霊媒師の兄妹


 響真(きょうま)は、目の前に座る妹の様子を見ていた。
 響真の仕事は霊媒師。
 科学では解明出来ない不可思議な現象を処理する仕事であり、同じように霊媒師となるべく修行している妹の面倒をみている。 
 妹の撫子(なでしこ)は、二十歳の響真より八つ下の十二歳。
 兄の目から見ても美しい顔立ちをしており、腰の辺りまで伸ばした長い黒髪は、修行着である白衣、袴と相まって、実に可愛らしさを感じさせた。
 性格は大人しく、少々引っ込み思案な部分があり、霊媒師としてどうなのかと思う時もあったが、経験を積めば自然と問題もなくなるだろう。
 今はとにかく修行を積み、地力となる力を身に付ける事が大事だった。
 しかし最近の撫子はどうも悩みがちであり、響真はその事が気に掛かっていた。
 真面目な性格から人一倍努力をしているものの、いまいち結果に結びついていないため、「自分には才能が無い」と思い込みかけているのだ。
 最近は夜に響真の部屋を訪れ、「どうすればいいのか」などといった相談を受けることが多々あった。
 響真の家は、先祖代々霊媒師として名を馳せてきた家柄であるため、霊媒師になるのは当然のこと、優れた霊媒師となる事が周囲から期待されており、その重圧に耐えかねているらしい。
 それは響真にも経験のある苦悩であったため、いつかは乗り越えてくれるだろうと、励ましながら日々を過ごしている。
 気の弱い妹の事だから、多少時間は掛かるかも知れないが、それにくじけない芯の強さを持っていると信じているのだ。
 今行っている修行にしても、なかなか成果をあげられていないが、投げ出すことなく続けているのがその証拠だった。
 目の前に立てられたロウソクの火を、息を吹きかけず、触れずに消す修行だったが、その火を見つめる撫子の姿には、力の伸びを思わせる気迫が感じられたのである。
「!……」
 撫子の気合いが迸った瞬間、ロウソクの火が揺らぎ、消えたように見えた後、再び火が灯る。
 どうやら上手くいかなかったらしい。
 あと少しであったため、もう一度やらせたい所だったが、撫子の消耗具合からして、これ以上の行為は害になると判断した響真は、終わりにする事にした。
「それまで。今日はこれで終わりにしよう」
「で、ですがまだ……」
「終わりだっ。いいなっ」
 何か言いかけるのを遮って大声で告げると、撫子は怯えたように体を縮こまらせた。
「……はい。ありがとうございました」
 そして見るからに落ち込んだ様子で頭を下げている。
 響真はその様子に溜息を付いた。
 確かに怒鳴りはしたが、それに対してこうも怯えてしまうのでは、悪霊などと対峙するのはとても無理だからだ。
 霊媒師としては、どのような恐ろしい相手に対しても、毅然と立ち向かえなければならないのである。
 だが撫子は生来の気弱さから、そういった面がなかなか改善されなかった。
 十分に「気」を入れられるにも関わらず、未だにロウソクの火を消せないのも、後一押し意識が足りないせいだった。
「……」
 目の前では撫子が、絵に描いたような気落ちした姿で俯いている。
 これは今夜も相談しに来るかも知れないな、と心配に思いつつ、響真はその事自体は嬉しく感じていた。
 妹に頼られる事が兄として誇らしかったからだ。
 そうした想いから撫子を愛おしく感じるのだが、自分は師匠でもあったため、あまり甘い態度を取れないのが辛いところだった。
「では私は行くからな。お前は後片付けをしておくように」
「はい……」
 内心とは裏腹に厳しい口調で告げた後、修行場を出ようと歩き始める。
 そのまま何気なく撫子の傍を通り過ぎようとした際、こちらを見上げてきた黒い瞳に、響真は思わずドキリとしてしまった。
 最近どことなく女っぽくなってきた妹は、時折子供とは思えない色気を感じさせる事があるのだ。
 まだ十二歳だというのに、大人の自分を動揺させる色香を発しているのかと驚くが、女というのはそういうものなのかも知れない。
 いずれは撫子も立派な女性に育ち、どこかの男の妻となるのだろう。
 それは当然のことであったのだが、その事を思うと響真は少し辛かった。
 幼い頃から面倒をみてきたためか、妹に対する愛おしさが強かったからだ。
(撫子を他の男にやるなどと……)
 一瞬、妹に対する強烈な執着を覚えた事に驚きつつ、頭を振ってその事を追い払った響真は、大きく息を吐き出しながら修行場から出て行くのだった。


 夜遅く、部屋で書物を読んでいた響真は、昼間見た撫子の様子を思い出し、呼吸を乱していた。
 自分を見つめる黒々とした大きな瞳。
 頼りなげな、すがってくるような視線。
 可愛らしい顔の中で、ほんのりと赤みを持つ唇。
 それらを頭に思い浮かべていると、落ち着かない衝動が湧き起こってくるのだ。
 大人として、兄として許されないその衝動に、いけないと思いつつも心を委ねてしまう。
 撫子の小さな体を抱き締め、可憐な唇に吸い付きたい。
 性徴途上の胸を揉みしだき、体中を舐め回したい。
 幼い割れ目に己が怒張を押し込み、腰を思い切り動かしたい。
 次々と妄想が膨らみ、鼻息が荒くなっていく。
 脳裏に服をはだけ、白い肌を露出させながら、響真の腰の動きに合わせて喘ぐ妹の姿が浮かぶ。
 意識しないまま手が股間に伸び、そのまま肉棒をしごこうとした時だった。
(!……わ、私は何を……)
 寸前で意識を取り戻し、股間から手を放す。
 呼吸が乱れ、体が熱くなっているのが分かる。
 とんでもない想像をしながら自慰をしかけた自分に驚きを覚える。
(撫子を相手に、私は……)
 妹をネタに自慰をするなど異常だろう。
 そうでなくとも時折女を感じているというのに、この上自慰までしてしまっては異常者でしかなかった。
 そもそももうすぐ撫子が部屋へ来るかも知れないのだ。
 自慰をしている自分の姿を見られたらと思うと、激しい羞恥心と苦悩が湧き起こってくる。
 取り合えず思いとどまれて良かった。
 その事にホッと息を付く。
 それにしても最近の自分はどうかしている。
 まだ幼い少女である妹を相手に、いやらしさを感じるなどおかしすぎるだろう。
 欲求不満なのだろうか。
 どこかで女を抱いた方がいいだろうか。
 そう言えば最近撫子の相手をしているせいか、女を抱いていなかった。
 真面目な妹の修行をみるのに、女を抱いては良くないだろうと思ったからだ。
 だがその事で欲求不満になっているとすれば、逆に弊害があるのだから、明日にでもどこぞの商売女を抱いておいた方が良いのかも知れない。
「兄さま、宜しいでしょうか」
 そんな事を思っていると、不意に部屋の外から声をかけられた。
 撫子が来たのだ。
 一瞬先ほどの妄想と重なったため、ドキリとしつつ、頭を振ってその想いを追いやる。
「構わんぞ。入れ」
 響真が返事をすると、撫子は座ったまま襖を開いて体を部屋へ入れ、後ろを向いて襖を閉めた。
 寝間着である浴衣を身に着けた後ろ姿が目に映り、その事に鼓動が早くなる。
 小さな肩と細い腰に視線が動き、思わず抱き締めたくなる衝動が湧き起こった。
 先ほどの妄想が蘇り、可愛い妹をこのまま押し倒し、いやらしい行為をしたくなってくる。
(くっ……)
 慌てて膝をつねり、妄想を追い払う。
 出来るだけ妹の方を見ないようにしながら、響真は深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとした。
「あの、兄さま……」
「な、何だ?」
 自分の下劣な妄想を見透かされたかと思い、ギクシャクしながら答えると、撫子はそんな事には気づいていない様子で俯いている。
 最近はいつもそんな感じではあるのだが、今日はことさら暗いように思えた。
「わたくし、もう駄目なのではないでしょうか……」
「なに?」
 震える声で告げてきた、か細いが力のこもった声に緊張する。
「あれだけ毎日修行をし、こうして毎夜のごとく兄さまに指導していただいているというのに……わたくしは、何の成果も上げる事が出来ず……無能としか……」
「馬鹿者っ。そのような事を申すでないっ。お前はそのうち一人前の……」
「果たしてそうでしょうか? 才能の無い者は、いくら努力しても駄目。わたくしにはそう思えるのです」
 響真が叱りとばそうとすると、それを遮るようにして撫子は声を発した。
 今までその様な事をしてきた事は一度も無かったため、今の撫子がかなり追い詰められているのが分かった。
 こういう場合、下手に叱りつけては逆効果になると思った響真は、宥める方が良いだろうと判断した。
「確かにそういう事もあるだろう。だがお前には才能はある。ただそれが上手く出てこないだけなのだよ。素晴らしい霊媒師であるお爺さまも父さまも、幼い頃はそうだったらしいのだからな。だから諦めず努力していけば、必ずお前も一人前の霊媒師になれるさ」
「ありがとうございます。兄さまのそのお言葉を信じ、わたくしは今まで頑張ってまいりました……ですが最近知ってしまったのです。今のままでは駄目なのだという事を……」
「どういう意味だ?」
「我が一族の歴史の中には、お爺さまと父さまのように、幼い頃に能力が低く、ある時突如として能力を伸ばした人物が幾人かいました……しかしその能力が伸びたのには原因があったのです」
「原因だと?」
「はい。彼らは普通の修行ではない、ある特殊な方法を行い、能力を伸ばしたのです」
「特殊な方法?」
「秘術です」
「秘術、だと……?」
 そのようなものがあるとは知らなかった。
 響真もある程度一族に伝わる書物を読んでいるが、秘術などという事が書かれた書物は見た事がなかったのだ。
 もしそういった書物があるのだとすれば、何か特殊な修行法でも記してあるのだろうか。
 それによって撫子の才能が伸びるのであれば、確かに試してはみたかった。
 しかし父も行ったのだとすれば、何故教えてくれないのだろう。
 父も撫子の能力が伸びない事を憂いていたはずであるのに……。
「ふむ、取り合えずどういった内容であるか確認したい。私にもその書物を見せてくれないか?」
「確認するほどの事ではありませんわ」
「何故だ?」
「書かれてあったのは、ごく単純な事でしたから」
「単純だと? 秘術であるのにそのような……」
「それは秘術というよりも、一族の血が原因で発生する事のようですから……秘術と理解せずに行っても効果を生むのです。実際お爺さまや父さまは、秘術とは知らずに行い、能力を伸ばされたみたいですし」
