緋道の神器


        第十八話  巫女



 神治はこれから修練場に籠もる事になっていた。
 数日前に小学生の知り合いである亜美たちに誘われ、「当主さまを迎える会」という集まりに参加したのだが、そこで十歳以下の少女、しかも処女を多数抱いてしまった事が問題だと判断したからだ。
 ここ緋道村では、十一歳以上であれば合意である限り誰もが好きな相手とセックスする事ができた。
 しかしそうでなければ抱く事を禁じているのは一般社会と変わらず、そうした決まりを村の責任者である当主自ら破ったとなれば大問題だったのだ。
 とはいえ、実際そう考えている人間は少なく、また神治が歴代の当主の中でもまれに見る性的能力者であったせいか大目に見られていた。
 緋道村では性的能力の高い事が何より尊ばれていたし、そもそも村人たちにしてもこっそりと十歳以下の子供たちを抱いていたりするため、目くじらを立てて非難するような人間はほとんどいなかったのだ。
 無論全くいないという訳ではなかったので、それなりの処分を受けるべきだと判断した神治は一定期間の禁欲をすると宣言したのだが、これには多くの人間が衝撃を受けたように思えた。
 何故なら性に開放的なこの緋道村で、セックスをしないなどという事はとんでもなく厳しい処分だったからだ。
 何もそこまでする必要はないのではないか、と多くの人に止められたが、ケジメを付けるべきだと主張して、神治は誰も入る事のできない修練場へ籠もる事にした。
 一応そこには未迦知神の巫女として女性がいる事は周知の事実であり、実際は禁欲になっていないと邪推できたが、そこは処分を受けるのがこれまで何百人もの女性を相手にしてきた神治だけに適度な罰として考えられた。
 神治のような人間が、たった一人しか相手にできなくなるというのは、かなりの苦痛を得ている事になると判断されたからである。


「といった感じで、表向きは処分を受ける事になっているが……分かっておるのだろうな。お主の本来の目的は神の修行だという事を……」
 未迦知神はそう呟くと、修練場の門をくぐる神治の頭をこづいた。
 そう、これが神治が周囲にどれだけ止められようとも修練場に籠もる事にした本当の理由だった。
 これまでしないでいた神としての修行、それを行うつもりだったのである。
 以前から暴走しがちの己をコントロールする方法はないかと思っていたのだが、修行をすればそれができると未迦知神に言われ、ずっとやりたいと考えていたのだ。
 どうやら修行は他に人間がいると上手くいかないようで、また期間的にも数ヶ月かかるとの事であり、表だって神の修行と言えない以上、学校を休む訳にもいかない神治にとっては、今回の「処分」という理由は実にありがたいものだったのである。
「分かってますよ。俺、ちゃんと修行しますから……」
「いいや、分かっておらん。お主は修行の辛さが分かっておらんわ。全くおなごを抱けなくなるのだぞ? 好き者のお主にそれが耐えられるのか?」
 それを聞かれると微妙だった。
 何しろこれから神治の行う修行はまさに禁欲であり、表向きの理由である処分の内容と同じだったからだ。
 よくは分からないが、禁欲する事で「気」を高めるのだとかいう事を未迦知神に聞いていたのである。
「俺自身は覚悟してるんですけどね。だけど体は……その、大丈夫なんでしょうか? 無意識のまま未迦知さまを襲ったりとか……」
 緋道村に来る前の神治は女性を抱きたくておかしくなり、母を強姦した事があるのだ。
 その時は母であるため良かったが、これがもし見知らぬ女性だったとしたら警察沙汰になっていただろう。
 それほど神治の性欲は強く、またそうした事態を起こさないために性に開放的な緋道村に引っ越してきたのだ。
 そしてその緋道村でさえ、あまりに性欲が強いせいで手当たり次第同じ学校の生徒を襲った経験があり、その事を考えれば、果たして禁欲をし続ける事ができるのか不安だったのである。
「馬鹿者。この修練場に居る限り、お主が襲いたくなるようなおなごは存在せんわ」
「え? でも未迦知さまは俺の修行をしてくれるんでしょ? それにここには葉那さんもいるし……」
 未迦知神は絶世の美少女であったし、この修練場にいる巫女の葉那も美女であったため、その二人に囲まれていては一日として禁欲は持たないような気がした。
「忘れたのか? 我らが異性を誘う『気』を絶つ事ができるのを」
 そう言われて思い出す。
 葉那と初めて会った時、全くと言っていいほど欲情しなかったのだ。
 それは葉那の「気」のコントロールが優れており、自分を性的対象として認識させない事が可能となっていたからだった。
「つまりお主はここではせいぜい己でしごく程度の性処理しか出来ぬという事じゃ。っと、そう言えばお主はそれも駄目であったな」
 未迦知神はそう言うと楽しそうに笑っている。
 初めてセックスをして以来、神治は自慰では射精できない体になっていた。気持ち良くはなっても決して射精までは至らないのである。
「という事は、襲う心配は無いけど、ずっと悶々とした状態にはなるって事ですよね?」
「その通り。しかもお主の性欲は並ではないからな。おそらくかなりの苦しみとなるであろう。だがそれも修行じゃ。まずはそこから耐えるが良いぞ」
 未迦知神の言葉に何とも言えない嫌な感じを覚える。
 村に引っ越してくる前の、女を抱けずに苦しんだ状態を思い出すと凄く辛かったからだ。
 果たして自分は修行を終える事ができるのだろうか……。


 そんな不安を抱えて始めた修行だったが、やはり最初は地獄だった。
 射精したくとも出来ず、その何とも落ち着かないどうしようもない苦しさを抱えながら暮らさなければならなかったからだ。
 まずはその状態に慣れるのが大変で、他の事は何もできなかった。
 そして未迦知神たちの持つ欲情させない力がかなり凄い物だという事を改めて認識させられた。
 何しろ女が欲しくてたまらないというのに、目の前に未迦知神の可愛らしい顔や、葉那の美しい顔、そして二人の魅惑的な肉体を見ても何もする気が起きないのだ。
 試しに葉那の豊満な胸に触れさせてもらったりもしたのだが、全くと言っていいほど刺激を感じなかった。
 一緒に風呂に入り裸を見たりもしたのだが、本当に何も感じないのである。
 それは修行する上ではありがたい事なのだが、禁欲状態があまりに辛くなってくると今すぐにでも未迦知神たちに欲情し、この溜まりまくっている精液を放出したくて仕方がなかった。
(ユイリーエが居ればな……)
 あの我慢の苦手な少女が居れば、修行の事など気にせずきっと喜んで抱かせてくれたに違いない。
 だがユイリーエは、そうなる事を見越した未迦知神によって故郷に帰されていた。
 修行が終わったらまた来ると言っていたが、この調子だといつになるだろう。
(ユイリーエ……ああ、ユイリーエ……)
 魅惑的な女神の少女。
 美しい金髪に真っ白な肌と柔らかな肉体。
 そうしたユイリーエの体を思い浮かべながら肉棒をしごく。
 未迦知神や葉那に対しては妄想ですら欲情できなくなっていたため、神治はこれまで抱いてきた女性たちを思い浮かべて自慰をしていた。
 だがそれもただ気持ち良くなるだけで射精には至れないため、ただ欲求不満を高める効果しかなかったのだが。
(くそっ……こんなのいつになったら平気なるんだよ……)
 未迦知神によると、しばらくすると今の落ち着かない衝動が治まるとの事だった。
 そこからが本当の意味での修行になるという事で、今は特に何もせず、ただ毎日こうした苦しみに耐えていたのである。
 だが修練場に来てすでに一ヶ月が経っているが、未だに全く治まる気配がない。
 本当にこの悶々とした状態が無くなるというのだろうか。
(あ〜〜あ、お月さんは綺麗だね……)
 そんな事を考えながら、神治は空に浮かんでいるまん丸な月を見上げた。
 そこは修練場にある、ちょっとした休憩所のような屋根の付いた広場で、芝生があって寝転ぶのにちょうど良かったため、神治はここに修行に訪れて以来、一人で居たい時に来ていた。
 今まで常に一緒に居た未迦知神も、さすがに神治が堪えていると思っているのか、気を遣って一人にしてくれていたのだ。
(ん……?)
 ふと、何かが動いたような気がしてそちらに視線を向ける。
 未迦知神が迎えにでも来たのだろうか?
 見えた人影は小さく、どうやら未迦知神のように思えた。
「どうしたんです? ここに来るなんて珍しいですね?」
 神治が声をかけると、人影はビクッと体を震わせて動きを止めた。
 その不審な態度に、もしかしてこっそりと近づいて脅すつもりがバレたので驚いたのだろうかと思う。いかにも未迦知神がやりそうな事だったからだ。
「そんな所に居ないでこっちへ来たらどうです? 俺は気にしませんよ?」
 きっとばつの悪い様子で近くに来るに違いないと思いながら待っていると、案の定、どうしたものかと困ったようなギクシャクした様子で近づいてきた。
(え……?)
