緋道の神器


        第二十九話  人妻の誘惑



 静のマンションの近くを、神治は満里奈と歩いていた。
 夕飯の材料を買いに行った帰りなのだ。
 満里奈は毎日のように静のマンションへやって来て、家事を色々としてくれており、今日も夕飯を作ってくれる予定だったのである。
 それらは全て「神治の世話をしたい」という気持ちから行われている事で、普通であれば嬉しい事だろう。
 何しろ満里奈は美人であり、そんな女性に好意を持たれているだけで喜ばしい事だったからだ。
 だが満里奈の想いは恋愛的な好意とは違っていた。
 神治を神のように崇拝している雰囲気があったのである。
 実際神治は神であるためそれは間違っていないのだが、人間としての意識が強い神治としては、何とも座り心地の悪い想われ方でもあった。
 以前はそれでも何とか受け入れていたのだが、最近は満里奈の事を性的な意識で見てしまうようになっていたので困っていた。
 ずっとセックスに対する意欲が減退していた神治だったが、少し前に知り合った美子との関わりにより、そうした意欲が回復していたのだ。
 ゆえに魅力的な満里奈に対して、セックスをしたくなる気持ちが沸々と起きており、本来なら抱いてしまう所であったが、緋道村の住人ではない満里奈を性欲だけで抱くわけにはいかず、困っていたのだった。
 無論、満里奈が望めばするのはやぶさかではないのだが、何故か満里奈はそうした素振りを見せないのだ。
 そもそも満里奈は、自分がセックスをしたくなれば相手をその気にさせる特殊な力の持ち主であったため、神治が抱かないでいられるというのは、満里奈が望んでいない証でもあった。
 その事が「満里奈は自分とのセックスを望んでいない」という想いを持たせ、余計抱く事を躊躇させていたのである。
 とはいえその事を本人に聞くのもはばかれ、どうしたものかと困っていたのだった。
「どうしたんですか神治くん。何だか元気がないですね?」
「い、いえ、別に何でもないですよ」
 黙ったまま考え込んでいたせいか、満里奈が声をかけてきた。
「悩みがあったら言って下さいね。私に出来る事なら何でもしますから」
 ニコリと微笑む満里奈の姿に、ドクンっと心臓が跳ねる。
 以前そうした会話の流れからセックスに至ったからだ。
 最近全く抱いていない満里奈の体の気持ちの良さを思い出した神治は、思わずその豊かな胸の膨らみを見てしまった。
「そう言えば神治くんって、もうすぐ受験ですものね。悩んでるのって受験関係の事ですか?」
 だが満里奈はその事に気づかず、普通に思いついた事を言ってきた。
 ここで満里奈が意識すれば、またセックス出来るのではないかと期待していた神治は、少々拍子抜けしてしまった。
 変なところで勘が鋭い割に、こちらが期待しているとそれを外したりするのが満里奈なのだ。
 とはいえ、実際にセックス出来なくとも、セックスをしたくなる気持ちが起きている事だけで神治は嬉しかった。
 何しろ以前はこうした気持ちすら起きなかったのだから。
「まあ、そんなとこです……」
 内心のいやらしい想いを誤魔化すように、神治は真面目な感じでそう答えた。
 実際受験に関しても悩んではいたのだ。
「そうですよねぇ。高校受験って一大イベントですもんね。私も昔そうでした。どこにしようか色々悩みましたよ」
 満里奈は目を瞑ってウンウン唸りながらそんな事を言っている。
 その際に腕組みをしたせいか、豊満な胸がより強調されて何ともいやらしかった。
 そしてそう感じられているのは、セックスに対する意欲が回復している証であり、神治はその事に喜びを覚えた。
「候補はもう決まっているんですか?」
「え? ああ、まあボチボチと……でも最近ちょっと考える事がありまして、ここら辺にある高校で、どこかいいところがないかなぁ、とか思ってるんですよ」
 本来神治は緋道村の高校へ進学するつもりだった。
 だが東京で暮らすようになってから、緋道村に籠もっているより、出来るだけ外の雰囲気に関われる状況を作った方が良いのではないかと思う様になっていたのだ。
 何しろセックスに対する意識が薄れたのも、村の閉じられた雰囲気のせいだった様に思えていたからである。
 セックスに対する意識がある程度回復した現在もこちらで暮らしているのは、再び同じ状態になるのを怖れているがゆえだった。
 そのため「高校へ通う」という事を理由にし、このままこちらで暮らしたかったのだ。
「ここら辺ですかぁ。沢山ありますもんねぇ」
「そうなんですよ。多くて絞り込むのに苦労してます。何か選ぶポイントでもあればいいんですけど」
 自分の偏差値に合っている高校だけでもかなりの数があったため、そこから選ぶのが結構難しかったのだ。
「やっぱり説明会とかに行って、実際に学校の雰囲気を見た方がいいと思いますよ。案外そういうので決められたりしますから」
「なるほど、説明会ですか……」
 これまで地元の高校しか頭になかったため、そういった発想はなかった。
 今度行ってみるのもいいかも知れない。
「そうですね、調べてみます。アドバイスありがとうございました」
「いえ、お役に立てて良かったです。ふふ、神治くんが喜んでくれて嬉しいです」
 満里奈はうっとりとした表情でこちらを見ている。
 それは一見恋愛的なものに思えるが、今の満里奈の自分に対する想いから考えると崇拝的なものに思えたため、神治は少々辟易した。
 満里奈はどうにも自分をまさしく神として崇めている雰囲気があるからである。
 その事にどうしても慣れないのだ。
 とはいえ、最近はそうした視線にもある程度慣れてきてはいたのだが。
 何故なら満里奈以外にも、似たような目で見てくる人間が出来たからだ。
「あ、宇宙人くんだっ。宇宙人くぅ〜〜ん、やっほぉ〜〜いっ」
 そんな事を思った瞬間、まさにその当人の素っ頓狂な声が聞こえてきたためギョッとなった。
 声のした方へ視線を向けると、ヒラヒラの沢山付いた白いブラウスに、これまたヒラヒラした灰色のスカートを身に付けた美子が、走ってこちらへ近づいてきているのが見えた。
「わぁ、凄いですねぇ。あれって凄い服です。可愛い。可愛いです……」
 満里奈は一瞬驚いた表情をしたが、何やら嬉しそうな顔をして美子を見つめている。
 美子の着ているロリータファッションは、一般的に受け入れがたい服であったのだが、どうやら満里奈には抵抗がないらしい。
 目をキラキラさせて見ている点からして、結構気に入っているのかも知れない。
「宇宙人くん、偶然だねぇっ。外で会うなんてビックリだよっ。まさに神の力っ? 大いなる意志っ? 宇宙人くんが美子ちゃんに会いたいって想いが、時空に作用してこの運命的な出会いを作り上げた訳だねっ。さすが宇宙人くんだよっ。美子ちゃん感激っ」
 美子は大きく腕を振りながら、服に付いたヒラヒラを揺らしまくって叫んでいる。
 通行人が何事かと眺めているが、特に立ち止まる事もなく歩き去ってくれているのがありがたかった。
「何言ってるんだよ。同じマンションに住んでるんだから、マンションの近くで会ったって別に大した事じゃないだろ。大体これで何度目だよ外で会ったの」
「ブッブッ〜〜。それは間違ってるよっ。美子ちゃんと宇宙人くんとの間に大した事じゃない事なんて無いんだからっ。実際二人の出会いからしたって突然の衝撃だったしっ。今思い出してもあれは凄いよねぇっ。今度またやって見せてよっ。よく考えたらあれ以来見せてもらってないからっ。って、それよりこの美人で美女て綺麗で素敵なお姉さんは一体誰なのかなっ? 神治くんの恋人っ? うわっ、美子ちゃんショックっ。大親友に恋人が出来ていた事を知らなかったなんてっ。そんなの一大事だよっ。世界が崩壊するよっ。どうしてくれるのっ?」
 瞬間移動の事を口走るのではないかとハラハラしていると、どうやら満里奈の事に興味が移ったようなので、ホッとしながら息を吐き出す。
「別に恋人じゃないよ。この人は小原満里奈さんと言って、しずねぇと同じ大学に通っているんだ」
「なるほどぉ、静お姉さんと同じ大学に。むむぅん、あの大学は選考基準に美人度の偏差値でもあるかいなりや。何で美女が二人もいるなりや。それともあの大学へ通っていると美人になれるのかなぁ。だったら美子ちゃんも絶対その大学に行こうっと」
 訳の分からない事をブツブツ呟いている美子から視線を移すと、満里奈が呆気に取られた表情をしているのが見えた。
 そして神治の視線に気づいたのか、こちらに目を移したかと思うと、ギョッとした様にして体を硬直させている。
「どうしたんですか?」
「こ、神治くんって……そ、その……う、宇宙人だったんですかぁ……?」
