オタクな兄貴


 起きると目の前に山があった。
 別に本当の山じゃない。
 胸が膨らんでいたのだ。
(これってまさか……)
 慌てて股間に手をやる。
(ないっ……!)
 無かった。
 いつもあるはずの感触がそこには無い。
 短パンとパンツを持ち上げ覗き込んでも無いものは無かった。
 ガックリと肩を落とす。
(これってあれか……テレビでやってたチェンダー病……)
 現在世界では、男が女の体になるといった奇病が流行っていた。
 それは先進国の少子化が進む国でのみ発症している病気で、原因は出生率を上げようと肉体が作用したものらしい。
 発見者の名前を取ってチェンダー病と呼ばれているこの病気は、日本でも何件か発症者が出ていたが、まさか自分がそうなるとは思わなかった。
(はぁ……どうしようかな……病院行った方がいいのかな……でも特に害はないって言ってたしな……)
 チェンダー病は肉体が女性になるだけで、身体能力に影響を及ぼす病気とは関係が無かった。
 どちらかと言うと、発症者の精神や周囲の人間に対するケアが問題とされていた。
(まあ、そらそうだな……これはショックだよ……それに家族に何て話したら……)
 そこまで思った時だった。
 部屋の外から声が聞こえた。
「お〜〜い、涼。そろそろ飯食おうぜぇ」
 それは兄だった。
(そうだ、今日は兄貴と二人きりだったんだ……)
 両親は旅行に出かけており、三日ほど兄と二人で生活する予定なのだ。
 兄は大学を卒業して去年から働いている。
 高校生の自分より大人で知識も豊富だ。
(よし、兄貴に相談しよう。こういうのには一応慣れてるし)
 慣れているというのは、別にチェンダー病に多く接しているという訳ではない。
 アニメや漫画といった世界での話だ。
 涼と兄はいわゆるオタクで、どちらもかなりの入れ込み具合だった。
 アニメや漫画の世界では、男が女に変わる話など山ほど存在している。
 認識だけなら一般人よりよほど耐性があるだろう。
「兄貴ぃっ、ちょっと来てくれぇっ!」
 叫んだ後、自分の声に驚く。
(な、何て可愛い声だ……)
 思わず興奮してしまう。
 アニメが好きなだけあって、涼は声優のファンでもあったのだ。
 今出した声は、女としてもかなり可愛い声であった。
「な、なんだ今のは? また面白いもんでも手に入れたのか?」
 いつもと違う弟の声に驚き、慌てて兄が部屋にかけこんでくる。
「うぐぅっ……!」
 だが涼の姿を見た瞬間、ゲームのヒロインの口癖で叫びながらその場に固まる。
 無理も無い。
 目の前には、女に変貌してしまった弟が立っているのだから。
「お、お前……まさか……」
「ああ、チャンダー病にかかったらしい……」
 努めて冷静な声で話す。
「よ、よ……」
「よ?」
「良くやったっ! お前は最高の弟だっ!」
 嬉しそうに叫ぶと近寄り体を舐める様に見つめてくる。
「よ、よせよ……気持ち悪い……」
 動揺するのかと思いきや、喜んでいる兄に驚く。
「お、声もなかなか……ん? その声どっかで聞いた様な……」
 突然押し黙って考え始めた。
「あの、兄貴……どうしたんだ……?」
「あ〜〜、うるさい。分からなくなるだろっ……ええと……」
「うるさいはないだろっ。大変な状態になってるんだから、兄として心配しないのかよっ!」
 あまりの態度に怒鳴りつける。
「うぉっ、それだっ。『うるさいはないでしょっ!』……それだよぉ。涼たんの台詞だぁ」
(涼たんの台詞?……俺の台詞がどうしたって……)
 そこまで考えて兄の言っている意味を理解する。
(そうか、春日涼。涼たんの台詞かぁ)
 春日涼とは、オタクの間で爆発的人気を持つゲームのヒロインであり、「うるさいはないでしょっ!」というのは、決め台詞みたいなものである。
「涼たんの声と一緒って事は、お前ははるるんと同じ声ってことだなっ」
 はるるんとは、春日涼の声を担当している声優、佐伯遥の愛称だ。
「嘘っ? 俺、はるるんと同じ声?」
「ば、馬鹿っ、はるるんの声で『俺』なんて言うなっ……って、いや、でも結構いいかな……?」
 兄はどちらだか分からない様子で考え込んでいる。
「そんな事より……俺、女になっちゃったんだけど……」
 外れまくっている話題を元に戻す。
「ん? それがどうかしたのか?」
「どうかしたかじゃないだろっ。男が女になってるんだぜっ。これからどうしようとか思うじゃないかっ」
