親友と女


 恭太(きょうた)には幼馴染がいた。
 歩(あゆむ)という名の男で、性格も趣味も合う、親友と言って良い存在だった。
 何をするのも一緒で、とにかく傍にいるだけで楽しかった。
 歩は大人しく内気な性格ゆえか虐められる事が多く、それを助けるのも恭太の役目だった。
 何しろ男のくせに女の子の好む物が好きであったため、そこら辺がいじめっ子たちにとって格好の材料だったらしい。
 気が付けばいじめられている事が多かった。
 それ以外でもおっちょこちょいでドジなところがあったため、ちょくちょく失敗をしており、そんな様子を見ていられず色々と世話を焼いてしまう自分の性格は、歩の親友としてピッタリなのかも知れないと恭太は常々思っていた。
 いつか歩がしっかりとした性格の女性と結婚するまでは自分が面倒を見てやるしかない、などといった使命感まで持っているのだから我ながら呆れてしまう。
 だが恭太に子犬の様に甘えてくる歩の態度は、周囲にしてみれば面白おかしく噂する対象としてピッタリだったらしく、高校に上がる頃から密かに「ホモカップル」などと言われる様になった。
 初めはそれに対して怒りを覚えたのだが、歩に「いいじゃない。ボクたちお似合いなんだし」などと笑いながら言われたため、怒る気力すら無くなってしまった。
 歩は能天気で鈍感なところがあり、「ホモ」と呼ばれる事が悪意であることすら認識していないらしかった。
「実際ボクは恭太が一番好きなんだから仕方ないよ」などと、こちらが少々引いてしまう様な発言すら平然とするのだ。
 元々歩には女っぽいところがあり、可愛いものに目が無く、そのうちオカマになるのではないかという噂すら立てられていたくらいだった。
 本気で男が好きなのかオカマになるつもりなのか分からないが、その程度の疑惑で長年仲の良かった相手を嫌いになれるはずもなく、「告白さえされなければ平気だろう」といった理由をつけて恭太は自分を納得させていた。
 それにそういった噂を気にもしない歩は、ある意味大物なのではないかと密かに思っていたりもしたのである。
 そんな歩がある日突然女になった。
 別に噂の通りオカマになり、性転換手術を受けた訳ではない。
 チェンダー病という最近流行の病気にかかったのだ。
 これは少子化に悩む先進国で発症している病気で、肉体が男から女になってしまうというものだった。
 幼馴染が突然女になった事に恭太は少なからずショックを受けたが、歩自身は全く悩む事もなく逆に喜んでいた。
 歩の両親も同じ様に喜んでいるところから、この家族は根っからの能天気、前向き思考なのだろうと恭太は思った。
 その日以来、歩は女として生活する事になるのだが、転校をしなかったため同じ学校にいる連中は見るからに度肝を抜かれていた。
 だが元々が女っぽかった事や歩の能天気な性格ゆえか、表立っていじめをする人間はいなかった。
 無論影で色々言われる事はあったが、以前から「ホモ」「オカマ」といったネタにされていたので、あまり変化があったとは言えないだろう。
 むしろ恭太にしてみれば、友人たちに「これでようやく堂々と付き合えるじゃないか」などと冗談めかして言われる事の方が辛かった。
 何故ならそれは、恭太にとって内心激しく動揺させられる言葉だったからである。


 体育の授業が終わった後、用具を片付けた恭太は歩と出くわした。
 何やら数本のバットが入った箱を前に困った様な顔をしている。
 女子の体育はソフトボールであったため、その後片付けをしているのだろう。
「歩、何してるんだ?」
「あ、恭太っ」
 声をかけると歩が顔をこちらに向け、パァッと明るい笑顔を見せた。
 その途端、恭太の心臓が激しく鼓動した。
 歩が女になってからというもの、こうして笑顔を向けられるたびに落ち着かない気分にさせられていたのだ。
 理由は簡単、恭太にとって女の歩はとんでもなく好みの顔をしていたからである。
 男時代と顔は変わらないはずなのだが、やはり性別の違いによる微妙な変化があるのか、歩は実に魅力的な女の子になっていたのだ。
 心持ち丸くなった顔に、首筋まで伸びた髪は非常に可愛らしく美少女といって申し分ないだろう。
 そしてクルクルと落ち着き無く変化する表情は、女の子として十分以上の魅力に溢れていた。
 何より体操着にブルマーという現在の格好は、思春期の少年にとって欲情をそそるたまらないものだったのである。
「バットを片付けようとしてるんだけど……」
「そりゃ見りゃ分かる。何で一人でやってるんだ?」
 普通こうした片付けは複数人でやるため、一人で運ぶ事はあまりなかった。
「んとね。最初は二人で運んでたんだけど、その子に用事ができちゃったんで『ボクが一人で運ぶから行きなよ』って言ったんだ」
「そうか。で、何でこんな所でモタモタしてるんだ?」
「えっと……その……思ったより重かったんで……運べなくなっちゃった」
 えへっ、と笑いながら歩はバットの箱を見つめている。
「お前なぁ、無理ならそういう事するなよ」
「だってぇ、平気だと思ったんだもん。これくらいなら運べると思って……前はちゃんと出来たんだよぉ……」
 確かに男時代の歩は、非力とはいえそれなりに力仕事をこなしていた。
 女の肉体になったせいで筋力が減ったに違いない。
「今は女だろ? もう少しそこら辺を自覚しとけ」
「うん、分かったよ。今度からそうする……だからさぁ。今回だけ、ね? 手伝ってくれない?」
 歩はそう言いながら手を拝む様に目の前で合わせ、上目遣いでこちらを見つめてくる。
(う……)
 それはせつなげな泣きそうな表情であり、実に男心をくすぐる女の媚に溢れたものだった。
 女になってからの歩は、無意識なのだろうがそうした仕草を良くする様になっていた。
 もしかしたら男時代にもしていたのかも知れないが、性別が変わった途端、それは男を惑わすたまらないものとなっていたのである。
 そしてそうした事をされるたびに、恭太の心臓は激しく鼓動していたのだった。
「分かった……手伝ってやるよ」
「わっ、いいの? ありがとう恭太っ。だから大好きっ」
「って、おい……」
 嬉しそうに笑いながら抱きついてくる歩に、恭太の頭は爆発しそうになった。
 可愛らしい顔で「大好き」などと言われ、その柔らかな肉体を押し付けられては、健康な男であればおかしくならない方が不思議だろう。
(ああ……き、気持ちいい……)
 体操着という薄い布地を通じて、密着している部分から柔らかな肉がジンワリと染み入る様に感じられ、ブルマーと短パンであるため素肌同士の太ももが擦れ、快感が体中を駆け抜けていった。
(む、胸が……)
 グイグイと押し付けられる胸の膨らみは、これが元男なのかと驚くほど大きく、それが微妙に潰れているのが分かると股間の一物が痛いほど勃起した。
 このまま歩を抱き締め、襲いかかりたい欲望が脳内に溢れていく。
 そのプックリとした唇に口付け、豊満な胸を揉みしだき、すべらかな太ももと形のいい尻を撫で、白く美しい肉体全てを舐め回し吸い尽くし、最後には己の怒張した肉棒を愛らしい女の部分へ押し込んで喘がすのだ。
 それはきっとたまらなく気持ちのいい事だろう。
(だ、駄目だっ。何考えてるんだ俺はっ!)
