緋道の神器


        第三十一話  淫惑の声



「あっ、あっ、ああっ……」
 高級そうなベッドの上で、長い黒髪を乱しながら満里奈が悶えている。
 自分の一突き一突きで声を上げる姿に、満里奈を支配している感覚が強まり、神治は悦びに包まれていた。
 以前は緋道村の外で女性を抱く事に抵抗があり、さらにセックスを望んでいるようには思えない満里奈を抱く事に躊躇があったのだが、最近神治の中でその事に対する感覚が変わったため、少し前からセックスするようになっていたのだ。
 自分を神のように慕っている満里奈なら、抱いても嫌がるはずがないのだから、抱かないなんて勿体ない、と思うようになっていたのである。
 実際神治が抱き寄せて「抱いていいですか?」と尋ねると、満里奈は「喜んで」と答えたのだ。
 そしてその瞬間、神治の心も喜びに包まれ、肉欲も激しく高まった。
 これは満里奈の持つ「他人を自分の気持ちに同調させる力」によるもので、彼女の抱かれる事への喜びに神治が同調した結果だった。
 その喜びの感覚は強烈で、それまでセックスを望んでいるように見えなかった態度が嘘であるかのように凄まじいものだった。
 よもやこれほど喜んでくれるとは思っていなかった神治は驚き、もっと早くにこうすれば良かったと思いつつ、それ以来ちょくちょく満里奈を抱いている。
「あっ、あぁっ、神治くん、神治くぅんっ……」
 快楽に顔を歪ませ、シーツをギュッと掴んで悶える満里奈の姿は、それだけで射精しそうになるほど淫靡だった。
 清楚で大人しい外見をした満里奈がそうした態度をとっている事が、支配欲と征服欲を刺激し、肉欲を嫌というほど高ぶらせるのだ。
「この女は自分の物」という意識が強まり、もっともっと快楽に狂わせたくなるのである。
「やっ、やぁっ……それ凄い、あっ……神治くんそれ凄いのぉっ……」
 こちらの突き込みに合わせてか細い顎が何度も仰け反り、大きな乳房が前後左右に揺れ動く。
 満里奈は可憐な美人の雰囲気がある一方で、体は豊満であったため、そのギャップが何とも肉欲をそそった。
 清楚な顔がいやらしく歪み、肉付きのいい体が包み込んでくる感触に、男としての悦びが溢れる。
 この素晴らしい肉体をつい最近まで放っておいたなど、自分は馬鹿なのではないかと思えた。
 少し前はセックスに対するやる気を失っていたから仕方ないにしても、やる気を取り戻した後も、グダグダ考えて満里奈を抱かなかったのは本当に勿体ないと言えただろう。
 これからはもっと満里奈を快楽に染め、もっと自分に夢中にさせたい。
 他の男に目もくれないほど、自分だけの物にしたい。
 神治の中に、そうした独占欲が起こっていた。
「ああっ、あっ、ああんっ……わたし、あっ……わたしもう、ああっ……神治くんわたしぃっ……」
 潤んだ瞳をこちらに向け、絶頂が近いことを訴えてくる満里奈に軽く頷いて応えつつ、それまで以上に腰の動きを早める。
「あんっ、あんっ、ああっ……いいっ、いいっ、凄いぃっ……わたし駄目、あっ……わたし、あんっ……駄目っ、駄目っ、駄目ぇっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
「うぅっ!」
 満里奈の叫びと硬直に合わせて精を放つ。
 ドピュドピュドピュと放出されていく精液を感じながら、神治は満足な想いに浸った。
 こうして精液を注ぎ込んでいると、満里奈が自分の物になったように思えて嬉しかったのだ。
 ピクンピクンと体を震わせながら小さく吐息を漏らしている満里奈は、虚ろな目をしながら幸せそうに微笑んでいる。
 射精の瞬間に強烈な淫の「気」を送り込んだため、快楽の絶頂にいるのだろう。
 そしてその状態は満里奈の力によってこちらにも伝わって来たため、神治自身も凄まじい快感に包まれていた。
 たまらない気持ちの良さに浸りつつ射精を終えた神治は、ゆっくりと満里奈の上に倒れ込んだ。
 ハァハァと荒い呼吸を吐きながら、うっとりとした表情をしている満里奈に見惚れる。
 自分はこの美しい女性を自由にしているのだと思うと、激しい満足感が湧き起こった。
 清楚で可憐な満里奈が、これほど乱れる姿を知っているのは自分だけであり、そうさせられるのも自分だけなのである。
(満里奈さんは俺の物……)
 強い独占欲と支配欲が湧き起こり、満里奈の体を強く抱き締める。
「神治、くぅん……」
 すると甘ったるい口調で呟きながら、満里奈が抱き締め返してきた。
「満里奈さん、素敵でしたよ」
「神治くんの方が素敵です……私はもう、神治くんのためなら何でもしますから……だからもっともっと私を好きにして下さい。もっと神治くんがしたいように私を……ああっ、神治くん神治くぅんっ……」
 とろんっとした表情を浮かべながら、満里奈は強く抱き付いてくる。
 こちらを見つめる瞳は異常な光を放っており、神治にかなりの執着を持っているのが分かった。
 恋愛とは異なる、どこか狂気を感じさせる執着。
 それを満里奈は神治に向けているのだ。
 その原因となっているのは、神治の中にある神性だった。
 満里奈はセックスをする事によって、神治自身もあまり自覚のない神の要素を感じとるらしい。
 無条件で相手に畏敬の念を抱かせる神性。
 本来神治のそれは弱いものであったのだが、セックスをすると強まるのか、はたまた相性の問題なのか、満里奈には強く伝わっているらしかった。
 そのためセックス直後の満里奈は、神治の神性に影響を受け、普段よりも強く従う態度になるのだった。
「言われなくても好きにしますよ。満里奈さんは可愛いですから……」
 そう言いながら満里奈の体を撫で回し、首筋に舌を這わす。
「あっ……やっ、あっ……神治くぅん……んっ、んんっ……」
 嬉しそうにこちらを見つめ、すがりつくような目を向けてくる満里奈の唇に吸い付いていく。
 舌を絡ませ、口内を愛撫しながら、抱き締めて生の肌同士が擦れ合う気持ちの良さを味わう。
「そういや満里奈さん。俺、今度の日曜に高校の説明会に行ってきますから」
 唇を放し、乳房をヤワヤワと揉みながらそう告げる。
「説明会、あっ……ですか、あぁっ……この間も行って、あんっ……ましたよね、あっ……」
「今度の高校はホームページで見た限り、結構良さそうなんですよ。だから期待してるんです」
「期待、あんっ……それはいいですね、あっ……それ、あっ……それいいです、やぁっ……」
 クリトリスを優しく刺激すると、満里奈は体をピクっ、ピクっ、と震わせた。
「実際見てもいい学校だといいんですけどね」
「あんっ……いい、あっ……学校だと、ああっ……いいですね、やぁっ……」
 膣穴に指を入れ、強く出し入れすると、満里奈はしがみつくようにしてきた。
「そうなんです。期待してます」
「あっ、やぁんっ……」
 指先から強烈な淫の「気」を放出させ、そのまま指を引き抜くと、満里奈が体を硬直させて甘く叫んだ。
 何とも可愛らしいその様子をしばらくジッと見つめ続ける。
 美しい満里奈のいやらしい姿は、見ているだけで満足感を覚えるからだ。
 しかし強い淫の「気」を送り込まれた満里奈にしてみれば、強烈に気持ち良くされた後、ほったらかしにされているのではたまらないのだろう。
 少しすると泣きそうな顔でこちら見つめてきた。
「こ、神治くぅん……お願いです、抱いて下さいぃ……私もう、限界ですぅ……」
 その言葉と共に、神治の中で「セックスしたい」という気持ちが強烈に湧き起こった。
 満里奈の力により、満里奈のそうした気持ちが神治に影響を与えてきたためだ。
 だが神治は敢えてそれを抑え込んだ。
 普段はそのまま満里奈の力を受ける事でセックスを楽しんでいるが、今は抑えることで別の楽しみを得ようとしていたからである。
「あれ? 好きなようにしていいんでしょう? だったら満里奈さんがエッチに悶える姿を見ているだけでもいいじゃないですか」
 わざとそんな風に言ってみる。
「う……それはそうですけどぉ……神治くんって意地悪ですぅ……」
 子供のように拗ねる姿が可愛らしく、それと共に満里奈に対する肉欲が高まる。
 どうも満里奈は、困っている様子を見せられるとゾクゾクするような快感を感じさせる要素があった。
 年上でありながら、からかいたくなる感覚が起きるのだ。
 その様子を見るのが楽しく、神治は時折こうして満里奈に意地悪をするのだった。
「ふふ、ちゃんと抱いてあげますよ。俺だって満里奈さんの可愛らしい姿はもっと見たいですからね」
 そう言いながらズブリと肉棒を押し込んでいく。
「あんっ……う、嬉しいです、あっ……神治くんのオチンチン、あぁっ……素敵ぃ……神治くんも光り輝いていて……素晴らしいです、あっ、ああんっ……」
 うっとりとこちらを見つめながら畏敬の目を向けてくる満里奈に、腰の動きで応える。
 以前は戸惑った、自分を神として見つめてくるこの目を、神治はすっかり受け入れられるようになっていた。
 それだけ満里奈を支配している感覚が強くなったからだろう。
 満里奈の立場が、家族ではなく、また緋道村の住人でもない事が原因かも知れない。
 何の繋がりもない相手が、自分を畏れ敬う姿。
 言わば自分の魅力のみで支配出来ている事が、悦びとなっているように思えたのだ。
 その事が満里奈を特別な存在として感じさせているのだろう。
 美子や翔香も同じであり、神治はそういった女をもっともっと増やしたいと考えていたのだった。


 神治はとある高校の説明会に来ていた。
 すでに体育館で開かれた説明の時間は終わり、現在は校内を自由に見学する事が出来る時間だった。
 色々と施設を見て回っているのだが、周囲には同じようにして見学している中学生がおり、その光景を見ていると、いよいよ自分も受験をするのだという気分が高まっていく。
 この高校は、ホームページで見た印象だけであれば今のところ一番気に入っている所であり、その理由の一つが施設の充実ぶりだったのだが、実際見て回っていると、思っていた以上に良い感じだったので嬉しくなった。
 敷地内には緑が多く、自然溢れる緋道村に慣れた神治としては、何となく落ち着ける点も気に入っていた。
 何より女子の制服が可愛いのが良かった。
 やはりこれから三年間一緒に過ごす女子の着ている制服が、可愛くないより可愛い方がいいと思っていたからだ。
 特に高校でもセックスする相手を見つけられたらいいな、と思っていたため、その娘が可愛らしい制服を着ている方が、より楽しめるだろうと思っていたのである。
 そういった発想は、以前であれば無かった事だった。
 神治は緋道村以外で無闇にセックスする事を嫌っていたからだ。
 しかし満里奈たちとの関係が出来たせいか、別に構わないではないかと思うようになっていたのである。
 どうせ自分は妊娠させる心配はないのだし、相手が了承しさえすれば問題は起きないだろうと思っていたのだ。
 無論許嫁がいる身としては、恋愛関係になってしまうのは問題であったため、その点だけは気をつけるつもりでいたのだが。
 そうした考えの根底にあるのは、「多くの女を抱きたい」という気持ちだった。
 以前からそういった気持ちはあり、緋道村の女性を手当たり次第抱きまくっていたのもそれが理由だったが、今のそれは似ているようで少々違っていた。
 前は肉体的欲求を発散させるために女性を求めていた面が強かったが、今の神治は、精神的な欲求で抱きたくなっていたからだ。
 そこには「セックスによる快楽で多くの女性を夢中にさせ、自分に従うようにしたい」という想いが存在していた。
 これは単に肉体的な快楽を味わうためのセックスフレンドを増やしたいという意味ではなく、精神的にも己に従属する女性を得たいという想いだった。
 満里奈のように、自分に付き従う存在をもっと得たかったのだ。
 以前であればそのような状態になれば戸惑い、相手の態度に当惑しただろうが、今の神治はそういった状態を逆に求めていたのである。