「一体それはどういった事を行うのだ?」
「秘術とは……近親で交わること。近親で愛し合い、快楽を与え合う事です」
「な……」
 あまりの事に衝撃を受ける。
「驚かれましたか? ですがこれが秘術の内容なのです」
「馬鹿なっ。お前はそれをお爺さまや父さまがなさったと言うのかっ?」
 怒りが湧き起こり、響真は大声をあげた。
 今撫子が述べた事は近親相姦であり、禁忌とされる汚らわしい行いだったからだ。
 それを祖父や父が行ったなどというのは、二人を貶める発言でしかなく、看過できない内容だったのである。
「ふふ、そのように大声を出されて……という事は知らないのですね、兄さまは……」
(!……)
 楽しげに笑う撫子の様子に、響真は息を飲んだ。
 いつもであれば、響真が大声をあげれば、撫子は怯えた様に縮こまるはずであるのに、それが全く動揺していないどころか、楽しげですらあるのだ。
 やはり今夜の撫子はどこかおかしかった。
「私が何を知らないと言うのだ?」
 撫子の態度をいぶかしく思いながら、大きく息を出すようにして尋ねる。
「お爺さまとお婆さま、お二人の関係をです」
「関係など決まっておろう。夫婦だ」
「そう、夫婦です。ですがお二人は、親子でもあるのですよ?」
「何……」
 再び衝撃を受ける。
 撫子は何を言っているのだろう。
「母親であるお婆さまと、息子であるお爺さまが交わり、その結果産まれたのが父さまと母さま……ふふ、この意味が分かります? 父さまと母さまも姉弟なのですよ。そしてお二人もやはり交わり、わたくし達を成したのです」
 何とも下劣な話であるにも関わらず、撫子が楽しげに語っていたため、その様子に異常を覚える。
 一体撫子はどうしてしまったのか。
 響真は動揺を抑え、冷静になるため一度大きく深呼吸をした。
「お前は何を言っているのだ? 父さま達が姉弟で、しかも交わったなどと……そのような事があるはずがないだろう」
「ふふ、事実であるかどうかは、父さま達にお尋ねになればハッキリしましょう。そして能力が伸びたというのも事実ですから、この事もお尋ねになると宜しいですわ」
 楽しげに、自信ありげに主張する撫子の様子に、響真は本当に妹がどうかしてしまったのかと思った。
 夕刻に食事をした際は、落ち込んではいたがいつもと変わらなかった。
 夜になり、何か思い詰める状態にでもなり、妄想を事実と思い込んでしまったのだろうか。
 だがそれにしても、発想が撫子らしくないものだった。
 近親相姦など、純真な撫子にはふさわしくない発想だったからだ。
「ゆえにわたくしは秘術を行う決心をしたのです……交わりなど少々気後れ致しますが、兄さまが相手をして下さるのであれば怖くはありません……どうぞ宜しくお願い致します」
 最後はいつもの撫子らしく、恥ずかしげにしながら頭を下げている。
 そして立ち上がったかと思うと、そのまま浴衣を肩からずらし始めた。
「何をするのだ撫子っ……」
 その事に響真は動揺した。
 目に映った撫子の肌があまりに白く見え、さらにその事に欲情してしまったからだ。
 先ほど撫子の体を妄想し、自慰をしかねなかった響真としては、撫子の生の肌は恐るべき存在であり、目にしてはならないものだったのである。
「何とはこれは異な事を……申し上げましたでしょう? 秘術を行うと」
「秘術、だと……それはつまり……」
「兄さまに抱いていただこうとしているのです」
「馬鹿なっ」
 抑えるべき感情を抑えられず、響真は心臓を激しく鼓動させ、汗を流した。
 撫子の白い肌から目を離す事が出来ず、体が硬直し、動くことが出来ない。
 本来であればすぐにでも服を着させ、叱りつけただろう。
 だが実際は全く動く事が出来ず、撫子が浴衣を脱いでいく姿を見つめる事しか出来なかった。
 いや、自らが欲しているのだ。
 撫子の肌を、あの白い肌をもっと見てみたいと。
 己の中にある否定すべき妹への劣情が、そう叫んでいたのである。
 そうしている間も、撫子は浴衣をずらし、体から布をはがしていっている。
 まるで見せつけるかの様に、焦らしているかの様にゆっくりと脱いでいくのが、否応無しに響真の興奮を高めた。
「ふふ……」
 撫子は、響真のその想いを見透かしたかのように笑うと、ついに胸元を顕わにした。
 微かな膨らみが目に映るのに思わず息を漏らす。
 まだ乳房と呼ぶには程遠いが、子供の胸とは明らかに異なる膨らみがあるのがやけにハッキリと分かる。
 思わず唾を飲み込んでしまい、その事に苦悩する。
 自分は妹の体に対して何を思っているのだろう。
 兄として早く止めなければ……。
 だがそう思っている間にも撫子の体から布は外れていき、やがて産まれたままの姿が残った。
 響真の目は舐めるように撫子の白い肌を見つめ、胸の微かな膨らみや、まだ毛の生えていない股間の様子が映ると、体に震えが走り抜けた。
 女の裸など、すでに何度も見ているにも関わらず、今目の前にある撫子の裸体は、それとは全く異なる魅力があった。
 女として性徴し始めたばかりの体である事が、逆に淫靡な想いを強くさせているのだ。
 目の前の幼い体には、成熟した女に存在する肉の雰囲気が無く、その事が生々しさを感じさせず、清らかな肉体美だけを意識させた。
 だがそれでいて肉欲を刺激する「女」を確かに感じさせる部分もあったため、その事から背徳的な欲望が湧き起こり、自分がこの清らかな肉体を汚したい、無茶苦茶にしたい、という衝動が湧き起こっていたのだった。
「兄さま……わたくしを抱いて下さいませ……」
 か細い声にハッと意識を戻す。
 あまりに魅惑的な裸身に見とれてしまっていたのだ。
 このままではいけない。
 否定しなければ、撫子の裸体を……。
 拒否しなければ、撫子を抱くことを……。
 すぐにでも撫子を叱りつけ、止めさせるのだ。
 響真の心はそう叫ぶが、体は全く言うことを聞かず、撫子が近づいてくるのを待ち受けている。
 いや、心すらすでに受け入れ始めているのだろう。
 可愛い撫子。
 自分に従順な可憐な撫子。
 幼い頃から慈しんできた妹を、己の物にしたい。
 この美しい裸身を抱き締め、思い切り舐め回し、肉棒を押し込んで精液を注ぎ込みたい。
 男としての欲望が、兄としての想いを駆逐していく。
(ああ、綺麗だ……)
 目の前までやってきた撫子の体は、これまで見てきた何よりも美しいものだった。
 そしてあらゆる女よりも魅惑的な存在だった。
 血管が透けて見えるほど白い肌に、腰まで伸びた黒髪がまとわりつき、その様子が得も言われぬ美しさと淫靡さを感じさせていた。
 抱き締めたら折れてしまいそうなほど細い腰に、体全体にほんのりと付いた肉が卑猥な想いを湧き起こさせる。
「兄さま……」
 幼さの残る顔がどこか淫蕩さを感じさせる笑みを浮かべ、小さな唇が誘いの言葉を述べてくるのに意識が朦朧とする。
 撫子はゆっくり響真の前に跪くと、そっと股間に手を伸ばしてきた。
「だ、駄目だ撫子……それはいけない……」
 微かに残った理性がそう口走らせるが、実際に撫子の手が触れてしまえば、その心地良い感触に何も考えられなくなった。
 細い指が触れてくるのが、とても気持ち良かったのだ。
 そのまま撫子の手がゆっくり動き、股間をまさぐって肉棒を探り当ててくる。
「くっ……」
 小さな手が下着の上から肉棒を掴んだ瞬間、甘美な刺激に体が震え、それと共に肉棒が一気に硬く大きくなった。
 撫子の手は、それを握り締め、愛おしむように優しくさすってくる。
「こんなに大きく、力強く……わたくしを感じてこうなっているのですね? 嬉しいです兄さま……」
 自分を慕う純真な笑みと、それとは反する手の動きの淫靡さに、ゾクリとした興奮が湧き起こる。
 愛らしい撫子が、いやらしい行為をしている。
 可憐な笑顔を向けながら、淫蕩に手を動かしているのだ。
 だが動き自体はどこか拙いものが感じられ、それがより撫子らしさを思わせたため、さらに興奮を誘った。
「兄さま……お慕い申し上げております……」
 小さな手が響真の浴衣の胸元をはだけ、幼い裸身が寄り添ってくる。
 胡座をかいた響真の膝の上に乗った撫子は、潤んだ瞳でこちらを見上げ、甘えるように頬を擦りつけてきた。
 生の肌と肌が触れ、温かい肉の感触が伝わってきて肉棒が痛いほど硬くなった。
 微かな胸の膨らみが押しつけられ、二箇所だけポツンと硬い感触がある事に、ゾクゾクした快感が走り抜ける。
 もう我慢出来なかった。
 もう我慢など出来なかった。
 この可憐な少女を、可愛い妹を、愛する撫子を、抱かないでいるなど不可能だった。
「撫子ぉっ……」
 擦れた声で叫びながら、細い体を抱き締め、勢い良く押し倒す。
「あ、兄さまぁ……」
 か細い声が歓喜の叫びを上げ、小さな体が響真を受け止める。
 思っていた以上に華奢な撫子の体に、一瞬壊してしまうのではないかと思うが、湧き起こってくる劣情に流され、そのままむしゃぶりついていく。
「あっ……あぁっ……はぁっ……」
 首筋に唇を押しつけ、舌を這わし、夢中になって舐め回すと、撫子の口から聞いた事のない甘い吐息が漏れた。
 その事で自分が今撫子を抱いているのだという実感を抱いた響真は、強い快感と、ついに禁忌を犯してしまったという想いに体を震わせた。
「あっ……兄さま、あぁっ……兄さまぁっ……」
 だが可愛らしく誘う撫子の声を聞いてしまえば、禁忌を犯したことすら快感となり、その背徳的な悦びに劣情が高まる。
 ほとんど膨らんでいない胸に手を這わし、その性徴途上の柔肉を摘んで回すようにして揉んでいく。
「あっ、ああっ……やっ、そんな、あんっ……」
 乳首に吸い付き、舌と唇で優しく愛撫していくと、撫子は激しく頭を振って悶えた。
 幼い体が未知の快感に震えている様は何ともゾクゾクする想いを抱かせ、成人の女を抱く時には存在しない悦びを感じさせた。
(撫子……)
 一旦体を放して上から見下ろすと、クリッとした瞳を潤ませ、惚けた表情であらぬ方向を見つめている撫子の姿があった。
 それは響真の中の凶暴な何かを刺激し、もっともっと撫子を、小さな妹を、この幼い肉体を蹂躙したいという欲求を湧き起こらせた。
「撫子ぉっ……」
 響真は擦れた声で叫ぶと、撫子の体を上から下まで荒々しく舐め回し、己の唾液で塗装せんばかりに舌を這わせていった。
