今日の月写真。
月探査、月開発に関するトピックスのまとめページ
 
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米国新宇宙政策関連
●ブッシュ大統領の新宇宙政策の概要
 2004年1月14日、アメリカブッシュ大統領から新宇宙政策が発表されました。この新しい宇宙政策によって、 アメリカの宇宙政策はそれまで、地球から直接火星を有人探査する、という方向から。まず「月開発」を行い、 月の資源の利用も視野にいれながら、火星有人探査をおこなうという方向に大きくその舵を切ったのです。

 それまでのアメリカの宇宙政策と大きく変わったところは、「宇宙ステーションの完成」「スペースシャトルの引退」 「有人月探査の再開」「月の資源利用」が明記されたところでしょう。

 月探査については以下のように書かれています。

■B:地球低軌道以遠の宇宙探査--月について
□有人およびロボットによる火星および火星以遠の探査を可能にするような月探査に着手する。
□2008年頃に、将来の有人探査活動の準備のためのロボットによる月探査シリーズ1号にによる 探査活動を開始する。
□2015年〜2020年に月面に有人活動拠点を構築する。そして、
□月やその他の宇宙の資源の利用を含めた、将来の科学、技術とシステム開発を念頭に月の探査を進め、 火星や他の惑星への有人探査をサポートする。

新宇宙政策についてはホワイトハウスのホームページにまとめられています。 演説ビデオと発表全文、発表資料が掲載されています。

●発表文(全文訳)
 心のこもった紹介をありがとう。NASAの職員たちに誇りを感じます。今日ここに来ていただいた方々にも 感謝します。ビデオで見て下さっている方々も歓迎します。NASAとそこに勤務する献身的な専門家たちは、 私たちの国で最も価値があるもの、つまり偉大な目標を成し遂げるための挑戦、規律、独創性、結束力を もたらしています。
 アメリカには宇宙開発に対する誇りがあります。NASAの冒険者と夢想家たちは人類の知識を広げ、 宇宙の理解に革命をもたらし、全ての人類の利益となる技術の進歩をもたらしました。
 これまでに成し遂げられた成果に基づき、そして目的をはっきりと見定めることから、本日私たちは アメリカの宇宙開発計画を新たに開始いたします。私たちはNASAに将来の宇宙探査の目標とビジョンを 与えたいと思います。私たちは宇宙に人を運ぶ新しい宇宙船を建造し、月に新しい足跡を付け、私たち がまだ行った事のない世界への新しい旅立ちの準備を行います。

 私はショーン=オキーフ氏に率いられているNASAにこの新しい目標を授けます。彼はすばらしい仕事を しています(拍手)。またコマンダーのマイク=フォールズ氏注1)の紹介にも感謝します。--すみません。 今彼と握手ができない(笑)。たぶん議長が、あるいは長官が、彼が後で彼が帰ったら執務室につれて くるでしょうから個人的に感謝を述べましょう。
 私は彼が今同僚と一緒に宇宙にいることも知っています。アレキサンダー=カレリ氏注1)、彼はロシアの 宇宙飛行士です。宇宙探査に関するロシアと私たちの協力はすばらしい。私たちの国の若者に勇気ある 特別な事業家としてすばらしい例を示してくれた今ここにいる宇宙飛行したちに感謝します。(拍手) また私たちは今日何人かのベテランたちと一緒にいます。私は今ここにいる昔の宇宙飛行士たちも同じ ように感謝しています。彼らは今の宇宙飛行士たちの目標となり私たちの国にもたらしてくれました。 今ここにいる議会の代表者たちにも感謝します。トム=ディレイ氏は、下院の代表団を率いてここにき ています。ネルソン議員は上院からきています。わたしは皆さん全てがここにきていることを誇りに 思います。私はあなたたちがが問題に関心を持っていることに感謝します。--(笑い)--その問題は 政府にとって重要なものですが、この国そして世界にとっても重要なものです。

