緋道の神器


        第二十四話  天使の卵



 神治は森の中を歩いていた。
 魔法使いルシーヌの家からの帰りだ。
 本来ならすぐにでも瞬間移動でガジギールの城まで戻れるのだが、この森にはそういった術を阻害する結界が張られているとかで、森の外までは徒歩で行くしかなかったのである。
 何やらルシーヌを嫌っている組織があるらしく、彼らが家に来るのを防ぐためにそうした結界を張っているのだという事だった。
 その組織は魔女の存在を否定しており、隙あらば命を狙ってくるらしい。
 何とも物騒な連中だと思ったが、他人事ではないのが問題だった。
 どうやらその組織は、ルシーヌの家を訪ねた者に対しても悪意を持つ様で、今の神治はその標的になりえたからだ。
 さらに言えば、彼らは自分たちの信仰する神以外を悪魔とし、存在を許さないとしていたため、神治などは二重の意味で排除される理由があったのである。
 そうした事から、神治は出口に着いたらすぐに瞬間移動しようとルシーヌの家を出てからずっと考えており、そして実際に出口が近づいて来ていたため、かなり緊張を高めていたのだった。
(どうやら誰も居ないみたい……って、え?)
 森の外へ出た瞬間、誰も居なかった事にホッと息を吐き出したのも束の間、周囲に何かが現れたのに驚く。
 それは後ろ足で立つ、二メートルはあろうかという犬であり、数頭が神治を取り囲む様にして立っていた。
(ケルベロス……)
 その化け物に神治は見覚えがあった。
 数日前、この地域へ来たばかりの時に出会い、襲われた相手だからだ。
 ケルベロスは、ガジギールを嫌う部の民の組織が嫌がらせとして送り込んでいたのであり、偶然そこに居合わせた神治は、襲われたアンリーエを助けたのだった。
 そして同じ様にしてケルベロスに狙われている今の状況は、ルシーヌを嫌っている組織とガジギールを嫌っている組織が同じである事を示唆している様に思えた。
(とっとと逃げちゃおう……)
 何にせよ、その様な過激な連中の相手をまともにする必要は無かった。
 すぐさま瞬間移動してしまえばいいのだ。
 アンリーエを助けた時は疲れていたため瞬間移動が上手く使えなかったが、今ならそうした事も無く一瞬で逃れる事ができるだろう。
 そう思った神治は、こちらへの敵意を隠さず、凄まじい殺気を放っているケルベロス達に警戒しつつ、瞬間移動しようと意識を集中した。
(……って、痛っ……)
 景色が変わったと思った途端、何かにぶつかった衝撃を受けた神治は驚いた。
 痛みに顔をしかめながら周囲を確認すると、森の入り口から少し離れた場所に移動しているのが分かる。
 だがそれは、神治が考えたよりも遙かに短い移動距離だった。
 何故そうなったのか分からず、さらに言えば移動後に受けた衝撃は一体何であったのかと疑問を持つ。
(分からないけど、今はとにかく逃げるのが先だ)
 こちらが移動した事に気づいたケルベロス達が近づいて来たため、神治は慌てて再び瞬間移動を行なった。
(……ぐっ……)
 しかしやはりぶつかった衝撃を感じると共に、今度はほとんど移動出来ていない状況に愕然とする。
 一体どういう事だろう。
 まるで何かに阻害されているかの様ではないか。
 一瞬ルシーヌの結界の影響かと思ったが、そこはすでに森と呼ぶにはふさわしくない草原であったため、そうとは思えなかった。
 何よりルシーヌの張った結界は、術の発動自体を阻害する種類のものだそうなので、瞬間移動が出来ている今の状況から考えれば違うだろう。
(って、これは……)
 不意に正面の空間に何かあるのが分かった。
 手をかざしてみると、それは目に見えない壁の様なものだった。
 触れている部分から何か力の様なものが伝わってくるのが感じられ、おそらくこれが瞬間移動を阻害しているのに違いなかった。
 要するに物理的・術的にこの場から逃げられない結界を張られたということらしい。
 こちらの能力を警戒したケルベロス達が、逃がさない様にあらかじめ結界を張っていたのだろう。
(閉じ込められたって訳か……)
 その事に溜息を付くが、神治はすぐに気分を切り替えると覚悟を決めた。
 瞬間移動という絶対的な逃亡手段を封じられ、また物理的な障壁から走って逃げる事も出来なくなった以上、後はケルベロスと戦うしか選択肢は無かったからだ。
 普通であれば、あの恐ろしい化け物とどう戦えば良いかと思い、恐怖に震えるところだが、神治は落ち着いていた。少し緊張している程度なのだ。
 そんな自分に我ながら驚いたが、もしかすると一度倒した経験がそうさせているのかも知れない。
 あの時は恐ろしくて仕方がなかったが、結局は怪我一つせず倒せたのであり、その事を考えれば、恐怖が薄まってもおかしくなかった。
 実際「勝てる」という意識があり、妙な自信があったのである。
(五匹か……)
 ケルベロスの数を確認し、それくらいなら何とかなるだろうと考える。
 この程度の数であれば、油断さえしなければ一度に術をかけられるはずだった。
 強制的に射精させ、動きを止めるあの術を使えば、自分の体に触れられる事すらなく勝負を決められるだろう。
 やはり一度倒している経験が大きい様で、神治はかなり落ち着き始めていた。
 要は奴らを射精させまくればいいだけなのだから簡単だ。
 殴ったり斬ったりといった暴力行為をする訳ではないため、戦闘の素人にありがちの、相手を傷つける事へのためらいに関しても問題は無かった。
 何しろ気持ち良くしてやるだけなのだから、変な意味で言えば悦ばれる行為と言えただろう。
(よし、やるぞっ)
 そうして自分の状態を確認し、腹を決めた神治は手に意識を集中した。
 そこから射精を促す「気」を放出するのだ。
(行けっ!)
 心の中で気合いを入れると同時に手を前に突き出し、「気」を放つ。
「キャンッ!」
 その途端、一匹が体勢を崩して転び、精液独特の匂いが漂ってきた。
 どうやら上手くいったらしい。
 続けて残りのケルベロスにも次々と「気」を放っていく。
「キャウッ!」
「ガワッ!」
「キャイッ!」
「グワゥッ!」
 四匹のケルベロスはぶつかり合う様にしながら地面に転がった。
 その事で調子づいた神治は、続けて「気」を放っていった。
 とにかく相手の意識が無くなるまで射精させなければ安全ではないため、このまま一気に射精させていかなければならなかったのだ。


『……』
 しばらく「気」を放ち続けていると、五匹のケルベロス達は体をピクピク震わせながら大人しくなった。
 周囲には大量の精液が散らばっており、強烈な匂いが立ち上っている。
(何とか、なったな……)
 思ったより上手くやれた事にホッと息を吐き出す。
 そして自分にはこうした化け物を倒せる力が確かにある事に、神治は誇らしさを覚えた。
 何やら凄い存在になった様に思えたのだ。
 元々すでに神であるのだから当然の事なのだが、その自覚に欠ける神治としては、こうした行為ごとにそう思ってしまうのである。
(ま、とにかくこれで帰れるはずだよな……って、あれ……?)
 そう思いながら瞬間移動してみると、ぶつかる感触と共に、ほとんど移動できていなかった事にガッカリする。
 どうやらまだ結界が生きているらしい。
 ケルベロス達は意識を失っているのだが、そうであっても結界は切れないのだろうか。
「へぇ〜〜、凄いじゃない。まさか五匹を一度に倒すなんてねぇ」
 そんな事を思っていると、不意に声が聞こえたため驚く。
 他に誰も居ないと思っていた神治は、慌てて声のした方へ視線を向けた。
(え……?)
 そしてそこに居た人物を見た瞬間、体の動きを止めた。
 何しろどういった反応をすればいいのか分からない相手だったからだ。
「ふふぅん、あなたってなかなかの力を持ってるんだ。面白いわぁ……」
 そう言いながら笑っている人物、それは女性だったのだが、彼女の背中には普通の人間には存在しない物が付いていたからである。
(翼……?)
 それは大きな白い翼だった。
 頭の後ろから膝の辺りまである巨大な翼であり、それはまるで物語に出てくる天使の様だった。
「だから私が言ったじゃない。五匹くらいならすぐ倒しちゃうって」
 そして天使は一人ではなかった。
 他に二人、同じ様に翼を生やした女性が居たのだ。
 三人は二十代後半といった容姿で、金髪に白い肌をした美女ぞろいだった。
「もしかして、悪魔ガジギールの所に送り込んだケルベロスを倒したのもこの子かな?」
(!……)
 知っている名前が出た事に動揺する。
 どうやらあの時のケルベロスはこの女性達の仕業らしい。
 未迦知神の言っていた、ガジギールを嫌っている部の民の組織とは彼女たちの事なのだろう。
 そして今の力を見られた事から、神治が悪魔として認識されたのは明らかだった。
 何しろ彼女たちの組織は、自分たちが信奉する神以外を悪魔とするからだ。
「そりゃそうでしょ。この子の力って凄いもの。かなりの悪魔よね」
 案の定、悪魔呼ばわりされた事に苦笑する。
「で、どうする?」
「どうするって、ねぇ?」
「そりゃ決まってるでしょ」
 女性達は可笑しそうにクスクス笑い合うと、ゆっくり近づいてきた。
 敵意は感じられないため襲われないとは思えたが、何をされるのか分からない神治は緊張を高めた。
「あなた、お名前は?」
「どこの悪魔なの?」
「魔女にどんな用事だったのかな?」
 悪魔と呼んでいる割に、友好的な態度で問いかけてくる女性達に拍子抜けする。
 もっと高圧的な態度で接してくるかと思ったからだ。
「緋道神治です。日本から来ました。魂を調べてもらうためです」
(!……)
 そして何も考える間もなく答えている自分に驚く。
 口が己の意志とは関係無く動いたのだ。
「ふふ、素直ね」
「可愛いわ」
「いい子いい子」
 不意に女性たちが抱き付き、体に触れてきたため動揺する。
(って、体が……)
 いつの間にか全く動けなくなっている事に神治は気がついた。
 指一つ動かせないのである。
「はい、捕獲完了」
「それじゃ寝てねぇ」
「お休みなさぁ〜〜い」
 そう言われた瞬間、急に眠気が押し寄せてきた。
 どうやら女性達の術にいつの間にかかかっていたらしい。
 あまりに単純に捕らえられてしまった事に悔しさが起こる。
 神として修行した事が全く意味を成していないのだから当然だった。
 相手は自分に敵意を持っているだろうと予測していたのに、それに対処できずに捕まってしまったのだから間抜けとしか言いようが無い。
(未迦知さま……)
 その事に悔しさを感じつつ、徐々に薄くなっていく意識の中で、自分にとって最も頼れる存在を頭に浮かべながら、神治は意識を失っていくのだった。


 気がつくと、何かベッドらしい柔らかなモノの上に横たわっているのが分かった。
 まだ意識は朦朧としている感じだが、それでも徐々に体の感覚が戻ってくる。
(うっ……)
 一体自分はどうしたのだろう、と思っていると、不意に快感が走り抜けたため神治は体を硬直させた。
 それと共に感覚がしっかりしてきて、そうなるとさらに快感が強くなった。
 体が微妙に揺れていて、肉棒が何かに包まれているのが分かる。
 ゆっくり目を開けてみると、どうやら自分は裸になっており、同じ様に裸の美しい女性が腰の上に跨って動いているのが見えた。
 他に二人、やはり裸になっている女性が居て、いやらしい表情を浮かべながら体中に舌を這わせている。
 三人に共通しているのは、肉付きのいい豊満な体と、背中に大きな白い翼がある点だった。
(あ、そうか……俺、この人たちに……)
 どうやら気を失ってからどこかへ連れて行かれ、よく分からないがセックスをさせられているらしい。
「気がついたみたいね、あんっ……あなたなかなか、あっ……いいわよ、ああっ……若い悪魔だけあって、あっ……素敵だわぁ……」
 腰に跨った女性が、気持ち良さそうな顔をしながら告げてくる。
「もう何度も射精してるけど、全然元気が無くならないんですもの。やっぱり若いっていいわね」
 体を舐めている女性が笑いかけてきた。
「目が覚めたならキスしましょ? んっ、んんっ……」
 もう一人の女性にいきなり唇を奪われ、息苦しさを覚える。
 だがそれはすぐさま快感に変わっていった。
