霊媒師の姉弟


 翔真(しょうま)は悔やんでいた。
 姉の仕事の手伝いをした際に、ちょっとした失敗をしてしまったからだ。
 翔真は霊媒師の卵であり、修行の一環として、すでに霊媒師である姉の手伝いをしていたのだが、そこで初歩的な失敗をしてしまったのである。
 それは素人では分からない程度のものであったため、依頼人に関しては大丈夫だろうが、姉には確実に気づかれているため辛かった。
 優れた姉からすれば、この様な失敗など許せるモノではないだろう。
 翔真の家は先祖代々霊媒を生業としている家系であり、多くの優れた霊媒師を輩出していた。
 両親もかなり高名な霊媒師で、その二人の子供という事から、翔真も幼い頃から期待されていた。
 しかし実際は期待されているほどの能力は発揮出来ず、十七歳になる現在も並以下の能力しかなかった。
 両親も姉も自分の歳の頃にはすでに一流と呼ばれていたにも関わらず、自分は何と情けないことだろう。
 その事がここ最近の翔真の悩みであり、今回の失敗も、己の未熟ゆえに起きた事であったため、凄く落ち込んでしまっていたのだ。
「またあんたは一人で暗くなってっ」
 不意に声をかけられため、体をビクッと震わせる。
 声のした方を見ると、そこには姉が立っていた。
 霊媒師の仕事着である白衣と袴に身を包み、長い髪を揺らしながら、腰に手を当ててこちらを睨んでいる。
 厳しい表情を浮かべている点からして、あの失敗を怒っているのは明らかだろう。
「ご、ご免なさい。姉さま……」
 怒られる前に謝ってしまおうと頭を下げる。
「何について謝っているのかしら? もし今日しでかしたちょっとした失敗の事だったら怒るわよっ」
「え?……その、ご免なさい……」
 あの失敗について怒っているのではないとしたら何だろう。
 益々姉を怒らせてしまった事に翔真は暗くなった。
「ったく、ホント何度言ってもあんたは理解しないんだからっ。いつも言っているでしょう? 未熟な内はあれくらいの失敗は誰だってするんだって。それよりもその事にグジグジする方が駄目なのっ。」
「ご、ご免なさい……」
「ほら、また暗くなるっ。しゃきっとしなさいっ」
「わ、分かりましたっ」
 慌てて背筋を伸ばす。
 こうして姉に叱責を受けると辛かったが、同時に嬉しくもあった。
 翔真にとって姉は憧れの存在であるため、こうして構ってもらえるのが嬉しかったのだ。
「分かれば宜しい。それじゃ今後は少しくらいの失敗で落ち込まないようにするのよ? いいわね?」
「は、はい」
「うん、じゃあもっと頑張って修行すること。翔真はやれば出来るんだから。あんたに足りないのは自信なの」
 そう言いながら優しく頭を撫でてくるのに嬉しくなる。
 姉は厳しい時は厳しいが、優しい時はとことん優しいのだ。
「ん? ちょっとあんた、また背が伸びたんじゃない?」
「え……?」
 不意に変わった話題にギクリとなる。
 姉はことさら身長の話題に敏感だったからだ。
 何しろ二十四歳であるのに十歳は若く見える容姿であり、身長もかなり低い事から十代前半の少女にしか見えず、そのせいで初見の人には霊媒師に見られない事が多くあったため、その事を凄く気にしていたのである。
 今回も本来見習いでしかない翔真の方が霊媒師に見られ、姉が見習いと思われたので酷く敏感になっていたのだ。
「……ちょっと立ってみなさい」
「は、はい……」
 姉のこわばった表情に慌てて立ち上がる。
 姉はそのまま正面に立ってジッとこちらを見つめると、手を水平に伸ばして腹の辺りに指先を当ててきた。
「この間はヘソからこのくらいだった……でも今日は……」
 ブツブツ何か言っていたかと思うと急に静かになり、少しすると体をブルブル震わせ始めた。
「ま、まあ、いいわ。あんたも成長期だしね。日々成長するのよ成長を……私だってまだまだこれから……きっと必ず確実に大きく大きくなってやるんだから……」
 頬をひくつかせながら呟く姉の姿は、先ほどよりよほど恐ろしかった。
(別に背が高くなくても可愛いからいいと思うんだけどな。胸だって凄く大きいし、女性として誇っていいと思うんだけど……)
 姉は整った顔立ちをしており、まさに美少女といった言葉が似合った。
 胸もかなり大きく、それだけで十分に自慢出来る事だろう。
 翔真にとって姉は相当に魅力的であったため、身長など無くても良い、というか、逆に無い方が可愛らしくて良いと思っているくらいだったのだ。
「あんた今、『背なんか無くてもいいだろう』とか思ったでしょっ?」
「う……」
 まさにその通りだったため、思わず呻いてしまう。
「やっぱり……」
「いや、だって背なんか低くたって十分可愛、美人だと思うし、お客さんだって喜んでるじゃないか」
「私は母さまみたいな凛々しい霊媒師になりたいのっ。可愛いんじゃ駄目なのよっ。いくらお客さんが喜んでくれても、私が満足出来ないんだから意味がないのっ。分かるっ?」
「わ、分かってるよ。もう何十回も聞かされてるんだから……」
「だったら同じ事を言わせないでよっ。背はあった方が断然いいんだからねっ」
 小さな体を大きく動かしプンスカ怒っている姉を見ていると、何とも可愛く思えてしまう。
 低い背丈に可愛らしい顔、そしてそれに不釣り合いな豊満な体。
 姉はまさに翔真の理想だった。
 こうしていても思わず抱き締めて頭を撫で撫でしたくなるほどだ。
 だが実際そのような事をしたら鉄拳制裁が待っているため、する事は出来ないのだが。
「もういいわっ。私は温泉に入ってくるっ。気分を切り替えるのよっ」
 今回の仕事は温泉街に近かったため、泊まっているのは温泉宿だった。
 支払いは依頼人持ちであったため、その事を姉は喜んでいたのだ。
「あんたも入りなさい。せっかくタダで入れるんだし。そうすれば気分もスッキリするわよ」
「うん、そうする……」
 腕をブンブン振り回しながら部屋を出て行く姉を見送りながら、きっと自分は温泉に入ったら余計に落ち込むに違いないと翔真は思った。
 何故ならいつもそうだからだ。
 前向きな姉は温泉に入ると気分転換が出来るのかも知れないが、自分は失敗を思い出すため暗くなってしまうのである。
(でもせめて、姉さまが帰ってくるまでには意識を変えておかないとな)
 姉が温泉から戻った時に暗いままでいては、また怒られてしまう。
 無理かも知れないが、取り合えず頑張ろうと翔真は思うのだった。


 温泉に浸かると、何とも言えない気持ちの良さが体を包み込んだ。
 確かに姉であれば、これで気分転換が出来るに違いない。
 姉は目の前の出来事に集中し、楽しめる性格だったからだ。
 余計な事を考えず、自分のやるべき事に集中出来るその性格を、翔真は羨ましいと思っていた。
 そんな姉とは逆に、余計な事ばかり考え、自分のやるべき事に集中出来ないでいる翔真は、温泉をあまり楽しめないでいた。
 確かに気持ち良くはあるが、頭の中では失敗した事がずっと渦巻いていたからである。
(気にしちゃ駄目っ)
 姉の叱咤が聞こえたような気がして思わず苦笑する。
 自分は本当に姉に依存してしまっていると思ったのだ。
 幼い頃から姉に駄目な部分を叱ってもらい、それで何とか頑張ってこれた。
 このまま大人になったとして、自分は姉無しでやっていけるのだろうかと不安に思う。
 姉は可愛くて霊媒師としての能力も一流であったため、多くの男から結婚を望まれるだろう。
 そうなった時、自分はどうすればいいのか。
 そもそも姉が結婚するという事自体が嫌だった。
 自分の面倒を常に見てくれている姉が誰かのモノになる。
 そんな事は凄く嫌だったのだ。
(翔真……)
 脳内に優しく微笑む姉の姿が浮かぶ。
 それは極上の笑みであり、その顔を見ているだけで翔真は幸せだった。
 というより、姉の顔であればどんな表情であっても好きだったのだが。
(ずっと姉さまと一緒に居られたらいいのに……)
 あの可愛らしくて優しい姉と二人で暮らしていけたらどれほど素晴らしいだろう。
 毎日怒られてもいいからそうしたい。
 翔真は最近そんな事ばかり思うようになっていた。
(姉さま……)
 ボンヤリと姉の姿を思い浮かべながら温泉に浸かっていると、不意に何やらモヤモヤとした感覚が湧き起こってきた。
 股間がどうにも落ち着かず、見ると一物が硬く大きくなっている。
 少し痛みを感じるくらい硬く勃起しており、触れてみると強い刺激を感じたため、かなり敏感になっているのが分かった。
 興奮が高まり始め、無性に自慰がしたくなってくる。
(参ったなぁ。何か治まらないよ……取り合えずしちゃおうか……)
 このような場所で自慰がしたくなるとは困った事だったが、この状態で部屋へ戻っても落ち着かないだろう。
 何より敏感な姉に感づかれ、からかわれるに違いなかった。
(でもそれはそれでいいかもね。それで姉さまが僕のをしごいてくれてさ……って、何考えてるんだろ……でもまあ、いいか……)
 自分の変な発想に驚きつつ、しかしすぐにそのまま妄想してしまってもいいかとも思う。
 姉を自慰のネタに使うなど今まで考えた事すら無かったが、自分にとって姉は理想の女性であるのだから別にいいではないかと思ったのだ。
(姉さまの、胸……)
 姉の大きな胸を想像すると、肉棒に起きる快感が強まった。
 あの柔らかそうな膨らみを好きに揉みしだいたら、どれほど気持ちがいいだろう。
 着物の合わせから手を差し入れて、直接ムニュムニュ揉むのだ。
 きっとかなり気持ちがいいに違いない。
(その時姉さまは……可愛らしく喘ぐんだろうなぁ……)
 頬を赤くし、甘い吐息を漏らす姉を想像するとたまらない快感が走り抜けた。
(それとも、「馬鹿、全然駄目よ。もっと気持ち良くさせなさい」とか怒られちゃったりして……)
 それはそれで嬉しいと思いつつ、高まっていく快感にうっとりとした表情を浮かべる。
(そのまま姉さまを押し倒して、体中を舐め回して……それで、それで……入れちゃうんだ……)
 呼吸が乱れ、肉棒が最高潮に気持ち良くなる。
 脳内では裸になった姉の姿と、それにのし掛かって肉棒を押し込む自分の姿が浮かんでいた。
 腰を動かすたびに姉が顔を快楽で歪ませ、可愛らしい喘ぎと、叱る言葉を発している姿が浮かぶ。
(姉さま……あぁ、姉さまぁっ……)
 肉棒をしごく手の動きが激しくなり、もう我慢できないと思った瞬間、強い快感が起きると共に精液が迸った。
