心理面の強化に役立つ本

私が読んだ本のなかで、心理面の強化に役立つ本を紹介します。
神と悪魔の投資論 リスクと心理のコントロール
末永 雅春 著 2006年3月発行
 銘柄やタイミングの「当て方」の普遍的なノウハウなどは存在せず、「当てること」にこだわるよりも、「ロスカット」と「利を伸ばす」ための心理的な解説と具体的な手法を紹介しており、「5年10年という運用期間を考えた時に本当に必要とされる大事なことを書いている」と著者は言っています。 長期投資家を対象に書かれた本ですが、人間の普遍的な心理から投資の難しさを論じているのでデイトレーダーにも参考になると思います。「神と悪魔」というあやしげなタイトルが付いていますが、神は「市場のリスク」、悪魔は「自分の心理」を刺激的に言葉を使ってたとえただけで、オカルト的なことは全くありません。
 学問的な内容も多いですが、著者は長年にわたり実際にマーケットに身を置きトレードをした経験があるので、この種の本としては読みやすいでしょう。 ディスポジション効果とは、投資家が「値上がり銘柄を早期に売却する一方で、値下がり銘柄を保持し続ける」という現象のことですが、日本における具体的なデータもあって、 一般の人がいかに「ロスカットはできず、しかも利を伸ばせない」という状況が良く理解できました。おわりに書いてある「当てることからの解脱」という言葉が印象的です。
●ポジション管理
 「間違えたら潔く切る。逆に利が乗ったら利喰うのを我慢する」。これを継続的に実践できれば、読者のみなさんのパフォーマンスは見ちがえるようなものになるだろう。気がついてみると手元に膨大な「評価益の缶詰」ができているはずだ。逆に言うと、トレンドを間違えたうえに、ロスカットをしなかった場合は、立ち直れないほどの痛手をこうむることになる。ここでもう一度、自らを振り返っていただきたい。お手持ちの株式がどうなっているか。今まで説明してきたことの逆にはなっていないだろうか?ロスカットができないことによる評価損の缶詰や、利喰いが早すぎてプロフィットホールドができなかったためのわずかな実現益。いずれも、心理という名の悪魔に翻弄された結果である。本日をもってこのような運用から決別すべしと心得る。
日出コメント
 私は損切りは、だいぶ早くなりました。でも、利喰いを伸ばせません。トレンド状態ではなく、もみ合っている銘柄をトレードしているからか?私は、1円2円のデイトレばかりしていると疲れるので、デイトレでも、1日の中でのトレンドを捉えて、利益を伸ばしたいと思っていますが利益になるとすぐに確定してしまいます。