 そこまで妄想しかけたところで、歩を大切に思う親友としての想いがストップをかけた。
(俺は歩の親友だっ。親友にそんな下劣な想いを持つなんて最低だぞっ)
 肉体が女になったからといって、歩が親友である事に変わりはない。
 それなのに自分は歩をいやらしい目で見つめ、獣欲を満たすための対象として意識してしまっている。
 何と酷い人間であるのか。
 恭太は己を叱り付け、そういった妄想を断ち切ろうと、今触れている歩の気持ちのいい肉体を意識しないように努めた。
「そうだ! ね、恭太っ」
「ん?」
 しばらくして体を放した歩は、何かいい事でも思いついたかの様に声を上げた。
「今日うちに遊びにおいでよ。ここんとこずっと来てないでしょ? 今日は他に誰もいないからさ、思いっきり遊べるよ」
(!……)
 ドクンと心臓が跳ね上がる。
 男時代なら何気ない遊びの誘いだったその言葉。
 だが今の歩は女だった。
 女が男に「今日うちには誰もいないから遊びに来て」と告げるのは、明らかに肉体関係を示唆する誘いである。
 それを歩が意識して言っているとは思えないが、どうしてもそう解釈してしまうのは男の悲しい性だろう。
「ああ……そうだな……遊びに行くよ……」
 誤解するなと自分に言い聞かせつつ、これまで通りの親友として答える。
「やったぁ〜〜! この間買ったゲーム、あれ恭太と対戦したかったんだよ。今日うちの親、帰ってくるの遅いから沢山しようねっ」
(!……)
 再び心臓が激しく鼓動する。
 上機嫌に笑っている歩の様子から、それが男女の誘いの意味合いを持たない言葉である事は分かる。
 分かるのだが、意識してしまうのも仕方の無い事だろう。
 そして心の片隅で「二人きりならもしかして」といった期待を持ってしまうのも男の悲しい習性なのだった。
 恭太は「歩に限ってそういった事はないんだ」と再び己を厳しく諌め、親友として手伝いをしようとバットの箱を持ち上げると、歩に感謝の言葉を言われる事に心地良さを感じながら体育倉庫に向かって歩き出すのだった。


 放課後、帰り道を歩く恭太は、隣で楽しげに話している歩に適当な相づちを打ちつつ、視線をその可愛らしい姿に集中させていた。
(ああ……こいつ、どうしてこんなに可愛いんだろう……)
 元は男で自分は親友なんだと己に言い聞かせても、湧き起こる恋心と劣情を抑える事など思春期の少年にとって無理な相談だった。
 いけないと思いつつも、視線は歩の顔を注視し、そのまま体をなぞる様に見てしまう。
 サラサラと首筋まで伸びた美しい髪、やや丸みを帯びた顔の輪郭、キラキラと輝く瞳、ぷっくりと柔らかそうな唇、大きく弾力のありそうな胸、か弱さを思わせる細い腰つき、ぷりんと突き出した形のいい尻、太すぎず細すぎもしない白くすべらかな太もも……。
 全てが理想だった。
 恭太にとって歩は、何から何まで完璧に理想の女の子だったのである。
 その上自分に対して好意を持っているのだからたまらなかった。
 歩にとって最も信頼し、安心できる存在は自分なのだ。
 その眩しい笑顔を一番向けてくるのは自分であり、こうして一日のほとんどを一緒に過ごしているのも自分だけだった。
 家族ですらここまで一緒にはいないのだ。
 自分だけ、自分だけが歩と一緒に多くの時間を過ごしているのである。
 何と幸せな事だろう。
「もうっ、聞いてるのぉ?」
 少し怒った様な歩の声に意識を戻す。
「え? ああ、スマン。ちょっと聞いてなかった」
 頭をかきながら誤魔化す様にして笑う。
「なんだよぉ、しょうがないなぁ。いい? ボクが可愛いかって話だよ」
「ハ……?」
 突然何を言い出すのかと思い、間抜けな声をあげてしまう。
「今日クラスの女子に言われたんだぁ。『歩くんって女の子になったらすっごく可愛くなった』って……でもボク、それがどうにも信じられなくって……本当に可愛いのならいいんだけど、どうなのかなぁって思ってさ。そこら辺を知りたいんだよねぇ」
 歩は元々可愛い物好きなところがあるせいか、昔から「女の子は可愛くしなきゃ駄目」といった持論を持っていて、「自分が女の子だったら絶対可愛くするのに」と言っていたほど可愛さに対する執着があった。
 それゆえ自分が「可愛い」と言われた事を気にしているのだろうが、それを何故信じられないのか恭太には分からなかった。
「何でだよ? 可愛いって言われたんならそうなんだろ? どうして信じられないんだ?」
「だって、女の子って別に可愛くなくても『可愛い』ってすぐ言うじゃない。テレビなんかでも『女友達に可愛い女の子紹介するって言われると大抵紹介した子より可愛くない』なんてこと言ってたし。だからどうなのかなって思ってさ」
 なるほど、それはよく聞く話だ。
 男にとって「可愛い女の子」という定義はあくまで顔立ちなどの美醜でしかないが、女性にとってはそこら辺の範囲が広いからである。
 不細工な顔立ちであっても「可愛い」と表現する事が多々あるため、男としては気をつけねばならない部分なのだ。
「それにボク、男の頃から女子には『可愛い』ってよく言われてたし、今日言われたのもそれと同じ意味じゃないかって……顔が可愛いんじゃなくて、行動とかそういうのが可愛いって感じでさ」
「男からは言われないのか?」
「みんな避けてるよ。知ってるでしょ? そんな状態で言う訳ないじゃん。男に言われれば分かるんだけど、誰も可愛いとも可愛くないとも言わないからなぁ。だから余計分からないんだよねぇ……」
 だがそれは歩の誤解だった。
 初めの頃こそ女に変わった事を気持ち悪がっていた男は多かったが、最近では歩の魅力に惹かれ始めている者も結構いるからだ。
 時折「可愛いし胸がデカクていいよな」とかいう話を聞いたりするのである。
 しかしそういった輩にしても面と向かって言うはずもないから、歩が知らないのは当然なのだろう。
「でも女子が言ってるのは、きっと本当に可愛いって意味だと思うぞ」
「え? どうしてさ?」
「どうしてって、男でそういう風に言ってるヤツがいたからさ。男が可愛いって言ってるならいいんだろ?」
「え? それ本当? だとしたら嬉しいなぁ」
 歩はパァッと明るい笑顔を浮かべている。
 可愛い物好きとしては、自分が可愛いと思われているのは喜ばしい事なのだろう。
「で、恭太はどうなの? ボクのこと可愛いと思う?」
「え……?」
 不意に矛先がこちらに向いたため、恭太は焦ってしまった。
 無論歩が可愛いというのは誰に言われるまでもなく、恭太が一番主張したい部分であるのだから、すぐに「可愛い」と答えれば良いのだが、それを本人に告げるのにはかなりの度胸が必要だったのである。
 これまでは他人の言葉を伝えているだけだったから簡単に「可愛い」と言えたが、今聞かれているのは恭太自身の感想だ。
 そうそう口にできるものではなかった。
「ね、どうなの? 言ってよ。恭太にとってボクは可愛い? それとも可愛くない?」
 歩は進路を塞ぐ様に前に回り込むと、下から覗き込む形で見つめてくる。
 それは不安そうな、何かを期待しているかの様な顔だった。
「か……可愛いと……思うぞ……」
 そんな表情に逆らえるはずもなく、恭太は素直に己の想いを告げた。
「ホントっ?」
「あ、ああ……本当だ……歩は……その……可愛いと……思う……」
 顔が死ぬほど熱くなっているのを感じながら、たどたどしく言葉をつむぎ出す。
「嬉しい〜〜!」
 目の前にある歩の顔がみるみるうちに満面の笑みに変わっていき、そのまま近づいてきたかと思うと首筋にしがみ付く様にして抱き付いてきた。
 歩の顔が頬にくっつき、髪がくすぐったく触れているのが分かる。
 柔らかな膨らみが胸に押し付けられ、体重がかけられているため密着度が強く感じられた。
 気持ちのいい感触が体中に広がり、股間の一物が硬く大きくなっていく。
(うぅ……歩……俺に言われたのがそんなに嬉しいのか?……って事はお前も俺のことを……歩〜〜、お、俺はぁ〜〜!)