 ハァハァと荒い呼吸をしつつ、満足の笑みを浮かべる。
 これまで自慰は多くしてきたが、今日ほど気持ちいいのは無かった。
 姉をネタにしたのが良かったのだろう。
(! って、僕は何てことを……)
 そこまで考えて、自分がした事に唖然とする。
 実の姉を自慰のオカズにするなど異常ではないか。
 いくら大好きだからといっても姉は姉、性的な対象にして良い相手ではなかった。
 だがそう思っている間も、脳内では姉のあられもない姿が浮かび、肉棒は再び硬く大きくなっていた。
 そうなってしまうと先ほどの射精の快感が思い出され、つい肉棒を掴んでしごき出してしまう。
(もっとしてぇ……翔真、もっとするのよ……)
 脳内に姉の誘う声が響き、激しく肉棒を擦ってしまう。
 意識せずとも姉のいやらしい姿が次々に浮かび、射精せずにはいられない状態になった。
(もう一回だけ……もう一回だけなら……)
 姉をネタに自慰をする。 
 その本来許されない行為は、許されないがゆえに興奮を誘った。
 憧れの、神聖な姉を自慰で汚す事に歪んだ悦びを覚えたのだ。
(ああっ、姉さまっ、姉さまぁっ……)
 翔真は背徳的な悦びに鼻息を荒くしながら、押し寄せてくる快感に夢中になっていくのだった。


 部屋へ入ると、姉が先に戻っていた。
 それも当然だろう、翔真はあれから何度も自慰をしていたのだから。
 もしそれがバレたら恥ずかしすぎるどころの騒ぎではなかったため、出来るだけ姉と視線を合わせないようにしながら、すでに敷かれていた布団の上に座ると、幸いな事に姉は窓の外を眺めていてこちらを見ていなかった。
(それにしても……姉さま色っぽいなぁ……)
 風呂上がりのせいか、やたらと色気が感じられた。
 いや、風呂上がりの姿など何度も見てきているのだから、これは自分が先ほどまでいやらしい妄想をしていたためだろう。
 その事を思い出すと後悔の念が起きた。
 実際に姉が目の前に居る事で、とんでもない事をしてしまったという想いが強まったのだ。
(僕は、姉さまを汚してしまった……)
 自分は何と下劣な事をしてしまったのだろう。
 いくら興奮したからといって、姉をネタに自慰をするなどおかしすぎた。
 自分は異常者に違いない。
(姉さまを……姉さまをオカズに……僕は……)
 姉の後ろ姿を見つめていると、後悔の念が強まっていく。
 汚れのない姉の体を使って汚れた行為をしてしまったのだ。
 この柔らかそうな体に触り、色々する妄想をして自慰をしたのだ。
 浴衣の上から見ても大きいこの胸を、自分は想像の中で揉みしだいたのだ。
 そのまま可愛らしく喘ぐ姉にのし掛かり、最後は肉棒を押し込んで……。
(って、何を考えてるんだ僕はっ……)
 反省しているはずが、いつの間にか姉の体をジッと見つめながら、いやらしい妄想をしてしまっている事に気づいて慌てる。
 鼻息が荒くなり、肉棒が硬く勃起しており、気づくのがもう少し遅ければ、きっと自慰を始めていたに違いない。
(妄想ならまだしも、現実の姉さまに向かって僕はっ……)
 許されない行為をしかけた自分に激しい怒りが湧き起こり、翔真は強く手を握り締めた。
「翔真……どうしたの?」
 不意に姉が声をかけてきたため、ビクッと体を震わせてしまう。
 とてもではないが顔を合わせられなかった。
「ふふ、また何か思い詰めてるのね。まったくしょうがない子なんだから」
(?……)
 いつもと異なり、楽しそうに笑いながら優しげな口調で告げてきた姉を不審に思う。
 いつもの姉なら、こういう場合は怒るはずだったからだ。
 怒りはしなくても、もっとキツい感じで言ってくるだろう。
 それが何故か優しい口調であったため気になったのである。
「姉さま? どうかしたの?」
 その事に驚いた翔真が恥ずかしさを忘れて顔を見ると、姉は穏やかに微笑みながらこちらを見つめていた。
 瞳が潤み、頬がほんのりと上気しているのが色っぽく、浴衣も微妙に着崩れていて、微かに白い膨らみが見えるのが興奮を誘う。
 何やら普段は意識しない女の部分を姉に感じ、さらには先ほどの妄想のせいもあって、股間の一物がビクンっと反応を示した。
 いつもしっかりとしている姉がこの様な姿を見せるのは初めてであったため、一体どうしてしまったのかと翔真は心配になった。
「どうもしないわよぉ……ただ翔真の事を考えてただけ……」
「ぼ、僕のこと?」
「うん……翔真がぁ、もっと自信を持てるようになる方法をねぇ……」
 姉はとろんっとした表情をしながらそう答えると、立ち上がってゆっくり近づいてきた。
 何やら妖しげな雰囲気を放ちながらフラフラと歩いている姉は、強烈な色香を放っていて思わず唾を飲み込んでしまう。
 特に着崩れた浴衣から覗く肩と胸元の白さが眩しく、肉棒が痛いほどに硬くなった。
 いつもと違う姉、まるで先ほどの妄想のように色っぽい姉の姿に、翔真は一体これはどういう事なのかと不安になった。
 だがそれと同時に抑えきれないほどの興奮が湧き起こっており、何かきっかけさえあれば姉を押し倒してしまいそうだった。
「お姉ちゃんはねぇ……翔真のことが、とぉ〜〜っても大切なのぉ……だからぁ、翔真が自信を持って、一人前の霊媒師になれるようにぃ、いい〜〜ことしてあげるからねぇ……」
 瞳を潤ませ、色っぽい笑みを浮かべながら隣に腰掛けた姉に、翔真の頭はおかしくなりそうだった。
 これはどう考えてもいやらしい行為を、妄想でしていたような行為をしようとしているとしか思えなかったからだ。
「ふふ、翔真ぁ……可愛いぃ……」
「!……」
 姉の両腕が首に回り、抱き付かれる。
 その瞬間、柔らかな感触が体中に広がって一瞬頭が真っ白になった。
 気持ちのいい、柔らかな肉の感触に意識が朦朧としていく。
「ふふ、翔真はぁ、こういうの、好きぃ?」
 姉はそう言いながら膝立ちになると、浴衣をはだけて豊満な乳房を顔に押しつけてきた。
 大きな双乳の柔らかな感触が顔中に広がり、スベスベの肌と温かい肉に包まれる。
(ね、姉さま一体何を?……でも気持ちいぃ……)
 姉の行動を不審に思いつつも、押し寄せてくる快感に翔真は身を委ねた。
 どうしてこの様な事になっているのか分からなかったが、今はとにかくこの気持ちの良さを味わうべきだと思ったからだ。
「うふふ、気持ちいいでしょう?」
 そのまま姉は、胡座をかいた翔真の膝の上に跨るようにすると、脚を腰に絡ませながら、正面同士で向き合う形に座ってきた。
 股間の一物が姉の尻と擦れ、震える快感を呼び起こす。
 それは蕩けるような感触であり、これまで以上に肉棒が硬く大きくなっていった。
「ね、姉さまぁっ……」
 もう我慢できなくなった翔真は、姉の体を抱き締めると、肉棒を擦りつけるように動かした。
(はぅっ……)
 すると姉の肉の柔らかさが強く伝わり、自慰では味わえないその感触にうっとりとなる。
 己の手のひらと違い、姉の肉の何と気持ちのいいことか。
「あんっ……こら、もぉ、焦っちゃ駄目よ……心配しなくてもぉ、お姉ちゃんは逃げないからぁ……翔真がたっぷり楽しめるようにぃ、ゆっくり色々してあげるからねぇ……」
 姉はそう囁くと、翔真の顎を持って顔を近づけてきた。
 瞼が閉じられ、姉の桜色の唇が翔真の唇と重なっていく。
(姉さま……)
 産まれて始めて経験する口づけの感触に、翔真はうっとりとなった。
 自分は今、憧れの姉と唇を重ねているのだと思うと、強烈な喜びと満足感が湧き起こる。
 少しすると姉の舌が入り込んできて、こちらの舌を吸い、口内をチロチロと舐めてきたため、それによって起きる快感に体が震えた。
 口づけがこれほどいやらしく、気持ちのいい行為だとは思ってもみなかった。
「んっ……んんっ……んふぅ……」
 顔を左右に入れ替え、激しく唇を擦られ、舌を絡ませられるのに頭が朦朧としてくる。
 さらには口づけを繰り返しながら姉がギュッとしがみついてくるのが気持ち良く、そうされるたびに豊満な乳房が押しつけられ、柔らかく潰れるその感触に興奮が高まっていった。
「姉さま、僕、僕ぅ……」
 我慢が出来なくなり、姉を押し倒そうと体重を前にかける。
「ふふ、まだよぉ。まだお預けぇ……」
 しかし姉はそれをかわすと、布団の上に腰を下ろした。
 てっきりもう許してくれるだろうと思っていた翔真はガッカリしながら、どうしてここまでして駄目なのかと姉を恨みがましく見つめた。
「もう、そんな目をしちゃってぇ。さっきも言ったでしょう? 焦っちゃ駄目ぇ。ゆっくり色々してあげるんだからぁ……まずは、ね?……お姉ちゃんが優しくしてあげるから……」
 そう囁くと、姉は翔真の浴衣に手をかけて前を開き、下着を外した。
 痛いほどに勃起した肉棒が現れ、ビクンビクンと震えている。
「ふふ、元気ねぇ……じゃあ、まずは口でしてあげるねぇ……」
 言うなり姉は、股間に顔を寄せると桜色の唇を大きく開き、肉棒を口に含んだ。
「うぅっ……」
 肉棒が温かで湿ったモノに包み込まれ、その蕩けそうな感触にうっとりとなる。
 そのまま姉の舌が亀頭に絡みつき、優しく舐めてくるのにたまらない快感が走り抜ける。
(あぁ……何て気持ちいいんだろぉ……)
 信じられない気持ちの良さ。
 何より憧れの姉が肉棒を舐めてくれているという事実が、翔真にとって最高の状況だった。
 見下ろせば、姉が長い髪を煩わしげにかき上げながら、肉棒を熱心に舐めてくれているのが見える。
(ぼ、僕のチンチンを、姉さまが……姉さまがぁ……)
 もうその事だけで射精しそうだった。
 だが出来るだけこの状況を長引かせたかった翔真は、必死になって耐えた。
 何しろ我慢すればするだけ姉が肉棒を舐めてくれるのだ。
 これほど幸せな事はなかった。
「んぐっ、んっ……どう? 気持ちいい? んぐっ、んっ……」
 姉が一瞬口を離してそう告げてきたのが強烈な刺激になった。
 とろんっとした表情で微笑みながら、上目遣いにこちらを見つめてきたのだ。
 乱れた浴衣の間から豊かな胸の膨らみも見えたため、その強烈な情景に、翔真の耐久力は一瞬にして消え去った。
「うっ、ね、姉さ、うぁっ……!」
 ドピュッドピュッ、ドクドクドクドクドクドク……。
 強烈な快感と共に精液が迸り、翔真はそのたまらない気持ちの良さに頬をだらしなく緩めた。
 姉は一瞬顔を歪めた後、それをゴクゴクと飲んでいっている。