(スゲェ、気持ちいぃ……)
 肉棒はもちろんの事、舐められている体、そして舌が絡んでいる口内からは、たまらない快感が押し寄せてきていた。
 それは実に強烈な、激しい快楽だった。
 以前にも白人の女性達に囲まれて同じ様にされた事があったが、あの時は癒しを伴う快感だったのに比べ、今されているのには攻撃的な快感があった。
 神治の体に快感を与え、自らも快楽を貪る様な感じなのである。
 その刺激は凄まじく、まさに自分の全てが奪われてしまう様な恐怖を感じさせた。
(あぁ……何かヤバイ……これヤバイよ……)
 体がピクピクと震え、意識が蕩けていく様な感覚が起きる。
 自分という存在が快楽に溶けていってしまう感じなのだ。
 それは本来恐ろしい事なのだが、あまりに強烈な気持ちの良さであるため、思わず受け入れてしまいそうだった。
(うっ、くっ……)
 そうしている内に射精が起きた。
 意識していないにも関わらず精を放ったのだ。
 おそらく寝ている間もこうして射精していたのだろう。
「あぁ……美味しいわぁ……あなたの精液……濃くて美味しぃ……」
 腰に跨った女性はうっとりしながら体を震わせている。
(ぐっ、くっ……)
 肉棒がキュウっと締め上げられ、強烈な吸引によって精液が引き出されていく。
 そしてそれと共に何かが体内から抜けていくのが分かった。
「ああんっ、大量のマナをありがとう。たまらないわぁ……」
「この子のはホントいいわよね。何て言うか普通の悪魔とは違うっていうか」
「そうそう、マナの量が半端じゃなく濃いの。ちょっとでもクラクラ来ちゃうのに、それが多いんだから最高って感じ?」
 三人は楽しげに笑い合っている。
 一体何の事を話しているのだろう。
 どうやら自分の精液について話している様に思えたが、「マナ」という単語についてはよく分からなかった。
「あの……マナって……?」
 朦朧とする意識で問いかける。
「ふふ、あなたの力の源よ」
「生命の素とも言うけどね」
「つまりそれを出しすぎると死んじゃうの」
 何やら恐ろしい事を言っているのが分かった。
 どうやら精液には「マナ」と呼ばれる要素があり、それは出し過ぎると死んでしまうらしい。
 つまりこのまま射精し続けたら死んでしまうという事だ。
(何だか……淫妖と同じだな……)
 淫妖は獲物に射精させ、そこに含まれる生命力を奪う危険な存在だった。
 おそらく彼女たちの言う「マナ」とは生命力と同じものなのだろう。
 もしかしたら女性たちは、淫妖と同じ事をしているのかも知れない。
「あなたは悪魔だからね。死んでもらう訳」
「でもただ殺すんじゃ勿体ないから、マナをいただいちゃおうってこと」
「マナは私たちの力を増幅させるし、何よりお肌にいいのよ。特にあなたみたいな若い子のはね」
 やはり淫妖と同じだった。
 だが淫妖が生きるために生命力を奪っているのに比べ、女性達は己の力を高め、美容のためにしている点で違っていた。
 彼女達は見かけは美しい天使だが、中身は己の欲のために命を奪う、それこそ悪魔の様な存在と言えただろう。
「それじゃ、次は私ね」
「交代交代〜〜」
「あんっ、しばらくお預けかぁ……」
 女性たちはそう言いながらそれぞれ位置を変えた。
 肉棒を入れていた女性が体に顔を寄せ、体を舐めていた女性が唇に吸い付き、キスをしていた女性が腰に跨ってきたのである。
 女性達の体はかなり肉付きが良く、まさに女肉の塊といった感じであったため、それが目の前で動くのには迫力があった。
 三つの女肉がタプンっと艶めかしく蠢く様はとんでもなくいやらしく、見ているだけで射精しそうになるほどだ。
 視界は桜色に染まった肌と金色の髪、そして白い翼で溢れ、それらが混じり合って幻想的な淫靡さを醸し出しており、まさに極楽、いや相手が天使であるだけに天国といった状況だった。
(何て……エッチな光景だろ……)
 神治は死の危険がある事を理解しつつ、その状況にうっとりとする自分を抑えられなかった。
 自分は今、とんでもなく美しくいやらしい存在に犯されている。
 淫乱な天使に犯されているのだ。
 それは神治の中に強烈な興奮を呼び起こし、肉棒を激しく震わせずにはいられないものだった。
 このまま女性達に精を吸い取られ、快楽に染められていくであろう状況は、たまらない期待感を呼び起こしたのである。
 相手が本来聖なる存在の天使である事がいやらしさを余計に感じさせ、それに自分が貪られていく事に心が躍った。
 それはまさに天上の快楽と言えただろう。
 これで悦ばない、満足しない男はいないに違いない。
 そんな想いで神治の心は溢れ、徐々に意識が快楽に蕩けていきそうになった。
(でもなぁ……)
 だがそこで、今の状態を否定する想いが湧き起こった。
 確かにこのまま天使の女性達に快楽を与えられていれば、それなりに気持ちいいだろう。
 だがそうして一方的にされているだけというのは、本来の自分の悦びとは違っている様に思えた。
 そう、いつも自分はこういった状況では不満を持ったはずだった。
 何故なら自分の楽しみは、女を犯すことにあるからだ。
 女を組み敷き、支配し、自分のモノとする事に悦びがあったのである。
 それこそが緋道神治にとってのセックスだった。
(そうだよ……犯されるんじゃ駄目なんだ……俺が、俺が犯すんだ……俺が天使を犯すんだよっ……)
 その想いが強まると同時に、頭にかかっていたモヤの様なモノが一気に晴れるのが感じられた。
 体にも力が漲り、肉棒がそれまで以上に硬く大きくなっていく。
 心身共に凄まじい活力が溢れてくるのが分かった。
「それじゃ、死ぬまで天国を味わってね」
「あなたは悪魔だから、死んでも天国へ行けないものね」
「だから私たちが天国気分を味合わせてあげる」
 神治の変化に気づかない女性達が、いやらしい笑みを浮かべながらそう告げてくる。
 確かにここは天国と言えたかも知れない。
 何しろ見た目が天使な美女が裸で自分に奉仕してくれているのだから。
 しかし自分は神なのだから、格下である天使を悦ばせてやる方が正しい様に思えた。
 上の者は下の者に対して快楽を与えるべきだと思うからだ。
 女性達は別の神のモノではあるが、この際細かい事は気にしても仕方がないだろう。
 そして他の神のモノを犯すという事には激しい興奮があった。
 他人のモノを奪い、己のモノとする。
 それは男としてたまらなく興奮する行為の様に思えたのである。
(そうだよ……俺はこの女達を、自分のモノにしたい……)
 徐々に荒々しくなっていく己を感じながら、神治はゆっくりと体を起こした。
「あんっ、ちょっと……」
「え? 何で動けるの……?」
「ちゃんと術をかけたはずなのに……」
 急に動き出した神治に女性たちは驚いている。
 そしてその言葉から、やはり何かしら術をかけられていたのが分かった。
 おそらく先ほどまでボンヤリしていた意識もそのせいだろう。
「キャッ……」
 神治は腰に跨っていた女性を押し倒した。
 そして巨大な乳房に吸い付くと、小指ほどの大きさの乳首に吸い付いていく。
「あっ、あんっ……やだ、いぃっ……この子の口、あっ……いいわぁっ……」
 途端、女性は甘い声を漏らすと共に、うっとりとした表情を浮かべた。
 驚いていたはずであるのに、すぐさま快楽に浸っている事に苦笑する。
 神治はそれを満足げに見ながら、手に余りまくる巨大な乳房をムニムニと揉みしだいた。
 それはこれまで経験した事がないほどに大きく、実に揉みごたえのある乳房だった。
(デカイなぁ……ホント大きいや……さすが白人、凄いもんだね……)
 乳房の間に顔を挟み、左右から肉を押しながら顔を動かすと、何とも言えない気持ちの良さが押し寄せてくる。
「ちょっとちょっと。そんな駄目よ、一人だけなんて」
「そうそう、あなたは私たち全員を相手にしなきゃいけないんだから、そういうのは駄目ぇ」
 そう言いながら二人の女性が神治の体に絡みついてきた。
 術が解けた事よりも、一人だけを相手にしている事を気にしているのに可笑しくなる。
 どうやらこの女性達にとっては快楽が一番の問題らしい。
 術が解けようが、とにかく快楽を得られれば良いのだろう。
 その事に苦笑していると、一人には耳を噛まれて穴に舌を差し入れられ、もう一人には肉棒を口に含まれた。
 その刺激を気持ち良く感じつつ、神治も負けじと乳房を愛撫していくと、女性の腕が絡んで乳房に押しつけられた。
「あっ、ああっ、あんっ……」
「んっ……んんっ……んっ……」
「んっ、んぐっ……んんっ……」
 三人三様で絡んでくる豊満な肉体に、神治は女肉の良さを改めて認識した。
 現在自分の体は、柔らかく弾力のある温かい肉に包まれており、まさに女天国という状況だった。
 これまで同じ様な状況を経験した事はあったが、これほど迫力のある肉に囲まれた事はなかったため興奮がかなり強かった。
 自分がのし掛かっている体は、まさに極上のクッションの様にこちらの体重を受け止め、蕩ける様な心地良さで支えている。
 背中に押しつけられている体は、背後という無防備な部分を包み込み、安堵を感じさせる快楽を呼び起こしていた。
 そして股間付近では、肉棒が厚い唇と大きな口内に擦られ、強く吸い上げられているのがたまらなかった。
(何とも凄い状況だなぁ……)
 自分が三人の女に絡みつかれ、快楽を味わっていると思うと嬉しくなってくる。
 そしてこの快感をもっと高めるには肉棒を膣に押し込み、女性達を喘がせる必要があるだろう。
 何故ならそうしてこそ、己が女性達を従えている事になるからだ。
「あ……え? お終い?」
「やん、動いちゃ駄目よ」
「あっ、もっと舐めさせてぇ」
 神治は顔を放して体を起こすと、のし掛かっている女性の脚を左右に広げ、そのまま一気に肉棒を押し込んでいった。
 ズブリ……ズブズブズブ……。
「あんっ……あっ、あっ、ああっ……」
 一気に根本までハメると、肉棒が弾力のある膣襞に押されて腰に震えが走った。
 女性の膣内は外見の豊満さを裏切らない、まさに肉の塊といった感じで、肉棒が左右からグイグイと押されて挟まれ、心地良い圧迫感で一杯だった。
 そして肉棒全体に膣襞が絡みつき、激しく擦り付いてくるのが最高に気持ち良かった。
 それはまさに柔らかで弾力のある肉の塊の中といった感じで、ジッとしているだけでもたまらなかったのだ。
(こいつは凄いや……)
 今まで経験したことのない肉の感触に、神治の中の闘争心が強まった。
 この巨大な女肉を肉棒で荒らしまくり、自分という存在を刻みつけたい。
 そんな征服欲で一杯になった神治は、そのまま腰を激しく動かし出した。
「あんっ、あんっ、ああんっ……やっ、やっ、やぁっ……」
 女性が甘い喘ぎをあげながら、激しく体を震わせた。
 肉付きのいい太ももが、逃がすものかという感じで腰に絡みついてくる。
「いきなり、あっ……いきなり凄いわ、ああっ……いきなりこんなぁっ……」
 女性は驚きと快楽の表情を浮かべながら、まるですでに絶頂が近いかの様な感じで喘いでいる。
 その反応の良さに苦笑しつつ、少し動いただけで乱れまくっている女性に神治は満足感を覚えた。
「ああんっ、あっ……嘘、あんっ……嘘よこんな、あっ……こんなの嘘ぉっ……」
 女性はそう口走りながら、頭を左右に振って喘ぎまくった。
 両腕が背中に絡み、グイと引き寄せられたため、神治の体は女性の肉体に埋まる状態になった。
 体全体が女肉に包まれ、何とも言えない心地良さが感じられる。
 それによって肉棒は猛り、それまで以上に女性の膣で暴れまくった。
「あぁっ、あっ、ああっ……やだっ、やだっ、やだぁっ……凄い、あっ……凄い、あんっ……凄すぎぃっ……」
 神治の腰が動くたびに女性は顎を仰け反らせ、ビクビク体を震わせまくった。
 狂った様に悶えるその姿は非常にいやらしく、神治は満足の笑みを浮かべた。
 この女はもう自分のものだ、という確信を持ったのだ。
「あっ、あっ、ああっ……いいっ、いいっ、いぃんっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
 そう思った瞬間、女性は突如絶頂を迎えた。
 まるで神治の確信に応えるかの様に体を硬直させたのだ。