 喜びを感じると共に歩に対する欲情を抑えきれず、思わず抱き締めようと腕を上げる。
「そうかボクって可愛いんだぁ〜〜。嬉しいなぁ。恭太が可愛いって言うんだからかなり可愛いんだよねっ。恭太って昔からそこら辺うるさかったしぃっ」
 だがすぐさま歩が離れたため、手を前に差し出す間抜けな姿勢で恭太は硬直する事になった。
 何の事はない、歩は自分が可愛い事が嬉しいのであって、恭太が可愛いと思っている事が嬉しい訳ではなかったのだ。
 早とちりして興奮した恭太は、虚しく腕を上げたまましばらく呆然としていた。
「あれ? どうしたの恭太? 早く行こうよ」
「あ、ああ……そうだな……」
 深い溜め息を付きながら、スキップしている歩に続いて恭太も歩き出す。
 頭の中で「分かっている。分かっているんだ」といった言葉を繰り返しながら……。


「じゃ、ボク着替えるから、それまで一人で練習しててよ」
 家に着き、部屋に入ってゲーム機を準備した後、歩はそう言って制服を脱ごうとした。
「ちょっ、おいっ。ここで着替えるのかよっ?」
 上着を脱ぎかけている歩に慌てて叫ぶ。
「え? 何で? 別にいいでしょ?」
「いいって……お前、いいのかよ……?」
「?……」
 歩は不思議そうな顔をして小首をかしげている。
 そんな表情も実に可愛らしく、恭太はドキドキしてしまった。
「女なんだから……男の前で着替えちゃ駄目だろ?」
 己を落ち着かせようと息をゆっくり吐き出しながらそう告げる。
「あ、そうか。すっかり忘れてたぁ」
 歩は照れ笑いを浮かべながら頭をかいている。
「お前なぁ、俺だったから良かったけど、他のヤツの前で同じことするなよ?」
「うん、気をつける。そうだよね、ボク女の子なんだもん。男の前で着替えちゃ駄目なんだった」
 恭太としては少し残念だったが、こうして注意を喚起しておかないと能天気な歩のことだ、他の男の前でも着替えようとするに違いない。
 そんな事は絶対に許せなかった。
「しかしこういう事があると、ホント歩は女になっちまったんだなぁ、って思うよ……」
 たまにある肉体的接触は嬉しかったが、男同士だった頃の気が置けない間柄を思うと、今の様に落ち着かない気分になるのは寂しい事だった。
「まあね。胸だってほら、あるでしょ? 結構大きいんだよ」
 歩は嬉しそうに胸を張り、得意げに笑っている。
「そ、そうだな……」
 まじまじと見る訳にもいかず、目をそらしながら同意する。
「やっぱり女の子になって嬉しかったのは、オッパイができた事かなぁ。柔らかくてねぇ、凄く綺麗なんだよぉ」
「そ、そうか……」
 何と答えていいのか分からず言いよどむ。
「何なら見てみる?」
「……ハ?」
 一瞬何を言われたのか分からず間抜けな声を上げてしまう。
「ボクの胸、見るかって聞いてるんだよぉ」
 もう一度言われてようやく意味を理解する。
「って、おい。今気をつけるって言ったばかりだろうが。何ですぐにそういう事言うんだよ」
 呆れた様に呟く。
「でも恭太ならいいかと思って。それに綺麗だから見てもらいたいんだもん」
 歩は特に気にした様子もなく笑っている。
 そんな風に笑顔であっけらかんと言われると、別にいいのではないかと思ってしまうから不思議だった。
(いや、いくら何でもマズイだろ。元男だからといったって、今は女なんだし……)
 本当は見てみたいのだが、親友としての想いがそれを抑える。
「じゃ、ちょっと待ってね」
 しかし恭太が黙ったのを勝手に了承と捉えたのか、歩は制服の上着に手をかけて脱ぎ始めた。
「お、おい……」
 慌てて止めようと声を発するものの、それ以上何も言う事ができないうちに上着は脱がれ、続けてブラウスのボタンを外し始める歩の姿に恭太の体は硬直してしまった。
(ほ、本気かよ……)
 こんな事は良くない、すぐに止めるんだ、と思いつつ、見せてくれるというのだから見てもいいじゃないか、と激しい葛藤が起こる。
 困惑しているうちにとうとうブラウスの前が開かれ、ピンクのブラジャーに包まれた白くて柔らかそうな膨らみが目の前に現れた。
(う……)
 その姿に息を呑んでいると、そのまま歩は背中に手を回し、ブラジャーも外してしまう。
 ぷるんっといった感じで肉の塊が揺れ、何もさえぎる物のない状態で乳房があらわになった。
(あ、歩の……オッパイ……)
 それは真っ白で丸く、とんでもなく美しい物体だった。
 これまでグラビアなどで見たことはあったが、こうして目の前で実際に見る乳房は信じられないほど素晴らしいものである様に感じられた。
 緩やかな曲線を描く肉の塊の頂点で、ピンク色をした乳首が可愛らしくプクッと出っ張っているのにゴクリと唾を飲み込む。
「き、綺麗だ……」
「そうでしょ、そうでしょ」
 思わず漏らした声に、歩が嬉しそうに微笑んでいる。
 だが恭太の頭には、美しさに感動する気持ちと共に、吸い付きたい、舐め回したい、揉みしだきたい、といった欲望が湧き起こっていた。
 股間では肉棒が痛いほどに勃起し、このまま歩を押し倒し、今脳内に溢れているいやらしい行為を実行に移したい衝動で体が震え始める。
「触ってみる?」
「え?……え……?」
 いつもと変わらない口調で信じられない言葉を発する歩の顔を思わずジッと見つめてしまう。
「柔らかいんだよぉ。ほら……ね?」
 まるで新しいおもちゃを自慢するかの様に恭太の手を取ると、そのまま胸の上に置いてくる。
 手のひらにすべらかな肌触りと、微妙に潰れる肉の感触が広がった。
(あ……ああ……)
 その気持ちの良い感触に恭太は何も考えられず、ただ歩に動かされるまま手を乳房に滑らせていった。
(スベスベだぁ……歩の胸……スベスベぇ……)
 自分のとは全く違う、真っ白ですべらかな肌の感触にうっとりとなる。
 そして動くたび指先が肉に微妙に食い込む様子に興奮が高まっていった。
「揉んでみなよ」
「へ……?」
 歩の言葉に間抜けな声を上げる。
 そんな事をしていいのか、いやここまでしてるんだからそれくらいしてもいいだろう、そもそも歩がしろと言っているんだし、といった考えが頭の中でグルグル回る。
「柔らかいからさ、気持ちいいよぉ」
(!……)
 言われた瞬間、それまでの思考が嘘の様に頭がまっさらになり、勝手に手に力が入って乳房をギュッと掴む。
「あんっ……」
 すると歩の口から可愛らしくもいやらしい声が発せられ、それに驚いた恭太は慌てて手を放した。
「もうっ、痛いなぁ……そんなに思いっきり掴んだら痛いじゃないかぁ……」
「す、すまん……つい……」
「もっと優しく、力を抜いて揉んでよね」
「あ、ああ……」
 そう答えながら、恭太の頭は今味わった肉の柔らかさに朦朧としていた。
(何て……何て柔らかい……気持ちのいいものなんだろ……)
 それはこれまでの人生で経験した事のない柔らかさだった。
 今までも服越しに何度か歩の乳房を感じた事はあったが、こうして手で、しかも生の状態で触れるのは、それまでとは明らかに違う感じがあったのだ。
(今度は……気をつけて……)
 力を入れすぎない様に注意しながら再び膨らみを掴んでみる。
「んっ……」
 微かに漏れた声にまた強すぎたかと思い顔を見つめると、歩は少し顔を歪めているものの、特に何も言わずに見つめ返してくる。
 それが何やら「もっとしていいよ」と言っている様に思えた恭太は、続けてゆっくりと膨らみを揉んでいった。
 ぷにぷにとした感触が気持ち良く、何度も手を動かしていく。
(すげ……やっぱりすげぇ……何だこりゃぁ……?)
