
「先生っ!」
 二人の絶叫が重なると共に、肉棒の栓が開かれる。
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドクドク……。
 激しい勢いで精液が放たれていき、その快感に神治は頭を何度も仰け反らせた。
 麻衣はうっとりとした表情を浮かべながら、「あ……あぁ……」と甘い吐息を漏らしつつ、注がれてくる精液を感じている。
 その様子を満足げに見ながら最後の精を放ち終えた神治は、ゆっくりと力を抜いた。
 ハァハァという荒い呼吸を聞きつつ、柔らかな女肉の感触に心地良さを覚える。
 しばらくしてから上半身を起こして見下ろすと、そこには快楽に染まった淫らな女教師の姿があった。
 この女は自分の物。
 自分の物なのだ。
 そうした強い想いが湧き起こり、肉棒が硬く大きくなっていく。
「緋道くぅん……先生、もっとして欲しいのぉ……」
 潤んだ瞳で見つめながらそうおねだりしてくるのに興奮を高めた神治は、小さく頷き返すと、再び肉棒を押し込んでいくのだった。












あとがき

 学校の先生としてしまう。
 こういうのは良いですね。
 エロ関係の媒体では必ずあるシチュエーションの一つですから。
 今まで書きませんでしたけど、緋道村だと背徳感が無いのでやらなかった訳ですよ。
 村から出た今回、ようやく書いた次第。
 んで普通にヤるのも何なんで、恐怖からいたしてしまう展開にしてみました。
 神治に積極性が無い状態なので、相手から誘わなきゃいけないというのが結構難しかったのでこういう設定にしてみた訳です。
 その結果、何かかなり神治に夢中になってしまいました。
 こういうのもいいですねぇ。何というか凄く自分に従っているって感じで。 
(2012.10.13)

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