 可愛い顔、幼い体、細い脚……。
 どこを舐めても甘い味がし、滑らかな肌の感触は、たまらない気持ちにさせた。
「んっ……んんぅっ……んっ……」
 そのまま可憐な唇に吸い付き、舌を押し込んで口内を舐め回すと、撫子は体をピクっ、ピクっ、と震わせながら、オズオズと背中に手を回してくる。
 小さな頭を抱え、長い黒髪に指を入れてくしけずるようにして撫でながら、思い切り舌を吸い、激しく唇を擦り合わせていく。
「んっ、んっ……んんぅっ……んぁっ……」
 ようやく唇を放した響真は、小さな胸を大きく上下させて呼吸する撫子の姿を見つめた。
 何と可憐でいやらしい姿だろう。
 これを今自分は自由に貪っているのだ。
 その事に激しい満足感を得つつ、先ほど体中を舐め回した時、唯一触れなかった股間に視線を向ける。
 まだ毛すら生えていない縦筋は、男の進入を拒むかの様に閉じられたままだ。
 しかしそこからは、すでに愛液が垂れており、撫子の体が女として男を受け入れる準備をしているのが分かった。
 ここに自分のモノを入れるのだと思った響真は、ゴクリと唾を飲み込むと、可憐な花園に顔を近づけ、舌を這わせた。
「あっ……兄さま、あんっ……」
 すると可愛らしい声が、甘えるように漏れるのに興奮が高まっていく。
 感じている。
 撫子の秘所は、すでに男の愛撫を感じる事が出来るのだ。
 そう思うと舌の動きにも力が入った。
「あっ、あっ……兄さまそんな、あんっ……そこをそん、ああっ……」
 小さな突起を優しく刺激すると、撫子がピクンピクンと可愛らしく震えた。
 そのまま秘所を舐め回し、吸い付き、指で触れていくと、目の前の幼い肉体は面白いように跳ね、悶えまくった。
 しばらくそうして撫子の可愛らしい様子を楽しんだ後、いよいよとばかりに肉棒を秘所へ近づけていく。
「撫子、入れるぞ……」
 響真の言葉に、朦朧とした様子の撫子が小さく頷いたのが見える。
 妹が自分を受け入れてくれた。
 その事に悦びが溢れる。
 可愛らしい妹と一つになれるのだ。
 激しい満足感を抱きながら腰を進めると、ズブリ、と亀頭が膣穴にハマりこみ、撫子が体を硬直させるのが分かった。
 温かく湿った肉に亀頭が包み込まれるのに、たまらない気持ちの良さを覚える。
 そのままゆっくり肉棒を押し込んでいくと、ある瞬間何かを突き破るような感触を覚えた。
「いぅっ……」
 撫子の苦痛の声により、処女の証を貫いたのだと分かった。
 やがて肉棒の全てが収まり、強烈な締め付けと、ヌメヌメと膣襞が絡みついてくるのに激しい快感が湧き起こる。
 撫子の膣内は肉棒に強く吸い付き、いやらしい蠢きで精を求めてきたため、響真は顔をだらしなく緩めながらその快感に浸った。
 そして体が微妙に動いた瞬間、肉棒が擦れ、それまで以上の気持ちの良さが体中に走った事で、腰が勝手に動き出す。
「撫子っ、撫子ぉっ……」
 それと共に快感も強まったため、響真は撫子の名を叫びながら腰を振りまくり、肉棒が擦れるたびに股間から湧き昇ってくる快感に呻いた。
 まるで童貞に戻ってしまったかのようだった。
 経験者として、処女である撫子をもっと労るべきであるのに、あまりの快感に夢中になってしまっているのだ。
 顔がだらしなく緩み、涎が垂れてくる。
 女とはこれほど気持ちの良いものだったのかという想いが起きてくる。
 いや、女ではない、撫子の体が素晴らしいのだ。
 そう、妹の体だ。
 近しい血肉がこの気持ちの良さを生んでいるのだろう。
 肉親、近しい血肉の交わりは、他人では味わえない快楽を生むに違いなかった。
「いぐっ、いっ……うぐっ……兄さまぁっ……」
 苦痛の声ではあるが、快楽に染まった響真にそれは可愛らしく淫靡に響き、「兄さま」と呼びかけてくるのが、自分が今幼い妹を陵辱しているのだという感覚を持たせて興奮が高まった。
 そう、これは陵辱だ。
 いくら誘われたからとはいえ、幼い妹を抱くなど、陵辱以外の何物でもないだろう。
 己の醜い怒張が、可憐な花びらを淫猥に広げている様は、まさにその象徴に思えた。
 普段抱いている成人女性の体は、いやらしさから興奮したが、今抱いている撫子の体は、可憐で清純であり、そういった想いからかけ離れていた。
 だが可憐で清純であるからこそ、それを陵辱する行為には震えるほどの興奮があった。
 自分がこの清い存在を汚しているのだという想いが、歪んだ悦びとなって激しい興奮を呼び起こすのだ。
「あぐっ、兄さま、いぅっ……兄さまぁっ……」
 頼るようにしがみついてくる撫子の様子は、弱い存在を庇護している満足感と共に、逆に虐げている嗜虐心が刺激され、たまらない快感となった。
 腰を動かせば動かすほど、撫子は自分にしがみつき、痛がりながらもいやらしくくねる。
 それは響真の中の獣欲に火を付け、荒々しい肉欲を高まらせた。
「いぅっ、いっ……あっ、あぅっ……やぁっ……」
 しばらくそうしていると、徐々に撫子の声に艶が感じられるようになり、痛みよりも快感を覚え始めたのが分かる。
 それにより、今度は愛らしさが強烈になっていき、響真は今までとは異なる快楽を感じた。
「あっ、あっ、ああっ……やんっ、やっ、やぁんっ……」
 完全に快楽に染まり始めたらしい撫子は、頭を左右に振り、上気した顔をいやらしく歪ませながら、激しく悶えた。
 白い肌は桜色に染まり、まだ膨らみの薄い胸が、響真の一突き一突きで揺れ動くのがいやらしい。
「やっ、やぅっ……兄さま凄いです、あぁっ……兄さま凄いですぅっ……」
 さらに強烈に快楽を得始めたのか、撫子は涙を流しながら喘いだ。
 細い腕と脚が絡み付き、ギュッとしがみついてくるのが可愛らしくもいやらしい。
 小さな体で響真の与える快楽を受け止めようとしているのが感じられ、その事に激しい悦びと興奮を覚える。
 撫子は、妹は、この幼い少女は、自分のモノなのだ。
 己の欲情をぶつけ、自由に悶えさせていい存在なのだ。
 このままその証を注ぎ込んでやる。
 自分のモノだという確信を得るのだ。
 荒々しい衝動が湧き起こり、射精感が高まっていく。
 撫子の中に、可憐な愛らしい撫子の中に、己の汚らわしい精液を注ぎ込む。
 それは何とも淫猥な悦びを感じさせる事だった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……兄さまわたくしもう、あっ……兄さま、あぁっ……わたくしっ、わたくしっ、わたくしぃっ……やっ、やっ、やぁあああああああああんっ!」
「撫子ぉっ!」
 絶頂に至った撫子の姿に響真も精を放つ。
 ドピュドピュ、ドクドクドクドクドク……。
 激しい勢いで迸る精液と共に、強烈な快感が走り抜ける。
 たまらない気持ちの良さが脳を痺れさせ、射精するたびにそれが強くなる事にうっとりとしながら、響真は次々と精を放っていった。
 しばらくして射精を終えると、撫子の体の上に倒れ込み、そのまま横に転がる。
 ハァハァと荒い息を吐きながら、隣でぼんやりした様子の撫子の顔に見とれる。
 ついに抱いた。
 撫子を抱いたのだ。
 愛しい妹を抱けた事に激しい悦びが湧き起こる。
 だがそれと共に「ついにやってしまった」という恐れも起きた。
 射精して冷静になってみれば、自分のした事はとんでもない行為だ。
 誘惑されたとはいえ、相手はまだ子供。
 そして自分は大人であり、さらには師匠として導く立場であるにも関わらず、幼い誘惑に逆らえなかったのだから情けなかった。
 もし両親や祖父母達に知られたらと思うと、冷や汗が流れる。
「兄さま、ありがとうございました」
 不意に撫子がそう呟いた事にギョッとなる。
 陵辱したのに何故礼を言われるのか分からなかったからだ。
「これでわたくしは、霊媒師としての能力を伸ばす事が出来ます」
 そう言われて思い出す。
 今の交わりは、一族に伝わる秘術なのだという事を。
 一瞬「ならば陵辱にはならないのだ」と安堵する自分に怒りを覚える。
 たとえ秘術であろうが、近親相姦を行うなど許される事ではないのに、己はそれを誤魔化そうとしたのだ。
 そもそもこの秘術という事すら、撫子の妄想でしかないのかも知れないのであり、そうなれば自分は、妄想に染まった弟子を諭せなかった駄目な師匠という事になった。
 何より響真は、秘術のために抱いたのではなく、撫子の肉体に対する己の欲情に基づいて抱いたのだ。
 もしこれが本当に秘術だったとして、そのような態度で行った交わりに効果は発生するのだろうか。
 能力が伸びないとすれば、二重の意味で撫子を汚した事になってしまう。
「大丈夫ですよ。そのような事はありませんから」
 そんな事を思っていると、まるで響真の心を読んだかのように撫子が告げてきたため驚く。
 そして同時に体に緊張が走った。
 撫子の体から、異様な気配を感じたからだ。
 聞こえた声は確かに撫子のものであったが、そこにある気配は、撫子であって撫子ではないものだったのである。
 霊。
 それは霊の気配だった。
 しかも邪な意志を感じさせる悪霊の気配だ。
 撫子の体から、悪霊の気配が感じられているのである。
「貴様、何者だっ?」
 勢い良く起き上がり、距離を取る。
 目の前には撫子の裸身があった。
 先ほどまで好きなように貪り、精液を注ぎ込んだ肉体だ。
 それを思うと肉欲が込み上げてくるが、すぐに抑え込む。
 勃起しかけた肉棒が縮まり、精神が研ぎ澄まされていくのが分かる。
 意識が霊媒師のモノに切り替わったのだ。
 こうなれば少々の事では精神は乱れず、冷静に霊と対峙出来るはずだった。
 修行によって身に付けた意識の切り替えである。
「兄さま何を仰っているのですか? わたくしは撫子です」
 撫子、いや悪霊は、そう呟くとゆっくり起き上がった。
 情事の名残から桜色に染まった肌が色っぽく、微かな胸の膨らみが可愛らしい。
 股間からは、響真の注いだ精液が垂れており、淫靡さを感じさせた。
 美しい黒髪が体にかかるのが色っぽく、思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。
(くっ……一体どうしたというのだ……)
 乱れないはずの精神が乱れている。
 悪霊の発する淫靡な波動に、霊媒師としての意識が揺るがされているのだ。
「お前は撫子ではない。一体何者だ、名を名乗れっ」