 初めて経験する女の乳房はとんでもなく気持ちが良かった。
 柔らかな様でいて弾力があり、面白い様に形を変えられるにも関わらずすぐ元に戻る。
 力を入れた時の感触がまたたまらず、揉みしだく事を止められない。
(ああ……最高だ……歩ぅ……お前の胸は最高だよぉ……)
 興奮を高めた恭太は片手でしているのに我慢できず、両手を添えると、下から回す様に激しく揉んでいった。
「あ……そんなの……もぉ……」
 歩は何か言いかけたが、仕方無さそうに笑うとそのままされるがままになっている。
 その事で許してもらえたと思った恭太は、強弱を付けながら美しい塊を揉みしだいていった。
「んっ……ふっ……んぅっ……」
 しばらくすると、耳元に甘い吐息が聞こえる様になった。
 歩の顔を見ると、何やらボォっとした様な表情を浮かべており、それは実にせつなげでたまらないものだった。
(ああ……歩ぅ……歩ぅ……)
 その顔と、手のひらに伝わるぷにぷにとした気持ちのいい感触、そして手を動かすたびに漏れ聞こえる歩の微かな吐息に興奮が高まっていく。
 もうすでに恭太の頭からは、「親友とこんな事をしていいのか?」といった思いは消え去っていた。
 それほど歩の乳房を揉む行為というのは気持ちが良く、止められない魔力を秘めていたのだ。
(柔らかい……ああ……何て気持ちいいんだろぉ……)
 鼻息を荒くしながら、目の前にある白く柔らかな物体を揉みしだく事に夢中になる。
 美しい膨らみが己の手によって形を変え、すぐさま元に戻る様子はたまらず、手のひらに伝わってくるぷにょぷにょとした感触は、何度揉んでも飽きる事のない気持ちの良さを感じさせた。
(あ……)
 気が付くと、ピンク色をした可愛らしい乳首が微妙に勃起しているのが分かった。
「ん……はぁ……んぅ……」
 耳元にかかる吐息はさらに甘さと熱さを増し、表情もトロンとしており、その様子に恭太は今までにないほど歩に「女」を感じた。
 その瞬間震えが走り、意識しないまま体が勝手に動いて目の前にある乳首を口に含んだ。
「あっ……」
 歩が驚いた様な声をあげ、体をビクっとさせるが、それに構わず乳首を吸い上げる。
「やっ……恭太、あぅっ……ちょっと、あんっ……」
 一瞬体を引き離されそうになるが、そのまま乳首を舌先で転がし、吸っては放し、吸っては放しを繰り返すと歩の体から力が抜けていった。
「あんっ、やっ……駄目、はぅっ……恭、あっ……」
 両手で乳房を激しく揉みしだきながら、左右の乳首を交互に口に含んで吸っていく。
「はぅっ、あっ……やんっ……はっ、はぁんっ……」
 いやいやする様に頭を振る姿を興奮した目で見つめながら、恭太はゆっくりと歩の体を押し倒していった。
 横になった事でやりやすくなった乳房への愛撫を繰り返しつつ、のしかかる様にして体を重ね、首筋に舌を這わせる。
「ひゃんっ……駄目、あっ……そんなとこぉ……」
 歩はくすぐったそうに体を震わせ、顔をそむけている。
 可愛らしい耳を甘く噛み、耳の穴に舌を入れて刺激する。
「あっ……やっ……あんっ……」
 歩はピクッ、ピクッ、と体を震わせ、逃げる様にして動いている。
 それを追いかけて耳を舐めた後、再び首筋に舌を這わし、片手で乳房を揉みながら乳首を摘んでクリクリと捻る。
「あんっ、あっ……やぁっ……恭太ぁ、はぅっ……やぁんっ……」
 体を重ねたことで歩がより強く感じられ、その柔らかく熱い肉体に興奮が高まっていく。
 再び乳房に顔を戻し、強く揉みしだきながら乳首を吸い、甘く噛む。
「あっ、ああっ……あんっ、やぁっ……」
 しばらくそうして乳房を愛撫した後、ゆっくり体を起こして歩の姿を見下ろすと、ハァハァと荒い呼吸を繰り返してトロンとした表情を浮かべながら、せつなげにこちらを見上げているのが目に映った。
(何て……何て可愛いんだ……)
 今恭太が見ている歩は信じられないほど可愛らしく、そしていやらしかった。
 微妙に汗をかいた額には髪の毛が数本張り付き、上気した頬はほんのりと赤みをさしており、乱れたブラウスの間からは今まで散々揉み、吸いまくった乳房が見えていた。
 たまらない。
 たまらない状況だった。
 視線を下に向ければ、制服のスカートが乱れており、白い太ももが誘う様にくねっているのが見える。
 その付け根には、まだ恭太の知らない女の花園があるのだ。
(歩……俺に……俺に女を教えてくれ……)
 乳房を見せ、揉ませてくれた歩なら、もっと先に進んでも許してくれるのではないか。
 そんな想いが恭太の頭を占めていた。
 無論、それは確認していない自分勝手な思い込みでしかないのだが、肉欲におかしくなっている恭太にとって当然の考えだったのである。
 ヒラヒラとしたスカートを捲くると、白い太ももと薄緑色の縞々模様のパンティがあらわになった。
 それにゴクリと唾を飲み込んだ後、パンティに手をかけゆっくりと脱がしていく。
「あ……」
 それに気づいたらしい歩が微かな声を上げた。
 だが止めようとしてこない事から自分の行為を容認してくれているのだと判断した恭太は、パンティを引き抜き、その綺麗な脚を持って左右にグイと開いた。
「やっ、駄目……駄目だよぉ……」
 突然歩が力を入れ、脚を閉じようとしてくる。
「いいだろ? 見せてくれよ。俺、見たいんだ」
 歩の顔を見つめながら頼み込む。
「で、でもぉ……恥ずかしいしぃ……」
 握った手を口に当て、頬を赤くしている歩の姿はたまらなく可愛らしかった。
 その事に肉棒がピクンと反応し、絶対に歩を自分の物にしたいという思いが溢れてくる。
「女のここがどうなってるか知りたいんだ。頼むよ、な?」
 興奮に後押しされる形で必死に頼み込むと、歩は困った様に目をそらした。
「……しょうがないなぁ……ちょっとだけ……ちょっとだけだよ……ちょっとだけだからね……?」
 少し黙った後、「ちょっと」を何度も繰り返して見ることを了承してくれる。
「ああ、分かった……」
 口ではそう答えたものの、恭太は絶対に「ちょっと」で済ますつもりはなかった。
 元々「ちょっと」などという定義は人によって差があるのだから、いくらでも誤魔化せるのだ。
 手に力を入れると今度は抵抗なく脚が左右に開かれ、すでに何も隔てる物が無くなった秘所がついに恭太の目の前にさらけだされた。
「あ……」
 恥ずかしげな歩の声と、ゴクリと唾を飲み込む喉の音が恭太の耳に響く。
(これが……女……女なんだ……)
 そこには貝の様な、何やら内臓を思わせる襞があった。
 男と全く違うその箇所に驚きと興味が激しく湧き起こる。
 さらにそれが愛する歩の秘所であると意識すると、見ているだけでは我慢できない衝動が押し寄せてきた。
 目の前の肉も微妙に蠢き、その誘う様な動きに、恭太は自分を抑える事ができず、指を伸ばして秘所を撫でていった。
「やっ……恭太触っちゃ、あんっ……」
 止めてくる言葉を指をクニクニ動かすことで黙らせる。
(ここが、クリトリスか?)
 続けて女が一番感じると言われている部分に触れてみる。
「ああんっ!……そこは、はぅっ……駄目、やっ……」
 歩の体がビクンと跳ねた事に驚きつつ、よほど気持ちがいい場所なのだと理解する。
「ここが、いいのか歩?」
 再び指で撫でる。
「あっ、やっ……違、ああんっ……」
 言葉とは裏腹に、歩は感じているらしい反応を示した。
 それはあまりに可愛らしく、そんな歩をもっと見たくなった恭太は何度もクリトリスを撫でていった。
「あっ、ああっ……やんっ、あっ……やぁんっ……そんな、あんっ……駄目、やっ……はぁんっ……」
 歩は頭を左右に振り、床に爪を立てながら体を激しく震わせている。
 太ももが恭太の体をガッチリ挟みこみ、もっとして欲しいと言わんばかりに引き込んでくる。
(もっとだ……もっと気持ち良くしてやるからな……)
 そう思いつつ顔を秘所に近づけ、クリトリスをペロリと舐め上げる。
「はぅんっ!……あっ、ああんっ……凄、あっ……凄いぃっ……」
 歩はビクっ、ビクっ、と背中を仰け反らせ、近くにあった座布団を強く掴んでいる。
 その反応に気を良くした恭太は、続けて舌をクリトリスに絡ませていった。
「はっぐっ、あっ……やぁんっ……そ、そんな、あっ……そんなのぉっ……あっ、あっ、ああっ……」
 ブルブルと体を震わせた歩は、手を恭太の頭に添えてグイグイ股間に押し付けてくる。
 どうやらかなり気持ちがいいらしい。
 その事を嬉しく思った恭太は、さらに舌の動きに力を入れていった。
「ああっ、あっ……やんっ、やぁっ……いいっ、あっ……いいよぉっ、やぁんっ……」
 自分の行為で気持ち良くよがっている歩を見るのは最高だった。
 そして舌で舐めるだけでここまで乱れる姿に、女の肉体とは何と凄いものなのだろうと恭太は思った。
「あぐっ、あっ、ああんっ……はっ、はぁっ……あんっ、あっ、はぅっ……やっ、やっ、やぁああああああんっ!」
 しばらくクリトリスへの愛撫を繰り返していると、不意に歩が体を硬直させ、ガクリと力を抜いた。
(これが……イったって事なのか?)