 だが月明かりに照らされた姿を見た瞬間、神治は驚きのあまり固まった。
 現れたのは未迦知神では無かったからだ。
 歳の頃は十一、二で、白衣に黒い袴、そして腰まで伸びた長い髪、という特徴は、ゴスロリの服装になる前の未迦知神そのままだったのだが、顔が微妙に違っていたのである。
 だが違うと言っても、未迦知神をあまり知らない人間が見たら間違えるであろうと思えるほどよく似ていた。
 唯一オドオドしているような雰囲気が、常に自信に溢れている未迦知神との違いと言えただろう。
 一瞬何かの冗談で未迦知神がそうした態度を取っているのかとも思ったが、神治にはこの少女が別人である事が分かった。
 感じられる「気」の質が明らかに違っていたからだ。
「君は……えっと、どちら様かな?」
 自分で呼び寄せておいて言うにはあまりに間抜けな言葉だったが、取り合えずそう尋ねてみる。
「?……」
 少女は近くまで来ると、首をかしげて不思議そうにこちらを見つめてきた。
 月明かりに照らされた顔は、さすが未迦知神にそっくりなだけあって、そうした表情をされると何とも可愛らしかった。
「実は君の事、違う人と間違えてたんだよ」
「!……」
 そう告げると、少女は驚いたように一瞬目を大きく見開いた後、慌てて下を向いた。
 そして困ったように視線を落ち着き無く動かし、頬を赤くして恥ずかしそうに体をモジモジとさせている。
(って、恥ずかしいのはこっちなんだけど……)
 人違いをしていたのだから、こうした態度は神治の方がすべき事だろう。
 だがあまりに落ち着き無く慌てた恥ずかしそうな態度をとっている少女を見ていると、何やら可笑しくなった。
 ここまで見事に恥ずかしがっている態度を取る人間を見た事がなかったからだ。
「取り合えずゴメンね。もしかして驚かせちゃったかな? そうだよね、君にしたら全然知らない人間に急に近くに来いとか言われちゃったんだもん」
「……」
 しかしそう告げると、少女は首を大きく左右に振って否定した。
「え? 違うの? 何が違うのかな?」
 今の言葉に間違った点は無かったと思うのだが、何か違っているのだろうか。
「わたし……知ってます……」
 少女が小さな声で呟いた。
 初めて聞いたその声は、良質の風鈴が鳴っているかのように澄んでおり、聞いているだけで心地良さを感じさせるものだった。
 思わず体の動きを止めてその余韻に浸ってしまう。
「知ってる? って、俺のこと知ってるの?」
 気を取り直して少女に尋ねる。
 とは言うものの、よく考えれば自分はこの村において有名人であった事を神治は思い出した。
 こちらが知らなくても一方的に知られている可能性は十分にあるのだ。
「あなたは……新しい神さま……」
「!……」
 だが続けて発せられた少女の言葉に息を飲む。
「当主」と言ってきたのならどうという事はなかったが、今の言葉は明らかに神治が神だという事を見抜いている言葉だったからだ。
 一体彼女は何者なのだろう。
 この村で自分の事を神と知っているのは、未迦知神と巫女の葉那くらいだったからだ。
(って、そうか巫女……)
 葉那の事を思い出した事で、すぐさまこの少女が以前聞かされた修行中の巫女ではないかという事に思い至った。
 葉那に初めて会った時もすぐに神であると見抜かれたのだが、この少女が同じような力を持っているとすれば分かって当然だろう。
「君は、ここで修行している巫女なんだね?」
 そう尋ねると少女は嬉しそうに微笑んで頷いた。
(うわっ、可愛い……)
 超絶な美少女であるため、そうして微笑まれると強烈なものがあり、自然と頬がだらしなく緩む。何とも小動物に感じるような愛しさを覚えたのだ。
 これが普通の状態であればすぐさま欲情したのだろうが、この少女もやはり巫女だけあって「気」を扱う能力に長けているのか、全くと言っていいほど性的な興奮は起きなかった。
 これほどの美少女に欲情できないとは何とも寂しい感じがしたが、たまにはそういった事を抜きにして異性と接してもいいのではないかと思った神治は、もう少し少女と一緒に居たくなった。
「良かったらもう少しここに居てくれないかな? どう?」
 座るように促しながらそう尋ねると、少女は一瞬どうしようかと考える様子を見せたが、そのまま隣に腰掛けた。
 座るとその小ささがより感じられ、何とも言えない庇護したくなるような感覚を神治は覚えた。
 このくらいの少女は妹たちで慣れているはずだったのだが、彼女たちは皆元気な性格であったせいか、この少女のように弱々しい印象を持つ相手と並ぶのが新鮮だったのだ。
「……」
「……」
 しかもこちらが話さなければ一言も言葉を発しないため、少女と居る事には何とも言えない緊張感があった。
 だがそれでいてどこか心地良い感覚があるため、神治はこうして少女と並んで座っているだけでも幸せな気分になる事に驚いた。
(何なんだろうなぁ……変な感じだよ……)
 視線を向けると少女はジッと夜空を見上げており、その可愛らしい横顔に温かな想いを抱く。
 まるで可愛がっている猫を愛でているような、そんな感覚があったのだ。
「そういや君も修行しているんだよね? 修行ってのはやっぱり大変なのかな? 俺も今しているんだけど、まだ本格的な修行には入ってないんで知らないんだよ」
 何か話す事はないかと考えた後、共通の話題であるはずの修行の事を尋ねてみる。
「……神さまの修行とは……多分違うと思います……」
 少女は少し考えたようにした後、困ったように笑いながら小さな声で済まなそうに答えた。
「そういやそうだよな。馬鹿なこと聞いちゃったよ」
 照れ隠しに笑うと、少女も一緒になって微笑んだため、何やらホンワカとした心地良さを覚えて神治は嬉しくなった。
「それじゃ、君はどんな修行をしているんだい? 俺がやるのとは違うかも知れないけど、参考までに聞かせてよ」
「……」
 神治の質問に、少女は少し間を置いてから小さな声で答えた。
 その様子は大人しそうな少女の印象にピッタリに思え、ただ普通に言葉を返してくるだけでも神治は幸せな気分に自分がなっていくのを感じていた。
 それは純粋な、肉欲を封じられているゆえに完全に純粋な、少女に対する愛おしさだった。
 これほどまでに一人の少女を純粋な想いで愛した事はないだろう。
 この少女と一緒にいると、今まで感じた事のない安らいだ気持ちになり、心が非常に温かくなるのだ。
 少女を慈しみ、大切にしていかなければならないという感覚が湧き起こり、そして少女が自分に懐き、甘えるようになって欲しいといった期待と、そうしてくれたら凄く嬉しいのではないかという想いを抱いた。
(何だろ……これって……)
 恋愛感情とは違う、慈しみ愛したい想い。そんな衝動が心に湧き起こってくるのだ。
 それは初めての感覚だった。
 その後も神治は色々と質問をしたが、少女は頷いたり首を横に振ったり、小さな声で呟いたりという感じで、会話的には盛り上がらなかった。
 だがそうした状態であっても神治は強烈な満足感を覚え、少女とずっと一緒に居たくて仕方の無い想いで一杯になった。
「わたし……そろそろ帰ります……」
 しばらくして不意に少女がそう言ったので神治はひどく悲しくなった。このままずっと話していたかったからだ。
 だがよく考えれば時刻も大分遅くなっている。
 この少女が修行中だとすれば、あまりこうした夜更かしはしない方がいいだろう。
「そうか……残念だけど仕方ないね。でも良かったら明日もまた来てくれないかな? 俺、君ともっと話したり、一緒に居たいんだ」
 そう告げると少女はビックリしたように目を大きく見開き、続けて嬉しそうにニコリと微笑んだ。
「はい……」
 小さな声の返事に心臓が激しく鼓動する。
 とにかく可愛くて仕方がないのだ。こんな気持ちは初めてだった。
「あ、待って……」
 立ち上がり、去ろうとする少女を思わず呼び止めてしまう。
「?……」
 振り返ってこちらに首をかしげる様子が可愛らしくてたまらない。
「あ、その……えっと……」
 特に意味も無く呼び止めたため、どうしようかと神治は困った。
「君の……君の名前は何て言うんだい?」
 そう言えば名前を聞いてなかった事を思い出し、たどたどしく尋ねる。
「……ほたるです」
 そう呟くと、少女は再び歩き出した。
 その姿は月明かりに輝いて見え、まるで本物の蛍のようだった。
(ほたるちゃん、か……)
 神治は少女が居なくなった事に心の一部が欠けたかのような寂しさを覚えつつ、明日になったらまた会える事を楽しみに感じるのだった。


 それから神治は毎日ほたると会った。夜にあの場所で待っているとほたるがやって来るのだ。
 とにかく神治はほたると会えるだけで嬉しかった。
 何か会話をしなくても、ずっと一緒にいるだけで心が満たされるのである。
 まるで恋をしているかのように感じる時もあったが、ほたるに対しては欲情しないせいもあるのか、ただ年下の可愛い少女を慈しむような想いの方が強かった。
 いわば孫を可愛がる祖父のような感覚と言えばいいだろうか。
 とにかくほたるを可愛がり、微笑んでもらえればそれだけで幸せになれたのだ。
 膝の上にほたるを座らせ背後から抱き締める、などといった今までなら確実にセックスに繋げている行為をしていても全く欲情せず、ただほたるのぬくもりを感じているだけで嬉しさが込み上げてくるのだから不思議だった。
 頭を撫で、頬ずりし、まるで猫を可愛がるようにして神治はほたるを慈しんだ。
 その時間の何と幸せなことか。
 神治の冗談に可笑しそうに小さな声で笑う姿を見ていると、もう何を捨ててでもほたるのためにしてあげたくなるのだ。
 ハッキリ言って親バカ状態と言えただろう。
 年齢的に近いのだから兄バカと言うべきか。
 神治はほたると一緒にいるとそれだけで心が安らぎ、体の中で渦巻いている性欲の苦しみを忘れる事ができた。
 昼間も夜にほたると会う事を考えていると楽になり、それが傍目にも分かったのだろう、ある日未迦知神が本格的な修行に移行する旨を告げてきた。


「よもやここまで早く性欲を抑えられるようになるとは思わなんだ。お主のことであるからもう少しかかると思っておったのじゃがの」
 感心したように未迦知神は呟いている。
 神治にしても驚いていた。
 あれほど辛く苦しかった性の衝動がほとんどと言っていいほど無くなっていたからだ。
 まだ完全に無くなった訳ではないが、それでも耐えられる範囲であったため、以前に比べれば格段に楽になったと言えただろう。
「性を発散させない状態で湧き起こる性欲をどう処理するか。それがこれまでお主に課していた修行の内容な訳じゃが、どうやらコツを掴んだようじゃの」
 何の事はない。
 神治にしてみれば、ほたるの事を想っているだけでムラムラとした性欲など消え去ってしまうのだ。
 おそらくほたるに対する愛おしい想いは性欲とは関係の無い、純粋無垢な愛情ゆえにそうした事が可能なのだろう。
「さて、ここ一ヶ月でお主の体の中には放出されなかったゆえに溜まりに溜まった性の気が渦巻いておる。性の気は生命力を多く含んだ気の一種じゃ。ゆえにこれを扱う事により、お主は神の力を使う事ができる」
「それってつまり、セックスしなかったから神の力を使えるようになったって事ですか?」
「まあ、ある意味合ってはいるな。本来ならば通常の状態でも使う事はできるのじゃが、お主のように未熟な者の場合、極限まで気を高める必要があるゆえ、こうして性の放出を抑えたという訳じゃ。溢れんばかりに気が満ちておれば、少しの労力で使えるようになるからの」
「なるほど……」
 要するに使い慣れていない力であるから、できるだけ出しやすくしたという事か。
「で、次の段階として、その溜まった気に方向性を与える修行を行う。儂がこれまで見せてきた様々な術も結局気の使い方の違いでしかない。それをどう上手く使えるかの問題じゃ」
「方向性ですか……」
 確かに今体の中にある「気」は、どこか無秩序に渦巻いているように感じられた。
