緋道の神器


        第二十五話  愛する女



 周囲の見慣れた風景に、神治はホッと息を付いた。
 そこは緋道村の修練場。
 ヨーロッパへ旅立つ前に神の修行をしていた場所だ。
 ガジギールの城でアンリーエ達に別れの挨拶をした神治達は、そのまま瞬間移動を繰り返し、緋道村へ戻ってきたのである。
 隣には未迦知神とミカの姿があった。
 黒いゴスロリの服を身に付けた十一、二歳の美少女と、ピンクのメイド服を身に付けた十四、五歳の白人の美少女の組み合わせは、何とも言えない強烈なものがあった。
 特にミカは背中に大きな白い翼を生やしており、さらには体中からキラキラと輝きを放っていたため、目立つことこの上なかった。
 瞬間移動をしている最中も時折姿を見られてしまい、騒ぎになる事があった。
 何しろ神治達と違い、ミカは姿を隠す術が使えなかったからだ。
 すぐに移動したため大丈夫だとは思うが、写真や映像に撮られていない事を祈るばかりだった。
『おかえりなさいませ』
 そんな事を思っていると、建物の中から白衣に黒袴を身に着けた女性が二人現れ頭を下げた。
 一人は四十歳ほどの熟女で、もう一人は十一、二歳くらいの少女だ。
「ただいま。葉那さん、ほたるちゃん」
 二人に挨拶を返し、神治は頬を緩ませた。
「お久しぶりでございます当主さま。ところでそちらのお嬢さまはどういった方なのでしょう?」
 葉那は視線をミカに向けながらそう尋ねてきた。
 見知らぬ人間がいるのだから当然の問いだろう。
「あ、この子はミカっていうんだけど……ちょっと事情があってね。あっちでその……」
 神治はそこまで口にしたが、その後どう話せば良いのか困ってしまった。
 何しろ本当の事を説明するのは難しかったからだ。
「神治の娘で、天使じゃ」
 悩んでいると脇から未迦知神があっさりそう告げた。
「あちらでお子様を作られたのですか。なるほど、それで当主さまに『気』が似ている訳ですね。しかも天使とは素晴らしい事です」
 驚くかと思いきや、葉那は当たり前の様にして納得している。
 どうやら巫女にとって突如大きな子供を見せても、また天使という存在だと説明しても驚くほどの事ではないらしい。
 そもそも巫女の存在自体普通ではないのだから、それも当然なのかも知れないが。
「……」
 一方ほたるの方は葉那ほど落ち着いてはおらず、目をキラキラさせながらミカをジッと見つめていた。
 まるで幼い子供が初めて動物園へ連れて来られたかの様に、ミカの姿に感激の表情を浮かべているのだ。
「あの、ほたるちゃん……?」
「綺麗です……」
 神治の問いかけに、ほたるは小さくそう呟くと、神治とミカの交互に視線を送り、どうしたらいいのか困った様にしている。
 どうやら失礼が無い様に神治に視線を向けていたいけれど、ミカを見たいという気持ちも抑えられないといった感じだった。
「えっと、見ていたいなら、ミカの方を見ていていいから」
「はい……」
 神治が苦笑気味にそう告げると、ほたるは嬉しそうに微笑みながら視線をミカに向けた。
「ミカ、この子はほたるちゃん。俺にとって娘みたいな存在なんだ。つまりお前のお姉ちゃんってとこかな」
「私のお姉ちゃん?」
 神治の言葉に、ミカはパァっと表情を明るくさせ、次の瞬間にはほたるを抱き締めていた。
「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ……」
 背中の翼をバサバサさせ、金色の髪を揺らしながら、嬉しそうにほたるに頬ずりをしている。
「あ……その……」
 ほたるは目を白黒させながら、困った様に、それでいて嬉しそうにしていた。
「ほら、ほたるちゃんが困ってるぞ。放しなって」
「うん、放す」
 神治が告げるとミカはほたるを放したが、その目は吸い付いた様にほたるから離れていない。
「大丈夫かい?」
「はい。少し驚いただけですから……」
 ほたるは小さく息を吐き出すと、こちらもミカの姿をジッと見つめている。
「ほたるちゃん、ミカのこと気に入ったの?」
「え? はい。こんなに綺麗な人見たの、初めてなので……キラキラしていて、本当の天使みたい。あ、天使なんですよね……」
 ほたるは混乱した様子でそんな事を言っている。
 無口なほたるが饒舌である事から、かなり興奮しているのが分かった。
「ミカはほたるちゃんが好きか?」
「うん、ほたる可愛い。お姉ちゃん可愛いの」
 そう言うと共に、ミカは再びほたるを抱き締めた。
 止めようかとも思ったが、翼をバサバサさせて無邪気に喜んでいる姿を見ていたらそんな気は失せてしまった。
 何よりほたるが嫌がっていない様なので、放っておいてもいいだろうと思ったのだ。
「姉妹の第一印象は良好、どころかお互いベタ惚れ状態になっておるの」
 未迦知神は可笑しそうに笑っている。
 ほたるやミカの性格からして、会わせても問題ないだろうと思っていたが、まさかここまでお互いを好きになるとは予想外だった。
「ところで当主さま。この方は修練場で生活されるのでしょうか?」
 不意に葉那がそんな事を尋ねてきた。
「いえ、うちで一緒に暮らすつもりですよ。葉那さん達も神社の方へ移りますし、ここに一人で住まわせる訳にはいきませんから」
 修行する巫女が居なくなったため、葉那は本来の巫女の仕事である未迦知神の世話をする事になっていた。
 ほたるも表向きはそうであったが、実質は神治に仕えるために神社の方へ移り、この修練場は閉鎖される予定だったのである。
「しかし、今のままではここから外へお連れになるのは難しいと思いますが」
「え? 何でですか?」
 葉那の指摘に驚く。何が問題なのだろう。
「まずはこの翼です。これは一般の村民には刺激が強いと思われますので」
 その指摘に納得する。確かにこの翼は目立ちすぎた。
 実際帰ってくる間も騒ぎになったのは翼のせいなのだ。
「それは帰ってくる間も思ったんですよ。だからそっちに関しては何とかするつもりです。それなら大丈夫ですよね?」
「ええ、宜しいと思います。ではもう一つの問題として、強烈な『気』を常に放っている状態。これをどうされるおつもりでしょう?」
「え……?」
 その指摘は予想外だった。
 強烈な「気」を常に放っている、とはどういう事だろう。
 神治にはよく分からなかった。
「力は上がったが、まだまだ注意力が足りんな。ミカはずっと凄まじい『気』を放っておるぞ。それゆえこれほどまでに輝いておるのよ。この光は魅了の力があるゆえ、このまま村へ連れて行けば、皆ミカの虜となってしまうに違いないな。まあ、それも面白いから儂は構わんがな」
 未迦知神は説明すると可笑しそうに笑っている。
 確かに注意深くミカを感じてみると、かなり強烈な『気』が放たれているのが分かった。
 何故今まで気がつかなかったのだろう。
「ここのところ、ずっと同じように強烈な『気』を放つ者達の中に居たゆえ、それで分からなくなっていたのじゃよ。だが今後は並な者の中へ戻るのじゃから、気を使わねばなるまい」
 そう言えば、ガジギールの国へ行っている間は、周囲に居るのは並ではない人間や神ばかりだった。
 その事にすっかり慣れてしまい、ミカの強烈な力を普通に感じてしまう様になっていたのだろう。
「もしかして、ほたるちゃんがミカに夢中になっているのもそのせいなんでしょうか?」
「いや、あれは違うな。ほたるほどの力があれば、ミカの力の影響を受けないはずじゃ。あれは単純に外見の美しさに見惚れておるのだろうて」
 確かにほたるはミカをうっとりとした様子で見つめている。
 ミカもミカで、ほたるに対して「可愛い可愛い」と言いながら抱き付いているので、どっちもどっちと言えたかも知れない。
 神治としても、娘二人が仲良くしているのは嬉しく、また美少女二人がくっついている様子には少々欲情を覚えた。
「じゃあ、取り合えずミカに『気』を抑える様に教えないと駄目ですね」
 要するに自分の意志とは関係なく「気」を放ってしまう訳で、それは言わば修行前の巫女と同じ状態になっていると言えたから、それを何とかする訓練をここで行えばいいだろう。
「ミカ、ちょっといいか?」
「ん? 何、神治?」
 ミカはほたるを抱き締めたままこちらに振り向いた。
 ほたるはミカに抱き締められて顔を紅潮させながら恥ずかしそうにしているのだが、それが何やら可愛らしい。
「取り合えず、俺の家へ行くにはその翼を隠さなきゃならないんだ。出来るか?」
「え? これ隠すの? うん、出来るよ」
 ミカがそう言うと、一瞬にして翼が消えた。
 まるで元々無かったかの様に存在が消えたのだ。
「うわ、これって……」
「ふむ、驚いたの……」
 そしてそれと同時に、それまで放出されていた「気」が常人レベルにまで落ちたため呆気に取られた。
 どうやら翼と「気」の放出には関わりがあるらしい。
「葉那さん、これなら問題ないですよね?」
「はい。普通の人間と同じですから、村へ降りても大丈夫でしょう」
 一瞬にして問題が解決した事に拍子抜けの想いを抱きつつ、取り合えず全員揃って家へ行ける事にホッとする。
「それじゃ、葉那さん、ほたるちゃん、ミカ。家に行こうか?」
「分かりました」
「はい」
「うん、行く」
 最後に未迦知神に視線を向けて促すと、神治は数ヶ月ぶりに帰る我が家へ向かうのだった。


 玄関の前で神治はゆっくり深呼吸をした。
 神の修行をするためとはいえ、家族にはかなり辛い想いをさせてしまったため、その事をどう謝ろうかと思っていたのだ。
 他の家と違い、当主家の女性はよその男に抱かれる訳にはいかないので、その間、ずっと欲求不満にさせてしまったからである。
 お詫びとして思い切り抱いてあげよう、などと思いながらドアに手をかける。
「あ、当主さま……」
 不意に葉那が何か言いかけるのに意識を向けつつ、ドアを開ける。
「何ですか? 葉那さ……」
「神ちゃんっ! 神ちゃんねっ? お帰りなさいっ!」
「本当、神ちゃんだわっ。神ちゃんお帰りなさいっ!」
 神治が問いかけるのと同時に、奥からドタバタと伯母と母が飛び出してくるのが見えた。
 そう言えば、以前この家へ来た時にも伯母は同じ様にしていたなぁ、などと苦笑する。
「伯母さんずっと待って、あっ……」
「お母さん寂しかった、あんっ……」
 近くまで駆け寄ってきた二人は、突如同時に体を硬直させると、そのままクタクタと座り込んだ。
「え? 伯母さん、母さん……?」
 驚いた神治は慌てて二人に手を伸ばした。
「あっ……あぁっ……駄目っ……駄目ぇっ……」
「あんっ、やっ……あっ……ああっ……」
 すると伯母と母は悩ましい声をあげると共に、体をビクビク震わせている。
『あっ、あっ、あぁああああああああっ!』
 そのまま見ていると、二人はまるで絶頂を迎えたかの様な叫びを漏らし、ガクリと力を抜いた。
(な、何だ……?)