 事の重大さを認識していない兄に呆れる。
「おおぅ……いいっ……もっと言ってくれぇ……」
 何やら兄は悶えている。
「どうしたんだ……?」
「いや、だって、はるるんの声に怒鳴られてるんだぜ。こりゃたまらんよ」
 体の力を抜いて溜め息をつく。
「いいよもう……兄貴に頼ろうとした俺が馬鹿だった……もういいから出てってくれ……」
「いや、その……スマン……つい嬉しくて……いや、そうじゃなかったな……ちゃんとするからさ……」
 追い出そうとした途端、慌てた様に兄は態度を変えた。
「嬉しいって何だよ?」
 気になる言葉があったので聞いてみる。
 弟が病気にかかって何が嬉しいのか。
「だって、ほら……弟のお前が女になるって事はさ……必然的に妹って事だろ……」
 そこまで言われて気がついた。
(そうか……妹か……くそっ、何て羨ましい……)
 一部のオタクにとって妹というのは永遠の憧れである。
 別に本当に妹がいたとしても関係はない。
 要するにゲームに出てくる様な妹が欲しいのだから。
 だが実際に妹がいない男にとっては、「妹がいる」というだけで羨ましい事なのだった。
 涼自身も、なぜ自分には妹がいないのかと本気で悔しく思った時期があったくらいだ。
 そしてそれを兄は実現したのである。
「ま、チェンダー病ってのは害はないみたいだしな。問題はこれからどうするかって事だ。世間の風当たりとかあるしなぁ。引っ越した方がいいかなぁ」
 涼が悔しがっている間に、兄は色々考えていた。
「引越しか……」
 確かにこのまま同じ家にいては、近所の人に色眼鏡で見られるだろう。
 だったら初めから女として認識してもらえる場所に引っ越した方が気は楽かもしれない。
「取り合えずお前は外に出ない様にして、父さんたちが帰ってきたら一緒に考えようぜ」
「うん……」
 しごくまともにこれからの事を考えてくれてる兄に、涼は感謝の気持ちで一杯になった。
「ありがとう、兄貴……俺、凄くショックだったから、兄貴がいてくれて助かったよ」
 先ほどのやり取りも、そう思えばあれで落ち着けたとも言えるのだ。
 やはり頼りになる、そう思って見ると、兄は何故か嬉しそうに顔を緩ませ悶えていた。
「ど、どうしたんだ?」
 驚いて声をかける。
「いや……だって……はるるんの声で『ありがとう』なんて……しかも可愛い感じで言われたら……萌え〜〜!」
 やっぱり兄は兄だった。
 今兄が叫んだ「萌え」とは、オタク用語の一つで女の子の表情やしぐさを可愛く思ったりした時に使う言葉である。
 オタクである自分と兄はこれを多用していた。
「しかし、そんなに似てるのか? 自分じゃよく分からんのだけど」
「似てる似てる、バッチリだよ。お前声優でやってけるよ」
「そうなのか……」
 自分にとってもたまらないモノである佐伯遥の声を聞けないというのは何だか悔しかった。
「あ、そうだっ……ちょっと待ってろよっ……」
 兄は急に何か思いつくと、慌てて部屋を出て行った。
(なんだ? どうしたんだろ……)
 部屋の外から何か物音が聞こえる。
「あ、あった。これこれっ」
 兄の声が響き、続いて勢いよく部屋に入ってきた。
「これ、これを着てくれっ。頼むっ」
 兄が持ってきたのは、白地に青い色が混じった布だった。
「これって……」
 それは春日涼の通う高校の制服であった。
 無論、実在しない高校の制服など普通の店では売ってはいない。
 オタク御用達の店から手に入れたものだ。
 どうして兄がそんな物を持っているかというと、それを着て色々なイベントに参加していたからである。
 オタクの世界では、男が女の格好をするのがある程度容認されていて、兄にはそういった趣味があったのだ。
 そしてこの制服はその中の一つだった。
「俺に着ろってか?」
「ああ、きっと似合うぞっ」
 兄は首を激しく縦に振って制服を差し出す。
「でもなぁ……俺女装って趣味じゃないし……」
 涼もオタクではあったが、女装をする趣味まではなかった。
「何言ってるんだ。今は女だろ」
 呆れた口調で言われてしまう。
 確かに今は女だった。
 男の女装姿は見れたものではないが、女である今なら結構似合うかも知れない。
「う〜〜ん、よし、ちょっと鏡見てから決める」
 元々コスプレは嫌いではない。