 これを上手く操り、術に繋げていくという事なのだろう。
「例えば以前儂が見せた空中浮遊。あれは気を放出する事によって宙に浮いている訳じゃが……取り合えずまずはこれをやる事にしよう。比較的簡単で結果も分かりやすい術であるし、お主もかなりしたがっておったようだしの」
「空中に浮くんですか。おぉ、凄いですねぇ」
 幼い頃からアニメや漫画に登場する空飛ぶヒーローに憧れたものだ。
 少しでも飛ぶ事ができればそれは凄く楽しい事だろう。
「どうじゃ? やる気が出てきたであろう? この術であればお主のやる気も上がると思ったのでな。辛い状態が続いていたゆえ、楽しい方が良いと思ったのじゃ」
 その思惑はまさに正解だった。
 これまでが辛かったため、神治は修行に対してやる気が落ちていたのだ。
 しかしこの事で再びかなりやる気が起きていた。何しろ空を飛べるなど、夢のような話だからである。
「未迦知さま、俺、頑張ります」
「うむ、ビシビシしごくからそのつもりでおれ」
 ガッツポーズをして答えると、未迦知神は嬉しそうに微笑んだ。
 その様子がどこかほたると重なり、神治は空を飛べるようになったらほたるにも見せてやろう、などと考えるのだった。


「今日はほたるちゃんにプレゼントがあるんだ」
 そう告げると、ほたるは不思議そうな顔をしてジッと見つめてきた。
「あのお月さまをもっと近くで見てみたいと思わないかい?」
「お月さま?」
 ほたるは夜空に浮かんでいるまん丸な月を見上げながら聞き返してくる。
「そうだよ。実は俺、空を飛べるようになったんだ。ほら……」
「!……」
 驚いた顔をして、月に負けないくらい目をまん丸にしてほたるは見つめてきた。
 何故なら実際に神治が宙に浮いていたからだ。
 空を飛ぶ修行を始めてから数週間。
 ようやく飛ぶ事に自信を持てるようになった神治は、ほたるを抱いて一緒に空を飛びたくなったのである。
「さ、一緒に飛ぼう?」
 そう言いながらほたるをお姫さま抱っこで持ち上げ、そのままゆっくりと上昇する。
「きゃっ……」
 小さな可愛らしい悲鳴を上げ、ほたるがギュッと抱き付いてきたためその事に嬉しさが込み上げてくる。
 あっという間に数十メートル上昇すると、周囲には夜空だけが広がる光景になった。
「ほら、見てご覧。綺麗だよ?」
 怖いのか、顔を神治の胸に付けたまま動かそうとしないほたるに呼びかける。
「大丈夫。上を見ていれば怖くないさ。それにこうして俺がしっかりと抱いているんだから絶対に平気だよ。信用してくれ」
「はい……」
 その言葉でようやく顔を上げたほたるは、周囲を見回している。
「どうだい? 綺麗だろう?」
「……はい、凄く綺麗です……」
 月の美しさに感動したらしいほたるは、うっとりとした目をしている。
 地上にいる時と違って周りに何も無い状態で見る満月は最高だった。
 しかも腕に愛おしい少女を抱いているとなれば格別に素晴らしい気分と言えただろう。
 目を月からほたるの顔に向ければ、そこには月の美しさに負けないほどに可愛らしいキラキラとした笑みがあった。
(ああ……俺、何て幸せなんだろう……)
 愛しい少女と二人きりで満月を見る。
 これほど幸せな状態は無いに違いない。
 神治はしばらく宙に浮いたまま、月とほたるを交互に見つめ、幸福感に浸るのだった。


「しかしお主にも驚かされたものじゃわい。ここまで修行がとんとん拍子に進むとはの。もう少し不平不満を言うかと思っておったのじゃが……何ともこれだけ見事に修行を終えられてしまうと儂としても呆れるしかないわ」
 修行を始めてから数ヶ月。
 神治は未迦知神の用意した修行の内容を全て終えていた。
 ある程度神としての力を使いこなせるようになったのだ。
「とはいえ、お主がまだまだ未熟者である事には変わりないからの。調子に乗るではないぞ?」
「分かってますよ。俺はまだまだ未熟です。大体、目の前に自分よりも遙かに優れた比較対象があれば、ちょっとくらいの自信なんかすぐに無くなっちゃいますから」
 一つ術を身に付けるたびに、自分がする以上の見事さで未迦知神に術を披露され続けたため、何とも言えない虚しさを感じさせられたのだ。
 おそらくそれも未迦知神の教育方針なのだろう。神治を天狗にさせないための処置に違いなかった。
 まあ、単に負けず嫌いという可能性もあったのだが。
「なかなか殊勝な態度ではないか。ではいよいよ最後の段階に移るとするか」
「え? まだ修行するんですか?」
 確か先ほど「これで終わりじゃ」と言われたように思っていたのだが。
「慌てるな、何も修行するとは言っておらんであろう? まあ、半分修行のような意味もあるが、半分は楽しみでもあるからな。こいつは格別に素晴らしいゆえ、お主がまた修行をしたくなるのは受け合いじゃぞ」
 一体どういう事なのだろう。
 神治は訳が分からず黙って未迦知神の言葉を待った。
「要するに、禁欲は今日までということじゃ。そう言えば分かるじゃろ?」
「え……?」
 言われた瞬間は何の事か分からず、すぐにその意味を察した神治は嬉しくなった。
「それって、未迦知さまを抱いてもいいって事ですか?」
「さようじゃ。儂も葉那も術を解くゆえ、お主は好きなだけ抱くが良いぞ」
 その言葉に凄く嬉しくなってくる。
 術が解けていないので興奮はしないが、記憶にある気持ちの良さを思い出し、ウキウキとした気分になった。
「しかしただ抱けば良いというものではない。最初の交わりはただの交わりではなく、お主の修行の現れであるからな」
「え……?」
「先ほど言ったように、禁欲の後に初めて交わる行為には修行の意味も含まれておるのじゃ。溜まりに溜まった精を放つ行為。これをある程度制御できなければ今までの修行は失敗したと言ってもいいじゃろう」
「そ、そうなんですか?」
「うむ。お主にとって最大の問題は己の性欲が制御できぬことであったからな。今回の修行でそれがある程度可能になっているはずなのじゃ。『気』を制御する事はすなわち性欲を制御する事に繋がっておるからの。それゆえ、この後行う交わりにおいて、もしお主が性欲の制御ができない状態、簡単に言えば意識を失うような状態になれば修行は失敗したという事じゃ」
 何とも最後に驚いた卒業試験もあったものだ。
 確かに以前自分の意識が消えて女性に襲いかかった経験のある神治としては、空を飛ぶなどといった事よりも遙かに重要な内容だった。
 だが相手はこれまでの経験の中で最も快楽を与えてくる未迦知神だ。
 普通にしていたとしても意識を失いそうになるほど気持ちがいいと言うのに、久々のセックスという事を考えると大丈夫なのか不安になる。
「未迦知さま、お手柔らかに頼みますよ?」
「あ、そうそう。言い忘れておったが、お主の相手をするのは儂ではない」
「え? じゃあ葉那さんが?」
 てっきり最初は未迦知神だと思っていた神治は、驚いて隣にいる葉那に視線を移した。
 どちらにせよ侮りがたい相手である事に変わりはない。
 淫妖の血を引く葉那は、並の人間では太刀打ちできないほどに凄まじい快楽を与えてくる肉体の持ち主だったからである。以前狂ったようにその肉体を貪った経験があるのだ。
 今の性的に飢えた状態で抱いたとして、意識を保てるのか不安だった。
「いや、葉那ではない」
「え……?」
 だが続けて発せられた否定の言葉に驚く。
 では一体誰が相手をすると言うのだろう。
 この修練場には未迦知神と葉那の二人しかいないはずだったからだ。
「お主は忘れておるようじゃが、この修練場にはもう一人おなごがおるのじゃ」
「え?……って、あっ……」
 未迦知神にそう言われ、頭に浮かんだ少女の姿に驚愕する。
(ほたるちゃんを、抱けってのか……?)
 あの可愛らしく、あどけない少女を抱けというのだろうか。
 それは何やら酷い事のように思えた。
 以前の神治であれば嬉々として抱いただろうが、この数ヶ月間そうした感情抜きでほたると接してきたためどうにも嫌悪感が湧いたのだ。
「葉那よ、あの者をこれに……」
 未迦知神がそう告げると葉那が襖を開けた。
 するとそこにはほたるがおり、正座をして両手を床につけて頭を下げている。
「この者の名はほたる。現在修練場にいる唯一の巫女候補じゃ。まあ、お主はすでに知っておるようじゃが、取り合えず紹介する」
 さすがに毎日のように会っていたため、二人の密会はバレていたらしい。
「そして何ともちょうど良い事に最近修行を終え、さらには十一歳にもなったという事であるから、今回のお主の修行の仕上げを手伝ってもらおうと思った訳じゃ。何しろこの者はお主にとってまさにピッタリと言える生い立ちであるしな」
「え? どういう意味です?」
 もしかして親類か何かなのだろうか。
 だがこの緋道村ではそうした事は珍しくないため、それほど特別に扱う意味はないだろう。
「巫女がどのようにして常人とは異なる能力を身に付けるか、その理由を覚えておるか?」
「えっと……確か父親が淫妖で、その血を受け継いでいるからとか……」
 不意に聞かれた質問に、以前教えられた知識を思い出しながら答える。
「さよう。つまりこの者の中には淫妖の血が流れておる訳じゃが、その淫妖というのがな……穂智過だと言うのじゃよ」
「え……?」
 その言葉にギョッとなる。
 神治は他ならぬその穂智過に襲われ、危うく命を落とすところだったからだ。
「でも穂智過って、ずっと封印されていたんですよね? それでどうしてそんな事が出来るんです?」
 昔村を襲った穂智過は未迦知神の手によって封印された。その状態で穂智過がほたるの母親を襲うというのは無理な話だろう。
「封印はしておったが、さすがに完全とはいかぬでな。ヤツは時折地上にその力を及ぼし、あの洞窟の近くに寄った者を襲っておったのじゃ。その一人がこの者の母親という訳じゃな」
 そう言えば神治にしても穂智過の誘う気に寄せられ、洞窟に行きそうになった事があった。
 その時は有希に止められたが、同じようにして洞窟に近寄った人間がいてもおかしくないだろう。
「まさか、ほたるちゃんがそんな……」
 動揺しつつほたるを見ると、未だ頭を下げたままの可愛らしい後頭部が見えた。
「穂智過は今やお主と一体の存在じゃ。つまりある意味この者はお主の子供とも言えるのよ。若くして父親になった気分はどうじゃ? しかもいきなりこれほど大きな子供の父親じゃぞ?」
(ぐっ……)
 楽しそうに笑う未迦知神をよそに、心臓がドクンっと強く鼓動したのに驚く。
 そしていつもほたると二人きりの時に感じている温かい想いが込み上げてきた。
 それはあまりに強烈で、いつも以上にほたるに対する慈しみの感情が強くなっているように思えた。
「お主はずいぶんとこの者と仲良く、そう、まるで親子のように接しておった訳じゃが、それはもしかするとお主の中にいる穂智過が、自らの子の存在を無意識のうちに感知して愛おしく感じておったせいかも知れんな」
 未迦知神の言葉にハッとなる。
 確かに言われてみれば、ほたるに対しては恋心というより、親の愛情のような想いを抱いていたように思えた。
 その原因が穂智過の影響による親子の感情だとしたら確かに納得できたのだ。
 だがそのような事があるのだろうか。
 何しろ今まで穂智過が何か影響を与えてきたような事は無かったのである。
(ほたるちゃん……)
 頭を下げている小さなほたるを見ていると、そうした不安な状態であっても心が温かくなってくるから不思議だった。
 これが父親としての感情なのだろうか。
「ほたるちゃん、君はその事を知ってたのかい? 俺の中に穂智過がいるって……」
 神治が尋ねると、ほたるはピクッと体を震わせた。
「……知ってました……」
 少しして小さな声の返事が聞こえてきた。
 その事に神治は少々ショックを受けた。自分だけが何も知らなかったというのが何だか寂しかったからだ。
「じゃあ、君は……俺を父親みたいに思って、ああして仲良くしてくれたのかい?」