 何故そういった想いが強くなったのか分からなかったが、もしかしたら満里奈に従順な態度を取られ、翔香を快楽で夫から奪った事が影響しているのかも知れない。
 あの頃妙な夢を見たのだが、それもそういった欲求が、夢という形で現れたような内容になっていたため、余計そう思えた。
 何しろ夢の中で神治の視点となっていた少年は、セックスによって権力を得、それにより自分を虐げていた少女を従えたのだ。
 それはまさに「女を従えたい」という欲望の現れだろう。
 特に「嫌がる少女を無理矢理従える」というシチュエーションは、その欲望が強い事を感じさせた。
 これは自分でも驚くほどの変化だったが、一度セックスに対するやる気を失った事で、女性に対する意識に何か影響があったのかも知れない。
 単に体だけ支配するのではなく、精神をも支配する。
 性欲が減退したことで、肉体的快楽であるセックスについて引いた意識を持つ期間を得られ、その事で精神的快楽についての意識が強まったというところだろうか。
 などと自分なりに分析をしてみたが、実際のところ何が原因でこうなったのかはよく分からなかった。
 とにかく分かるのは、今の自分は、満里奈のように己に従う女性を求めているという事だった。
 これは緋道村であれば簡単に得られそうな事でもあった。
 何しろあの村において自分は、当主という権力を持ち、それに基づく敬いを得ていたからだ。
 ゆえに神治が望めば、多くの女性が従うだろう。
 だが神治の中で、緋道村でそういった人間を得ることには抵抗があった。
 何故なら、村における本当の権力者、支配者は自分ではなく、未迦知神だったからである。
 当主という立場は、あくまで未迦知神に許されて得られたものでしかない。
 未迦知神の意に反する事をすれば、それまで従っていた女性達も自分から離れていくだろう。
 それだけ村における未迦知神の存在というのは大きいのだ。
 そのため、神治が本当の意味で自分に従う存在を得ようとすれば、村の外という事になった。
 そういう事から神治にとって、満里奈のような存在は、本当の意味で自分に従っている存在と言え、そしてその従順な態度は、神治にとって非常に心地良いものになっていたのだった。
 満里奈に対する愛着はかなり強まっており、そうした存在をもっと増やしたいという欲求が、神治の中では日に日に大きくなっていた。
 校内を見学している今も、施設に意識を向けつつ周囲にも気を配り、自分好みの女子がいないか探っている。
 様々な制服姿の女子がいるのだが、神治的にほどほどの好みの娘や、もう一息といった感じの好みの娘しかおらず、「これぞ」という娘はいなかった。
 緋道村であれば、そういった娘たちであっても抱いてきたのだが、問題が起きやすい村の外にあっては、出来るだけ厳選した、凄く好みの相手とだけ関係を結ぶつもりだった。
 何よりその方が、満足感や自分に夢中にさせた時の悦びも大きいからだ。
 それは客観的に見れば何とも傲慢な考えであったが、最近の神治はそうした意識が強まっていた。
 これまでの経験がそうさせているのかも知れない。
 家族や緋道村の女性達、外国で王女の身分にある少女などを夢中にさせ、未迦知神を始めとする神の女性達を抱いてきた経験が、「自分を受け入れない女などいない」という想いを抱かせているのだ。
 何より東京へ出てきてからは、「村の当主」といった肩書き抜きで自分に夢中になる女性たちを得たため、そうした想いがより強まっていたのだった。
(……)
 そんな事を思いながら校内を見学していると、不意に妙な感覚を覚えた。
 突然頭の中に何かが聞こえたような気がしたのだ。
 それは声ではあるが、何を言っているのか分からない程度のものであり、チューニングの合っていないラジオのような感じで、言葉が認識出来そうで出来ない、何とももどかしい感じだった。
 これはおそらく心の声だろう。
 誰かの心の声が聞こえているのだ。
 だが聞こえているとは言っても、明瞭に言葉が判別出来ないため、どうにも落ち着かない気分にさせられた。
 完全に声が聞こえないか、ハッキリ言葉が聞こえるかすれば良いのだが、中途半端に聞こえるため、苛つくのだ。
 取り合えず心の声を発するのをやめてもらわないと、どうにも落ち着かないと思った神治は、声のする方へと歩き出した。
 とはいえ、この声の調子からすると、相手はあまり力がコントロール出来ていない事が推察されたため、止めさせる事が出来るとは限らなかったのだが。
 何しろその心の声は、意志を持って発せられているというより、無意識の内に漏れてしまっているように感じられたからである。
 そんな事を考えながら歩いていると、少し先に花壇の沢山ある場所が見えた。
 この学校の植物園だ。
 説明会での話によると、熱心な園芸部員が世話をしていて実に見事なものになっているらしく、実際足を踏み入れてみると、確かに様々な植物が生息していて、素人が世話をしたとは思えないほどだった。
 周囲の素晴らしさに一瞬圧倒されながら、視線を動かして声の主を捜していると、少し先の場所に、どうやら声の主らしい人物がいるのが見えた。
 他にも人間は居たのだが、その人物だけ「気」が特殊だったのだ。
 年の頃は神治と同じくらい、というか説明会に参加しているのだから同い年だろう。
 遠目からでも可愛らしい顔立ちをしているのが分かり、長い髪を後ろでポニーテールにしていて、うなじが見えるのがそそられた。
 背丈は低いにも関わらず、胸元を押し上げる膨らみは大きく、体も全体的に肉付きが良くて、抱いたら気持ち良さそうであり、実に何とも神治好みの少女だった。
(さて、何て声かけるかな?「この声って君が出してるの?」とか?「俺には君の声が聞こえるよ」とかかな?……でもあの子に力に対する自覚が無かったら、ただの変な人になっちゃうしなぁ……)
 そんな事を考えながら少しずつ少女の傍へと近づいていくと、ある瞬間、不意に少女がこちらを見たため驚いた。
 それはまるで「声をかけられたから顔を向けた」といった感じだった。
 実際その後も少女は、「何か用があるのか?」と尋ねているかのように、こちらをジッと見続けている。
 これはもしかしたら、こちらの心の声を聞いたのかも知れない。
 自分の心の声を発せられるのなら、逆にこちらの心の声を聞く事が出来ても不思議ではないからだ。
 神治はその事に少々面食らったが、先に心の声を発していたのは少女の方なのだからと、気にせず見つめ返した。
(……)
 するとそれまでノイズでしかなかった心の声が、突如理解出来たため驚く。
 ハッキリとではないが、微かに「何か用なのかな?」といった声が聞こえてきたのだ。
 神治は突然そうなった事に驚きを覚えつつ、「君の声が気になったから来たんだ」と、心の声で返してみた。
 すると少女は、その言葉が聞こえたのか一瞬体をビクッとさせた後、驚いたように目を丸くし、先ほどより強くこちらを見つめてきた。
(私の声が聞こえるんですか?)
 今度はさらにハッキリと声が聞こえてくる。
(聞こえますよ。俺は違う場所で君の声が聞こえたから、どこから聞こえるんだろうと思ってここまで来たんですから)
(そ、そうなんですか……)
 一度認識してしまうと、後はスラスラと会話する事が出来た。
 そしてその事に面白さを感じている内に、神治は少女の目の前まで着いていた。
 だがいざ普通に喋れる距離に達してしまうと、何を話したものかと迷ってしまう。
 少女も同じなのか黙ったままであり、二人はそのまま何となく苦笑し合った。
「えっと……え〜〜、こんにちは……」
「あ、はい。こんにちは」
 意を決して神治が声をかけると、少女は驚いたようにした後、返事を返してきた。
(!……)
 そしてその瞬間、体に走った衝撃に神治は驚いた。
 少々強めの淫の「気」が感じられたからだ。
 どうやらその「気」は、少女の声によって伝わってきたらしく、鼓膜に届いたかと思うと脳内に渦巻き、そのまま一気に全身を駆け抜けた。
 声自体も、高めの甘ったるい感じで可愛らしかったが、淫の「気」の力を伴っていることにより、淫靡な魅力のある声になっていた。
 常人であれば、今の一言で少女に欲情するに違いない。
 襲いかかるほどではないが、普通の女性に対するよりも性的意識を抱くだろう。
 それほど少女の声は、男を興奮させる力を持っていたのだ。
 どうやらこの少女は、心の声だけでなく、淫の「気」についても力があるらしかった。
 元々見た目も男を欲情させやすい体であるのに、その上淫の「気」の作用があるとなれば、この少女がその気になれば、たやすく男を欲情させられるのではないかと思えた。
 取り合えず「気」をコントロールして肉欲を抑えると、何事も無かったようにして少女に視線を向ける。
「確認するけど、今までその、俺と話してたのって君でいいんですよね?」
「……え? はい、そうです多分……あなたがさっきの声の人なんですよね?」
 少女は神治の言葉に一瞬驚いた顔をした後、ゆっくりと頷いた。
 何やら嬉しそうに微笑んでいるのが可愛らしい。
「つまり、口じゃなく心で喋っていた、という事で……」
「はい、そうなりますね……」
 他の人間であれば何を言っているのだろうと思われる聞き方をしても、少女は肯定してきたため、やはりこの少女が声の主だという事になった。
 それにしても自分は、こうした特殊能力の持ち主と縁があるのだろうか。
 東京へ出てきてからというもの、そういった女性と知り合ってばかりだからだ。
「それで聞きたいんだけど、君って意識して喋ってました?」
「え?」
「誰かに自分の心の声を聞かせようとしていたのかどうかって事です」
「いえ、そんなつもりはないです。だって自分の心の声が誰かに聞こえるなんて思ってもみなかったですし……」
 やはり予想通り、この少女は無意識の内に力を使っていたらしい。
「俺には君の声が聞こえてたんですけど、何を言っているかまでは分からなくて、それで気になって来たんですよ」
「そうなんですか。でもさっきはハッキリと聞こえましたけど……」
「あれはお互いの存在を意識したからだと思いますよ。いわば意識が同じ方向に向いたから聞こえやすくなったというか」
「ああ、なるほど……」
「君は今までも誰かに心の声を聞かれたり、他人の心の声が聞こえたりって事はありました?」
「他の人の声なら時々、何となくですけど……でもあなたとみたいにハッキリと会話出来たのは初めてです。だから驚いちゃった」
 少女は楽しそうに微笑んでいる。
 どうやら心の声の力については、さほど強い訳ではないらしい。
「逆に聞きますけど、あなたはどうなんですか? 私以外の誰かと心で話したりというのは……」
 少女の質問に、神治はどう答えようかと一瞬迷った。
 何故なら神治が心の声で会話するのは未迦知神であったため、下手をするとその事を話す流れになりかねないと思ったからだ。
 だがそこら辺は上手く誤魔化せばいいだろうと思い、正直に答えることにする。
「ありますよ」
「え? 本当に?」
「本当です」
「それじゃ、こういう力を持っている人って他にもいるんですね? わぁ、良かった……それにしても、自分と同じ力を持った人と出会えるなんて驚いちゃいましたよ。その上他にも力を持った人がいるのが分かるなんて……この学校の説明会に来て良かったです」
 少女は興奮した様子で笑っている。
 何とも可愛らしいその姿に、神治も自然と口元がほころんだ。
 そして改めて少女を見つめると、その抱き心地の良さそうな体に興奮を覚える。
 思いがけず凄く好みの少女と知り合う事が出来、何やら親しくなれそうな雰囲気になっている事に嬉しくなった。
 このまま上手く親しくなっていけたら、抱けるのではないかと思いつつ、ふと周囲に視線を向けた神治は、妙な雰囲気を感じて驚いた。
 何やら慌てたように視線を逸らす男子中学生達の姿が複数あったのだ。
(な、なんだぁ……?)