 神治はその様子を満足げに見下ろすと、まだ元気な肉棒を引き抜き、残りの女性達の方へ向き直った。
「あ……」
「え……」
 二人の女性は何やら呆気に取られた様子でこちらを見ている。
 神治はそれに構わず近くに居た女性の肩を掴むと、押し倒して四つんばいにさせた。
「ちょ、あなた一体、あぅんっ……」
 何か言いかけるのを無視して肉棒を押し込んでいく。
 ズブズブズブ……。
「あっ、ああっ……あぁっ……」
 一気に根本まで入れると、そのまま肉付きのいい尻を掴みながら腰を動かし出す。
「ああぅっ……あっ、あっ、ああっ……何これ、あっ……凄い、あんっ……いきなり、あっ……いきなり凄いわぁっ……」
 すると先ほどの女性と同じく、まるでもう絶頂が近いかの様に喘ぎ出した。
 彼女達にとって神治の肉棒はよほど相性がいいらしい。
 その事で神治は、しばらく会っていない姉の佳奈を思い出した。
 姉は肉棒を入れるだけで常に絶頂に至っており、その凄まじい相性の良さから、自分に狂わんほどの執着を示しているのだ。
 それと同じ状況が天使の女性達を相手にしている今も展開されており、姉以外でこの様な状態になっている事に新鮮な想いと驚きを抱く。
「あんっ、あんっ、ああんっ……駄目、あっ……駄目よもう、あんっ……駄目ったら駄目ぇっ……」
 女性は金色の髪を振り乱し、背中に生えた翼をバサバサ揺らしながら激しく悶えた。
 振り返ってこちらを見つめる瞳は、もう我慢できないといった感じで潤みまくっている。
 神治はその様子を満足げに見下ろしながら、タプンタプンと揺れる巨大な乳房を背後からギュッと掴み、背中にのし掛かる様にしながら腰を強く振っていった。
「あぐっ、あっ、ああっ……そんな、あっ……わたしもう、あんっ……わたしもうイっちゃうのぉっ……あっ、あっ、あぁあああああああっ!」
 女性は頭を思い切り仰け反らせると、大声を上げて体を硬直させた。
 もう絶頂に至ったらしい。
 だが姉で慣れている神治は、気にする事なく肉棒を引き抜き、残り一人になった女性に向き直った。
「あなたは一体……一体何なの……?」
 少し怯えた様にしている女性に笑いかけながら、神治はその豊満な体を抱き締めた。
 そしてそのまま胡座をかくと、腰の上に女性を座らせる形で肉棒を押し込んでいく。
「あぅんっ……やっ、凄い、あっ……入れただけでこんな、あぁっ……ああんっ……」
 ズンっと腰を突き上げると、女性は激しく喘ぎながらギュッと抱き付いてきた。
 体の前面が柔らかで弾力のある肉に覆われて気持ち良さが湧き起こる。
「あっ、あっ、ああっ……激しい、あっ……激しくて、あんっ……凄いわぁっ……」
 神治が腰を突き上げるたびに女性の体に震えが走り、頭を抱き締められた。
 そのまま女性自身も腰を振り出し、頭を仰け反らせて髪を振り乱しながら喘いでいく。
 背中の翼がバサバサと揺れ動き、自分が人外の存在と交わっている感覚を神治は持った。
(そういや、こうしてハッキリ人間じゃないって分かる相手とするのって初めてかも……)
 これまで神や淫妖などという存在とセックスしてきたが、皆見た目は普通の人間にしか見えなかったため、この女性達の様に翼を持った異質な相手との交わりは初めてだった。
(こりゃ、面白い経験だ……)
 そんな事を思いながら、もう限界と言わんばかりに悶えまくっている女性をさらに突き上げる。
「ああんっ、やだそんな、あっ……そんなにしたら、あんっ……そんなにしたらおかしくなっちゃうっ……」
 女性は頭を左右に振り、涎を垂らしながら乱れまくった。
 ここまで快楽に狂わせている事に楽しさを覚えつつ、男としての誇らしさが強まっていくのを神治は感じた。
 女はやはりこうして支配する方が断然良いのだ。
 肉棒で快楽に染め、自分を求めさせる事に快感があったのである。
「あはっ、あっ、あはぁっ……いいっ、いいっ、いいよぉっ……わたし、あっ……わたしもぉっ……あっ、あっ、あぁああああああああっ!」
 次の瞬間、女性は体を硬直させ、大声で叫んだ。
 しばらくピクビク体を震わせた後、ゆっくりと力を抜いていく。
「……」
 神治は肉棒を引き抜くと、黙ったまま三人の様子をジッと見つめた。
 そこには何とも言えない色っぽさの美女達が、力の抜けた状態で横たわっている。
(ふふ……)
 たまらない嬉しさに笑みを浮かべながら、神治は最初に抱いた女性の腰を持ち上げると、再び肉棒を押し込んでいった。
『あぅんっ……』
 すると三人が同時に声を発した。
 膣内に残した「気」を操る事で、肉棒を入れていなくとも入れているかの様に感じさせる術を使ったのだ。
『あっ、あっ、ああっ……』
 神治が腰を振り出すと、三人は体を激しく悶えさせながら喘いだ。
 目の前にある柔らかな肉に身を埋め、ギュッと抱き締めるとたまらず、神治は肉棒に押し寄せてくる三人分の感触を味わいながら、激しく腰を振っていくのだった。


 どのくらい経ったろうか、神治はグッタリと横たわる翼の生えた美女三人をベッドに残すと、服を身に付けて立ち上がった。
 女性達は満足そうな笑みと、疲れ切った表情を浮かべながら眠りこけている。
 あれから何度も抱き、肉棒で突きまくった結果、三人は激しく悶え狂い、しばらくすると意識を失ってしまったのだ。
 さすがにそんな相手を抱く気にならなかった神治は、それを機会にセックスを止めたのだった。
(さて、これからどうしようかな……)
 このまま瞬間移動で帰っても良かったのだが、何やらそんな気分になれなかった。
 三人の豊満な美女を従えた余韻に浸りたかったのかも知れない。
 これまでも同じ様に女性を抱いてきたが、今回はどこかいつもと違っている様な感じがしたのだ。
 何というか余裕があるというか、まるで年下の初心な少女を導き、自分に夢中にさせた時の様な、そんな奇妙な満足感があったのである。
 相手はどう見ても自分より年上で肉体的に熟れている、さらにはセックスが好きらしい点からして、経験的にもかなりのベテランに違いない女性三人を相手にしたにしては、それは奇妙な感覚だった。
(まあ、そこそこ楽しめたからいいんだけどさ……)
 そうした想いも余裕の現れだった。
 まだまだ抱けるといった感覚があり、今すぐにでも別の女性を抱きたいくらいの気持ちがあったのだ。
 女性達をかなりの時間抱いていたのだから、いつもならば十分満足しているはずなのだが、もっと抱きたい感覚が強かったのである。
 そんな事を思いながら部屋を見回していると、少し離れた場所にドアがあるのに気づいた。
 近づいて開けると外は廊下であり、かなり先まで続いている様子から、今自分がいる場所が広い建物の中だというのが分かった。
(どっちへ行けばいいかなぁ……)
 よく分からなかったが、何となく出口があるであろうと思える方向へ歩き始める。
 ここはあの天使の女性達の住処、つまり自分の様な存在を悪魔とする組織の施設かも知れないのだから、今の神治の行動はあまりに呑気すぎたと言えただろう。
 だがどうもそうした警戒心を起こす様な緊張感が無かったのである。
 何があっても何とかなる、といった様な気分になっていたのだ。
 ケルベロスを倒し、天使の女性達を従えた事で気分が大きくなっていたのかも知れない。
(って、あ、こっちじゃなかったか……)
 運良く誰にも出会わず廊下を歩いていたが、しばらくすると出口とは反対方向へ向かっていた事が分かった。
 少し先が行き止まりになっていたのだ。
(ん……?)
 仕方がないから戻ろうと振り返った瞬間、不意に何かを感じた神治は動きを止めた。
 妙な力の様な感覚を覚えたのだ。
 意識を集中すると、それが左の方向から来ているのが分かった。
(地下、か……?)
 左手の廊下の先に下へ続く階段があるのが見え、どうやら自分が気になったモノはそこから感じられているらしい。
 他人の家の中を勝手に探るのは気が引けたが、興味の方が勝った神治は、階段に近づくとゆっくり下りていった。
 下まで行くと目の前にドアがあり、少し躊躇してからノブを捻ると開いたため、そのまま部屋の中へ入っていく。
 そこはゴチャゴチャと物が置いてある、何やら研究室の様な部屋だった。
 この様な場所から何を感じたのかと不審に思っていると、部屋の奥に妙な物が置いてあるのが見えた。
(卵……?)
 それは柔らかそうな台座に乗せられた白い縦長の球状をした物体で、卵の様に見えたが、見慣れている鶏の卵と違ってかなり大きく、高さが四十センチほどあった。
 一体何の卵であるのか分からないが、神治はそれが妙に気になった。
(ここから……感じる……)
 どうやら自分が感じた何かは、この卵が発しているらしい。
 神治は吸い寄せられる様にして卵に近づくと、しゃがんでそっと触れてみた。
「くっ……!」
 その瞬間、体に痺れが走ったため慌てて手を放す。
(う……気持ち、いい……)
 その痺れは甘美なものであり、体中に快感が響き、股間の一物は一気に硬く大きくなった。
 何やら怪しげな事だったが、不審の念よりも今得た気持ちの良さをもっと味わいたくなった神治は、呼吸を荒くしながら手を伸ばして再び卵に触れてみた。
「うっ……くっ……うぅっ……」
 するとゾクゾクする様なたまらない快感が走り抜け、肉棒がビクンビクンと震えた。
 さらには下着と擦れるだけで射精感が押し寄せ、すぐにでも精を放ちたくなってくる。
(何でこんな……でも……気持ちいぃ……)
 自分が異常な状態になっているのは分かり、その原因が卵に触れているためである事も分かるのだが、どうしても手を放す事が出来なかった。
 それほどまでに卵に触れる事で起きる快楽はたまらなかったのだ。
(もう我慢できないっ……)
 神治は片手でズボンのチャックを下ろすと、いきり立っている肉棒を取り出し、そのまま掴んでしごき出した。
 ホッとする様な想いと共に、ボンヤリとした気持ちの良さが押し寄せてくる。
 自慰をするなどいつ以来だろうか、などと思いながら、卵に触れつつ一物を勢い良く擦る。
(俺の手って……こんなに気持ち良かったっけ……?)
 何やら肉棒を掴む手のひらの感触が実に良かったため奇妙に思った。
 しばらくぶりにする自慰のせいでそんな風に感じられるのだろうか。
 とにかく自慰とは思えないほどに気持ちが良かったのだ。
(うぅっ……うぐっ……凄い……このままだと……出せるんじゃ……)
 高まっていく射精感に驚く。
 伯母との初体験以来、自慰では射精する事が出来なくなっていたのだが、今の自分は精を放てそうな感じがしたのだ。
(うっ、うっ、うぁっ……!)
 次の瞬間、勢い良く精が迸った。
 予想した通り、自慰で射精する事が出来たのである。
 亀頭の先から放出される白濁液は、勢い良く目の前の卵にかかっていった。
(あ、ヤベ……)
 よく考えれば、勝手に入った部屋の、貴重品らしいモノに精液をかけてしまったのだから、それは何ともマズイ行為に思えた。
 何とかしなければ、と思っても、一度始まった射精は止まらず、神治は押し寄せてくる快感にうっとりとなりながら何度も何度も精を放ち続けた。
(く……ふ……うぅ……)
 ようやく射精を終えると力を抜く。
 卵から手を放したせいか気持ちの良さが止み、落ち着きが戻ってきた。
(って、これマズイよね。何か拭くものないかな……?)
 卵には大量の精液がかかっており、床にも白い液体が垂れている。
 このまま放っておいては見つかった時にマズイだろう。
 焦って周囲を見回すと、少し離れた所に雑巾らしき布が置いてあるのが見えた。
(よし、あれをちょっと借りて……って、え……?)
 そう思いながら体を起こそうとした瞬間、妙な音が聞こえたため動きを止める。
 確かに今、パキッといった様な音が聞こえたのだ。
(げっ……!)
 視線を目の前に向けた神治は、そのまま体を硬直させた。
 何故なら卵にヒビが入っていたからだ。
(もしかして、俺が強く触っちゃったから……?)
 自慰に夢中になっていたため、力を入れてしまった可能性はあった。
 何やら貴重品らしいものを壊してしまった事に神治は焦りまくった。
 心臓がバクバクと鼓動し、どうすればいいかと混乱する。
(に、逃げちゃうか……?)