 あまりの事に驚く。
 一体何が起きたのだろう。
「あ、神治兄ちゃんだっ。神治兄ちゃ〜〜んっ」
「お兄ちゃんっ。お兄ちゃんお兄ちゃんっ」
「神ちゃんお帰りなさい」
 呆然としていると、今度は久美、舞美、有希の三人が現れ、跳ねる様して近づいてくるのが見えた。
 年下の可愛い家族の顔に嬉しさを感じつつ、今夜にでも彼女達を悦ばせ、満足させてやらなければ、などと思う。
「あっ……」
「やっ……」
「あんっ……」
 すると三人も突如として体を硬直させると、その場に崩れ落ちた。
 そして先ほどの伯母や母と同じ様にして体を震わせると、絶頂を迎えたかの様にして喘いでいる。
(これは一体……)
 呆気に取られながら、神治は未迦知神の顔を見た。
「ふむ、なかなかに壮絶なものじゃな。さすがお主の『気』に染まっておる者たちじゃ。近づくだけでこうなったか」
「み、未迦知さま。これってどういう事なんです?」
「何簡単なことよ。お主の『気』に反応しただけじゃ」
「え? 何でそんな。今までそんな事なかったじゃないですか」
「お主は今回の修行、そしてガジギールの国での経験などからかなりの力を得たからの。そのせいで以前より『気』が強力になっておるのじゃ。そしてそれを無意識の内に放っておるのよ。まあ、先ほどまでのミカと同じじゃな。そんな状態でお主の『気』に染まりまくり、さらには欲求不満であったこの者達と会えば、こうなっても当然という事じゃの」
「そんな。だったら教えて下さいよ」
「いつ気づくかと思っておったのよ。しかしお主ときたら、ミカの事を言われても全く気づかぬのだから呆れてしまうわ」
「そんなこと言ったって、分かりませんよ……」
 どうやら先ほどのミカの「気」の放出に気がつかなかったのと同じく、自らが放っている「気」に関しても無頓着だったという事らしい。
「まあ、取り合えずこれから生活するには『気』を抑える必要がある。よってお主は今からその修行をするのじゃな」
「もしかして、そのつもりで教えなかったんですか?」
「そうじゃ。口で言うより、こうして実際に見せられた方が分かりやすいじゃろ? それにこの者達にしても、欲求不満が一気に解消されて良いであろうし。見よ、気持ち良さそうによがっておるではないか」
 視線を床に向ければ、伯母達が快感に喘ぎ、体を震わせている姿があった。
「一人一人を抱く手間が省けて良かったであろう? こうして仲良く揃って気持ち良くなっておるのじゃ。しばらくはこれで満足させてやれい」
 何とも言えない未迦知神の意見だった。
「で、お主はこの者達が普通の状態になるまで『気』を抑える様に努力せよ。修行になり、かつ家族を満足させられる。まさに一石二鳥というやつじゃな。そもそもそうせねば村の中など歩けんぞ」
 何となく騙された感じは否めないが、確かにこうして目の前で倒れている家族を見ていると自分の力が実感できるし、このままではマズイという想いも強くなって「気」を抑える修行に対する真剣味も増した。
「分かりました。やりますよ」
 神治は意識を集中し、己から発せられている「気」を抑える様にしてみた。
 だが伯母達はまだ喘いだままだ。
「まだじゃな。もっと抑えよ」
「はい」
 さらに強く意識すると、荒々しかった伯母達の呼吸が和らいだ感じがした。
「そのままもっと抑え、最終的には触れても相手が平然としている程度にまでするのじゃ」
 何とも大変な事になったと思いつつ、こうして家族達を触れずに喘がせているのはなかなか楽しい事でもあるな、などと考える。
 やはり女を従えるのは何度しても興奮する事なのだ。
 そんな事を思いつつ、神治は家族が全員立ち上がれる様になるまで、意識を集中し続ける状態を維持しなければならないのだった。


 しばらくして何とか「気」を抑える事に成功したため、神治は居間で家族一同と対面する事になった。
 全員、不思議そうな顔をして神治の事を見つめている。
「説明して頂戴、どういう事なのか」
 伯母が皆を代表して尋ねてきた。
 いきなり興奮させられてしまったのだからその質問は当然だろう。
「えっと、何か未迦知さまに戴いた力が増したっていうか……それをコントロール出来なくて、ああなっちゃったんです。すみません」
 取り合えず神としての自分の力とは言いにくいため、そう言い訳した。
 コントロールが出来ていなかったのは事実なので、それに関して嘘はなかった。
「そうなの。まあ、修練場に居たのだから少しは力が増すかと思ってはいたけど……まさかあんな、触りもしないで出来るなんてね……巫女にはそうした力があるって聞いていたけど、当主でもそういう風になるのね……」
「何だかそうみたいなんですよ。でもそうなってるって気づかないで帰って来ちゃったからああなったんです。だけどもうコントロール出来る様になったから大丈夫ですんで」
「それならいいわ。それにあれのおかげでかなりスッキリしたし……で、その事についてはいいとして、聞きたい事はまだあるの」
「何ですか?」
「あなたと一緒にいるその子よ。そちらのお二人は巫女だと分かるわ。連絡も受けていたし。でもその子は誰なのかしら?」
 伯母はミカを示しながら尋ねてくる。
 ミカは嬉しそうにニコニコしながら家族一人一人を見つめていた。
 その笑顔に、厳しい表情を浮かべていた伯母は困った様に微笑んでいる。
 翼を引っ込め、魅了の「気」を出さなくなったが、それでもミカの魅力は凄まじかったからだ。
 力など使わなくても、容姿と雰囲気だけで大抵の人は心が和んでしまうらしい。
「この子は……えっと、未迦知さまの知り合いの神様の関係で……俺が面倒見る事になって……それで連れてきたんですけど……」
「未迦知さまの知り合いって、修練場にそうした神がいらっしゃったの?」
「いや、修練場じゃなくて、ヨーロッパの方へ行ったんですけどね……」
「え? どういう事? 神ちゃん旅行していたの?」
「ええ、まあ……未迦知さまがその、瞬間移動の力を与えてくれて、練習って事で……」
「瞬間移動? 瞬間移動って、映画とかであるあれ?」
「はい」
「……神ちゃんがねぇ……今まで色々歴代の当主の力を聞いてはきたけど、瞬間移動ってのは初めてだわ……」
 伯母達は一瞬驚いた様にしていたが、さすが緋道村当主家の人間なのか、超常的な事にすぐに納得している。
「それで神社の方へ住まわせたいんですけど、いいですか?」
「いいも悪いも当主はあなたなのだから、私は反対しません。自由にしてちょうだい」
 どうやら同意を得られた事にホッとする。
 他の家族にも不満げな表情はなかった、どころか年少組の二人はミカをうっとりと見つめている。
 ほたるがミカに会った時の事を合わせて考えると、どうやら年齢が低いとミカの容姿による魅力は強まるらしい。
 今にも飛びつきたいと言わんばかりの表情で、二人ともうずうずしている感じだったのだ。
 その事に苦笑していると、ふと二人の後ろで疲れた感じで座っている佳奈の姿が目に映った。
「姉ちゃん大丈夫?」
「……ええ……まだちょっと、近づけないっていうか、神ちゃんの事を見られないけど……こうしてれば平気よ……」
 姉は神治が家に近づいただけで動けなくなってしまい、ずっと自分の部屋で悶えていたらしい。
 神治が「気」を抑えてからやっと顔を出したのである。
 しかしそれでも近づく事はできず、視線も合わせられないという事だった。
 元々肉棒を入れただけで絶頂に至るほど神治と相性のいい姉は、「気」に関しても感度が良い様で、この程度「気」を抑えたくらいではまだ辛いらしく、実際に抱いたらどうなってしまうのだろうと思わせるほどだった。
 とはいえ、他の家族にしても今は似たような状態である事を考えると、あまり姉限定という事ではない気もしたが。
 要するに皆が皆、神治の「気」に支配されている様なものだからだ。
 そんな状態の家族をこれから抱くのだと考えると、妙な興奮が湧き起こり、神治は嬉しさで一杯になるのだった。


 それからが大変だった。
 何しろ数ヶ月間留守にしていた間、家族の皆は欲求不満状態になっていたため、早速それを取り戻そうと抱くように言ってきたからだ。
 先ほどの事で少しは満足したが、まだまだ足りないという事らしい。
 神治に異存は無かったが、実際抱くとなったらこれが難しかった。
 何しろ今度は触れただけで皆絶頂に至ってしまったからである。
 手を握っただけで激しく喘ぎ、ビクビク体を震わせるのだから抱くどころの問題ではなかった。
 未迦知神曰く、もっと「気」を抑えなければセックスを最後までするなど不可能だという事らしい。
 結局家族を抱くために、神治は「気」を抑える練習、つまり修行の続きを行う事になった。
 高まりまくった「気」を抑える修行という事だ。
 ようやく終わったと思っていた修行は、まだまだ続きがあった訳である。
 この事も未迦知神は分かっていたらしく、ニヤニヤしながら「ほれ、早く『気』を抑えられる様にならんと、家族を一生抱けなくなるぞ」などと言ってきた。
 その事に騙された様な想いを抱きながら、確かに言葉通りであるため、神治は必死になって「気」を抑える様にした。
 しばらくして何とか触れられる様にはなったものの、今度は肉棒を入れた瞬間に絶頂に至らせてしまう状態になった。
 神治が動かずとも、皆勝手に絶頂を迎えてしまうのだ。
 以前から姉がそうではあったが、それが全員になったという訳だ。
 それはある程度であれば気分の良いものであったが、次第にあまり楽しくない状態だという事に神治は気づいた。
 何しろこちらが何もしなくても、皆勝手に悶え狂っているからだ。
 やはり抱く以上、こちらのした行為の結果として反応が欲しいものであり、勝手に悦ばれても面白くないのである。
 神治は自分がセックスを楽しむためにも、必死になって「気」を抑え様と頑張り続けた。
 そうして何とか肉棒を数度動かすまでは絶頂させない程度まで「気」を抑えられる様になったのは、真夜中になってからだった。
 それまではずっと肉棒を押し込んでは悶え狂う家族の痴態を見守り続けたのである。
 皆気持ち良さそうなのを超えて、苦しそうに喘いでいたが、神治の体が離れると満足そうに微笑んでいたため、欲求不満はある程度解消させられたのではないかと思えた。
(やっぱり……家族っていいなぁ……)
 全員が裸となり、産まれたままの姿で絡み合っている状況を眺めている内に、神治は自分が家に戻ってきたのだという感覚を覚えて嬉しくなった。
 何より家族を一度に抱くのは初めてであったため、妙な興奮もあった。
 伯母と母の蕩ける様な豊満な肉体、佳奈と有希の美しく女として磨かれ始めた体、そして久美と舞美の幼く初々しい肢体は、それぞれが神治を魅了した。
 これまで個別に抱いてきたのと違って体の差異がよく分かり、それが全て自分の物なのだと思うと楽しかった。
 そして全員が自分に強い愛情を抱いてくれているのだという事に、何とも言えない喜びがあった。
 肉体的な快楽の意味では、ヨーロッパで抱いてきた女性たちとは比較にならなかったが、それを補って余るほどに、家族の絆というのは気持ちの良さを呼び起こしたのだ。