 女装は見た目が良くないから嫌いなのであって、可愛ければ別にいいのだ。
「おお、待ってろ、鏡な」
 兄は慌てて出て行く。
 コスプレをするだけあって、兄の部屋には大きな姿見があった。
「ほら、持って来たぞ。これでいいだろ」
 目の前に鏡が置かれ、そこで初めて涼は女になった自分の顔を見た。
(か、可愛い……)
 女になったせいか微妙に伸びた髪は首筋まであり、それに覆われた顔立ちは、童顔ながらもアイドルとして売れそうなほど整っていた。
「これ……俺の顔かよ……」
 驚いた呟きに合わせて鏡の中の美少女が口を動かす。
「ああ、お前の顔だぜ。驚いたろ、スゲー可愛いの」
 兄は興奮した口調で賛同する。
(なるほど、こりゃ兄貴が妹ができたって喜ぶはずだわ……涼たんソックリだもんなぁ……)
 涼の顔は春日涼に非常に似ており、しかも彼女は主人公の妹という設定だった。
 その上声まで似ているのでは、兄にしてみれば、ゲームからキャラクターがそのまま出てきた印象を持っても仕方がない。
(この顔に制服か……)
 そこまでしたら完璧だ。
 自分でもどれほど似るか試してみたくなった。
「よし、着てみよう」
「ホントか? やったぁっ!」
 喜ぶ兄から制服を受け取り、Tシャツの上から着ていく。
 スカートを穿くのには少々抵抗があったが、我慢して身に付ける。
「おおっ……涼たんだぁっ……」
 感動している兄の言葉に、鏡に映る自分を見つめる。
(た、確かに涼たんだ……ここまで似てるとはねぇ……)
 鏡から見つめ返してくる自分の顔に思わず照れてしまう。
(ううっ……俺はナルシストかっての……)
 少し自己嫌悪に陥りながら、それでも見つめることを止められない。
 首にかかる髪を少し煩わしく思い手で跳ね上げる。
「うぉっ……か、可愛い……」
 途端、兄が呻き声を上げた。
 確かに自分でも可愛い仕草だと思った。
 続いて目線を下にやると、大きな胸が見えた。
 制服の胸の部分を押し上げるその膨らみは、童顔でありながらかなりの豊かさであり、自分が巨乳であることに気がつく。
 手を伸ばしてギュッと掴む。
「あんっ……」
 痺れの様な感覚が胸に走り、思わず声を発してしまう。
「うごぉっ……む、胸ぇっ……」
 兄がさきほどよりも激しい声を上げる。
 可愛い女の子が胸を掴んで可愛い声を出しては興奮もするだろう。
 胸に走った感覚が気になるが、兄の目の前で確認するのは恥ずかしいので後にすることにした。
 スカートから伸びる白い脚も信じられないほど綺麗だった。
 太すぎず細すぎず、実にいい肉付きだ。
 その上でヒラヒラと動いているスカートが面白い。
 少し持ち上げて手を離すと、フワッと揺れて元に戻った。
「あぐぁっ……スカートぉっ……」
 もう何だか分からない兄の声が響く。
 体を左右に動かして、自分の姿を色々な角度から見てみる。
(う〜〜ん、女子高生だわ……)
 そこには普通の、いや、非常に可愛い女子高生が立っていた。
「涼たん……涼たんお願いだ……『お兄ちゃん、大好き』って言ってくれ……」
 兄が感涙にむせいだ表情で懇願してくる。
「お兄ちゃん」という言葉は、妹好きのオタクにとって夢の言葉である。
 それを言われる事で悶え狂い、のたうち回るのだ。
 その気持ちは涼にも痛いほど分かったので、兄の夢を叶えてあげる事にした。
「おにぃちゃぁん、涼、お兄ちゃんのこと、だぁ〜〜い好きぃ」
 満面の笑みを浮かべて、甘ったるい口調で囁く。
「ぶはぁうっ!」
 兄は体を仰け反らせると床に倒れた。
 ピクピクと震えたかと思うと床をゴロゴロ転がりだした。
「ああぅ、ああっ……最高だぁっ、最高だよぉっ……」
 しばらくそうして転がった後、兄は起き上がりまたお願いをしてきた。
「涼たん、『お兄ちゃん抱いて』って言って……」
 両手を合わせて拝むように頼んでくる。
(しょうがねぇなぁ……)
 涼は兄の様子に呆れながらも、自分が兄の立場に置かれたらきっと 同じ様にするだろうと思い、また願いを叶えてやる事にした。
「お兄ちゃん……涼のこと……抱いて……」
 恥らう様に上目遣いにチラチラと見ながら囁く。
(どうだたまらんだろ……こういうのが好きだもんなぁ……)
 自分がやられたら最高だと思うしぐさで兄を悩殺する。
「りょ、涼たん……」
 また大騒ぎするかと思いきや、今度は何やら大人しくブツブツ呟いている。
(兄貴……?)