 姉が自分の精液を飲んでくれていると思うと快感が増し、肉棒が激しく猛った。
 何度も何度も射精を繰り返した後、しばらくして精を放ち終えると、力を抜いて布団に手を付き、ハァハァと荒い呼吸をしながら今得た快感を反芻する。
(姉さまが……姉さまが僕のチンチンを舐めてくれて……僕の精液を……)
 夢ではないかと思える事が実現し、翔真は嬉しくてたまらなかった。
 何しろ自分の肉棒を舐めたのは憧れの姉なのだ。
 可愛い姉が、自分を凄く気持ち良くしてくれたのである。
 まさに最高の気分というのはこうした状態を言うのだろう。
 だがそうした想いがある一方で、「とんでも無い事をしてしまった」という想いも起きてきていた。
 射精した事で、性欲でおかしくなっていた頭に冷静さが蘇ったためか、自分達がしたのが、実の姉弟がする行為ではないことが強く意識されたのだ。
 夢中になってしてしまったとはいえ、良くない行為をした事には違いないのである。
 そう考えると恐ろしくなってきた。
 自分は姉と、してはならない行為をしてしまったのだ。
 何という事だろう。
(でも、どうして姉さまは……)
 そう考えると、姉の様子がおかしい事が改めて感じられた。
 普段の姉ならば決してしない事を、何故急にしてきたのか……。
 しかもあの色っぽさと淫らな誘惑は、いつもの姉とは違い過ぎており、冷静に考えてみれば異常だった。
 まるで何かに取り憑かれているみたいではないか……。
(!……)
 そこまで考えた瞬間、背筋に冷たいものが走り抜けた。
 それはこれまで何度か経験した事のある、霊媒師であれば馴染みのある感覚だった。
(霊……これは霊だ……)
 姉の体から、突然霊の気配が感じられたのだ。
 しかも邪な意志を感じさせる悪霊の気配である。
 これほど身近に居て今まで気づけなかった事に己の不甲斐なさを覚える。
 常日頃から霊の探知については修行を積んでいるというのに、今の今まで存在にすら気づけなかったとは……。
(でも……どうして姉さまが……)
 優れた霊媒師である姉が、悪霊に取り憑かれるなど信じられなかった。
 だが何度気配を探ってみても、悪霊が存在するのは姉の体からであり、取り憑かれているのは明らかだった。
(なら、早く祓わないと……)
 霊媒師の卵としては当然の判断だったが、果たして自分に祓う事が出来るだろうか。
 今まで除霊の手伝いは何度もしてきたが、自分が主体となって行った事は一度もないのだ。
 しかも今は誰も頼る事が出来ない状況だ。
 父も母も姉も、普段であれば導いてくれる存在が居ないのである。
 何より取り憑かれているのは常人ではない。
 本来悪霊に取り憑かれる事など無いはずの、霊媒師である姉なのだ。
 そんな姉に取り憑いた悪霊ともなれば、かなり強い悪霊であり、自分の手におえるとはとても思えなかった。
(くっ……姉さま、僕はどうしたら……)
 頼るべき姉は色っぽい視線をこちらに向け、とろんとした表情をしている。
 その様子に股間の一物が再び勃起し、姉の柔らかな肉体を抱き締め、押し倒し、肉棒で貫きたいという欲求が激しく湧き起こった。
 姉の体からは普段の清廉な「気」と異なる、重くて暗い淫猥な「気」が発せられており、死の汚れを伴ったそれは、部屋に満ちあふれ、翔真の周囲にも漂っていた。
 その淫猥な「気」が強まると肉棒がさらに硬くなり、姉の体に対する欲求も強まっていく。
 おそらくこの「気」が、翔真の性欲を異常に高めている原因に違いなかった。
(うぅ……このままじゃ……)
 姉を押し倒すのは時間の問題だろう。
 何しろすでに姉弟としての禁忌を破っているのだ。
 それ以上の行為をしないでいる事に耐えられる自信は無かったのである。 
 だがそんな事をしたら悪霊の思う壺だった。
 こうした性的な悪霊の目的は、取り憑いた人間とその相手をした人間を性欲に狂わせ、その結果として何かを得ようとする事だった。
 具体的な目的は悪霊それぞれ違っていたが、性欲に狂わされた者の末路は共通していた。
 抱いた者も抱かれた者も、汚れた「気」に染まることで正常な判断が出来なくなり、狂ってしまうのである。
 最悪の場合、死に至る事もあった。
 実際翔真はそういった人間を何人か知っていた。
 彼らは皆、異性と見れば襲いかかる状態になり、錯乱して涎を垂らし、見るに忍びない姿となって最後には死んでしまうのだ。
 このままだと、自分達もそういった者達の仲間入りをする事になるだろう。
 それだけは避けたかった。
「どうしたのぉ? 何か気になる事でもあるのかなぁ?」
 とろんっとした表情で姉、いや悪霊が問いかけてくる。
 今までそうした雰囲気は興奮を呼び起こすものだったが、今は恐怖を感じさせるものに変わっていた。
 何しろ先ほどのように快楽に流されれば、その結末は悲惨な状態に繋がっているからだ。
「ね、続きしよぉ? お姉ちゃん、翔真ともぉっと気持ち良くなりたいのぉ……」
(!……)
 その言葉を聞いた瞬間、肉棒がビクンっと大きく蠢いた。
 姉を抱いてはいけないと分かっていても、体は快楽に反応してしまっているのだ。
 いや、いけないと分かっているからこそ、余計に反応してしまったのだろう。
 体は知っているのだ。
 実の姉の体を抱く事が、許されない体を抱く事が、たまらなく心地良いのだという事を……。
 先ほど味わった姉の口の感触が、それを確信させてしまったのである。
 姉の、許されない相手である姉の舌で舐められ、姉の口に射精した瞬間の快楽。
 それは信じられないほどの気持ちの良さだった。
 それをもう一度味わいたい。
 あれよりもっと気持ちのいい事をしたい。
 姉の体を貪り、好き放題にしてみたい。
 肉棒を押し込んで思い切り射精してみたい。
 そういった想いが強まり、抑えられない興奮が湧き起こってくる。
 肉欲が激しく高まり、姉を女として意識し、無茶苦茶にしたくなる衝動が押し寄せてくる。
(僕は……もう……)
 股間から押し寄せる肉欲に対する欲求、頭の中で渦巻く姉の痴態。
 手のひら、そして体に残る姉の肌、肉の感触が翔真の我慢を限界まで追い詰めていた。
「翔真ぁ……お姉ちゃんといいことしよぉ? お姉ちゃん、翔真のこと愛してるんだからぁ……」
「!……」
 その言葉が全てだった。
 姉に「愛している」と言われた事で、翔真の理性は一瞬にして消え去った。
 愛する姉と交わる。
 それが出来れば後はどうなってもいいではないか。
 知った事ではない。
 それより姉を抱けない方が悲しいのだ。
「姉さまぁっ!」
 大きく叫ぶことで己の中の躊躇、理性を振り切り、翔真は姉に抱き付くと、その柔らかな体を布団の上に押し倒した。
「あんっ……こらもぉ。焦っちゃ駄目って、やんっ……翔真、あっ……駄目って、やぁっ……」
 姉の制止は耳に入らなかった。
 憧れの姉をついに抱けるのだと思えば、焦らないなど無理な話だったからだ。
「姉さまっ、姉さまぁっ……」
 浴衣の前を開き、豊かな双乳を顕わにする。
 その白い膨らみは何とも美しく、翔真は初めてまともに見る乳房に激しく興奮した。
 小さな体に不似合いな豊かな膨らみは、頂点に桜色をした突起があり、何とも美しく、そしていやらしかった。
 震える両手で掴むと、その瞬間むにゅりとした感触が手のひらに溢れ、それだけで肉棒が勢い良く震えた。
(何て……何て気持ちいいんだ……)
 とんでもなく心地良いその感触に、何度も何度も乳房を揉みしだいていく。
 手を動かすたびに形を変え、力を抜くと元に戻るその物体は、激しい興奮を呼び起こした。
「あっ……んっ……あぁっ……いいよ、翔真いぃ……」
 さらに自分のした行為に姉が反応を示し、褒めてくるのに嬉しさが起きる。
 もっと姉を気持ち良くさせたい。
 肉欲に加え、そうした姉への想いが乳房に対する愛撫を加熱させた。
「あんっ、あっ……やぁっ……はぅっ……」
 体が小さいのに、どうして乳房はこれほど大きいのだろう。
 そんな事を思いながら、むにゅむにゅと蠢く肉の塊に激しい興奮を覚えつつ、その頂点で震える桜色の突起に吸い付いていく。
「やぁんっ、あっ……いいよ、あんっ……吸って、あっ……もっと吸ってぇっ……」
 頭を左右に振り、泣きそうな顔をして悶える姉の姿に嬉しさが湧き起こる。
 今自分は姉を喜ばせている、気持ち良くさせられているのだ。
 ならばもっと激しく、凄く、姉を悦ばせたい。
 そう思った翔真は、下半身に移動すると滑らかな太ももに触れ、そのスベスベとした感触を気持ち良く感じつつ、勢い良くむしゃぶりついていった。
「あんっ……あっ……あぁっ……」
 何ヶ所かに吸い付いては放し、舌を這わせていく。
 肉付きのいい太ももは、吸い付いていると何ともたまらない良さがあった。
 姉の体はどこを舐めても吸っても気持ちいいのだ。
 そのまま左右の脚を一本ずつ舐め回し、根本から足先まで唾液で塗装するかのように舌を這わせていく。
「あっ、はぁっ……あっ……」
 そのたびに漏れ聞こえる姉の吐息が心臓を激しく鼓動させ、翔真は夢中になって姉の体を舐め回していった。
 しばらくそうして姉の体を味わった後、いよいよとばかりに股間に顔を近づけていく。
 両脚をグイと開き、見つめたその場所は、まるで貝のような印象があり、見るからにいやらしかった。
 可愛らしい姉に不似合いだと思いつつも、逆に不似合いだからこその淫靡さを覚える。
 何より見ているだけで、そこが凄く気持ちのいい場所だというのが分かり、早く肉棒を入れたくてたまらなくなった。
 呼吸が今まで以上に乱れ、鼻息が荒くなっていく。
「いいわよ入れて……入っておいで、翔真……」
 優しくそう囁かれた瞬間、体が硬直した。
 ついに入れる、姉の中に肉棒を入れるのだ。
 それは待ち望んでいた事ではあったが、同時に何か恐ろしさを感じさせるものでもあった。
 ここに肉棒を入れれば、自分は一線を越える事になるからだ。
 悪霊の思惑に乗るという恐怖もあったが、何より実の姉と繋がり合い、性の快楽を与え合う事に強烈な禁忌の想いを抱いたのである。
 それは本来許されない事であり、周囲に知られればどうなるか分からなかった。
 何より今の姉は悪霊に取り憑かれているのであり、自分の意志で抱かれている訳ではないというのが大きかった。
 そんな姉と交わってしまって本当にいいのか?
 姉を悲しませる事にならないか?