「は……?」
 何とも予想外すぎる質問に、神治は固まった。
「って、何でですか。何で宇宙人になるんです?」
「だってこの女の子が神治くんのこと、宇宙人って……私、それを言われて納得したんです。神治くんが凄いのって、地球人じゃなかったからだって。高次元の存在である宇宙人だからだったんだって……」
 何やらつい最近聞いたような単語を耳にした神治は、脱力して肩を落とした。
 そう言えば満里奈も、何気にそういった方面の知識は豊富だったのだ。
「おおっ、高次元っ。そうっ、宇宙人くんはただの宇宙人じゃないのですっ。高次元の凄い宇宙人なのですっ。高次元だけに名前も神治なのですよっ。凄いですねお姉さんっ、そこまで分かるのですかっ」
 つまらない洒落を混ぜながら、美子は感動したようにして満里奈に近づいている。
「あ、あなたも、神治くんが凄いって分かるんですか?」
「ええ、もちろんですっ。宇宙人くんは凄いのですっ。何しろ神ですからっ」
 そう言い切った美子の言葉に神治は恥ずかしくなった。
 こんな道端で、神だの何だの大声で話しているのはあまりに変すぎるからだ。
「……ああ……やっぱり……分かる人には分かるんですね……神治くんは、神……そうです。神ですよ……」
 だが満里奈は美子の言葉に感激した様にして、ゆっくりとこちらに視線を向けてきた。
 元々満里奈は神治を神のようにして見ていたため、そうした状態は今更ではあったのだが、実際に言葉にして神として認識されると、何やら今までに無い力強さを視線に感じた。
 モヤモヤしていた物が形となってぶつかってきたような感覚があったのだ。
「あの、お名前は何て仰るんですか?」
「美子ちゃんは、伊部美子って言いますっ。宇宙人くんの隣の部屋に住んでいるんですよぉっ」
「そうなんですかお隣に……私、嬉しいです。私と同じように神治くんの事を感じる人が居たなんて……」
「美子ちゃんも驚きましたっ。そんで嬉しいですっ。お姉さん、お友達になって下さいっ」
「ええ、喜んで。宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくですっ」
 二人は大きく頭を下げ合うと、見つめ合って嬉しそうに笑った。
「そうそう、これから夕飯を作るんですけど、美子ちゃんも良かったら一緒にどうですか? いいですよね神治くん?」
「え? あ、別にいいですけど……」
 美子は静とも仲が良かったし、静が嫌がる事は無いだろう。
「おおっ、夕飯ですかっ。美人のお姉さんが作る夕飯っ。それは凄く食べたいですっ。お呼ばれしますっ」
「ふふ、じゃあ腕によりをかけて作りますね。美子ちゃんと仲良くなれた記念ですし」
「記念っ。記念はいいですねぇっ。美子ちゃん大好きですっ。記念万歳ですっ」
「そうですね、記念万歳です」
 まだ出会って数分しか経過していないというのに、二人は何とも仲の良さそうな雰囲気で会話を続けている。
「あ、俺、ちょっとジュース買って行きますから……」
 その様子に何やら気の抜けた神治は、そう言って二人を先に行かせると、少し意識を切り替えようと、近くの自販機でジュースを買って飲んだ。
(まさかあの二人があんなに仲良くなるなんてねぇ……)
 まあ、どちらも性格は悪くないし、似たような感覚で神治の事を見ていると分かれば、気が合って当然かも知れない。
 何にせよ仲が悪くなるよりはよほどいいだろう。
 ただ自分の事を神として見る人間が仲良くなったというのは、別の意味で色々ありそうな気がして憂鬱ではあったのだが。
 そんな事を考えつつジュースを飲み終えると、神治はマンションのエレベーターホールへと入っていった。
「あ……」
 すると不意に女性の声が聞こえると共に、物が落ちる音が盛大に響いた。
 どうやら先にエレベーターホールに居た女性が、買い物袋から物を落としたらしい。
 丸いものが多かったのか、あちらこちらへ転がっている。
「あ、手伝います」
 神治がそう言いながら拾い始めると、その女性は「済みません」と言って軽く頭を下げた。
 少しして全ての物を拾い終えると、そのまま女性と一緒にエレベーターが来るのを待つ。
「本当にありがとうございました。助かりました」
「いえいえ……」
 改めて礼を言ってくる女性に軽く応えつつ、神治は内心ドキリとしていた。
 何故ならその女性がかなりの美人だったからだ。
 年齢は二十代後半だろうか、肩まであるウェーブの掛かった髪に、形のいい胸の膨らみと、キュッと締まった腰が何ともそそる感じだった。
 今までこのような女性がこのマンションに住んでいたとは気づかなかったが、今後は注意しておこうなどと思う。
 そんな事を考えつつ、やって来たエレベーターに乗ると、女性は神治が住んでいる部屋の一つ下の階のボタンを押した。
 神治が続けて自分の階のボタンを押すと、女性は「あら、一つ上なんですね」と言いつつ笑みを見せた。
 それに対し「そうなんですよ」と答えながら神治も笑った。
 何とも意味の無い会話だったが、これが近所付き合いというものだろう。
 その後は特に何か会話するでもなくエレベーターが女性の目的の階に着き、扉が開いた。
「ありがとうございました」
 女性は最後に再び礼を言うと、エレベーターを降りていった。
 何もせずに別れたのは少々寂しかったが、同じマンションに住んでいるともなればまた会う機会もあるだろう。
 別にその女性に対して何かしたい訳ではなかったが、やはり美人とは仲良くなっておきたいため、神治はそんな事を思うのだった。


 それから神治は、その女性とエレベーターホールでちょくちょく会うようになった。
 神治が学校から帰ってくる時間に、女性の買い物の時間が合っているらしいのだ。
 とはいえ以前は会わなかったのだし、エレベーターを待つ短い時間にこれほど頻繁に会うというのは、偶然にしては奇妙な事ではあったのだが。
 まあ、偶然というのは得てしてそういうものなのかも知れない。
 何より短い時間とはいえ、美人と密室で二人きりになれるのは嬉しく、神治はその偶然に喜びを感じていた。
 そうして何度か会うようになる内に、女性との関係は軽い挨拶をする間柄から世間話をする間柄までに変わっていた。
 数分とはいえ、毎日のように会うのだから当然だろう。
 その女性、名前は江宮翔香(えみやしょうか)と言うのだが、美人であるのに加え、服の上から見てもなかなかに抱き心地の良さそうな体つきをしているのが、神治としては嬉しい要素だった。
 特に豊満な胸の膨らみをチラチラと横目で見る行為が、ちょっとした楽しみになっていたりしたのだ。
 まるで初心な童貞時代に戻ったかのように、翔香の胸を見てしまうのである。
 この限られた時間、そしてそうそう手を出せない相手、というのが興奮を高めているのかも知れない。
 実際翔香は最近結婚したばかりの新婚であり、そんな相手とセックスするなど、一般社会ではマズい事だという認識がそれを助長しているのだろう。
 しかしその「抱いたらマズい」という想いと、実際に抱けない状態が余計に興奮を高めるのか、神治にとって翔香とのひとときは、何とも言えない精神的な興奮があったのだった。


「神治くん、こんにちは」
「あ、こんにちは」
 今日もエレベーターを待っていると背後から挨拶の声が聞こえてきたため、振り返るとそこには翔香が立っていた。
 近づいてくる翔香の胸元は体の動きに合わせて微妙に揺れており、それが何とも言えないいやらしさを感じさせる。
 神治はそれを少しの間見た後、慌てて視線を反らした。
 最近性欲が戻ってきているせいか、どうにもあからさまに女性を性的対象として見てしまうのだ。
 それは緋道村では問題の無い行為だったが、一般社会でしては嫌がられるだろう。
 せっかく翔香と仲良くなれたというのに、そんな事で嫌われたくはなかったのである。
「今日はちょっと多く買っちゃった。あそこのスーパー安売りしてたから」
 だが翔香は特に気にした様子もなく、そう言ってきたためホッとする。
「ありますよねそういうの。安いと買わないのが損みたいな感じがして」
「そうそう、そうなのよ」
 何気ない会話をしつつ、時折視線を胸元へやり、柔らかそうな膨らみが見える事に喜びを覚える。
 この抱けない相手の肉体を視姦するという行為が、神治にとって新鮮な興奮だった。
 接触せんばかりに近くにいるのに手を出せない状況。
 そして手を出したらマズい、出す訳にはいかない、と想いつつ、視線だけは舐めるように動かすのが良かったのである。
 こうした翔香に対する行為が、回復しつつあるセックスへのやる気に対するリハビリになっている様に思えていたのだ。