 男と違う女の絶頂に感嘆の思いを持つ。
 体を起こして歩を見下ろすと、顔を上気させ、ハァハァと荒い呼吸を繰り返しているのが分かる。
 目はせつなげに潤んでおり、虚ろな視線は激しい色気を感じさせた。
(歩……俺、もうっ……)
 耐えられなかった。
 もう我慢できなかった。
 股間で激しく勃起している肉棒を歩の中に入れたくて仕方が無かった。
(入れるっ……入れるからなっ……)
 心の中で歩にそう告げると、恭太はゆっくりと体を起こしてズボンとパンツを脱いだ。
 痛いほど勃起している肉棒を持ち、そのまま心臓が破裂せんばかりに鼓動しているのを意識しつつ秘所に近づけていく。
「くっ……」
 ツプっといった感じで亀頭の先が膣穴に触れると、たまらない快感が押し寄せてくる。
「あ……」
 歩は微かな声を上げたものの、どうやら意識が朦朧としているらしく、自分がどんな状況に置かれているのか気づかない様で何も言ってこない。
(歩……俺の、俺の童貞もらってくれ……)
 愛する歩に童貞を捧げる事に嬉しさを感じながら、恭太はさらに腰を進めていった。
 ズブリ……ヌプ……。
「あ……ん……」
「うぅっ……」
 歩のボンヤリした吐息と、恭太のうめき声が部屋に響く。
 ゆっくり亀頭が収まっていくと、それに伴ってたまらない快感が背骨を通じて体中に広がっていく。
 恭太は鼻息を荒くしながら、信じられないほど気持ちのいい感触に体を硬直させた。
(凄い……くぅ……これが……これが女の中か……)
 温かくヌメリを感じさせるそこは、肉棒が最も快感を得られる様に作られているのではないかと思わせるほど気持ちが良かった。
 まだ亀頭がハマり込んだだけであると言うのに、とんでもない快楽が体全体を覆っているのだ。
「あ……あれ?……なに……?」
 どうやら気が付いたらしい歩が疑問の声を上げている。
 だがまだ己がどういった状況にあるのかまでは分かっていない様で、ぼんやりとした顔をしてこちらを見つめてきた。
「恭太何して……えっ?」
 違和感を感じたのだろう、視線を股間に向けた歩は、ようやく認識した現状に驚きの声を上げた。
「嫌っ。止めて恭太っ。こんなっ、こんなのは駄目だよぉっ」
 体を離そうともがくが、恭太が肩を押さえたため動けずにいる。
「歩っ……頼む、ヤらせてくれっ……俺、ヤりたいんだっ」
「何言ってるんだよっ。こんな風にするなんて、駄目に決まってるだろぉっ」
 歩が激しく抵抗してくる。
 初めて本気と思われる抵抗にあった恭太は、それに対して理不尽な怒りを感じた。
「だったら何であんな事したんだっ? 胸見せてっ、触らせてっ。そんな事したら止まらなくなるって、お前だって男だったんだから分かるだろっ?」
「そ、それは……あ、駄目、嫌っ……」
 抵抗が緩んだ隙に肉棒をさらに押し込んでいく。
「俺はしたいんだっ……お前としたいんだよぉっ……」
「駄目っ……こんな風に、あっ……駄目だよ、あぅっ……」
 肉棒がズブリと奥へ進むと、歩が苦痛の表情をして体を硬直させた。
「痛っ……いっ……恭太痛い、あぐっ……痛いよぉっ……」
 泣きそうな声を上げながら顔をゆがめている歩の姿に恭太は一瞬怯んだ。
 だがこれは処女ならば当然の反応であり、止める訳にはいかないのだと己を奮い立たせて腰を進めていく。
「いっ……痛いっ……恭太お願い、ぐっ……お願いだから止めてぇっ……」
 痛がる歩を見るのは辛かったが、それ以上に股間から押し寄せてくる快感がたまらず、止める事など考えられなかった。
(凄いっ……こんなの凄すぎるぅっ……最高だよ歩ぅっ……)
 入り込んだ肉棒はヌルリとした温かな肉に包まれ、ギュウッと強く締め上げられている。
 それが今までの人生で経験した事のない気持ちの良さを感じさせ、恭太はそのまま一気に腰を押し進めた。
「痛っ……痛いよぉっ……いっ……」
 歩の苦痛の声に合わせて肉棒が進み、これ以上進めないといった感じで全てが収まる。
 肉棒は温かく湿ったモノに包まれており、そこから発生するたまらない気持ちの良さを感じながら、恭太はゆっくりと息を吐き出した。
 少し落ち着いたため、歩はどうしているのかと見下ろすと、可愛らしい顔を苦痛に歪め、涙を浮かべながらあらぬ方向を見つめているのが目に映った。
 申し訳ない事をしてしまったと思う一方、歩と一つになれた事に対する喜びが押し寄せてくる。
 何しろ歩の初めての男になったのだ。
 自分の肉棒を押し込み、処女を奪ったのである。
 それは何やら歩を自分の物にしたかの様な錯覚を感じさせ、今まで以上に愛情を感じている己を自覚させた。
(そうだ……俺は、俺は歩を愛してる……好きなんだ……大好きなんだ……だからこうして、こうして一つになって当然なんだよ……)
 ドクンドクンと股間から鼓動が聞こえ、今自分が歩と繋がっている実感を持たせる。
(男だったなんて関係ない……今の歩は確かに女……女なんだからな……こうして俺を受け入れる体をした……女なんだっ)
 そう思うと同時に、もっと歩の存在を感じたくなった恭太は、ゆっくり腰を動かし始めた。
「あぐっ……いっ……駄目、ぐっ……恭太止めて、あぐっ……痛いっ……」
 歩が苦痛の声を上げるが、それは恭太の耳に届いていなかった。
 何故なら動き出した事で発生した強烈な快感に頭が朦朧としていたからである。
「あっ、あぐっ……痛っ……いっ……あぅっ……」
 微かに認識できる歩の声は、恭太にとって甘く喘ぐ吐息にしか聞こえず、苦痛に歪む顔も、快楽でそうなっている様に見えていた。
(歩っ……歩ぅっ……気持ちいいぞぉっ……)
 快感に押されるままガシガシガシと激しく腰を叩きつけると、歩の体が上下に動き、豊満な乳房がブルンブルンと揺れて興奮を誘う。
 何より股間からは肉棒が擦れる事で発生する信じられないほど気持ちのいい快感が押し寄せてきており、これほどたまらない快楽は今までの人生で存在しないものだった。
(ああっ……温かいっ……ヌメヌメしてるっ……締め付けてっ……くぅっ……たまらねぇっ……)
 恭太は顔を情けないほど緩ませ、口の端から涎を垂らしながら腰を振りまくった。
「いっ……痛っ……痛いぃっ……恭太、やっ……駄目、あっ……やだよぉっ……」
 歩の苦痛交じりの言葉は快楽の声として耳に響き、恭太の興奮を激しく高めていった。
「あぐっ、あっ……いぅっ……やっ、やぐっ、痛いぃっ……」
 豊満な乳房をギュッと掴み、回す様にして揉みまくる。
 何度触れても、柔らかで弾力のあるその感触はたまらなかった。
「あぐっ、痛っ……恭太、あぅっ……ボク、あっ……ボク痛いよぉっ……」
 歩が何かを訴える様にして見つめてくる。
 そのせつなげな瞳に恭太の我慢は限界に達した。
(くぅっ……出るっ……出ちまうぅっ……)
 このまま続けたいという思いと、いよいよ歩の中に精を放つのだという興奮が交じり合い、腰の動きを早めていく。
「あぅっ、いっ……駄目、あっ……恭太、痛っ……恭太お願い、いぅっ……恭太ぁっ……やぐっ、いっ……痛いっ、痛いよぉっ!」
 歩が激しく体をくねらせた瞬間、膣内がキュウっと締まり、それに耐え切れなくなった恭太は精を放った。
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドク……。
 激しい勢いで精液が歩の中へと放出されていく。
 その事に満足感を持ちながら、押し寄せてくるたまらない快感に恭太は何度も頭を仰け反らせた。
 しばらくして射精を終えるとガックリと力を抜き、歩の上に倒れ込む。
 ハァハァと荒い息を吐きながら、初めて経験したセックスの余韻に浸る。
(歩……)
 目の前に可愛らしい顔があり、上気した頬に涙が流れている様子がいやらしさを感じさせた。
 重ねた体から伝わってくる、すべらかな肌と柔らかく熱い肉の感触が心臓をドクンドクンと鼓動させる。
(しちまった……歩に……俺……歩にしちまった……)
 興奮していた時には気にならなかった「親友と一線を越えた」という事実が恭太の心に重くのしかかってきた。
 最近の自分の歩に対する気持ちを考えれば、いつかはこうなるかも知れないと思う事もあったが、それはきちんと告白をし、デートをしてキスをし、お互いの気持ちが高まった後でする事だった。
 実際そういった妄想をした事もあったのだ。
 ところが現実は違った。
 誘惑されたとはいえ、まだ気持ちを確認し合っていない状態で行為に及んでしまったのである。