 自分が愛し、自分を愛してくれる女達はここにいる、と実感できたのである。
「あっ、ああっ……神ちゃん、あっ……凄い、あっ……凄いわ、あっあああああああああっ!」
 伯母の絶頂を見つめながら、そのまま激しく腰を振り続ける。
「あぅっ、あっ……そんな、あっ……まだイってる途中、あんっ……なのにこんな、あっ……やっ、やぁああああああああああっ!」
 絶頂の状態から続けて絶頂に至る。
 肉棒による強烈な刺激は、伯母の体を異常な快感で包み込んでいるらしかった。
 まさにそれは神の与える快楽と言えただろう。
 これまで自分が未迦知神達を相手に味わってきた神の快楽を、家族の皆に与えられている事に神治は嬉しくなった。
 何しろ愛する家族に、自分の味わった、人以上の快楽を味合わせてあげられているのだから。
 伯母はもう何度も絶頂に至っていた。
 普通のセックスの時間で考えれば、まだ一回にも満たない間に、もう十回以上は絶頂を経験しているのだ。
 強烈な快楽に染まり、熟れた肉体をクネクネさせて激しく悶える伯母の姿はたまらなくいやらしかった。
「神ちゃん、お母さんにも、あぁ……お母さんにも早く頂戴ぃ……」
 背後から母に抱き付かれ、神治は振り返った。
 そこには母親の顔などすでに捨て去った、男を求める女の顔があった。
 母は一旦絶頂を迎えると家族の中で最もいやらしくなるため、順番が待ちきれなくなったのだろう。
 背中に豊かな胸の膨らみを押しつけてくるのがたまらず、また母のそうした可愛らしい態度に嬉しくなった神治は、伯母の中から肉棒を引き抜いた。
「あっ、あぁああああああっ!」
 伯母はその事に文句を言うどころか、新たな絶頂を迎えていた。
 神治に抱かれている間は、何をされても快感が押し寄せてくるため、文句を言うなど考えられない状態になっているらしい。
「早く、早く頂戴、神ちゃぁんっ……あっ、ああっ……」
 そのまま満面の笑みを浮かべて体を開く母の膣穴に肉棒を押し込んでいく。
「あっ、あっ、ああっ……いいっ、いいっ、神ちゃんいいぃっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
 そして神治が数度腰を動かすと、もう絶頂を迎えている。
 快楽の喘ぎをあげる母を満足げに見下ろしながら、神治はさらなる快楽を求めようと腰を振り続けた。
「母さんズルい。神ちゃん私にも早くぅっ……あっ、あぁっ……」
 そう言いながら母の真似をして背中に抱き付いてきた姉は、触れた瞬間、体を激しく震わせた。
 神治の「気」に特別敏感な姉は、それだけで激しい快感を覚えてしまうらしいのだ。
「舞美ちゃん、私たちも。ほら早く」
「あ、うん……」
 左右から二つの小さな体が絡み付き、顔を舐め回して唇に吸い付いてきた。
 年長組の甘ったるい肉の塊とも言うべき体と違い、年少組の久美と舞美の体から伝わってくる刺激は、さわやかな風の様な清涼感があった。
 肉欲の象徴とも言える伯母達の豊満な肉体も良かったが、久美達の青い果実とも言うべき滑らかな体も実にたまらなかった。
(何とも凄いもんだね……)
 神治はそうした家族の積極的な様子に苦笑した。
 どうやら未迦知神によると、あまりに強烈な「気」を受け続けたせいで、まるで酒に酔ったかの様に意識が快楽に染まっているとの事だった。
 そのせいでやたらと積極的になり、思い思いに己の欲求を神治にぶつけてきているらしい。
 それぞれの「気持ち良くなりたい」という想いから、神治に迫ってきているという訳だ。
「しょうがないな。んじゃ早く済ませるから……」
 そう言いながら気合いを入れて腰を振る。
「あっ、ああっ……そんな、やっ……急に、あっ、あぁああああああああっ!……やっ、やぁっ……駄目、あぅっ……はっ、あぁああああああああああっ!」
 腰を二、三度振ると、母はあっさり絶頂を迎え、そのまま二度目の絶頂を迎えた。
 ガクリと力を抜いた母から離れ、背後に抱き付いている姉を床に押し倒す。
 左右にしがみついた久美と舞美をそのままに、姉の中へと肉棒を突き込む。
「あっ、か……」
 姉はその瞬間、擦れた声をあげ、体を硬直させてガクリと力を抜いた。
 喘ぎ声すら発せずに絶頂を迎えたのだ。
「あっ……はっ……」
 そのまま腰を動かすと、目の焦点を乱しながら体をビクッ、ビクッ、と震わせる。
 姉はそれで二、三回絶頂に至っているのである。
 すでに常人の絶頂とは異なってしまっている姉の様子に、神治は苦笑しながら肉棒を抜いた。
 しがみついている久美と舞美は、神治の体を舐め回し吸い付き、うっとりとした表情を浮かべている。
 そうしているだけでも快感が押し寄せ、気持ち良くなれるらしかった。
「有希ちゃん……」
 他の家族と違い、座ったまま順番を待っている従妹に声をかける。
 有希はその言葉にビクンッと体を震わせると、ボンヤリした表情を浮かべて四つんばいで近づいてきた。
 すでに意識は快楽に染まっていて、自分の意志では動けなくなっているのだ。
 神治の指示が無ければ何もできなくなっているのである。
 それが有希にとっての快楽状態なのだと未迦知神に言われ、神治は何とも嬉しくなった。
 何しろそれは身も心も自分に捧げている様に思えたからだ。
 他の家族が自分の欲求に基づいて快楽を求めてくるのに比べ、有希だけは神治が悦ぶ事を第一としてくれているのである。
 そういった部分が、神治にとって有希が最も愛らしく感じられる点だった。
「有希ちゃん、大好きだよ……」
 耳元で囁くと、虚ろな表情をしていた有希の顔が微笑みに変わった。
 その事を嬉しく感じながら、細い腰を掴んで背後から肉棒を押し込んでいく。
「あっ、あっ、ああっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
 数度腰を動かすと、有希は小さな頭をビクッ、ビクッと震わせて絶頂を迎えた。
 背後から乳房をギュッと掴み、さらに腰を振る。
「神ちゃん、神ちゃ、あぁああああああああああんっ!」
 ブルブルと体を震わせ、ガクリと上半身を床に倒す様子を可愛らしく感じながら、激しい勢いで腰を動かしていく。
「ああんっ、あっ、あぁあああああっ!……やっ、やぁっ……やっ、やぁああああああああっ!……はぅっ、はっ、はぁあああああああああんっ! あっ、あぁあああああああっ!」
 特別可愛く感じたせいか、神治は何度も有希を絶頂に至らせた。
 有希はビクンっビクンっと激しく体を震わせ、強烈な快感に狂った様に悶えている。
 神治はもっともっと有希の乱れた姿が見たくなり、さらに強く突き込もうと腰を大きく引いた。
「神治兄ちゃんストップっ。ゆきねぇが死んじゃうよぉっ」
 そのまま肉棒を突き込もうとした瞬間、慌てた様子の久美に止められた。
「え? あ?……ああ、そうか……」
 確かに落ち着いて考えてみると、これ以上快楽を与えては有希が参ってしまうだろう。
 有希が可愛くてつい張り切りそうになったが、今の自分が張り切れば、人間には耐えきれない快楽を与えかねないのだ。
 それは抱く前に未迦知神に言われていた事だった。
 自分でも驚いたが、すでに神としての力が増しているため、下手をすると相手を殺しかねないらしい。
 実際そういう例を神治は知っていた。
 未迦知神にも「ユイリーエみたいな事はしたくないじゃろ?」と言われていたのである。
 これから普通の人間を抱く時は、そうした調整が必要になるらしい。
 慣れれば無意識に出来るらしいが、今の神治は少し気を抜くと張り切ってしまうのだ。
「有希ちゃん大丈夫?」
 うつぶせで荒い呼吸をしている有希に尋ねると、ニコリと笑顔を返して来たのにホッとする。
 表情を変えられる分、まだ余裕があるという事だからだ。
「じゃ、次は久美ちゃんと舞美だ」
 左右の小さな体に手を回し、ギュッと抱き締める。
「あっ……」
「やっ……」
 それだけで二人はビクビクと体を震わせ、うっとりとした表情を浮かべた。
 そのまま床に寝かせると、膨らみの薄い真っ白な胸が並んでいるのが可愛らしい。
 特に全く膨らみの無かった舞美の胸が、留守にしている間に微かに膨らみ始めた事に感慨を覚える。
「舞美、胸が大きくなったな」
「うん。少しだけどね……」
 神治の言葉に舞美は嬉しそうに笑った。
「わ、私だって前より大きくなってるよっ。そのうちもっと大きくなるんだからっ」
 すかさず久美がそう告げてくるのに苦笑する。
 負けず嫌いなところは本当に昔から変わらないのだ。
「分かってるって。二人とも性徴してるよね」
 そう言いながら二つの小さな胸を摘む様にして揉む。
「あっ、あっ……」
「やっ、やっ……」
 同時に二人が快感に顔を歪ませ、甘い吐息を漏らすのに楽しくなる。
 小さな少女達が眉根を寄せ、口を半開きにして喘いでいる様は、嗜虐的な興奮を呼び起こすのだ。
「ふふ、可愛いぞ二人とも……」
 プクッと膨らんでいるピンク色の乳首を交互に舐め回す。
「はぅっ、はっ、はぁんっ……」
「やっ、やぁんっ……あぁっ……」
 久美と舞美が体を小刻みに震わせ、悶えているのに満足感を覚える。
 体が小さいだけに、そうして思い通りに喘がせていると、何とも支配欲が刺激されてたまらなかった。
「あんっ……あっ、あっ、あぁああああああああっ!」
 久美に肉棒を押し込み、数度動かすとあっさり絶頂に至る。
「やんっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
 続けて肉棒を抜き、舞美の中に押し込んで動かすと、やはりすぐ絶頂に至った。
「あっ、あぁああああああっ!」
「やっ、やぁああああああっ!」
 そのまま交互に入れては出し、入れては出しを繰り返し、絶頂に至っては脱力し、再び絶頂に至る二人の様子を眺める。
 体をピクピク震わせ、可愛らしい顔を快楽に歪める二人の姿は、とても愛らしくて最高だった。
「神ちゃん、そろそろ私にもぉ……」
 そうして年少組を同時に気持ち良くさせていると、伯母がすり寄ってきた。
「分かりましたよ……はい、これでどうですか?」
「あっ、ああっ……あぁああああああっ!」
 神治が意識を向けると、伯母が体を硬直させて絶頂を迎えた。
 肉棒を入れていなくとも入れているのと同じ状態にさせる術を使ったのだ。
「あんっ、ああっ、あぁあああああああっ!」
「はっ、かっ……!」
「やっ、やぁっ、やぁああああああああっ!」
 続けて母と姉、有希にも同じ様に術を使ったため、皆同時に絶頂の叫びをあげている。
 そのまま年少組にも術を使い、神治は家族全員を同時に抱いている状態にし、実際の肉棒は順番に出し入れしていく行為を繰り返していった。
(ああ、何か幸せだなぁ……)
 そうした状況は、家族がまさに一つになっていて最高だった。
 六人分の刺激が肉棒に押し寄せ、神治にも凄まじい快感が押し寄せていたが、それに耐えられる状態になっている事を嬉しく感じる。
 以前であればとてもではないが耐えられなかっただろう。
 これも修行の成果に違いない。
 その事に何かをやり遂げた様な激しい満足感を覚えた神治は、そのままずっと家族を同時に抱いていくのだった。