「わたくしはわたくし、撫子ですわ」
「嘘を付くな。撫子はこのような……くっ、このような女ではないっ……」
 見ているとどうしても肉欲を高めてしまう肉体から目を逸らし、吐き出すようにして否定する。
「そのように仰らずに。抱きたいのでしたらもう一度宜しいのですよ? 撫子は兄さまならば嬉しゅうございますから」
「馬鹿を言うなっ。お前は撫子ではないっ。撫子に取り憑いた悪霊だっ」
「まあ、悪霊だなんて酷い。わたくしはわたくし、撫子ですのに……確かに普段の撫子とは違うかも知れませんけれど、わたくしも撫子なのですよ?」
「そのような戯れ言を……」
「わたくしは産まれた時から撫子と共に存在しました。そしてずっと一緒に育ってきたのです。ただ表に出ず、ずっと影に潜みながら……辛い時、悲しい時、わたくしは撫子と共に生きてきたのです」
「産まれた時からなどと、そのような事がある訳がない。もしそのような状態で産まれてくれば、父さま達がお前をとっくに祓っているはずだからな。嘘を付くのも大概にしろ」
「ふふ、確かにそれはその通りです。しかしもし祓えぬ理由があるとしたらどうですか?」
「なんだと?」
「一族に伝わる秘術。それがわたくしの存在無しではあり得ないものだとしたら」
「秘術だと? そうか、撫子に秘術の話を吹き込んだのはお前だな?」
「吹き込んだなどと……わたくしはただ、お爺さまも父さまも秘術によって能力が伸びた事を教えただけです」
「それを吹き込んだというのだ。そのような事で能力が伸びる訳がない。お前はそうやって撫子を騙して私に……」
 そこまで言いかけて、その先の事は自分にも責任がある事に気づいて口ごもる。
 いくら撫子が悪霊にそそのかされて交わりを望んだとしても、響真自身がそれを否定すれば済んだことなのだ。
 それを自分は受け入れてしまった。
 悪霊のことばかり責められないのである。
「ふふ、お気になされているのですね、わたくしを抱いたことを。ですが撫子は喜んでおりますよ。何しろ大好きな兄さまに抱かれたのですから」
「言うなっ」
 撫子が喜んでいるとなれば余計に辛かった。
 もし秘術というものが本当にあり、それを理由にして交わるにせよ、それは儀式として行うべきであって、情愛で結ばれてはならないのだ。
 撫子がもし本当に喜んでいるのだとすれば、それは兄妹の禁忌の交わりを求めた事になり、そのような不浄な想いは許されない事だった。
 そして響真自身、交わっている最中は、撫子と結ばれることしか頭に無かったのであり、兄妹共に、許されぬ感情から不義の交わりを結んだ事になった。
「その様に苦悩されずとも宜しいではないですか。お爺さまもお婆さまも、そして父さまも母さまも愛し合って結ばれ、能力を伸ばされたのですよ。撫子も兄さまを愛しているがゆえに抱かれました。兄さまは違うのですか?」
 そう言われてハッとなる。
 自分に愛情はあったのだろうか。
 ただ汚れた欲から、撫子の体を求めただけではないのか。
 そう考えると、祖父母や両親と違って肉欲で妹と交わった事になり、己だけが下劣な存在に思えてくる。
「私は……私は……」
 激しい懊悩が響真を襲った。
 秘術のためでなく、愛情からでもなく、単に肉欲で妹を抱いた自分。
 無論、家族愛ならばあるが、それは妹と交わる愛ではない。
 たとえ許されぬ想いだとしても、愛し合って結ばれるのならば、まだ美しさはあるだろう。
 しかしただ肉欲の対象として、庇護すべき妹を抱くなど、畜生以下の行為ではないか。
 響真は床に手を付くと、苦しげに呻いた。
「肉欲と愛は表裏一体。人は愛するがゆえに交わり、交わったがゆえに愛するようになる」
 不意にそれまでと異なった、抑揚のない冷たい声がそう告げてきた。
 ハッとなって撫子を見ると、そこには表情の無い、誰が見ても撫子とは思えない人物が立っていた。
「お、お前は……お前は何者だ……」
 心臓を鷲掴みにされたかのような衝撃が体を走り抜け、心が冷水を浴びせられたかのように恐怖に震える。
 今まで多くの悪霊と接してきたが、ここまで恐ろしさを感じさせた存在はなかった。
 これがこの悪霊の本性なのだろう。
 今までは撫子の人格を模倣していただけであり、この冷たい、感情の無い様子こそが悪霊の本性に違いなかった。
 悪霊の強力な「気」が膨れあがり、響真を覆ってくる。
 それと共に肉欲が爆発的に強まり、股間の一物が痛いほどに勃起した。
「兄さま、抱いて下さい……」
 撫子の姿で、撫子の声で、撫子ではないモノが呼びかけてくる。
 それが徐々に近づいてくるのに恐怖が湧き起こるが、動くことは出来なかった。
 単に恐ろしさのためだけでなく、目の前の女体を抱きたいという欲求が激しかったのだ。
 先ほど味わった肉体の感触が蘇り、肉棒がいきり立つ。
 強烈な色香が漂い、十二歳の幼い肉体と絡み合って、恐ろしいまでのいやらしさを感じさせた。
 この肉体を抱きたい。
 この肉体を貪りたい。
 この肉体の中に思い切り精を注ぎ込みたい。
 男としての本能が、強烈なまでに求めていた。
「うおぉっ……!」
 一度破ってしまった禁忌は、もはや止める事など出来るはずもなく、響真は目の前まで寄ってきた女体を、強く抱き締めると押し倒した。
 そのまま我慢出来ないとばかりに脚を開き、肉棒を秘所へと押し込んでいく。
「あ……」
 ズブリと肉棒が一気に収まるのと同時に、か細い声が耳に響き、響真は勢い良く腰を振り始めた。
「あっ、あっ、ああっ……」
 肉棒を突き込むたびに白い顎が仰け反り、甘い吐息が漏れ聞こえる。
 小さな体は快楽にくねり、求めるようにして響真にしがみついてきた。
 細い腕と脚が絡みついてくる様は蛇を思わせ、その淫らな動きにゾクリとした興奮が湧き起こる。
 膣内でも、肉棒にいくつもの小さな蛇が絡みついているかのような感触が襲い、その耐え難い刺激に、響真は頭を仰け反らせた。
 時折こちらを見上げてくる瞳は、いやらしく誘う視線を放ち、半開きになった口からは、赤い舌が伸びて上唇を舐めている。
 元々白い肌は、白さを増したように思え、こちらが触れた箇所が赤くなっていくのが、己がこの女体を征服している想いを呼び起こしてたまらなかった。
(これは、撫子ではない……)
 あまりに淫靡に男を惑わす体の動き、反応。
 処女を失ったばかりの少女が見せるものではないだろう。
 まるで熟達した遊女のようなその所作は、さして女性経験のない響真を強烈に魅了していった。
 見つめる姿、耳に響く喘ぎ、触れる箇所全てから感じる快感は、たまらない刺激となり、特に肉棒を包み込む襞は絶品で、押し込めば吸い込み、引けば逃がすまいと吸い付いてくるのに腰が抜けそうな気持ちの良さを覚える。
(あり得ない……撫子の体でこのようなこと……)
 先ほど貫いていた撫子の膣は、もっと硬く、男を受け入れがたい感触を持っていた。
 それが今は肉棒を蕩けさせるほどの快楽を与えてきているのだ。
 悪霊の力が撫子の肉体をも変貌させているのだろうか。
 それは恐ろしい発想だった。
 このままでは撫子は、悪霊に体を奪われてしまうだろう。
 そのような事をさせてはならなかった。
「くっ……」
 だが強烈な刺激を感じれば、そうした想いも消えてしまった。
 あまりにも気持ち良すぎるこの体。
 この女肉を貪らないではいられないのだ。
 そうした内心の苦悩と比例するかのように、腰の動きも速まっていく。
「ああっ、あっ、あんっ……はっ、はぅっ、はぁっ……」
 小さな口から可愛らしい喘ぎが漏れ、幼い体が拙くくねる。
 先ほどの冷たさが嘘のような、いつもの撫子に思えるその様子に、響真は悪霊を抱いているのか撫子を抱いているのか分からなくなった。 
 ただ言えるのは、どちらにせよ、自分はもうこの体から離れられないだろうという事だった。
 今まで抱いてきた女の体が霞むほど、撫子の体の気持ちの良さは格別だったのだ。
「やんっ、やぁっ……兄さま、ああっ……兄さま凄いですぅっ……」
 こうして呼びかけてくる姿は、まるきり撫子でしかなかった。
 何が取り憑いていようとも、今自分が肉棒を突き込んでいるのは撫子なのだ。
 だったらそれで良いではないか。
 もっと撫子と快楽を与え合えばいい。
 自分たちは仲の良い兄妹なのだから……。
 心の片隅で「それでは悪霊の思う壺だ」と囁く声があるが、響真は気にしなかった。
 すでに禁忌を破った身。
 それ以上何があるというのか。
 悪霊の目論見に乗せられようがどうでもいいではないか。
 撫子をもっと可愛らしく喘がせ、互いに気持ち良くなっていく方が大事だ。
 もっともっと撫子と交わり合わっていかなければ……。
 日頃の自分であれば絶対に発想しない想いが心を満たしていく。
 そしてそれにより、心が軽くなるのを感じた。
(ああ……私は今まで何に拘っていたのだろう……衝動のまま可愛い撫子を抱く。それに何の不具合があるのか……)
 快楽に染まった響真の頭は、撫子を求める事で一杯だった。
 心の片隅で「これは許されない事だ」と理性が叫ぶが、そう思えば思うほど興奮が高まるから不思議だった。
 血の繋がった妹を抱くのには、他の女を相手にする時には存在しない、背徳的な興奮があり、それは今まで味わった事のない、蕩けるような気持ちの良さを感じさせた。
 もっとこの快楽を味わいたい。
 響真はその強い想いに押されながら、撫子の体を荒々しく貪っていった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……兄さま、あぅっ……兄さまいいです、あぁっ……気持ちいいです、やっ……わたくし、あんっ……気持ちいいのぉっ……」
 自分の行為で妹が激しく乱れている。
 それは響真に何とも言えない悦びを感じさせた。
 自分は今、血の繋がった妹を犯し、その肉を味わう事を楽しんでいる。
 兄妹でありながら、肉欲の快楽に堕ちていっているのだ。
 それは何とも恐ろしく、それでいて甘美な想いを抱かせる事だった。
「あっ、はんっ……やっ、兄さま、はぅんっ……いいの、いいっ……兄さま素敵ですぅっ……」
 肉棒を突き込むたびに性徴途上の幼い体がくねり、可愛らしい顔が淫靡に歪む様は、ゾクゾクするような興奮を呼び起こし、胯間から湧き昇る快感は、響真の体を縛り付けた。
 もっとこの快楽に浸っていたい。