 驚いて意識しながら見直すと、いつの間にやら周囲には多くの男子中学生がたむろっており、不自然な感じでこちらに視線を向けてきている。
 彼らの体からは淫の「気」が立ち上っていて、欲情しているのは明らかだった。
(! そうか、声を聞いたから……)
 何故そのような状況になっているのかと不審に思いつつ、すぐに原因が目の前の少女にある事に思い至る。
 神治は淫の「気」の影響を抑えたため忘れていたが、少女の声には相変わらず男を惑わす力が伴ったままだったのだ。
 そう言えば、最初は小さめだった少女の声は、興奮したせいかかなり大きくなっている。
 少し離れている彼らには、話の内容までは分からないだろうが、声だけならば十分聞こえる状態だったのである。
 そしてあれだけ強い淫の「気」を伴った声であれば、常人が欲情するのも当然だった。
 理性を無くして襲いかかってくるほどではなかったが、いやらしい視線を向けるほどではあり、実際強烈な淫靡な視線が少女に注がれていたのだ。
 神治はその事を腹立たしく思った。
 自分も似たような視線を向けていたくせに、いざ他人がしていると腹が立ってきたのである。
 他にも自分が目を付けた少女を奪われてなるものか、という独占欲が湧き起こっているのかも知れない。
「あの、そろそろ俺、帰ろうと思うんですけど、君も帰りません?」
 この様な状況に少女を置いておくのが嫌になった神治は、そう言って帰るように促してみた。
 無論そのまま別れるつもりはないため、どこか別の場所で話はするつもりだったのだが。
「そうですね。でも歩きながらでも、もう少し話をしてもらえませんか?」
「いいですよ」
「わぁ、ありがとうございます」
 喜んでお礼を言う少女に頷きつつ歩き出す。
 こちらが持ちかけるまでもなく、少女の方から話を振ってきた事にほくそ笑みつつ、周囲の男子中学生達も歩き出した事にうんざりする。
 彼らにしてみれば、欲情の対象である少女をもっと見ていたいという想いがあるのだから当然なのだが、鬱陶しい限りだった。
 見るだけならば危害が無いので問題はないはずだが、やはり何とも嫌な感じがしたのだ。
 普段自分もこういった感じで女性を見ているのだろうかと思いつつ、そう言えばたまに「いやらしい目」と言われる事があるのを思い出した。
 この少女も彼らの視線に気づいているのだろうか。
 もし気づいていたとしたら何とも不憫に思えてくる。
 このように強烈ないやらしい視線を意識するなど、たまったものではないだろうからだ。
 何とかしてあげたいという想いと、少女を他人に奪われたくないという想いから、神治は曲がり角まで来ると、その瞬間周囲を結界で覆った。
 存在を感知させない結界だ。
 こうすれば彼らは少女を見失うはずだった。
 案の定、角を曲がってきた男子中学生達は、驚いたように周囲を見回した後、足早に神治達を追い抜いていっている。
 少女が先に行ったと考えたのだろう。
 周囲に誰も居なくなったのを確認してから結界を解くと、神治はようやくスッキリした状態になった事にホッと息を付いた。
「今、何かしましたよね?」
「え?」
 不意に少女がそう言ってきたため驚く。
 そして少女の顔を見た瞬間、その表情がそれまでと一変していたため、さらに驚いた。
 意志の強さを感じさせる瞳がこちらをジッと見つめており、キリリとした顔が何とも知的な雰囲気を感じさせていたのだ。
「私の事を見ていた人たちが、まるで私を見失ったみたいに居なくなりましたから。それに角を曲がった時に、あなたの体から何か力みたいなモノを感じましたし……あなたは心で話す力がありますから、他にも何か力を持っているんじゃないかと思ったんですけど、違いますか?」
 何とも鋭い指摘に苦笑する。
 この少女は力があるだけでなく、頭もいいらしい。
 ちょっとした出来事から神治のした事を推測してのけるとは、かなりの洞察力の持ち主だろう。
 真剣な顔で見つめてくる目には力があり、とても嘘を言って誤魔化せる雰囲気ではなかった。
 とはいえ、元々隠す必要もないのだから、ここは正直に話すべきだろう。
「そうですね。持ってます」
「そうですか。ではあなたに感謝しないといけないですね。あなたはあの人たちの視線に気づいて、それでああしてくれたんでしょう?」
「それは……」
 視線について述べるのは気が引けた。
 どうしても話題がいやらしい方向になるからだ。
「いいんです、気にしないで下さい。分かってますから……私ってこうなんです。私が喋ると男の人はおかしくなっちゃうんです……だから出来るだけ大きな声を出さないようにしているんですけど、さっきはつい嬉しくて……」
「嬉しかった?」
「はい。一つは私と同じような力を持った人がいたことが分かった事で、もう一つは、その人は私の事をいやらしい目で見なかったから」
「いや、それは……」
 実際神治はいやらしい目で見ていたため困ってしまう。
 この少女はその事に気づいていないのだろうか。
 いや普段から強烈ないやらしい視線を浴びていては、神治が向けたいやらしさ程度では気にならないのかも知れなかった。
「それって昔からなんですか?」
「いえ、中学に上がる頃からです。その頃から私が喋っていると、周囲の男の子達が変な目で見るようになって、それがいやらしい視線なんだって分かって……原因は私の声を聞いた事なんだって理解してからは、出来るだけ大きな声で喋らないようにしてたんです」
 それは何とも大変だったろう。
 男の一人として申し訳なく思う。
 だが彼女ほどの容姿であれば、能力とは関係なくそういった視線には晒されていたとは思うが。
「あなたが普通に私を見ているのって、やっぱり力があるせいですか? 私の声を聞いたのに、全然平気そうですし……さっきはそれで驚いちゃいました」
 そういえば神治が最初に話しかけた時、少女は驚いたようにしていたが、そういう理由があったのか。
「そうですね。俺は君から発せられている『気』の影響を受けないようにしているから」
「気……?」
「ええ。君は強い声になると……その、男が興奮するような質の『気』を発してしまうみたいで……」
「そうなんですか……それで……」
 少女は納得したようにすると、大きく溜息をついた。
 その様子を見ていると、何とも昔の自分を思い出させられた。
「気」のコントロールが出来ていなかった頃の自分は、肉欲に暴走し、手当たり次第女性を抱いていたのだ。
 それを思うと、何やら他人事ではないように思えてくる。
 何とか彼女に「気」のコントロールのやり方を教えてあげられないだろうか。
「だから逆に言えば、『気』をコントロールさえ出来れば、大きな声を出しても大丈夫になるので、もし何とかしたいのなら、『気』のコントロールについて教えてあげてもいいですけど」
「本当ですかっ?」
 神治の提案に、少女は目を輝かせて叫んだ。
「く……」
 その瞬間、今まで以上に強烈な淫の「気」が浴びせられたため、思わず呻く。
 すぐさま「気」で肉欲を抑え、周囲に男が居ないか心配して見回すと、どうやら居ないようなので、ホッと息を付いた。
「あ……」
 少女も慌てて口を押さえ、同じように周囲を確認してから安心したようにしている。
「そんなに俺も詳しい訳じゃないけど、簡単な『気』のコントロールなら教えられると思いますから」
 もし手に負えないレベルであれば、葉那にでも指導してもらえばいいだろう。
 彼女はそういった分野の先生でもあったからだ。
「はい、お願いします……そうだ、これから私の家に来てくれませんか? ここから近いですし、私の家ならさっきみたいな声を出しても大丈夫ですから」
「そうなんですか。まあ、外でやるよりいいですからね。じゃあ、行きますか」
「ありがとうございますっ」
 神治が頷くと、少女は嬉しそうに微笑みながら頭を下げた。
 その笑顔は何とも強烈な魅力に溢れており、思わず抱き締めたくなるほどだった。
 頭の動きに合わせて揺れるポニーテールも可愛らしく、神治はこの少女を抱きたくてたまらなくなった。
(この事がきっかけで、そういう関係になりたいなぁ……)
 緋道村の住人と違って、親しくなれたから即セックスという訳にはいかないため、この少女を抱くにはまだまだ時間がかかるだろう。
 というか、恋人にならずに抱かせてくれたりするだろうか。
 それは難しいだろうと思いつつ、でも何とかならないかと考えながら、村の外は何と面倒臭いのだろうと溜息を付く。
 そしてそんな思考を持っている自分は、すっかり緋道村の慣習に染まっているのだなと、神治は思うのだった。


 少女、名前は須田柚華(すだゆか)と言うのだが、彼女の家は確かに説明会のあった高校から近い場所にあった。
 そこはいわゆる高級住宅街であり、彼女の家もかなり立派なものであったため驚く。
 神治自身も現在高級マンションに住んでいるのだが、一戸建てというのはまた違った迫力があり、何とも圧倒されたのだ。
 緋道村にある家も大きかったが、やはり古い作りであったため、今風の柚華の家とは違った感じがあったのである。
「お茶です。どうぞ」
 柚華の部屋へ案内された神治は、出された紅茶を飲みつつ、これからどう指導していくかを考えていた。
 今更ながら、他人に「気」のコントロールについて教えたことなど無かった事に気づいたのだ。
 頼まれた時は、これを利用して柚華と親しくなりたいという下心があったため、安易に引き受けたのだが、もしかしたら上手く指導出来ないのではないかと思ったのである。
(まあ、その時はその時。すぐに葉那さんに頼めばいいさ)
 そんな事を思いつつ、まずは柚華の「気」がどの程度のものかを探ってみようと考える。
「それじゃまずは、意識して『気』を出してもらえます?」
「意識して、ですか?……やった事ないんですけど、どうすればいいんですか?」
「う〜〜ん、じゃあ取り合えず声を強めに出してみて下さい」
「は、はい……えっと、わぁ〜〜っ」
 柚華が大きな声を出すと、淫の『気』が発せられた。
 だがそれは先ほど学校で感じたよりも力の無いものだった。
 やはり意識すると力が出にくいのかも知れない。
 ならばこちらでサポートをした方がいいだろう。
「ちょっとゴメン」
「え? あっ、ああっ!」
 神治が断りを入れてから「気」をぶつけると、その途端、柚華は大きな声をあげて体をビクッと震わせた。