「そういえば、さっき急にDVDが見られなくなっちゃったのよね」
「え? 壊れたんですか?」
 不意に変わった話題に意識を戻しつつ、少し上にある美しい顔に視線を向ける。
 翔香は神治より頭一つ分くらい背が高く、女性にしては長身だったのだが、その事も神治が惹かれている要素の一つだった。
 落ち着きと華やかさ、そして内から溢れてくる色香があり、それが若奥様という雰囲気を作り出していてたまらなかったのだ。
「う〜〜ん、多分壊れてないとは思うのよ。ちょっとテレビの裏を掃除する時に、コードを引っかけちゃって、それが抜けただけみたいだから」
「それならコードを刺せばいいんじゃないですか?」
「それがどこに刺せばいいのか分からなくて」
 翔香は困ったように呟いている。
 電気製品が苦手な人によくある理由だった。
 神治にしてみると、何故このくらい試してみないのかと思える事をしないのだ。
 きっと翔香もそういうタイプなのだろう。
「良かったら俺が見てみましょうか? 単にコードを刺すだけなら分かると思いますから」
「え? 本当? でも悪くないかしら」
「いえいえ、そんな大変な事じゃないですから」
「そう? じゃあ頼んじゃおうかなぁ」
 翔香はそう言うと嬉しそうに笑った。


「うわ、凄いですねこれ……」
 翔香の部屋へ入った神治は驚いていた。
 何しろ居間に大きなテレビがあったからだ。
 60インチはあるであろうそのテレビの周辺には、これまた大きなスピーカーが置かれてある。
 どうやらホームシアターになっているらしかった。
 そして脇に置いてある棚には、山のように映画のDVDがあった。
「映画が好きだから……つい、ね。衝動買いしちゃった」
 翔香は恥ずかしそうに言いつつも、嬉しそうに呟いている。
 だが一口に衝動買いと言っても、これはかなりの量だった。よほどの映画好きなのだろう。
「それで抜けたっていうコードは……ああ、これですか」
 テレビの背後に回って覗いてみると、確かに抜けているコードがあった。
 元々どこに刺さっていたのかは分からなかったが、刺せる箇所は見れば分かるので、取り合えずそこに刺してみる。
「これで映りませんかね?」
「ちょっと待ってね、今電源を入れてみるから……あ、映った、映ったわ。ありがとう」
 翔香は嬉しそうに笑っている。
 どうやら解決出来た事にホッとしつつ、神治は翔香に喜んでもらえた事に嬉しさを覚えた。
「それじゃ俺はこれで……」
「ちょっと待って、今ケーキを出すから食べていって、ね?」
「え? でもそんな……」
「直してもらったお礼だから」
「直したって、コードを刺しただけですよ」
「でも神治くんがしてくれなかったら、電気屋さんを呼んでたもの。そうしたら高い料金取られてたんだから。そう思えばケーキ代なんて安いし。ね、食べていって?」
 そこまで言われると断りにくかった。
 それにもう少し翔香と一緒に居たいという気持ちもあったのだ。
「それじゃ、いただきます」
「わ、良かった。じゃあ、ちょっと待っててね。用意してくるから」
 そう言うと、翔香はいそいそとキッチンの方へ向かっている。
 何やらやたらと嬉しそうなため、ケーキを食べる事を了承して良かったと神治は思った。
(あ、これ……観たかったやつだ……)
 待っている間、何気なくDVDの入っている棚を見ると、以前から観たいと思っていた映画があるのに気づく。
(いいなぁ、ちょっと借りられないかなぁ。う〜〜ん、でもそこまで親しいって訳じゃないし……)
 などと思っていると、トレイにケーキと紅茶を乗せた翔香が戻ってきた。
「あ、もしかして観たい映画があるの? 良かったら観ていっていいわよ?」
「え? いや、そこまでしてもらっちゃ……」
「別に私は迷惑じゃないし、構わないから」
「でも……」
「遠慮しなくていいから。それにホームシアターで映画観た事ある? 凄くいいのよ。ちょっと観てみない?」
 そう言われると興味がそそられた。
 確かに一度ホームシアターで映画を観てみたかったのだ。
 そういう意味でこれはいい機会かも知れない。
「それじゃ、お言葉に甘えて」
「そう、良かった。それじゃ、好きな映画を選んでね?」
「ありがとうございます。実は前から観たかったのがあるんですよ」
 神治は嬉しくなって、先ほど目に留まったDVDを棚から取り出した。
 それを手渡すと、翔香は慣れた感じでDVDレコーダーに入れている。
 神治は慌ててテレビの前のソファに腰掛け、テレビ画面に見入った。
 少しすると巨大なテレビ画面から美しい映像が流れ始め、周囲から音が聞こえてくる。
「うわ、凄いですね。音が凄い……」
 いつもは前方からしか聞こえてこない音が、前後左右から聞こえてくるのが何とも新鮮な経験だった。
「でしょう? 一度これで観ちゃうと、もう普通のじゃ物足りなくなっちゃうのよねぇ……」
 翔香は神治の驚いた様子に嬉しそうに笑みを浮かべつつ、テーブルにケーキを置いて紅茶を淹れている。
 その姿を横目で見つつ、目の前で流れていく美しい映像、そして前後左右から響く迫力のある音に魅了されながら、神治は初めて体験するホームシアターでの映画鑑賞を楽しんでいくのだった。


 それからと言うもの、神治は翔香の部屋を訪れて一緒に映画を観るようになった。
 彼女の所有しているDVDはかなりの数であったし、神治が観たいと思っていた映画や、ホームシアターの状態でもう一度観てみたい映画が結構あったからだ。
 翔香もエレベーターホールで会うたびに、「今日は観ていかないの?」と誘ってきたため、ついそれにのってしまったのも理由の一つだった。
 迷惑ではないかと思ったりもしたのだが、「一人で映画を観るのはつまらないから、一緒に観てくれると嬉しいの」と言われ、実際に嬉しそうにしている翔香の様子を見ている内に、徐々に遠慮も消えていった。
 そうしてちょくちょく翔香の部屋へ行くようになったのだが、ある時から少々困った事になっているのに神治は気がついた。
 何かと言えば、翔香の服装だった。
 最初の頃は普通だったのだが、しばらくしてから次第に大胆なものになっていったのだ。
 エレベーターホールで会う時には普通の服であったのが、部屋へ行くと胸元が開いていたり、太ももが見えるようなものに変わっているのである。
 その事自体は目の保養になるため嬉しかったのだが、問題なのは映画を観ている間に、翔香がやたらと体を接触させてくる事だった。
 神治のすぐ近くに腰掛け、体を動かすたびに微妙に触れてくるのだ。
 始めは何気ない感じの接触だったのが徐々に大胆になり、映画を観ている間中、太もも同士が触れ合った状態の時もあった。
 最近では胸を押しつけてくる事もあり、そうした事から神治を性的に誘っているのは明らかだった。
 緋道村ではない一般社会で、翔香のような大人の女性が、自分のような子供を誘ってくるのは予想外であったし、何より結婚している身で、夫以外の男を誘うというのが驚きだった。
 とはいえ、そうした道徳的な要素を除けば、すでに女性の性欲について理解のある神治としては、翔香が欲求不満状態であるのが分かった。
 おそらく夜の夫婦生活が上手くいっていないのだろう。
 翔香の夫は一流企業に勤めており、忙しくて帰りが遅いらしく、そのせいでセックスがご無沙汰になっているのは十分に推測出来たからだ。
 何より以前から色々話をしているが、夫の話題を翔香の口から聞いた事がなかった。
 別にノロケを聞きたい訳ではなかったが、不自然なほどに夫に関する話を翔香はしなかったのである。
 以前夫の事を尋ねた時に、一瞬悲しそうな表情をした点からしても、上手くいっていないのは事実のように思えた。
 誘惑してくるのは、その鬱憤を神治を相手に晴らそうとしているのではないだろうか。
 中学生相手であれば大事にはならないと思っているのかも知れない。
 神治を少しからかって、動揺する様を見て楽しんでいるように思えたのだ。
 実際神治が反応を示すと、翔香が嬉しそうにしているのが感じられたのである。
 もしそういう事であるのなら、こちらもそれに合わせるのが、無料で映画を観せてもらっている礼になるのではないかと思った神治は、出来るだけ中学生らしい初心な様子を装いつつ、翔香の誘惑に反応を示していった。
 元々こうして年上の女性に誘惑されるのは好きだったし、そうしていると、何やら伯母との初体験を思い出して楽しくもあったのだ。
 何よりセックスに対する意欲が回復してきていただけに、初体験時の興奮が蘇るのが、リハビリとしても良いように思えたのである。


「あ……」