 それが翔真にとって最も重要な事だった。
「ほら、おいで……お姉ちゃんの中に……」
 だがそんな想いも、姉のいやらしい誘いに消えて無くなった。
 たとえ姉が悪霊に取り憑かれていて、自分と交わる事が悪霊の企みだったとしても、そんな事はどうでも良いではないか。
 今は姉を、愛する姉を抱ける事だけが全てだ。
 他の事など知らなかった。
「ここだよ……さ、入れてごらん……」
 姉の手が肉棒を掴み、優しく秘所へと誘う。
 翔真は心臓を激しく鼓動させながら、促されるまま腰を近づけていった。
 亀頭の先が膣穴に触れ、そのままズブリと入り込んでいく。
「うっ……」
 その瞬間、強い刺激が走り抜け、強烈な快感に頬が緩んだ。
 何という気持ちの良さだろう。
 先ほど姉に舐めてもらった時も良かったが、それとは異なるたまらない気持ちの良さがそこにはあった。
 これが女の中なのだ。
「あん……そう、入れて……お姉ちゃんの中に、ん……奥まで、あぁっ……」
 姉の潤んだ瞳に見つめられ、導かれながら、翔真は肉棒を押し込んでいった。
 そのたびに亀頭が温かで湿った肉と擦れ、たまらない快感が走り抜ける。
(全部……入った……)
 もうこれ以上進めない所まで入れると、大きく息を吐き出す。
 ドクンドクンと心臓の音が激しく聞こえ、肉棒が温かな肉に包まれているのに心地良さを覚える。
「ふふ、お姉ちゃんの中、翔真で一杯……おっきいね、硬いよ、翔真のオチンチン。素敵……」
 うっとりとした瞳で見つめられ、そう囁かれた瞬間、荒々しい衝動が湧き起こった。
「ね、姉さまっ……」
 腰を無茶苦茶に動かし、肉棒を激しく出し入れさせ始める。
 するとたまらない快感が走り抜け、翔真は夢中になって腰を振っていった。
「あっ、あっ、ああっ……翔真、あんっ……翔真いきなり激し、あっ……翔真激しいよ、ああんっ……」
 姉が嬉しそうな笑みを浮かべ、甘い吐息を漏らす。
 腰の動きに合わせて小さな軽い体が揺れ動き、その様子に自分が姉を支配している感覚を覚えて嬉しくなった。
(姉さまって……こんなに小さかったんだ……)
 今までも小さいと思ってはいたが、こうして肉棒で貫いていると、こちらの動きに逆らえず振り回されている姉の体が、さらに小さく感じられた。
(でも、胸はおっきい……)
 体がより小さく感じられたせいか胸の大きさが際立ち、肉棒を突き込むたびに前後左右に揺れ動くその様は、翔真の中の獣欲を激しく刺激した。
 両手で乳房をギュッと掴み、荒々しく揉みしだいていく。
「あんっ、あっ、ああっ……翔真、あんっ……胸をそんな、あぁっ……やっ、やぁっ……」
 姉は頭を激しく振り、長い髪を乱しながら喘ぎまくった。
 その様子は完全に自分が姉を支配している様に感じられ、翔真の中に大きな喜びを生んだ。
「姉さまっ……気持ち、気持ちいいよぉっ……姉さまの中、気持ち良すぎるぅっ……」
 涙を流しながらそう訴え、滅茶苦茶に腰を動かしていく。
 何しろそうしさえすれば、強烈な気持ちの良さが湧き起こってくるのだ。
「やっ、やんっ……いいよ翔真、あっ……そう、そうやって、あぁっ……もっと強く、あんっ……お姉ちゃんを突いてぇっ……」
 自分の動きが姉を悦ばせている。
 それは翔真にとって嬉しすぎることだった。
 日頃あまり褒められる事のない自分が、今は姉に褒められているのだ。
 こんなに嬉しい事はなかった。
「ああっ、あんっ……やっ、やっ、やぁっ……翔真上手、あぁっ……翔真上手だよぉ、ああんっ……初めてなのに、あんっ……お姉ちゃんをこんなに、あっ……こんなに感じさせて、あっ……凄い、凄いよぉっ……」
 涙を流して褒め称えてくる姉の姿に、喜びが最高潮に達し、それと共に射精感も限界まで高まっていく。
「姉さまっ……僕、もう出ちゃうっ、出ちゃうよぉっ……」
「あっ、あんっ……いいわよ、あっ……出して、あんっ……出すの、ああっ……お姉ちゃんの中に、あぅっ……思い切り出してぇっ……」
 姉は両腕両脚を絡みつかせ、逃がすまいという感じでしがみついてきた。
 その事はさらなる喜びを生み、翔真は一気に射精しようと激しく腰を振っていった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……いいっ、いいっ、いいよぉっ……翔真っ、翔真っ、翔真ぁっ……やっ、やっ、やぁあああああああああっ!」
「姉さまぁっ!」
 ドピュドピュドピュっ、ドクドクドクドクドク……。
 信じられない気持ちの良さを感じながら翔真は精を放った。
 肉棒がビクンビクンと蠢き、そのたびに精液が放出されていく。
 たまらない快感に頭を朦朧とさせながら、今自分は姉の中に精液を注ぎ込んでいるのだと認識して激しい喜びに包まれる。
 微かな喘ぎを漏らしながら体を震わせている姉の顔は可愛らしくもいやらしく、翔真はその様子を見ながら何度も射精を繰り返していった。
 しばらくして満足な想いに浸りながら最後の射精を終えると、ゆっくり倒れ込み、荒い呼吸をしながら快感の余韻に浸る。
(気持ち、良かった……でも……とんでもない事、しちゃった……)
 徐々に冷静になってくると、己のした行為をまともに判断出来るようになり、その恐ろしさに体が震えてくる。
 何しろ悪霊の求めに応じ、姉を抱いてしまったのだ。
 このままでは悲惨な末路が待っているのは確実だろう。
 脳内では、以前見たことのある性欲に取り憑かれた者達の姿が浮かんでいた。
 正気を失い、だらしなく涎を垂らし、異性を求めて暴れる姿だ。
 自分もその仲間入りをするのかも知れないと思うと、激しい恐怖が湧き起こった。
 それを防ぐためには、もうこれ以上姉を抱く訳にはいかなかった。
 早く姉の体から離れた方が良いだろう。
 何故ならこうしてくっついたままでは、すぐにでも再び抱きたくなってしまうからだ。
「うっ……」
 だがそう思った瞬間、不意に肉棒を掴まれたため体が硬直した。
「駄目だぞ、他のこと考えてちゃ。今はお姉ちゃんの事だけを考えなさい。お姉ちゃんと一緒に気持ち良くなる事だけを、ね?」
 姉が首に腕を絡ませ、うっとりとした表情で顔を近づけてくる。
「お姉ちゃんはぁ、翔真のことが大好きなんだからぁ……」
(!……)
 悪霊が言わせているのだと思っても、あまりに嬉しすぎるその言葉に何も考えられなくなる。
 心の中で「もう一度。もう一度だけだから……」といった想いが生まれ、引き寄せられるまま自ら唇を重ねてしまう。
「んっ、んんっ……んふぅ……んっ、んぁっ……ふぁ……」
 姉の頭を抱えるように持ち、唇を荒々しく擦りつけ、口内に入れた舌で姉の舌を吸っては舐め回していく。
 そうしている間も姉の体がピッタリとくっつき、生の肌と肌が擦れ合い、柔らかな肉の感触に肉棒があっという間に硬く大きくなった。
「んんっ、んっ……んぅっ、んふぅっ……ふふ、もう大きくなった……じゃあ、続きをしよ?」
 潤んだ瞳で見つめられ、それに逆らう事が出来ず、いや、自ら望んで頷き、姉の体にのし掛かっていく。
「さあ、おいで……お姉ちゃんの中に……」
 両腕を開いて促す姉に頷きつつ、肉棒を押し込むと、蕩けるような快感が走り抜けた。
「ね、姉さまぁ……」
 翔真は情けない声を上げながら、頭の片隅で己と姉の末路に恐怖を覚えつつも、それ以上に魅惑的な姉の体に夢中になっていくのだった。


 目が覚めると朝だった。
 あれから何度も姉と交わり、快楽を与え合った。
 何とも素晴らしい経験であり、翔真にとって忘れられないひとときだった。
 だがそれは、悲惨な末路へ進んでしまった証でもあったため、恐ろしさを感じずにはいられない事でもあった。
(! 姉さまっ。姉さまは大丈夫なのかっ?)
 そこまで考え、ふと姉の姿が部屋に無いことに気づいた翔真は、激しく動揺した。
 昨日の交わりの回数の多さを考えれば、すでに姉が異常をきたしていてもおかしくなかったからだ。
 自分はまだ大丈夫だとはいえ、こういった場合は取り憑かれている人間の方がより早く狂い出すのである。
(まさか、どこかで……)
 死んでいるのではと一瞬思いつつ、その言葉を心の中で思う事すら恐ろしく感じる。
 急いで探そうと起き上がろうとして、体がだるい事に驚く。
 一瞬、悪霊に何かされたのかと思ったが、一晩中姉の体を貪っていたのだから疲れていても当然だった。
 そう考えれば単純な体の疲れだと思えたが、そうは言っても悪霊に何かされた可能性もあるため恐怖を感じずにはいられなかった。
(姉さま……)
 ますます姉の事が心配になった翔真は、だるい体を無理矢理起こすと、姉を捜すため部屋から飛び出そうとした。
「!……」
 その瞬間、不意に襖が開き、目の前に姉が立っていたため驚く。
「あ、起きたのね。じゃ、朝食を食べて帰りましょう」
 姉は普段と変わらない様子でそう告げると、部屋へ入ってくる。
 そのあまりにいつも通りの様子に、悪霊の影響を心配していた翔真は、拍子抜けしながら姉を見つめ続けた。
「ほら、何やってるの。ぼさっとしてないで早く着替えるっ」
「は、はいっ……」
 これまたいつも通りに叱られたため、その事に慌てながら荷物の所へ行き、着替えを始める。
 そして注意深く「気」を探ってみると、姉の体から悪霊の気配が見事なまでに消えている事が分かったため驚いた。
 これは一体どういう事だろう。
 まさか悪霊はすでに姉から離れたのだろうか。
 そう思えない事も無かったが、昨晩の悪霊の雰囲気からすると、もっと狡猾で何か企みを抱いているように思えたため、この程度で離れてしまうのは何となく不自然な感じがした。
 だが実際に消えている以上、翔真の思い過ごしだったという事なのかも知れない。
 何しろ自分はまだまだ未熟なのだ。
 推測が外れてもおかしくないのである。
「ほら、何ボケっとしてるのっ。さっさと着替えるっ。いくら旅先だからって寝坊するなんて気が緩んでいる証拠よっ。もっとしっかりしなさいっ」
「す、すみません」
 いつもの叱責に応えつつ、その様子から姉が昨晩の事を覚えていない事が分かった。
 姉の性格からして、覚えていたら激しく怒り、翔真が悪霊の言いなりになった事を叱ってくるはずだからだ。
 何より自身が悪霊に取り憑かれたなど許せる事ではないはずだった。
 しかしそうした様子を見せない事からすると、姉は全く覚えていないという事になった。
 その事にホッとしつつも、どこか残念に思っている自分に気づいて慌てる。
 自分は姉に覚えていて欲しかったのだろうか。
 覚えられていたら嫌われるかも知れないというのに、何を考えているのだろう。
「今日はいい天気ねぇ……」
 動揺している翔真と異なり、姉は陽気に鼻歌を歌っていた。
 いつも明るく前向きではあったが、それにしても今日はやたらと機嫌が良すぎるように思えた。
 何故これほど上機嫌なのだろう。
 昨晩までは姉が喜ぶような出来事は特に無かったはず、どころか見習いに間違われた事や背丈の事で機嫌は悪いはずだった。
 温泉に入った事で機嫌が直ったにせよ、ここまで上機嫌になるとは思えなかった。
 朝起きてから何かいい事でもあったのだろうか。
「あの、姉さま」
「ん? なぁに?」
「凄く楽しげですけど、何かいいことでもあったんですか?」
「え?……いえ、その……別に何でもないわよ……いいことなんて、何も……そういう事は特に無いから……気にしないで……別にいいでしょそんなのっ」
 姉は一瞬驚いた顔をすると、しどろもどろになりながら呟き、最後は怒ったようにしてそっぽを向いた。
 最後はいかにも姉らしかったが、その前は何とも姉らしくなかった。
 しかも普段ならそのまま怒り出しそうなところなのに、すぐさま上機嫌になって鼻歌を再開しているのが気になった。
(どうしちゃったんだろ姉さま。やっぱり悪霊が何かしてるんじゃ……ん……?)