●ディスポジション効果  投資家が「値上がり銘柄を早期に売却する一方で、値下がり銘柄を保持し続ける」という現象のこと。日興コーディアル証券独自で行った調査によれば、個人投資家は、6.7%のちょこまかした利喰いをしながら、一方で36.1%の評価損を抱えている。総括すれば、「利喰いになれば、投資家はそれを安易に確保する傾向が見られ、その結果、相場が上昇していても、大きく実現益を出している投資家は極めて少ないこと」、同時に「評価損が発生した場合には投資家はそれをそのまま放っておく傾向が見られ、その結果、実現益に比べ明らかに大きな評価損を抱えてしまうこと」。ディスポジション効果は、そのまま日本でも当てはまることを示している。(p.73-78より要約)
日出コメント
 この本の図16を見れば、一目瞭然で、個人投資家は膨大な含み損を抱えており、含み損が大きければ、何年も抱えたままにしている様子がよく分かりました。私はデイトレードがほとんどですが、IPO目当てに手数料を落とすだけの目的で買った株を塩漬けにしています。デイトレードだったらすぐに損切りをしていたのですが、含み損が拡大するばかりです。損が大きいと、損切りができなくなるのは、人間の自然な心理なのでしょう。だからこそ、小さな損のうちに機械的に損切りができることが大切なのでしょうね。
ゾーン 「勝つ」相場心理学入門
(原題:TRADING IN THE ZONE)、マーク・ダグラス(Mark Douglas)著
トレードに成功するために不可欠な「ゾーン」といわれる心理状態に達するための方法を説いた指南書。抽象的な精神論ではなく、トレードという目的に沿った解説なので説得力がある。
投資で勝つ最強の「心理」法則 スーパートレーダーならこう考え、こう行動する
板垣 哲史 著、2000年出版
 「相場師適性診断テスト」50問を出題し、1問ごとに解説するというスタイルの本です。
 著者は、これまで現役の銀行・証券トレーダー、生命保険会社の運用担当者、投資信託のファンドマネージャー、157名がこのテストを受け、最高点は72点(100点満点)だったそうです。その最高得点者は、スーパートレーダーだそうですが、そんなプロでも72点しか取れないテストとは、なんなのかという疑問を感じます。
 私の得点は、57点で、「水準以上のディーラー」という評価で、「ファンドマネージャー、アナリスト、トレーダーといった専門職でそこそこ成功するレベルであると断言できます」だそうです。アナリストと実際のトレーダーでは、だいぶ違うのでは?と私は思いますが、どうなんでしょうね、断言できるとまで書いていますけど。
私の得点の内訳
 投資心理学 29得点/44点
 人生観・積極姿勢 8得点/20点
 自助努力・自己責任 18得点/30点
 数学的思考 2得点/6点

 最初のほうだけざっと読んでみて、なかなかおもしろい話もあったので、もう一度、借りて読もうと思います。
ゲイリー・スミスの短期売買入門 - ホームトレーダーとして成功する秘訣
(原題:How I Trade for a Living)、ゲイリー・スミス(Gary Smith)著

 20年間、ずっと資産を数十万円以上には増やせなかった平凡な投資家だったゲイリー・スミスでしたが、彼は成功しました。彼の本を読むと、元気がでます。テクニカル面の内容も多いのですが、私は、彼の考え方が、かなり参考になりました。

 著者は、成功に至るまでは、多くのトレーダーと同じように壮大な利益を求めたが、20年もの間、収支トントンの辛い時期を過ごしたのであった。彼は自分の失敗を認め原因を突き止めてからは、成功し、トレーディングで生計を立てるという夢を実現しました。彼の現在の売買は、彼の性格に合ったファンド取引が主であり、コンピューター恐怖症なので電話注文のみというのも変わっています。
 短期売買という題が付いていますが、これは数ヶ月単位という意味であり、決して数日単位の取引を狙っているのではありません。大きなトレンドを読み、徐々に買い増すという戦略です。空売りや大底狙いの買いはやらないそうです。

損を出すトレーダーが多いのはなぜか
 「私は長年にわたって、トレーディングで生計を立てるという実現困難な夢を求める何千人というトレーダーと付き合ってきた。こうした人たちと接触することで、これほど多くの人がトレーダーとしての生活を赤字で終える理由を見抜く貴重な力を授かった。−−彼らはマーケットの知識か、自分自身についての知識のいずれかを欠いているので、現実性のあるトレーディング戦略を開発することができなかったのである。(Page.81)」

 コメント:日本でも7割から9割の人が損をするそうです。今、手軽に儲かるように書かれている株関係の本やメルマガをよく目にします。利益の反対側に、同じだけ損をしている人がいるのは事実です。私も、最初は、こうすれば儲かるといったハウツウ本から読み始めましたが、ようやくここ1年ほどは、テクニックばかりでなく、心理面の重要性に気がつき、パニックや投げやりにならずにトレードできるようになりつつあります。

突込みでは買わない
 「私は極度の強さはさらに大きな強さにつながり、極度の弱さはさらに衰えた弱さにつながるという原理のもとにトレーディングを行っている。私はいつも強きを買い、弱きを売ってきた。これが長年の間、私の投資資金のドローダウンがわずかな額に収まっている理由のひとつなのである。私は下落相場では決して買わないので、価格の下落が大崩壊になるような時期にリスクにさらされたことはない。(Page.210)」