 そんな事を続けていたある日、いつもの様に映画を観ようとしていると、不意に翔香が神治の股間に紅茶を零した。
 その何とも言えない状態に苦笑する。
 何故なら淹れたてであるにも関わらず、その紅茶はやたらとぬるかったからだ。
 どう考えても神治の股間に零すために用意していたとしか思えないだろう。
 そして何故そんな事をしたかの理由は明らかだった。
「ごめんなさいね。今拭くから……」
 翔香は慌てた様子でタオルを持つと股間に触れてきた。
 前屈みでそうしているため、服の胸元から豊満な乳房を覗き見る事が出来、さらにはグイグイ股間を押された事により、肉棒は硬く大きくなった。
「!……」
 その瞬間、翔香の鼻から一瞬強い呼吸が漏れ、興奮しているのが分かった。
 どうやら本格的に誘惑してきているらしいのだが、あまりにベタな方法である事に神治は可笑しくなった。
 今まで自分が経験してきた性的な誘いと言えば、あからさまな行為である事が多かったため、こうしたやり方は新鮮であり、それが何とも初々しさを感じさせたのだ。
 人妻と言えど、男を誘惑するのに慣れているとは限らない訳で、実際翔香はベタなやり方をしているくらいだから、今まで男を誘惑した経験は無いのだろう。
 それが何とも可愛らしかった。
 とはいえ、この後もし直接的な行為をしてきたらと思うと、気楽にしてはいられなかった。
 欲求不満な女性が襲ってきた場合、かなりの迫力がある事は知っていたし、それに流されず対処出来る自信は無かったのだ。
 性行為をして満足させる方法は知っているが、性行為をせずに諦めさせる方法など知らなかったのである。
 今までであれば、いくら欲求不満になっているとはいえ、翔香が襲ってくる心配は無かった。
 理性を保ちつつ、初心な少年を誘惑する事を楽しんでいる雰囲気があったからだ。
 だが今の翔香は違っていた。
 目は強い肉欲の籠もった光を発しており、吐き出す吐息には性的な熱さが感じられた。
 それはかなりの性的な興奮、それも我慢できないほどの状態になっているのを示していた。
 間接的とはいえ、肉棒に触れた事が原因かも知れない。
 そうなると、この後翔香がセックスの誘いをしてくる可能性は高かった。
 それは非常にマズい事だろう。
 ここが緋道村であれば問題はなかった。
 今の翔香との関係であれば、十分セックスをするほどの親しさだったからだ。
 しかしここは一般社会であり、さらに翔香は人妻だった。
 セックスをしたとなれば、自分は不倫になり、翔香は浮気をした事になる。
 そんな事をしたくはないし、させたくもなかった。
 純粋に気持ちだけであれば翔香を抱きたくはあったのだが、それも安易に性欲に流されているように思えて嫌な感じはあった。
 何より最近までセックスをする気力が無くなっていたのに、戻り始めた途端、人妻と不倫するなど、あまりに節操が無さ過ぎるだろう。
 せめて自分の事を待ちわびている家族を十分に満足させてから、そういった事はすべきだと思っていたのだ。
 ゆえに翔香とはセックスをする訳にはいかないため、ここは何とか翔香の気持ちをそらす必要があった。
「中も濡れているかも知れないわ。脱がせるわね?」
 だがどうやってそうするべきか思いつく前に、翔香は弾んだ口調で言いながら、こちらの返事を聞かずにズボンを脱がし始めた。
 そのままパンツの上からタオルを押し当て、徐々に肉棒を掴むようにしながら上下に擦る様にしてくる。
 このままでは直接肉棒に触れてくるのは時間の問題だった。
 早く対策を思いつかなければならないだろう。
「う……」
 そんな事を考えているにも関わらず、翔香に与えられた刺激に思わず快感を覚えてしまう。
 頭では否定しているが、体は翔香を抱きたくなっているのだから当然だった。
 いや、頭も本当は抱きたくはなっていた。
 何しろそれだけ翔香は魅力的な女性だからだ。
「……」
 神治の呻きに興奮したのか、翔香は大きく息を吸い込むと、さらに大胆になり、とうとう「パンツも脱がすわね」と言ってきた。
 これは止めなければならない事だったが、もうこうなったら構わないではないか、という想いも起きていた。
 翔香は欲求不満になっているのだから、それを解消してあげるのも、映画を見せてもらっている事への礼になるように思えたのだ。
「!……」
 ついにパンツが脱がされ、肉棒がブルンっと勢い良く立ち上がると、翔香の息を飲む声が聞こえた。
「こんな元気にしちゃって……辛くない?」
「辛いです……」
 上手くすれば肉棒に触れるだけで満足してくれるかも知れないと思いつつ答える。
 だが一度そんな事をすれば、ズルズルとセックスに移行するのは明らかだった。
 何より神治自身、こうして誘惑されているのが、初体験の時の伯母に誘惑された思い出と重なっていたため、すでに激しい興奮状態になっていたのだ。
「それじゃ、私が……楽にしてあげるね……」
 妖しげな口調でそう呟いた翔香は、肉棒を直接掴んできた。
 温かで滑らかな手のひらにやわやわと揉みしだかれる事により、股間からたまらない快感が這い上ってくる。
 意識せずとも体がピクッと動き、快感の息が口から漏れた。
 人妻に誘惑され、肉棒をしごかれている今の状態に、神治は激しい興奮を覚えていた。
 最近忘れていたが、こうしたシチュエーションによる興奮こそが、セックスにおける重要な要素だったからだ。
 緋道村ではこういう事をしてもあまり背徳感は無いが、一般社会でしているとなると、全く感覚が違っていたのである。
 もし今翔香の夫が帰ってきたらと思うと激しい興奮があった。
 人妻、つまり他の男の物である女性に、今自分は肉棒をしごかれている。
 それは不倫であり、自分が今不倫をしているのだと思うと、精神的な興奮が高まった。
 そして精神的な興奮は肉体的な興奮を強め、神治は激しい興奮状態に包まれていった。
(しちゃマズいんだけど……スゲェしたい……翔香さんと、セックスしたい……)
 もうここまで興奮が高まった以上、止まれるはずはなかった。
 そもそも自分は完全な避妊が出来るのだから、セックスをしたとしても大丈夫なのだ。
 だったらしてしまえばいいではないか。
「ふふ、凄く元気……やっぱり若いのね……」
 神治のそんな想いをよそに、翔香は夢中になって肉棒をしごいている。
 先ほどより顔が近づいて来ており、今にも口に含みそうな勢いだった。
「ねぇ、神治くん……気持ちいい?」
「気持ちいいです……」
 人妻といけない事をしている、といった慣れない感覚が気分を高ぶらせ、神治はまるで童貞に戻ったかのようなドキドキ感を味わっていた。
「じゃあ、もっと気持ち良くしてあげるね……?」
「!……」
 そう言うなり翔香が肉棒を口に含んできたため、神治は思わず体をビクッと震わせた。
 温かな湿った感触が肉棒を包み、柔らかな舌がねっとりと亀頭に絡んでくる。
 さすが人妻だけあり、テクニックはなかなかのものだった。
「んっ……んぐ……んっ、んんぐっ……」
 小刻みに頭を動かし、熱心にフェラチオをしてくる翔香の姿に興奮が高まっていく。
 美人の人妻が、夫ではない自分の肉棒を口に含み、嬉しそうにしているのだ。
 それは何とも背徳的な興奮を呼び起こし、射精感を強めた。
 視線を下に向ければ、首筋まで伸びたウェーブのかかった髪が、動きに合わせて小刻みに揺れているのが見える。
 微かに覗くうなじが色っぽく、すぐにでもむしゃぶり付きたい衝動が湧き起こった。
 つい最近まで忘れていた、女性を無茶苦茶にしたい感覚が起きている事に神治は喜びを感じると共に、もうこうなったら翔香を自分の肉棒で思い切り喘がせてやろうと思った。
 ただ童貞と思われているのだから、そこら辺には気を遣っていかなければならないだろう。
 神治自身、初心な坊や扱いされる事で興奮していたため、その演技を続けることに楽しさを感じていたからだ。
 そして童貞であるフリをしているゆえに、我慢する事なく射精してしまえと思った神治は、そのまま一気に精を放った。
「うぅっ……」
 ドピュッドピュッ、ドクドクドクドクドク……。
 美しい翔香の顔が歪み、自分の吐き出した精液を飲んでいる。
 それは何ともたまらない快感を呼び起こし、神治は何度も射精を繰り返した。
 細い肩に手を置き、強く掴んで「うぅっ」と呻きながら精を放っていくと、翔香が強く吸ってきたため、体をビクビク震わせながら最後の射精を終える。
「……んん……凄く出たわね……気持ち良かった……?」
「はい……こんなの初めてです……」
 実際一般社会の人妻相手にフェラチオをしてもらったのは初めてだったし、そうした背徳的な興奮も初めてだった。