 季節はすでに夏になっていた。
 修練場での修行とヨーロッパへ行っている間にそれだけの時間が経ち、帰って来てみれば学校は夏休みになっていたのだ。
 修行中も葉那に勉強を教わっていたため、学校の授業に遅れる心配はなかったが、それでも学校へ行っていなかった事が寂しさを感じさせた。
 何より世話になった生徒会の先輩達が卒業し、その挨拶が出来なかった事が寂しかった。
 彼女達は東京の有名女子校へ入学し、そちらで三人で暮らしているそうで、なかなか会えない状態になってしまったのだ。
 生徒会長の桜子の想いとして、この様な田舎ではなく、都会の洗練された世界で暮らしたいというのがその理由らしかった。
 一流を愛する彼女らしい理由に苦笑しつつも、あれだけ性的欲求の強かった乃梨子が一緒で大丈夫なのだろうかとも思う。
 だがその心配は、桜子を慕う男達も近くの男子校へ通っているとの事で杞憂となった。
 桜子が認めるほどの男達だから、おそらく翠を含めた三人を満足させているに違いない。
 せっかくの修行の成果を味合わせてあげられないのが残念だったが、彼女達の実家は緋道村なのだから、その内また抱く機会もあるだろう。
 神治はそういった情報を、久々に会った哲矢に教えてもらったのだ。
 哲矢は開口一番「神ちゃん、何か凄くなったな。男の俺でも何かおかしくなりそうだぜ」と言って笑った。
 ある程度力のコントロールは出来る様になったものの、さすがにまだ完璧とはいかないらしく、神治は会う女性達を興奮状態にさせてしまっていたのである。
 そしてそれは同性にも働いている様で、会う男性は皆、一物を硬くしていた。
 さすがに射精までには至らないが、とにかく性的興奮状態になっており、その事に神治は、相手が男という事もあって少々辟易していたのだった。
 そんな男達の中で、哲矢だけは力の存在を感じはしたものの、特に体に変化は起きていないらしく平然としていた。
 以前から思っていたが、哲矢は並の人間ではないのかも知れない事を、神治は今回の事で確信を持った。
 元々当主家に近い家柄であるのだから、哲矢の中には未迦知神の血が濃く流れているのだろう。
 彼の母や姉達が、性欲の凄まじさから相手をする男がいなくなっているのも、それが理由に違いなかった。
 そして平然としていたという点では、双子の幼馴染も同じだった。
 村の他の女性達は、神治に接近しただけで腰を抜かしたのだが、紗智子と夜詩子はそういった事が無かったからだ。
 抱かれる時も、家族と変わらないくらい耐える事が出来ていたため、その力はかなりのものに違いなかった。
 取り合えず仲の良い幼馴染の三人とは普通に接せられる事が分かった神治は嬉しくなったが、それと同時に、もう少し力のコントロールが出来るまでは、極力村人には会わない様にしなければ、とも思った。
 こちらに抱く気が無いのに相手を興奮させても気の毒だからである。
 以前であれば大喜びで村中の女性を抱きまくっただろうが、そうした気分が無くなっていたのだ。
 この様な意識の変化は、修行をした事や、ガジギールの国での体験が影響しているのかも知れない。
 何というか、自分の力や神である事に関して様々な想いが起きており、「とりあえず女性を抱きまくる」といった行為をする気にはなれなくなっていたのである。


(そういや、あれからもう一年経ったんだなぁ……)
 そんな状態からまた数日が経ち、ようやく村人とも普通に接せられる様になった頃、神治は家の近くの道路で、村へやって来た頃の事を思い出していた。
 ちょうど一年前、同じ夏休みの時期に自分は緋道村へ戻ってきたのだ。
 そのきっかけとなった伯母との衝撃的な初体験。
 そして母、従姉妹、姉妹達との肉体関係を経て未迦知神と出会い、神となり、当主となった。
 一年前は童貞だったとは思えないほど、今や物凄い数の女性を抱いている。
 女体を知ってからというもの、性欲に流されるまま抱きまくったが、今はそういった事は無くなっていた。
 修行のおかげで以前とは異なり、意識しなければ欲情しないくらいにまで性欲がコントロール出来る様になったのだ。
 無論、相手の力が強ければ別だが、並の人間であればこちらから意識しない限り欲情しないで済むのである。
 それはずっと神治が悩んでいた事であったため、解消された事にホッとしていた。
 未迦知神もその事を喜んでくれ、成長を褒めてくれた。
 修行を始める前とは比較にならないぞ、と。
 自分では分からなかったが、どうやら思ったよりも成長した様で、一人前とはいかないが、かなりマシになったという事らしい。
 神として成長しているのだと思うと嬉しくもあり、また寂しくもあった。
 家族や友人達が普通の人間として生活しているのに、自分だけが別の存在となっていく事に微妙な想いがあったからだ。
 このまま自分は神として皆とは異なった人生を歩むのかと思うと、激しい不安を覚えたのである。
 未迦知神は「その内慣れる」と言ってくれたが、果たして慣れるのだろうかという想いがあった。
 何より不安感を高めていたのは、今の自分の傍には未迦知神が居ないという事だった。
 村へ帰ってからというもの、未迦知神は「そろそろ独り立ちせよ」と言って神治から離れたのだ。
 これまで常に一緒に居た事を思うと、それはひどく寂しい事だったが、それも成長の証と思って我慢するしかなかった。
 初めて会った時に、「面白いから」という理由で未迦知神は常に傍に居た訳だが、実はあれは危なっかしい自分を心配してくれていたのではないかと神治は思っていた。
 未迦知神は神治が困ると助言したり、助けたりしてくれたからだ。
 だがそれも神治の成長に伴い、必要なくなったという事だろう。
 今は本来居るべき場所である神社の本殿の奥で暮らしている。
 神社には他に巫女である葉那とほたる、そしてミカが居た。
 葉那は未迦知神の世話をしており、その様子は以前よりどことなく嬉しそうに見えた。
 巫女にとって未迦知神の世話をするのが本来の仕事であるのだから、それも当然だろう。
 一方ほたるは神治の巫女であるので、未迦知神の世話をする必要はなかったのだが、他に仕事があったためそこで暮らしていた。
 ミカの教育である。
 ミカは産まれて数日しか経っておらず、ある程度の知識は神治の精から得たものの、まだまだ常識的に怪しい部分があったため、自由に行動させる訳にはいかなかったのだ。
 その監視と教育を行うため、ほたるがミカの面倒を見ているのである。
 始めは神治と離れるのを嫌がったミカだったが、ほたるが一緒に居る事で大人しく従っていた。
 初対面の瞬間からミカはほたるに非常に懐き、「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と慕って、何でも言う事を聞く様になっていたのだ。
 見た目が年下の少女に「お姉ちゃん」と言っているのはどうにも奇妙な光景だったが、神治自身ミカには「パパ」と呼ばれているため、気にしていてはやっていられないだろう。
 そういった感じで、周囲は寂しくなりつつも賑やかにもなっており、その事に未だ慣れていないというのが、神治の現在の状況だった。


「あ、神治くんだっ。久しぶりぃ」
 不意に声をかけられ、視線を向けると、そこにはクラスメートの智子が立っていた。
 哲矢達ほどではないが、神治にとって仲の良い幼馴染だ。
 傍らに一、二歳くらいの赤ん坊を連れていたため、神治は何やらミカとの出会いを思い出した。
「智ちゃん、元気だった?」
「うん、元気だったよ。神治くんこそどうだったの? ずっと巫女さんしか抱けなかったんでしょ? そんなんで大丈夫だった?」
「別に大丈夫だったよ」
 いきなりセックスの話題から聞かれた事に苦笑する。
 だがそれが緋道村なのであり、さすがにそういった事には神治も慣れてきていた。
「ホントにぃ? 村中の女を抱きまくった男の言葉とは思えないなぁ。ホントは辛くて辛くてたまらなかったんじゃない?」
 表向き、神治は罰を受ける形で修練場に居る事になっていたため、女日照りが続いていると思われていた。
 とはいえ、巫女を抱く事は出来るのだから女日照りとは言い過ぎと言えたのだが、神治は多くの女性を抱いてきた実績があったため、数人程度では満足できないだろうと思われていたのである。
「まあ、確かに辛かったかな。こういう事はもうしたくないかも」
 実際修行中はセックスどころか射精すら出来ない状態であったため、かなりの辛さを感じたのだ。
「やっぱりね。でも小っちゃい女の子を沢山抱いちゃったんだからしょうがないよね。ふふ、この子も後何年かしたら神治くんに抱いてもらおうかなぁ」
 智子はそう言いながら、傍らの赤ん坊を見つめた。
「その子、智ちゃんの妹かい? 可愛いね」
「え? 何言ってるの。私の子供だよ。ほら、目の辺りがそっくりでしょ?」
(!……)
 その言葉に神治は固まった。
「こ、子供って……智ちゃんが産んだの……?」
「そうだよ当たり前じゃない。そうじゃなきゃ私の子供じゃないじゃん」
 当然といった顔をして智子は笑っている。
 神治が冗談を言ったとでも思っているのだろう。
 だが神治は冗談のつもりはなかった。
 智子が産んだというのが信じられなかったのだ。
 しかしここは緋道村、十一歳を過ぎれば誰もがセックスしまくっている場所なのだ。
 智子の年齢であれば子供の一人や二人いてもおかしくないのである。
 その事は頭では分かっていたのだが、これまで友人に子供がいるという事を実感として理解していなかったため、こうして目の前で見た事で驚いたのだ。
「そういや、有希ちゃんとはどうなの? そろそろ次期当主を産んでもらった方が村のみんなは安心すると思うんだけど。それとも亜樹子様との方がいいかなぁ。やっぱり亜樹子様は大黒柱って感じだし……」
 神治の子供について語っている智子の言葉をぼんやりと聞き流す。
 間接的な意味では、ほたるとミカという娘がすでにいたが、実際に誰かを孕ませ、産まれるという形での子供はまだ存在していなかった。
 そもそもこの年齢で子供を得るという事に実感がなかったのだ。
「どうせなら家族全員に産んでもらいなよ。とにかく当主家は子供が多い方がいいんだからさ」
「そうかもね……」
 何やら改めて村の慣習を実感した神治は上の空で答えた。
「何だかやる気ないねぇ。謹慎したせいで大人しくなっちゃったの? ちゃんと毎日してる?」
「え? してるって何を?」
「何ってセックスだよ。もう、ホント大丈夫? 前は何も言わなくても沢山してたのに、何だかぼんやりしちゃってるよね? 私の事だって、さっきっから普通に見ちゃってさ。前みたいにエッチな目で見てよ」
 智子は少し怒った様な表情でそんな事を言ってきた。
 だが神治にはよく分からなかった。
 自分は同じつもりで智子と接しているつもりだったのだが、以前の自分は智子に対していやらしい視線を向けていたのだろうか。
「エッチな目って……そういう目で見ないと駄目なのか?」
「駄目っていうかぁ……神治くんにそういう目で見られるとさぁ、すっごく感じちゃうんだよねぇ……だからぁ、見て欲しいっていうかぁ……」