 自分ではなく、その背後にいる穂智過に対して父親のような想いを抱いて接していたのだとしたらあまりに悲しすぎた。
「当主さまは……私のお父さまと一つの存在です……でも、違う人でもあります……だからどうすればいいのか分かりませんでした……」
 言われてみればその通りだろう。
 いくら一体化しているとはいえ、神治は穂智過とは全く違う人格だ。
 そもそも肉体自体違うのだから父親と考えるのは無理がある訳だが、やはり一体化している以上、父親であるとも言え、そうして考えているとどっちであるかなど分かる訳がなかった。
 それをまだ幼いほたるに判断しろというのは酷な話だろう。
「答えにくい質問をしてゴメンよ。仲良くしてくれた理由が父親と一体化しているからだと思ったら、俺、何だか寂しくなっちゃったんだ……」
 情けない想いを抱きながらほたるに謝る。
 自分の苛つきを幼い少女にぶつけてしまうなど、あまりに酷すぎるだろう。
「……確かに始めは、お父さまの事で興味を持ちましたけど……途中からは、当主さまの事が……その……好きになって……だから一緒に居たかったんです……」
 ほたるにしては長い言葉を言っている事に、その想いの強さを感じて嬉しくなった。
 別に父親だからという理由だけで、ほたるが自分と一緒にいた訳ではない事が分かったからだ。それは何とも喜ばしい事だろう。
「それでお主の方はどうなんじゃ? 儂の見ていたところでは、お主の方がよっぽど娘に対する父親らしい態度で接しておったように思えたぞ?」
「え? 見てたんですか?」
 その事に動揺する。
 別にやましい事をしていた訳ではないが、ほたるに対する自分の態度は客観的に見れば馬鹿っぽく映ったに違いないという自覚があったからだ。
「たまたま傍を通りかかったら、お主が何やら巫女と一緒におるでな。よもや抱いたりするのではないかと心配した訳よ。まあ、この者の力はかなり強かったゆえ安心したのじゃが、次はお主の様子が面白かったのでな。笑い話として葉那に話したところ、そこから穂智過の娘だという事が分かって納得したという訳じゃ」
 確かに自分はずっとほたるに対して父親が娘に対するような想いを抱いていたように思えた。
 馬鹿っぽい態度も、まさに親バカと言うべき心情から来ているからだ。
「これって大丈夫なんですかね? 俺、穂智過に意識を奪われたりとかしないでしょうか?」
 自分の娘でない相手に対して、しかも十一歳の少女に十四歳の神治が親の愛情を抱くなど、どう考えても不自然だった。
 何かしら穂智過の影響があったとしてもおかしくないだろう。
「淫妖が己の娘を愛おしく感じるという話はついぞ聞いた事がないがな。であるからこの場合、お主の中にある父性に穂智過の方が影響を受けたと考えるべきじゃろう。それをさらにお主が感じ取ったと言うべきか。要するに互いが影響し合って起きた現象というところではないかの」
 とはいえ、穂智過の意識が影響を与えている事には変わりはないだろう。
 その事を考えると少々怖くなってくる。
「まあ、気にする事はあるまい。そもそも淫妖という生き物は感情を持っておらぬしな。それゆえその事に興味を持った穂智過はお主と一体化したのであろう? 精神的な快楽などという、ヤツらにとってはあまりに異質な快楽を求めてな。つまりはお主が心配しているような人間性に関わる変化は、元々人間性の無い淫妖と一体化した事では起こらないという事じゃ」
 そう言われるとホッとする。
 何か自分が違った存在になるのは恐ろしい事に思えたからだ。
「そして儂は思った訳じゃ。お主の影響により父親としての意識を持ち始めている穂智過が、その娘と交わる事にどういった想いを抱くのか。無論、元々親子などという意識の無い存在だったゆえ、以前であれば何も影響はなかったであろうが、この数ヶ月の間にこの者と親子のような交流をし、そしてそれ以上の間、お主という肉親同士の交わりに禁忌の想いを持つ者と共に暮らしておったとなれば、そこに起こるであろう影響というのは実に興味深いとは思わぬか?」
 確かに、それは興味深かった。
 というよりも、実際自分の娘ではないとはいえ、一体化している相手の娘を抱くという行為に神治が背徳感を覚えているのは確かであり、その感覚を穂智過が共有しているとしたら、ほたるとのセックスは穂智過にとってかなり強烈な刺激となるのではないだろうか。
 さらには淫妖としてはありえない、気に入った相手と性行為をしないという状態で数ヶ月過ごしたのであるから、今穂智過がどう感じているのかはかなり興味深い事だった。
「そういう訳で、お主にはこれからこの者を抱いてもらう。じゃが儂や葉那でないからと侮るなよ。相手はあの穂智過の血を引く者じゃ。巫女としての修行を終え、力を使いこなせるとなれば、かなりの手強さと言えるであろうからな。また、お主自身が溜まりに溜まった性欲の開放となる訳で、自身の衝動におかしくなる可能性もある。そうした点に気をつけて行うのじゃ。良いな?」
 未迦知神の言葉にコクリと頷く。
 自分の性欲が開放された時、どういった状態になるのか想像もできなかった。
 以前葉那に同じ事をされた際は、狂ったように襲いかかってしまったのだ。
 今はその時とは比べものにならない性の禁断状態である訳だから、気を抜けばあっという間に意識は消えてしまうだろう。
 そしてそうなったら修行は失敗に終わるのだ。
「では始めるとするかの。隣の部屋に布団が用意してある。そこで思う存分この者を抱くが良いぞ」
「はい……」
 未迦知神に頷き、隣室に赴く。
 布団の上まで行くと、ほたるがゆっくりと近づいてきて再び正座をし、深々と頭を下げた。
「当主さまの修行をお手伝いさせていただきます……ですが何分初めてですので……至らない部分があります事をご容赦下さいまし……」
 大人びた口調でそう告げてくる。
「うん、宜しくね。俺の方こそおかしくなるかも知れないから、乱暴にしちゃったらゴメン」
 あらかじめ謝っておく。
 これまでの経験から、おそらく乱暴な扱いをしてしまうだろうと思ったからだ。
「わたしの事は気にしないで下さい……大丈夫ですから……」
 いつもの口調に戻ってほたるは答えている。
「うん。でもできるだけ気をつけるから」
 そう告げると、ほたるは少し笑みを浮かべてから真剣な表情になった。
「ではこれから……抑えている『気』を開放します……」
 グンッ……。
 ほたるが小さく呟いた瞬間、目に見えない力が押し寄せてきた感覚があった。
(うっ……)
 続けて体の奥底から重々しい何かが湧き上がってくるのを感じる。
 それは始めジンワリと、すぐさま勢いを増し、あっという間に体全体に広がっていった。
(うぉっ……ぐっ……これは……)
 強烈な性欲。
 それはこれまで感じた事のない凄まじい精の衝動だった。
 体全体が敏感な状態になり、肉棒は一気に硬く大きくなってビクンビクンと蠢きまくり、かなり痛い状態になっていた。
 下着と擦れる事で少しでも快感を得ようとしているのか、意識しなくとも腰が勝手に震え出し、微妙な気持ち良さを伝えてくる。
 まだほたるを抱いている訳でもないのに、すでに抱いているかのような感覚が体中に溢れ、それを現実のものにしろと言わんばかりに視線がその幼い肉体を舐め回すように見つめていた。
(俺……ほたるちゃんにこんな……こんないやらしい事を……)
 純粋無垢なほたるを陵辱する妄想が頭の中に広がり、小さな声で可愛らしく喘ぐその姿に、すぐにでも射精したい衝動が押し寄せてくる。
(何もしてないのに……見てるだけでこんな……)
 試しに目を瞑ってみても、脳裏にはほたるのいやらしく喘ぐ姿が浮かんでおり、何もしなくても射精できそうなほどの興奮が押し寄せていた。
 再び目を開けると、ほたるは心配そうにこちらを見つめていて、その憂いを帯びた表情にはたまらなくそそるものがあった。
(くそっ……俺、ほたるちゃんを……ほたるちゃんを犯したくてしょうがなくなってる……あんなに可愛く思っていたほたるちゃんを……)
 ただ微笑まれるだけで、膝に乗せているだけで満足できていた状態はもう終わったのだろうか。
 あの見ているだけで幸福感を得られた状態はもう無いという事なのか。
 今の自分は、ほたるを抱いてその可愛らしい肉体を貪り、猛り狂っている肉棒を押し込んで喘がせなければ満足できない状態になっていた。
 それは修行を始める前であれば当たり前の事であり、愛情表現の一環として捉えていた事だった。
 しかしこの数ヶ月、精神的な交わりのみで幸福感を得ていた神治にとり、その対象であるほたるを抱くなど、嫌悪感を覚える行為だったのだ。
 抱いてしまったら、この数ヶ月間の想いを否定するかのような印象があったのである。
(俺は……ほたるちゃんを抱かなくても……それでも愛していける……この子は他の女の子とは違うんだ……)
 有希を初めとする、これまで神治が抱いて愛おしく感じてきた女性たちに対する想いに偽りはなかった。
 彼女たちは抱く事でその愛情が高まったのだ。
 だがほたるに対しては、抱いてしまう事によって何かが壊れてしまうように思えていたのである。
(こんなに可愛くて……大事にしたくてたまらないほたるちゃんに……俺のチンポを入れちゃうなんて……)
 考えるだに恐ろしかった。
 だがそれと共に、それほど大切にしている存在だからこそ、抱いた時の満足感は凄まじいものがあるのではないかという想いも湧き起こっていた。
 これほど愛おしい、純粋無垢な少女を汚らわしい肉棒で貫き喘がせる。
 それは何とも背徳的で狂わんほどにたまらない想像だった。
 おそらくほたるは喜んで受け入れてくれるだろう。
 いつものように可愛らしく微笑みながら、それでいて女の媚びに溢れた表情を浮かべて肉棒を受け入れるのだ。
(ぐっ……)
 その想像に神治の肉棒はビクビクビクっと激しく律動した。
 射精をした瞬間のように蠢き続け、たまらない快感を伝えてくる。
 まるで体が早く抱けと急かしているかのようだ。
(だけど……だけど俺は……)
 自分でもどうしてこれほど葛藤するのか分からなかった。
 ほたるが愛おしくてたまらない。
 でも抱いてはいけない気がして仕方がない。
 この数ヶ月の間に味わった、肉欲を伴わない愛情をこれからも抱き続けるには、ほたるを抱いてしまったらお終いに思えたのだ。
「未迦知さま……その……俺やっぱり未迦知さまと……」
 助けを求めるように未迦知神を見つめる。
「何じゃ? やはり儂を抱きたいと言うのか? ふふ、なかなか可愛いヤツじゃな。まあ、それでも構わぬがの。別にこの者でなければならぬという事でも無いからな。じゃがそうなると、この者の相手を誰か探さねばならぬなぁ……」
「え……?」
 その言葉に動揺する。
 どうして自分が抱かないとほたるの相手を探さなければならないのだろう。
「先ほども申した通り、この者は十一歳になったばかりでな。未だ成人の儀式をしておらん。ちょうどお主の修行が終わったゆえ、これは一石二鳥と思って相手をさせるつもりだったのじゃが……お主が嫌であるのなら仕方ない。誰か相手を探させる事にするかの……」
(!……)
 ほたるが男に抱かれる。
 その事に激しい嫉妬のような感情が湧き起こった。
 この可愛らしい少女に自分以外の男が触れ、その汚らわしい肉棒を純粋無垢な体に突き入れる。
 それは何とも許し難い想像だった。
「まあ、巫女を抱けるともなれば、一生に一度あるか無いかという出来事じゃ。常人にとってまさに極楽とも言える快楽を味合わう事のできる巫女が相手ともなれば、かなりの男が名乗りを挙げるであろうのぉ……」
 未迦知神は意味ありげにこちらを見ながら呟いている。
 見透かされているのだ。
 神治にとって、ほたるが他の男に抱かれる事がどれほど腹立たしい事であるのかが。
 何しろ自分でも信じられないほどの強烈な嫉妬心、ほたるに対する独占欲が湧き起こっているのである。
(俺は……俺はやっぱりほたるちゃんを自分のモノにしたいのか……?)