 そしてその声には、高校で感じた以上の強さの「気」が込められていた。
「意識しない方が強い『気』が出せるみたいですね。それを自分で出せるようになるといいんですけど……自分の意志で『気』を出せれば、逆に抑える事も出来ますから」
「自分で、ですか……」
 柚華は不安そうに呟いている。
「まあ、そんなに難しい事じゃないですよ。要は慣れです。今までやってなかったから難しそうに思えるかも知れませんけど、慣れさえすれば簡単に出来るようになりますから」
 神治はリラックスさせるように微笑んでそう告げた。
 こうした「気」の修行は心の状態が大事であるので、出来るだけ穏やかな状態になっている方が良いのだ。
「分かりました頑張ります。確かに認識するってのはいいかも知れません……私、今までこの力を認識しようだなんて思ってなかったですから。いつも無くなればいい、無いものとして考えよう、そんな風に思ってましたし……だから緋道くんの言う事は凄く納得です。認識すればコントロール出来る。当然の事ですね」
 コクリと頷き、真剣な表情を浮かべる柚華の顔に見惚れる。
 キリリとした様子が実にそそり、それが知的さを感じさせて何とも良かった。
 どうにも自分は、こうした知的な女性に弱いらしい。
 そして脳内では、いつか柚華を抱き、この知的な表情をいやらしく喘がせたいという想いが渦巻いていた。
 知り合ってからまだ少ししか経っていないが、柚華はまさに自分好みであり、自分の物にしたくなる衝動を強く起こさせる少女だったのだ。
「それじゃ、続けてやっていきますか」
「はい、お願いしますっ」
 内心の欲情を隠しつつ告げると、柚華は真剣な表情で頷いた。
 その顔に再び興奮しながら、神治は柚華に「気」の指導をしていくのだった。


 数日が経った。
 神治は毎日のように柚華の家へ通い、「気」のコントロールを指導していた。
 柚華の家は、神治の住むマンションからさして遠くなく、歩いて通える距離であっためそうする事が出来たのだ。
 さらには柚華の両親は仕事で忙しく、遅くならないと帰ってこなかったので、気兼ねなく訓練が出来たのだった。
 とはいえそれは、受験勉強に差し障りの無い程度の時間であったため、本来であればさほど効果は上がらないはずだったのだが、驚いた事に柚華は、一度コツを飲み込むと、あっという間に「気」のコントロールを自分の物にしていったのだ。
 どうやらこういった事に関する才能があるらしい。
 その事自体は良いのだが、問題はこれにより、柚華と一緒に過ごすための理由が無くなってしまう事だった。
 柚華ともっと親しくなりたいと思っている神治としては、このまま付き合いが無くなってしまうのが残念だったのである。
「うん、もう大丈夫じゃないかな。大きな声を出しても『気』はほとんど出てない。これなら普通の人と変わらないと思う」
「本当? わぁ、良かったぁ……」
 内心の想いを隠しつつ、神治がそう告げると、柚華は嬉しそうに笑った。
 数日付き合っている内に、二人の親密度は深くなり、会話も丁寧語ではなくなって、感覚的にも親しい友人のようになっていた。
 そんな存在である柚華が喜んでいる姿を見るのは嬉しかったが、これでお別れかと思うと寂しくなる。
「それじゃ、俺の指導はこれまでって事で」
「ありがとう。緋道くんにはホント感謝の言葉もないよ。大きな声を出しても、クラスの男子が私をいやらしい目で見なくなったなんて、ホント信じられないもの。本当に本当にありがとう……」
 柚華は深々と頭を下げると、嬉しそうに笑った。
 この顔をこれからは見られなくなるのだと思うと残念な想いが湧き起こる。
 無論会う気になれば会える訳だが、理由も無く会うというのも難しいものだ。
 そしてもし別の高校へ進学してしまえば、もう会うことなど無くなるかも知れない。
 実際緋道村へ行く前に仲の良かった友人達とは、現在付き合いが無かった。
 今のマンションは、以前住んでいた場所からさほど遠い訳でもないのに、そうなっているのである。
 柚華ともそうならない保証は無かった。
「それでなんだけど、これでお別れってのも寂しいじゃない? だから今度の学校説明会へ一緒に行かないかなぁ、って」
「え?」
「ほら、前に私が行こうと思っている説明会の一覧を見せた時に、緋道くんが行くつもりの学校がいくつかあったでしょ? それに一緒に行かないかなぁ、って」
 そう言えばそんな話をした覚えがあった。
 そしてそれは、柚華と会うための理由としては実に自然なものに思えた。
 どうやら柚華も、自分との付き合いが薄くなるのを寂しく思ってくれているらしい。
 それは嬉しい事だった。
「いいねそれ。うん、一緒に行こう。そうしよう」
「じゃ、決まりね」
 神治が喜んで頷くと、柚華も笑顔で頷いた。
「一番近い説明会は……」
 続けて学校説明会の資料を取り出した柚華は、交通機関などのチェックをし始めている。
 動くたびにポニーテールの髪が揺れ、それが何とも可愛らしい。
 このまま柚華を抱き締め、キスをし、押し倒したりしては駄目だろうか。
 柚華はおそらく自分に好意を抱いてくれているだろうから、そうしても受け入れてくれそうに思えた。
 そう考えて手が動きかけるが、すぐに止まる。
 何となく嫌な感じがしたからだ。
 もし抱いてしまったら、柚華との今の関係が崩壊するように思えたのである。
 考えてみれば、柚華は男のいやらしい視線に悩み続けてきたのであり、唯一そうでなかった自分を信頼してくれた。
 その自分が襲いかかってしまっては、その信頼も崩れてしまうだろう。
 そんな事は嫌だった。
 もし抱くにしても、柚華がもっとこういう事を許容出来るようになってからにした方が良いのではないか。
 いつになるか分からないが、柚華に嫌われるよりはマシだった。
 こういう事は焦っては駄目なのだ。
 神治はそんな事を思いながら肉欲を抑えると、そのまま何事も無かったように柚華の説明に相づちを打つのだった。


 数週間が経った。
 その間、神治は柚華と一緒にいくつかの高校を見て回っていた。
 結局神治としては、柚華と出会ったあの高校が一番気に入っている状態で、柚華に尋ねると彼女もそうらしかった。
 お互いの本命校が同じになったため、後は二人とも受かれば、四月からは同じ高校へ通う事が出来ることになった。
 成績的に柚華は楽勝らしいので、問題は神治だけであり、その事もあって最近は柚華に勉強を見てもらっている。
 これは柚華が言い出した事であり、神治としては、柚華が自分と会うための口実を作ってくれたように思えて嬉しかった。
 その気持ちを無駄にしないためにも、絶対に合格してやろうと、神治は以前よりも必死に勉強に励むようになっていた。
「ねぇ、緋道くん」
「ん? 何?」
 いつものように勉強を見てもらった後、家へ帰る前に雑談をしていると、不意に柚華が普段とは異なる妙にかしこまった雰囲気で声をかけてきた。
「私ね、何だか驚いているの」
「何を?」
「こうして男の子と普通に話してること」
「そうなの?」
「うん。こんな風に男の子と楽しく話すなんて、前なら絶対無理だったもの……話している内に、みんな私の事をいやらしい目で見る様になって……それが嫌だから話さないようになって……凄く悲しかった……」
 突然の告白に驚きつつ、その事を不憫に思う。
 同じクラスの男子とまともに話せないなど辛いだろうからだ。
 そしてその事から、やはりあの時抱かなくて正解だったと思った。
 もし抱いていたとしたら、自分もそういった男達と同類に見られるようになっていたに違いないからである。
「でも今は大丈夫でしょ? 学校でも男と話せてるんじゃないの?」
「うん。それはそう……でもやっぱり前の印象があるから、そんなにでもないんだ……」
「そうなんだ」
「だけど緋道くんは違う。緋道くんは、最初から普通に話せたし、どんなに話してても私をいやらしい目で見なかった……だからこうしてずっと仲良くしてられるんだよ」
 本当は最初からいやらしい目で見続け、脳内では色々と好き勝手に妄想をしていたのだが、柚華には分からなかったらしい。
 それが何だか騙しているような感じがして神治は気が引けた。
「俺だっていやらしい目で見てたよ。最初からね」
「嘘ぉ」
 正直に告げると、柚華はそれを冗談と受け取ったのか笑っている。
「ホントホント。だって須田さんって凄く可愛いし、体だって魅力的だから、見た瞬間からいやらしくなっちゃってたんだ」
「え〜〜、それ本当? 私全然分からなかった」
「それが面白いんだよね。同じように見てても、他の女の子には言われたことあるのに、須田さんには言われなかったから」
「う〜〜ん、どうしてかな?」
「やっぱりいつももっとどぎつい感じで見られてたから、俺のいやらしい視線くらいじゃ、普通すぎて感じられなかったんじゃないかな?」
「どぎつい、って……他の男の子のってそうなの?」
「そりゃね。男ってのは女子の事をいやらしい目で見るもんだけど、須田さんを見る男の目ってのは、かなり凄かったから。あんなのを普段から感じてたんじゃ、普通レベルのいやらしい視線じゃ、いやらしく感じないんじゃないかなぁ」
「ええ〜〜? それじゃ今もいやらしい目で見られてたりするってこと? せっかく訓練して『気』をコントロール出来るようになったのに……」
 柚華は驚いたようにして目を丸くしている。
「そりゃしょうがないよ。だって須田さんはこんなに可愛いし、抱き締めたくなる体してるんだから」
「わっ、何かエッチ……緋道くんって、本当はいやらしかったんだね」
「そうだよ。さっきから言ってるじゃん」
「うわ〜〜、信じられない。緋道くんだけは違うと思ってたのにぃ」
 言葉は誹謗の内容だが、柚華の口調は冗談っぽいものになっており、からかっているのが分かる。
 そして声に淫の「気」を伴っているのが、神治に対する好意の現れを感じさせた。
 柚華は訓練をした事により、淫の「気」を抑えられるようになったのだが、それはあくまで通常の強さでの話だった。
 何かの要素、相手に強い好意を抱いたり、欲情したりする事によって「気」が強まれば、それを抑えるのは無理だったのである。
 要するに今の柚華は、神治に対する好意が強い状態になっているという事だった。
(これなら、抱いちゃっても大丈夫かな?)