 一瞬その様な想いを抱くが、それはあまりに酷すぎるだろう。
 ここは正直に謝った方が良いのではないかと思いつつ、とにかく拭かなければと雑巾を取るために立ち上がろうとした時だった。
 パキッ……。
(げっ……)
 再び音が聞こえたかと思うと、今度は卵の一部が欠けたのが分かった。
(お、俺、触ってないよ……?)
 触れていないのに何故そうなったのか分からずオロオロしていると、続けてパキッ、パキッと音が響き、次々に卵が欠けていった。
(げげっ……ちょっと何だよこれ……)
 あまりの事に驚いていると、さらに驚くべきことが起きた。
(え? 手……?)
 卵の欠けた箇所から、人間の手としか思えないモノが見えたのだ。
 そのまま見ていると、手が卵の外に伸び、腕が現れ、ついには頭までが出現した。
(これって……赤ん坊……?)
 それはどう見ても人間の赤ん坊だった。
 少ないながら頭から金髪を生やし、真っ白な肌をした白人の赤ん坊だ。
 何故卵の中に入っていたのか分からなかったが、とにかくそれは人間の赤ん坊、股間に何も見えない点からして女の子の赤ん坊にしか見えなかった。
 赤ん坊は何かを探る様に頭をフラフラさせていたが、半開きの青い瞳で神治の方を見ると不意に動きを止め、そのままこちらへ向かってハイハイで近づいて来た。
(え? ちょっと……って、くっ!)
 脚に赤ん坊の手が触れた瞬間、強烈な快感が走った。
 それは先ほど卵に触れていた時よりも強く、神治の肉棒は一気に硬く大きくなった。
(お、おい……何を……うぁっ!)
 そして驚いた事に、赤ん坊は屹立した肉棒に近づくと、まるで母親の乳房に吸い付く様にして口に咥え込んだ。
 小さな口が肉棒を強く包み、凄まじい勢いで吸ってくるのに腰が持って行かれる様な快感が走る。
(ちょっと……駄目だって……そんなにしたら……)
 神治はすでに射精寸前の状態に追い込まれていた。
 赤ん坊はおそらく乳首と間違えて吸い付いているのだろうが、栄養を吸収する本能によってしてくるせいか、それは半端ではない吸引だった。
 歯の無い口内は肉の感触しか存在せず、その肉だけの状態で強烈に吸引される事が凄まじい快感となって襲ってくる。
「ぐっ、くっ……うあぁっ!」
 ついに我慢できなくなった神治は精を放った。
 赤ん坊の口に射精してしまった事に罪悪感を覚えつつ、それ以上の快感が押し寄せてくる事にうっとりとなる。
 ドクドクドクと放出されていく精液に神治は頬を緩ませ、体を震わせながら射精の快感を味わった。
 赤ん坊は精液をゴクゴクと飲んでおり、その様子は母親の乳房に吸い付き、母乳を飲んでいる赤子そのままだった。
 そして吸われている肉棒からは頭が朦朧とするほどの快感が押し寄せ、その信じられないほどの気持ちの良さに、神治は驚愕の想いを抱いた。
(スゲェ……気持ちいぃ……)
 神治はすっかり赤ん坊のフェラチオにハマりつつあった。
 本来は赤ん坊の口に射精するなど狂気の沙汰に思えたが、そんな事が気にならなくなるほど今の射精は気持ちが良かったのだ。
 倫理的に問題があるとも言えたが、すでに家族や小学生を相手にセックスしている神治にしてみれば、今更赤ん坊の口に射精する程度は大した事ではない様に思えたのである。
 というより、これほど気持ちのいいフェラチオを止めるなど、ハッキリ言って無理だったのだ。
「うっ……」
 そんな事を思っている間に、精液を飲み干した赤ん坊が再び強烈な吸引をしてきた。
 それは蕩ける様な快感を引き起こし、神治をうっとりとさせるものだった。
(ああ、スゲェ……最高だ……)
 無表情なまま肉棒に吸い付く赤ん坊の顔を見つめながら、神治は湧き起こってくる快楽に身を任せ、再び高まっていく射精感に興奮していった。


(って、あれ……?)
 それから数度射精を繰り返し、それでも治まらない快感、そして吸うのを止めない赤ん坊に神治はされるがままになっていたのだが、ふと視線を赤ん坊に向けたところ、妙な違和感を覚えた。
 何やらこれまで認識していた赤ん坊と、今見ている赤ん坊とではどこか違っている様に思えたのだ。
(大きく、なってる……?)
 勢い良く肉棒に吸い付いている様子は同じなのだが、赤ん坊の体が先ほどより大きくなっている様に見えたのである。
(え……?)
 気のせいではないかと思いつつ見ていると、続けて衝撃的な事実に気がついた。
 先ほどまでは頭皮を覆う程度しかなかった赤ん坊の髪の毛が、いつの間にかその量を増していたのだ。
 今や耳を隠さんばかりにまで伸びているのである。
 さらには肉棒に硬いモノが当たる感触があり、それはいつもフェラチオの時に感じられる歯である事が分かった。
(成長してる、のか……?)
 元々卵から出てきた時点で常識的な存在とは思っていなかったが、ここまで異常な状況を見せられるとは驚きだった。
 この様に急速に成長するとは、一体この赤ん坊は何なのだろう。
 そう思っている間にも、赤ん坊の身長はみるみる伸び、体が乗っている脚にかかる体重も重みを増していた。
 最初は生まれたてくらいだったのが、今や数ヶ月、いや一歳はすでに超えている感じだった。
 赤ん坊は相変わらず無表情のまま、とにかく精液を吸い出すのだ、という感じで強い吸引を行っている。
 時間が経つにつれ成長していく赤ん坊は、神になって以来怪異になれているはずの神治を動揺させるのに十分な存在だったが、だからといって赤ん坊を引き離す気にはなれなかった。
 何故ならこれほど気持ち良くしてくれている相手を邪険になど出来ないし、別に命が危ない訳でもないのだから、このまま吸わせてやっても構わないだろうと思ったからだ。
 無論もしかしたら命の危険があるのかも知れなかったが、そうした考えは股間から押し寄せる快楽ですぐにどこかへ消えてしまった。
 とにかく今は赤ん坊に肉棒を吸ってもらいたい。
 そうした想いで神治の心は一杯になっていたのである。


(あ……止めるのか……?)
 しばらくして、不意に赤ん坊、今や成長した三、四歳の幼女が肉棒から口を離した。
 少し前までは赤ん坊だったはずの存在が、これほど成長した事に神治は何とも言えない想いを持った。
 幼女はこちらを見上げると、そのままよじ登る様にして体の上に乗り、胸に顔を寄せて甘える様に頬ずりしてきた。
 その様子は実に可愛らしく、思わず頬が緩むほどだった。
 何しろかなりの美幼女なのだ。
 今後成長を続ければ、見まごうほどの美少女となるのは間違いなかった。
 その姿を見てみたいと思いつつ、相手は短時間で赤ん坊からここまで成長した存在だという事に恐ろしさを覚える。
 いくら可愛くても、普通の子供の様に考えてはならないだろう。
「もっと……」
(!……)
 不意に聞こえた声に驚く。
 これまで一言も喋らなかった幼女が言葉を発したのだ。
 どうやら体と共に知能も成長しているらしい。
「もっとほしい、セーエキ……」
(!……)
 続けて告げられた言葉にショックを受ける。
 三、四歳の幼女が「精液」と口にした事に驚いたのだ。
 とはいえ、この幼女は常ならぬ存在であるし、精液を飲んでここまで育った事を考えれば今更と言えただろう。
 そもそも幼女にとって精液が母乳と同じ様なものだとすれば、栄養として欲しがっても当然なのだ。
「セーエキ、ちょうだい……」
 神治が動揺している内に、幼女は相変わらずの無表情で肉棒を掴むと、よっこいしょとばかりに跨り、そのまま腰を下ろしてきた。
 それはまるで体面座位でセックスをする体勢だった。
 まさかそこまでするはずはないだろうと思いつつ、相手が常ならぬ存在である事から、するかも知れないと慌てる。
「ちょっ、待っ、うぅっ……!」
 止めようとするものの間に合わず、肉棒の先に柔らかなモノが触れたと思った瞬間、亀頭が何かに包まれていくのが分かった。
 幼女はピクピク震えながらゆっくりと腰を落としていき、それと共に肉棒がハマり込んでいくのが感じられる。
 これほど小さな体に収まるとは到底思えなかったが、そこは通常の存在ではないのか、やがて神治の肉棒は完全に幼女の膣の中に収まった。
(嘘……だろ、くっ……)
 さすが幼女だけあり、肉棒には経験した事の無いとんでもない締め付けが加えられていた。
 だがそれが甘美な感触となって蕩けそうな快感を生んでいるのだから驚きだった。
 肉棒の周囲にヌメヌメと蠢く膣襞が絡み付き、奥へ奥へと誘っている感触があり、肉棒の全てが吸引され、精を強制的に吸い出されそうな状態になっているのだ。
 まるで神の女性達を相手にしている時と同じくらいの快感が神治を包み込んでいたのである。
 幼女は神治の体にギュッとしがみつく様にした後、ゆっくり体を上下に動かし出した。
 すると強い吸引のせいか、肉棒が引き抜かれそうな快感が全身を走り抜け、神治はガクガクと震えながらそれに耐えた。
 一方、幼女もすでに快感を得ているのか、「あっ、あっ」といった甘い吐息を漏らしており、この様な幼い存在が性の快楽を得ている事に呆然となる。
 無表情だった顔が微妙に快楽の笑みを浮かべ、クリクリとした瞳が快感にトロンっとしている様には熟女の妖艶さがあり、幼い見た目とのギャップからゾクゾクする様ないやらしさを感じさせた。
 幼女であるのに、そこには並の女では敵わないほどの凄まじい色気があったのだ。
(ぐっ、くっ……)
 そして押し寄せてくる強烈な快感も、それを裏切らない凄まじいものがあり、神治は我慢できない己を感じた。
 膝の上で揺れている幼女は可愛らしい顔を快楽に歪めており、それは幼さといやらしさといったアンバランスな魅力の矢となって神治の心を甘美に貫いた。
(もうっ……駄目だっ……)
あまりに強烈な性的刺激の波に、ついに神治は我慢出来ずに精を放った。
「うっ、かっ……!」
 頭の中が爆発する様な感覚を覚えながら、ドクドクドクドクと凄まじい勢いで放出されていく精液を感じる。
 射精するたびに肉棒が膣襞に嬲られ、快感を与えられ、神治はそのたまらない気持ちの良さにうっとりとなった。
 強烈に締め付けてくる膣は肉棒から精液を吸い出し、その蠢きによって強烈な快感を与えてくる。
「く……う……ふぅ……」
 しばらくしてようやく射精を終えると、神治はグッタリと力を抜いた。
 何やらいつもと違って、かなり疲れを感じたのだ。
 そのまま休もうかと思っていると、不意に肉棒がキュッと締められ、その刺激に体がビクンっと震える。
 視線を落とすと、幼女はこちらを上目遣いに見つめ、もっと欲しいと言わんばかりに瞳で訴えてきた。
(か、可愛い……)
 その様子を見てしまうと、神治の中に幼女を抱かずにはいられない衝動が湧き起こった。
 とにかくこの幼い体を抱き、精液を注ぎ込みたい欲求が押し寄せてきたのだ。
 さらには神治が何もしなくても、幼女が体をクイックイッと動かすだけで、蕩ける様な快感が体中に走るのだからたまらなかった。
 その刺激に耐えるという感覚すら持てず、すぐさま射精してしまう。
 神治は体をガクガクと震わせ、精を放ちながら、肉棒が激しく吸引されている事にうっとりとなった。
 とにかく幼女の膣内はとてつもなく甘美で、ここに肉棒を収めているだけで幸せな気分になれたのだ。
 そう思っている間にも、射精を終えた肉棒が復活させられ、可愛らしい「あっ、あっ」といった吐息と共に擦られているのに気づく。
 あまりに気持ち良すぎたため、意識が朦朧とし始めているらしい。
 本来ならばこの程度は大した事ではないはずなのだが、先ほど幼女の体内に精を放ってからというもの、どうにも体力が削げ、意識もボンヤリとしてしまっているのだ。
 その事を気にしつつも、耐えられない快感に誘われる様に、神治は何度も何度も精を放っていった。
 幼女とのセックスには、体の中の全てが吸い出される様な感覚があり、その事に恐怖を抱くものの、それ以上の甘美な悦びが心と体を包み込んで射精を促しているのである。
(大きく……なってる……)
 射精を続けている間に、先ほどの様に幼女が成長しているのが分かった。
 頭の位置が徐々に上になり、髪も背中まで伸びている。
 膝にかかる体重もだんだんと重みを増していっており、やはりこの幼女は精液を栄養源として成長しているとしか思えなかった。
 だがそんな思考も徐々に薄らいでいっている。
 射精をするたびに体力が減り、意識も朦朧としているのだ。
 その原因は、どう考えてもこの幼女に精を放っているせいなのだが、見た目が無垢な姿であるため、どうしても現実的に思えなかった。
 この幼女は一体何者なのか。
 やはり卵に入っていた事が、この異常な事態と何か関係しているのだろうか。
 人間ではない何か、恐ろしい存在なのだろうか。