 しかも誘惑といってもそれは恭太からの考えであって、歩にはそうした思惑などないだろう。
 何しろ天然能天気な性格だ。
 胸を見せて触らせたのにしたって、ただ女の体を親友に見せて自慢したかっただけに違いない。
 それなのに自分は襲ってしまった。
 男としての欲望を抑えきれず、親友である歩を犯してしまったのだ。
 たった今いやらしく感じた涙も別の意味として理解できてくる。
 泣かせてしまった。
 いつも泣いてる歩を守ってきた自分が、泣かせる側に回ってしまったのだ。
 それはこれまでの二人の関係を壊す、許されざる行為に思えた。
 自分は何と愚かな事をしてしまったのだろう。
(ああ……俺、歩に酷いことを……)
 後悔の念が激しく湧き起こり、怖くて歩の顔が見られない。
「恭太……」
 不意にかけられた声にビクっと体を震わせる。
 目を合わせられず、顔をそむけたままだ。
「どうしたの? 何か凄く辛そうだよ……」
(!……)
 恭太を責めるのではなく、逆に労わっている言葉に驚く。
 てっきり怒り、罵ってくるかと思っていただけに、それはある意味拍子抜けする事だった。
「怒って……ないのか……?」
 恐る恐る尋ねる。
 まだ怖くて目は合わせられない。
「怒るって……何で?」
 明るい声で聞いてくる歩にガックリと力が抜ける。
「何でって……俺は無理やりお前を……親友のお前を襲っちまったじゃねぇか……怒るのが当然だろ?」
「あ、その事かぁ……そうだよね、恭太は無理やりしたんだった。ボクがあれほど駄目って言ったのにさぁ」
「スマンっ……俺は、お前に対して酷いことを……」
「そうだよぉ、エッチする時はもう少し優しくしてくれなきゃ。それなのに恭太ったらすっごく乱暴なんだもん、ボク怖かったんだからね」
 プンスカといった擬音がピッタリの表情をして歩は怒っている。
 だがそれは予想していた怒りとは何やら違っていたため、恭太は訳が分からなかった。
「お前……俺としたのは……別にいいのか……?」
「え? 何で? だって恭太じゃない。恭太ならボク、気にしないよ」
「俺とだったら……気にしない……?」
「うんっ。ボクは恭太のこと好きだし、その恭太がしたいって言うんだから、親友としてはヤらせてあげるのが当然でしょ? まあ、ちょっと強引だったから怖かったけど……」
「……」
 恭太は呆気に取られて何も言う事ができなかった。
 どうやら歩は、親友であればセックスをしても気にしないらしい。
 抵抗したのも強引だった事が理由の様だ。
 だがそんな事がありえるだろうか。
 いや、そもそも「ホモカップル」などと言われても気にしない様な歩だ。
 セックスに対する貞操観念が一般的でない事はありえた。
「じゃ、じゃあ……もう一度したいって言ったら……お前はさせてくれるのか?」
 試しにそんな事を尋ねてみる。
 本気で無ければ否定するはずだろう。
「うん、いいよっ。恭太がしたいんだったらさせてあげるっ」
 だがやはり歩は歩だった。
 まるでゲームソフトを貸す時の様な軽い口調で、抱く事を容認する返事をしてきた。
 その言葉にドクンと心臓が跳ね上がる。
 歩は恭太がしたいと言えばさせてくれるという。
 それはつまり、これからいくらでもセックスができるという意味にならないだろうか。
 その事を意識した途端、射精したため力なく垂れ下がっていた肉棒が一気に勃起した。
 できる。
 歩とできる。
 この可愛らしい顔といやらしい肉体をした歩を好きなだけ抱けるのだ。
 己が望む限り何度でも。
 それは恭太の頭から「親友にそんな事をしてはいけない」という思いを一瞬にして消し去った。
 先ほどまで「酷い事をした」と後悔していた感情も、「歩が気にしていないのだから」という事であっさり雲散霧消した。
 何しろ歩が「していい」と言っているのだ。
 もう何も遠慮する事などないではないか。
 恭太の心は喜びに溢れ、未だ重ねたままの肉体から甘美な女体の感触がジワリジワリと染み入る様にして伝わってきたため肉欲が激しく猛っていく。
 もうこうなっては止まるはずが無かった。
「ほ、ホントにするぞ?……あ、歩……俺、するからな?……ホントにいいんだな?」
「うんっ。でも優しくしてよ? さっきみたいに怖くしたら嫌だからね」
「ああ、優しくする……優しくするさっ」
 恭太はそう叫ぶと歩を抱き締めた。
「あ、ん……ね、どうせなら裸になろうよ。こういう事は裸でするんでしょ? それにこのままだと、ってもうなってるだろうけど、スカート皺になっちゃうからさ」
「そ、そうだな……」
 思いがけない歩の提案に驚きつつも、確かにその通りだと思った恭太は起き上がって服を脱ぎ始めた。
 歩もはだけていたブラウスとスカート、そして靴下を脱いでいる。
 お互い丸裸の状態になると、何故か無言のまま正面から向き合う形でしばらく見詰め合った。
(き、綺麗だ……)
 そこには真っ白な美しい存在があった。
 男時代の歩の裸は何度も見たが、女になって初めて見るその裸体は、これが同じ人物なのかと思わせるほど全く違っていた。
 なだらかな曲線を描く柔らかそうな体。
 程良く付いた肉は実に抱き心地が良さそうであり、何より真っ白な肌はシミ一つ無く、まるで真珠の様に輝いて見える。
「やだなぁ、あんまりジロジロ見ないでよ。恥ずかしいじゃない……」
「い、いや……あんまり綺麗だから……」
「ホント? ボクって綺麗?」
 歩が嬉しそうに尋ねてくる。
 可愛い物好きとしては気になるところなのだろう。
「ああ……とんでもなく綺麗だ……」
「ふふ〜〜ん、嬉しいなぁ。恭太に言ってもらえると自信持っちゃうよ」
 そんな風に楽しそうに笑う歩にゆっくり近づき、包み込む様に抱きしめる。
「あ……」
 すると歩はすぐさま切なげな表情を浮かべ、こちらをジッと見つめてきた。
 その様子に心臓を激しく鼓動させながら、それと共に体中に押し寄せてくる快感に興奮が高まる。
(き、気持ちいい……)
 裸同士で擦れ合う肌は、信じられないほど気持ちが良かった。
 それまでは手のひらでしか感じられなかった歩の肉体が、体全体で把握できるのだ。
 スベスベの肌が擦れ、柔らかな肉が自分の体を受け止めてくれているのが分かる。
(凄い……何て気持ちいいんだ……)
 視覚的にも、真っ白で肉付きのいい体が見えるのは何とも興奮を誘った。
「歩……」
 顎に手をかけ、クイと顔を上げさせて唇を合わせる。
「んっ……んんっ……んふぅ……」
 甘い吐息が漏れるのを聞きながら、そのまま荒々しく唇を擦り合わせつつ歩の体をベッドに押し倒していく。
 のしかかる様にして体を重ねると、それまで以上に歩の肉体が感じられ、体の前面に温かで柔らかな肉の感触が伝わり、その全てを受け止めてくれるかの様な柔らかさに興奮が高まった。
 特に胸で潰れている乳房はそれが強く、あまりの気持ちの良さに肉棒がビクンビクンと震えるほどだ。
 すべらかな肌を擦り合わせるとゾクゾクする様な快感が体を走り抜け、恭太はそれに急かされる様にして舌を強く吸い上げていった。
「んんっ……んっ、んっ……んぁっ……んんっ……」
 顔を左右に入れ替え、唇を激しく擦り合わせながら歩の小さな口を貪っていく。
「んっ、ふっ……んんっ……んっ、んぷはぁ……」
 しばらくして唇を放すと、歩はトロンとした表情をしながら、ハァハァと荒い呼吸を繰り返した。
「ふふ……キス、しちゃったね……」
 虚ろな目でこちらを見つめながら言ってくる歩に、恭太はキスをしたのが初めてだった事に気が付いた。
(ファ、ファーストキスか……歩と……)
 それは歩が男だった頃には想像もできない事だった。
「恭太とファーストキスかぁ……何か面白いよねぇ……前は考えもしなかったよぉ……」
 同じ事を思ったのか、歩が可笑しそうに笑っている。
「嫌だったか……?」
「ううん……嬉しいよ……だって恭太だもん……」
 また心臓が激しく鼓動する。
 歩は何をされようと「恭太だから」と言って喜んでくれる。
 それは自分という存在が歩にとって特別に思え、たまらない嬉しさが込み上げてくる言葉だった。
「あ、歩ぅっ」
 激しく高まった愛おしさに我慢できなくなった恭太は、歩の体を強く抱き締め、体を擦り付ける様に動かしながら首筋に舌を這わせていった。
「あっ、やんっ……もぉ、いきなりぃ、ひゃんっ……駄目そこは、やっ……そこは駄目って、あんっ……」