 2世紀前、メリウエザー・ルイスとウイリアム・クラークがセントルイスからルイジアナ購入注2)で得た 新しい土地の探検に旅立ちました。彼らは発見の精神(the spirit of discovery)でこの旅を実行し、 巨大な新しい領域の可能性を調査し後に続く者たちの指針を作りました。
 アメリカは同じ理由で宇宙への冒険を始めました。私たちは探検と探求は私たちの気質の一部なの で宇宙探査を続けました。そしてその探求は私たちの生活を向上させる数え切れないほどの有形の利益を もたらしました。宇宙探査は気象観測、通信、コンピュータ、資源探査技術、ロボテッィクス、電子工学 の発展をもたらしました。宇宙探査への投資は衛星通信網、GPSシステムの創生をもたらしました。寿命 を伸ばす医療技術--断層撮影装置や磁気共鳴画像装置などは宇宙で使用のために設計された技術にその 起源を見つけることができます。
 わたしたちの現在の計画と宇宙探査のための宇宙船は私たちを遠くに運びそして充分に機能しました。 スペースシャトルは100回以上のミッションで飛行しました。それは重要な調査を行うためそして人類 の知識の総体を拡大するために使われました。シャトルのクルーたち、そして彼らを支える科学者と 工学者たちは国際宇宙ステーションの建設を支援しました。
 望遠鏡は--宇宙にあるのも含めて--この10年間だけで100以上の惑星を発見しました。探査機は驚くほど 鮮明な土星の輪や太陽系の他の惑星の画像を明らかにしました。無人探査では水の存在--生命の鍵に なる成分--を火星と土星の月で発見しました。そしてこれは非常に誇らしいことですが、火星探査 ローバのスピリットは地球以外で生命の証拠を探しています。

 これら全ての成功にも関わらず、私たちには多くの調査すべきことと学ぶべきことが残されています。 過去30年の間、別の世界に足跡をしるす、または386マイル(539km)より上空を探検した人は一人もい ないのです。この距離は大雑把にいってワシントン−ボストン間の距離に相当します。アメリカは次の ステップに踏み出す時が来たようです。

 本日、私は宇宙探査と私たちの太陽系に人類圏を拡大する新しい計画を発表します。私たちは、既存の 計画と人員をつかって、速やかにこの取り組みを開始します。わたしたちは着実に前へと進んでいくで しょう。--一度にひとつのミッション、ひとつの航海、ひとつの着陸を目指します。

 最初の目標は2010年までに国際宇宙ステーションの完成です。やりだしたことを完成させ、このプロジェクト の世界中の15のパートナーに私たちの義務を果たしたいと思います。宇宙ステーションでの研究は長期の 宇宙活動が人体に与える生物学的な影響の解明に注力します。宇宙環境は人間にとって危険なものです。 宇宙放射線と無重力状態は人間の健康にダメージを与えます。私たちは人間が数ヶ月におよぶ広大な宇宙 への探索に乗り出す前に多くのことを知らなければなりません。宇宙ステーションと地球で研究することで その探索を制限する問題を理解し乗り越えることができるようになるでしょう。これらの努力のより私たちは 将来の宇宙探査を支える手腕と技術を開発することができるでしょう。
 この目的のため、コロンビア事故調査委員会の安全勧告を遵守し、スペースシャトルの飛行をできるだけ早期 に再開します。今後数年間のシャトルの主任務は国際宇宙ステーションを完成させることになるでしょう。 2010年にスペースシャトルは、--30年余りの任務を終え--引退することになるでしょう。

 2番目の目標は新しい宇宙船、CEV(乗員輸送用小型探査宇宙船)の開発です。これを2008年までに開発し、 最初の有人ミッションを2014年までに行います。CEVはシャトルが引退したあと宇宙飛行士と科学者達を宇宙 ステーションまで輸送する能力があります。しかしこの宇宙船の本当の目的は地球軌道以遠の別の世界に宇宙 飛行士を運ぶことになるでしょう。これはアポロ指令船以来、その種のはじめての宇宙船になるでしょう。

 3番目の目標は2020年までに、より遠くへのミッションのための射点としての月に戻ることです。2008年までに、 月の資源と将来の有人探査用の調査のための無人探査機を送ります。CEVを用い、2015年までには有人ミッション を月まで拡大し、そこで生活し活動することを目的に滞在期間を延ばしていきます。ユージン=サナーンは、--今 ここにいるかれが月に足跡を残した最後の人間絵なのですが、--月を去る際にこのようなことを言いました。 「私たちは再びここにやってくるために、ここから去る。人類の平和と希望とともに私たちがここに戻ることは、 神のご意思なのだ。」アメリカはこの言葉を実現します(拍手)。
 月に戻る事は宇宙計画にとって重要なステップです。月面で人間の長期滞在を確立することは深宇宙探査の コストを著しく削減し、野心的なミッションを可能にします。重い宇宙船と燃料を地球の重力から打ち上げる ことはとてもコストがかかります。月面で宇宙船の組み立てと補給ができれば非常に少ないエネルギーで非常 に小さい重力から脱出でき、コストを下げられます。また月は資源の宝庫です。月の砂はロケットの燃料や呼吸 できる空気として収集し精製できる原料を含んでいます。私たちは月での時間を厳しい環境で必要になる新しい 試みと技術とシステム開発とテストに使うことができます。月開発はより進んだ進歩と偉業のための論理的な ステップです。
 月で経験や技術が得られたら、私たちは宇宙探査の次のステップへと進む準備ができていることでしょう。 火星と火星以遠の世界への有人探査です。(拍手) ロボット探査は先駆者--未知なる物への防御--として 行われます。この種の無人探査機、着陸機や他の宇宙船は、壮麗な画像データを大量に地球に送信し、その価値を 証明しています。しかし人間は知識を渇望し最終的にはどんなに鮮やかな写真でも、またはどんなに精密な観測 データでも満足できないものです。私たちは私たち自身で見て、調査して、触ってみることが必要です。人間 だけが宇宙探査で生ずる予期せぬ不確実性に対処できる能力を持っているのですから。
 私たちの知識が増えるに従い、さらに遠くへの探査を支える新世代の推進、生命維持、その他のシステムが 開発されるでしょう。私たちはこの旅の終わりを知りません。だが私たちは知っています。「人類は宇宙へ 導かれている」と。(拍手)