(でも、やっぱりこれって、マズいんだよな……)
 射精したことで冷静になった神治は、何とも言えない罪悪感に包まれた。
 目の前で微笑む翔香の姿は、まさに若奥様といった雰囲気があり、そんな相手の口に射精した事に強烈な罪の意識を感じたのだ。
 だがそれ以上に、「他の男の物である女の口に射精したのだ」という想いが、ゾクリとした快感となってさらに興奮を高めてもいた。
 やはり「いけないこと」というのは、神治にとって最も興奮を呼び起こす状態なのかも知れない。
 何しろ最近では感じられなくなっていた強い興奮が湧き起こっていたからだ。
 肉棒もそれを示すかのように再び硬く大きくなっている。
「ふふ、元気……こんなに元気じゃ、今のだけじゃ足りないわよね?……ねぇ、良かったら……私と、する?」
 それは無論セックスの誘いだろう。
 神治としても、ここまでしたのならもう後戻りをするつもりはなかった。
 何より今感じた罪悪感と背徳感の混じり合った興奮をもっと味わいたかったのだ。
 セックスともなれば、それがさらに強烈になるだろうから、しないではいられなかったのである。
 何より目の前では豊満な肉体が誘うように揺れており、今すぐにでも貪り、その熱い肉壺に己の猛った肉棒を押し込みたくて仕方がなかった。
(翔香さんが俺に夢中になったら、旦那さんはどう思うのかな……)
 自分が本気を出せば、この若い人妻を虜にするのは簡単だった。
 そこまでするつもりは無かったが、してみたい気持ちもあった。
 愛する夫を裏切らせ、自分に夢中にさせる。
 他人の妻を奪う。
 その本来してはならない行為をする事に、神治は危険な誘惑を覚えていた。
 心の奥底で、雄としての本能が、女を奪う快感を求めていたのだ。
「し、します……翔香さんっ……」
 未知の興奮に高ぶりを覚えながらそう答え、勢い良く翔香をソファの上に押し倒す。
「あんっ……駄目よ焦っちゃ。落ち着い、あっ……そんな強く触っちゃ、あんっ……駄目、神治くぅん……」
 童貞っぽく荒々しく体に掴みかかりながら、以前から気になっていた豊満な乳房をギュッと掴み、やわやわと揉みしだきつつ、スカートから伸びる太ももを撫で触る。
 予想していた通り抱き心地の良い翔香の肉体は、十分に満足できる感じだった。
「駄目、あっ……もっと優しく、あんっ……そんな強くしたら、やぁっ……そこをそんな、あぁんっ……」
 否定の言葉を言いつつも、翔香の体は徐々に熱さを持ち始めていた。
 どうやら乱暴にされると興奮する質らしい。
 そう理解した神治は、荒々しくブラウスのボタンを外し、現れたブラジャーを勢い良く引き下ろした。
 雪のように白い肌に覆われた乳房がさらけ出され、その頂点で桜色をした乳首がプクンっと立っているのが見える。
 若い人妻らしく快感に敏感そうなその膨らみは、男に揉まれるのを待っているかのようにプルプル揺れていて何ともいやらしい。
「あっ、んっ……やっ、あぁっ……あんっ……」
 乳房を乱暴に掴み、乳首を強く吸うと、翔香が今まで以上に甘い声をあげた。
 吸い込まれるような感触のある乳房は、力を抜くとすぐに押し返してくる弾力があり、何とも揉むのをやめられない極上の感触だった。
「あんっ、あっ……やっ、神治く、あっ……落ち着い、あんっ……はぁっ……」
 乳房を揉みしだきつつ白い首筋に吸い付き、ペロペロと舐め回す。
 すると翔香が逃げるようにして上へ体を動かしたため、それを追いつつ唇に吸い付いていく。
「んっ……んんっ……んぁっ……んふぅっ……」
 すぐさま舌が絡み付き、口内を刺激してくる。
 こちらも負けじと舌を動かしていると、腕が頭に絡み、翔香が強く抱き付いてきた。
 体が密着し、柔らかな肉の感触が押し寄せてきた事にうっとりとなる。
 この気持ちのいい体を、本来は一人の男が独占しているとは羨ましすぎた。
 だが今自分はその体を抱いているのだ。
 そう考えると何とも爽快な感じがしてくる。
 このまま夫からされているよりも気持ち良くし、自分に夢中にさせてやる。
 どうせ翔香は欲求不満になるほど放っておかれているのだから構わないだろう。
 先ほどは否定していたはずの想いに酔いながら体を起こすと、神治はパンティに手をかけて引き下ろした。
 すでに濡れまくっている秘所は、早く肉棒を入れてもらいたがっているように震えている。
「そこに入れるのよ、神治くん……さ、いらっしゃい……」
 いやらしく誘ってくる翔香の言葉に、神治はコクリと頷くと、ズボンとパンツを下ろして一気に肉棒を押し込んでいった。
「あっ……」
「くっ……」
 ズブズブと肉棒が奥へ進むたびに、膣襞と擦れてたまらない快感が走った。
 翔香の膣は、久々の男を逃がすまいとするかの様に吸い付き、ウネウネと絡みついてくる。
「あっ、んっ……あぁっ……いいっ……おっきぃ、あっ……硬いわぁ……」
 翔香はウェーブのかかった髪を揺らしながら、体を小刻みに震わせて甘い吐息を漏らしている。
 美しい顔は快楽に歪み、唇が半開きになって舌が覗いているのが何ともいやらしい。
 元々色っぽい雰囲気のある女性だったが、こうして肉体を繋いだ瞬間、それが強烈に強まった感じだった。
「あっ、あっ、ああっ……やっ、やっ、やぁっ……」
 その視覚的な刺激に興奮した神治は、勢い良く腰を動かし始めた。
 最近は処女だった相手ばかりを抱いていたせいか、人妻の、セックスに慣れた翔香の体は、久々に味わう大人の女の良さがあった。
 肉棒を強く、それでいて柔らかく包み込んでくる感触には、蕩けるような気持ちの良さがあったのだ。
「ああんっ、いいっ、いいわっ……神治くん、いいっ、いいのぉっ……やっ、やぁっ、はぁんっ……」
 それに加え、見ているだけで興奮してくる痴態がたまらなかった。
 こちらが肉棒で突くたびに白い顎が仰け反るさまがいやらしく、フルフルと柔らかな体が揺れるのが肉欲をそそった。
 そして大人びた口調でこちらを褒め称え、もっとして欲しいと求めてくる声が、年上の相手を征服している満足感をもたらし、腰の動きに力が入った。
「あぁっ、大きい、あっ……太いわ、あんっ……硬くて元気なのぉ、ああっ……こんなの初めてぇ、やっ……凄いぃっ……」
 肉棒に対する直接的な賞賛が何とも良かった。
 今まで経験した事がない快感だという言葉が、自分が翔香の夫より男として優れている証明に思えて誇らしかった。
 自分は翔香の夫より凄いのだ。
 ここまで翔香を気持ち良く、悶え狂わせられるのは彼女の夫ではなく、自分なのである。
 そう考えると嬉しくてたまらなくなった。
「あんっ、ああっ……そんな激しく、やぁっ……そんな激しくされたらわたし、あんっ……おかしく、あっ、おかしくなっちゃう、ああっ……」
 何よりこれは不倫であり、翔香は本来抱いてはならない相手だというのがさらに興奮を誘った。
 その許されない相手をここまで悶えさせているという事に、たまらない背徳的な悦びがあったのだ。
 結婚している女性を、夫の居ぬ間に抱き、激しくよがらせている。
 それはこれまで経験した事の無い興奮を神治に感じさせた。
「あんっ、あんっ、ああんっ……凄いっ、凄いっ、凄いぃっ……わたしもう、あっ……わたしもう駄目、あぁっ……わたしもう駄目なのぉっ……」
 絶頂が近いらしい翔香の言葉に、神治も射精感を高めた。
 これまで以上に腰の動きを速め、強く叩き付けていく。
「やっ、やっ、やぁっ……イく、あっ……イっちゃう、あぁっ……わたしイっちゃうぅっ……あっ、あっ、あぁああああああああああっ!」
「くっ……」
 翔香の絶頂に合わせて神治は精を放った。
 ドクドクドクと勢い良く精液が迸り、膣内に注がれていく。
 心地良い気持ちの良さを味わいつつ、神治は射精を繰り返していった。
 しばらくして力を抜くと、翔香の上に倒れ込む。
「凄いわぁ、神治くん。私こんなに感じたの初めてよぉ……」
 翔香はそう言って抱き締めてきた。
 絶頂後の火照った顔が何ともそそり、大人の色気を感じた神治の肉棒は再び硬くなった。
「あんっ……もう大きくなってる……ふふ、したいのね? いいわよ……」
 いやらしく誘ってくる翔香の言葉に興奮が高まる。
 神治はその柔らかな肉体に勢い良くのし掛かり、再び肉棒を押し込むと、激しく腰を振っていくのだった。


「あっ、あぁっ……あんっ、あんっ、ああんっ……」
 ベッドの上で裸になった二人は正常位で交わっていた。
 一糸まとわぬ姿になった事で、翔香の魅力はさらに増しており、その事に神治は興奮を覚えていた。
 真っ白な肌に包まれた体は、若い人妻らしく弾力がありながらも、こちらの体を柔らかく受け止め、蕩けるような肉の良さを感じさせている。