 様子が変なことに気がついた涼は、兄の傍に近づいた。
「お兄ちゃんも、涼たんのことが大好きだよぉっ……!」
 いきなり起き上がると、布団の上に押し倒してきた。
「な、兄貴狂ったか。や、止めろって……」
 だが、兄の行動は止まらない。
(や、やべっ……やりすぎたか……)
 あまりに刺激しすぎたため兄は理性を失った様だ。
 涼を押さえつけると、顔を近づけてくる。
「兄貴、や、止め、んんっ……んっ……」
 唇が重ねられる。
 前歯の間からにゅるりと舌が進入してくると、涼の舌に絡みつき吸い上げてきた。
 体に不思議な感覚が起こり力を奪っていく。
(うあ、なんだ……変……力が抜ける……)
 押し返していた腕に力が入らなくなり布団の上に落ちる。
「んっ……!」
 突然胸から電気の様なものが駆け抜け脳を痺れさせる。
 それはジワ〜〜とした感じになり、やがて気持ちの良さを伝えてきた。
 乳房を揉まれているのだ。
 ギュッと握られるたびに、ビクッと体が震えるほどの快感が押し寄せてくる。
 口の中で絡みつき吸い上げる舌も、そのたびに甘美な刺激を感じさせた。
(ああ……いいっ……気持ちいいっ……)
 兄にキスされているという気色悪さよりも、たまらない刺激に脳が痺れ、さらなる快楽を求めて自らも舌を絡ませ吸い付いていってしまう。
「んんっ……んっ、んふぅっ……んんっ……」
 頭を左右に入れ替え、まるで何かに憑かれた様に、兄の唇を擦り舌を吸い上げ、激しい口付けを繰り返す。
 その間も兄の手によって揉み上げられる豊かな乳房から、得も言われぬ快感が湧きあがり、涼は経験した事のない凄まじい快楽に身を委ねていった。
 兄の手が制服とTシャツの下に入り込み、直接乳房を掴んできた。
「んっ……!」
 服の上からとは違って、直接掴まれると強烈な快感がある。
「んんぅっ、んっ……んんっ……」
 強弱をつけて持ち上げられる様に揉まれ、そのたびに起こる快感がたまらない。
「んぅっ……んっ……」
 乳首を探り当てられ、クリクリと摘まれる。
「んふっ、んんっ……!」
 痺れる様な快感に体を震わせる。
(ああ……気持ち……気持ちいいよぉ……)
 頭がぼぉっとし、だんだん何も考えられなくなる。
 唯一兄の送ってくる快感だけが、涼を支配する様になっていた。
「んぷはぁ……あんっ、ああっ、やんっ……ひゃあぅっ、あっ、いやぁんっ……」
 ようやく唇を離されると、今度は乳首にヌルヌルとした柔らかいものが触れてくるのを感じた。
 ぼんやりとした目で胸の辺りを見ると、自分でもまだ一度しか見ていない大きな乳房に兄がむしゃぶりついていた。
 雪の様に白く豊かな膨らみは、形を変えるほど何度も揉まれ、その頂点にある桜色をした乳首はすでにツンっと勃起し、兄の舌に舐め上げられている。
 チュパチュパと吸い上げられる事により乳房がぽよよんと揺れ動き、それらの愛撫が行われるたびに、痺れるほどの快感が脳に押し寄せてくる。
「やんっ、あっ、はぅっ……やぁっ、はふぅっ、ああんっ……あっ、やぁんっ、ひゃっ……あんっ、あっ、いやぁんっ……」
 涼は乳房に送られてくる甘美な刺激に体を震わせ、可愛らしい喘ぎ声を上げ続ける。
 しばらくそうして乳房を揉み、乳首を舐め吸われた後、ようやく兄の手と唇が離れた。
(あ……もう……お終い……?)