 抱く事に対して嫌悪感を抱いておきながら、それでいて自分のモノにしておきたい欲求も起こっている。
 それは何とも矛盾する意識の働きだった。
「くっくっくっ……お主、本当に父親みたいになっておるの」
(!……)
 未迦知神の言葉にハッとする。
 そう、これはまさに父親が娘に抱く想いではないだろうか。
「凄まじく愛おしさを感じているくせに自分で抱く事はできず、かと言って他の男が抱くなど許せるものではない……何とも絵に描いた娘大好きな父親であるな」
 未迦知神にそう言われると恥ずかしくなってくる。
 これではまるきり恋人ができた娘に対して父親が抱く嫉妬心そのままではないか。
 それほどまでに自分はほたるを娘のように感じているのだろうか。
「以前であれば肉欲が封じられていたゆえ、そうした感情も理解できるのじゃが……術を解いた状態の、凄まじくおなごが欲しいであろう時に躊躇するその態度……くっくっくっ……お主、本当にこの者を娘のように感じておるのじゃな……」
 可笑しそうに笑いながら未迦知神が指摘してくる。
 自分でもあまりに不思議だった。
 術が解けてしまえば、他の女性に対するようにほたるに欲情し、襲いかかってしまうのではないかという恐怖を覚えていたのだ。
 いや実際欲情はした。
 しかし理性がほたるに対する欲情を抑えたのだ。
 抱いてはいけない、抱いたら今の大切な関係が終わってしまうと制止したのである。
 それはまさに肉体関係を持つ事によって親子関係が終わる恐怖と同じ思いだろう。
「どうやら修行はなかなかの成果を上げておるようじゃの。以前であればすぐにでも襲いかかっておったであろうからな」
 そう言われてハッとする。
 確かに以前の自分であれば、どれほど娘のように感じていようとも、湧き起こる肉欲に流されて押し倒していたに違いないからだ。何しろ今の神治はこれまでに無いほど性に飢えているのだから。
 それが今やじっくり思索にふける余裕すらあるのである。
 これは確実に修行の効果が出ていると言えただろう。
「もう良いであろう。さっさとこの者を抱くが良いぞ」
(!……)
 続けて発せられた未迦知神の言葉に激しく動揺する。
「で、でも俺は……」
「何を今更躊躇しておるか。お主はすでに母や姉妹たちを抱いておろうが。この者よりも遙かに付き合いの長い身内のおなご達を」
 言われてみればその通りだった。
 これまで母たちを抱いてきたのだ。特に母などは嫌がるのを無理矢理抱いてきたのである。
 それを考えれば、ほたるに対してだけ躊躇するのも変な話だろう。
「それに抱いたからといって何かが変わるものでもあるまい? お主は禁忌の想いを抱いておるようじゃが、母や姉たちを抱いた事でその者たちとの関係が何か変わったのか? 愛情が薄れたりしたのか?」
 確かに抱いた事によって家族としての感覚は薄れ、女として意識するようにはなったが、それによって愛情が薄れた訳ではなかった。
 逆にそれまで以上に愛おしく感じるようになったのだ。
 つまり今自分が感じている恐怖は、以前姉に誘惑された時に抱いていた怖れと同じなのだろう。
 ほたるを娘としてでなく、女として見てしまうようになる怖れと。
 それは悲しい事かも知れないが、肉体関係を結ぶ事により新しい愛情を感じられるようになるのも事実だった。
 実際、母や姉妹たちとはそうした想いをお互いに抱きながら暮らしているのだ。
 ならばほたるを抱いても構わないのではないだろうか。
 そう思うと神治の中にある罪悪感がある程度薄らいでいった。
「分かりました……俺、抱きます。ほたるちゃんを……」
 心の中で決心が付いた。
 そもそも自分が抱かなければ他の男が抱く事になるのだ。それだけは絶対に許せなかった。
 他人に奪われるくらいなら自らの手でほたるの純潔を奪うのだ。それがほたるに対する愛情とも言えるだろう。
 神治は腹を決めると、ジッとほたるを見つめた。
 するとほたるは少し嬉しそうに微笑んだ後、ペコリと頭を下げて近くへ寄ってきた。
「ほたるちゃん……」
 囁きかけながらそのか細い体を抱き寄せる。
「あ……」
 ほたるは小さな声を漏らし、少し震えながらこちらに身を寄せてきた。
(うっ……)
 強烈な刺激が股間に走り、肉棒がビクビクビクっと蠢くのに顔をしかめる。
 以前から同じようにして抱き寄せていたが、肉欲が開放されている状態でするとかなりの快感があったのだ。
 まだ女としては成長途上であるにも関わらず、その肉体は男を誘う媚びに溢れており、触れている部分からは狂ってしまうのではないかと思えるほどに強烈な快感が伝わってきていた。
 もし修行をしていなかったならば、すぐにでも押し倒し体を貪り、肉棒を押し込んでいただろう。
 そしてその快楽に夢中になるあまり意識を喪失していたに違いない。
 それほどまでにほたるの体は、超絶な女としての魅力に溢れていたのだ。
 成熟した女には無い、未発達な肉体ゆえに存在する大人と子供の狭間としての魔力とも言うべき魅力に……。
 それはあまりにも強烈で、修行したおかげか狂うほどでは無くなっているにせよ、並以上の肉欲の衝動が湧き起こっていた。
 この幼い肉体を貪りたい。体中を舐め回し、肉棒を押し込み激しく喘がせたい。
 そうした欲求が神治の心に押し寄せていたのである。
「ほたるちゃん、いいね?」
 鼻息を荒くしながら尋ねると、ほたるがコクリと頷き、それを確認すると同時に目を瞑りながら唇を押しつけていく。
「んっ……」
 小さな、本当に小さなほたるの唇を舐め回し、これまた小さな舌にこちらの舌を絡ませ、荒々しく吸い付き口内を刺激していく。
 そのたびにほたるがピクッと体を震わせ、ギュッとしがみついてくるのが可愛らしく、そうした様子を見ているともっと反応を見たくなって舌の動きを強めてしまう。
「んぅっ……んっ……んんっ……」
 両腕で包み込むようにしてその小さな体を抱き締め、顔を左右に激しく動かしながら唇を貪り、口内を舌で舐め回していく。
(気持ちいい……ああ……何て気持ちいいんだろぉ……)
 キスがこれほどまでに気持ち良く、また心地良い行為だとは思わなかった。
 愛おしいほたるを抱き締め、その可愛らしい唇を食べてしまうかのように口全体で覆っていると、とてつもない満足感、幸福感が押し寄せてくる。
 単純な肉体的快楽としても気持ち良かったが、それだけではない心の快楽もあったのだ。
 可愛いほたるとキスをしていると思うだけで、射精してしまいそうになるほどの快感が押し寄せ、泣きそうになるほどの温かさが込み上げてきていた。
 このままこうしてほたるを抱き締め、唇を重ねているだけで死んでしまってもいいと思えるほどにたまらない精神的な快楽があったのである。
「んっ……んふっ……んっ……」
 目を開ければ、可愛らしい小さな顔がうっとりとした表情を浮かべており、これまで見た事のなかったその快楽に蕩けた女としての顔に、ドクンっと激しく心臓が跳ねた。
 あのあどけないほたるの顔が、肉欲に満ちた女の顔に変わっているのだ。
 それは少女の中に存在する女を引き出したように思え、神治はたまらなく嬉しくなった。
(可愛い……可愛い、可愛い、可愛い……)
 まっさらな、何も知らないほたるの肉体に初めて自分が快楽の跡を残したのだ。
 この自分が、幼いほたるの中にある女を呼び覚ましたのだ。
 それは強烈な感動を呼び起こし、精神が肉体に作用したのか肉棒が激しく蠢いた。
「んぅっ……んっ……んっ……」
 長く貪った後ようやく唇を放すと、キスの激しさを表すように二人の間に唾液が垂れた。
 ほたるはボンヤリとした様子でこちらをジッと見つめており、その心ここにあらずといった風情に、自分の与えた快楽の強さを感じて神治は嬉しくなった。
「ほたるちゃん……」
 そのままほたるの体を布団に横たえ、上からジッと見つめる。
 白衣と黒い袴という格好が良く似合っているほたるは、上気した頬を赤く染め、快楽に潤んだ瞳でこちらを見上げている。
 ゆっくりと手を伸ばし、白衣の合わせを左右に開いていく。
 するとほとんど膨らみの無い真っ白な胸が現れたため、その美しさに神治は思わず見とれた。
 雪のように白い肌の中で唯一桜色をした乳首は美しく、そのなだらかな胸の曲線は成長途上の少女だけが持つ、色気を内に秘めた魅惑さを感じさせた。
「あっ……」
 その美しくもいやらしい肉体にゴクリと唾を飲み込みながら、乳首の周辺を摘むようにして指を這わせると、ほたるがピクッと体を震わせて小さな声を漏らした。
 その様子はあまりに初々しく、快感に対してどう反応していいのか分からない幼さを感じさせ、たまらなくなった神治はそのまま胸に刺激を与えていった。
「あっ……あっ……」
 微かに肉のある胸をくすぐるようにして撫で回し、乳首を軽く摘んで指の腹で擦ると、ほたるはそれから逃げるように体を頭の方へ動かし、いやいやといった感じで頭を左右に振っている。
「やっ……あっ……やぁっ……」
 漏れ聞こえる声はかなり小さいが耳に心地良く響き、その可愛らしい反応に神治はゾクゾクするような興奮を覚えた。
「あっ……んっ……はっ……」
 乳首に舌を這わせ、回すようにして乳頭をくすぐると、シーツを掴んで引き寄せるのがたまらなく可愛らしい。
 触れている肌はスベスベで、あまりの肌触りの良さに手のひらが快感を覚えるほどだ。
(うぅ……たまらないよ……ほたるちゃん……)
 そうしたほたるの反応に、これまでにないほど興奮を高めつつ、そろそろほたるの女の部分を見せてもらおうと思った神治は、鼻息を荒くしながら紐を解いて袴を引き抜き、下着を脱がした。
 そのままその細い、本当に細い両脚を少し開き、まだ毛の生えていない秘所を覗き込む。
「あ……当主さま……」
 恥ずかしげに一瞬脚を閉じようとして止めるほたるの様子に、可愛らしさと興奮を覚えながら秘所を観察すると、そこにはここに肉棒を入れてもいいのだろうかと思えるほどに美しい縦筋が走っていた。
 まるで幼女の体であるかのように毛の生えていない幼い外観でありながらも、膣穴があるであろう位置に指を這わせると、驚いた事に呆気ないくらい簡単に指が吸い込まれた。
「あぅっ……あっ……んっ……」
 そのままクニクニと指を動かすと、ほたるは困ったような表情を浮かべながら体をいやらしくくねらせている。
「やぅっ……んっ……やぁっ……あっ……」
 続けてクリトリスに舌を這わせると、ビクンっとその小さな体が跳ね、さらに舐めていくと、ビクビクッとそれまでになかったくらい激しい震えが走った。
 声も今までより大きくなっているように思えたため、やはりここは格別に気持ちがいいのだろう。
「やっ……やっ……あっ……やっ……」
 体全体をもどかしげに動かしながら、ほたるは与えられる快感をその身で受け止めている。
 その様子にはほたるらしい大人しさと可愛らしさが感じられ、神治の中に何とも言えない興奮を呼び起こした。
(そろそろ……入れるか……)
 そう思うと心臓が激しく鼓動する。
 娘のように感じているほたるに肉棒を入れる。
 これまでもキスをしたり体を舐めたりしたが、その事にはさほど大した想いはなかった。以前から抱き締めたりしていたため、その延長のように思えたからだ。
 だが肉棒を入れるとなれば話は違う。
 性器と性器で繋がり合うのだ。
 それは男女の関係になるという証であり、今まで感じていた神聖な繋がりが無くなるかのようで悲しかった。
(ほたるちゃんと繋がる……)
 だが一方でその事に興奮している自分がいるのも確かだった。
 大切に思っているほたるを己の物とする。
 自分の肉棒で貫き、繋がり合う事で互いの心と体をより強く結びつける。
 そんな想いがあったのだ。
 してみたい。だがしたら悲しいのでは……。
 そうした想いに挟まれながら、肉棒を持ちつつ秘所を眺めていると、不意に縦筋がクパァといった感じで少し開いたように見えた。
 そして中ではまるで神治を誘うかのように膣襞が蠢いているのが分かった。
 まるで早く肉棒を入れろと言わんばかりに蠢く膣内の様子が見えたのだ。
 それはあまりにもいやらしく、そして入れたらとてつもなく気持ちがいいだろうと思わせる肉の蠢きだった。
(俺……俺ぇ……)
 肉欲が理性を撃ち破り、神治は肉棒をほたるの小さな膣穴へと近づけていった。
 そうしながらも心には「してはいけない」といった想いがあったが、そのまま体は動き、ついに亀頭が秘所の柔肉を捉えた。
 ズブッ……。
「あっ……」
「ぐっ……」
 二人の声が重なり、ほたるは悩ましげに眉根を寄せ、神治は頭を勢い良く仰け反らせた。
 たまらない快感が股間から湧き起こり、それに押されるようにして腰を前に進めていく。
 ズブッ、ズブッ……。
 徐々に肉棒が収まっていき、それと比例するようにして快感も強まっていった。
 処女らしい強い締め付けがたまらず、またそれとは逆にまるで熟女の膣であるかのように男の精を吸い出さんとする膣襞の蠢きに神治は歯を食いしばった。
「あっ……ぐっ……んっ……」
 初めてであるせいかほたるは苦痛の表情を浮かべていたが、一言も痛みの言葉を発しない。
 その事にほたるの我慢強さと、おそらくこちらに心配をかけまいとしているに違いない心遣いを感じて神治は嬉しくなった。
 ほたるは何と可愛いのだろう。
 そしてその少女と自分はついに繋がってしまった。
 肉棒を押し込んだのだ。
 娘のように愛おしく感じていたほたるとセックスをしているのである。
(俺は……俺は……)
 何とも言えない罪悪感と背徳感が押し寄せてくる。
 しなければ良かったのではないか。
 そうすればあのままの清らかな関係でいられたのでは……。
 いや、これほどの快楽を味合わないでいるなど勿体ない。
 肉棒を入れたからこそ、これほどの気持ち良さを感じる事ができているのだ。
 そういった相反する思いがグルグルと頭の中で渦巻き、何か重々しいモノが胸の辺りで蠢く感覚があり、それは苦しんでいるような喜んでいるようなあやふやな感覚だった。
(もしかして……穂智過が俺と同じような想いを抱いているのか……?)