 心配して姉の様子を盗み見ていると、姉が時折こちらに視線を向け、嬉しそうに笑っているのに気づいた。
 一体どうしてしまったのか。
 この妙な上機嫌さはやはり悪霊が何かしたのだろうか。
 笑っている姉は可愛くて良かったが、理由が分からないと心配になってしまう。
 とはいえ、笑いかけられること自体は嬉しかったため、翔真は複雑な気分になりながら姉の身を案じるのだった。


「翔真っ、翔真いいよぉ、あっ、あぁっ……」
 四つんばいになった姉が振り返り、嬉しそうに喘いでいる。
 翔真は姉の細い腰を持って背後から肉棒で貫き、激しく出し入れしていた。
(僕は……弱い人間だ……)
 股間から押し寄せてくる快感にうっとりしつつ、また姉を抱いている事に嬉しさと悲しさを覚える。
 あの日、家へ帰って夜になると、姉が部屋へ忍んできた。
 前の晩と同じく、いやらしい雰囲気になりながら翔真を誘ってきたのだ。
 どうやら悪霊は姉から離れていなかったようで、気配を探ると存在していた。
 昼間は全く気配を感じさせなかったのだから、何と狡猾な悪霊だろう。
 それとも自分が未熟なせいだろうか。
 何にせよ、このまま悪霊の言いなりに姉を抱き続けては、自分達はどうにかなってしまう。
 姉と交わらせる事にどんな狙いがあるのか分からなかったが、悪霊のする事であるのだから従わない方が良いに違いない。
 しかしそうは思っても、姉の誘惑に逆らえないのだから情けなかった。
 一度知ってしまった姉の肉体の味、姉の乱れる姿、姉の甘い吐息が、翔真の体を縛っていたのだ。
 いくら「いけない」と思っても、姉に甘く優しく誘われると激しい肉欲が湧き起こり、気がつけば抱いてしまっているのである。
 そうして一旦抱いてしまうと、後は朝になるまで姉の体を貪り続けた。
 まるで姉を抱かなければ死んでしまうような感覚になり、狂ったように求めてしまうのだ。
 そんな状況がすでに数日続いていた。
 姉は相変わらず夜の記憶が無いようで、昼間それとなく尋ねても、訳が分からないと言って怒られる始末だった。
 嘘を付いているとも思えなかったため、それは本当なのだろう。
 記憶の無い姉に言っても信じてもらえそうもなく、かといって自分だけでは解決出来なかったため、翔真は両親に相談しようと思ったが、二人とも仕事で遠出をしていて留守だった。
 何より説明するとなれば、自分がした事も話さなければならないため、たとえ家に居たとしても相談出来るかは微妙であったのだが。
 本来ならば自分だけが何とか出来る立場なのだから、霊媒師として姉を助けなければならないだろう。
 しかし未熟な自分は、姉の誘惑をはね除ける事が出来ず、進んで抱いてしまう始末だ。
 毎日「明日祓えばいい」と自分に言い訳し、ズルズルと日々を過ごしてしまっていたのである。
 何より実際に祓うにせよ、昼間は全く気配を感じさせないほど狡猾な悪霊に、自分程度の霊媒師の卵が太刀打ちできるのか不安だった。
「あっ、あっ、ああっ……いいよ、あんっ……翔真いいっ……」
 そんな事を考えながら腰を叩き付けると、姉の小さな体が揺れ動き、その様子を見ていると、姉を支配している様に思えて最高だった。
 こうして快楽を貪っていると、「別にこのままでもいいじゃないか。何も困ったことは起きていないのだし」といった想いが湧き起こる。
 実際心配していた狂う状態に関しても、全くと言っていいほど兆候がなく、このまま抱き続けても平気なのではないかと思えていた。
 無論、突然おかしくなる可能性もあったが、その程度の心配では姉を抱くのを止める事は出来なかったのだ。
 この素晴らしい姉を独り占めにし、好き放題に貪れる気持ちの良さ。
 それはこれまでの人生で経験した事のない最高の状況であり、兆候の存在しない狂う可能性程度では止められなかったのである。
 それに「もしこのまま姉と狂うのなら、狂ってしまっても構わない」といった想いも起きていたりしたのである。
 いや、実際もう狂っているのかも知れなかった。
 何故なら自分は、姉を抱かずにはいられないほどになっていたからだ。
「あんっ、あっ、ああんっ……やっ、ちょっ、あんっ……そんなに、やぁっ……」
 興奮が高まったため、強く肉棒を叩き付けると、姉が困ったようにしながら甘く喘いだ。
 小さな体に不似合いな豊満な乳房を背後から両手で掴み、揉みしだくと、何とも言えない充実感が湧き起こる。
「やんっ、やぁっ……やっ、やっ、はふぅっ……駄目、駄目よぉ、あぁっ……」
 肉棒を小刻みに出し入れし、続けて大きく突き込むと、姉は両腕を崩して布団に上半身を押しつける体勢になった。
 それは自分の与える快楽が強い事を実感させ、もっともっと姉を喘がせたくなってくる。
「凄い、あっ……凄いよぉっ……やんっ、やんっ、やぁんっ……翔真の凄い、あぁっ……おっきい、あんっ……硬いのぉっ……」
 布団を掴んで引き寄せ、涙を流しながら悶える姉の姿に、肉棒が歓喜の悲鳴をあげる。
 何よりこうして褒められるのがたまらなかった。
 普段ほとんど褒められないため、こうして何度も褒められるのが嬉しくてたまらなかったのだ。
 それがこの行為を止められない理由の一つでもあった。
「あっ、あぅっ、あぁんっ……翔真のオチンチ、あっ……お姉ちゃんの中、あぁっ……いっぱい、あっ……奥まで、はぅっ……翔真ので、やっ、やぁんっ……」
 姉のいやらしい喘ぎと共に膣内もキュウキュウと締まり上がり、翔真は己の限界が近いのを感じた。
「姉さまっ、僕っ……僕もうっ……」
「いいわよ、あっ……出して、あんっ……翔真の沢山、あぅっ……翔真の精液、あぁっ……お姉ちゃんの中に出してぇっ……」
 その言葉に心臓が跳ねる。
 自分の精液を姉の中に注ぎ込む。
 それは何度経験しても慣れる事のない喜びだった。
 もしかしたら妊娠させるかも知れない。
 その想いが恐怖と共にゾクリとした快感を感じさせ、姉との交わりに夢中にさせたのだ。
(僕の……僕の子を姉さまが……)
 そう思うと肉棒が猛り、姉を抱かずには居られなくなってしまうのである。
 妊娠させてはいけない、でもさせてみたい。
 その相反する想いから起きる快楽が、翔真を狂わせていたのだった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……もうわたし、あっ……わたしイく、あぁっ……翔真、あんっ……お姉ちゃんイく、あっ……イっちゃうっ……やっ、やっ、やぁあああああああっ!」
「姉さまぁっ!」
 ドピュドピュっ、ドクドクドクドクドク……。
 姉が頭を仰け反らせ、絶叫するのと同時に翔真も精を放った。
 激しい勢いで迸る精液を感じながら、たまらない満足感に浸る。
 射精するたびに押し寄せてくる快感は極上で、何度経験しても喜びに震えてしまうほどだ。
「あ……あぁ……」
 姉は布団を握り締めたまま小さな吐息を漏らしつつ、快感に体を震わせている。
 その様子に、姉を自分の物にしている実感を感じながら射精を終えた翔真は、柔らかな体の上にゆっくり身を横たえた。
 ハァハァといった二人の呼吸が部屋に響く。
(明日……父さま達が帰ってくる……)
 快楽にぼやける頭の中で、そんな事が浮かんだ。
 ここ数日ずっと留守にしていた両親は、明日帰ってくる予定だった。
 そうなったら姉とのこの関係も終わるのだろう。
 何故なら両親が悪霊の存在を許す訳がないからだ。
 ゆえに明日にでも悪霊は祓われるはずだった。
 だがそうなると、自分と姉との関係も両親に知られる事になった。
 何故なら取り憑かれていた時にどういう状態であったのかを聞かれるのは確実であり、その際に姉との関係を隠し通せる自信は無かったからである。
 自分は霊媒師として悪霊の言いなりとなり、姉弟として禁じられた肉体関係を結んでしまった。
 その事を両親がどれほど悲しむか想像出来なかった。
 悪霊に取り憑かれた姉はともかく、単に悪霊の誘惑に抗えなかった自分を両親はどう思うだろう。
 翔真はその事が気になって仕方がなかった。
(どうせなら、父さま達が悪霊に気づかなければいいのに……)
 もし気づかなければ、このままずっと姉を抱けるのだ。
 その様な事を思うなど、自分はやはりおかしくなっているのかも知れない。
 実際毎日姉を抱くことしか考えられなくなっているし、姉の中に精を放ち、姉との間に子をもうけたいとまで思っているのだ。
 何より自分が抱いているのは、姉であって姉ではない、悪霊だった。
 そんな相手を抱き続けたいと思うなど、どう考えてもおかしいだろう。
 まともな感覚で無くなっているのは確かだった。
「翔真……父さま達に知られるのを心配しているのね?」
「え……?」
 まるで心を読んだかのように告げてきた姉の言葉に驚く。
「ふふ、このまま父さま達にバレないで、私をずっと抱きたいって思っているんでしょう?」
「え……う……」
 全くその通りであったため、どう答えていいのか困ってしまった。
「大丈夫よ……父さま達はね、この事を知っても止められないから……」
「え……?」
 断言する姉に驚く。
 何故そう言い切れるのだろう。
 それにこれは取り憑いている悪霊が言わせているのだろうから、祓われない自信でもあるというのだろうか。
「不思議でしょうけど、そうなの……きっと困ったようにするだけね」
「どうして?」
「簡単よ。あの人達も、私達と同じ事をしているから」
「え……?」
「近親で交わっているってこと。しかも子供まで作ってる……ふふ、分かる? それって私達のことよ?」
「そ、そんな……」
「驚くのも無理無いわ。でも不自然だと思わなかった? あの二人の年齢差……いくら何でも二十二歳なんて離れすぎでしょ? それは母親と息子だからなのよ。あの二人は母と子で交わって私達を作ったの」
「!……」
 あまりの事に衝撃を受ける。
 確かに昔から両親の年齢差は気になっていた。
 しかしそれくらいの年齢差の夫婦も居るものなのだろうと思い納得していたのだ。
 それがまさか親子だったとは……。
「二人がそうなったきっかけってのがね、母さまが父さまを誘惑したからなんですって……ふふ、それって私達と同じよね。それからこうして何かに取り憑かれたみたいに求め合っているのも同じらしいわよ……っと、いけないいけない。霊媒師が『何かに取り憑かれている』なんて表現はマズかったわね。でも実際そんな感じですものねぇ。そうでしょう? 翔真」
 その言葉にギョッとなる。
 それはまるで姉に取り憑いている悪霊が、己の存在をほのめかしたように聞こえたからだ。