 神治は、以前躊躇した柚華を抱く行為を、今なら出来るのではないかと思った。
 無論いくら好意が高まっているとはいえ、いざ抱かれるとなれば嫌がる可能性はあったから、やってみなければ分からないのだが。
 神治はそう思いながら、少々探りを入れてみる事にした。
「そんな事ないさ。男はみんなエッチなの。俺だってもうずっと須田さんとエッチな事がしたくてたまらないんだから。ほら、こんな風にしちゃう」
 怯えさせないように注意しながら、ゆっくり移動し、柚華の体に密着するようにして隣に腰掛ける。
「わぁ……いきなり何してるのぉ……」
 柚華は少し動揺したようだったが、そのまま離れることなく大人しくしている。
 声に含まれる淫の「気」は、治まるどころか強くなっており、柚華がこの行為を嫌がっていない事が分かった。
「そんで、こんな事もしちゃう」
 続けて肩に腕を回し、柚華の体を引き寄せてみる。
「あ……」
 柚華は少しだけ声を漏らすと、そのまま押し黙った。
 小さな声ではあったが、今まで感じた以上に強い淫の「気」を伴っていたために、股間の一物がビクンっと震えた。
 柚華は呼吸を乱しながら、目を落ち着き無く動かしつつ、どうしたらいいのか分からない様にしている。
 その初々しい様子に興奮しつつ、全く抵抗する素振りがない事から抱いても大丈夫だろうと判断した神治は、いよいよ本格的に行動する事にした。
「須田さん……」
 呼びかけつつ、顎に手をかけて柚華の顔をこちらに向けさせる。
「ぁ……そのぉ……」
 柚華は恥ずかしそうに視線を逸らすと、顔を真っ赤にして俯いた。
 それを再びこちらに向かせ、ゆっくりと顔を近づけていく。
「……」
 柚華は一瞬息を飲んだが、そのままゆっくりと瞼を閉じていった。
 桜色をした柚華の唇に自分の唇を重ねると、柔らかな感触が感じられ、微かな震えが伝わってくる。
 そのまま軽く肩を抱き寄せながら、強く唇を押しつける。
 触れている体は硬直し、小刻みに震えているのが分かった。
 初めてに違いないキスに緊張しているのだろう。
 神治は少しした後、ゆっくり唇を放すと、柚華の可愛らしい顔を見つめた。
 惚けた表情で、唇を半開きにしたままボーッとしているのが愛らしい。
 頬は上気し、瞳はうっとりと宙を見つめている。
「はぁ……キス、しちゃったんだね……緋道くんと……」
「そう、俺とキスしたんだよ。俺はずっとこういう事を須田さんとしたくて、いやらしい目で見てたんだ」
「ふふ、そうなんだ。エッチ……」
 柚華はいたずらっぽく笑うと、軽く肩を叩いてきた。
 それは何とも初々しく、その様子から取り合えず今日はこのくらいで満足しておくべきかと神治は思った。
 性的な事で嫌な想いをしていた柚華に、あまり急いた行動をしては嫌われてしまうと思ったのだ。
「なら、その……やっぱりもっと、してみたかったりするの?」
「え?」
「私ともっと、エッチな事を、さ……」
 予想外に性的な事を期待しているらしい柚華の言葉に驚く。
 何より声に伴った淫の「気」が凄まじく強力になっており、常人であれば耐えられないほどの強さになっていたのだ。
 完全に柚華は欲情しているという事だろう。
 ならば神治としてもそれに応えない訳がなかった。
「それはもちろんしたいさ。もっと凄いことだってしたい」
「もっと凄いこと、したいの……?」
「うん、しちゃっていい?」
「え〜〜、どうしようかなぁ、なんて……ふふ、いいよ。緋道くんなら許しちゃう……」
「ありがとう……」
 いたずらっぽく笑いながら許可をくれた柚華に礼を述べながら、再び唇を重ねていく。
 今度は触れるだけではなく、擦りつけるようにし、舌を押し込んで口内を舐め回す。
「んっ……んふっ……んっ、んぅっ……」
 すると柚華は体をピクッ、ピクッと震わせながら、強くしがみついてきた。
 その様子を可愛らしく感じつつ、顔を左右に入れ替え、激しく唇を擦り合わせて舌を強く吸っていく。
「んっ、んっ……んぅっ……んっ……」
 頭の後方に手を回し、ポニーテールの髪を優しく撫で回しながら、ねちっこいキスを繰り返していると、柚華の体から徐々に力が抜けていき、床にゆっくりと倒れ込んでいった。
 唇を放すと、柚華はハァハァと荒い呼吸をしながら、ぼんやりとした表情であらぬ方向を見ている。
「あっ……んふ……やっ……」
 のし掛かるようにして首筋に唇を当て、優しく舐めたり吸ったりすると、柚華がピクピクと体を震わせた。
 そのままゆっくり服をはだけていき、ブラジャーを押し上げると、かなり大きめの乳房が現れる。
 真っ白な膨らみに、桜色の乳首が可愛らしい。
 整った顔立ちによく似合う形の良い乳房に興奮を覚えつつ、神治はそれを優しく揉んでいった。
「あっ、あっ……んっ、あぁっ……」
 柚華は目を瞑り、困ったように頭を左右に振りながら可愛らしい声を漏らしている。
 その声には強烈な淫の「気」が含まれており、そのせいで肉棒が痛いほどに勃起した。
 さすがに意識が性に染まってくると、淫の「気」もかなりの強さになるようだ。
 だがそれは、神治自身の興奮も高まる効果があるため喜ばしい事だった。
「あんっ、あっ……や、はぁんっ……」
 プクンっとした乳首に吸い付いて舐め回すと、柚華は体を震わせ、今までより大きな声で悶えた。
 揉みがいのある大きな乳房は、体の小ささとのギャップで何とも言えない存在感をもたらし、思わず集中して愛撫を繰り返してしまう。
「やっ、あんっ……そんな、あぁっ……」
 さらに声に力があるせいか、喘ぎを聞いているだけで強烈な刺激が肉棒に走るのがたまらなかった。
 もっとこの声を聞きたい、喘がせたい、自分の事を求めさせたい。
 そうした雄としての欲求が格段に強まるのだ。
 もともと男を誘う声ではあったが、実際にセックスに至ってこの声を聞かされるのにはたまらないものがあった。
 何しろ普通の女性よりも声を聞くことによる快感が大きいため、もっと気持ち良くさせ、声をあげさせたいという気持ちが強まるからだ。
 実際神治もかなり気合いを入れて愛撫していたし、早く柚華の中に肉棒を押し込みたい気持ちになっていた。
「あっ、ああっ……やっ、あぁんっ……」
 スカートの中に手を入れ、パンティの上から秘所をなぞりつつ柚華の様子を見つめる。
 いつも明るく笑っている顔は上気し、大きめの瞳はいやらしく潤んでいた。
 呼吸は乱れ、何とかして欲しいといった感じでこちらを見つめてくるのが可愛らしい。
「あぅっ……あぁっ、あっ……そこは、はぅっ……」
 パンティの中に手を入れ、膣穴に指を出し入れすると、柚華は一瞬緊張した表情を浮かべた後、すぐに委ねるようにして力を抜いた。
 秘所はかなり濡れており、もう肉棒を入れても良さそうな感じだった。
「須田さん……入れるよ……?」
 身を起こし、真上から顔を見下ろしながら告げると、柚華はコクリと小さく頷いた。
 ズボンとパンツを下ろし、肉棒を取り出すと、パンティを引き下ろして脚の間に腰を入れていく。
「ぁ……」
 亀頭が秘所に触れると、柚華が小さく声を漏らした。
 それと共に「入れるんだ」という柚華の心の声が頭に響き、不安と恐れと感慨を感じさせるその声に初々しさを覚える。
 やはり処女を奪う際には特別の想いがあった。
 その女性の初めての男になるというのが、非常な嬉しさとなるからだ。
 妹の舞美の処女をもらってから、多くの少女の処女を散らしてきた神治だが、何度経験してもワクワクする感覚のあるものだった。
 ズブッ……。
 そんな事を思いながら腰を進めると、肉棒が膣穴にはまった。
 眼下では、体を硬直させた柚華が眉根を寄せている姿があり、それが何とも色っぽい。
 そのまま一気に肉棒を押し込むと、柚華の苦痛の吐息と共に、肉棒が窮屈な場所にはまり込むのが分かる。
 処女らしくキツい膣内は、それでいて精を欲するようにいやらしく蠢いており、神治は気持ちの良さを感じながら、また一人の女を自分の物にした感慨に浸った。
 後はこのまま快感を味わい、精液を注ぎ込めば完璧だ。
 そう思いつつ、ゆっくり腰を動かし出す。
「うっ……いぅっ……うぁっ……」
 柚華は痛みがあるのか苦痛の表情を浮かべ、辛そうに悶えている。
 その様子は快感を得ている神治には何ともそそったが、痛がっている事も分かったため、「気」を送る事で痛みを和らげてあげる事にした。
 柚華は声に力があったため、セックスによる快感の声をあげた時に、それがどれほどのものになるのか、味わってみたいという想いもあったのだ。
「あっ……あぁっ……あっ……」
 神治が痛みを和らげる「気」を送ると、すぐに柚華は甘ったるい声をあげだした。
 それと共に強烈な淫の「気」が声に乗って放出され始め、耳から入ったそれは脳内を駆け巡り、体全体に浸透した。
(くっ……)
 思っていた以上に強烈な快感に思わず歯を食いしばりながら、腰の動きを早めていく。
「あんっ、あっ……あぁっ……やっ、やっ、やぁっ……」
 すると柚華の体がそれまでと異なる震えを見せ、明らかに快感に染まり始めたのが分かった。
 そしてそれと共に放出される淫の「気」も強力になり、意識して射精感を防がなければならないほどになった。
 どうやら柚華は、自分の快感が高まれば高まるほど、放出する淫の「気」も強まるらしい。
 その事に喜びを覚えつつ、このままもっと感じさせたらどうなるのかとワクワクしながら、さらに肉棒を叩き付けていく。
「あん、ああっ……あっ、あっ、ああっ……」
(!……)
 柚華の声が強まった瞬間、強烈な快感に体が痺れた。
 思わず射精してしまいそうなほどに押し寄せる快感を処理しつつ、己が交わっている相手が本当に素晴らしい少女なのだという実感を抱く。
 こうした感覚こそ、女を抱く際の悦びだ。
 相手に快感を与え、その反応に自らも快感を得、それをまた求めるがゆえに必死になって相手に快感を与えていく。
 男の性的行動は、そういった事の繰り返しだろう。
 女を好きなように喘がせる事で、自らも悦びを得るのだ。