 この旅とともに私たちは多くのブレークスルーを経験するでしょう。私たちはそれらのブレークスルーが何か まだ知りませんが、それが来ることは確信できますし、私たちの努力は何度も報われてきました。私たちは 月や火星に創造を超えた資源を発見するかもしれません。これは私たちの想像力の限界をテストすることになる でしょう。そして将来の探査によってもたらされる魅力が若者たちを数学、科学そして工学の研究に駆り立て そして新世代の革新者と先駆者を生み出すでしょう。

 これはNASAにとって偉大で統合的なミッションになるでしょう。NASAはきっと期待にこたえてくれるでしょう。 私はオキーフ長官に現現在のNASAの宇宙飛行と探査活動を再調査し私が概略を述べたゴールに向かわせるように 指示しました。私はまた本日私が概略を述べたビジョンを実行するために助言する官民の専門家からなる委員会を 組織することを命じました。この委員会は4ヶ月以内に第一回目の会議の報告書をする予定です。私は今日前空軍 長官、ピート=オルドリッジ氏を、この委員会の議長に任命しました。(拍手) 今日はここに来ていただいて ありがとう、ピーター。彼は国防省と航空宇宙業界で多くの経験をつんでいます。彼はすぐさまこの重要な仕事 を始めてくれると思います。

 私たちは世界各国にこの新時代の発見への挑戦と参加の機会を分かち合うことを希望しています。私が今日概略 を示したこのビジョンは「旅」です。競争ではありません。私たちは各国がこの旅に、われわれとともに協調と 友情の精神で参加することを求めます。

 この目標を達成するためには長い期間が必要です。NASAの現在の5ヵ年予算は860億ドル(8兆6000億円)です。 ここから110億ドル(1兆6千億円)をこの目標のために振り分けます。しかし後いくらかの予算が必要です。 私は議会にNASA予算を今後5年間で約10億ドル増額することを求めます。この増額は今後のNASAの計画の 進行に伴い、本日お話した挑戦と目標の出発点を確固たるものにします。それは始まりに過ぎません。将来的な 予算に関する議論は目標達成のために進展するにしたがってなされていくでしょう。

 私たちは宇宙開発が大きなリスクを伴うことを知りながらこの冒険を始めます。スペースシャトルコロンビア を失ったのは約1年前です。宇宙プログラムを開始してから、アメリカは23名のわれわれの国の宇宙飛行士と1名 の他国の宇宙飛行士を --皆ミッションを信じ危険を受け入れた者たち、を失いました。その家族の一人がこう いっていました。「コロンビアが残したものは、続けていかなければならない。それが私たちの子供や若者のため になるのだから。」コロンビアのクルーたちは挑戦から逃げませんでした。私たちも決して逃げません。(拍手)

 人類は私たちがかつて未知の大陸や大洋に魅了されたように宇宙に魅了されています。私たちは宇宙探査を選 びました。なぜなら私たちの生活を改善し、私たちの国威を高めるからです。旅を続けようじゃありませんか。

 神のご加護がありますように。(拍手)
 
注1)マイク=フォールズ:アメリカのベテラン宇宙飛行士。この演説の時にはロシアの宇宙飛行士 アレキサンダー=カレリ共にISSに搭乗していた。演説の前にはISSから生中継で参加。
注2)ルイジアナ購入:ジェファーソン大統領在任中にナポレオンからミシシッピ以西のルイジアナを購入。 ルイジアナはミシシッピ川とロッキー山脈にはさまれた面積約214万平方kmで、合衆国はこれをわずか1500万ドル(1平方km当たり約7ドル)で購入。 これによって合衆国の領土は倍増。

                                  (2005.03.19:加筆修正)  
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