 撫子とさらに気持ち良くなりたい。
 妹と一緒にこの快楽地獄に堕ちていきたい。
 禁断の交わりをこれからもしていきたい。
 響真の心と体は快楽で一色だった。
「撫子っ、撫子ぉっ……」
「兄さまっ、兄さまぁっ……」
 兄妹は見つめ合い、互いを雄と雌と認め、気持ちの良さを求めて絡み合った。
 許されない血肉の交わりは、何と甘美な味わいなのだろう。
 意識が蕩けるほどのその快感に、兄妹はそれまで以上に強く抱き締め合うと、互いの性器を激しく擦りつけていった。
「やっ、やぁっ……兄さまわたくし、ああっ……わたくし、あんっ……駄目、あっ……そんな、はぅっ……あっ、あっ、ああんっ……」
 強烈に喘ぐ撫子の様子に、響真の射精感も一気に高まり、そのままその快感を解放しようと激しく腰を振っていく。
「あんっ、あんっ、ああんっ……凄いですっ、凄いですっ、凄いですぅっ……もう駄目、あっ……もう、ああっ、もう駄目なのぉっ……やっ、やっ、やぁああああああああっ!」
「うぁっ!」
 撫子の体が跳ね、強く硬直すると、膣内も締まり上がった。
 その刺激に響真は精を放ち、ドクドクと迸る精液の感触にうっとりとなる。
 今自分は撫子の中へ、幼い妹の中へ精液を注ぎ込んでいるのだと思うと、何とも言えない達成感と満足感が湧き起こった。
「はぁ……あ……」
 甘い吐息を漏らしながら、時折ピクピク体を震わせている撫子の姿は、可愛らしくもいやらしく、その様子を見ながら最後の精を放ち終えた響真は、ゆっくりと倒れ込んだ。
 小さな肉体がこちらの体を受け止め、温かな肉と滑らかな肌の感触に心地良さを覚える。
 間近にある幼い顔は、快楽に蕩け、潤んだ瞳はうっとりとこちらを見つめていて、全てを委ねて安心しきったその表情は、響真に強い誇らしさを感じさせた。
(撫子……何と可愛らしい……)
 この様に愛らしい存在の中に精を放てた事は、本当に素晴らしい事だった。
 今まで抱いてきた女が霞むほどに、撫子との交わりは本当に気持ち良かった。
 もっと撫子を抱きたい。
 もっと撫子と気持ち良くなりたい。
 響真の頭は撫子との交わりで一杯だった。
「撫子ぉっ……」
 響真は抑えきれない肉欲に押されながらそう叫ぶと、鼻息を荒く吐き出しつつ、自らが汚した妹の可憐な花園に、再び怒張した肉棒を押し込んでいくのだった。


「消せた……消せました兄さまっ……」
 撫子は大きく目を見開きながら、弾んだ声をあげている。
 目の前にある燭台には、火が消えたばかりのロウソクから煙が立ち上っていた。
 これまで消すことの出来なかったロウソクの火を、撫子はついに消す事が出来たのだ。
 それは本来喜ばしい事であったのだが、そうなった原因が昨夜の交わりにあったのではないかと思うと、響真は素直に受け入れられなかった。
 あの時は肉欲で頭がおかしくなり、無我夢中で撫子を抱いてしまったが、冷静になって考えてみれば、恐ろしいことをしてしまったと気づいたのだ。
 あれは近親相姦であり、しかも悪霊に操られての交わりとあっては、二重の意味で恐ろしい事だった。
 こうして悪霊の言った通りに撫子の能力が上がっているという事が、さらに恐ろしさを感じさせた。
(偶然だ。そうに決まっている……)
 そう自分に言い聞かせるが、偶然ではないと思っている部分の方が大きかったため、苦悩の想いが強まっていく。
「これも全て兄さまのおかげです。ありがとうございました」
 撫子は頭を下げると、涙ぐみながらこちらを見つめている。
 その視線には、兄に対する妹のもの以上の想いが感じられ、響真は落ち着き無く頷くことしか出来なかった。
 何より響真自身、撫子の体を男の視線として見つめ、肉棒を硬くしてしまいそうになっていた。
 昨日まではただの妹であった存在が、他の女では味わえない快楽を与えてくれる存在だという事を知ってしまったためだ。
 この幼い肉体のどこに自分を狂わす力があるのか不思議だったが、それは事実であり、今もその肉体の感触を思い出すだけで肉欲が激しく高まった。
 響真の目は撫子の幼い胸や細い腰を見つめ、今すぐにでも服の下にある白い肌を舐め回したい衝動に駆られており、その事に兄としての理性が苦悩する。
「兄さま……」
 響真のいやらしい視線に気づいたのか、撫子は少し恥ずかしそうにした後、ゆっくりと傍へ寄ってくる。
 そしてほとんどくっついた状態になると、下から上目遣いで見つめてきた。
 その幼いが、熱い欲情を感じさせる視線にさらされた響真は、抑えがたい肉欲を覚えた。
「撫子、見事だった……」
 擦れた声でそう告げながら、己の心臓が早鐘のごとく鳴っている事に動揺する。
 昨日まではこの様な事は無かったというのに、今や撫子に近づかれただけで抱き締めたくなる衝動に駆られているのだ。
 もしこれが自室であれば、すぐにでも押し倒していただろう。
 神聖な修行場でいかがわしい行為をする訳にはいかない、という霊媒師としての理性が何とかそれを抑えているのだ。
「今日の修行はこれまで。明日からは別の事を行う。以上だ」
 早口でそう告げ、この拷問とも思える何も出来ない状況から逃れようとする。
 だが脚は一向に動くことがなかった。
 それはまるで、撫子に触れずに去る事を体が拒否しているかのようだった。
 いや、体だけではなく心も拒否しているのだろう。
 可愛らしい妹を抱き締めずに去るなど、耐え難い事だったからだ。
「兄さま、宜しければ今夜も……そ、その……秘術を……お、お願い致します……」
「!……」
 恥ずかしげにそう告げてきた撫子に驚愕する。
 今口にした言葉は、すなわち交わりを要求している事であり、大人しい撫子がそのような事を自ら望むとは信じられなかったからだ。
 その黒い瞳はジッとこちらを見つめ続け、一向に外れる事はなかった。
 以前は目を合わせるたびにオドオドしていたにも関わらず、今やこちらがたじろぐほどの熱い視線を向けたまま、全く外そうとしないのである。
「わ、わたくしはもっと……能力を伸ばしたい、のです……はしたないと思われても仕方、あ、ありませんが……兄さまに、していただけるのでしたら……その、安心ですし……昨夜の秘術の成果も、こ、このように出ておりますから……さらに秘術を行えば、わたくしの能力も伸びて……そ、そうしていく内に、きっと一人前の霊媒師に……な、なれるのではないかと……」
 顔を真っ赤にし、たどたどしく述べてくる撫子は、たまらない可愛らしさの塊だった。
 こちらを見上げる瞳は潤み、不安そうに、それでいて熱い視線を放っている。
 愛らしい。
 自分の妹は何と愛らしいのだろう。
 この様な存在を愛でずにいるなど不可能だった。
「撫子っ……」
 ついに我慢できなって強く抱き締めると、撫子は一瞬驚いたようにして体を硬直させたが、すぐに安心したような吐息を漏らした。
 その様子を可愛らしく感じつつ、とうとう神聖な修行場を汚してしまったという後悔が湧き起こる。
 だがそれは、伝わってくる撫子の温かさでどうでもよくなった。
 そもそもすでに禁忌は破っているのだ。
 今更場所程度の事を気にして何になるだろう。
 自分たち兄妹は、霊媒師として、人として道に外れた行為をしてしまったのだ。
 だったら他の事など、もうどうでもいいではないか。
「兄さま……んっ、んんっ……」
 響真は腰をかがめ、撫子の体を持ち上げるようにすると、荒々しく唇を重ねていった。
 小さな舌に吸い付き、強く絡みつかせていく。
 その激しい口づけに、可愛らしい鼻から棒のような息が漏れた。
「んっ、んふぅっ……んっ、んっ、んんっ……」
 修行着である白衣の合わせから手を差し入れ、膨らみかけの胸を優しく揉みしだくと、撫子が強くしがみついてきた。
 そのまま首筋を舐め回しつつ白衣をはだけ、白い肌を顕わにしていく。
 昨夜と異なり、日の光にさらされた肌は、眩しいほどの白さを放っており、そこに舌を這わせていくと、何とも言えない悦びが生まれた。
 白い膨らみの中で二つの突起だけが桜色をしており、それが何とも美しい。
「あんっ、あっ……兄さまそこは、やんっ……修行場でそこまでしては、ああっ……いけないで、やぁっ……」
 乳首に吸い付いて舐め回し、舌で愛撫すると、撫子は軽い抵抗を示した。
 響真と同じく、修行場で性的行為を行う事に禁忌の想いがあるのだろう。
 だがすでにその想いを振り切っている響真には意味の無い事だった。
 いや、こうした言葉を発し、禁忌を恐れる撫子の態度は、興奮をさらに高めるという点では意味があった。
 何しろ抵抗された事で、肉棒がさらにいきり立ち、響真の肉欲も激しくなったからだ。
「秘術をしたいと言ったのはお前だぞ? 今更嫌がるでない」
「そ、それは夜に、あんっ……兄さまの部屋で、あっ……修行場は神聖な場所ですから、あぁっ……このような事をするのは、ああんっ……」
「神聖な場所ゆえに、秘術を行うのだ。例えそれが汚れた兄妹の交わりであってもな」
「嫌っ。そんな風に仰らないで下さい、あんっ……汚れてなど、ああっ……違います、やぁっ……」
 袴の中に手を差し入れて秘所を撫でると、撫子はピクッと体を可愛らしく震わせた。
「そうは言ってもな、この交わりが汚れているのは事実だ。兄と妹が互いの肉を求め合うなど許されぬことなのだから」
「あっ、ああんっ……言わないで下さい、あっ……そんな風に言わないで下さ、やぁっ……」
 そうして否定するものの、それに比例するように撫子の体は反応を激しくしていた。
 その事に楽しさを感じつつ、響真はさらに愛撫を強めていった。
「ひゃうっ……そんな、あっ……そんなとこ駄目、あっ……兄さま駄目です、あんっ……そこをそんな風にしたら、やぁんっ……」
 秘所の突起を強めに刺激すると、撫子は体をビクッビクッと震わせ、涙目になって喘いだ。
 可愛らしい妹は、今や響真の指の動き一つで悶えるオモチャだった。
 それはとても昨夜まで処女だった十二歳の少女とは思えない反応の良さであり、敏感さだった。
 やはり悪霊に取り憑かれている事で、その肉体も常人とは異なる状態になっているのだろうか。
 より男を求め、男が悦ぶ反応を示す体に……。
 その事に悲しさを感じつつも、腕の中にある小さな肉体を意識してしまえば、もっと撫子を抱きたい、支配したい、という想いで一杯になった。
「撫子っ。秘術だ、秘術を行うぞ。いいなっ」