 己が女を支配していると感じる時、ゾクゾクするような快感を覚えるのである。
「緋道くん、あっ……緋道くん凄い、あぁっ……凄いよぉっ……わたし、あんっ……わたしおかしくなっちゃうぅっ……」
 ポニーテールの頭を左右に激しく振り、柚華は悶え狂った。
 その様子を見ていると、柚華を己の物としている実感が持てて最高だった。
 大切な友人である柚華。
 その友人の魅力的な肉体を、今自分は好きなようにしているのだ。
「はぅっ、はっ、はぁんっ……そこ、やっ……そこいい、あぁっ……そこいいのぉっ……」
 悩ましい表情を浮かべながら、与えられる快感をどう処理していいのか分からない様子で、柚華はギュッと抱き付いてきた。
 肉棒を押し込むたびに抱き付く力が強まり、そのたびに頭が仰け反って顎がこちらに向けられる。
 すっかり乱れたスカートからは白い脚が淫靡に覗き、健康的な太ももが腰に絡みついてくる。
 初めての交わりでここまで乱れ、快感に震える姿を見られるのは本当に最高だった。
「緋道くん、やっ……わたし、あぁっ……わたしもう駄目、あんっ……もうイっちゃ、あぁっ……イっちゃうのぉ、やっ、やぁっ……」
 限界を伝える言葉にゆっくり頷き、射精感を急上昇させる。
 そのまま柚華の絶頂に合わせて精を放とうと激しく肉棒を出し入れしていく。
「あんっ、あんっ、ああんっ……凄い、駄目、やぁっ……あぅっ、はっ、あぁっ……やっ、やっ、やぁあああああああああっ!」
「うぅっ!」
 柚華の叫びに合わせて射精する。
 ドクドクドクと勢い良く迸る精液を感じながら、神治は柚華の膣に初めて精液を注ぎ込んだのは自分なのだという感慨に浸った。
 頭が良くて可愛らしい、背は小さいけれど胸が大きく、抱き心地の良い柚華の肉体の中に、今自分は精液を注ぎ込んだのだ。
 何と素晴らしい経験だろう。
 やはり優れた女性の中に射精する快感はひとしおだった。
 しばらくして精を放ち終えた神治は、柚華の隣に横たわった。
 荒い呼吸を繰り返しながら、隣でボーッとしている可愛らしい横顔を眺める。
「はぁ……私、緋道くんと……しちゃったんだね……」
「うん……」
 感慨深く呟いている柚華に相づちを打って答える。
「ふふ……よく考えたら、緋道くんとは恋人でもないのに、しちゃったんだ……」
「うん……嫌だった?」
「嫌じゃないけど……何か順番を間違っちゃったかなぁ、って……普通は恋人になってからするものでしょ?」
「まあ、そうかもね……」
「でも私、緋道くんが私のこと、いやらしい目で見てたって言った時に、何か胸が締め付けられる感じがして、その後抱き寄せられた時に、『抱かれちゃってもいいかなぁ』って思ったんだ……」
「ふ〜〜ん……」
「私って、緋道くんのこと……好き、なのかな?」
「え……?」
「好き、だから許しちゃったのかな、って……」
「まあ、嫌いだったら許さないんじゃない?」
「そうだよね……でも恋愛の好きとは違う感じがする。恋愛の好きは、もっと違うと思うんだ……」
 確かに柚華の自分を見る目は、恋愛感情を伴っているように思えなかった。
 恋をしていれば存在する、感情的な熱さを感じなかったのだ。
「そうだね。俺も須田さんには恋してないから」
「わ、何かちょっとキツい。本当でも、分かってても、面と向かって言われるとズンってくるよ」
 思わず正直に言ってしまってから、柚華の少し悲しげな表情に慌てる。
「ゴメン。でも友達としては凄く好きだよ。大好きだ」
「あ、それはキュンって来た。嬉しい。温かい気持ちになるよ……私も、緋道くんの事、友達として大好き」
 その言葉に心臓が反応を示す。
 友達としてであっても、「好き」と言われる事には、人を温かい気持ちにさせる力があるのかも知れない。
「ホントだ。キュンって来るね」
「ふふ、そうでしょ?」
 二人は微笑み合った。
「それに緋道くんにはね、友達に対するのとも違う想いもあるんだ」
「え? どういうの?」
「う〜〜ん、何て言うか……最初に会った時から、『この人は違う』って感覚があったの。今まで会ったどんな人とも違う特別な感じっていうか……最初は恋かと思ったんだけど、何か違うんだよね……それでさっきしてる時に、それが強烈になって、頭の中が真っ白になって、緋道くんが凄く輝いて見えて……『この人ってやっぱり違う。何か凄い』って思ったの。もちろんアレが凄かったのもあるけど……それとは別の凄さっていうか……それがあったから、抱かれちゃったけどいいや、って……緋道くんみたいに凄い人なら、抱かれても後悔しないって……」
 話題がセックスの事であるせいか、恥ずかしそうにしながら柚華はそう告げてきた。
 そしてそういった感想に聞き覚えのある神治は、思わず苦笑してしまった。
 東京に来てから抱いている女性達には、似たような事をよく言われているからだ。
「ねえ、緋道くんって何者なの? こんな事って信じられないよ」
 柚華が真剣な目をして見つめてくる。
 キリリとした美しい顔が迫ってくるのにはドキリとするものがあり、神治はそんな相手を自分の物にした事に喜びを覚えた。
「俺は俺だけどね。まあ、須田さんが凄い感覚を俺に持ったってことは、もしかすると俺って、エッチした相手にそういう感覚を与える力があるのかも知れないな」
「……なるほど、そうかも……そうだね。そういう力かぁ……」
 神治が述べた推測に、柚華は納得したように頷いている。
 おそらく柚華が感じているのは、神治の中にある神性に違いなかった。
 満里奈もそうだが、力のある女性は、神治の中にある神性に反応しやすいのかも知れない。
 ならば今後も抱いていけば、柚華も満里奈のように自分に強く従うようになるのだろうか。
 その事に神治はゾクリとした快感を覚えた。
 柚華もそうした存在に出来るのだと思うと、悦びが湧き起こったのだ。
 無論友人として大切に想う気持ちに代わりは無かったが、柚華という素晴らしい少女を、心身共に自分の物に出来るという興奮は、それよりも強かったのである。
 恋愛では味わえない、一方的に支配する快感。
 身も心も自分に従わせ、相手の全てを自分色に染め変える感覚。
 柚華もそういった女にしたい。
 そのためにはもっと抱き、もっと快楽を与え、もっと自分に夢中にさせなければ……。
 視線を柚華に向ければ、一度絶頂を味わった事により、セックスをする前よりも淫靡な雰囲気を放っている肉体があった。
 男を知った事で柔らかみを増した肉は、もっと愛撫して欲しいと火照っており、それを見ていると肉欲が高まっていく。
 先ほどから会話している際に耳に響く声は、強烈な淫の「気」を発していて、肉棒はすでに限界まで硬く大きくなっていた。
 これを我慢するなど無理だった。
 いや、我慢などしたくなかった。
「それじゃ、その力を確かめるために、もう一回してもいい?」
「え?」
「また抱いた時に、須田さんが同じように感じるかを確かめてみたいんだよ」
「そ、そうだね。確かめた方がいいかも……うん、いいよ……抱いても……」
 激しい肉欲をギリギリまで抑えつつ、表面上は平然とした様子で誘いかけると、柚華は恥ずかしそうに呟きながら了承してきた。
 このまま再び神治の神性に触れれば、恐らく柚華はもう逆らえなくなるだろう。
 常人よりも神性に敏感な柚華は、セックスを繰り返せば繰り返すほど、神治に夢中になるはずだった。
 それは何ともゾクゾクする悦びを感じさせ、神治の中の荒々しい衝動を刺激した。
 柚華が欲しい、柚華が欲しい、柚華が欲しい……。
 心と体がその想いで一杯になっていく。
「須田さんっ……」
 神治は抑えられなくなった肉欲を解放すると、柚華の体にのし掛かり、激しいキスをしていった。
「んっ、んんっ、んんぅっ……んはぁ……やだ、キスだけで何か凄ぃ……」
 うっとりとした表情でこちらを見つめてきながら、柚華はオズオズと手を背中に回してくる。
「それじゃ、さっきより凄くしてあげるからね」
 神治はそう言いつつ、鼻息を荒くしながら肉付きのいい体を愛撫していった。
 柚華を従属させる事が出来るという興奮から、普段より落ち着きが無くなっているのだ。
 触れるたびに強めの「気」を放ち、柚華の快感を高めるようにしていく。
 そうする事で、さらに柚華を自分に夢中にさせるつもりだった。
 肉体だけでなく精神をも抱き、柚華の全てを手に入れるのだ。
「あっ、あんっ……わたし、やっ、やぁっ……何か、何か凄いよぉ、あぁっ、ああんっ……」
 さっそく激しく悶え始めた柚華の様子に満足しつつ、心身共に激しく高ぶった神治は、強く勃起している己の肉棒を、熱く濡れそぼっている肉壺の中に押し込んでいくのだった。


「あっ、あっ、ああっ……」
 ベッドの上で裸になった柚華が横たわっている。
 神治が腰を動かすたびに、白くて大きな乳房が揺れ、体の小ささと相まって存在感を感じさせた。
 全体的に肉付きのいい体をした柚華は、裸になるとその肉体的な魅力が増し、神治はその素晴らしさに感嘆していた。
 抱き締めると程良い弾力で返してくる肉の感触は、それだけで心地良い気持ちになり、生の肌同士が触れ合い、擦れ合うたびにゾクゾクするような快感が走り抜ける。
 柚華は抱くだけでも快感が得られる素晴らしい肉体の持ち主だった。
 こんな体を抱けるというのは、まさに男冥利に尽きると思いながら、神治は強めに肉棒を出し入れさせていった。
「あんっ、あっ……やぁっ……」
 柚華は快感に可愛らしい顔を歪ませ、軽く握った手を口に当てると、恥ずかしそうに視線を逸らした。
 その様子に嗜虐心をそそられた神治は、もっと強く柚華を味わおうと、体をひっくり返して四つんばいにさせた。
「こんな格好で、するの?」
 柚華が顔を赤くしながらこちらを振り返ってくる。
「そうだよ。こういうのもいいでしょ?」
「ちょ、ちょっと恥ずかしい、かも……」
「恥ずかしがってる須田さんを見ると、俺、興奮しちゃうんだ」
「やだ何言って、あっ、あんっ……やっ、やぁっ……」