 不意に智子は甘ったるい口調になると、体を寄せてきた。
「わたし、もうずっと神治くんに抱いてもらってないぃ……だから久しぶりに、ね?」
 そう言いながら手を取って胸元へと引き寄せてくる。
 手のひらに柔らかな感触が伝わってきた瞬間、神治は智子を抱きたくてたまらなくなった。
 今まで意識しなかったのが嘘の様に、智子の体が魅力的に見えてきたのだ。
 短く切りそろえられた髪に可愛らしい顔、プクッと膨れた柔らかそうな胸、ミニスカートから伸びる白い脚はむしゃぶりつきたくなるいやらしさがあった。
「あっ……」
 その瞬間、智子が体をガクンっと跳ね上げ、ギクシャクと地面に座り込んだ。
 ハァハァとした荒く甘い呼吸が聞こえてくる。
(やべっ、やっちゃった……)
 抱きたくなったため、思わず「気」を高めてしまい、そのせいで智子は激しく欲情してしまったのだ。
 自分で意識してそうしたのならともかく、勝手になってしまったのは失敗だった。
 こんな様子を知られたら、未迦知神に笑われると思うと恥ずかしくなる。
「嘘……何これ?……凄い……」
 智子はハァハァと呼吸を乱しながらこちらをジッと見つめている。
「智ちゃん、大丈夫?」
「え? あんっ……」
 発する「気」を抑えながら手を差し伸べるが、その瞬間智子は弾ける様に体を震わせた。
(あれ? おかしいな。これで「気」を抑えられるはずなのに……)
 動揺してしまったせいか、いつも出来ている事が出来なくなっているらしい。
 その様子を未迦知神に知られたら、と思えば思うほどますます動揺が強くなっていく。
「あっ、あっ、ああっ……やだっ、嘘、あんっ……何もしてないのに、あぅっ……」
 智子は地面に倒れ込むと、体をクネクネ動かし、激しい喘ぎを漏らし続けた。
「あんっ、あっ……こんな、あっ……こんなのぉっ……あっ、あっ、あぁあああああああああっ!」
 ついには体を硬直させ、大声を放つと脱力した。
 絶頂に至ったらしい。
(あ〜〜、やっちゃった……)
 結局「気」を抑えられず、絶頂させてしまった事を悔いる。
 だがその事で落ち着いたのか、ようやく何とか「気」を抑える事が出来た。
「あ……はぁ……ふぅ……えっと……何で私こんな……」
 智子は驚いた様にそう呟くと、荒い呼吸を繰り返している。
「その……智ちゃん……」
「え? あ、やだっ。ゴメンねいきなり……じゃ、じゃあね……」
 智子は恥ずかしげにそう言うと、慌てて立ち上がり、赤ん坊の手を引いて行ってしまった。
 どうやら性に開放的な緋道村においても、人前でああして乱れるのは恥ずかしい事らしい。
 相手がいればまだしも、一人で勝手に盛り上がったのだからそうであってもおかしくないだろう。
「悪いことしちゃったな……」
 恥ずかしい事をさせてしまったのを心の中で謝る。
 もう少し「気」のコントロールをきちんと出来る様にならないと駄目だろう。
 まだまだ自分は未熟なのだと神治は溜息を付いた。
「神ちゃん……」
「え……?」
 不意に声をかけられたため驚き、慌てて振り返る。
 するとそこには有希が立っていた。
「あ、有希ちゃん……今帰り?」
「うん……」
 有希は学校で行われている夏期講習に参加していたため制服姿だった。
 白いセーラー服姿が眩しく、何となく初めて有希を抱いた時の事を思い出した神治は欲情しそうになるのを抑えた。
 またここで欲情してしまっては、智子にしたのと同じになってしまうだろう。
「今の見てた?」
「ちょっとだけ……でもしょうがないよ。神ちゃん凄くなってるんだもん。未迦知さまから戴いた力が凄くなってるんだもん。ちょっとくらいああなっても仕方ないよ」
 神治が気にしているのが分かるのか、慰める様に言ってくる。
「ありがと。でもそれをコントロール出来る様に修行したのに、出来てないってのはやっぱり駄目だと思う……」
「で、でも……それでも神ちゃん頑張ってるし……私は、その……気にしてないから……」
 必死にそう言ってくる有希に嬉しくなる。
 この少女は本当に心優しいのだ。
「未迦知さまの力ってホント凄いよね。触ってもいないのにあんな風にしちゃうんだもん。その力を使えてる神ちゃんも凄いよ。お父さんにはそんな力なかったんだから。お母さんに聞いたけど、当主でここまで力を使える人っていないんだって。神ちゃんはそれだけ凄いんだよ」
(未迦知さまの力、か……)
 自分が神である事は家族にも隠していた。
 穂智過が一体化している事が一番大きな理由だったが、その事で有希に嘘を付いていると思うと辛かった。
「あのさ、有希ちゃん。これってみんなには言ってないんだけど……その、俺の力って、実は未迦知さまのじゃないんだ」
「え……?」
 思わず告白した言葉に、有希は驚いた顔をしてこちらを見つめている。
「本当は俺自身、っていうか、俺の中にいるある存在の力なんだよ。俺はそいつと一体化したから力が使える様になったんだ」
「一体化……って、どういう事?」
「その……俺、当主の儀式の時に襲われたんだ、穂智過に……」
「ええっ? そうなの? で、でも何で大丈夫だったの?」
「本当は大丈夫じゃなかったんだけど、穂智過は俺を殺さずに一体化したんだ」
「ええっ? そ、そんな……」
 あまりの事に有希は呆然とした顔をしている。
「だから俺の中には穂智過がいるんだ。それで色々使っている力も穂智過のおかげで使える様になっているんだよ」
 本来ならこんな事は言いたくなかった。
 だが有希相手にいつまでも嘘を付いているのは辛かったのだ。
「そんな事より大丈夫なの? 体とか変になってない?」
「そういうのは大丈夫なんだってさ。未迦知さまが保証してくれたよ。穂智過は魂にくっついたんで体には影響が無い、ってある事はあるんだよな……」
「ええっ? 大丈夫なのっ?」
「いや、影響って言っても、これは穂智過の影響というより、穂智過の力を俺が手に入れたせいで起きているらしいんだ」
「穂智過の力?」
「簡単に言えば、エッチする時のさ……俺が凄くなったのって、穂智過の力を得たからなんだって」
「そ、そうなんだ……そうだよね、神ちゃんって凄すぎるもん……」
 有希は少し恥ずかしそうな顔をした後、納得している。
「他にも神としての力を使える様になって、瞬間移動が出来るのもそのせいなんだよ」
「え? 神って……神ってどういう意味?」
「穂智過って神になってたから、それと一体化した俺も神になったんだって。よく分からないんだけど、俺って神らしいんだよ」
「神ちゃんが……神様……」
「村でこの事を知っているのは葉那さんとほたるちゃんかな。二人とも力があるから、会った瞬間に分かったらしいんだ」
「そうなんだ……私には神ちゃんが神様になったなんて分からない……力なんて無いもの……」
 有希は少し悲しそうに呟いている。
「だから話したんだよ。有希ちゃんには知っておいてもらいたかったから。俺がこの事を話したのって、有希ちゃんが初めてなんだぜ」
「うん、私信じるよ。神ちゃんが神様だって」
「ありがとう。でも実際よく分からないんだけどね、神ってのがどういうものなのか。穂智過みたいな淫妖でも神になれるとしたら、そんなに偉いものでもない感じがするし」
「別に偉くなくてもいいんじゃない? 前にお姉ちゃんが言ってたけど、日本の神って自然の災害を神格化して畏れ敬った事が始まりなんだって。だから偉いとかじゃなくて、恐ろしい対象なら神になれるんじゃないかな」
「なるほど、確かに穂智過は恐ろしい存在だった訳だから、そういう意味で神になってもおかしくないか……」
「神ちゃんだから怖くないけどね。私、神ちゃんが神様になっても構わないよ。だって今までだって昔の神ちゃんと変わらなかったもん。神様になったなんて分からなかったくらいに……だから私は気にしない。何になっても私は神ちゃんが……好き、だから……」
 恥ずかしげに嬉しい事を言ってくる有希に心臓が強く鼓動する。
 有希は何と可愛らしく、そして自分を一番よく分かってくれる少女なのだろうと改めて神治は思った。
「俺も、有希ちゃんが何になっても好きだよ……」
 そう言いながら有希の体を引き寄せる。
 逆らわずに近くに来た体を抱き締めると、神治は瞳が徐々に閉じられていく顔に唇を寄せていった。
「ん……」
 柔らかな唇の感触が感じられ、そのまま舌を絡めてキスを繰り返していく。
「んっ、んんっ……んはぁ……神ちゃぁん……」
 潤んだ瞳で見上げてくる有希はとても可愛らしく、そしていやらしかった。
 そのまま押し倒したくなる衝動を覚えるが、ここは道端であり、その様な場所で有希を抱きたくはなかった。
 他の女性相手ならしただろうが、神治は有希をそんな風に抱きたくはなかったのだ。
 もっと大切に、宝物を扱う様にして抱きたかったのである。
「いいよ、ここでしても……我慢しないで……」
 神治の興奮とそれを抑えているのが分かるのか、有希はそんな事を言ってきた。
「いや、我慢する。有希ちゃんが大切だから……それに有希ちゃんがしている所を誰かに見られたくないしさ。有希ちゃんが可愛くなってるのは俺だけが見ていいんだ」
 性に開放的な緋道村では、他人のセックスの様子を見るなど日常茶飯事であり、そうした状況で人に隠れてセックスするというのは珍しい事だった。
 しかしだからこそ、神治は有希とのセックスを他人には見られたくなかった。
 そうする事が、肉体的に浮気しまくっている神治にとり、有希を大切にしている証に思えたからだ。
 他の人間の目には触れさせない事で、有希を自分だけの物にしたいのである。
(そういや初めての時は、伯母さんとしずねぇには見られちゃったみたいだけど……)
 有希との初体験は、何かに操られる様にして交わった。
 あれは今思うと穂智過の力だったのだろう。
 穂智過が獲物を求める「気」に影響を受け、お互い激しく求め合ったのだ。
 そしてあまりに激しすぎた事で意識を失い、自分達を探していた伯母たちに介抱されたのだった。
(それで俺は……有希ちゃんにプロポーズしたんだよな……)
 舞い上がって思わず結婚を申し込んだのだ。
 有希はそれを受け入れてくれ、二人は許嫁の関係になったのである。
 とはいえ、緋道村において結婚は名目上のものでしかなかったから、大した意味はないとも言えたのだが。
 実際夫婦で一緒に暮らしていない人間ばかりなのだ。
 だからこそ、神治は逆に有希との結婚を大切にしようと思っていた。
 肉体的な繋がりは薄いため、精神的な繋がりとして結婚を重視していたのである。
(神治さまさえ宜しければ、いつでも妻になります……)
 その瞬間、頭に声が響いた。
 遠くの国で会った、美しい少女の声が。
 彼女との交わりは、神治にとって完全な浮気だった様に思えた。
 何しろ精神的にかなり惹かれてしまったからだ。
 それこそ有希と同じくらいに。
「神ちゃん……好きな人、できた?」
(!……)
 不意に心を読んだかの様に告げられた有希の言葉に激しく動揺する。
「そうなんだね?……でも私は構わないよ。私は神ちゃんの事が好きだもん……」
 こちらの答えを聞かず、神治の反応だけで理解したのか有希はそう言ってきた。