 今まで悪霊自身がそうして己の存在を主張してきた事はなかったため、一体どういうつもりなのかと恐ろしくなった。
 いよいよ自分たち姉弟をどうにかするつもりなのではないかと思えたのだ。
「だからこのまま私を抱き続けても大丈夫よ。絶対父さま達は止められないから……そう、例え私達が、本当に何かに取り憑かれていたとしてもね」
(!……)
 その瞬間、背筋に冷たいものが走った。
 姉の顔が無表情になり、続けて何とも恐ろしげな笑みが浮かぶ。
 まさにそれは姉ではなく、姉に取り憑いた悪霊の本性だった。
 これまで除霊の際、何度か強い悪霊と接した事はあったが、これほどまでに恐怖を感じさせる悪霊は初めてだった。
 体の奥底まで冷たさが染み入り、心が氷に触れたかのように冷える。
 この悪霊は、並大抵の悪霊ではなかった。
 自分たち姉弟は、何という存在に魅入られてしまったのだろう。
「それにもう一つ父さま達が止められない理由があるのよ……それはね、霊媒の能力……父さまって昔は能力が大した事なかったそうなんだけど、母さまを抱いていく内に能力が上がっていったらしいわ。つまり父さまの能力は母さまを抱く事で培われたって訳……それを知った私は、もしかしたら翔真も同じなんじゃないかと思って試してみたの。それがあの温泉宿での夜……あんたは凄く落ち込んでいたから、もしこれで能力が伸びれば自信を持てるんじゃないかと思って……そうしたら上手くいったわ。あんた最近、能力が強くなっているでしょ?」
 陽気に語る姉の姿はいつも通りだったが、そこから発せられている「気」は完全に異質なものだった。
 何より口調は普段と同じなのに、顔は無表情であったため、何とも言えない恐ろしさを感じさせたのだ。
「ふふ、どうして私を抱くと能力が伸びるのかしらね。私達って、何かに取り憑かれたみたいに交わっているだけなのに……でも不思議だけどそれが事実。父さまとあんたっていう証拠があるんだから、そうなんだって事よね……でも交わるのを止めたらどうなるのかしら。もしかして伸びた能力が元に戻ったりして。そうなったら大変よねぇ」
 その言葉に総毛立つ。
 何故ならそれは「お前の能力は自分が与えたものだ。もし祓ったりすれば無くなるものと思え」と言われているように聞こえたからである。
 その事は翔真にとって逆らえない事だった。
 何しろずっと悩んでいた能力の低さがようやく解消されたのだ。
 もし姉から悪霊を祓ったとして、最近伸びた能力までも消えてしまったら……。
 霊媒師として許されない打算に満ちた考えが浮かび、翔真はその事に苦悩した。
「父さま達もきっと同じだったに違いないわ。何かに取り憑かれたように交わり続け、私達を作った。そして父さまの能力は一流と呼ばれるほどにまでなったのよ……だから父さま達は私達を止められない。何しろ大切な息子の能力が伸びるんですもの、止める訳がないわ……だから安心して私を抱き続けなさい。そうすればあんたの能力はもっと伸びるし、いつか私との間に子供も出来るわ。嬉しいでしょう?」
 悪霊の言葉に心が躍る。
 このままの状態を続ければ、自分は父のような霊媒師になれ、姉をずっと抱き続けられ、姉との間に子供を作る事が出来るのだ。
 それはまさに翔真の理想と言え、逆らう理由は何も無いように思えた。
 だがこれは、あくまで悪霊の言っている事が本当であった場合の話だ。
 自分の能力の伸びは、悪霊を抱いている事とは関係ないのかも知れないし、両親が自分達と同じだというのも嘘かも知れない。
 このまま悪霊を抱き続ければ、待っているのは破滅だけかも知れないのだ。
 能力を伸ばしたい、姉を抱き続けたいという想いと、悪霊に身を任せて破滅するという恐怖とがぶつかり合い、ダラダラと汗が流れる。
 何よりすでに悪霊に身を任せてしまっているという点が、手遅れなのではないかと思えて激しい恐怖を呼び起こし、体をガタガタ震わせた。
「何を震えているの? 何か怖いの? まさか私が怖いだなんてこと無いよね? こんなに沢山気持ちのいい事させてあげてるお姉ちゃんを怖いだなんて……お姉ちゃんは翔真の事が大切なだけだよ。気持ち良くさせてあげたいだけ……その証拠に、今までだって凄く気持ち良くしてあげたでしょう?」
 冷たい表情で、無感情な口調でそう告げてくる姉、いや、悪霊の姿にゾッとした想いを抱く。
 そうした様子を見ていると、今自分が対している存在が、姉などではないのが強く感じられた。
「ほら、もっとお姉ちゃんと気持ち良くなろぉ……?」
(!……)
 不意に姉の腕が首に絡み付き、抱き付かれたため、恐怖から体が硬直する。
 だがそれと同時に、体の前面にたまらない感触が溢れた。
 熱くて柔らかな肉がジンワリと染み入り、まるで取り込むかの様に吸い付いてくる。
 肌自体が男を狂わす刺激を発しているかのように、触れているだけでおかしくなりそうだった。
 そうした肉欲の権化とも言える姉の体の中で、唯一冷酷さを感じさせる顔は微笑みを浮かべており、何とも言えない恐ろしさを感じさせた。
 翔真の体は快楽に震わされ、顔は恐怖に歪んでいた。
 快楽と恐怖が混ざり合い、恐ろしいまでの魅力を感じさせていた。
 一見恐怖は人を遠のかせる要素に思えるが、その実、人を引き寄せる要素でもあった。
 怖いと思いつつも、それを味わってみたいという歪んだ好奇心が人間には備わっているのだ。
 いけないと思えば思うほど、してもみたくなるのが人間なのである。
 実際翔真は、湧き起こっている激しい肉欲におかしくなりそうだった。
 相手は恐ろしい悪霊であると認識したにも関わらず、敢えて悪霊を抱きたくなってしまっているのだ。
 恐怖を感じながら味わう快楽に、強烈な魅力を感じているのである。
「さあ、いらっしゃい。お姉ちゃんが、もっともっと気持ち良くしてあげるから……能力だってもっともっと強くしてあげるからね……」
 恐怖を感じさせる冷たい微笑みであるはずなのに、翔真はその表情に激しい欲情を覚えた。
 肉棒が硬く大きくなり、今にも弾けそうになる。
 触れている肌からはゾクリとするような淫靡な刺激が伝わり、翔真は呻き声をあげながら姉に、いや、姉に取り憑いた悪霊にのし掛かっていくのだった。


 微かな吐息のような喘ぎが部屋に響いている。
 それを発する女体は、豊満な肉と透き通るほどの白さを持った肌に覆われており、本来であれば触れれば温かいはずだった。
 実際温かさは感じられるものの、それ以上に神経が冷たさを感じているのは気のせいだろうか。
 翔真はそんな事を思いながら姉を抱いていた。
 だがこれは本来の姉ではない。
 姉自身が望んで自分に抱かれている訳ではないのだ。
 悪霊に意識を奪われ、操られた状態になっているのである。
 霊媒師としては悪霊を祓うべきなのだろう。
 何しろ姉は被害者だ。
 望まぬ性交を悪霊に強要され、意識の無いまま自分に抱かれている。
 そう考えると自らの行為が何とも下劣に思えたが、翔真は止める事が出来なかった。
 何故なら抑えきれないほどの恐ろしい肉欲が湧き起こっており、姉を抱きたくてたまらない衝動で一杯だったからだ。
 それだけ悪霊の見せる妖しげな雰囲気に魅せられてしまっているのであり、無表情な冷たい体を抱いていると、恐怖と共にゾクゾクする様な興奮を覚えたのである。
 自分は人に有らざるモノを抱いている。 
 その認識がたまらない快楽を呼び起こしていた。
 悪霊も翔真のそういった想いを察しているのか、いつの頃から非人間的な雰囲気をあからさまに見せるようになっていた。
 そうであっても翔真が興奮し、体を求めてくる事が分かったためだろう。
(父さま達は、どうしてるんだろう……)
 ふと、近くの部屋で寝ている両親の事が気になった。
 姉の発する喘ぎは聞こえているはずだから、自分達が何をしているのか両親が分からないはずはなかった。
 だがこれまで両親が何か言ってきた事はなかった。
 初めて喘ぎを聞いたであろう翌日は、困ったような顔をしていただけなのだ。
 まさしく悪霊が言った通りの反応を示したのである。
 つまりそれは、悪霊が言っていた内容が真実であるという事にも繋がっていた。
(父さまと母さまは親子……)
 それは衝撃的な事だったが、納得も出来る事だった。
 自分にとっての姉が、父にとって母だったと考えれば、気持ちは理解出来たからだ。
 自分は姉を愛し、その体を欲している。
 きっと父も同じだったのだろう。
 たとえ悪霊に取り憑かれた状態であっても、母を抱きたかったのに違いない。
「あっ、あっ……ああっ……」
 不意に高まった姉の喘ぎに心臓が跳ねる。
 悪霊の影響なのか、気味が悪いほどに白くなった肌がくねり、冷たさを思わせる肉が触れる事にゾクリとした快感が走り抜ける。
 蛇のように手脚が絡み付き、逃がすまいとしてくるのにゾッとする様な恐怖と、ゾクリとする快感を覚えた。
 普段は二十四歳でありながら幼さを感じさせる顔が、今は妙に大人びて見え、年齢相応以上の色気を発しているのに狂わんほどの魅力を覚える。
 何より肉棒を擦り、吸い付いてくる膣襞の感触は絶品で、この世にこれ以上の快楽は無いだろうと思わせるその感触に、翔真は夢中になって腰を振っていった。
「あっ……あぁっ……はぁっ……」
 強くなった突き込みに、喘ぎ声が大きくなる。
 そうしていると、自分がこの体を支配しているのだと思え、激しい満足感が湧き起こった。
 小さな体の上で揺れ動く大きな乳房を両手で掴み、強く揉みしだくと、たまらない気持ちの良さが広がった。
 膣内が締まり上がり、それに合わせて快感が強まったため、射精を我慢出来なくなる。
 このまま一気に精を放とうと思いつつ、もしこれで姉が妊娠したらと思うと、歪んだ悦びが湧き起こった。
 姉は未だに自分に抱かれている事を知らないのだ。
 朝になると交わりの事は覚えていないのである。
 それがある日妊娠した事だけが分かったら、どう思うだろうか。
 もしこの事を明かせば、産んでくれるだろうか。
 自分との子を……。
「うっ、うぅっ!」
 許されない想像をした事が刺激となったのか、次の瞬間、翔真は精を放っていた。
 体が硬直し、精液が勢い良く迸っていく。
 何度も射精を繰り返しつつ、押し寄せてくる快感に浸りながら、眼下にある姉の顔を見つめると、ゾクッとするような無表情がそこにはあった。
 本来なら意識が凍り付くようなものだったが、こちらの射精に合わせて時折ピクピク反応を示している姿を見ると、異様な興奮を覚えた。
 姉に取り憑いた悪霊が自分の行為に反応している。