 精神的な快楽を知らない淫妖、穂智過。
 穂智過はそれを求めて神治と一体化した。
 もし今その精神的な快楽、してはならない相手との禁断のセックスの快楽を味わう事ができているとしたら、穂智過の目的は達成できた事になるだろう。
(穂智過の事はともかく……俺は……かなりいけない想いを感じちゃってるよ……)
 どうしてここまで赤の他人であるほたるとセックスする事に背徳感を覚えるのか。
 未迦知神は穂智過の影響だと言ってはいたが、やはり不思議な事だった。
(ほたるちゃん……)
 苦痛に歪んでいる可愛らしいその顔は、もし以前の自分であれば出会った瞬間に抱きたくてたまらなくなっていただろう。そしてそれに対して背徳的な想いは抱かなかったに違いない。
 だが今の自分は、この少女が愛おしいくせに抱く事に対して禁忌の想いを抱いている。そして実際に抱いてしまった事により、激しい興奮を感じているのだ。
 許されない相手と肉体的に結ばれる。
 これほどセックスにおいて快楽を誘う状況は無いだろう。
 そうした設定の恋愛物語が名作として存在しているのも、人が禁断の関係というものに激しい興奮を覚える証に違いなかった。
「あっ……んっ……」
 ゆっくり腰を引くと、ほたるが苦しげな、そしていやらしい声を漏らした。
 肉棒も周囲にピッチリと吸い付いた膣襞によって擦られ、たまらない快感を与えられている。
 その何ともたまらない感触に神治は歯を食いしばって耐えながら、再び肉棒を押し込み、そのままピストン運動を開始していった。
「あっ……んっ……あっ……はっ……」
 こちらの動きに合わせてほたるの小さな体が揺れ、突き込みごとに小さな声が可愛らしい唇から漏れるのに興奮が高まる。
 大人しいせいか、決して大声で喘がないその様子にほたるらしさを感じつつ、できればもっと喘がせたいと思いながら腰を強く突き込んでいく。
 さすが巫女なのか、すでに痛みはあまり感じていないようで、神治は思い切りその肉体を味わう事ができていた。
 何よりギュッと肉棒を掴み、放さないとするかのように吸い付いてくる膣内の蠢きは、これまで経験した相手の中でも極上の部類に入る素晴らしさがあった。
「やっ……んっ……あっ……当主さ、あっ……」
 何かを訴えるようにして見上げてくる黒い瞳は快楽に潤み、腰の動きに合わせて揺れる体は、その幼さゆえに激しい背徳感を感じさせた。
 自分はまだ幼い、娘のように思っている少女に肉棒を突き込み、激しく喘がせている。
 そう思うと強烈な快感が湧き起こり、腰の動きが強くなっていった。
 これこそ背徳的な快楽だった。
 穂智過はこの快楽を感じる事ができているのだろうか。
 人間という、己より劣る存在と一体化してまで求めていたこの快楽を。
「あっ……あっ……こんな、あっ……凄いです、やっ……」
 握った手を口に当て、押し寄せてくる快感をどうすればいいのか分からないようにしてほたるは悶えている。
 見ているだけでも幸せを覚えたそのあどけない顔は今や快楽に染まり、射精を促す女の媚びに溢れた顔となっていた。
 それでいて元々のあどけなさも残っているため、その曖昧さが熟女には存在しない強烈な魅力となってほたるを最高の女に見せていた。
(うぅ……気持ちいい……気持ち良すぎる……)
 押し寄せてくる射精感。
 それは久しぶりであるせいなのか、どこか奇妙な感じを思わせた。
 何か重々しい力のようなものが股間の辺りでグルグルと渦巻いている感覚があり、まさに溜まりに溜まった精液が早く開放しろと訴えているかのように感じられたのである。
 それでいて射精感に関しては切羽詰まった感覚はなかった。
 いつでも射精できるが耐えられないほどではないのだ。
 射精寸前のような快感を味わいつつ、それでいて射精はしないでいられるという実にたまらない状態だったのである。
(これが……修行の成果なのか……?)
 以前であれば、ここまで射精感が高まれば精が迸るのを必死になって耐えていただろう。
 だが今はそんな事を意識せずとも精液が放出されそうな感覚は無かったのだ。
 それが修行のおかげならば、確かに自分はかなり成長したと言えるのではないだろうか。
「あっ……はっ……当主さ、あっ……わたし、あっ……何か、やっ……」
 ほたるがどうしたらいいのかといった顔でこちらを見上げてきている。
 その追い詰められているように思える風情から、どうやら絶頂が近いのだろう。
(え? これって……)
 ほたるの絶頂に合わせて射精したい、そう思った瞬間、それまで耐える必要を感じなかった射精感が一気に強烈になった。
 まるで神治の意思に体が反応したかのようだ。
 この事も修行の成果なのだろうか。
 神治はそう思いながら、それまで以上に腰の動きを早めていった。
「やっ……あっ……やっ……当主さ、あっ……やっ……こんな、あっ……ダメ、あぅっ……やっ、やっ、やぁっ!」
「ぐっ!」
 静かな絶頂の声と共にほたるの体が硬直し、神治もそれに合わせて精を放った。
(うぉっ……何だっ……?)
 いつも当然のごとくある射精に伴う快感が何か違っていた。
 最初は普段と変わらないと思ったその快感は、突然爆発したかのような勢いで膨れあがり、一気に体中に広がっていった。
(ぐっ……これは……ふぁっ……うっ……)
 ドピュッと精が一度放たれるたびに凄まじい快感が脳天まで響き、それが何度も繰り返されるため、神治は体中が崩れるような、頭が蕩けるような快楽を覚えた。
 これ以上したらおかしくなってしまうのではないか、と思えるほどの気持ちの良さが射精と共に押し寄せ、神治は夢中になって次々と精を放ち続けた。
 あまりの快楽に意識が遠のきそうになるが、そうなっては修行が台無しになると思い、歯を食いしばって耐える。
 そのまま快楽に身を委ねたくなる誘惑が押し寄せ、射精を繰り返しながら意識を保つ事に神治は必死になった。
 だが射精はいつまで経っても終わらず、快楽に耐える意識もかなり疲弊していった。
 ドピュッ、ドピュッ、ドピュッ……。
(うぐっ……ぐっ……ぬっ……)
 射精のたびに体が硬直し、快感が脳内の神経に強烈に響く。
 さらには肉棒に絡みついた膣襞が激しい吸引を行ない、もっと精液を寄こせと言わんばかりの蠢きを示してくるためおかしくなりそうだった。
 初めて男の肉棒を受け入れたはずの幼い肉体は、すでにどう扱えば良いのか知っているかのように強くいやらしく肉棒を嬲り、精液を吐き出させるための快感を与えてくる。
 柔らかで湿りを帯びた膣襞が、肉棒に絡み吸い付き、ヌメヌメとした蠢きでもって肉棒を翻弄しており、それは今にも神治の意識を奪いかねないたまらない快感を持っていた。
(こんな……凄い……)
 すでに数十回射精しているが、未だ肉棒は精を放つのを止める気配を示さず、注ぎ込まれた多量の精液は、巫女の能力なのか全て膣に吸収されていた。
 それはまるで未迦知神と交わっている時と同じような、いや、ある意味容赦が無い分、それより上な快楽が与えられていたと言えるだろう。
 気持ちがいいというレベルを超えて、頭を狂わせる毒薬のような印象があったのだ。
(このままじゃ……俺……)
 果てしなく続く射精と快楽に、神治の中に弱気な思いが湧き起こった。
 さすがにこれ以上快感が続いては意識を保つのが辛くなってきたからだ。
(ん? 何だこれ……?)
 だが不意に何かが心に触れたような感覚があった。
 視線を下に向けると、ボンヤリとした嬉しそうな表情を浮かべてほたるがこちらを見上げている。
(ほたるちゃん……)
 その瞬間、神治の身も心もほたるに対する想いで一杯になった。
 自分はこの少女を、この愛しい少女をついに抱いたのだ。
 そして凄まじい量の精液を注ぎ込み、愛する少女を己の物としたのである。
 精液を注ぎ込む行為。
 それにはまるで相手を自分の物とするかのような感覚があった。
 しかもほたるに注いだのは並の量ではないためその意識も強烈だった。
(ほたるちゃんは……俺の物になって嬉しいかな……?)
 こちらは満足していても、ほたるが喜んでいるとは限らない。
 その事が気になりジッと見つめていると、ほたるは一瞬驚いたような顔をした後、嬉しそうにニコリと笑った。
(え……?)