 などといった事を考えるが、押し寄せてくる快感のせいで次第にどうでも良くなっていく。
 あまりに強烈な快感が理性的な思考を邪魔する、どころか消し去っていくのだ。
 脳が痺れ、とにかく股間から押し寄せる快楽に集中したくてたまらなくなるのである。
(あぁ……気持ち、いぃ……)
 どのくらい耐えたか自分でも分からないほど短い間耐えた神治は、「もういいや」とばかりに意識の手綱を緩めると、そのまま底なし沼の様な快楽に身を任せていくのだった。


 不意に強い吸引が止まり、膣内の蠢きが治まったのに神治は気がついた。
 ゆっくり戻ってくる意識を感じつつ息を切らしながら、天国とも地獄とも言える快感の嵐がようやく終わった事にホッとなる。
 体は未だ快感に包まれていたが、大量の精を放ったせいか、かなりの疲れを感じさせた。
 そして膝の上に乗っている幼女、今や少女である女の子の外見は神治と同じくらいの年齢になっており、つい先ほどまで赤ん坊だったとはとても思えない状態になっていた。
一体この少女は何者なのか。
 淫妖の様に男の精を吸う化け物なのだろうか。
 このまま自分は死ぬまで射精し続けさせられるのだろうか。
 そうした恐れを抱きながら神治は少女をジッと見つめた。
(え……)
 すると無表情だった少女の顔に変化が起きた。
 それは笑顔、しかもとてつもなく魅力的な笑顔だった。
 ニコッとお日様の様な笑顔を向けてくるのに心臓が激しく鼓動する。
 これまで表情が無かったためその変化は強烈であり、さらには少女が甘える様に抱き付いて来た事で神治はたまらなくなった。
(か、可愛い……)
 先ほどまでの恐怖が嘘の様に、神治は少女に対して愛おしさを覚えていた。
 少女の微笑みにはそれほどの魅力があり、何もかも捨ててでも愛したくなる様な可愛らしさがあったのだ。
 腰の辺りまで伸びた金色の髪がサラサラと音を立てるかの様に絡み付き、潤んだ青い瞳が求める様に見つめてくる。
 すでに大きく膨らんだ乳房が押しつけられ、真っ白な肌をした体全体から柔らかな女肉の感触が押し寄せてきた。
(可愛い……)
 それしか頭に浮かばないほど少女は美しく、また愛らしい存在だった。
 美しい顔が寄り、小さな桜色の唇が迫ってくるのに心臓が激しく鼓動する。
 唇に柔らかな感触が触れると共に、滑らかな舌がニュルリと口内に入り込み、蕩ける様な快感が口内に溢れてくるのにうっとりとなる。
 舌が絡み、チュウっと吸われるのと同時に肉棒も締まり上がったため、その上下で繋がり包まれている状態に、神治の頭は快楽でおかしくなりそうだった。
「くっ、うぅっ……」
 我慢する意志すら持てず、再び精を放った神治は、その全てを吸い取られてしまうかの様な吸引に体を硬直させた。
 それは今まで以上に強烈な、凄まじい吸い込みだったのだ。
 激しい勢いで精が迸り、神治はそのまま少女の中に自分が入ってしまうのではないかという錯覚を覚えた。
 とにかく何とも言えない甘美さを伴う射精だったのである。
「! あ、あぁ……」
 不意に少女がそれまでとは異なる震えを示したかと思うと、明らかに快感ではないらしい表情で強く抱き付いてきた。
 それは何かを耐える様な、苦しんでいる表情だった。
「! あぅっ……うっ……あぁあああああああああっ!」
 突如まるで絶頂に至ったかの様な叫びをあげ、少女は体を大きく仰け反らせた。
 そして次の瞬間、バサッといった音が聞こえたかと思うと、目の前に大きな白い何かが現れた。
(翼……?)
 それは真っ白な、大きな翼だった。
 物語や宗教画で見られる、天使が背中から生やしている翼だ。
 それが突如として少女の背後に現れたのである。
(これって一体……)
 そして翼が現れるのと同時に少女の体がキラキラと光を放ち始め、何とも言えない美しさを感じさせた。
 少女の瞳はうっとりとこちらを見つめており、それが神治には「自分はあなたを愛しています」と訴えているかの様に思えた。
 見つめられているだけでそんな想いにさせるほど少女の顔は愛に溢れており、その全てを包み込む様な温かさに安らぎを覚えた神治は、穏やかな気持ちになった。
 肉棒は未だ射精を続けているのだが、その快感が薄まるほどに少女の姿は美しく、また幸せな気分にさせられたのだ。
 それはまさに天使と呼ぶにふさわしい存在だった。
「見事に天使になったなぁ……」
(!……)
 不意に背後から声が聞こえた事に神治はギョッとなった。
 この部屋には自分たち以外居ないと思っていたため、誰か入ってきたのかと慌てて振り返る。
 するとそこには一人の男が立っていた。
 だらしなく顔にかかった金髪と、その隙間から見える青い瞳、そしてどこかボンヤリしている様な顔つきに眼鏡をかけ、白衣を着ているその姿は理数系の学者を思わせた。
 男は神治を咎める様子もなく、感心した様な表情を浮かべながらこちらを見ている。
「あ……えっと……」
 もしかしたらこの部屋の主ではないかと思った神治はどうしようかと思った。
 そもそもここがどういう場所であるのか分からないため、そんな所でセックスしている自分はどう思われているのだろう。
「君は一体どなたかな?」
 穏やかな口調で尋ねられた事にホッとする。
 泥棒と思われて怒鳴られても文句は言えない立場だからだ。
「あの……俺はその……女の人達に連れてこられて……」
「ああ、なるほど君か。サキュバス達がさらって来たっていうのは」
「サキュバス……?」
 どこかで聞いた事はあるが、どういう意味なのか分からない単語に首をかしげる。
「あの淫乱なご婦人三人のあだ名さ。若い子を連れ込んじゃ精を搾り取るんで、そうしたあだ名が付いたわけ」
 男は笑いながらそう告げてきた。
 もしサキュバスというのがそうした行為を表す意味であるのなら、確かにピッタリなあだ名に思えた。
 何しろ自分は精を吸い取られて殺されそうになったからだ。
「それで、その哀れな被害者であるはずの君が、どうしてこの部屋に居るんだい?」
「えっと、帰ろうと思ったら迷ってしまって……それでこの部屋に入ったら……」
 その後はどう続けようかと思った。
 何しろ卵で自慰をして、そこから出てきた赤ん坊にフェラチオをされ、成長した幼女相手にセックスを繰り返した、などと言えないからだ。
「なるほどね。それでこの状況か。どうやら君は僕の待っていた存在らしい」
 だが男は神治が何も言わずとも勝手に理解して納得している。
「あの、済みません。俺、こんなつもりじゃ……」
 いつまでもセックスしている状態では失礼に当たると思った神治は、体を放そうとしたが、少女はギュッと抱き付いたまま離れなかった。
「ちょっと、放してくれよ……」
「分かった……放す……」
 嫌がるかと思いきや、素直に離れる少女を意外に思う。
 てっきりもっと同じ状態でいたがると思ったため、頼んだ途端に離れた事に驚いたのだ。
 少女はそのまま腰から下りると横に座ったので、神治は起き上がってズボンのチャックを閉じると男に向き直った。
「どうやら随分と懐かれている様だね」
 男は楽しげに笑っている。
 どうやら怒っていない様子にホッとなった。
「この子、何だか知らないけど懐かれちゃって」
「それも当然だろう。君が父親なんだから」
「え……?」
 当たり前の様にとんでもない事を告げた男の言葉に驚く。
「君、この部屋にあった卵に射精しただろ? その精を素に彼女は産まれたんだ。だから君の子供ってこと」
「な、何を言って……そんな事がある訳……」
「赤ん坊が短時間でここまで成長してるのを見ているのに、そっちは否定するのかい?」
 確かにそれはその通りだった。
 卵から産まれた様な存在を相手に、通常の理屈を当てはめて考えても意味はないだろう。
 何より卵に精液をかけたのは事実であり、その後に少女は産まれてきたのだから一概に否定は出来なかった。
「私のパパ……?」
 少女が見つめてくるのにドキリとする。
 見た目が同い年の少女に「パパ」と呼ばれるのは変な感じだったが、呼ばれた瞬間、何とも言えない感動があったからだ。
「あの……一体この子は何なんですか?」
 ずっと気になっていた事を男に尋ねてみる。
「天使さ……」
「天使って……あの女の人達と同じって事ですか?」
 ニヤリと笑って答える男の言葉に、そう言えばあの女性達も翼を生やし、その事から天使ではないかと考えていたのを思い出した。
「彼女達は正確には天使じゃない。何しろ元が人間だからね。天使ってのは神から産まれたものでなければならないから、そういう意味で彼女達は天使たり得ていない訳だ。でもこの子は違う。この子は君という神の精を得て産まれた完全な天使なのさ。神の子は処女懐胎で産まれたが、この子は無から神の精で産まれたって事だね」
 少女の正体が天使であり、さらには無から産まれたとは驚きだった。
 どういう理屈なのか分からないが、人工的に作られた卵に神治の精が加わる事によって産まれたという事らしい。
 そんな事があり得るのかと一瞬思うが、目の前で急成長した姿を見てしまえば、反論のしようがなかった。
 その様な生き物自体、神治は知らないのであり、そういう物だと言われてしまえば納得するしかなかったからである。
「何だか訳が分かりません……」
 あまりに常識外な説明に、神治は大きく息を吐き出しながら答えた。
「まあ、そうだろうね。僕自身も理論上は理解していても、本当に天使を生み出す事が出来るのか自信は無かった。そもそも神の力無くして天使を生み出すなんてのは懐疑的だったし。そういう意味で神の精を使えばあっさり産まれてしまう訳だから、やはり完全な無から天使を生み出すなんてのは無茶な行為って事だろう」
 溜息を付きながらそう呟く男に、神治はふと違和感を覚えた。
 それは男が神治の事を先ほどからずっと神として扱っていたからだ。
 あの女性達の知り合いであれば、てっきり悪魔と呼ぶと思っていたため、そうでないのが奇妙だったのである。
「俺は悪魔じゃないんですか?」
 不思議に思った神治はその事を尋ねてみた。
「サキュバス達が言ったのかい? まあ、うちの教えだとそうなるけど、この子が天使になっているからねぇ。僕としては君を悪魔なんて呼ぶ訳にはいかないよ。この子の神々しさは、まさに神の精を得たからこそだろう」
 キラキラと輝いている少女を見ながら、嬉しそうに頷いて男は笑っている。
「僕は人工的に天使を生み出そうと研究してきたんだが、無から卵までは生み出せても、そこから天使は産まれなかった。どうしても神の精を必要としたんだ。そして君がそれをしてくれたという訳だ。ありがとう、礼を言わせてもらうよ」
「い、いえ……」
 感謝されても困ってしまった。
 神治にしてみれば、単に自慰をしただけの事なのだから。
「何をしても反応を示さなかった卵が、一気にここまでの成長を遂げるのだから神の力とは凄いものだ」
「この子の成長って、俺の力なんですか?」
「そうだよ。この子は君の精を吸収して成長したんだ。神の精を得る事で肉体を大きくしたんだね。赤ん坊からここまで成長した訳だから、かなり吸われただろ?」
「え? いや、まあ、そうですね……」
 確かに文字通り吸われたため苦笑する。
「もしかしていきなり咥えられちゃったのかい? くっくっ、まあ産まれてすぐは知識も何も無い、本能のみの状態だからね。己の栄養となる神の精を求めたって事さ。動物の赤ん坊が、教えられなくても本能で母親の乳首を求めるのと同じだよ」
「はぁ……そうですか……」
 何とも言えない事に恥ずかしくなる。
「しかしこうも上手くいくとはね。やはり神を使うと違うな。これまでの失敗が嘘の様だ……う〜〜ん、我が組織ももう少し妥協というものを知れば、もっと真なる天使を生み出せるのだがなぁ……」
 男は悲しそうな表情をすると、悔しげに呟いている。
「そういや、いいんですか? 悪魔の俺の精で産まれても」
 自分達の信じる神以外を悪魔と呼ぶ組織において、その悪魔の精で産まれたとなれば問題なのではないだろうか。
「言わなければ大丈夫だよ。それにどうせ産まれなかった事にするしね。僕はそろそろここを離れるつもりだったから、天使の卵は結局駄目だったという事にして去る事にするさ」
「え? でもせっかく成功したのに……」
 失敗した事にするのは勿体ないのではないだろうか。
「成功したと報告しても、また同じ事は出来ないからね。まさか悪魔の精を使ったなんて言えないし。それに何よりこの子は君から離れないだろう。すっかり君に懐いているしな。君だって離れたくないんじゃないか?」
 そう言われて少女の顔を見ると、信頼しきった表情でこちらを見つめているのと目が合った。