コメント:トレンドに逆らってはいけない。自分の考えは正しいと固執するのではなく、「相場に自分を合わせる」のである。デイトレーダーなら、どんなに高くても、下を見ると怖くなるような場面でも、その日に上げ続けているのなら、買うべきであろう。もちろんスイングトレーダーには、そんなことをしては危険であるが。。。

規律正しい行動
 もし読者がトレーダーとして成功し、規律正しいトレーディングをしようとするなら、トレーディングの分野にかぎらず実生活の面でも規律正しい行動をしなければならない。私について言えば、1978年以来ランニングをしている。1日もそれを欠かさないという筋金入りの走者ではないけれども、規律をもって1週間に少なくとも5、6回は走るよう心掛けている。(途中略)私が、年間ベースで損を出すようなことは考えられない。規律を重んじるトレーダーは、利益と損失をコントロールできる。また、取引の時期を選び、取引の額を定めることができる(Page.215)

コメント:前場と後場が終わったら、散歩をするようにしました。規律正しく健康的な生活は、私の体験からも大変、有益だと思います。健康は、お金では、なかなか買えるものではないですし。

投資苑 − 心理・戦略・資金管理
アレキサンダー・エルダー著、日本版:2000年8月初版
 この本は、6千円もする500ページ近い大作なのですが、投資における心理面が、よく解説されているので、アメリカではロングセラーになっています。

●「彼は既に儲かって気分が高まることもなく、損して落ち込むこともない域にまで到達していたのです。彼は正しくトレードすることに、そして自分の技術を高めることに集中していたため、もはやお金のことが自分の感情に影響を与えることはなかったのです。(page.32)」

 コメント:利益が2,3万円程度なら感情が高ぶることはなくなりましたが、損失なら1万円でも自分を嫌になってしまい、後にまで影響します。勝ち負けよりも、「正しいトレード」をしたかどうかが重要だということは、分かっているつもりですが、なかなか難しいですね。たとえ、損失になったとしても、きちんと損切りをするというルールを守れれば、楽なのです

ワイルダーのアダムセオリー 未来の値動きがわかる究極の再帰理論
この本は、株価を予想するテクニックを解説しています。でも、私としては、「トレンドとどのように付き合うか」、「視覚化」など、基本的な考え方に、大きな影響を受けました。高額な本ですが、オススメできます。
●天井や底をつかもうとする意思が、ほかの全ての要因を合わせたよりも、さらに多くのトレーダーをつぶす原因となっているのです。(中略)天井や底をつかもうとすることは、「私は市場や他のトレーダーより多くのことを知っている、私は他の何者よりも賢い」と言っているのに等しいのです。単なるうぬぼれにすぎないのです。エゴイストは勝つこともあるでしょうが、一度崩れると、どん底まで急落してしまうのです。(p.67)
日出コメント:天井と底を当てようとして、どれだけ利益を逃したことでしょう。天井を確認してから売り、底を確認してから買うことは、欲と悲観に逆らわないとなかなかできることではありません。確認してから売買することは、損失を少なくします。底と天井の差の100%を儲けることは不可能であり、50%でも取れれば上出来だと思わねばなりません。実際には、私は、1日の値動きのほんの1割、2割しか取れていないことが多いのですから。

●成功しているトレーダーたちは、例外なく、負けポジションを膨らませてナンピンをするようなことはしません。なぜ負けているポジションを膨らませたがるのでしょうか。そのような手法でマーケットに沿った動きが取れることはないのです。追加してよいのは、勝っているポジションのみです。
コメント:私は、マーケットに沿った動きをとりたいと思っています。最近の好きな言葉は、「高くても、高すぎて買えないということはなく、安くても、安すぎて売れないということはない」