 まるでこちらの心の声が聞こえたかのようなほたるの反応に驚いていると、次の瞬間ようやく長々と続いていた射精が止まった。
 数ヶ月間溜めていた精液を全て吐き出したかのような感じの射精に、神治は感慨深い想いを抱きつつゆっくり大きく息を吐き出した。
 そのまま体から力を抜いてほたるの上に倒れ込む。
 だが体重をかけては可哀想だとすぐ横に動き、その可愛らしい体を優しく抱き締める。
 ほたるはこちらに視線を向けると、満足そうに、そして幸せそうに見つめてきた。
「何とまあ……よもやこのようなことになるとは……」
 不意に未迦知神の声が聞こえ、見ると呆れたような表情をしているのが見えた。
「申し訳ありません。私の教育が足りなかったようです……」
 葉那が困ったように呟いている。
 どういう事だろう。ほたるの教育を担当していた葉那がそう言っているという事は、ほたるが何かマズイ事をしたのだろうか。
「いや、これは神治の方からしてしまった事ゆえ、この者のせいではあるまい。元々慕っておった相手、しかも父親と一体化しているともなれば、あのようにされては抗う事は難しかろう」
 どうやら自分が何かしてしまったようだ。
 だが何をしたのかさっぱり見当も付かない。
 神治は不審な思いを抱きつつ未迦知神たちを見つめた。
「まあ、取り合えずめでたく修行は終了じゃ。そして神治にも巫女ができたという事で、これも良しという事にしよう」
 腕組みをして頷いている未迦知神の言葉に首をかしげる。
「未迦知さま……俺に巫女って、どういう意味ですか?」
 少し疲労を感じる体を起こしながら尋ねる。
「お主がこの者、ほたるを己の巫女にしたという事じゃ」
「え? 何言ってるんですか。ほたるちゃんは未迦知さまの巫女でしょう?」
「本来はな。じゃがお主は先ほどの交わりにおいて、この者を己の巫女とする契約を結んだ。であるからお主の巫女という訳じゃ」
「ハ? 俺そんな契約なんか……」
「まあ、無意識にした事なのであろうがな。見事なまでにこの者の心と体を虜にしたゆえ、そうなってしまったという事なのじゃよ」
「な、何ですかそれっ? 虜にしたって……それで巫女って……」
「神と巫女との契約はそういうものなのじゃ。神は己の物となるかを問いかけ、巫女はそれに応える。おそらくお主は抱いた事により、この者を己の物であるように感じたのであろう? それを無意識なのであろうがこの者に問いかけた。そしてこの者はそれに応えたという事じゃな」
「そ、そんな……」
 驚いてほたるの顔を見つめる。
 ほたるは少し心配した様子でこちらを見返してきた。
「まあ、普通は修行中に仕えると決めていたのと異なる神の巫女になる事はないのじゃが……そこはそれ、お主はこの者の心を捉えておったからの。さらには父親と一体化している点もあり、何より初めて体を許した男ともなれば、巫女になるように誘われれば受け入れてしまうというものじゃろう」
 何やらそういった言い方をされると、騙して無理矢理巫女にしたように思えて嫌な感じがした。
「さらに言えば、お主は精を嫌というほど注ぎ込んだからな。この者の肉体はそれによってお主の巫女として最適な状態になっていたと言える。精液にはお主の気が濃く含まれている訳じゃが、この者は巫女ゆえ吸収するという形で己の気と混じらせる形になり、ある意味お主の分身のような状態になったという事じゃ」
「そんな……」
 何だかよく分からないが、どうやら無意識のうちにほたるを自分の巫女にする行動を取ってしまったらしい。
「でもそれで未迦知さまはいいんですか? 何か俺が横取りしちゃったみたいじゃないですか」
「構わん。どうせここまでお主色に染められた巫女では、改めて儂の巫女とするには手間がかかりすぎるからの。まあ、この者が嫌がっておれば別じゃが、喜んでおるのであろう、ん?」
 そう言いながら未迦知神が見つめると、ほたるは黙って頭を下げた。
「でも俺に巫女なんて……」
 その呟きにほたるが悲しそうな顔をしたため神治は慌てた。
「ほれほれ、今更嫌がって悲しませるでないわ。自ら望んで己の物としたのであろう?」
「それはそうですけど……だけどこんな風に、ほたるちゃんを縛るみたいな事、俺は嫌なんですよ……」
 ほたるが巫女という、まさに自分の物となった事には正直嬉しい思いで一杯だった。
 しかしそれは神といういわば権力のようなもので強制した関係に思えて嫌だったのだ。
「分かっておらんようじゃな。巫女にとっての幸せは、自らが望む神に仕える事なのじゃぞ。お主とこの者の関係は親子のようなものであるのだから、まさに理想的とも言えるのじゃ。お主も神として生きるのならば、それを嫌がる事が逆にこの者を悲しませるという事を覚えておけい」
 確かに言われてみれば、ほたるは神治が否定的な言葉を口にすると悲しそうにしていた。
「ほたるちゃん、君はそれでいいのかい? 俺の巫女として生きていくのに嫌な思いはないの?」
「ありません……わたしは、神治さまに仕える事が嬉しくてたまらないですから……」
 何の迷いも感じさせず微笑むその姿を見ていると、それが心の底からの言葉である事が分かった。
「そもそも嫌であれば契約の際、お主の誘いを断っておるはずじゃ。そうでないという事はすでにこの者の心は決まっておるという事。それを今更グダグダ問い詰めるのはあまり格好のいい事ではないぞ」
 未迦知神にそう言われ、何やら恥ずかしくなる。
 確かにここまで来て神治だけ駄々をこねているのは格好悪すぎた。
「分かりました。俺、ほたるちゃんを巫女にします……ほたるちゃん、これから宜しくね」
 そう告げると、ほたるは黙って頭を下げた。
「うむ、お主も巫女を手に入れ、これで少しは神としての体裁が整ってきたな。後は部の民(べのたみ)を持つのじゃな」
「部の民? 何ですかそれ?」
 初めて聞く言葉に首をかしげる。
「ま、簡単に言えば信者じゃな。儂でいう所の緋道村の住人じゃ。神を敬い讃え祭る人間の事じゃ」
「そんなのどうやって持つんです? 勧誘とかでもするんですか?」
 何やら新興宗教のようなイメージを思い浮かべ、そんな事をする気にならない神治は困って尋ねた。
「そのような事はせんでも良い。お主の神としての気が高まれば、自然と現れるであろう。部の民とはそういうモノじゃ」
「そうなんですか……」
 何だかよく分からなかったが、巫女もこうして出来たのだ。部の民というのも未迦知神の言う通りそのうち現れるのかも知れない。
「さて、この者は正式に巫女となった訳じゃが、早速巫女として抱いてやるが良いぞ。まだまだお主も抱き足りぬであろう? 本来ならば儂が相手をしたいところじゃが、お主にとって今日は初めての巫女を持った記念すべき日じゃ。存分にこの者との関係を深めるようにするが良い」
「関係って……抱くのがそうなんですか?」
「うむ。性行為は神と巫女の絆を深めるのに大きく作用するからの。神の精を受けることで巫女はその神の力を得る事ができるのじゃ。ゆえにより精を注がれている巫女ほど力も強くなる。弱い巫女はそれだけ神との繋がりが弱い証拠なのじゃ。それは巫女にとって恥となるからな。お主もせっせと精を注いでやるが良いぞ」
 そう言われると何やら抱かなければいけない使命感のようなものが湧き起こった。
 そもそもこちらの勝手でほたるを巫女にしてしまったのだ。その後の世話を怠ったとあっては申し訳がないだろう。
 それに何よりほたるをまた抱ける事が凄く嬉しかった。
「じゃあ、ほたるちゃん……また抱かせてもらうよ?」
「はい……」
 嬉しそうに頷くほたるに興奮が高まる。
(次は後ろからしてみたいな……)
 小さなほたるの体を見ていると、思わずそんな欲求が湧き起こってくる。
 この幼い体を背後から犯す。
 それはゾクゾクするような興奮をもたらす行為だった。
「神治さま……どうぞ……」
(え……?)
 ほたるが四つんばいになって後ろを向いたため、そのまるでこちらの考えを見透かしたような行動に神治は驚いた。
「ふふ、驚いておるようじゃの。お主今、後ろから抱きたいと思ったのであろう? そしてそれをこの者に読み取られた」
「そうです。どうしてそんな……」
「それが巫女というものなのじゃ。お主の望む事が言葉にせずとも伝わるのよ」
 何とも驚いた事だった。巫女とはそこまで凄い存在なのか。
「無論全ての巫女がそうではないが、お主たちのように精によって繋がりを持った神と巫女はそうした関係となる。いわばお主にとってもう一つの体と言っても過言ではないほどにな」
「そうなんですか……」
 それは何とも嬉しい事だった。
 まさに完全にほたるが自分の物になったように思えたからだ。
 こちらの望む事を察し、その通りにしてくれるなど滅多にある事ではない。
 それをほたるはしてくれるのだ。
 これほど嬉しい事はないだろう。
(ほたるちゃん……可愛い、可愛いよ……)
 ほたるに対する愛おしさが高まり、抱き締めたくなる。
 すると驚いた事に、何も言わなくともほたるがこちらに近づいてきて頭を胸に寄せてきた。
 そのまま伺うように上目遣いで見上げてくるのが何とも可愛らしい。
(これって……本当にほたるちゃんが俺の物に……俺の物になったって事じゃないか……)
 恋人同士であってもここまで言う事を聞いて、いや思う事を察知してくれる関係はないだろう。
 それはまさに神治の中にある支配欲を刺激するたまらない状態だった。
(キスしたい……)
 可愛らしい唇を見ているうちに吸い付きたくなった神治が顔を近づけようと思った瞬間、ほたるの方から顔を寄せて来て目を瞑った。
(凄い……本当に凄すぎるよ……)
 そのまま唇を重ね、舌を押し込んで絡ませ、強く吸い付いていく。
「んっ……んんっ……んぅっ……」
 するとまさにこうして欲しい、ここに刺激が欲しい、と思う箇所にほたるは舌を動かしてきた。
 そしてそのまま神治が胸を触ろうと思うと、軽く体を離して横を向き、触りやすい体勢になっている。
「んっ……んぅっ……んっ……」
 微かな膨らみを指で撫で、乳首をクリクリと捻ると、ほたるがいやらしげに体をくねらせた。
 続けて唇を放し、乳首に吸い付こうとすると、すぐさま体を倒して吸いやすいようにしてくるのに再び感動を覚える。
 まさにほたるは神治の思いのまま、己の体と言ってもいいほどにこちらの思考と動きの間にタイムラグはほとんど無かった。
「あっ……んっ……はぁっ……」
 乳首にチュウっと吸い付きつつ、小さく勃起している突起を舌で優しく愛撫すると、ほたるが可愛らしい声を上げながら悶えた。
 そのまま秘所に手を伸ばすと、すぐさま脚が左右に開いた事に嬉しさを覚えつつ、優しくクリトリスを撫でる。
「やぁっ……はっ……んっ……神治、あっ……さまぁ……」
 小さな声が何かを訴えるように発せられ、潤んだ瞳が切なげに見つめてくるのに神治はたまらなくなり、肉棒を押し込みたくなった。
 ほたるを四つんばいにしようと思った瞬間、その小さな体が手と膝を布団に突いて尻をこちらに向けてきた。
 本当に何も言わなくても思い通りになる事にますます悦びと興奮が高まり、かなりいきり立っている肉棒を持つと、神治は一気に押し込んでいった。
「あっ……んっ……んぁっ……」
 ズブズブと肉棒が収まっていくたびにほたるがか細いながらもいやらしい声を発し、その事にゾクゾクする思いを抱く。
 まだ経験の少ない膣穴は強烈に肉棒を締め付けてくるが、それでいて膣襞はまるで経験豊富な熟女のように精を吸い取ろうとせんばかりに肉棒に吸い付き嬲ってくる。
(うっ……いぃっ……)