 その瞳はクリクリとしていて何とも可愛らしく、惹かれずには居られない凄まじい魅力に溢れていた。
 そんな様子を見ていると、この子を置いてどこかへ行くなど出来ない様な気がしてくる。
「そうですね、このまま置いていくなんて出来そうもありません」
 溜息混じりにそう呟く。
 少女は体全体からキラキラと光を放ち、白い翼を微妙に揺らしており、その様子はたまらなく可愛らしくも美しかった。
「なら決まりだ。この子を連れて行ってくれよ。っと、そういや君の名前を聞いてなかったな。何て言うんだい?」
「緋道神治です」
「ヒドウ……ふむ、どこかで聞いた様な……出身は?」
「日本、ですけど……」
「おおっ、そうか日本のヒドウっ……緋道か……こりゃ懐かしい」
 男が急に大声をあげたため驚く。
「知っているんですか?」
「いや、僕の友人でね、天使の研究を一緒にしていた男がいるんだが、そいつが自分の田舎の緋道村には神が居ると言っていたんだ」
 その様な人物が居たとは驚きだった。
 そして外国へ来てまで同じ村の人間の話を聞くとは、世の中は案外狭いものなのだと神治は思った。
「まさかその神とこうして会えるとはねぇ……」
「あ、それ違います。俺じゃないです」
「そうなのか? でも緋道というから……」
「俺とは別の神様が居るんですよ。俺は最近神になりましたから、その人が言っていたのはそっちの神様の事です」
「ほう、そうだったのか……しかし最近神になったとは面白いな。では君は元人間って事かい?」
「ええ……」
 神治はそこまで話していいのだろうかと思ったが、この男性は悪い人間には思えなかったため構わないだろうと思った。
「それより、うちの村の人間にそんな人がいたなんて驚きました」
「まあ、正確には村の人間ではないらしい。母方の先祖がそこの出身だとか言ってたな」
 村から出ている人間も多くいるため、その人物の先祖はそうした中の一人なのだろう。
「それにしても、僕の研究は途中から成功まで緋道のおかげだったって事になるな。うん、改めてありがとうと言わせてもらうよ」
「い、いえ……」
 嬉しそうに礼を言ってくる男に苦笑する。
 やはり感謝されるのはどうもこそばゆかった。
 何しろ神治にとってはただ射精をしただけだからだ。
「それで色々話をしたいところなんだが、そうも言っていられないんだよ。そろそろ君はここから出た方がいいと思うんでね。何しろサキュバス達が君が居なくなったと騒いでいたからさ。下手に見つかったらまた精を吸われてしまうだろ?」
「それは困りますね」
 神治は苦笑しながら答えた。
 あの女性達は嫌いでは無かったが、さすがにもう帰りたかったため、捕まるのは避けたいところだった。
「それじゃ、とっとと逃げた方がいい」
「はい、そうさせていただきます」
 男の言葉に笑いながら頷き、神治は傍らに座っている少女を見つめた。
「えっと、その……一緒に来るかい?」
「うんっ。私、パパと一緒に行くっ」
 微笑みながら抱き付いてくる少女に神治は嬉しくなった。
「それじゃ行きます。そうだ、あなたの名前を教えてもらえませんか?」
 そう言えば名前を聞いていなかったと思った神治は男に尋ねた。
「アルタール・ストレーゼマン。ま、気軽にアルと呼んでくれたまえ」
「アルさん、色々ありがとうございました」
「いやいや、お礼を言うのはこちらだからね。研究の成果がこの目で見られて良かったよ。この子を大切にしてやってくれ」
「はい」
「そうそう、裸で連れて行く訳にもいかないだろう。ちょっと待っててくれ、服を用意するから」
 そう言ってアルは隣室に入ると、少しして服を持って出てきた。
「これを着せるといい。きっと似合うはずだ」
「あ、すみません……」
 渡された服一式にはフリルの付いた可愛らしい下着まであったため、神治は少し恥ずかしくなりながら少女に手渡した。
「着てごらん」
「うん」
 神治が告げると、少女はぎこちなく服を身に付け始めた。
 その様子は何とも言えずいやらしさを感じさせ、思わず目をそらしてしまう。
 散々裸を見ていたにも関わらず、どうも服を着る姿には恥ずかしさを覚えるのだ。
「着たよ」
 ぼそりと告げてくる声に目を戻した神治は、少女の姿に何とも言えない驚きを覚えた。
(メイド服じゃん……)
 ピンク色のヒラヒラとしたスカートにエプロンが付き、頭にカチューシャをはめているその姿は、どう見てもメイドだった。
「あの、この服は……」
「日本だと今メイドが流行っているんだろ? 実は僕もメイドが好きでね。いつかこの子が生まれたら着てもらおうと一揃え用意しておいたんだよ。うん、実に良く似合ってる」
「そ、そうなんですか……」
 何と答えていいか困りつつ、適当に相づちを打つ。
「ちょっと回ってみてくれないか? こうクルッと」
 アルは足を支点に一回転してみせた。
 少女はどうしたものかとこちらに視線を向けてくる。
「回ってみて」
「分かった、回る」
 クルッと少女が回転すると、スカートがフワッと広がり、何とも言えない可愛らしさを醸し出した。
「おおっ、素晴らしいっ。天使のメイドだぁっ」
 アルは激しく興奮した様子で叫んでいる。
 その様子に呆気に取られつつ、神治も内心同じくらい興奮している自分を感じていた。
 何しろメイドの格好をした少女はとんでもなく可愛らしかったからだ。
 白い翼とメイド服がよく合い、クルリと回ると両方が風に舞って美しくも可愛らしさを溢れさせたのである。
「……」
 神治はふと、少女がこちらをジッと見つめ、何か言って欲しそうにしているのに気がついた。
「えっと、その……可愛いよ……」
 感想を求めているのだろうと思った神治がそう告げると、少女は嬉しそうな息を漏らし、両手を胸の前で合わせて微笑んだ。
「うおぉっ、可愛いっ、最高だぁっ!」
 その様子を見たアルは、頭がおかしくなったのではないかと思えるほど絶叫した。
 だがその気持ちは神治にも分かった。
 とにかく今の少女の仕草は、恐ろしいほどに可愛らしかったからだ。
「ふ〜〜、まさに天使だ……この姿、この笑顔を見られただけで天使を研究してきた甲斐があったな……うん、良かった良かった……」
 アルは涙ぐみながら呟いている。
 その姿を見ていると、とても学者には思えなかった。
「いや〜〜、神治くん、ありがとう。僕は嬉しいよ」
「い、いえ……」
 アルの両手に包まれる様にして手が握られ、上下に激しく揺すられるのに苦笑する。
 そこまで興奮するほどの事でも無いと思うのだが、よく考えてみればアルはずっと天使を生み出そうとしていたのだから、ようやく産まれた天使がこれだけ可愛ければこうなっても仕方ないのかも知れない。
「それじゃ最後に一つ教えておくね。この子はマナによって存在しているから、マナが足りなくなると補充する必要がある。だから時折マナを与えてくれ。多分しばらくは頻繁に必要になると思う。急激に成長した分、存在が安定していないからね」
「つまりその……精液を与えればいいって事ですか?」
「そうだね。上か下か、どちらかの口から与えてくれ。普通に抱くのもいいし、ペニスを舐めてもらうのもありだ……うぅ、君が羨ましいよ。こんな可愛い天使を自由に出来るなんて……」
 アルは本気で羨ましそうに呟いている。
「ちなみに翼が生えた事で完全な天使になっているから、かなり力が増していると思う。さっきしていたのとは比較にならない気持ちの良さがあるはずだよ。それに君の遺伝子から作られているから相性的にもバッチリだろう。だから注意なんかしなくても君の方がハマっちゃって、十分マナを与える様になると思うけどね」
 今度は可笑しそうに笑いながら告げてくるアルに苦笑で返す。
 確かにこれだけ可愛らしく、また気持ちのいい肉体をした少女を抱かないでいるなどあり得ないだろう。
「何だか色々とお世話になりました。その内また会いに来ますんで」
「うん、そうしてくれ。僕もこの子が元気でやっているか知りたいしね。あ、その時は多分別の場所に居るだろうから、こちらから連絡するよ」
「それじゃ俺の連絡先を教えますね」
 神治は渡された紙に住所と電話番号を書いた。
「もしかしたら日本へ行く事があるかも知れないから、その時は君の家を訪ねさせてもらうよ」
「ええ、お待ちしてます」
 神治はそう応えると、ペコリと頭を下げて別れの挨拶をした。
 少女は何だかよく分からない表情をしていたが、神治の真似をして頭を下げている。
「では、またいつか会おう」
「ええ」
 軽く手を挙げてそう言ってくるアルに神治は返事をすると、少女を伴って部屋を出て行くのだった。


 瞬間移動で外へ出ると、今まで居た場所が教会であるのが分かった。
 非常に大きな施設で、かなり立派な建物である事に驚く。
「パパ、どこ行くの?」
 少女は背中の白い翼を意味もなくバサバサ揺らしながらジッと見つめてきた。
「取り合えずは知り合いの家だよ」
「そうなんだ」
 神治が答えると、何が嬉しいのかニコッと笑っている。
 そのまま腕にしがみつく様にしてくるのが何とも可愛らしい。
 外見は神治と同じくらいの年齢なのだが、中身は赤ん坊であるため、どことなく幼さを感じさせた。
 そこまで考えた神治は、ふと事情を知らない人間に「パパ」と呼ばれる様子を見られるのはマズイだろうという事に気がついた。
「ところで、そのパパってのは止めてくれないかな?」
「何で?」
「いや、ちょっと人に聞かれると微妙だからさ」
「微妙なの? 分かった。じゃあ言わない」
「ありがとな」
 ごねるかと思いきや、あっさり了承している少女の言葉にホッとする。
 そう言えば、先ほどから少女は神治の言う事に大人しく従うのだ。
 やたらと聞き分けがいいのである。
「でも二人きりの時は言ってもいい?」
 それでもやはり「パパ」とは呼びたいらしく、そんな事を言ってきた。
「そうだね。二人きりの時ならいいよ」
 要は他人に聞かれるのが恥ずかしいのであって、二人きりならば問題はなかった。
 何しろそうした恥ずかしい呼ばれ方はすでに家族相手にされていたので気にならなかったし、何より神治自身、少女に甘ったるい声で「パパ」と呼ばれる事が嬉しかったのだ。
「じゃあ、今は二人だからいいよね?」
「まあ、そうだね」
「パパ大好きっ」
 ギュッとしがみつかれるのに嬉しくなる。
 見た目が同じくらいの年齢なのに、何とも言えない愛おしさが起きるのだ。
(何か普通の子とは違った感じがするよな。すんごく可愛くてたまらないっていうか。この子って……ええっと……)
 そこまで考えた神治は、ふと少女の名前を聞いていなかった事に気が付いた。
「ところで君の名前は何て言うのかな?」
「名前? 知らない……」
「って、そりゃそうか。産まれたばかりだもんな」
 体が大きくなっていたため、その事をすっかり忘れていた。
 少女は産まれたばかりであり、まだ名前を与えられていなかったのだ。
「名前、付けて……」
「え? 俺が?」
「うんっ」
 ニッコリ微笑まれると何とも言えない可愛らしさがあった。
 一瞬アルに付けてもらった方が良いのではないかと思ったが、当の本人が自分に付けてもらう事を望んでいるのならいいかと考えてみる。
「そうだなぁ……じゃあ、ミカってのはどうかな?」
「ミカ?」
「うん、俺の神様の未迦知さまから戴いて、ミカ。どうかな?」
「いいよ。私はミカ、ミカなの」
 ギュッと抱き付き、嬉しそうに見上げてくるミカの頭を優しく撫でてやる。
 そうしていると、何やら神治はミカが愛おしくてたまらない気持ちになった。
 これが父親が娘に抱く感情なのだろうか。
 見た目は同じくらいの年齢だが、実際神治たちには十歳以上の年齢差があるのだから、そうした想いを持つ様になっても別におかしい事では無いだろう。
 何より神治は、自分がこの短時間ですっかりミカに夢中になっている事を感じ始めていたのだ。
「じゃ、行こうか」
「うん」
 可愛らしく頷くミカを抱き寄せると、神治はガジギールの城へ戻るために瞬間移動をしていくのだった。


「パパぁ、精液……」
 瞬間移動を数度繰り返し、ガジギールの城へ着いた途端、ミカがそう言ってきた。
「え? 欲しいのか?」
「うん。欲しくなった」
 アルの言うところによると、ミカはまだ存在が安定していないらしい。
 精液に含まれるマナを定期的に補給しなければ存在を保てないのだ。
「それじゃ、そこでちょっと、あげるから……」
 草木で周囲から見えにくくなっている場所へ近づくと、神治はミカをしゃがませた。
 そのままズボンのチャックを下ろして肉棒を取り出す。
「パパのオチンチン……」
 ミカはうっとりとした表情を浮かべると、神治の肉棒を口に含んだ。
(うっ……!)