 その想いに征服欲と支配欲が激しい刺激を受け、たまらない悦びを覚えたのだ。
 いつの頃からか、悪霊自身が反応しているらしい様子を見ると、嬉しさを感じるようになっていたのである。
 姉だけではなく、悪霊をも感じさせられた事が男として嬉しいのかも知れない。
 そんな事を思いながら最後の射精を終えた翔真は、ゆっくりと倒れ込んだ。
 荒い息を吐きながら隣の様子を伺うと、満足したのかどうなのか分からない顔があった。
 姉とは異なる人格を感じさせる顔。
 この顔をもっと快楽で歪ませてみたい。
 自分を求めさせたい。
 翔真はそんな想いを抱くようになっていたのだった。


 それから数日経ったある日、姉との関係が突然終わりを迎えた。
 何故か姉が部屋へ来なくなったのだ。
 その理由と思える変化が何かあったかと考えた時に思いつくのは、最後に抱いた日に「ようやく宿った」という謎の言葉を姉、いや悪霊が言った事だった。
 今まで以上に恐ろしさを感じさせる冷笑を浮かべ、悪霊は満足げにしていたのである。
 おそらく何か目的が達成出来たのだろうが、それが一体何のことを意味しているのか分からなかった。
 しかししばらくしてから、「宿った」という言葉にしっくりハマる出来事が起きたのを、翔真は姉から知らされた。
「子供が出来たわ……あんたの子よ……」
 久しぶりに部屋を訪れた姉が発したのは、衝撃的な内容だった。
 まず妊娠したという点、そしてその妊娠した子供が、自分との子であるのを姉が認識していたという点だ。
 何しろ今は昼間。
 悪霊が表面に出てきている夜と異なり、昼間の姉は抱かれている間の記憶はないのだから、本来であれば自分との子だと考えるはずはなかったからである。
 それが何故分かったのか。
「ね、姉さま……どうして僕の子だって……」
「そりゃ、あんたしか私を抱いてないからよ……ああ、あんたは私の意識が無いと思ってたのよね。でも実は最初からあったの」
「な、な、な……」
 姉の衝撃的な告白に愕然とする。
「まあ、最初は夢かと思ったけどね。でもああ毎日じゃいくら何でも夢じゃないって気づくわ。体にだって証拠があったしさ……あんたにされたのが、その……色々と……」
 急に姉がしおらしく言ったため、ドキリとしてしまった。
 しかしそうなると、姉は分かっていて抱かれていたという事になるが、今までそんな素振りなど見せなかったではないか。
「そりゃそうよ。だって恥ずかしくて言えないわ。霊媒師なのに悪霊に取り憑かれて、実の弟に抱かれてるだなんて……それにあの悪霊女が言わせないようにしてたしね。その事を考えようとすると、何かボーッとして考えられなくなったのよ。そうやって邪魔されてたの。でも何日か前、急にあいつは居なくなったから、こうして言えるようになったって訳」
「え? 居なくなったの?」
 予想はしていたが、実際そうなのだと言われると驚きと共に残念な想いが起きた。
「あ、残念そうにしてる……ったく、このスケベっ」
「う……ご、ご免なさい……」
「まあ、あんたは凄く夢中だったから、それもしょうがないけど。ホント凄かったわよね、目をギラギラさせて鼻息荒くしてのし掛かってきて……これがあの翔真かと思って驚いたわ」
「う……」
 客観的に述べられると何とも恥ずかしかった。
 確かに自分はそういう感じで姉を抱いていたかも知れない。
 何しろ自分でもおかしくなったと思えるくらい夢中だった自覚があるからだ。
「まったく、情けないったらありゃしない。私自身も取り憑かれたから強く言えないけど、せめてあんたがしっかりしていてくれれば、何とか出来たかも知れないのにさ」
「ご、ご免なさい……」
 その事に関しては何も言い訳は出来なかった。
「大体、私に夢中になっているだけならいいのよ。それが途中から悪霊女を意識しちゃってさ。そんなに良かった訳? あの悪霊女がっ」
「そ、それは……」
 急に怒りが強まったため翔真はどうすればいいのか困ってしまった。
「ほら答えて。私とあの悪霊女、どっちが良かったのっ?」
 そんな事は決まっている、はずだった。
 自分にとって姉は最高の存在であり、叶わないまでも妻にしたいと夢みるくらいだったからだ。
 しかし今の翔真はハッキリとそう言い切れる自信が無かった。
 今姉に指摘された事で、自分があの悪霊に惹かれていた事を認識してしまったからだ。
 確かに自分は、あの特殊な雰囲気を持つ悪霊に惹かれていたからである。
「あ〜〜、悔しい。体を乗っ取られた上に、大切な弟までたぶらかされて。てっきり翔真はこのまま私に夢中になると思っていたのに。だから抱かれても嬉しかったのにさっ」
「え……?」
「あ……えっとその……まあ、そういう事よ……」
 姉は失言に気づいたようだったが、気にせず肯定している。
 頬を赤らめているのが何とも可愛らしい。
 しかしこれはどういう事だろう。
 てっきり抱かれていた事を怒るのかと思いきや、嬉しいと言っているのだ。
 それは本気の発言と捉えてもいいのだろうか。
「じゃあ姉さまは、僕に抱かれても嫌じゃなかったの?」
「そりゃ最初は嫌だったわよ。やっぱり弟だし。弟に抱かれてるなんてとんでもないと思ったわ……でも、その……あんたのって良かったから……」
「え……?」
「あんたのおっきくて、硬くて、その……私の気持ちいいとこに凄く響く感じなのよ……それで元々弟として可愛く思っていた訳だし、それが余計強くなったっていうか……そのうち抱かれてるのが良くなってきて……って、もぉっ、何言わせるのよっ」
 姉はそう叫ぶと顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
(か、可愛い……)
 悪霊が取り憑いている間も色々と可愛い様子を見てきたが、今の素振りは姉自身のものであり、それがこのように可愛らしく振る舞っているというのは何ともたまらなかった。
 小さな体と相まって、実に抱き締めて頬ずりしたくなるような衝動を覚えたのだ。
「姉さまっ……」
 その衝動に逆らわず、姉を抱き締める。
 以前であれば出来なかっただろうが、すでに何度も交わった経験がそれを可能にしたのだ。
「あ、こらもう、しょうがないんだから……でもこういう事するなら質問に答えなさい。あんたは私とあの悪霊女、どっちが好きなの?」
「姉さまだよ。姉さまに決まってるじゃないか」
 今度はよどみなく答える事が出来た。
「ふんっ、嘘っぽいわね」
 だが姉には一蹴されてしまう。
「そ、そんな事は……」
「大体さっき聞いた時にすぐ答えられなかったのが怪しいわ。今のはあらかじめ準備してたから答えられただけでしょ?」
(う……)
 それは全くその通りだった。
 先ほどの様子から、即答しなければマズいと思ったのだ。
「ったく、しょうがないわね。まあ、許してあげるわ……でも今度からは駄目よ? あの女は居なくなったんだから、これからは私だけを見なさい。他の女なんかに惹かれちゃ駄目。いいわね?」
 迫力ある口調でそう言われ、コクリと頷く。
「宜しい。それじゃご褒美として……その……これから私を、抱かせてあげる、から……」
「え……?」
 たどたどしく告げてきた言葉に驚く。
「何よ嫌なの?」
「い、嫌じゃないよ。ただ抱かせてくれるなんて思わなかったから……」
「だってその……前は毎日してた訳じゃない? それを急に止めたから、翔真がしたくてたまらないんじゃないかって……ほら、あんたってば私に夢中だった訳だし、可哀想だと思ったのよ……」
 確かに姉を抱けるのは嬉しかったが、姉の方から積極的に誘ってくるのには驚いた。
 以前の姉ならば叱りつけて「今後はそういう事をしないように」と言ってくるはずだったからだ。
 それが何故抱かせてくれるなどと言うのか。
 その事を不審に思いながら姉を盗み見ると、何やら不安そうにこちらを伺っているのが分かった。
 どうにもそれは「自分の言った事が受け入れられるだろうか」と心配している感じに見え、抱かれる事を期待しているように思えた。
 真面目な姉が自分と交わる事を望むとは驚きだったが、よく考えてみれば交わっている最中はあれだけ気持ち良さそうにしていたのだ。
 あの状態の時に意識があったのだとすれば、姉にとっても自分との交わりはたまらないものだったと考えてもおかしくはないだろう。
 先ほども言っていたではないか、「良かった」と。
「姉さま……その、僕に抱かれたいの?」
「! ば、馬鹿っ。何言ってるの違うわよっ。わ、私はただ、あんたが可哀想だと思って……ほ、ほら、あんた凄く気持ち良さそうにしてたじゃない。私の体に夢中になってむしゃぶりついてたし……そ、そんな態度見てたら、もう抱かせないなんて可哀想に思えたのよ、そう、そう思ったのっ」
 顔を真っ赤にしながら叫んでいる姉は、何ともたまらなく可愛らしかった。
「そ、それに、子供だって出来るしさ……それって、私があんたの奥さんになるって事じゃない。夫婦ならしたっておかしくないもの……」
「!……」
 その言葉に衝撃を受ける。
 姉が自分の妻になる。
 それは想像したことはあっても、決して実現する事ではないと思っていた。
 それを何と姉から言われたのだ。
 驚かずには居られないだろう。
「ほ、本当に、僕の奥さんに……なってくれるの……?」
「そりゃ、弟の奥さんだなんて微妙だけどさ……でも産まれてくる子供の事を考えたら、ちゃんと両親になってあげないと可哀想じゃない……それに、父さま達だって親子で夫婦になってるんだから、私達が姉弟で夫婦になったって構わないでしょ?」
 確かにそれはそうだった。
 両親は親子で夫婦になり、自分達を育てたのだ。
(僕が姉さまの、夫に……)
 激しい喜びが湧き起こってくる。
 目の前にいる可愛らしい少女が、自分の妻に、自分一人のモノになるのだ。
 嬉しくてたまらなかった。
 そしてそれと共に股間の一物も硬く大きくなった。
「ね、姉さまっ……」
 叫ぶと同時に押し倒し、久しぶりに感じる柔らかな肉体にむしゃぶりついていく。
「あ、こら止め、あんっ……もっと落ち着い、あっ……いきなりそんな、やっ……そこは駄目よ、あんっ……そんな風にちょっと、あぁっ……馬鹿ぁっ……」
 逆らうのを押さえつけ、乳房を揉みしだいたりしながら強引に肉棒を押し込んでいく。
「あぅんっ……入ってくるぅ……翔真のが、あっ……おっきくて硬い翔真のがぁ……す、凄い、凄いよぉ……慣れてるはずなのに、あんっ……何か、変な感じぃ……」
 肉棒を押し込むのに合わせ、姉の顎がカクンカクンと仰け反るのに興奮を覚える。
 以前と違って初々しい反応に嬉しくなった。