 ここで「違う」などと言うのは許されなかった。
 何故なら有希以外の少女に恋心を抱いたのは事実であり、神治は有希に嘘を付きたくはなかったからだ。
「でもお願いがあるの……神ちゃんの最初の赤ちゃんは、私に産ませて……」
「え……?」
「さっき赤ちゃんを連れてる智ちゃんを見て思ったの……神ちゃんの初めての赤ちゃんは、私が産みたいって……」
 だがそれは難しい事だろう。
 神治はこれまで多くの女性を抱いてきたため、すでに妊娠している人間がいるかも知れないからだ。
 それに今後も家族を始めとして複数の女性を抱く事には変わらないため、その様な状況で有希が最初に妊娠するなどあり得ない確率だった。
「神ちゃん、無理だって顔してる。ふふ、当然だよね……でも不思議なんだ。私、神ちゃんの赤ちゃんはまだ誰も授かっていないって思えるの。どこにも神ちゃんの赤ちゃんは存在してないって分かるんだ……だから今の内に私が、私が神ちゃんの赤ちゃんを産みたい。神ちゃんとの赤ちゃんが欲しいの……」
 有希は必死な表情でジッと見つめてきた。
 それは普段の有希には無い、強い意志の籠もった瞳だった。
 神治にはその瞳に覚えがあった。
 五年前、緋道村から引っ越す際に向けられたものと同じだったからだ。
 あの時有希は、普段からは信じられない駄々をこねた。
 神治と別れるのが嫌だと、行かないで欲しいと何度も泣きながら叫んだのである。
 それと同じ瞳を、今有希は再び神治に向けていたのだ。
「分かった。最初の赤ちゃんは有希ちゃんに産んでもらうよ」
「ありがとう……」
 有希は嬉しそうに微笑んだが、神治はこの約束があまりに現実味がないと思った。
 しかし何故かその約束を守れそうな気もしていた。
 自分が望まなければ、他の女性を妊娠させる事はないだろうという想いがあったからだ。
 よく分からないが、そう出来るはずだと思えたのである。
「俺、これからは赤ちゃんが授かる様に、想いを込めて有希ちゃんを抱くから」
「うん……私も神ちゃんとの赤ちゃんが授かる様に想いながら抱かれる……」
 それは通常であれば意味のない行為だろう。
 だが二人の間ではお互いを繋ぐ絆の様な感覚になっていた。
 特別な想いを抱きながら交わる事に、二人だけの繋がりを感じたのだ。
 それは性に開放的なこの村において、特別な行為に思えたからかも知れない。


「ここって……」
 神治が有希に連れられてやって来たのは、何とも懐かしい場所だった。
 家の近所にある森の奥にある小さな洞窟。
 木々が生い茂り、入り口が分かりにくくなっているため、注意して見なければ分からない洞窟だ。
 そこは神治と有希が、二人だけでよく遊んだ場所だった。
 いつも一緒に遊んでいた哲矢達にも内緒で、二人だけの秘密の場所にしていたのである。
(そう言えば、この場所を哲ちゃん達に教えようとした時も、有希ちゃんは凄く必死になって嫌がったんだよな……)
 いつも大人しい有希の珍しい態度に驚き、結局神治は哲矢達に教える事はしなかった。
 何より二人きりでこの洞窟にいる時、いつもと違う雰囲気を有希に感じたのが嬉しかったせいかも知れない。
 ドキドキして気持ちのいい、妙な感覚があったのだ。
 今思えば、幼いながらも異性としての有希に興奮していたのだろう。
 そういう意味で、自分が有希を女として意識し、恋愛的に好きだと感じたのはこの場所という事になった。
「懐かしいね……」
 そう呟く有希の様子はどことなくいつもと違っており、大人びた雰囲気を感じさせた。
「こんなに狭かったんだ。昔はもっと広いと思っていたのに……」
 昔敷いた布の上に靴を脱いで座ると、有希も隣に腰掛け、二人の体で洞窟の空間が埋まった。
「私達が大きくなったからだね……でも何か不思議。こうして昔と同じ様にして座っていると、あの頃に戻ったみたいに思える……」
「そうだね……」
 神治が答えた後、二人はしばらく押し黙った。
 触れている肩が徐々に熱くなっていく様に感じられ、呼吸も荒くなっていく。
 妙に興奮してきている自分を感じながらも、だがそれを抑えようという気は起きなかった。
 これから自分は有希を抱くのだから、それで構わないのだ。
「有希ちゃん、好きだよ……」
「私も……私も神ちゃんが好き……」
 体を抱き寄せ、唇を寄せていくと、有希がうっとりとした表情をしながら瞼を閉じた。
 もう何度も抱いているはずなのに、何故か心臓がドキドキ激しく鼓動し、落ち着かない興奮が押し寄せてくる。
 唇が触れた瞬間、自分が震えている事に気づいて驚く。
 まるで初めて有希を抱く、いや、初めて女性を抱くかの様に緊張しているのだ。
「神ちゃん……私、変……何か変だよぉ……」
 軽く口付けた後、唇を放すと、有希が困った様な声をあげた。
「俺も変だ……何か凄く緊張しちゃってる……」
 お互いにすがりつく様にして抱き締め合う。
 そうしているとホッとする様な安心感が湧き起こり、目の前の存在に包まれ、包んでいる事に喜びが溢れた。
「有希ちゃん……」
「神ちゃん……」
 見つめ合い、もっと一つになりたいという想いから体を擦り合わせる。
 そのまま再び唇を重ね、今度は舌を押し込み、荒々しくお互いの唇を貪り合った。
「んっ……んんっ……んっ……んふぅっ……」
 有希の可愛らしい吐息が漏れ聞こえ、体の奥底からドクンドクンと何かが押し寄せてくる様な感覚を覚える。
 それと共に肉棒が激しく震え、有希の体に押しつけると、痺れる様な快感が走り抜けた。
 もうすでに数え切れないほど交わっているため、お互いが最も気持ち良くなる部分は分かっており、そこを刺激し、強く求め合う。
 有希の体を横たえ、白いセーラー服の胸元をブラジャーごと押し上げると、可愛らしい膨らみが現れた。
 何度見ても美しいと思わずにはいられない理想的な乳房は、有希の呼吸に合わせて上下に動いている。
 初めて抱いた頃に比べて大きくなった様に思えるその膨らみは、まるで神治の愛撫の成果としてそうなったかの様に思えて満足感が込み上げてきた。
 有希は自分の女なのだ、ここまで性徴させたのは自分なのだ、と思うと、誇らしさと共に嬉しさが湧き起こった。
「神ちゃん……神ちゃん好き……」
 そう告げてくる有希に益々喜びが溢れる。
 有希の体は自分の物だと思った瞬間に、心もそうであると有希自身が告げてきた事に激しい感動を覚えたのだ。
 まさに有希の心も体も自分の物なのだと確信したのである。
「有希ちゃんっ……俺もっ、俺も有希ちゃんが好きだっ……」
 そう叫びつつ乳房にむしゃぶりつく。
「あっ……やっ、神ちゃ、あっ……はぁっ……」
 桜色の乳首を強く吸い、真っ白な乳房を回す様にして揉んでいくと、有希が体をビクッ、ビクッと震わせ、可愛らしく喘いだ。
 その様子を見ていると、震えるほどの興奮が込み上げてくる。
 すでに数え切れないほど抱いてきたにも関わらず、いつも新鮮な想いが込み上げてくるのだ。
 それが有希の魅力だった。
 決して慣れる事がなく、飽きる事など考えられない初々しい存在。
 それが有希なのである。
「有希ちゃんっ……好きだよ有希ちゃんっ……俺、有希ちゃんが好きで好きでたまらないっ……」
 白い肌を舐め回し、あらゆる箇所に吸い付いていく。
 柔らかな肉がこちらの体を受け止め、熱く甘い吐息が漏れるのに興奮が高まっていく。
「私も、あっ……私も神ちゃんが、あんっ……神ちゃんが好きぃ、あっ……好きだよぉっ……」
 潤んだ瞳をこちらに向け、有希はギュッと抱き付いてきた。
 そうされると体全体が気持ちのいい肉に包まれてホッとした気分になった。
 以前よりも肉付きが増した様に感じられる有希の体は、少女から女へと変わりつつある実感を持たせた。
 この肉の中へ入りたい。
 肉棒を押し込み、擦り上げ、気持ち良くなりたい。
 そんな想いが強く湧き起こっていく。
 女肉の魅力が増した有希の体は、神治の中の雄を激しく誘い、肉棒を強く蠢かせた。
(有希ちゃんの体……エッチになってる……)
 まるで熟女を相手にする時の様な、いやらしい女肉の感触がある事に驚く。
 それでいて純真な少女の清らかさもあったため、そのアンバランスな状態に激しい魅力を覚えた。
 ヨーロッパから帰って来て何度か抱いたが、その時に感じていた違和感はこれだったのだろう。
 以前よりも女としての色気や、肉の感触の良さが増しており、時折ゾクリとした感覚を覚えたのだ。
 それは男を誘い、男を受け入れるのに十分な肉体に成長しているという感じだった。
「あ、嫌っ……」
 制服のスカートをまくりあげ、両脚を開こうとすると、有希は一瞬力を入れて抵抗した。
 恥ずかしげにそらした顔は赤くなっており、その様子にドキリと心臓が跳ねる。
 何度抱いても有希のこうした初々しさは無くならなかった。
 そこが神治にとって有希が特別に思える部分でもあった。
 有希を抱く時は、常に新鮮な想いでいられるのだ。
 大人しくて可愛らしい美少女。
 その印象が消える事なく、いつも抱く瞬間には、まるで初めてその体を汚すかの様な興奮が起きるである。
 この様な純真で可憐な存在を自分が汚して良いのだろうかと躊躇するのだ。
 目の前には、その想いを表すかのごとく、ピンク色の肉の襞が見える。
 何度抱いても美しい肉の色を保ったその部分は、有希の清純さを体現しているかの様だった。
「あっ、やんっ……はぅっ、神ちゃん、ああっ……」
 ペロリと舐め上げると、有希が体をビクビク震わせた。
 左右にある太ももが顔を強く挟んでくるのに気持ちの良さを覚える。
 有希の体はどこに触れても滑らかで柔らかく、心地良かった。
「あっ、あんっ……そこ、あっ……やんっ、駄目ぇっ……」
 襞を擦る様にして舐め上げ、可愛らしい突起に吸い付くと、有希が駄々っ子の様に頭を振るのが可愛らしい。
 後頭部に添えられた手に力がこもり、得ている快感が強い事を感じさせた。
 神治はゆっくり体を起こすと、眼下にある有希を眺めた。
 白いセーラー服を乱し、快楽に瞳を潤ませ、頬を上気させている姿は、美少女だけにとてつもない興奮を呼び起こした。
 この様な美しい少女を、自分が汚して良いのだろうか。
 もう何十回となく想っている事を心に浮かべる。
「有希ちゃん……好きだよ……」
「私も……神ちゃん好き……」
 嬉しそうな表情をしている有希の顔にかかった黒髪を払いのけながら優しく口付ける。
 すると有希が背中に手を回し、強く抱き付いてきた。
(ああ……幸せだ……)
 快楽とは異なる、温かな喜びが心に溢れていく。
 自分は有希が好きだ。
 愛している。
 他の女性を抱く時には感じられない心の快楽。
 それが有希との交わりにはあった。
「いくよ……」
「うん……」
 頷くのを可愛らしく感じながら、肉棒を挿入していく。
 ズブ、ズブズブズブズブ……。
 一気に根本まで押し込み、動きを止めて息を吐き出す。
 目の前では有希が呼吸を乱しながら、嬉しそうにこちらを見上げていた。
 一つになった喜びが溢れているその顔に、神治は満足な想いを抱いた。
 有希は自分の物。
 他の誰でもない、自分だけの女なのだ。
 体だけでなく、心の繋がりがそれを確信させた。