 耳たぶを甘く噛み、穴の中に舌を押し込むと歩がくすぐったそうに体を震わせた。
 そのまま胸にある白く美しい膨らみをギュッと掴む。
「あんっ……やっ……胸、ああっ……やんっ……」
 ムニムニと揉みしだきながら桜色の乳首を口に含み、勃起している突起を舌先でレロレロと弾いて何度も吸い上げていく。
「あっ、あっ、ああっ……やっ、やっ、やぁんっ……」
 可愛らしく頭を左右に振り、甘い声を漏らすのに興奮を高めながら、手に余る大きさの乳房に指を食い込ませて強く揉むと、歩の顔が快感に歪んで興奮を誘った。
「歩っ……可愛いっ……可愛いぞぉっ……」
 女になってから信じられないほど柔らかくなった肉体をギュッと抱き締め、そのまま歩の体全体にキスの雨を降らせていく。
「やっ、恭太、あんっ……ちょっ、やっ……凄い、あんっ……」
 サラサラの髪を撫でながら額に口付けし、瞼をペロリと舐めた後、可愛らしい鼻と唇に軽く触れ、そのまま首に舌を這わし、小柄な体でありながらどうしてこれほど大きいのかと思える豊満な乳房にむしゃぶり付き、荒々しく揉みしだいていく。
「あんっ、あっ、やぁっ……あんっ……そんな、はぅっ……そんなとこぉっ……」
 真っ白な膨らみの中でそこだけ桜色をした乳首を唇に含み、自己主張するかの様に勃起している突起を舌で捻る様にして弄ぶと、続けてなだらかな腹を唾液で覆っていくかの様に舐め上げる。
「はぐっ、はっ……やぁんっ……駄目、あぅっ……駄目だよそんな、ああんっ……」
 スラリと美しい脚を持ち上げると、弾力の良い太ももの全てを舐め尽すかの様に裏側にも舌を這わし、そのまま指先までチュパチュパと吸い付いていく。
「やっ、はぅんっ……そんな、あっ……そんなにぃっ……やっ、やぁんっ……」
 グイと両脚を開くと、ほんのりと陰毛の生えた秘所が丸見えとなり、すでに愛液にまみれているピンク色の襞が目に映った。
(綺麗だ……)
 先ほどは初めてという事もあって落ち付いて見れなかったが、今こうして目の前にある秘所、歩が女となった証しである襞を見ていると、獣欲と共に美しい芸術を見たかの様な興奮が押し寄せてくる。
「あんまり見ちゃやだよぉ……はずかしぃ……」
 握った手を口元に当てながら、困った様な表情をしている歩はたまらなく可愛らしかった。
「恥ずかしがることなんてない……凄く綺麗だぞ……」
「それでも恥ずかしいんだもぉん……あっ、やだ、あんっ……舐めちゃ、はぅんっ……」
 舌を押し付けてベロベロ舐めまくると、歩がビクンビクンと体を震わせた。
「もうっ、いきなり、あっ……駄目って、やぁんっ……」
「でも気持ちいいだろ?」
「そ、それはそう……だけど、あっ……でもいきなりは、やぁっ……」
 少し怒った様にしながらも、甘い声を上げつつ快感に関して認めているのがとても可愛らしい。
「俺は歩に気持ち良くなって欲しいんだ……ここなんか、どうだ?」
 女の肉棒とも言えるクリトリスを舌先で軽く突付き、ベロリと覆う様にして舐め上げる。
「ひゃぅんっ! やっ、やんっ……そこ、あっ……そこぉっ……」
 歩の体が跳ね上がり、ピクンピクンと体を震わせている。
「ここが……どうなんだ……?」
 さらに刺激を与えるべくチュパチュパと吸い上げる。
「やぁんっ、はっ、はふぅっ……そこ駄目、あんっ……そこ駄目だよぉ、あっ……そこ駄目なのぉっ……」
 しかしその言葉とは裏腹に、歩の手は恭太の頭に置かれ、グイグイと股間に押し付ける様にして動いている。
 その事を嬉しく思った恭太はさらに舌の動きを激しくしていった。
「あんっ、あっ……やぁっ……凄、あっ……凄いぃっ……あんっ、やっ……はぁんっ……」
 歩はブルブルと体を震わせ、頭を左右に激しく振って悶えている。
「あっ、んっ……やぅっ……あっ、あっ……はぁああああああああんっ!」
 ビクビクビクっと体が跳ねたかと思うと、ガクリと力が抜けた。
 どうやらイったらしい。
 そのままハァハァと荒い呼吸を繰り返しながら、トロンとした瞳でこちらを見つめてくる。
「気持ち良かったか? 歩……」
 尋ねると、歩はゆっくりと頷いて微笑んでいる。
「じゃあ、次は俺のを入れるからな……また痛いかも知れないけど我慢してくれ……」
 一応申し訳なさを感じつつも、再びあの気持ちの良さを味わえるのかと思うとすぐにでも入れたくなってくる。
 これまで散々歩の可愛らしい悶えを見せられたせいか、肉棒は痛いほどに勃起し、先漏れの液がダラダラと垂れていた。
 膝立ちになり、ゆっくりと肉棒を膣に押し込んでいく。
「あっ……」
「くぅっ……」
 ズブっといった感じで亀頭の先が膣穴に収まると、歩がピクっと体を震わせ、股間からたまらない快感が押し寄せてきた。
(うぅ……やっぱたまらねぇ……歩のここは、最高だぁ……)
 頭を仰け反らせながらズブリズブリと肉棒をさらに押し込んでいく。
「あっ……はっ……やっ……」
 歩が微妙に逃げる様にして体を上方へ動かすが、それをグイと押さえて一気に肉棒を収めてしまう。
 フゥっと息を吐き出しながら、肉棒に絡みついてくるヌメヌメとした感触に震えるほどの快感を得る。
「歩……痛いか?」
「ううん……痛くないよ……さっきと違って……何か……変な感じ……」
 ボンヤリとした笑顔を浮かべながら、歩はこちらを見つめている。
 潤んだ瞳が実に可愛らしくもいやらしく、その様子に我慢できなくなった恭太は腰を動かし出した。
「あっ、あっ、ああっ……あんっ、あんっ、ああんっ……」
 明らかに快感を感じていると思える声を上げて歩は悶えている。
 どうやら二回目にして痛みは無くなった様だ。
「あっ、はっ、あんっ……何これ? あっ……こんな、やっ……」
 初めての肉棒による快感に困惑しているのだろう、歩はどうしていいのか分からない様な表情をしている。
「やんっ、はぅっ、やぁっ……恭太、あっ……恭太凄い、あんっ……恭太何か凄いよぉっ……」
 歩は頭を左右に振り、甘い声を上げながら悶えた。
「歩っ……気持ちいいかっ?……どうなんだっ?」
「あんっ、あっ……いいよ、あぅっ……いいっ……あっ、ああんっ……気持ち、あっ……いいっ……」
 その言葉に恭太の心臓は激しく鼓動した。
 歩が気持ち良くなっている。
 自分が押し込んでいる肉棒とその腰の動きにより、愛しい歩が「気持ちいい」と言っているのだ。
 それは恭太にとってたまらなく嬉しい事だった。
「あぐっ、あっ……あんっ、あっ……恭太、やっ……それ、あっ……それぇっ……」
 さらに腰を捻る様にして動かすと、すがりついてくるかの様に手を伸ばしてくるのがたまらない。
「歩ぅっ……」
 腰を小刻みに振りながら、上半身を倒して唇に吸い付いていく。
 すると待っていましたとばかりにか細い腕が背中に絡み、ギュッとしがみ付いてきた。
 その自分を頼り、逃がすまいとしてくるかの様な歩の態度は、恭太の自尊心を満足させ、強烈な庇護欲を呼び起こした。
 このか弱くて可愛くて気持ちのいい存在を他の誰にも渡すものか。
 歩は自分だけのもの。
 この愛らしい微笑みと、泣きそうな困った顔を向けられるのは自分だけ。
 柔らかくスベスベとした体を舐めまくり、吸い付くし、肉棒を押し込んで喘がせていいのは自分だけなのだ。
「んぅっ……んっ……んんぅっ……んっ……んんっ!」
 そんな思いに興奮を高めながら、口内で絡む小さな舌を思いっきり吸い上げ、体全体を擦り付ける様にして強く抱き締めていく。
「んっ……んんっ……んぷはぁ……ああ……恭太ぁ……」
 しばらくして唇を放すと、歩は上気した顔をボンヤリとさせながら潤んだ瞳で見つめてきた。
 その自分を信頼しきっている表情に、恭太はたまらなく嬉しくなった。
「歩っ……歩ぅっ……」
 腰を激しく動かし、それまで以上に早く強く肉棒を出し入れしていく。
「あんっ、あんっ、ああんっ……あっ、あっ、ああっ……恭太凄い、あぅっ……恭太凄いよぉっ……やっ、やっ、やぁんっ……」
 荒々しい突き込みに歩の体が上下に激しく揺れ、豊満な乳房がブルンブルンと動くのが興奮を誘う。
「あぐっ、あっ、あやぁっ……恭太、はぅ……恭太、はっ、はぅっ……はぁんっ……」
 肉付きのいい脚が腰に絡み付き、しっかりと固定される。
 背中に何度も爪が立てられ痛みが走るが、それが気にならないほどの快楽が体中に溢れていた。