 そう叫んで己の中にある罪悪感を誤魔化した響真は、その幼い体を床に寝かせると、自らの下着を剥ぎ、撫子の細い両脚を左右に開いてのし掛かっていった。
「はい。お願い致します。秘術を、秘術をして下さい、兄さ、あぅんっ……」
 嬉しそうに微笑む撫子に頷きながら、膣穴へと肉棒を押し込んでいく。
 すぐさま温かで湿った肉が肉棒に絡み付き、締め上げ、嬲ってくるのに快感の呻きを漏らす。
 これまで何人か女を抱いて来たが、これほど気持ちがいい膣は無かった。
 撫子はまさに別格であり、それは男を極楽へと導く穴だった。
 また眼下には、修行着をはだけ、白い肌を覗かせている幼い肉体があり、それを見ているだけで肉棒が強く震えた。
 クリッとした黒い瞳は、快楽に染まり始めたためか、あらぬ方向を見ており、その様子は幼いだけにより淫靡さを感じさせ、響真は抑えきれない自分を感じた。
「撫子ぉっ……」
「あっ、あっ、ああっ……やっ、兄さまいきなり、ああっ……激しいで、ああんっ……」
 思い切り強く突きまくると、撫子は一瞬驚いた表情をした後、押し寄せてくる快感に喘いだ。
 袴から伸びる白く細い脚を抱えるようにして持ち、体重の軽い体に勢い良く突き込んでいく。
 そうやって性器同士を擦らせていると、信じられない快感が湧き起こり、響真は涎を垂らさんばかりに腰を振りまくった。
 昨夜も味わった訳だが、撫子の体は極上すぎた。
 一旦肉棒を押し込み、腰を動かし出すと、止まれなくなるほどに気持ちが良すぎるのだ。
 そしてそれは膣の感触だけでなく、両腕で抱えている太ももや、手のひらで掴んでいる胸なども、触れているだけで心地良かった。
 まるで体全体、肌の全てから男を悦ばせる何かが発せられているかのようだった。
「やっ、やぅっ、やぁっ……兄さま、あんっ……兄さまもっと、あぁっ……兄さまもっとお願いしますぅっ……あんっ、あんっ、ああんっ……」
 普段の消極的な態度とは異なり、積極的に快楽を求めてくる撫子の言葉に興奮が高まる。
 淑やかな妹が、はしたなく乱れている姿がたまらないのだ。
 何よりそうさせているのが他ならぬ自分だと思うと、支配欲、征服欲が刺激され、もっともっと撫子を乱れさせたくなった。
「はぅっ、はっ、はぁんっ……いいっ、いいっ、いいですぅ、ああっ……わたくし、あっ……わたくしおかしく、やぁっ……おかしく、あぁっ……おかしくなっちゃうのぉっ……」
 細い肩を両手で掴んで押さえ込み、貫かんばかりに肉棒を叩き付けていくと、撫子は狂ったように頭を振って悶えた。
 長い髪が激しく揺れ、汗で額についているのが色っぽい。
 潤んだ黒い瞳は焦点が合っておらず、意識は快楽に染まっているようだ。
 小さな口からは涎が垂れ、細い手脚はすがるように響真の体に絡みついてきた。
 その様は、幼くか弱い可憐な少女のものでもあり、それでいて男を求め、快楽を欲する淫蕩な女のものでもあった。
「あっ、あっ、ああっ……やっ、やっ、やぁっ……」
 耳元には可愛らしく甘い吐息が腰の動きに合わせて発せられ、その幼い少女の声でありながら淫靡さをも感じさせる声に、響真の興奮は最高潮に達していった。
(あの撫子が、こんなにもいやらしく……)
 妹の変貌ぶりを感じると共に、脳裏に昔からの思い出が蘇った。
 自分を慕い、どこにでも付いてきた幼い頃の撫子。
 鬱陶しく感じつつも、嬉しくも思っていたものだった。
 思えばあの頃から自分の心には、撫子に対する愛おしさが生まれていたのだろう。
 そんな少女を、今自分は抱いている。
 肉棒で貫き、喘がせているのだ。
 まだ女と呼ぶにはふさわしくない幼い体でしかない妹を……。
 自分の腰の動きで喘ぎ、悶えるその姿を見ていると、強い想いが湧き起こった。
 撫子の全てを、己のモノとしたい欲求が……。
 これは愛。
 愛なのだろう。
(そうだ、私は撫子を愛してる。愛しているのだ……愛しい撫子、可愛い撫子……ああっ、撫子っ、撫子ぉっ……)
 響真の心はいつしか撫子に対する愛情で溢れていった。
 それはすでに家族愛を越えた、一人の女を己のモノとしたい欲求だった。
 快楽がそうさせたのだ。
 人は己を気持ち良くしてくれる者を愛するもの。
 快楽が愛を生むのだ。
 そして愛ある快楽はさらなる快楽となり、愛を強めていく。
 今や響真の心は、撫子への愛で一杯だった。
「撫子っ、撫子ぉっ……愛している、愛してるんだっ……」
 そうする事で己の愛が伝わるのではないかと思いつつ、響真は叫びながら激しく腰を振っていった。
「あんっ、あんっ、ああんっ……兄さま、あぅっ……兄さまわたくも、あぁっ……わたくしも兄さまを愛しています、やっ……愛しているのですぅっ……」
 撫子のその返事に、強い愛情と気持ちの良さが湧き起こる。
 ああ、自分たちは愛し合っている。
 そして快楽を与え合っている。
 何と幸せなことか……。
「撫子ぉっ……」
「兄さまぁっ……」
 兄妹はそれまで以上に強く抱き締め合うと、お互いの性器を激しく擦りつけ合った。
「あっ、あぁっ……兄さまわたくし、あんっ……わたくしもう、ああっ……わたくしもう駄目です、やぁっ……」
「私もだっ……私ももうっ……一緒に、一緒にイくぞ撫子っ……」
「はいっ、はいっ、ああっ……兄さまと一緒に、あぅっ……兄さまと、あぁっ……やっ、やっ、やぁあああああああああっ!」
「うぁっ!」
 撫子の絶頂に合わせて精を放つ。
 激しい勢いで精液が迸り、幼い膣の中へと注がれていく。
 響真はギュッとしがみついてくる小さな体に嬉しさを感じつつ、肉棒が震えるたびに押し寄せてくる快感にうっとりとなった。
(ああ、やはり撫子の中に出すとたまらない……信じられない気持ちの良さだ……撫子は素晴らしい……ああっ、何と素晴らしいのだ……)
 今や響真にとって撫子は、世界で最も素晴らしい女性だった。
 他の女など比較にならない、眼中にない存在となっていた。
「はぁ……あ……にぃさまぁ……」
 体をピクピクと震わせながら、撫子は可愛らしく吐息を漏らしている。
 その様子を見つつ射精を終えた響真は、何とも言えない満足感に浸った。
 しばらく抱き締め合ったまま、撫子の存在を強く意識する。
「撫子……私はもう、お前しか見えない。愛している。愛しているぞ……」
「わたくしもです、兄さま……わたくしは幼い頃より、ずっと兄さまを、兄さましか見てきませんでした……愛しています。愛しています……」
 響真の告白に応える撫子の言葉は、兄妹として本来許されぬものであり、今までの響真であれば、叱りつけるどころか汚らわしさすら感じたかも知れない。
 だが今の響真はそれが嬉しかった。
 幼い頃から自分を見つめ続け、愛してきてくれた妹。
 そして自分も、撫子を見守り、愛してきた。
 今まではそれに気づかなかっただけだ。
 自分たち兄妹は、悪霊の事があろうと無かろうと、おそらくこうなっていたに違いない。
 しょせん悪霊の事など、きっかけにしか過ぎなかったのだ。
(肉欲と愛は表裏一体。人は愛するがゆえに交わり、交わったがゆえに愛するようになる)
 昨夜聞いた悪霊の言葉が頭に蘇る。
(そうだ。確かに最初は肉欲だったのだろうが、それによって私は撫子を愛する事が出来るようになった。ならばあれも正しい事だったのだ……)
 己の行為を肯定する事の出来る言葉に喜びが溢れる。
 自分は肉欲で妹を陵辱したのではない。
 愛に目覚めるために抱いたのだ。
 響真は歓喜の想いに包まれると、撫子を強く抱き締めた。
 二人は見つめ合い、自然と唇が重なっていく。
「撫子……」
「兄さま……」
 舌が絡み合い、頭を左右に振って互いの唇を貪り合う。
 そのまま惹かれ合う肉体は、再び繋がっていった。
 やがて妹の口から可愛らしい喘ぎが漏れ、それによって兄の腰の動きが激しさを増し、兄妹は荒々しく交わっていくのだった。


「あっ、あっ、ああっ……」
 裸で四つんばいになった撫子を、同じく裸の響真が背後から貫いていた。
 胯間から伝わってくる気持ちのいい感触に、思わず呻いてしまう自分に苦笑する。
 あれから数日が経ち、お互いの愛を確認し、快楽に溺れた響真と撫子は、毎日交わっていた。
 家族にはすでに二人の関係は知られていたが、咎められることはなく、ただ祖母だけが悲しげに「やはりそうなってしまったか……」と呟いただけだった。
 響真はその言葉から、以前悪霊の言っていた秘術の内容が事実なのだと確信した。
 実際撫子の能力は交わって以来、比較にならないほど伸び、今や自分に匹敵するほどにまで成長していたのだ。
 そして先祖の残した書物を読んでみても、確かにその事が書かれてあったため、あの悪霊は嘘を付いていなかったという事が分かった。
 響真は先祖の残した書物を多く読んできた訳だが、何故今までその事を知る機会が無かったのかと言えば、秘術について書かれてあったのが、日記の類のものだったからだ。
 響真は主に修行のために書物を読んでいたため、日記などはあまり役に立たないだろうと思い、読んでいなかったのである。
 しかしいざ日記を読み始めてみると、多くの先祖が秘術を行っている、つまり近親相姦をしている事実が記されていたため、そのあまりの事に衝撃を受けた。
 そしてそこには、さらに驚くべき事が記載されていた。
 悪霊の存在だ。
 近親相姦に至るきっかけとなるのが、悪霊に取り憑かれた者による誘惑であり、そうして交わった者達は、必ず子を成しているのである。
(まるでそのままではないか……)
 悪霊に聞かされた祖父母と両親の事、そして現在の自分と撫子の関係。それらは日記に書かれている状況と同じだった。
 恐らくこのまま撫子と交わり続ければ、二人の間にも子が出来るだろう。
 そしてその子が成長した暁には、悪霊が取り憑き、肉親と交わるための誘惑が行われる可能性があった。
(一体何なのだ、何が狙いなのだっ……)
 先祖の記した悪霊が、今自分の対している悪霊と同じ存在とは限らないが、あまりにもやり口が似ていたため、同一のものと考えた方が自然だろう。
 だとすれば、このように近親相姦を繰り返させ、子を成させていくことにどんな意味があるというのか。
 響真は訳が分からなかった。
「あんっ……兄さま、ああっ……兄さま凄いですぅっ……」
 振り返り、いやらしく呼びかけてくる撫子の声に意識を戻す。
 白い背中が汗で濡れ、淫靡な光を放っているのに興奮が高まる。