 その気持ちの良さに頭を仰け反らせつつ、感じている快楽の大きさと目に見える幼い肉体に差を感じて神治は興奮を高めた。
 四つんばいになった背中を見ているとその体の小ささがより分かり、そのような少女の中に肉棒を押し込んでいるのだと思うとたまらない背徳感が湧き起こった。
 未だほたるに対しては娘のように思っている部分もあったため、そのような相手と再び繋がった事に精神的にも禁忌を犯すような快感があったのだ。
「ほたるちゃんっ……ほたるちゃんっ……」
 愛しさを込めながら腰を激しく前後させ始める。
「あっ……あっ……んっ……やっ……んっ……」
 小さな体が大きく前後に揺れ動き、体重が軽い事もあってか、突き込みに耐えられず前にズレるほたるを引き寄せつつ、何度も肉棒を突き込んでいく。
 掴んでいる腰は両手の指がくっつくのではないかと思えるほどに細く、これほど小さな体でよく肉棒が受け入れられるものだと感心してしまう。
 すでにほたるよりも幼い少女たちを何人も抱いている神治だったが、やはり特別な想いを抱いているほたるだけに、その肉体の幼さは格別な刺激に感じられたのだろう。
 その事にさらなる興奮を覚え、腰を強く突き込んでいく。
「やっ……あっ……やっ……んっ……」
 あまりに強く腰を動かしたせいか、さすがに耐えられなくなったらしく手を崩しているほたるの様子に、神治はそろそろ体位を変えようかと思った。
 そして座位にするつもりで腰の動きを止めると、ほたるがこちらに体を向けながら分かっている様子で近づいてきたため、それに合わせるように胡座をかくとそのまま膝の上に乗ってきた。
 まさに阿吽の呼吸と言うべき状態で、その事に嬉しさを覚えながら見ていると、ほたるは自ら肉棒を膣穴に入れて腰を落としてきた。
「あっ……んぅっ……はぅっ……あっ……」
 ズブズブとハマっていく肉棒からは、再びたまらない快感が伝わってくる。
 ほたるの体重がかかっているせいか、今までより強い刺激が感じられ、その事に神治は頭を仰け反らせた。
 ほたるが体に腕を絡ませ、胸に頬を寄せて甘えるようにギュッとしがみついてくると膣内も強く締まったため快楽の呻きを漏らす。
 視線を下に向けると潤んだ瞳がこちらを見上げており、その事にたまらない興奮を覚えた神治は腰をゆっくりと突き上げ始めた。
「やっ、あっ……あっ、やっ……んっ……」
 重力の作用があるせいか、これまでより強い突き込みとなり、ほたるの悶えも激しくなった。
 大人しいだけにその変化はたまらず、もっと喘がせたくなった神治はほたるの体を優しく抱き締めると荒々しく腰を突き上げていった。
「あぅっ、あっ……やっ、やっ……んっ……んぁっ……」
 擦れるスベスベの肌と温かい体温が心地良く、すっぽりと収まるその小さな体は激しい愛おしさを感じさせた。
 今自分はほたるを抱いている。
 あの大人しくて可愛いほたるに肉棒を押し込み、いやらしく喘がせているのだ。
 それは愛情と肉欲が激しく高まる状況であり、神治は狂ったように腰を振っていった。
「やっ、はぅっ……あっ、あっ……神治、あんっ……さま、やっ……わたし、あっ……わたしぃっ……」
 切なげに、何かを訴えるようにしてこちらを見つめてくるほたるの様子に、絶頂が近いのだと判断した神治は、それに合わせようと腰の動きを加速させた。
 すると射精感が高まり、すぐにでも放出できる状態になる。
「あっ……あぅっ、あっ……やんっ、やっ……もう、あっ……もう、やっ……もうダメぇっ……やっ……やっ……やぅっ、やぁあっ!」
「ほたるちゃんっ!」
 ほたるの体が硬直するのに合わせて神治も精を放った。
 ドピュドピュドクドクドクドク……。
 重力に逆らって放出される精液を感じながら、ほたるの小さな体を抱き締めつつ快感に浸る。
「あ……はぁ……やぁ……」
 トロンっとした表情を浮かべて甘い吐息を漏らすほたるの様子に満足な想いを持ちつつ最後の精を放ち終えると、神治はゆっくりと体から力を抜いた。
 ハァハァと荒い呼吸を吐きながらこちらに体を預けてくるほたるに愛おしさを覚え、その小さな頭を優しく撫でる。
「どうじゃ? 巫女との交わりはなかなか良いものであろう?」
「はい……何かこんな感じ……初めてです……凄く嬉しくて……」
 未迦知神が尋ねてくるのにそう答えながら頷く。
 ただ抱くだけではなく、こちらの想いにすぐ反応してくれるというのが凄く嬉しかったのだ。
 元々セックスにおいては女を自由にしているという満足感があるが、それをさらに強めた感じだろうか。
 何しろ思った通りにほたるが動いてくれるのだから嬉しくて仕方がないのである。
「それこそが巫女の良さよ。ゆえに多くの神は巫女を大切にするのじゃ。お主もその者の扱いには気をつけ……っと、要らぬ助言であったな。お主はすでにこの者にベタ惚れであったわ」
 未迦知神は可笑しそうにニヤリと笑った。
 確かに言われなくても大切にするだろう。
 何しろ目に入れても痛くないほどに神治はほたるが可愛くて仕方がないからだ。
 これも娘のように思っているゆえだろう。
 普通の巫女に対するのとでは最初から扱いが違っていて当然だった。
 そういう意味では、ほたるが神治の巫女となったのは確かに合っていたと言えるのかも知れない。
「ではそのままその者を抱き続けよ。とにかくお主の癖を全て教え込むのじゃ。さすればさらに一体感が強まり、素晴らしい巫女となろうぞ」
「はいっ」
 神治は嬉しさを感じながら強く頷いた。
 今ですら一体感が強くて愛おしさが高まっているのに、これよりもさらに凄くなるとは想像もできなかったからだ。
「ほたるちゃん……」
 呼びかけるとほたるはコクリと頷き、自ら後ろに倒れた。
 正常位でしたいという神治の想いを読み取ったのだろう。
(ホント……最高だよ……)
 神治は震えるほどに嬉しさを覚えつつ、ほたるの幼い肉体を貪っていくのだった。


 胡座をかいた神治の股間で、可愛らしい頭が小刻みに動いていた。
 肉棒に熱心に舌を這わせ、快感を与えようとしているその姿は実にたまらなかった。
 時折「これでどうですか?」という感じでこちらを見上げてくる瞳は真っ黒で、純真無垢な印象をもたらすせいか、そのような相手に肉棒を咥えさせている事に神治は強烈な背徳感を覚えた。
 さらに娘のように思っているともなれば、その禁忌の想いには強烈なものがあり、その事がより強い刺激となって心と体を快楽で包んでいた。
 もうあれからどれくらい経っただろうか。
 最初にほたるを抱いてから、すでにかなりの日数が経っていた。
 お互い神と巫女であるせいか、疲れるという事もなく、食事をしなくとも平気であり、排泄すらしたくならないという状態であったため、こうしてずっと交わっていたのだ。
 どうやら修行のおかげでそういった部分が以前よりかなり平気になったらしい。
「気」の扱いに長けたせいか、肉体の消耗が抑えられ、栄養も補われる状態になるため、食欲や排泄といった事が無くなるらしい。
 何とも不思議な事だったが、これが神の能力という事なのだろう。
「くっ……うっ……」
 亀頭に絡む小さな舌の感触に思わずうめき声を漏らす。
 さすが思考が読めるせいか、「そこをもっと舐めて欲しい」という欲求がすぐさま伝わり、その通りに行われるため、まさにかゆいところに手が届く状態だったのである。
 それも数十回と繰り返しているせいか、今や何も思わずともほたるは神治の求める部分に刺激を与えてきたし、逆にそういった部分にわざと触れず、じらすようなテクニックまで身に付けていた。
 まさに神治が悦ぶ術に長けた状態となっていたのだ。
 神治にしてもほたるの体はすでに隅から隅まで知り尽くし、どこに触れれば悦び、どこに触れれば強く反応するのか分かっていた。
 そのような相手を愛おしく感じないはずもなく、この数日間で神治は以前よりかなりほたるに対する愛情を高めていた。
(そろそろイきたい……うっ……)
 そう思った瞬間、亀頭全体が舌で覆われ、強く吸い上げられるのに頭を仰け反らせる。
 続けて肉棒全体が温かで湿った口の中に咥え込まれ、チュプチュプといった嫌らしい音をたてながら上下にしごかれ始めた。
 神治の射精の欲求に対し、ほたるが最高の状態で精を放てられるようにしてきたのだ。
 肉棒はまるで膣内にあるかのような刺激を受けつつ、膣内には存在しない舌によって激しく嬲られており、それはフェラチオとしてはまさに最高の状態と言えただろう。
「ぐっ……も、もうっ……うぉっ!」
 そのような刺激を受けてはそれほど長く耐えられるはずもなく、神治は一気に肉棒の栓を開いた。
 ドクドクドクと、激しい勢いで精が放たれ、白濁液がほたるの口内に注がれていった。
 ほたるは可愛らしい顔を一瞬歪ませた後、嬉しそうな表情をしてゴクゴクと精液を飲み込んでいる。
 数度の射精を繰り返し、最後の放出を終えた神治は、ほたるの頭を優しく撫でながら、その小さな奉仕者を愛おしく見つめた。
 ほたるは上目遣いでこちらを見上げ、嬉しそうにニッコリと微笑んでいる。
(可愛い……何て可愛いんだろぉ……)
 神治の頭はほたるに対する愛おしさで一杯だった。
 この娘が喜ぶのなら、この可愛らしい笑顔を見られるのなら何でもするだろう。
 それは強烈な、何物にも代え難い想いだった。
「神治さま……」
「ん? 何だい?」
 不意に声をかけてきたのに返事をすると、ほたるは少しジッとし、やがてニコリとお日様のような笑顔を浮かべて微笑んだ。
「わたし……神治さまが……大好きです……」
 そう呟くと同時に抱き付いてくる。
 ギュッとしがみつき、子猫のように胸に頬ずりをしてくるほたるにさらなる愛おしさが湧き起こる。
「俺もほたるちゃんが大好きだよ……」
 神治が応えると、ほたるはジッとこちらを見上げてきながら、ゆっくりと唇を寄せてきた。
 それは神治が望んだ事ではない、ほたるが自発的にしてきたキスのおねだりだった。
「ほたるちゃん……」
 神治はその事に嬉しくなりながら、ほたるの小さな体を抱き締め、可愛らしい唇に吸い付いていくのだった。












あとがき

 神治も神なんだから、それらしく信者でも欲しいところだなぁ、とか思って考えた話です。
 恋愛感情とは関係なく、自分に絶対的に付き従う存在。
 そういったまさに男の夢とも言うべき女の子を出した訳です。
 よく漫画やアニメでも「主人に尽くす」という自分の使命を絶対として男に仕えている可愛い女の子が出てきますが、ほたるはまさにそういう感じのキャラなのですな。
 恋愛ではないですから、男の方は別に気を遣う必要は全く無く、女の子の方が一方的に尽くしてくれる訳です。
 ま、簡単に言えば奴隷ですね(おぃ)
 そして性格的にも、自分を殺して尽くす感じの大人しくて素直ないい子ちゃん。
 今までも大人しいキャラは出してましたが、性格的には強いキャラばかりだったので、たまには弱々しい大人しいキャラが欲しいって事で出しました。
 でも何か私の性格のせいか、油断していると大人しくても強いタイプになっちゃうんですよねぇ(笑)
 だからほたるは出来るだけ強くならないように気をつけようと思っています。
 って、すでにある意味強くなってるか……。
 ま、大人しいって部分がメインなので良しって事で。
 個人的にはこういうタイプのお嬢さんは凄くそそられるのでたまりません(笑)
(2007.8.1)



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