 肉体を一つにしている時、自分の「好き」が有希の「好き」と一つになっている感覚があり、自分達の全てが一つになっている様に思えたのである。
 言葉にしなくとも、こうして繋がり、抱き合っているだけでそれは実感できた。
「あっ……あっ……あっ……」
 ゆっくり腰を動かし、有希の中を擦っていく。
 温かで湿った膣襞が肉棒に絡み付き、たまらない快感が湧き起こる。
 有希の性格を表すかの様な膣内は、決して神治を追い立てる事はなかった。
 心地良い気持ちの良さが、肉棒を中心に体中に広がっていくのだ。
 決してこちらを急かさず、穏やかに快楽を与えてくる有希の体は、神治にとって安らぎを覚えるものだった。
「有希……愛してる……」
 快楽に染まりながら、強い想いを込めて囁く。
「神ちゃ……神治さん……愛しています……」
 有希はいつもの様に言いかけてから止めると、真剣な表情を浮かべてそう返してきた。
 それが通常のセックスとは異なる雰囲気を作り、この交わりが特別な、一つの区切りとなるものなのだという感覚を神治の中に呼び起こした。
 これから自分は有希と子供を作る。
 人の子の親となるのだ。
「あっ、あっ、あぁっ……神治さん、あっ……神治さ、ああっ……神ちゃぁんっ……」
 快感が強まると、いつもの呼び方になっている事に苦笑する。
 だがそれも有希の幼さであり、可愛らしい部分であるため問題はなかった。
 自分達はそれだけ若いのだ。
「やっ、やっ、やんっ……凄い、あっ……凄いよぉっ……神ちゃん凄いのぉっ……わたし、あっ……わたしぃっ……」
 いつも以上に激しく乱れる有希を見つめ、自分も強烈な快楽の波にさらわれていく様な感覚を覚えつつ、神治はますます腰の動きを強めた。
「あんっ、あんっ、ああんっ……神ちゃん、あっ……神ちゃぁんっ……」
 頭をブンブンと左右に激しく振り、強く抱き付いてくる有希が可愛らしい。
 まるで他に頼るモノがないのだと言わんばかりにしがみつき、求めてくる有希の態度は、神治の中の支配欲を満足させた。
 この美しくもか弱い少女を守れるのは自分だけなのだ。
 愛し、快楽を与えられるのは自分だけなのだ。
 そうした想いが強く弾け、有希に対する愛おしさが爆発する。
「有希っ、有希ぃっ……」
 強く抱き締め、それまで以上に速く強く肉棒を叩き付けていく。
「神ちゃん好きっ、好きだよぉっ……あっ、あっ、ああっ……神ちゃん大好きっ……神ちゃん愛してるのぉっ……」
「俺もだっ……俺も有希を愛してるっ……愛してるぅっ……」
「ああっ、あっ、あんっ……はっ、はぅっ、はぁっ……やっ、やっ、やぁああああああああああっ!」
「うぅっ!」
 有希が絶頂に至ると同時に、強烈な刺激が肉棒に押し寄せ、その快感に合わせて精を放つ。
 ドクドクドクドクと激しい勢いで精液が迸っていくのを感じながら、それが有希の胎内で卵子と結びつき、やがては子となっていくのだと実感する。
 いつも以上に激しく求め、愛し合った事が、何やらそうした想いを抱かせたのだ。
 そのまま最後の射精を終えた神治は、ゆっくりと有希の体の上に身を横たえた。
「神ちゃん……」
「ん? なに?」
「これで赤ちゃんが出来るといいね……」
「ああ……俺と有希ちゃんの赤ちゃんだ……」
「うん……」
 有希は嬉しそうに微笑んでいる。
 まるですでに己の胎内に赤ん坊が宿ったかの様な、そんな充実した微笑みだった。
「ところでさ、もう一回『神治さん』って呼んでくれない?」
「え?」
「してる最中、呼んでくれたじゃない。また聞きたいんだよ」
「そ、それは……は、恥ずかしいから嫌……」
 有希は顔を真っ赤にして照れている。
 そんな様子を可愛らしく感じた神治は、再び抱きたくなった。
「有希ちゃん、好きだよ……」
「私も、神ちゃん好き……」
 優しく口づけながら愛の言葉を交わし合い、神治は有希の体を抱き締めると、そのままゆっくり肉棒を挿入していった。


「あっ、あっ、あぁっ……」
 薄暗い洞窟の中で、汗に濡れた白い肌がボンヤリと浮かび上がっている。
 恥ずかしげに吐き出される甘い吐息が響き渡り、触れている柔らかくて熱い体からは心地良い快感が押し寄せてきた。
「神治さん、あっ……神治さ、やぁっ……」
 ギュッと抱き付いてくる有希に優しく微笑みかけ、腰の動きを速める。
「ああっ……あっ……やっ、そんな、あんっ……」
 初めてこの場所で交わって以来、神治達は毎日の様にここでお互いの体を貪っていた。
 夜もこれまでと同様にセックスをしているが、それとは別に昼にここへ訪れ、日が沈むまで行為を繰り返していたのだ。
「有希っ……有希愛してるっ……愛してるぞっ……」
「神治さん、あっ……神治さん愛してます、やっ……愛してますぅっ……」
 お互いの体を抱き締め合い、愛の言葉を繰り返す。
 有希は普段は今まで通り「神ちゃん」と呼んでいたが、何故かこの場所でセックスする時は、「神治さん」と呼び、口調も「ですます」調の丁寧なものになっていた。
 夜に家でする時はこれまでと変わらないのだが、ここでする時はそうした形になるのだ。
 奇妙に思いその事を尋ねると、有希は「よく分からないけど、ここでする時って変な感じになるの。それでつい、あんな風にしちゃうの」と答えた。
 何とも不思議な話だったが、神治にとっては一種の遊びの様に感じられて面白くもあった。
 何より自分を敬っている様にして抱かれている有希の様子には、新鮮な悦びがあったのだ。
 女を従えているのだという、男としての支配欲が充足され、激しく肉棒が猛るのである。
 何故有希がその様な状態になるのか分からないが、おそらく有希なりにこの場所での交わりを特別なモノに感じているせいだろう。
 神治にしても、ここでのセックスは「赤ちゃんを作るためにしている」といった意識があり、それが何やら誇らしげな想いを強めていた。
 呼び方にしても、「有希」と呼び捨てているし、態度にしてもどことなくいつもより強気になっているのが自分でも分かった。
 そう言えば以前、やたらと自信が湧き起こった時に、同じ様にして呼び捨てていた時期があった。
 あれは確か、やたらと母に対する執着が強まり、久々に母を犯した時だ。
 他の家族に対しても強気の態度になり、とにかく女を従える事に快感を覚えていたのである。
 だがそれも、未迦知神に甘えている内に治まり、徐々に普通になっていったのだが。
「あっ、あっ、ああっ……神治さんいいっ、神治さんいいですぅっ……あっ、あんっ……神治さん、あぁっ……」
 有希はたまらないといった感じで顎を仰け反らせ、甘い叫びをあげた。
 その様子はどこか大人びた雰囲気を持っており、神治はその反応に激しい興奮を覚えた。
 この場所で交わる様になってから、有希の様子はどことなく大人びていたのだ。
 夜に家で抱く時には以前と変わらぬ十五歳の少女としか思えないのだが、ここで抱いている有希は、まるで十歳ほど、いや、もっと成長した大人の雰囲気を感じさせたのである。
 丁寧な言葉遣いや「神治さん」と呼んでくる事も影響しているかも知れない。
 そうした有希の様子を見ていると、何故か愛しさがこれまで以上に燃え上がり、強く荒々しく抱いてしまうのだ。
「やっ、やぁっ……神治さん凄い、あんっ……神治さん凄いです、あぁっ……そんなにされたら私、あっ……私おかしくなってしまいますぅっ……」
 頭を左右に激しく振り、有希はギュッと抱きついてきた。
 そうすると膣内の収縮が恐ろしいほどに強まり、神治は思わず射精しそうになって呻いた。
 ここで抱くようになってから変わったもう一つの事として、有希の性的成長があった。
 まるで経験豊富な熟女であるかの様に、激しい快感の波に神治を巻き込んでくるのだ。
 それは人間としては、最上級と言える肉体的刺激だった。
 それでいて精神的な初々しさは変わっていないため、その態度と肉体の快楽とのギャップに、神治はおかしくなりそうな自分を感じていた。
 いや、すでにおかしくなっているのだろう。
 いくら赤ん坊を得る事を約束したとはいえ、日中は毎日有希だけを抱いているのだから。
 有希を抱きたくてたまらない気持ちになり、有希に夢中になっていたのだ。
「ああんっ、神治さん、あっ……わたし、わたしもう、あっ……わたしもう駄目です、あんっ……わたしイっちゃう、やっ……わたしイっちゃいますぅっ……」
 甘える様にして、そして求める様にして抱きついてくる有希に、神治の射精感も限界一杯まで高まった。
「よし、イくぞ有希っ……俺もイくっ……だから一緒にっ……いいなっ……?」
「はい、あっ……一緒に、あんっ……神治さんと一緒にぃっ……やっ、やっ、やぁっ……駄目、あっ……それ、あぁっ……あっ、あっ、あぁああああああああああっ!」
「有希ぃ!」
 二人の叫びが重なると共に、激しい勢いで精が迸った。
 ドピュドピュッと放出されていく精液を感じながら、神治はたまらない快楽に身を委ねた。
 頭が真っ白になり、意識が朦朧としていく。
 そうしている内に、神治はいつの間にか自分がどこか違う場所へ来ている様な感覚を覚えた。
 周囲が違っているのだ。
 洞窟の中であったはずなのに、どこかの家の中であるかの様になっているのである。
 だが目の前では有希が絶頂の快感に悶え、息を乱しているため、自分の視界がおかしくなっているだけなのかも知れない。
 あまりに強烈な快感でそんな幻覚でも見ているのだろうと思いながら、射精を終えた神治は、有希の柔らかな体にその身を預けた。
 ハァハァと荒い呼吸を吐き出しながら、有希の感触を心地良く感じる。
「有希、愛しているよ……」
 そう囁きながら耳を甘く噛む。
「わたくしも愛しております。お慕い申し上げておりまする……」
 妙に時代がかった言葉を使ってきた事に苦笑した神治は、どう返そうと考えながら有希の方を見た。
(!……)
 そしてその瞬間、愕然となった。
 自分が見ている相手は確かに有希に思えたが、どこか有希とは違っている様な感じがしたからだ。
 そして辺りもやはり洞窟ではなく、どこかの家の中のままであり、一体どうなっているのか分からない神治はそのまま体を起こしたのだが、すぐさまグイと下に引き寄せられた。
「よそ見は嫌でございます。今はわたくしだけを、わたくしだけを見つめて下さいまし」
 潤んだ瞳で切なくそう告げてくるのに逆らえず、神治は有希を見つめた。
「母君さまの目を盗み、こうして抱いていただけるだけで、わたくしは幸せでございます。決して妻になれぬとはいえ、忍んで抱いていただけている事がすなわち父君さまのわたくしへの愛の証でありますゆえ……嬉しゅうございます……」
 うっとりと、優雅な口調で有希は呟いた。
 いや、これは本当に有希なのだろうか。
 似てはいるが、外見が十歳は上である様に思えたし、この様な喋り方など有希はしないのだ。
「この密会が明らかになれば、母君さまは決して許しては下さらぬでしょう。父君さまに対する想いは、わたくしなどとは比較にならぬほど強く深いお方ですから。例え自ら産んだ娘が相手とはいえ、容赦して下されますまい。いえ、実の娘だからこそ、余計許しては下さらぬでしょう……」