 微かな胸の膨らみが振動で揺れ、それを背後から掴むと、正常位でしている時よりも肉の感触を覚えた。
 そう言えば、最近胸が大きくなってきたように思いつつ、それが自分との交わりの影響なのかと思うと、嬉しさが込み上げてきた。
 こうして交わり続けていく内に、やがて撫子も性徴し、完全な女となるのだろう。
 そして自分の子を宿すのだ。
 妹を孕ませる。
 それは何ともゾクリとした想いを抱かせ、響真は激しく腰を振っていった。
「あんっ、ああっ……それ凄い、あっ……それ凄いです、あんっ……凄いです兄さまぁっ……」
 突き込むたびに小さな頭が仰け反り、長い髪がバサバサと動く。
 白い肌に黒い髪がかかるのは、何とも言えず色気を感じさせ、肉棒がグンッと力を増した。
 小さな尻を掴み、ズンズンっと強く突き込むと、体重の軽い体が前へ動いてしまうのを引き戻す。
 こうして背後から見下ろしていると、己の抱いているのがまだ幼い少女なのだという事が再認識され、何とも言えないゾクリとした想いが湧き起こった。
 撫子を愛している事に嘘偽りは無いが、やはり幼い妹を抱いているという事実は、背徳的な想いを抱かせ、興奮を呼び起こすのだ。
 これまで生真面目に生きてきただけに、禁忌を犯している事がいつまでもしこりとなって残っていたのである。
 だがそれゆえに背徳感も強まり、結果、撫子にさらに夢中になる要因となっていたのだった。
「ああんっ、あっ、やぅっ……兄さまっ、兄さまっ、兄さまぁっ……わたくしもう、ああっ……わたくしもぉっ……」
 限界が近いらしい撫子に合わせようと、響真も激しく腰を振っていく。
 その突き込みに耐えられなくなったのか、撫子は腕を崩し、上半身を布団に押しつける体勢になった。
 その事が征服欲を刺激し、射精感が一気に高まっていく。
「あっ、あっ、あぁっ……駄目っ、駄目っ、駄目ですぅっ……兄さまっ、兄さま、にぃさまぁっ……やっ、やっ、やぁああああああああんっ!」
「撫子ぉっ!」
 兄妹の叫びが重なると共に、幼い膣に精液が迸った。
 ドクドクドクと勢い良く注がれていく精液を感じながら、また撫子と気持ち良くなれた事に嬉しくなる。
 もう何度撫子の中に精液を出しただろうか。
 そんな事を思いながら射精を終えた響真は、ゆっくりと倒れ込んだ。
 隣で呼吸を荒げつつ、幸せそうな笑顔を浮かべている撫子に見惚れる。
 自分はこの愛らしい少女を、ずっと愛していくのだ。
 響真はそんな事を思いながら、愛しい撫子の体を優しく抱き締めると、すでに復活している肉棒を、その幼い膣に押し込んでいくのだった。


 撫子が妊娠をした。
 その知らせを聞いた響真は、愛する妹が己の子を身に宿した嬉しさに包まれた。
 妊娠するであろう事は予想していたが、それが現実となった事に激しい喜びを覚えたのだ。
 一方、そうした事とは別に少々気になる事もあった。
 性欲の減退である。
 以前は毎日抱かずにはいられないほど撫子に対して欲情していたのだが、それが並の状態になったのだ。
 抱かないでいると落ち着かない状態であったのが、自然に抱かないでいられるようになったのである。
 とはいえ普通に性欲はあったため、全く抱かなくなった訳ではないのだが。
 実際今日も撫子と交わっているのであり、一旦抱き始めてしまえば、これまで通りの気持ち良さを感じていた。
 問題は抱きたくなる衝動と、一度に抱く回数の減少だった。
 それが急激に減ったため、不審に思っていたのである。
 何度目かの性交の後、息を切らしながらそんな事を考えていると、不意に隣から怪しげな気配が起きたため意識を切り替える。
 悪霊だ。
 初めての時以来、悪霊は時折こうして現れ、響真に話しかけてくる事があったのである。
「ようやく子が成りました。兄さまには感謝させていただきます」
 悪霊は起き上がり、布団の上に正座をするとそう告げてきた。
「別にお前に感謝されるいわれはないがな。お腹の子は、私と撫子の子なのだから」
 響真も同じように起き上がって胡座をかくと、感謝の言葉を否定しようとそう述べた。
「いえ、わたくしがこれまで一族に対して行ってきた事を知りつつも、こうして子を成して下さった事に感謝しているのです」
「それも感謝するに当たらん。私は撫子との子が欲しかっただけなのだから」
「ですが一族の中には、わたくしに操られて子を成す事を避けようとした方もおりましたから、そうしないで下さった事に感謝しているのですわ」
「ふん、どうせ私が嫌がっても、無理矢理子を成させたのだろうが」
 今悪霊自身が述べたように、先祖の中には悪霊に取り憑かれた家族を抱くまいとした者もいたらしい。
 しかしそれは長続きせず、結局は交わり、子を成してしまった事を悔やむ内容の日記があったのだ。
 それだけ悪霊の力が強いという事なのだろう。
「ふふ、それはそうですが、やはり強引に抱かせるのは気が引けるものなのですよ。ゆえに喜んで抱いて下さる兄さまのような方は嬉しいのです」
「だからそれは撫子と……などと言っても切りがないのであろうな。それより聞かせろ。このように近親で子を成させてお前はどうするつもりなのだ? お前に何の得がある? 何が目的でこのような事をしているのだ」
 それは以前から気になっていた事だった。
 普通悪霊は、取り憑いた体で己の目的を果たそうとするのだが、この悪霊にはそういった事をしている様子が無かったからだ。
 先祖の残した日記にも、近親相姦を促された事しか書かれていなかったため、一体何のために取り憑いているのか分からなかったのである。
「新しい肉体を得るためです」
「新しい肉体、だと?」
 その言葉の意味するところが分からない響真は眉を寄せた。
 何故なら肉体であれば、取り憑いた事で過去に何度も手に入れているからだ。
「それは今まで何度も得ているではないか。ご先祖さまの肉体、そして今も撫子の体をお前は得ている。私が聞いているのは、その上で何をしようとしているのかという事だ」
 そう告げると、悪霊は少し微笑んだようにした後、顔から表情を消した。
 その事にゾッとなる。
「兄さまは勘違いをなさっています。わたくしが言っているのは、他者の肉体の事ではありません」
「何?」
「わたくしが求めているのは、わたくし以外の魂が存在しない、わたくし自身の肉体の事ですわ」
「! 何、だと……」
 あまりの事に呆然となる。
 よもや悪霊が、言葉通り自分自身の新しい肉体を得ようとしていたとは思わなかったからだ。
 しかしそう望んだとして、新しい肉体など得られるものなのだろうか。
「やり方としてはしごく簡単なのです。母胎に宿った肉体には、しばらくの間魂が存在しておりませんから、その際に入り込んでしまえば肉体を得る事が出来ますので」
 まるで響真の心を読んだかのように、悪霊はそう答えた。
「では何故そうしないのだ? 何故わざわざ魂が入ってから取り憑くような真似をしている」
「無論先に入りはするのですわ。しかし自分の物とする事が出来ないのです。どうやら魂と肉体の間には相性があるらしく、これまでわたくしの魂と合う肉体が存在しなかったのです。ゆえにこうして別の魂の物となった肉体に同居する状態になっているのですわ」
「ではお前は、自分の魂に合う肉体が出来るまで待っているというのか……」
 何と気の長い話だろう。
「無論、ただ待っているだけではありません。わたくしの魂に合う肉体を得るための努力はしているのです。どのような肉体がわたくしの魂に合うのかはすでに分かっておりますので、後はそれを作れば良いだけの話ですから……」
 そう告げる悪霊は、冷たい笑みを浮かべた。
 その事にゾッとしつつ、今の言葉からある推測を思いついた響真は、それが外れている事を祈った。
 何故ならそれは、これまで以上の苦悩を感じさせる事だったからだ。
 しかし続けて悪霊の口から語られた内容は、推測通りの内容であったため苦悩が湧き起こった。
「わたくしの魂に合うのは、汚れた肉体です。近親の血肉が交わり、通常の人のものとは異なる、汚れが凝縮された肉体ですわ。そうした肉体こそが、わたくしの魂に合う肉体なのです。ゆえにこれまで数世代かけて近親同士を交わらせ、より汚れた血肉の肉体を精製してきたという訳です」
 何とも恐ろしい内容だった。
 この悪霊は、己の肉体を得るために、長い年月をかけて近親相姦を繰り返させてきたというのだ。
 自分たちの一族は、悪霊の肉体の苗床として利用されてきたという訳である。
 その事に怒りを感じつつも、悪霊の執念の恐ろしさを感じた響真は、背中に冷たいものを感じた。
「お前はいつからそのような事を……」
「ある者に肉体を滅ぼされてからです。当時わたくしはある村の長のような事をして暮らしていたのですが、突如村に現れた者に肉体を滅ぼされたのです。その者こそ、一族の開祖……」
「なっ……」
 その言葉に響真は衝撃を受けた。
 何故なら今悪霊が話した内容は、一族に伝わる開祖の伝承に当てはまる事であり、もしそれが本当だとすれば、悪霊は数百年もの昔から同じ事を繰り返してきた事になったからだ。
 以前響真が読んだ先祖の日記は、さほど昔の物ではなかったため、悪霊が取り憑き始めたのはせいぜい二、三百年前の事だと思っていたのだが、それが開祖の時代からだったとは驚きだった。
 一族の伝承によると、開祖はある時訪れた村が、密かに魔に支配されつつあるのに気づき、その強大な力を持って魔を滅ぼしたという。
 その事から村人に感謝され、村に留まる事を望まれた開祖は、村はずれに一軒の屋敷を構えたのだが、それが現在響真たちの住んでいる場所なのだった。
(馬鹿な……あの伝承で述べられている魔が、この悪霊の正体だというのか……)
 響真は驚愕の想いに包まれた。
 だがその一方で、この話が一族の者であれば誰でも知っている内容である点から、悪霊が己に都合のいいように考えた内容ではないかとも思った。
「ふふ、どうやらお疑いのようですね。わたくしが伝承の魔とは違う存在なのだろうと……」
「当然だ。そうそう信じてたまるか。しょせんお前は悪霊、人の心を惑わす存在だ。嘘など平然と付くだろうからな」
「ですが、これまでわたくしが嘘を付いた事がありましたか?」
 そう言われると反論は出来なかった。
 確かにこの悪霊は、兄妹を近親相姦へと誘いはしたが、嘘をついた事はなかったのだ。