「ああんっ、あっ……いいの、あっ……いいっ……神治くん素敵よぉっ……」
 腰に脚が絡み付き、逃がすまいとしてくるのに嬉しくなる。
 肉棒を叩き付けるたびに顎を仰け反らせ、涎を垂らして悶えるのがたまらない。
 あれからすでに何度も交わっているが、翔香は今やすっかり神治に夢中だった。
「あっ、凄い、あんっ……こんなの凄い、あぁっ……神治くんのオチンチン、あっ……凄いよぉっ……」
 軽く握った手を口に当て、頭を左右に振るさまが何とも可愛らしい。
 大人の女性の印象があったのが、今やまるで年下の少女のように悶えているのだ。
 それは男として一人の女を征服し、支配している満足感を呼び起こしてたまらなかった。
 何より他人の妻を自分に夢中にさせているのは、激しい興奮を感じさせ、神治自身も翔香とのセックスが楽しくて仕方がなくなっていた。
「そんなにいいんですかっ……俺のチンポって、旦那さんと比べてどうですっ?……どっちがいいですかっ……?」
 もっと確実に翔香を夫から奪っていると思いたくなった神治は、そんな事を尋ねてみた。
「やぁんっ、聞かないで、あっ……そんなこと、ああっ……聞いちゃ駄目、あっ……聞いちゃ駄目よぉっ……」
 その言葉で自分が浮気しているのを思い出したのか、翔香は一瞬困ったような表情をして顔を背けたが、神治が強く突き込むと、すぐにうっとりとした表情に戻ってこちらを見上げてきた。
「どうなんですっ? どっちですかっ? 言わないとやめますよっ?」
 そう言いつつ腰の動きを緩める。
「嫌ぁっ、駄目っ、やめないでぇっ……言う、言うからぁっ……神治くんよ、神治くんっ、神治くんのオチンチンがいいっ。うちの人のより、神治くんのオチンチンがいいのぉっ……」
 その言葉を聞いた瞬間、神治の中に何とも言えない喜びが溢れた。
 一人の女を自分の物にした快感が押し寄せたのだ。
「ふふ、そんなに俺のがいいんですか。じゃあ、沢山突いてあげますね?」
 そう言いながら翔香の体をひっくり返し、今度は後背位の体勢になって、それまで以上に強く大きく腰を振っていく。
「あんっ、あんっ、ああんっ……いいわ、いいっ……神治くんのオチンチンいいっ……太くて硬くて、あんっ……凄いのぉっ……」
 肉棒が突き込まれるたびに、翔香の頭が仰け反り、ウェーブのかかった髪が乱れた。
 膣内も翔香の悦びに合わせるように、キュッキュッと締め上がり、神治の快感も高まっていく。
「あっ、やっ、あぁっ……後ろからだと、あんっ……凄く響く、あぁっ……凄く響くぅっ……」
 眼下で悶え狂う翔香を見ていると、何とも言えない喜びが溢れた。
 美しい人妻は、今や自分の物だった。
 今後夫とセックスをしたとしても、物足りない事になるだろう。
 それだけの快感を与えたからだ。
 本来そこまでするつもりは無かったのだが、他人の妻を奪い取るという行為に、いつの間にか夢中になっていたらしい。
 無意識の内にかなりの淫の気を与えた結果、翔香はすっかり快楽漬けになっていたのである。
「あっ、んっ、あぁっ……いいっ、いいっ、いいぃんっ……やっ、はっ、やぁっ……」
 翔香は狂ったように頭を振り、体を震わせている。
 豊かな胸の膨らみが揺れ動き、肉棒を突き込むたびに顎を仰け反らせるのが色っぽい。
 年上の美女を思い通りに喘がせ、悶えさせるのは何とも言えない快感だった。
 特に他人の女を奪っているという興奮には、たまらない良さがあった。
 そうした背徳的な快感は、やはり自分にとって最も気持ちのいい事なのだ。
 翔香が人妻でなければここまで夢中にはならなかっただろう。
 満里奈や美子とセックスする際には無いこの悦びは、翔香が人妻であるがゆえに起きているものだった。
(これって何か久しぶりだ……前にも確か似たような感じがあったよな……)
 そこまで考えて思い出したのは、母や姉、そして妹としてきた近親相姦の悦びだった。
 今や母以外は当たり前になってしまったが、セックスを始めた当時は、許されない背徳的な行為をする事に、伯母達とするセックスでは味わえない良さを感じていたのだ。
 特に未だに自分とのセックスを否定する母とする時はそれが強かった。
 母に「嫌よ、駄目。親子でなんていけないわ」と言われつつ肉棒を突き込み、それによって徐々に快楽に染まっていく母の姿を見ていると、たまらない快感が走るのだ。
 今味わっている快感にはそれと似ている感じがあった。
 夫の事を言われて苦悩しつつも快楽を受け入れる翔香の姿は、嫌と言いつつ求めてくる母の姿と重なったのである。
 やはりそれは、不倫という許されない行為をしている罪悪感と背徳感が、近親相姦のそれと似ているからだろう。
「俺にこんなにされてっ……どうですかっ?……気持ちいいですかっ?……旦那さんじゃない俺に突かれてっ……興奮してますかっ……?」
「やぁんっ……駄目、あんっ……そんなこと言っちゃ嫌ぁっ……あっ、ああっ……神治くんのオチンチンに突かれてると、あっ……凄くて、やぁっ……でもいけないの、あんっ……こんな気持ち良くなっちゃ駄目、あっ……でも、あぁっ……でも気持ちいぃっ……」
 翔香も無意識の内に分かっているのか、神治が夫の事を持ち出すと、「いけないこと」という意識が強まる言葉を自ら発してくる。
 それが神治にとっても興奮する要素になっていたため、翔香とのセックスは益々やめられないものになっていた。
「翔香さんっ、翔香さんっ、翔香さぁんっ……」
 柔らかな体にしがみつきつつ、腰を小刻みに強く突き込んでいく。
 そうしていると、まるで翔香の中に自分の体が溶け込んでいくように感じられてたまらなかった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……神治くん、あっ……神治くん凄い、ああっ……神治くん凄いよぉっ……やっ、やっ、やぁんっ……」
 シーツを強く引き寄せ、甘えるように、そして誘うように喘ぐ翔香の姿に、神治の射精感は一気に高まっていった。
「もう、あっ……もう駄目ぇっ……あっ、やっ、はぁんっ……わたし、あっ……わたしもう、やぁっ……イっちゃう、イっちゃう、イっちゃうぅっ……あっ、あっ、あぁああああああああああっ!」
「くっ!」
 翔香の絶頂に合わせて神治も精を放つ。
 ドピュドピュドピュッ、ドクドクドクドクドク……。
 激しい勢いで精液が放出されていく。
 こうして膣内に精液を注ぎ込む行為は、翔香が自分の物である感覚を強めて最高だった。
 射精するたびに押し寄せてくる快感には格別な気持ちの良さがあった。
 神治はその快楽に身を任せつつ、きっとこれからも自分は翔香を抱いていくのだろうなと思いながら、精を放ち続けていくのだった。


 あれから数日が経過した。
 神治は毎日のように翔香の部屋を訪れていたが、以前の映画鑑賞を目的としていたのとは異なり、今はセックスをするのが目的になっていた。
 これまでのセックスに対するやる気の無さが嘘のように、神治は翔香とのセックスに夢中になっていたのだ。
 翔香とのセックスは背徳的な要素が強かったため、その魅力にすっかりハマってしまったのである。
 翔香の夫にいつバレるか分からない。
 バレたら大変なことになる。
 そうした想いがより興奮を強め、中毒のような快楽を起こしていたのだ。
 もう止めなければ、止めるべきだ。
 理性はそう忠告してくるのだが、翔香を夫から奪い、自分の物とした快感は、決してそれを許してはくれなかった。
 翔香に会うまでは「もう抱かない」と思っているのだが、いざ翔香に会うと、その若奥様を思わせる雰囲気に、「夫から奪いたい」という欲が強まり、部屋へ着く頃にはセックスしたくなっているのである。
「あっ、あっ、ああんっ……神治くんのオチンチン、あっ……太くて硬くて、あぁっ……元気いいのぉっ……」
「旦那さんのよりっ?」
「そ、それは……」
「ほら、答えて……」
「嫌っ、言えない、あんっ……言えないわ、やぁっ……」
「そうなのっ? これでもっ?」
「あっ、ああんっ……そ、そんな激しく、あんっ……突いたら、ああっ……駄目、駄目よ、ああっ……」
「ほら、言ってっ……言うんだっ……」
「やっ、やっ、やぁんっ……いいっ、いいっ、いいぃっ……あの人のよりいいっ……神治くんのオチンチンの方が、ああっ……神治くんの方が、やっ……あの人のよりいいのぉっ……」
 そう言われた瞬間、ドクンっと心臓が跳ねた。
 夫から翔香を奪い取った実感が激しく強まったからだ。
 これが神治が翔香に夢中になっている理由だった。
 もう何度も言わせている言葉なのだが、翔香は必ず言うのを渋り、それを無理矢理言わせるのが最高に気持ち良かったのである。