 実際翔真自身も新鮮な感覚を覚えていた。
 これまでは姉を抱くとなると、落ち着かない激しい衝動があったのが、今は随分と落ち着いているからだ。
 もしかしたら姉の態度が交わりに慣れていない雰囲気を出しているせいで、自分の方が経験者として余裕が出ているせいかも知れない。
 何しろ今眼下でピクピクと体を震わせている姉は、見た目通りの十代前半の少女そのもので、可愛らしくて仕方がなかったのだ。
 自分が守って優しく気持ち良くしてあげたくなるような、庇護欲を凄くかき立てたのである。
 それでいて、この幼い容姿を無茶苦茶に喘がせたいという嗜虐心も湧き起こっており、翔真は激しい興奮を覚えた。
「あっ、あっ、ああっ……ちょっとやだ、あんっ……そんな激しく、やっ……突いたら駄目、あんっ……突いたら駄目って、やぁっ……」
 勢い良く腰を動かし出すと、姉は困ったようにそう言ってきた。
 だがどう見ても喜んでいるのは間違いなく、もっと突いて欲しがっているのは明らかだった。
「ああんっ、あっ、ああっ……やだそんな、あんっ……翔真の、あっ……翔真のが奥に、あぁっ……奥に当たるよぉっ……」
 肉棒の先がコツンコツンと何かにぶつかっており、そのたびに姉は顎を仰け反らせて激しく悶えた。
 小さな体がいやらしくくねり、幼い顔が淫靡に歪む姿に、翔真の興奮は激しく高まった。
 今までも姉を抱いていた訳だが、それはあくまで悪霊に操られた反応だった。
 だが今目にしているのは、姉本人の反応であり、それが見られているのがひどく嬉しかったのである。
「姉さまっ。姉さま僕気持ちいいっ……姉さまはどうっ? 気持ちいいっ?」
 見るからに気持ちいいのは分かるが、姉の口からハッキリと聞きたかったため、そう尋ねてみる。
「ば、馬鹿、あんっ……そんなこと、あぅっ……言える訳、あっ……言える訳ないじゃない、ああんっ……」
 そう言われると是が非でも言わせたくなった。
 これまでの経験から、姉が最も乱れる部分を意識して肉棒を叩き付けていく。
「ひゃっ、ひゃうんっ……そ、そこ駄目、あっ……そこ駄目って、あぁっ……翔真そこ駄目なのぉっ……」
 布団を掴み、頭を激しく左右に振りながら乱れる姉の姿は最高だった。
 肉棒がそれまで以上に大きくなり、腰の動きに力が入っていく。
「やぅっ、やぁっ……翔真のオチンチンが、あっ……おっきく、おっきくなって、あっ……凄い、あんっ……凄いぃっ……気持ち、気持ちいいよぉ、あぁっ、あっ、あんっ……」
 望んだ言葉を言わせた事で益々興奮が高まった。
 とにかく姉と一緒にもっと快楽を味わおうと、翔真は滅茶苦茶に腰を叩き付けていった。
「はぁっ、あっ……やっ、やぁんっ……もう駄目、あっ……もう駄目だよ、あんっ……私おかしく、あんっ……おかしくなっちゃうぅっ……」
 姉の乱れは最高潮に達し、目を虚ろにさせ、涎を垂らしながら喘いでいる。
 このままし続けたら本当におかしくなってしまうのではないかと思えたが、翔真自身も強烈な快感に浸っていたため、気遣う余裕はなかった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……もうイく、あっ……イっちゃう、あぁっ……イっちゃうよぉっ……やっ、やっ、やぁああああああああああんっ!」
「うぁっ!」
 ドピュッ、ドピュッ、ドクドクドクドクドク……。
 硬直し、けいれんを起こしている姉の中に精を放つ。
 勢い良く放出されていくのにたまらない気持ちの良さを覚えながら、自分は姉の中に精液を注ぎ込んでいるのだと認識した翔真は、激しい悦びを覚えるのだった。


 数ヶ月後、姉は子供を産んだ。
 翔真は姉と実質上夫婦となり、憧れの姉を妻に出来た事に嬉しさで一杯だった。
 さらに霊媒師としても能力が成長し、妊娠中の姉の代理として一人で仕事をこなしていった事もあって、自信を持てるようにもなっていた。
 まさに順風満帆な日々を過ごしていたのである。
 そう、今日の夜までは……。


 目の前には姉、今となっては妻でもある女性がいる。
 寝間着である薄い浴衣を着て、敷いた布団の上に正座し、こちらを見つめて微笑んでいるのだ。
 だがその微笑みは普段の姉とは異なる、以前見たことのある冷たさを感じさせるものだった。
(何故……今になって……)
 それはあの悪霊だった。
 姉が妊娠した頃から気配が消えていた悪霊だ。
 それが何故かまた現れているのである。
 目的はやはり翔真に抱かれる事らしい。
 いやらしく誘ってきている事からそれは明らかだった。
 ただ以前と違って翔真には、抱きたくてたまらない衝動は起きていなかった。
 霊媒師として成長したせいか落ち着いていられるのだ。
 何より姉と「もう他の女は抱かない」と約束しており、それを破るつもりは毛頭無かったのである。
 だがそんな翔真の想いとは関係なく、悪霊は徐々に近づいてきた。
 そして突如、えもいわれぬ強烈な色香が感じられたかと思うと、肉棒が激しく勃起した。
 体中に以前味わった悪霊の肉体の感触が蘇ってくる。
 それはあまりに甘美なものであり、体全体が悪霊の肉体を欲して震え始めた。
 心は耐えられたが、肉体は求めていたのだ。
 以前味わった極上の女肉を。
 恐怖を感じさせる快楽を。
 幸せな姉との交わりには存在しない、堕ちていく交わりを。
 視線を逸らそうとしても目が動かず、悪霊の体を見つめ続ける。
 その肉体からは、姉の体とは異なる魅力が感じられた。
 元々白い肌が、極端な透明さを持ち、淫靡な雰囲気を漂わせている。
 体の動きに合わせて揺れる肉は、蕩けるような快楽を思い出させた。
 冷たい笑みを浮かべる顔は、快楽で歪ませたくなる衝動をもたらした。
 かつて味わった極上の肉に触れたいと、あの肉壺に再び入り込みたいと、翔真の肉体が絶叫していた。
「翔真……」
 姉の口で、姉とは異なる存在が名を呼んでくる。
 すでに体は接触せんばかりに近づいており、もし触れられたらどうなってしまうのか分からなかった。
 翔真は必死になって抵抗した。
 もう二度と悪霊の誘いには乗らない、姉との約束を守るのだ。
 その想いが唯一の支えだった。
 愛する姉、妻となった姉を裏切る行為は絶対に出来なかった。
 何より自分はすでに未熟な霊媒師の卵ではない。
 一人前の霊媒師なのだ。
 悪霊の誘いなど跳ね返し、今こそ姉に取り憑いた悪霊を祓ってみせる。
(!……)
 しかしその想いも、実際に悪霊の手が触れた瞬間、激しく揺らいだ。
 たまらない甘美な快楽が、触れられている部分から染み込み、肉棒を激しく刺激したのである。
 これでは悪霊を祓うどころではなかった。
 このままでは抱いてしまうだろう。
 早く逃げなければ……。
 心はそう叫んだが、体は逆にこのいやらしい肉体と早く交わりたいと欲し、動かなかった。
(うっ……)
 悪霊の腕が背中に回り、体が密着した瞬間、たまらない快感が走り抜ける。
 布越しであっても伝わってくる甘美な肉の感触は、もう絶対に離れる事を許さなかった。
 表情の無い顔がゆっくり近づいてきたかと思うと、冷たい笑みが浮かぶ。
 その感情の無い瞳に見つめられた瞬間、ゾクリとする快感が走り抜けた。
「翔真、抱いて……」
「!……」
 耳元で囁かれたのがトドメだった。
 翔真の心は砕け散り、目の前にある女肉の事しか考えられなくなった。
 姉、いや悪霊の体を押し倒し、乱暴に浴衣の合わせを開くと、現れた双乳にむしゃぶりついていく。
「あっ、あぁっ……」
 耳に響く甘い吐息と、体全体から伝わってくる蕩けるような肉の感触に、翔真の頭は真っ白になった。
 まるで女を知らなかった頃に戻ったかの様に荒々しく乳房を愛撫し、落ち着きなく肉棒を取り出すと、一気に秘所へと押し込んでいく。
 前戯をほとんどしていないにも関わらず、すでにそこは濡れそぼっており、抵抗なく肉棒を受け入れていった。
「くっ……かっ……」
 久々に味わう悪霊の肉体の感触に、たまらない悦びが溢れる。
 同じ姉の体であるはずなのに、まるで別の肉体であるかのように感触が違うのだ。
 温かく愛を感じる姉との交わりと異なり、冷たさと恐怖を感じる悪霊との交わりは、底なしの快楽を思わせた。
「あっ、あっ、あぁっ……」
 腰の動きに合わせて小さな喘ぎが耳を擽り、その甘い声に肉棒が益々猛っていく。
 ヌメヌメと絡み付き、淫靡に吸い付いてくる膣の感触に、射精感が激しく高まる。
 すでに多くの経験を積んだはずなのに、今の自分はまるであの頃、そう、初めて悪霊を抱いた時に戻ったかのように堪え性がなくなっていた。
 無表情な顔が快楽に微かに歪み、冷たいがゆえに魅力的な体が揺れ動き、白い腕と脚が逃がすまいと絡んでくるのに、脳が焼かれるような快感を覚える。
 ああ、自分はこれを求めていたのだ。
 この恐怖を感じる快楽を。
 姉との交わりには無い、冷たい悦びを欲していたのだ。
 もちろん姉を愛しているし、姉との交わりに不満はない。
 だが一度知ってしまったこの破滅を感じさせる快楽を、忘れる事が出来なかったのも事実だった。
 そして姉を裏切り、他の女を抱いているという想いは、強い背徳感となって益々肉棒をたぎらせた。
 姉と夫婦になる前には存在しなかったその背徳的な悦びは、新たな刺激となって翔真を夢中にさせた。
 自分は姉を裏切っている、許されない事をしているのだ。
(姉さま、ご免なさい……僕は、僕はぁ……)
 翔真は心の中で姉への謝罪を述べながら、さらに激しく腰を動かし出すと、高まる射精感に流されるまま思い切り精を放っていった。
 それが姉への裏切りであり、悪霊に魅入られた証であると知りながら……。












あとがき

 姉とのラブラブで終わると見せかけて、暗く終わらせてみました。
 最初はラブラブで終わったんですが、それじゃどうも明るくなりすぎるので、「実は悪霊はまだ残っていた」という感じにしてみた次第。
 この霊媒師シリーズは、出来るだけ重く暗い感じにしたいと思っているのでそうさせていただきました。
 んでこの姉弟の両親というのは、前回の母子ですので、親子で悪霊にいいようにされている訳です。
 霊媒師のくせに駄目駄目ですが、まあ、そこら辺はこの悪霊がそれだけ強いという事で。
 私としてはそのおかげで近親相姦が描けていますので、今後も悪霊には最強な感じで頑張ってもらうつもりであります(笑)
(2010.1.26)



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