 途端、ゾクゾクする様な快感が股間から背骨を走り抜け、脳天を貫く。
 赤ん坊の時からそうだったが、ミカの口には神治を狂わすとてつもない気持ちの良さがあった。
「んっ、んぐっ……んっ、んぅっ……んぐぅっ……」
 ミカは嬉しそうに肉棒を頬張りながら、ぎこちなく舌を絡ませてくる。
 その拙い動きとは裏腹に、ミカの舌は神治の弱い部分を見事なまでに刺激し、頭がおかしくなるほどの快感を与えてきた。
 チュウっと吸い付かれ、亀頭が柔肉と擦れるたびに震えるほどの気持ちの良さが体中に走り抜ける。
 神治はその刺激に体をガクガクと揺らし、ミカの肩に手を置きながらジッと耐えた。
 本来は射精するのが目的なのだから耐えなくても良いのだが、もう少しこの快感に浸っていたいという想いがそうさせたのだ。
 視線を下に向ければ、白いカチューシャを付けた頭と、美しい金髪のかかっている可愛らしい顔があった。
 青い瞳が潤みを帯びて上目遣いに見上げており、その小さな口で醜悪な肉棒が出し入れされている様子を見ていると、まるで自分が酷い事をしているかの様な感覚が起き、興奮が強まった。
 汚れを知らない幼い顔が必死に肉棒を舐め、吸っている様子は何とも言えず卑猥であり、純粋で幼さを感じさせるその表情は、神治の中の獣性を強烈に刺激し、我慢できない状態まで一気に押し上げていった。
(うぅっ……もう駄目だっ……くっ!)
 そう思った瞬間には射精していた。
 ドクドクドクと気持ちの良さを伴って精液が放出されていく。
 ミカは一瞬顔を歪めたものの、そのまま嬉しそうに飲み込んでいっている。
 肉棒を深く咥え込み、一滴も精液を逃すものかとばかりに含んでくる様子に、神治は腰をひくつかせて悶えながら強い興奮を覚えた。
 自分の精液を貴重なものとして必死に扱っている様子に嬉しくなり、ミカに対する愛おしさが強まったのだ。
 この少女は自分の精液を欲している。
 自分の精液が欲しくて欲しくてたまらないのだ。
 そういった想いで一杯になったのである。
「美味しかった……でも足りない。パパもっと頂戴」
 射精を終えると、ミカは立ち上がって首に手を絡め、うっとりとした顔を近づけながらそう告げてきた。
 下から迫ってくる可愛らしくもいやらしい表情に、神治は己の肉棒があっという間に回復するのを感じた。
「分かった。もっとあげるぞ」
 そう言いながらギュッと抱き締め、小さな唇に吸い付いていく。
「んっ……んんっ……んぁっ……」
 舌が絡んで吸引してくるのに気持ちの良さが強まる。
 そのまま地面にゆっくり押し倒し、メイド服を押し上げている豊満な乳房を強く掴む。
「んぅっ、んっ……んはぁ……パパぁ……」
 うっとりとした表情で見上げてくるミカの顔は可愛らしくもいやらしく、そのたまらない表情を見ているだけで神治の肉棒は激しく震えた。
「ミカ、可愛いぞ……」
 そう言いながら首筋に吸い付き、舌を這わす。
「あっ……やっ……パパぁ……」
 首から耳の裏までを舐め回していくと、ミカが体をピクピク震わせて悶えるのがたまらない。
 ピンク色のメイド服が可愛らしさといやらしさを強め、神治の肉棒は痛いほどに勃起した。
「あぅっ、あっ……はぁんっ……」
 メイド服の上から大きな乳房をムニムニ揉みしだくと、ミカが可愛らしい声を上げて悶えるのに興奮が高まっていく。
 脚が動くたびに膝上まであるヒラヒラとしたスカートが乱れていやらしく、太ももにかかった白いニーソックスが脚の美しさを強調していて最高だった。
「あんっ、あっ……そんな、やっ……パパぁっ……」
 頭を下半身に移動させ、スカートとニーソックスの間にある生の太ももを舐め回し、チュパチュパ何度も吸い付く。
 さすが生まれたばかりの肌は格別で、スベスベな何とも言えない味わいがあった。
「ミカ、可愛いぞ……」
 服の胸元を開き、レースの付いたブラジャーに包まれた乳房を顕わにする。
 そのままブラジャーも押し下げると、美しい双乳が目の前に現れた。
 白い肌に包まれた柔らかそうな肉の塊は、振動に合わせてプリンの様にぷるぷると揺れていて美しくもいやらしい。
 頂点では桜色の突起が、すでに興奮を表す様にツンっと立っていた。
 ピンクのメイド服に包まれ、その一部をはだけたミカの姿は、たまらなく可愛らしく、そしてたまらなくそそるものだった。
 さらには白い翼が神秘的な印象を持たせ、そうした存在を犯しているのだという気分を強めて興奮が高まっていく。
「ミカっ……」
 我慢ができなくなった神治は、乳房に勢い良く吸い付いていった。
「あっ、あんっ……パパ、あっ……パパ、やぁっ……」
 綺麗なピンク色をした乳首を強く吸った後、舌先で小刻みに弾き、白くて柔らかな乳房を両手でギュッと握り締める。
 すると口の中に甘い味わいが広がり、手のひらには痺れる様な心地良い感触が感じられた。
 ミカの体は、とにかくそうして触れているだけで気持ちがいいのだ。
 見た目の美しさに加え、感触がとてつもなくたまらないのである。
 神治は鼻息を荒くしながら、何度も何度も乳首を吸い、乳房を揉み、己の愛撫によって悶える天使の少女の姿を眺めていった。
(何て、綺麗なんだ……)
 ミカが体を震わせるたびに白い羽根が宙に舞い、その神秘的な美しさを高めている。
 そうした美しさを犯す行為には肉欲を刺激する効果があるのか、神治はいつもと違った興奮に包まれている己を感じていた。
 少し前も同じ様にしてミカを抱いていたはずだったが、こうして翼がある状態で抱くのは初めてであるせいか、何か新鮮な印象があったのだ。
(最高だ、ミカは最高だよ……)
 染み一つ無い真っ白な肌に感動を覚えつつ、それを汚していく己の行為に心臓がバクバクと激しく鼓動する。
 そこには強烈な罪悪感を伴う興奮があった。
 この様な美しい存在を汚していいのかという恐れと、それをしている事から来る満足感がせめぎ合い、信じられないほどの興奮を呼び起こしていたのだ。
(うぅ、たまんね……)
 ピンクのスカートをバサッと捲り、細い太ももを顕わにする。
 そのままパンティを脱がすと、美しいピンク色をした割れ目が現れた。
 生まれたばかりのミカのそこは、己で触れたことすらない、まさに神治だけが触れたことのある場所だった。
 その事を思うと、この少女はまさに自分だけのモノなのだという意識が強まり、神治はおかしくなりそうなほどの愛おしさを覚えつつ、愛情を込めて秘所に舌を這わせていった。
「あっ、あっ……やんっ、あっ、パパそこ、あんっ……そこぉっ……」
 ミカは震えながら神治の後頭部を掴んでグイグイ股間に押しつけてくる。
 すでに濡れ濡れだった秘所は、神治の舌に蹂躙される事でさらなる愛液を放出した。
 舌が触れるたびに甘美な味わいが口の中に広がり、神治の心はミカで一杯になっていった。
 この美しい場所に己の肉棒を押し込みたい。
 ミカと再び一つになり、愛を交わし合いたい。
 そんな想いが心と体に溢れ、神治は上半身を起こすと挿入の体勢をとった。
「ミカ、入れるぞ……」
「うん。パパ、早く入れてぇ」
 可愛らしく頷くミカを見つめながら、膝立ちになって両脚を抱えると、少女のピンク色の膣穴へと肉棒を押し込んでいく。
 ズブ、ズブズブズブズブ……。
「あっ……ああっ……あんっ……」
 肉棒が入り込んでいくたびに、カチューシャを付けた頭をピクッ、ピクッ、と反応させ、ミカは口を半開きにして甘い吐息を漏らした。
 そのまま肉棒の全てを収めた神治は、一旦動きを止めると、ふ〜〜っと大きく息を吐き出し、伝わってくる快感に意識を向けた。
(何でこんなに……気持ちいいんだろ……)
 ミカの膣内は、とんでもない具合の良さだった。
 何というか凄まじい一体感があるのだ。
 母と交わる時にも肉棒がピッタリハマる様な感覚があるが、今感じているのはそれ以上の一体感だったのである。
(やっぱり俺の精で産まれたからなのかなぁ……)
 アルも言っていたが、遺伝子を与え、与えられた者同士の性器は相性が凄く良いのかも知れない。
 同じ遺伝子から作られているのだからそうであってもおかしくないだろう。
 何よりミカは神治の遺伝子のみで産まれたのだから、母以上の一体感があって当然だった。
「あっ……はぅっ……あぁっ……」
 腰をゆっくり引くと、ミカが体をビクッ、ビクッと震わせながら弱々しい吐息を漏らした。
(くっ……うぉっ……これって……)
 神治自身もかなりの快感を得ていた。
 凄まじい気持ちの良さが背骨を走り、脳天まで突き抜けたのだ。
 一体感が強いせいか、快感神経を直接擦る様な感覚があったのである。
 吸い付いて離れない、まるで吸盤で張り付いているかの様な肉棒と膣の状態は、これまでになかった気持ちの良さがあった。
 腰を引いただけで肉棒が快楽に包まれ、体の全てが吸い取られる様な快感が押し寄せてきたのだ。
「あっ、あぅっ……はっ、やっ……やぁっ……」
 続けて肉棒を押し込むと、ミカは体を縮める様にして硬直させ、目を大きく開き、地面に指を立てて大きく顎を仰け反らせた。
 おそらく神治が感じているのと同じ様な快感を味わっているのだろう。
(うぅっ……また、くっ……凄ぃっ……)
 肉棒が奥に進むと膣襞が引き込む様にして絡み付き、そのまま一つになってしまったかの様な感覚が押し寄せてくる。
 そうすると、快感とは別に安心感の様な心地良さが湧き起こった。
 まるで体全体が包まれている様な感覚であり、ホッとする気持ちになるのだ。
「パパぁ……わたし、パパと一つになってるぅ……」
 涙目で見つめてくるミカが愛おしくてたまらない。
「そうだ。俺とミカは一つなんだ。繋がっているんだよ」
 そう神治が呟くと、ミカはニコリと微笑み、その様子はたまらなく可愛らしかった。
「ミカっ、ミカぁっ……」
 心が愛情で溢れ、それと共に腰を激しく動かし出す。
「あっ、あっ、ああっ……パパぁ、やっ、パパぁっ……」
 不意に与えられた強烈な快感に、ミカは顎を仰け反らせ、体を硬直させた。
 神治にしても肉棒を吸引される快感と、膣と一体化する心地良さが交互に押し寄せ、心と体がとてつもない幸福感で満たされた。
 肉体的な快楽、精神的な気持ちの良さが神治の全てを包み込んでいくのだ。
「ああんっ、あっ……そんな、あっ……そんなのぉっ……ひゃぅっ、あっ……ひゃぁんっ……」
 ミカは狂った様に頭を振り、甲高い喘ぎをあげまくった。
 美しい金色の髪を乱れさせ、メイド服から覗く桜色に染まった乳房をプルンプルンと揺らし、スカートから伸びる白い脚をブラブラさせながら悶えるミカの姿は最高だった。
「ミカっ、ミカ可愛いぞ、くっ……ミカは最高だぁっ……」
 神治は顔を快楽に歪めながら、夢中になって腰を振りまくった。
 それはテクニックも何も無い、ただ肉棒を擦らせる事で快楽を得ようとする行為だった。
 何しろそうしてさえいれば狂わんほどの快感が押し寄せてくるのであり、その気持ちの良さが他に余計な事をさせなかったのだ。
 とにかく肉棒を擦らせる事だけで快感を得ようと体が求めたのである。
「あんっ、あんっ、ああんっ……パパのオチンチン、あっ……パパのオチンチン凄いよぉっ……ミカの中が、やっ……ミカの中が滅茶苦茶になっちゃうぅっ……」
 ミカは頭をブンブンと左右に振り、近くにある木の根を掴んで押し寄せる快楽に耐えている様だった。
 翼がバサバサ乱れ、周囲に白い羽根を撒き散らしている様は幻想的であり、その神秘的な感覚はいやらしさを高めていた。
 自分は今天使を、超絶可愛い天使を犯している。