「ああんっ、あっ、恭太ぁっ……あっ、恭太抱いて、あんっ……ボクを、ああっ……ボクを強く、あぐっ……ボクを強く抱き締めてぇっ……あっ、あんっ、ああっ……」
 快楽に涙を流しながら訴えてくる歩を、言われたとおり強く抱き締める。
「そう、あぅっ……そうだよ、ああっ……ずっとそうしてて、あんっ……そしてくれないと、あっ……ボクっ、ボクぅっ……あっ、あんっ……どっかに、あぅっ……どっかに飛んでっちゃうぅっ……」
 ギュウッと抱き締められ、体全体でしがみ付かれる。
 その瞬間膣内が強く収縮し、襞がヌリュヌリュといった感じで肉棒に絡みついてきた。
「くっ……歩っ……うぅっ……俺っ……俺イくぞっ……イくからなぁっ……」
 それに耐え切れず、射精しようと腰の動きを早めていく。
「あっ、あっ、ああんっ……それ、あっ……それ凄い、あぅっ……そんなにしたらぁっ……あんっ、あんっ、ああっ……駄目、あぅっ……駄目飛んじゃう、あっ……ボク飛んじゃうよ、飛んじゃうぅっ……飛んじゃうのぉっ……やっ、やっ、やぁあああああああああああんっ!」
「歩ぅっ!」
 ドピュドピュドクドクドクドク……。
 二人の絶叫が部屋に響き渡ると同時に精が放たれた。
 股間から凄まじい勢いで押し寄せてくる快感に、恭太は頭を仰け反らせ、ガシガシガシと何度も腰を振っていった。
「あ……ああ……あ……」
 そのたびに精液が放出され、それを感じているらしい歩の口からか細い声が漏れる。
「歩……くぅ……歩ぅ……」
 数度精を放った後、ゆっくりと力を抜いて歩の上に倒れ込む。
 温かく柔らかな肉が受け止め、その心地良さにうっとりとなりながら荒い呼吸を繰り返していく。
 隣に歩の可愛らしい顔があり、その満足げな表情に恭太は嬉しさが込み上げてきた。
(俺が……俺が歩をここまで気持ち良くさせたんだ……)
 男として女を絶頂に導けた事に幸福感を得る。
 相手が最愛の存在だとすればなおさらだ。
「恭太……」
 歩が嬉しそうに微笑みを浮かべて見つめてくる。
「気持ち良かったか……?」
「うん、こんなの初めて……凄いよ……あんまり気持ち良くて……ボク、飛んじゃった……」
 えへっ、と笑いながら呟いている。
 最後の方で「飛ぶ」と叫んでいたが、あれは恐らく絶頂に至ることを言っていたのだろう。
「そうか……飛んだか……」
「うん……そんでね……えっと……」
 そこまで言うと歩は黙った。
「どうしたんだ……何だよ?」
「うん……ちょっと言いたい事があるんだけど……恥ずかしくて……いつもは平気なのに……何か変だねボク……」
 えへへっ、と笑いながら困った様に視線をあちこちにさまよわせている。
「俺達の間で今更恥ずかしいもないだろう? 何でも知ってるし、何でも言い合ってきた仲じゃないか」
 男時代は当然、そして今はもう肉体関係にまで至っているのだ。
 その二人の間で恥ずかしい事などあるはずもなかった。
(そうだよ……俺は……歩を抱いたんだ……)
 親友だった歩を女として意識し、その柔らかな肉を貪り、己の怒張を可憐な秘所に押し込んだのである。
 もう恭太にとって歩は女だった。
 自分が守り、愛していきたい存在だった。
「あの……あのね……ボク……恭太の事が……凄く……すごぉく好きなんだ……今までも好きだったけど……それよりも、もっとすごぉく好きなのぉっ!」
 そう叫ぶとギュッと抱き付いてくる。
「お、おい……」
「こうしてないとっ……こうしてくっついてないとっ……駄目なんだっ、駄目なんだよっ……もう気持ちが抑えられなくてっ……ああっ、もうっ、恭太好きぃっ……大好きぃっ……ボク恭太が大好きだよぉっ!」
 歩はまるで猫がそうする様に頬を擦り付けて甘えてくる。
 その上目遣いで見つめてくる仕草は、あまりに切なげでたまらなく可愛らしく、恭太の落ち着きを奪っていくのに十分すぎる効果があった。
「俺だって……俺だって歩が好きだぞっ……俺もこうしてたいっ……ずっとこうしてたいよっ……」
 強く抱き締め返し、愛らしい唇に吸い付いていく。
「んんっ、んっ……んふぅっ……」
 互いの舌が絡み合い、口内が激しく刺激されていくのをしばらく楽しんだ後、ゆっくりと唇を放し、少し惚けた歩の顔を愛おしく見つめる。
(ああ、可愛いなぁ……何て可愛いんだろぉ……)
 何度見ても変わらない歩の可愛らしさに心臓が激しく鼓動する。
 首の辺りまでで短く切りそろえられたサラサラの髪。
 セックスの余韻で上気した頬と潤んだ瞳。
 白い顔の中で唯一桜色をした小さな唇。
 それら全てが恭太の心臓を鷲掴みする様な刺激を与えてくるのだ。
 視線を下に向ければ、美しく柔らかな肉の膨らみが横たわっていても見事な山の曲線を描いており、その頂点ではピンク色をした乳首が微妙に勃起して誘う様に揺れている。
(歩……何ていい女なんだ……)
 再びその柔らかな肉体を舐め回したい欲求が押し寄せ、力を失っていた肉棒が硬く大きくなっていくのが分かる。
「ふふ……恭太のオチンチン、おっきくなってる……またしたいの?」
 肉棒は痛いほど勃起し、歩の中に再び入りたいと訴えている。
「ああ……歩の体は気持ちいいからな……俺は何度でもしたくなるんだ……」
「ボクも……ボクも恭太の体、気持ちいいよ……ね、もっとしよう。たくさんしよぉ……今日は二人きりなんだし、何度もしようよっ」
 歩の言葉に嬉しくなってくる。
 どうやらセックスの快楽に目覚めたのは恭太だけではなかった様だ。
「そうだな……歩がそう言うのなら、俺は何度でもするよ」
「やったぁっ。だから恭太って大好きぃっ」
 歩が嬉しそうに叫びながら頬にキスしてくる。
 その事にくすぐったい様な喜びを感じながら起き上がった恭太は、その美しくも可愛らしい幼馴染の肉体を見つめ、この様な相手とセックスをし、また愛されている自分は何と幸せなのだろうと思いつつ肉棒を押し込んでいった。
「あぅんっ……恭太ぁ、大好きだよぉっ……」
「うぅっ……歩っ、大好きだぁっ……」
 幼馴染であり親友であった二人は今や男と女の関係となり、強く抱き締め合いながら熱い口付けをかわし、激しく腰を動かしていくのだった。












あとがき

 久々のTSモノです。
 とはいえ今回は主人公が女になるのではなく、幼馴染が女になるというものでした。
 見せ方的にも男時代を描かず、性格も女っぽくしたのでTSが好きでない人にも嫌悪感なく読めたと思うのですがいかがだったでしょう。

 この作品を書こうと思ったきっかけは、あるアニメ作品です。
 設定が「男が女になる」ってものだったんですけど、見せ方としてそれを全然生かしてない感じだったんですよね。
 普通は精神的な面で女になってしまった主人公の苦悩とかが描かれそうなんですけど、その作品では全くそういうのが無かったんですな。
 言われなければ元男だというのが分からないほど完全に女の子していたのです。
 その状態でエッチな事に関してだけは、「元男ゆえの無防備さ」が描かれていて、そこが非常に興奮させられるものだったんですよね。
 何しろ胸を安易に見せようとしてましたからねぇ。
 そういった無防備な感じが私的にツボだったんですな。

 それで自分でも書いてみようと思い、今回の作品となった訳です。
 名前も似た感じにして、喋り方とかも真似たので、アニメ好きの人はキャラの顔や体、声をイメージして読んでいただけると、あの作品で欲求不満になった分を解消できるのではないかと思います(笑)
 何しろ寸止めですからね、アニメは……。
 それに男が主人公じゃないし……。
 そこら辺の不満を自分で解消してみた訳です。

 でも書き始めてみるとこれが結構面倒。
 最初はすぐベッドシーンになる様に書いたのですが、それだと面白くないんですよ。
 やはりアニメで散々寸止めを味合わされたせいか、そういった要素を入れないとキャラに入り込めないというか。
 寸止めは何回か入れようという事にして、用具片付けと下校の部分を書いた次第です。
 寸止めって欲求不満になるんですけど、逆にその分興奮も高かったりするんですよね。
 やはり脳内での妄想が激しくなるからでしょうな。
 エロ漫画よりもメジャー雑誌に載っている寸止め漫画の方が興奮したりするのもそのせいではないかと思っておりますです。
(2006.4.30)



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