 顔を真っ赤にした柚華に興奮を高めつつ、思い切り肉棒を突き込む。
 そのまま激しく前後に腰を振っていくと、柚華は頭を仰け反らせて激しく悶えた。
「あんっ、あんっ、あんっ……やっ、やぁっ……はんっ、はぁっ……」
 ポニーテールにした髪が突き込む動きに合わせて揺れ、その様子に益々興奮が高まっていく。
 背中には染み一つ無い美しい白い肌が広がっており、そこに舌を這わせつつ、背後から乳房を掴むと、何とも言えない量感を感じて嬉しくなった。
 体は小さいのに、どうして胸だけはこんなに大きいのだろう。
 不思議に感じながらも、そういった部分が柚華の体の魅力だと思った。
「ああっ、やっ……あぅっ……あっ、あぁっ……」
 細い腰を持ち、強く肉棒を叩き付けていくと、柚華が泣きそうな声で喘ぎ、それと共に強烈な刺激が肉棒に走り抜けたため、思わず射精しそうになった。
 その状態を耐えている間も、柚華の声が聞こえるたびに体全体が快感に痺れまくるのに苦笑する。
 肉体の気持ちの良さに加え、この快感神経を擦るような声の刺激はたまらなかった。
 この快感は、柚華ならではの良さだろう。
 やはり柚華を抱いて良かった。
 こんな女を自由に出来るのは何と素晴らしい事か。
 これからももっともっと柚華を抱き、この快感を味わいたい。
 神治はそんな事を思いながら、激しく肉棒を叩き付けていった。
「あっ、あっ、ああっ……緋道くん、やぁっ……緋道くん凄い、あんっ……こんなの凄い、やぁっ……」
 柚華は頭を左右に振り、ポニーテールを揺らしながら激しく悶えた。
 耐えられなくなったのか腕を崩し、上半身をベッドに付け、尻をかかげる姿勢になっているのがいやらしい。
 その様子に満足感を得つつ、益々高まった興奮に、神治はさらに強く腰を振っていった。
「やんっ、やぁっ……わたし、わたしもう、あぁっ……緋道くん駄目、あっ……わたし駄目だよぉっ……」
 絶頂が近いらしい事を告げてくる柚華に、神治も射精感を抑えるのを止め、一気に精を放出しようと、それまで以上に腰を叩き付けていく。
「ああっ、ああっ、ああっ……駄目っ、駄目っ、駄目ぇっ……イっちゃうっ、イっちゃうっ、イっちゃうよぉっ……やっ、やっ、やぁああああああああんっ!」
「うぅっ!」
 柚華の体が硬直した瞬間、神治も精を放つ。
 ドクドクドクと放出されていく感触を味わいながら、柚華の素晴らしい肉体の中に、自分の精液が入り込んでいく事に興奮を覚える。
「緋道くぅん……はぁ、あぁ……」
 不意に耳に響いた柚華の声に、全身が震えた。
 射精をしている肉棒は勢いを増し、脳は快感で一杯になった。
 快感の絶頂である射精の瞬間に、強烈な淫の「気」を含んだ柚華の声を聞いたせいだ。
 それまでも声を聞いてはいたが、今のはかなり強烈だったのだ。
 油断していた事もあって、まともにそれを食らった神治は、快楽で意識が薄れるのを感じた。
(……)
 すると不意に、何やら頭の中に声が聞こえたような気がした。
 柚華とは心の声で何度か会話した事があるので、それなのかと思ったが、何か違っているものを感じる。
 それは声というより、何か情報のようだった。
 人が会話で使う言葉ではなく、本に書いてあるような言葉の羅列が頭に響いているのだ。
 AはBであり、BはCである。
 DはEを成し、EはFと成った。
 そういったよく分からない情報が聞こえ、それと同時に分からなかったはずのその内容が、いつの間にか何となく理解出来ているような感覚を覚える。
 それには日常生活における知識から、学校で習ったようなこと、そしてこれまでの人生で聞いた事も無いような情報までもが含まれていた。
 そうした様々な大量の情報が脳に流れ込んで来ているのだ。
(何だこれは……何なんだっ)
 神治が動揺しながら心の中で叫ぶと、不意にそれは治まった。
 何だか分からないが、妙な現象が治まった事にホッとする。
 そのまま柚華の中から肉棒を引き抜くと、柔らかな体の上にゆっくり倒れ込む。
 温かい肉の感触に安堵感を感じつつ、今あった現象を思い出しながら、神治は柚華の体を抱き締めた。
「緋道くん、どうかしたの?」
「え?」
「何だか顔色悪いよ?」
 どうやら自分で思っていた以上に、今の現象にショックを受けていたらしい。
 考えてみれば、突然異常現象を体験したのだ。顔色くらい悪くなっても当然だろう。
 いい加減そういう事には慣れたと思っていたが、そうでも無かったという訳だ。
 そんな事を思いながら柚華を見ると、凄く心配した表情を浮かべていたため慌てる。
 何となく誤魔化すつもりだったのだが、これでは嘘をつく訳にはいかなくなった。
 まあ、元々隠して困る事でもないので、正直に話しても構わないのだが。
「実は変な声を聞いたんだ」
「変な声?」
「うん。何て言うか、色々な情報みたいなものが聞こえてきて、それが頭の中に流れ込んでくる感じっていうか……」
「あ……」
 神治が説明すると、柚華は驚いたようにして声をあげた。
「何か知ってるの?」
「うん。私、そういう事ってよくあるから……」
「よくあるって、情報が聞こえてくるのが?」
「うん。緋道くんは違うの?」
 あっけらかんと驚いた事を告げる柚華に呆然とする。
 あのような奇怪な現象を、何度も経験しているというのか。
「俺は今回が初めてだよ。一体何なんだろうあれ……」
「分かんない。昔からしょっちゅうあるけど、何でなるのか分からないから……緋道くんの方がこういう事に詳しそうだから、理由が分かるかと思ったんだけど……」
「う〜〜ん、俺も初めてだからなぁ。ちょっと無理だよ……」
「そっか……」
 柚華は残念そうに息を付いた。
 その様子を見つつ、神治は柚華の能力の多彩さに驚いた。
 淫の「気」だけかと思っていたら、他にもこのような力があったとは……。
 柚華は能力者として才能があるのかも知れない。
 だがそういった力のせいで、もし困っているのだとしたら、何とかしてあげたかった。
 友人としてはもちろんだが、セックスをした結果、「自分の女」という感覚が増えたせいか、そうした想いが強まっているのだ。
「取り合えず考えてみるから、詳しく教えてくれない? これってどういう力なの? ただ情報が聞こえてくるだけ?」
 何か能力について理解するヒントがないかと尋ねてみる。
「聞こえるだけじゃないよ。聞こえた情報は知識になって覚えちゃってる」
「え? そうなの?」
「うん。無意識だから何が増えたのか分からないけどね。でも後でニュースを見た時なんかに、知らないはずの単語が出てきても分かってたり、学校の試験で、勉強した覚えのない問題が解けたりして、それで分かるんだ」
「そんな事が……」
「そうなの。私が成績いいのって、実はそういう事情があるからなんだよ……」
「へぇ〜〜」
 何とも驚きだった。
 柚華は頭が良いと思っていたが、まさかそうした能力ゆえだったとは。
「軽蔑した?」
「え?」
「だってこれってズルだもん。みんなが成績伸ばそうとして一生懸命勉強しているのに、私は何もしなくても成績がいいんだから……」
 柚華は辛そうな表情を浮かべ、悲しそうにしている。
 ズルをしているのを責められる事を恐れているのだろう。
 その気持ちは神治にも何となく分かった。
 以前自分も、神の力で性的能力が上がった事を、ズルのように考えていた時期があったからだ。
 何とも言えない申し訳なさを感じ、自分が許せなく思えてしまっていたのである。
 だがそういった想いを、未迦知神が諭して払ってくれたのだった。
「まあ、別にいいんじゃないの?」
「え?」
「俺も前に似たような事で悩んだ事があったんだ。ほら、人には無い力があるからさ。それでズルじゃないかって……そしたら俺の、その、先生みたいな人が、『生まれつき能力に差があるのは才能であってズルじゃない』って……確かに記憶力とか、運動神経とか、生まれつき差がある訳だからね。それを気にしてたらやってられないよ」
「そっか……そうだよね……うん、ありがと、何か楽になった」
 少し明るくなった柚華にホッとする。
「それにしても、須田さんがそうした能力があるのは分かったけど、どうして俺が急に同じ能力を使えたんだろ? 今まで使えなかったのに……」
 考えてみると不思議な事だった。
 これまで他人の能力を自分の物として使った事などなかったからだ。
「う〜〜ん、もしかすると、能力を使ったっていうより、私が得た情報を緋道くんも聞いたって事じゃないかな?」
「え? どういう意味?」
「私達は心の声で会話が出来るじゃない? だからそのせいで、私が情報を受け取っているのが、心の声として緋道くんに伝わったというか……」
 なるほど、確かにそれなら「突然新しい能力に目覚めた」と考えるより納得しやすかった。
 元々柚華の声は無意識の内に伝わってきていたくらいだから、そういう事があっても不思議ではないだろう。
「でも、今までも心の声で会話した事は何度もあるのに、どうして急に今回だけ……」
「それは……やっぱりその……体が繋がったから、じゃないかなぁ……」
「え?」
「心は体の一部な訳だし、体同士がくっついたら、そうした作用も強くなるんじゃないかって……」
 神治の疑問に、柚華は恥ずかしそうにしながら推論を述べた。
 確かにそれはなかなか合っていそうな考えに思えた。
 以前魂を調べてもらった際に、「快楽は魂を無防備にする」と言われた覚えがあったからだ。
 体が繋がったこと、つまりセックスをした事で起きた快楽によって魂が解放されるのと同じで、心も繋がり易くなったのではないかと思えたのである。
「なるほどね、それはあるかも」
「まあ、一回しか起きてない事だから、全然違うかも知れないけどね」
 神治に同意されたのが嬉しかったのか、柚華は微笑みながら顔を寄せてきた。
 その事で愛おしさが強まった神治は、もっと柚華を抱きたくなった。
「だったら試してみようよ」
「え?」
「もっとエッチしてみて、また俺が情報を聞けるかどうかをさ」