「まあ、いい。取り合えずお前が伝承に出てくる魔であるとしよう。だとしてもだ、魔は滅びたはず。その事実をどう否定するのだ? 開祖ほどの人物が、魂になった魔を見逃すとは思えんぞ」
「確かにあの開祖と呼ばれる者は優れておりました。ですが人間である事に変わりはありません。完璧ではないのですわ」
「何だと……?」
「つまり気づかれぬよう上手く逃れれば、感知出来ないという事です。何しろわたくしの魂が避難した場所は、もっとも気づかれにくく、滅ぼしにくい場所でしたから……その事については、兄さまも実感がおありになるでしょう?」
 その言葉から、嫌な推測が思い浮かぶ。
「まさか、お前の言う避難した場所というのは……」
「そう、開祖自身の体の中です」
「馬鹿な、そのような事がっ……」
「あり得るのですよ。優れた能力を持つ者と言えど、気配を消した魂の存在までも感知する事は不可能ですから。ましてや己の中ともなれば、探ることなど容易ではありません。事実、兄さまはわたくしの存在を知ってからも、気配を察知出来ておられないでしょう?」
 確かにその通りだった。
 悪霊、いや魔の存在を知ってからも、普段の撫子の体からは気配を読み取れていないのだ。
 何という盲点だろう。
「そしてわたくし達は、長い年月をかけ、肉体を復活させる事にしたのです」
 その言葉を聞いた瞬間、響真は引っかかるものを感じた。
「待て、今『わたくし達』と言ったな?」
「ええ、ご存じでしょう? 開祖に滅ぼされた魔が二人だった事を……」
 伝承には、確かにそう書かれてあった。
 魔は二人、それも夫婦だったというような記述があったのだ。
 だがそうなると、妻の方は撫子の体の中にいるとして、夫の方はどこへ行ったのだろう。
 魔の言葉からして、夫の方もどこかへ潜伏していると考えるのが自然だが……。
(まさか……いや、ありえん……)
 響真は再び嫌な推測を思いつき、それを否定しようと頭を振った。
「わたくしの夫は兄さまです。この言葉の意味はお分かりになりますよね?」
「!……」
 だが魔は容赦なかった。
 響真の推測を裏付ける発言をし、嬉しそうに見つめてきたのだ。
 それにより体が震え出す。
「わたくしの夫たる存在は、兄さまの中におります。わたくし達はこうして仮の肉体で交わり、互いの存在を求め合ってきたのですわ」
「馬鹿なっ。私の中にそのようなモノは存在せんっ。実際私は、お前のような別人格が現れた事などないではないかっ」
「ふふ、それは兄さまがお気づきになられないだけのこと。確実に兄さまの中に夫は存在しているのですよ」
 確かに撫子も、己の中に魔が潜んでいる事を知らなかった。
 だったら同じように、響真が気づかなくても不思議ではないだろう。
「何よりわたくしに対する異常なまでの執着、欲情はそのせいですし……そして最近それが無くなっている。何故だか分かりますか?」
「どういう意味だ?」
「兄さまの中に存在していた夫が、移動したのです。わたくしの中へと……」
 魔はそう言いながら自らの腹を撫でた。
「ま、まさかっ……お腹の子に……」
 目を見開く響真に、魔は笑う事で応えた。
 その笑みは何とも美しさを感じさせる一方、冷たく、恐怖を呼び起こすものでもあった。
「何ということだ……私は、開祖が滅ぼした魔が蘇る手伝いをしていたというのか……」
 響真は肩を落とすと、悲しみとも苦しみともつかない感情に包まれた。
 あの時撫子の、いや魔の誘惑さえはね除けられていれば、魔を次の世代へ、己が子の中へ憑かせる事など無かったであろうに……。
 自分は霊媒師としても人としても、何と未熟なのだろう……
「ふふ、仕方の無いことです。人は欲には弱いもの。いくら修行を積み、己を律しようとも、より大きな誘惑の前には逆らえぬものですから」
「馬鹿なっ。そんなはずはないっ。人は欲を抑える術を身に付けられるものだっ。そもそもお前は言ったではないか、私が撫子を抱いてしまったのも、私の中に居た魔のせいだと。それさえ無ければ私はっ……」
「わたくしを抱かなかったとでも?」
「!……」
 その言葉は、響真の心に突き刺さった。
 確かに自分は、魔の影響が無くとも撫子を抱いたのではないかと思ったからだ。
 何故なら響真は、撫子を抱いて以来、自分がどれほど撫子を愛していたのかを自覚したからである。
 魔の影響が無くとも、何かのきっかけでその想いが爆発し、抱いた可能性があるように思えたのだ。
「そのようなこと、あり得ないでしょう?」
 魔はそう囁くと、身を寄せてきた。
 その途端、触れられた箇所からゾクリとする快感が染み入ってきたため体を硬直させる。
「撫子の体を抱きたくないなど、あり得ないでしょう?」
 魔は肌を擦りつけるように動かし、蛇が絡みつくようにして背中に腕を回してくる。
「くっ……止めろ……」
「ふふ、本当に止めて宜しいのですか?」
 小さな唇から赤い舌がチロチロと見え、その淫靡な動きにゴクリと唾を飲み込んでしまう。
「わたくしの与える快楽を味わってしまった兄さまは、もはやそれから逃れることなど出来ぬのです。この体を舐め、吸い、男の子(おのこ)で貫かないでは居られぬ体になっているのですよ」
「くぅ……おのれ化け物がっ……」
「そう、わたくしは化け物です。ですがその化け物の与える快楽に夢中になったのはどなた? 男の子(おのこ)で何度も貫き、子すら成さしめたのはどなたです?」
「それは撫子とした事だ。お前とした訳ではないっ」
「ふふ、申したでしょう? わたくしと撫子は一つだと。撫子の与えた快楽は、わたくしの与えたものなのです……感じて下さいまし、わたくしの舌を……」
「うっ……」
 魔はそう呟くと、肉棒に舌を這わせてきた。
 響真は突き放そうとするが、全く動く事が無かった。
 否定しようとしても、心も体も魔を受け入れたがっていたからだ。
(これは……いつも撫子がしてくれるのと同じ……うぅ……)
 魔が肉棒を舐め回すやり方は、普段撫子がしているのと変わらなかった。
 亀頭をチュパチュパと二、三度吸い、包むようにして舌を絡ませた後、肉棒全体を下から上へと舐め上げるやり方だ。
「兄さま、気持ちいいですか?」
 そして上目遣いでこう尋ねてくる姿も、撫子そのままだった。
「同じでしょう? それは当然のことなのです。何しろわたくしは、撫子といつも一緒にこのご奉仕をしていたのですから……撫子のした事は、全てわたくしのした事でもあるのです」
「……」
 響真はもう否定する事は出来なかった。
 せいぜい視線を逸らして否定している様に装うことしか出来なかった。
「そのように辛そうになさらずとも良いではないですか。もっとお気を楽にして、共に快楽を楽しみましょう? 何しろ兄さまには、もう一人お子を授けていただかなくてはならないのですから」
「もう一人、だと?」
「ええ、今度は女の子を。つまりわたくしの新しい体を、ですわ」
「そのようなこと……」
「兄さまが望まずとも、そうなります。何しろ兄さまは、すでにわたくしの物なのですから……」
 ゆっくりと口付けてくる魔の唇を受け入れてしまう。
 そして一旦そうしてしまえば、体中に走り抜ける快感に意識が朦朧となった。
 肉棒が勢いを増し、もう目の前の女体を抱く事しか考えられなくなる。
「うおぉっ!」
 叫びつつ魔を抱き締めた響真は、勢い良く幼い肉体を押し倒した。
 滑らかな肌を荒々しく舐め回し、吸い、貪っていくと、か細く甘い声が耳に響き、益々獣欲が高まる。
 両脚を左右に開き、もう何度も入れている膣穴へと肉棒を押し込んでいく。
「あぅんっ……あっ、あっ、ああっ……」
 そのまま激しく突き込んでいくと、可愛らしい喘ぎが漏れ聞こえ、響真は夢中になって腰を振っていった。
 見下ろせば小さな体が目に映り、白い肌がいやらしく桜色に染まっているのに興奮を覚える。
 こちらの動きに合わせて胸の微かな膨らみが揺れ、その事が自分が幼い少女を犯しているのだという認識を持たせてたまらなかった。
 もう何度抱いたか分からないにも関わらず、そうした感覚に慣れる事はなかった。
 自分は許されぬ事をしている、禁忌を破り、幼い妹を犯しているのだ。
 いくら言葉で愛を語り合おうとも、撫子の幼さに変わりはなく、世間から見れば自分は変質者でしかないだろう。
 そんな状態へ自分を引き込んだ魔という存在。
 今目の前で喘いでいるのは、その魔なのだろうか、撫子なのだろうか。
 魔の言う通り、確かに区別など付かなかった。
 そして魔は、もう一人子を得るまでは自分を誘惑し続けるだろう。
 それに抗うことなど不可能なのではないか……。
 だが何とかしなければ……。
 自分の代で魔の魂を受け継がせないようにしなければ……。
 そう決意はしてみても、股間から湧き昇ってくる快楽に意識が染まれば、無理である事が分かる。
「ああっ、あっ、あんっ……やっ、やっ、やぁっ……」
 こうして可愛らしく悶える撫子の姿。
 これを知ってしまった今、抱かないなどという事は不可能だった。
「あっ、兄さま、ああっ……兄さまっ、兄さまっ、兄さまぁっ……もうわたくし、あぁっ……もうっ……イくっ、イっ……イっちゃいますぅっ……やっ、やっ、やぁあああああああっ!」
「うぅっ!」
 勢い良く迸る精液。
 それと共に発生する快感。
 響真はこれに耐えられなかった。
 この快楽、気持ちの良さ。
 これが与えられるとなれば、逆らうなど無理な事だろう。
 だが何とかしなければ。
 しかし絶対無理だ。
 相反する想いが交互によぎる。
 響真は射精を繰り返しながら、己がどうすべきか苦悩し、快楽と使命感の狭間でもがき苦しんでいくのだった。












あとがき

 霊媒師シリーズ第三弾です。
 今回は「厳しい兄と気弱な妹」という組み合わせでやってみました。
 とはいえ、悪霊が目立ったので、妹はちょっと影が薄くなってしまいましたが。
 まあ、今回は悪霊の目的を明かす部分があったので、仕方ないとも言えるんですけど。
 こうした人外の力によって性欲を高められてしまう展開は大好きで、昔から書きたいと思っていたので書けて嬉しいです。
 そのうち触手が出てくるような、見た目も化け物な相手とする話も書いてみたいですね。
(2010.5.14)



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