 翔香もその事が分かっているのか、渋りつつも結局裏切ってしまう自分に酔っている節があった。
 いけない事をしている自分、という状態に激しい快感を覚えているのだろう。
 それは神治も同じであったためよく分かった。
 翔香とのセックスは肉体的な快楽としても良かったが、実際はそうした精神的な快楽にハマっている部分が大きいように思えた。
 不倫という背徳的な甘い果実には、他の女性相手では味わえない良さがあったのである。
「あんっ、あんっ、ああんっ……凄い、あっ……神治くん凄い、ああっ……神治くん凄いぃっ……」
 眼下で悶える翔香の姿に激しい興奮が起きてくる。
 この人妻はもはや自分の物だった。
 夫を裏切り、自分を讃える言葉を叫んでいるのがその証拠だ。
 もっともっとこの不倫のセックスを楽しみたい。
 神治はそんな事を考えながら激しく腰を振っていった。
「あっ、やっ、はぁっ……もう、あっ……もう駄目、あんっ……もう駄目なのぉっ……やっ、やっ、やぁあああああああああっ!」
 翔香の絶頂に合わせて精を放つ。
 勢い良く吐き出されていく精液を感じながら、そのたびに押し寄せてくる快楽を味わう。
 少しして射精を終えた神治は、翔香の体の上に倒れ込んだ。
 ハァハァという荒い呼吸が耳に響き、満足げな色っぽい顔がすぐ傍にある事に悦びを覚える。
「神治くぅん、素敵ぃ……」
 甘えるようにして翔香が抱き付いてくる。
 うっとりとした表情でジッと見つめられると、美人だけにたまらない良さがあった。
 そしてこれほどの美女を他人から奪っているのだという事実が、激しい興奮を呼び起こし、肉棒をあっという間に回復させた。
「うふん、もう大きくなってるぅ……神治くんのエッチぃ……」
「エッチだから翔香さんとしてるんですよ。旦那さんの目を盗んでね」
「あん、それは言わないで。神治くんがいけないのよ、こんな素敵なオチンチンなんですもの……」
 翔香は肉棒を優しくしごきながら色っぽく呟いている。
「翔香さんの体も素敵ですよ。だから俺は夢中なんだ……」
 そう言いながら肉棒を押し込み、腰を振り始める。
「あっ、ああっ……いい、あっ……いいわ、あんっ……もっと、もっとお願いぃっ……」
 すでに快楽に染まっている翔香は、すぐさま甘い喘ぎをあげた。
 そのいやらしい様子を見ながら、神治はすっかり自分がセックスに対して積極的になっているのを喜んだ。
 この翔香との背徳的な不倫は、神治にとり、そういう意味で大切な事であったのだ。
「あっ、あんっ……もう私、あっ……神治くん無しじゃ生きていけない、あんっ……これからもずっと、あっ……ずっと抱いてぇっ……」
 まるで神治が消えてしまうのではないかという必死さで翔香は抱き付いてくる。
 だが考えてみれば、不倫関係である以上、ずっと抱けるという保証は無いのだ。
 いつ夫にバレて関係が解消されるか分からないのである。
 その刹那的な要素と「許されないこと」という想いが、二人の気持ちを高め、通常以上の興奮を呼び起こしているに違いなかった。
 神治はその事を理解しつつ、いつまで続くか分からないこの翔香とのセックスを存分に楽しもうと、激しく肉棒を叩き付けていくのだった。


「それじゃ、帰りますね」
 翔香とのセックスをしまくった神治は、夕飯の時間になったため帰ろうとしていた。
「明日も来て、お願いよ?」
「どうしようかなぁ……」
「もう、意地悪ぅ」
「ふふ、来ますよ。翔香さんが素敵だから」
「んっ……嬉しいわ。待ってるから……」
 軽いキスで別れの挨拶をすると、神治は玄関のドアを開けようとした。
 カチャ……。
 だがその前に勝手にドアが開く。
「あれ、お客さんか? 随分若いお客さんだな。こんばんは」
「こんばんは……」
 挨拶を返しながら、神治は目の前に居る男性を眺めた。
 年齢は二十代後半で、なかなかに二枚目な、見た者に好青年という印象を与える感じの人物だった。
 おそらくこの男性が翔香の夫なのだろう。
「お帰りなさいあなた……は、早かったのね……?」
「ああ、会議が急に中止になったもんでね。それよりこの子は?」
「近所の子で、テレビの配線をちょっと直してもらったの。それで映画が好きだって言うから、お礼に映画を観てもらって……」
「なるほどな。お前の趣味も変なところで役に立つもんだ」
 男性は可笑しそうに笑った。
「君、もし良ければまた付き合ってやってよ。こいつは映画好きなんだが、俺以外一緒に観てくれるヤツがいないからさ」
「はい」
「ああ、でも勉強の妨げにはならないようにしないとな。ご両親に申し訳ないから」
「分かってます。そこら辺は気をつけてますから」
 冗談っぽくそう告げる男性に、神治も笑いながら答える。
 実際神治は家に帰ると、静に勉強を見てもらっているのだ。
 それは翔香とのセックスを始めてからも変わっていない事だった。
「それじゃ失礼します。映画、ありがとうございました」
「ああ、気をつけてな」
 そう言ってくる男性に目礼して神治は部屋を出た。
 最後に翔香に視線を向けると、暗い表情で俯いているのが見えた。
 おそらく浮気の現場を見つかったような感覚になっているに違いない。
 実際夫がそのまま寝室へ向かえば、情事の後だと気づかれかねないのだから、不安になるのは当然だろう。
(俺は、あの人の奥さんを奪った訳か……)
 神治はエレベーターへ向かいながら、今まで想像上の存在でしかなかった「翔香の夫」が、現実のものとして現れた事に少々動揺していた。
 だがそれと同時に、あの男の妻を奪ったのだという事に激しい興奮を覚えていた。
 ゾクリといった快感が体に走り抜け、肉棒がグンッと力を持つ。
 明日からはあの男性の事を意識しながら翔香を抱くのだ。
 一体どれほど気持ちが良くなる事だろう。
 そんな歪んだ楽しさを感じながら、神治はニヤリと笑いつつ、やって来たエレベーターに乗り込むのだった。


「もう止めましょう……あなたに抱かれる訳にはいかないわ……」
 いつもの様に部屋へ入ると、翔香はいきなりそう告げてきた。
 その暗い雰囲気から、昨日夫と鉢合わせた事が原因なのだろうとすぐに分かる。
「旦那さんにバレたんですか?」
「バレてはいないわ。でも、疑いは持たれたかも知れない……」
「あの後寝室の様子を見られたとか?」
 神治もその事は気になっていたため尋ねてみる。
 あの部屋の様子を見られたら、不審くらいは持つだろうからだ。
「いえ、あの人は寝るまであの部屋へは入らないの。だからあの人がお風呂に入っている間に片付けたわ」
「じゃあ、何で疑われたと思うんです?」
「具体的には言えないの。でも凄く不安なのよ。あの人の言うこと全てが、私とあなたの関係を疑っている言葉に思えて……」
 なるほど、どうやら翔香の被害妄想的なものらしい。
 普通の感覚であれば、二十代後半の女性が中学生を相手にセックスするなど想像しないだろうから、翔香の夫は全く疑っていないというのが本当のところに違いない。
 だが浮気をしている罪悪感のある翔香からしてみると、どうしても不安に思えてくるのだろう。
 よく考えてみれば、昨日も夫が帰ってくるのがもう少し早いか、神治達がセックスを止めるのが遅ければ、現場を見られた可能性はあるのだ。
 そういう意味でギリギリの状態だったと言えたのである。
「それならきっと大丈夫ですよ。だって俺は中学生ですから。翔香さんみたいな大人の女性が、俺みたいな子供とセックスするなんて普通考えませんよ」
「そ、それは、そうだけど……」
 その言葉で翔香は、普通の大人ならしない事を自分はしているのだと認識したのか、恥ずかしそうに視線をそらした。
「だけど翔香さんは、その子供のオチンチンで興奮しちゃってるんですよね?」
「馬鹿……」
 翔香は今度は視線を神治の方へ向けてくると、甘えるようにして笑った。
「だからいいでしょ? しましょうよ……俺、もっともっと翔香さんを気持ち良くさせてあげますから……」
 そう言いながら翔香の体に手を回し、優しく抱き締める。
「駄目よ駄目……もうこういうのは駄目なの……」
「バレなきゃ大丈夫ですよ。早めに終わらせれば、この間みたいに旦那さんと鉢合わせする事も無いですし……」
 豊満な乳房に手を伸ばし、強く揉みしだく。
「あんっ……もう駄目って言ってるのに、あっ……あの人にバレたら、やっ……大変なのよ、分かってる?」
「分かってますよ。だからバレないように早めに終わらせますから……あ、もちろんその分激しくしますんで、気持ちの良さが減る心配はしないで大丈夫ですよ」
