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月開発関連
●火星の前に月へ Science@NASA
 どうして火星探査の前に月を開発するのか?2006年3月18日版SCIENCE@NASAでNASAの科学者達が答えています。
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 NASAは新宇宙政策で述べている。「今後数十年で、人類は火星に立ち赤い星を探検する。徐々に長期滞在を目指す。」

 しかし、まず私達は月に戻る。

 どうして火星の前に月なのか?

 「まず月に行くことは自然の流れなのです」NASAのケネディ宇宙センターの物理学者、フィリップ=メツラー氏は言う。 「とにかく近くで出来ます。私達は、生命維持、基地の運営、サイエンスの方法など、長期にわたる火星への旅行の前に 経験できるのです。」
 月と火星には共通点が多い。月は地球の1/6Gで火星は1/3G。月には大気がなく火星の大気はとても薄い。月は日陰で-240 度にもなり、火星は-100度〜-20度くらいになる。

 最も重要なことは、月も火星も、「レゴリス」といわれる細かい砂で覆われていることである。月のレゴリスは 数十億年にわたって微小流星体が降り注ぎ、宇宙線や太陽風の粒子によって岩が破壊されて出来た。火星のレゴリスは例えば隕石 のようなもっと重い物質の衝突や、水と風の浸食によって生じた。月も火星もレゴリスが10メートル以上積もっている地域がある。

ref2_2 -- ダストカバー  そのようなダストがたくさんある場所で機械を動かすことはとてもやっかいである。ちょうど1ヶ月前、メツラー氏はケネディ宇宙 センターで開かれた「月および火星探査における粒状物質」というシンポジウムの共同司会を務めた。参加者たちは基本的な輸送手段 (火星バギーはどんなタイヤが必要か?)、採掘方法(穴が崩れるまえにどのくらいの深さまでほれるか?)、そして砂嵐--自然のものと 人工的なもの両方(着陸船がどのくらいのダストを巻き上げるか?)までの問題に取り組んだ。
(写真:NASA:アポロ17号の時の「砂防御ダクトテープ」。タイヤからの砂の巻上げがひどいので急遽取り付けた。)

 地球上で暮らしていてこのような問題に、月と火星のダストがどんなものかという問題に答えるのは難しい。

 例えばこれをやってみよう。コンピュータの画面を指でなぞってみる。きっと指先に細かいダストがついただろう。 その柔らかく毛羽立ったのが地球のダストである。

ref2_1 -- レゴリス粒子
 月のダストは地球のダストと大きく異なっている。「それはガラスやサンゴのような--鋭く尖った角を持つお互いにインターロッキング (お互いにかみ合って動かなくなる性質)するような形をした--粒子の集合体なのです。」メツラー氏は言う。
(写真:月の砂粒子拡大)


 「アポロ17号でちょっと月面を歩いただけで、宇宙服の方のつなぎ目にまで粒子が入り込んでいました」 Colorado School of Minesのマサミ=ナカガワ氏は言う。「月のダストはシール部分に入り込み、宇宙服からの空気のリークを生じてさせてしまいます。」

 ナカガワ氏は言う「月面で日があたっている所では、細かい砂が宇宙飛行士のひざや頭くらいの高さまで舞い上がっていました。 なぜなら、太陽の紫外線によって、砂粒子が電気的にチャージされていたからです。そのような粒子の塵は、宇宙飛行士の居住区 まで入り込み目や肺を刺激するでしょう。それはとても深刻な問題です。」

 ダストは火星でもいたるところに存在するが、火星のダスト粒子は月のよりは尖ってない。侵食作用で角が丸くなっている。しかし、火星の砂嵐は砂粒子 を50m/sで吹き飛ばし、露出しているあらゆる部分を磨耗させまとわりつく。火星探査ローバ、スピリットとオポチュニティで明らかになったように、 火星のダストも(月と同じように)電気的にチャージされている。例えば太陽電池を考えると、太陽光線をブロックし表面での活動のための発電量 を減少させる。

 これらの理由により、NASAはナカガワ氏のダストプロジェクト、ロボット及び人間へのダストの影響を減少させる方法の確立のための4ヵ年研究 (エアフィルターからダストを宇宙服や機械からはねつける特殊フィルムの開発など)に資金援助している。

 月はまたミッション計画者がいうところの「現地での資源の活用(ISRU)」または「土地の恵みによって生活する」計画のテスト用地として 適している。火星の宇宙飛行士たちは、帰路に必要な呼吸用の酸素、飲料やロケット燃料(酸素と水素)用の水を現地調達することになる。 「私たちはこれを最初に月で試すのです」メツラー氏は言う。

 火星と月は地下に水があると思われている。その証拠は間接的にしか確かめられていない。NASAとESAの探査機は火星の砂の中に水素-- おそらくH2Oの中のH--を発見している。火星では極から赤道まで氷が存在すると言われている。月の氷は、また別で、1990年代の中盤におこなれた ルナプロスペクターとクレメンタインの観測データから、月の北と南の極のクレータの底深く、太陽が決して届かないところに存在するらしい。

 もしこの月の氷が掘削できるなら、それを溶かして酸素と水素に分解して・・・・すばらしい!燃料供給ができる。2008年に打ち上げ予定の、 NASAの月偵察衛星は最新センサーを使い氷の量と採掘可能地点の特定を行う予定である。

 「月の極は極寒の地域なので、私たちは極寒地域のスペシャリストと一緒に、そのようなところに着陸する方法や永久凍土を水を得るための 掘削法を理解するために、働いています。」メツラー氏はいう。NASAは陸軍工兵隊寒地工学研究所(CRREL)の調査官と協力している。 重要なのは砂が崩壊するのを避けるためいかにして熱を加えずにその砂の上に着陸し居住地を建設するかである。

 これらの技術を月で、地球から2、3日しか離れていない月でテストすることは、6ヶ月離れている火星でテストするよりはるかに簡単である。

 したがって、「火星へ!でもまずは月へ」なのである。
                                      (2005.03.22:作成)
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moon -- 月 米国新宇宙政策関連
・ブッシュ大統領演説
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・火星の前に月へ
 (Sceince@NASA)
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