「そ、そんなのって……」
「嫌かい?」
「……えっと、その……嫌、じゃないかも……」
 真っ赤になって答える可愛らしい様子に、激しい肉欲が湧き起こる。
 自分とのセックスに夢中になり始めているのが、柚華の従属化が進んでいるのを感じさせて愛おしさが強まった。
 このままもっともっと快楽を与え、自分に染まらせなければ……。
「須田さんっ……」
 強い肉欲と共に、精神的な興奮を高めた神治は、勢い良くのし掛かっていった。
「あんっ……緋道くんのエッチ、やっ……さっきより何か興奮してるぅ、あっ、ああんっ……」
「そりゃそうだよ。今の須田さん、すっごく可愛かったからさ……俺、もう止まらないっ……」
「あっ、ああっ……もぉ、しょ、しょうが、あんっ……ないんだからぁ、やっ、やんっ……」
 呆れたような言葉を言いつつ、柚華は笑いながら悶えた。
 神治はその態度に嬉しくなりながら、柚華の気持ちのいい体を愛撫しつつ、すでに馴染み始めている膣に、猛りまくった肉棒を押し込んでいくのだった。


「あっ、あっ、ああっ……」
 胡座をかいた神治の腰の上で、制服を身に付けた柚華が腰を上下させながら悶えている。
 動くたびにポニーテールにした髪がピョコピョコ揺れ、はだけた制服から見える大きな乳房がブルンブルンと揺れた。
 紺のスカートに隠れた股間では、膣穴が肉棒を咥え込み、激しく擦れている。
「やっ、やぅっ……緋道くぅん、あぁっ……緋道くんいいよぉっ……あっ、あっ、ああんっ……」
 快楽で涙目になっている柚華は、神治の体に抱き付くようにすると、いやらしく眉根を寄せながら、熱心に腰を振りまくった。
 初めて交わって以来、柚華はすっかり神治とのセックスに夢中になっていた。
 あれから二人は、毎日のように柚華の家でセックスをするようになっていたのだ。
 以前から勉強をするために訪れてはいたが、今やその時間をセックスに充て、快楽を楽しんでいる日々なのである。
 本来受験を控えた神治としては、勉強をするべきだったのだが、こうして柚華とセックスしていると、その代わりになるため問題はなかった。
 情報の能力に関して何度か試した結果、柚華が伝えたい事を意識し、神治もその事を意識すると、情報が伝達される事が分かったのだ。
 例えば二人して数学の公式について意識すると、それが伝わるという案配である。
 さらにそれは覚えようとせずとも頭に残るため、勉強と同じ効果、いや、勉強するよりも効率的に覚える事が出来た。
 つまり柚華とセックスをすると受験勉強にもなるという事になり、それは神治にとって何とも喜ばしい状況だった。
「あっ、ああっ……いいっ、いいっ、いいぃっ……それいいよぉっ……」
 神治が思い切り突き上げると、柚華は頭を仰け反らせて悶えた。
 後ろに手を付きつつ、突き込まれる肉棒の感触に浸っているのが分かる。
「あぁっ、凄い、あっ……何て綺麗、あっ……緋道くん綺麗だよぉっ、凄い、凄いぃっ……」
 柚華は神治をうっとりとした目で見つめながら甘く喘いだ。
 こうして快楽に浸っている柚華の目には、どうやら神治が光り輝いて見えるらしい。
 それも単に光っているのではなく、畏れを抱かせるような感覚があり、さらには心に気持ちの良さが広がる感覚があるのだそうだ。
 それは満里奈や美子にも言われている事であったため、神性による効果なのだろう。
 神治の中にある神性は、セックスをする事で、特殊な能力のある女性達に強く伝わっているらしかった。
「ああんっ、あっ、ああっ……やぅっ、やっ、やぁっ……」
 ギュッと抱き締められたため、そのまま後ろに押し倒し、上から強く肉棒を突き込んでいくと、柚華は頭を左右に振って激しく悶えた。
 こうして制服をはだけた柚華を押し倒していると、何とも嗜虐心をそそられ、たまらない気持ちが湧き起こった。
「あっ、あっ、ああっ……激し、あっ……激しいよ、あぁっ……激しいのぉっ……」
 興奮した神治が腰の動きを早めると、柚華は涙を流しながら悶え狂った。
 スカートから健康的な太ももが伸び、腰に絡みついてくるのが可愛らしい。
 やはりこうして制服姿で抱くのは、裸でする時とは違った興奮があって良かった。
 元々制服姿でするのは好きだったが、緋道村の中学の制服姿ばかり抱いていたせいか、デザインの違う柚華の制服姿は新鮮だったのだ。
「あんっ、あんっ、ああんっ……わたしもう、あっ……わたしもう駄目、あぁっ……緋道くんもう駄目ぇっ……」
 軽く握った手を口に当て、柚華は頭を左右にブンブンと振った。
 その様子は実に可愛らしく、また発せられる声が神治の快感神経を強烈に刺激したため、一気に射精感が高まっていく。
 最近はこうして柚華が絶頂に近づいた時の声というのが分かり、それに合わせて射精感を無意識に高める事が出来るようになっていた。
 そういう意味で自然にお互いが高まり合えるという点でも、神治は柚華とのセックスを気に入っていたのだった。
「はぅっ、はっ、はぁっ……いいっ、いいっ、いいぃっ……もうイく、あっ……もうイくよ、あぁっ……もうイっちゃうのぉっ……やっ、やっ、やぁあああああああっ!」
「うぅっ!」
 ドピュドピュッ、ドクドクドクドクドクドク……。
 精液が勢い良く放出され、脳に強烈な快感が走り抜ける。
 それと共に情報が流れ込んできたため、神治は快感と情報の渦に意識を朦朧とさせた。
 今回は英語の情報のようで、文法についての知識が増えていくのが感じられた。
 しばらくして射精を終えると、それと共に情報の流入も止まる。
 普通のセックス以上の疲れを感じつつ、神治はゆっくりと柚華の体の上に倒れ込んだ。
 温かで柔らかな肉の感触にうっとりしながら、荒い呼吸を整えていく。
「これで英語は大丈夫、かな?」
「前にもらったのと合わせれば、大丈夫だと思う」
「良かった……んっ……」
 柚華は嬉しそうに笑うと、軽く口付けてきた。
「それにしても、俺ばかり何か得しちゃってる感じがして申し訳ないなぁ。何かお礼させてよ」
「何言ってるの。私はもっと凄いもの貰ってるよ。緋道くんに抱かれていると、すっごく気持ちいいし、凄く綺麗な姿が見られるんだから。あれってどんな映画よりも感動的だよ」
「そうなんだ。俺は自分で見られないからよく分からないんだよね」
「だから私は得してるの。緋道くんには、その素晴らしい体験を何度も何度もさせてもらってるんだから」
 そう言われると何とも困ってしまう。
 自分としては、ただセックスしているだけなのだから。
「そういう事だから、その……もし別々の高校に行くことになったとしても、こうやって抱いて欲しいなぁって……」
「え?」
「私、緋道くんに抱かれないなんて、もう考えられなくなっちゃったから……何でもするから……お願い、これからも抱いて……」
 すがるように見つめてくる潤んだ瞳と、甘えるように告げてくる可愛らしい声で頼まれては断れる訳がなかった。
 というか、そもそも神治には断るつもりなど全く無かったのだが。
 最近の柚華は、こうした態度を神治に示してくる事が多くなった。
 セックス中はもちろんの事、普段も何くれと世話を焼くようになっていたのだ。
 この間など、夕食を食べていって欲しいと言われ、柚華の手作り料理を食べたのである。
 その様子は満里奈を彷彿とさせ、柚華の心が神治に染まり始めているのを実感させた。
 柚華はすでに自分の物なのだ。
 そう想うと肉棒が激しくいきり立つ。
「もちろん抱くよ。俺だって須田さんとのセックスって気持ちいいし」
「本当?」
「ああ、本当さ」
「良かった……」
 本当に安心したように息を付く柚華の様子に、激しい愛おしさを覚える。
 ここまで自分に執着を抱いてくれるなど、男冥利に尽きるだろう。
 しかも相手は可愛らしく、気持ちのいい肉体をした女の子なのだ。
 それが自分の物……。
 神治の肉欲は激しく高まった。
「それじゃ、もっと安心してもらえるように、もう一回しようか?」
「うん、お願い……」
 うっとりと目を閉じる柚華の表情は何とも色っぽく、さらに囁いてくる声が肉棒に刺激を与える。
 神治は抑えきれなくなった興奮に鼻息を荒くすると、桜色の可愛らしい唇に吸い付き、豊満な乳房を強く揉みしだいていった。
 白い肌が上気し、甘ったるい吐息が漏れるのがたまらない。
 もう何度も抱いて、すっかり慣れはしたが、まだまだ抱き足りない柚華の体にのし掛かると、神治は痛いほど勃起した肉棒を、己の物である膣穴へと押し込んでいくのだった。












あとがき

 今回は凄く難産でした。
 普段はネタが決まって書き始めると、後はやる気と時間の問題だけになるのですが、今回は書いている途中で「駄目だ」となる事が何度もあって、何度も何度も書き直す羽目に。
 書いても書いても気に入らず、途中で「このネタどうしよう。止めるか」と思ったくらいだったんですよね。
 これだけ苦労したのは初めてでしたわ。
 取り合えず何とか書き上げられたので、ホッと一安心です。

 内容的には、神治がまたちょっと変な風になってますが、まあ人間、色々変わるものですからOKって事で。
 何やら人を支配したがる危ない思考になってますけど、そこはそれ中学生ですし、特殊な力を持った中学生なら、そういう方向へ行っても不思議じゃないよなぁ、と。
 とはいえ、結局ラブな展開に落ち着いたので、果たして本当に支配したがっているのかは怪しいところですが(笑)
 まあ、あの年頃だと、支配とラブのどちらを取るかと言ったら……。
 やっぱりラブなんじゃないかなぁ、と(笑)
 柚華も「恋愛の好きじゃない」とか言ってますが、本当にそうなんだが怪しいものですしね。
 そう誤魔化して、実は凄く惚れていたりする可能性は高い訳ですよ。
 恋愛とそうじゃない状態ってのは、どう違うのか。
 難しいものですなぁ。
(2010.4.9)

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