 そう思うと神治の精神は凶暴な肉欲で一杯になった。
 この天使を快楽で無茶苦茶にし、自分の物とするのだ。
 絶対にそうしたい。
 そうするべきだ。
 そんな想いで溢れていたのである。
「ミカっ、ミカぁっ……!」
 ミカの体を抱き締め、小さな唇に吸い付きながら、全てを征服したい気持ちを込めて腰を振っていく。
「やっ、やぁっ……パパ、あっ……パパわたしぃ、あんっ……おかしく、やっ……おかしくなっちゃうぅっ……」
 背中に腕を、腰に脚を絡め、翼で体全体を覆いながらミカは神治を求めてきた。
 まさに一体となったその瞬間、神治の射精感は限界まで高まり、一気に精を放とうと凄まじい勢いで腰を振っていく。
「凄いっ、あんっ……パパ凄いよぉっ……あっ、ああっ……そんなにされたらわたしっ……もうっ、もうっ、もぉっ……パパっ、パパっ、パパぁっ……あっ、あっ、あぁあああああああああんっ!」
「ミカぁっ!」
 強く突き込むと同時に精を放つ。
 ドピュドピュっと勢い良く精液が放出され、生まれたての子宮へと注がれていく。
 まさに何者にも汚されていない、いや、自分だけが汚した存在なのだと思うと激しい満足感が押し寄せ、ミカに対する愛おしさが強まった。
「ミカっ……ミカぁっ……!」
 強烈な愛情を込めて射精し続けていくと、やがて神治の頭は真っ白になった。
(ぐっ……)
 それと共に、不意に何かが肉棒から入り込んでくるのが分かった。
 それは温かで心地のいい、何とも言えず幸せを感じさせる存在だった。
(パパぁ……わたし、パパのモノだよぉ……)
(ああ、ミカは俺のモノだ。ミカは俺のモノだぞ……)
 身も心も幸福感で一杯になった神治の頭に突如ミカの声が響き、神治はそれに当然の様に応えると、柔らかで温かな体を強く抱き締めた。
 その途端、快感が強烈に押し寄せ、肉棒が熱く震えた。
 しばらくして射精を終えると、力を抜いてミカの上に倒れ込む。
「パパぁ……気持ち良かったぁ……」
「俺もだ。何か凄かった……」
 荒い呼吸を繰り返しながら、少女の頭を優しく撫でつつ軽く口付ける。
 嬉しそうにそれを受け入れるミカの様子を見ていると、たまらない幸せな気分になり、神治はその大切で愛おしい、柔らかな肉体の感触を確かめる様にして味わっていくのだった。


「まぁったく、何をしておるのやら……」
 不意に声が聞こえた神治は驚いた。 
 振り向くと、そこには呆れた様な顔をした未迦知神が立っていた。
「あ、あの……未迦知、さま……」
「たまたまお主が戻って来たのが見えたゆえ、出迎えてやるかと待っておったら……いきなり交わり始めるとはな……」
「す、スミマセン……」
 別に見られてマズイ事をしていた訳では無いにも関わらず、神治は何やら動揺してしまった。
「で、この者はどうしたのじゃ?」
「いや、それがですね……」
 神治は今まであった出来事をかいつまんで説明した。
「なるほど、人工の天使か……ふむ、面白い事を考えたものじゃ。それに己らが否定している悪魔の精で産まれたというのは皮肉で笑えるな。その学者は実に面白い男じゃの」
「そうなんですよ」
 神治はアルのとぼけた様子を思い出しながら頷いた。
 そう言えば再会の約束はしたが、次はいつ会えるだろう。
 今度はもっと落ち着いた状態でミカと話をさせてあげたかった。
 何しろアルはミカにとって、神治とは別の意味で父親なのだから。
「それにしても、そうした相手に一族の契約を結ぶとはな。相変わらず節操がないというか……」
「え? 一族の契約って、何ですか……?」
 物思いにふけっていた神治は、不意に未迦知神が発した聞き慣れない言葉に首をかしげた。
「先ほどしておったであろうが。何じゃまた気づかずにしたのか? まったく巫女の時といい、お主という男は……」
 未迦知神は大きく息を吐き出しながら呆れた様に呟いている。
「先ほどしたって……え、ええ?」
「魂が繋がった時に、己のモノとする様な会話をしたであろう?」
 そう言えばそうした会話をしたが、まさかあれがそうだったというのだろうか。
「本来ならばその様な会話だけでは契約には至らぬのじゃが、この者は特別じゃからな。お主の精によって産まれ、そのままお主の精漬けにされたのじゃから、すでにお主に支配されていると言えるからの。今この者に充満している『気』はお主のモノしかないのじゃから、そうした状態で契約的な会話をすれば、意識せずに成立してしまってもおかしくはないわ」
「……」
 その説明に何とも言えない気分になりながらミカを見つめる。
 するとミカは何も言わず、ただニコリと微笑んだ。
 そのお日様の様な笑顔を見ていると、少し落ち着きが戻ってくる。
「あの、一族の契約って、どういう事なんでしょうか?」
 一度深呼吸をしてから神治は未迦知神に尋ねた。
「緋道神治という神の一族になるという事じゃ。眷属というヤツじゃな。お主に仕え、お主と共に生きる存在じゃよ。まあ、間接的とはいえ娘ではあるから問題は無いと思うが……少々微妙な印象はぬぐえんな……」
「何でですか?」
「この者が成人であれば何の問題はない。当事者同士が勝手に契約するだけじゃからの。だがこの者は生まれたての赤子じゃ。その様な相手と契約するというのは、あまり褒められた事ではないという事よ。人の社会でも、右も左も分からぬ子供相手に重要な契約をするなど微妙じゃろ?」
 確かに、それはまるで騙している様な印象があった。
 自分がしたのはそういう事だというのだろうか。
 だが自覚が無いのだから困ってしまった。
「わたし、パパの眷属になれて嬉しいよ」
 不意にそれまで黙っていたミカがそう言ってきた。
 気軽に言っている様に思えたが、意味を分かって言っているのだろうか。
「ありがとう。でもいいのかい? 俺の眷属になっても」
「うんっ。だって私はパパの物だもの。パパとの繋がりなら何だって嬉しい」
 甘える様に頬を擦りつけながら上目遣いに見上げてくるミカの言葉に、神治の心臓は激しく鼓動した。
 この少女は自分は神治の物だと、その事が嬉しいと言っているのがたまらなかったのだ。
「俺も嬉しいよ……」
 心の底からそう思いながら、神治はミカに微笑み返した。
「ま、取り合えず本人が喜んでおる様じゃから今のところは良いであろ。せいぜい将来文句を言われない様に大切に育てるのじゃな」
「そうですね。気をつけます」
 未迦知神の忠告には素直に従うべきだろう。
 今後ミカが成長し、神治の事を嫌いになる可能性だってあるのだから。
 その様な状況は想像したくも無かったが、あり得ないとは言い切れない事でもあるのだ。
「それにしても『パパ』か……くっくっ、面白いのぉ……」
 未迦知神は可笑しそうに笑っている。
 先ほどミカが「パパ」と言っていたため、それを聞かれてしまったのだろう。
「あ、駄目だろ、二人きりじゃない時は言わないって……」
「! ゴメンなさい……」
 ミカは一瞬驚いた様な顔をした後、表情を暗くしながら下を向いて小さく呟いた。
「って、いや……その……」
 その過剰な反応に驚いた神治は、激しく動揺してしまった。
 まさかここまで重く受け止められるとは思わなかったのだ。
 軽く言ったつもりが、ミカにはかなり大事として聞こえてしまったらしい。
「えっと、そんな怒っている訳じゃないから。今度から気をつけてくれればいいから……ね?」
「うん。分かった……」
 慌てた神治が穏やかな口調で告げると、ミカは顔を上げ、ホッとした様な表情をした後、小さく頷いた。
 どうやらミカにとって自分の言葉はかなり重く捉えられているらしい。
 だとしたら、今後は気をつけて喋らなければならないだろう。
 特に軽い気持ちで責める様な言葉は使うべきではなかった。
「くっくっ……さっそく親バカか? もう許してしまうとはな。お主は駄目親になりそうじゃのぉ。叱る時はきちんと叱れんといかんぞ?」
 未迦知神はからかう様にして言ってくる。
「このくらい別にいいじゃないですか。俺だって叱らなきゃいけない時はちゃんと叱りますよ」
「どうだかな……くっくっく……」
 何が可笑しいのか、未迦知神は先ほどから笑ってばかりだった。
「あの……」
 袖を引っ張られたため視線を向けると、ミカが困った様な表情でこちらを見つめていた。
「どうしたんだ?」
「パパって呼ばないなら……何て呼べばいいかなって……」
 確かに呼び方を決めないと困るだろう。
「まあ、名前でいいんじゃないか?」
「名前?」
「そう。神治って呼んでくれればいいよ」
「神治?」
「うん、そう」
「分かった。神治、大好き」
 そう言いながらミカは抱き付いてくる。
「パパ」と呼ばれるのも良かったが、可愛らしい声で呼び捨てられるのもなかなか良かった。
 父親なのに名前を呼び捨てられるのはどうかと一瞬思ったが、元々まともな親子関係ではないのだから良いだろう。
「何とも可愛い娘が出来たものじゃな。ところでお主、名前は何と言うのじゃ?」
「ミカ」
 未迦知神に尋ねられたミカは、ニコリと微笑みながら答えている。
「未迦知さまの名前から戴いたんですけど、良かったですか?」
「構わん。お主は儂に繋がりのある者じゃ。その娘ともなれば、儂にとっても孫みたいなモノじゃからな」
 どうやら問題が無い様なのでホッとする。
 とっさに付けたものの、気に食わないと言われたらどうしようかと思っていたのだ。
「未迦知さま、ミカのお婆ちゃん?」
 ミカは未迦知神をジッと見つめながらそう尋ねている。
「まあ、そういう事じゃ。これから宜しく頼むぞ」
「うん、未迦知さまも大好きっ」
 そう言ったかと思うと、ミカは未迦知神に抱き付いていった。
「ふむ、素直で良い娘じゃ。お主にとっては良い眷属かも知れぬの。大切にするが良いぞ」
「はい」
 ミカの頭を優しく撫でている未迦知神の様子を見ていると、神治は何やら家族が増えた様な感覚を覚えた。
 そしてこれから自分は、ミカの父親として生きていくのだという事を意識した神治は、その事に緊張感を持つと共に、それ以上に幸せな気分になるのだった。












あとがき

 今回は天使を出してみました。
 以前から神治達の敵対組織、とまではいかないけれど、毛嫌い組織(笑)には天使を出そうと思ってましたんで。
 話的には本来前半の女性達の部分だけで終わらせる予定だったんですが、神治に惚れる天使も欲しいなぁって事でミカを出しました。
 卵に関しては某マイナー名作アニメのタイトルから思いつき、ミカ自身の容姿や性格なんかは、これまた某アニメの絶対なメイドな天使(笑)から戴きました。
 いや、私がそのキャラに惚れてるもんで、どうしても出したかったんですよ(笑)
 性格的にもこれまで出てなかったタイプなんでちょうど良いと思いましたしね。
 んで本来は娘にするつもりはなかったんですが、話を考えていくうちに精液をかける部分が出てきて、それならいっそ娘にしてしまえって事で設定が完成しました。
 いつか娘は出そうと思ってましたけど、もうちょっと先になる予定だったので、どうするかなぁ、と思いましたが、直接的な娘ではないのでいいかなと。
 せっかく人外話をやっている訳ですから、こうした変則的な子供ってのもありだと思ったのですわ。
 今後将来産まれるであろう直接的な子供達との間で、色々話が作れたりしたらいいですね。
(2008.7.29)



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