「そういう事じゃ、あんっ……もうこんな事をするのは、ああっ……そこをそんな、やぁっ……駄目って、あんっ……神治くん駄目よぉっ……」
 表面上は抵抗を示しながらも、翔香の体は神治の言いなりだった。
 この数日間、すっかり神治の愛撫に染まっていたのだから当然なのだ。
 一度神の快楽を味合わされた人間が、そこから抜け出すなど不可能なのである。
「嫌、やめて、あっ……神治くんこういう事はもう、やっ……駄目、あっ……嫌、はぅっ……あっ、ああっ……」
 胸を揉まれ、秘所を撫でられ、翔香はすでに体に力が入らなくなっていた。
 腰が砕け、ズルズルとソファの上に横たわる。
「俺ともっといけない事をしましょう……旦那さんに隠れて、いやらしい事をもっと……気持ちのいい事を沢山しましょう、翔香さん……」
 その柔らかな肉体の上にのし掛かった神治は、服をはだけさせ、乳房に吸い付きながらそう告げた。
「あっ、ああっ……気持ちいいから、あっ……気持ちいいからしちゃ駄目なの、あんっ……あなたとのこれ、気持ち良すぎるから、やぁっ……あの人を本気で裏切っちゃうから、ああんっ……駄目なのよぉっ……」
 クリトリスを刺激すると、翔香は耐えられないように顎を仰け反らせた。
 夫を本気で裏切っているとするその言葉は、神治にとって激しく嬉しい事だった。
「そこまで言われたら男冥利に尽きますよ。だからもっと気持ち良くしてあげますね」
 そう言うと共に肉棒を取り出すと、一気に押し込んでいく。
 ズブリっ、ズブズブズブズブ……。
「あっ、ああっ……あっ、ああんっ……」
 肉棒が収まっていくのに合わせて、翔香の顎がガクンガクンと動く。
 全てが収まるのを感じた神治は、一旦動きを止めた。
「馬鹿、抜いて……するのはもう駄目って言ったじゃない……」
 悲しさのためなのか快楽のためなのか、翔香は涙ぐみながらそう告げてくる。
「俺は『駄目』って言われると凄く興奮しちゃうんです……嫌がる翔香さんを犯してるって思うと、たまらなくなるんですよ……」
 そう言いながら激しく腰を動かし始める。
「あっ、あっ、ああっ……あんっ、あんっ、ああんっ……」
 その強い突き込みに、翔香は駄目と言っていたのが嘘のように甘く喘いだ。
 すでに翔香の体は神治の与える快楽に染まっていたたため、こうなったら逆らう事は不可能だった。
「駄目、嫌、ああっ……こんな、あっ……駄目なのに、あんっ……止めて、あっ……嫌ぁっ……」
 悩ましげな表情で頭を左右に振り、拒否の言葉を甘く喘ぐ翔香の姿は、たまらなくいやらしかった。
 これまでも夫の事を告げると似たような反応を示したが、今のこれはそれ以上の良さがあった。
 嫌がりつつも受け入れるという相反する状態が、神治の性欲を激しく刺激し、いつもより強く大きく肉棒を叩き付けさせていく。
「あんっ、あんっ、ああんっ……凄い、あっ……駄目よこんな凄いの、ああっ……しちゃ駄目、あっ……しちゃ駄目よぉっ……」
 翔香は否定の言葉を吐きながら、ソファの端を掴み、何かに耐えるようにして悶えている。
 額にはウェーブのかかった髪がまとわりつき、美しい眉は苦悩から歪んでおり、美女のそうした姿にはたまらないいやらしさがあった。
 はだけられた服から覗く白い膨らみは、神治の腰の動きに合わせてプルンプルンと激しく揺れ動いている。
 肉棒が突き込まれるたびに、持ち上げられた脚が動き、ストッキングに包まれた指が閉じたり開いたりを繰り返した。
(ああ……翔香さんって、何てエッチなんだろ……)
 美しい人妻。
 色気のある美女。
 そうした言葉が似合う翔香は、夫を裏切る事に苦悩する事で、よりいやらしさを増しているように思えた。
 強烈な罪悪感と背徳感が、美しさに性的な魅力を与えているのだろう。
 神治はそんな女性を組み敷き、無理矢理セックスしている事に激しい興奮を覚えた。
「ああんっ、あっ、ああっ……駄目っ、駄目っ、駄目ぇっ……それ凄い、あっ……それ凄いの、ああっ……それ凄いのよぉっ……」
 翔香は否定しているのか受け入れているのか分からない言葉を吐きながら、頭を左右に振って悶えている。
 おそらく否定の言葉が自らの興奮を加速させているに違いない。
 以前から翔香はそうしている節があったからだ。
 今は否定の意志がかなり強くなっているだけに、湧き起こってくる興奮も比較にならないほど強いのだろう。
 今までに無いほどの乱れを見せているのは、それが理由に違いなかった。
 神治にしても、これほどの興奮を味わうのは久しぶりだった。
 やはり翔香が本気で苦悩しているのが分かるゆえに、それを無理矢理抱いているのが激しい興奮を呼び起こしているのだ。
「あっ、ああっ……やっ、やぁっ……駄目っ、嫌っ、あんっ……そんな風にしちゃ、あぅっ……駄目よ、あっ……嫌、あぁっ……もうわたし、ああっ……わたしイっちゃうぅっ……」
 ついに肉欲を抑えられなくなったのか、翔香は両腕両脚で強く抱き付いてきた。
 そのまま細い腰がウネウネと快楽を求めて激しく動きまくり、膣内が強烈に締まり上がったため、刺激を受けた神治の射精感は一気に高まった。
「やっ、やっ、やぁっ……わたし、ああっ……わたしそんな、あんっ……もうっ、もうっ、もぉっ……あっ、あっ、あぁああああああああああんっ!」
「うぅっ!」
 翔香の絶頂に合わせて精を放つ。
 勢い良く放たれていく精液は快感を生み出し、神治は射精が行われるたびにうっとりとなった。
 翔香も射精に合わせて体をピクっ、ピクっ、と震わせ、悦びなのか悲しみなのか分からない表情をしながら甘い吐息を漏らしている。
 しばらくして射精を終えた神治は、そのまま力を抜き、翔香の柔らかな体の上に身を預けた。
 ハァハァといった二人の荒い呼吸が部屋に響く。
「あぁ……また、しちゃった……」
 悲しげな、それでいてどこか満足げな口調で翔香は呟いている。
「嫌でした?」
「それは……当然でしょ。私はもうするつもりは無かったんだから……」
 一瞬の間を置いてからそう答えてくる。
 だがその割に表情には悲しさ以外のものが浮かんでおり、おそらく本音としては嫌ではなかったに違いない。
「でも嫌がる翔香さん、凄くエッチだったから……俺、我慢出来なかったんです……」
「そんな……そんなのって困るわ……お願いだから我慢して……」
「分かりました。今度から我慢します……だから今日はいいでしょ? もう一回しましょう?」
「え? だ、駄目よ。もう一回だなんて……駄目っ……」
 驚いた顔をして、翔香は慌てて立ち上がろうとしている。
「いいじゃないですか。もう今日はしちゃったんだし、満足するまでしましょうよ?」
「何を言っているの。駄目に決まってるじゃない。もうするのは駄目なの……あっ、駄目、止めて、あんっ……嫌ぁっ……」
 神治が乳房を揉みしだくと、翔香は激しく抵抗を示したが、それでも本気でないのはよく分かった。
 本気で嫌ならばもっと強い力で押しのけるだろうし、神治の頬を叩いてもいい。
 そこまでされたら神治もさすがに止めただろうが、翔香はただ言葉での否定と、軽い力での抵抗しかしなかったため、止める気にはならなかったのだ。
「あんっ、入れちゃ、あっ……駄目、やっ……嫌っ……ああんっ……」
 無理矢理両脚を開き、肉棒を押し込むと抵抗が止んだ。
 その瞬間快楽に染まった翔香の表情に満足しつつ、再び言葉だけ否定してくるのに興奮を覚えながら腰を動かし出す。
「あっ、あっ、ああっ……駄目、嫌、ああんっ……そんな凄いの、あっ、駄目よぉっ……」
 それによって甘く喘ぎ出した翔香の顔を眺めながら、神治は自分はこれからも翔香を抱いていくに違いないと思った。
 嫌がってはいるが本気ではない抵抗を排除し、翔香を快楽に染めていく事を楽しむのだ。
 それはきっと気持ちいいセックスになるに違いないと思いつつ、神治はそれまで以上に力強く腰を振っていくのだった。












あとがき

 ついに不道徳な行為が……。
 人妻との不倫ですよ不倫。
 以前も一応は書きましたが、あれは夫婦そろって気にしない感じだったんで、今度は気にするタイプの奥様にしてみました。
 ゆえに背徳感が出て、いい感じになったと思います。
 こういうのは男の夢ってヤツですな。美人の奥様に誘惑されるっての。
 一度経験してみたいものでありまする。
 んで後半は神治が暴走って事で。
 嫌がる奥様を無理矢理……。
 ああ、何て外道なんでしょう。
 てな感じで今回は、ちょっと酷い神治の様子を描いてみたのでありました。
(2009.7.10)



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