 有希に似た女性は悲しげに呟くと、強く抱きついてきた。
 一体これは何なのだろう。
 突如変わった周囲の風景、そして時代がかった喋りをする有希に似た女性。
 自分がどうしてこの様な状態になっているのか神治には分からなかった。
「ああっ、愛しておりまする。お慕い申し上げておりまする。父君さまぁっ……」
 そう叫びながら強く抱きついてくる女性を、神治は呆然と眺めた。
 彼女が呼ぶ「父君」とは自分の事なのだろうか。
 だが神治にはこの様な娘などいるはずがなかった。
 なのに何故彼女は自分を父と呼ぶのだろう。
 その様な疑問を感じていると、不意に股間から押し寄せてきた快感に呻く。
 挿入されたままの肉棒にたまらない気持ちの良さが走り抜けたのだ。
 そして訳が分からないまま勝手に腰が動き出し、女性を責め立て始めた事に驚きを覚える。
「あっ、あっ、ああっ……嬉しゅうございます、あっ……もっと強く、あっ……もっと激しく、あぁっ……わたくしを、わたくしを抱いて下さいまし、はっ、はぁっ……わたくしを、愛して下さいましぃっ……」
 悩ましく、悲しげに、そしていやらしく悶え喘ぐ女性の姿に、神治はたまらない興奮を覚えた。
 肉棒に押し寄せてくる快感も、人間以上のとてつもないものがあった。
 これはまさに極上の女だった。
 これまで抱いてきた神の女性達に匹敵する、狂わんほどに夢中になってしまう肉体だ。
 信じられないほどの快感が湧き起こり、そのまま何度も腰を振りまくって強烈な快感を味わう。
「あっ、ああっ……父君さま、はぅっ……父君さまもっと、あぁっ……父君さまもっと激しく、あんっ……激しくわたくしを、あぁっ……わたくしを愛して下さいましぃっ、あっ、あぁっ……」
 信じられないほどの快感が押し寄せ、神治は狂った様に腰を振った。
 いや、自分の意志とは関係なく勝手に体が動き、とてつもない快感だけが次々に襲いかかってくるのだ。
 その強烈な快楽に、神治は何も考えられなくなった。
「あんっ、あっ、ああっ……父君さまっ、父君さまっ、父君さまぁっ……やっ、やっ、やぁあああああああああっ!」
 絶頂はあっという間に訪れた。
 女性がギュッと強く抱き締めてくると、それと共に凄まじい快感が湧き起こり、一気に肉棒から精が放たれる。
 頭がおかしくなるほどの気持ちの良さに、神治は何度も何度も射精を繰り返した。
 女性は幸せそうな表情を浮かべ、うっとりとこちらを見上げている。
 そこには怖くなるほどの愛が感じられ、神治はこの女性に身も心も囚われてしまうのではないかという恐れを抱いた。
 それほど女性の体は気持ち良く、また精神的にも惹かれずにはいられない状態になっていたからだ。
「父君さま……愛しておりまする……」
 美しい顔が迫り、唇に吸い付かれる。
 強く荒々しいキスに、神治の頭は真っ白になった。
 そのまま再び勝手に腰が動き始め、押し寄せてくるたまらない快感に、神治は目を瞑って歯を食いしばった。
(!……)
 そして再び目を開いた瞬間、場所が変わっていた事にギョッとなる。
 いや、元に戻ったというべきか。周囲は洞窟の中になっていたからだ。
「あっ、あっ、ああっ……いいっ、いいっ、いいぃっ……」
 だが戻ったのは場所だけの様で、抱いている相手はやはり有希ではなかった。
 有希に似てはいるが、やはり年齢が少し上の様に思えたからだ。
「はぁっ、はっ、はぅっ……父さま、あっ……父さまぁっ……」
 再び父と呼ばれた事に驚く。
 一体これは何なのだろう。
 何故自分は「娘とセックスをしている父親」という幻覚を見ているのか。
「嫌っ、止めないでっ。父さまもっと、もっと抱いて下さいっ」
 神治の意志とは関係なく、不意に止まった腰の動きに、女性は悲しげに叫びながら抱きついてきた。
 だが動かそうにも、体は神治の言う事を聞かなかった。
「何故ですか? やはり母さまを気にされているのですか?……そうですよね。母さまを裏切っているのですもの……」
 女性は悲しげにそう呟きながらジッと見つめてくる。
「ですがここであれば、この洞窟であれば大丈夫です。私の力で結界を張っていますから……この場所なら母さまには決して見つかりません。だから安心して私に子を、赤子を授けて下さい。父さまと私の、二人が確かに愛し合っている証として……」
 この女性も有希と同じく子を欲しているのか。
 自分は一体どの様な人物として見られているのか分からなかったが、どうやら妻に隠れて娘と愛し合い、子を得ようとしているらしいのだけは分かった。
 しかしこの場所は自分達のいた洞窟に思えるのだが、緋道村ではないのだろうか。
 緋道村であれば、父と娘が子を作っても問題はないからだ。
 そういった事が気になったが、それにしても何故自分がこの様な幻覚を見ているのかの方が気になった。
「父と娘の間に産まれた子が幸せになれるとは思えません。ですが私は欲しいのです。父さまとの子が、父さまとの愛の証が……決して妻にはなれぬのだから、せめて父さまとの子供だけは欲しいのです……」
 涙を流して願う女性の言葉に、神治は他人事でありながらも心を打たれた。
 今自分も有希との子を欲しているからかも知れない。
 自分達は結婚をする予定であり、そうでなくとも産まれてくる子供は皆に喜ばれるだろう。
 それに比べてこの女性と父親の関係は何と悲しい事なのか。
 気の毒に感じた神治は、二人に子が授かり、無事産まれる事を祈った。
 するとそれに応えるかの様に、腰が勝手に動き出したのに驚く。
「あっ、あっ、ああっ……嬉しい、あっ……父さまもっと、あっ……父さまもっと抱いて下さい、ああっ……私を、私をもっと愛してぇっ……」
 股間から伝わってくる快感は、並の人間ではありえない凄さがあり、神治はだんだんとそのセックスに夢中になっていった。
 これは幻覚であり、女性が見つめているのは別の男であるはずなのだが、それでも凄まじい快感と愛情を感じたのだ。
 まるで自分が「父さま」と呼ばれる男になった様に思えていたのである。
 目の前の女性を、娘を愛さずにはいられない。
 妻に対する裏切りと知りながら、そうせざるを得ないのだ。
 自分は何と酷い夫なのか……。
 だがこの愛らしい娘を抱かないなど無理な話だった。
 自分は娘を愛してしまったのだから……。


「神ちゃんっ。神ちゃん大丈夫っ?」
 不意に聞こえた声に、ハッと意識を戻す。
 見ると目の前には有希の顔が、完全に有希本人である顔が心配そうに見つめていた。
 一瞬、幻覚の二人の顔が重なってギョッとなるが、もう別人になる事はなかったため心底安心した。
「……俺、どうしてた?」
「分からないよ。急に全然動かなくなっちゃって……私、神ちゃんが死んじゃったんじゃないかって……すっごく心配した……」
 見ると頬に涙の跡があり、泣かせてしまったらしい事を申し訳なく思う。
 どうやらあれは幻覚ではなく、意識を無くしている間に見た夢だったらしい。
「ごめんな……何だか知らないけど気を失っちゃったみたいだ。変な夢も見たりして……」
「変な夢?」
「……うん。有希ちゃんが大人になっててさ、俺との子供が欲しいってねだってる夢」
 本当の事を話そうかと思ったが、何故か神治は誤魔化して喋った。
 よく分からないが、話す気になれなかったのだ。
「そうなんだ。大人って事は、もう結婚してるのかな?」
「多分ね。あんまり有希ちゃんが子供が欲しいって言うから、そんな夢を見たんだよきっと」
「ふふ、ごめんね。でも大丈夫だよ。多分もう妊娠してると思うし……」
「そうなのかな? だったらいいけど」
「私ね、分かるんだ。神ちゃんとの赤ちゃんがもう出来たって……不思議なんだけど、そうした実感があるの……」
 嬉しそうに微笑む有希を見ながら、神治は夢の中の二人も、有希の様に妊娠を実感したりしたのだろうか、などと思った。
 あの二人が一体何者なのか分からなかったが、夢とはいえ、自分が抱いた女性が喜んでいる方が嬉しかったからだ。
「もうすぐ俺は父親になるのか……」
「そうだね。私と神ちゃんの赤ちゃん……楽しみだなぁ……」
 嬉しそうに微笑む有希を見ながら、神治は自分が本当に父親になるのかと思うと感慨深かった。
 中学生の身で親になるなど妙な感じがしたが、すでに間接的とはいえ、ほたるやミカという娘がいる訳で、一応親にはなっているのだから、あまり今と変わらないのかも知れない。
 それより有希はどんな母親になるのだろうかと想像し、どう考えてもいい母親になる姿しか想像できない事に苦笑する。
 有希が駄目な母親になるなど考えられなかったからだ。
(そういやあの夢の中だと、母親っていうか、奥さんに隠れて娘を抱いているって感じだったよな……)
 どちらも同じシチュエーションだったのが妙に気になった。
 あれは一体何だったのだろう。
 この洞窟に居ると妙な感覚になるが、その影響であんな夢を見たのだろうか。
 父娘の背徳的な交わり。
 自分は本当の意味で娘とセックスをした事はなかったが、将来子供が出来、娘を抱くとしたらあんな想いを持つのだろうか。
 それともその頃には緋道村の慣習に染まり、平然と抱くのだろうか。
 もしかしたらそうした想いが心のどこかにあり、あの様な夢を見たのかも知れない。
 妙に時代がかった喋りだったのはよく分からなかったが、取り合えずそうなのではないかと神治は結論付けた。
「神ちゃんどうしたの?」
 黙っていたのを心配したのか、有希が不安げに尋ねてきた。
「何でもないよ。それよりさ、もう一回しよう?」
「え? うん……」
 神治が告げると、有希は恥ずかしそうに照れながらも、嬉しそうに体を寄せてきた。
 精神的な初々しさは変わらないが、すでに肉体は神治によって開発されているため、有希の肉体は女の魅力に溢れていた。
 そんな素晴らしい女の子が自分の物なのだと思うと、神治は凄く誇らしくなった。
「有希ちゃん、愛してるよ……」
「私も、神ちゃんを愛してる……」
 可愛らしい顔を恥ずかしげに赤くしている有希を見つめつつ、神治はこの少女をこれからも愛していくのだと決意しながら、再び肉棒を押し込んでいくのだった。












あとがき

 ようやく緋道村に帰ってきたという事で、まずは家族のフォローから書いてみました。
 家族とのセックスは何度か書いてますが、一人一人だとパターンだし、長くなるのも面倒なのでまとめて簡易的に書いてみた次第。
 んでそれだけだとつまらないので、有希ちゃんとのラブラブ&妙な展開を描いてみました。
 ラブラブは相変わらずですが、妙な展開になっているのは取り合えず話を盛り上げるために入れてみました。
 詳細については今後その内書くと思います。
 考えてみると、有希ちゃんとのエッチはそんな要素が付いている事が多いなぁ、とか思ってみたり。
 まあ、一応メインヒロインの一人なので、それなりに特別扱いって事ですな。
 赤ちゃんは果たして本当に出来ているのか、はたまた勝手な思い込みであるのか、しばらくしたら判明すると思います。
(2008.10.21)



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