 終わった事を残念に思いながら、自分が今どういう状態であるのかを思い出す。
(って、そうか……俺、兄貴に……)
 強姦されかかっている事に驚愕する。
 その兄がどうしているのかと思っていると、スルスルと短パンとパンツが脱がされていくのを感じた。
「お、おい、こら……何してるんだよ……止めろって……」
 まだ少し朦朧とする頭で抗議しながら起き上がろうとする。
「あ、涼たん……お兄ちゃんと最後までしよう……」
 間抜けな声で兄が言ってくる。
「馬鹿、俺達は兄弟だろ。そんな事していいと思ってるのかよ」
「兄妹だからって気にしない。お兄ちゃんは涼たんの事が大好きだよ。涼たんもそうでしょ、さっき言ってくれたもんね」
「それは芝居だろ芝居。何本気になってるんだ」
 少しでも逃げようと体を動かそうとするが、快感に痺れた肉体は上手く動いてくれない。
「照れなくてもいいんだよ。お兄ちゃんには全部分かってるんだから」
「分かってない〜〜」
 兄は涼の脚をガバっと開くと顔を押し込んできた。
 防ごうとしても体に力が入らない。
「こ、これが涼たんの……うぅ、凄い……」
「あ、俺だってまだ見てないのに……」
 自分の体とはいえ、女の秘所がどんな形をしているのか涼は知らなかった。
 それを先に見られてしまった事に悔しさとショックを受ける。
「大丈夫、凄く綺麗だよ……さすが涼たんだね……」
(どんなのなんだろ……見たい……)
 自分の体ながら、未知の領域を見ている兄を羨ましく思った。
「こんな綺麗だと舐めたくなってくるよ……いいよね、舐めるよ……」
「え? ちょっと待て……」
 その様な事は許可できない。
 いわば男で言うところのペニスを舐められる様なものだ。
 そんな気持ちの悪いこと止めさせないと。
「あんっ! ああっ、あっふっ……やっ、やぁんっ……」
 と思ったところで意識が飛んだ。
 兄の舌が秘所を舐めたのだ。
 たまらない快感に可愛い声を上げながら体をくねらせる。
「う〜〜ん、美味しい。美味しいよ、涼たん……」
 兄は嬉しそうに秘所を舐め吸い上げていく。
「あっ、ああんっ、やっ……いいっ、いいよぉっ、やぁんっ……」
 唇や乳房への愛撫とは比較にならない快感が押し寄せ、思わず兄の行為を容認する発言をしてしまう。
 それに気を良くしたのか、舌使いが激しくなった。
「やぁんっ、あっ、はふっ……やっ、ああっ、もっとっ、もっとぉっ……」
 あまりの快感に涼は太ももで兄の頭をはさみ込み、グイグイ股間を押し付け、さらなる愛撫を要求してしまう。
「うぐっ、うぅっ……」
 兄はくぐもった声を上げながら、さらに舌の動きを激しくした。
「あんっ、はぐぅっ、やっ……ああんっ、凄いっ、凄いよぉっ……やぁっ、あっ、ひゃんっ……ああっ、何か変、あぅんっ……何か来るよぉっ……あっ、ああっ、ああああんっ……!」
 絶叫と共に体を仰け反らせると、体の中から湧き上がって来た快感に意識が滅茶苦茶になった。
(なんだこりゃ……訳が分からないぃ……で、でも……何て気持ちいいんだぁ……)
 男だった時にしたオナニーとは比較にならない絶頂感に浸る。
 快感が去り、落ち着いた涼は、力を抜きながら荒い息を吐いた。
 朦朧とした意識の中で、太ももを撫でられ、チューっと吸い上げられるのを感じる。
 微妙な快感が、絶頂に至った後の敏感な体に響く。
「あっ、あっ、ああっ……はぁっ、はぅんっ、やぁっ……」
 弱々しい喘ぎ声が唇から漏れた。
「涼たん……いよいよだね……お兄ちゃんが涼たんの初めてもらうよ……いいね……?」
(初めて……?)
 兄の問いかけをぼんやりとした頭で考える。
「あんっ……」
 股間に何かが押し付けられた。
 それは温かくて太い指の様な物だ。
(え、それって……)
 一気に意識が戻る。
「ちょ、兄貴、それは駄目だってっ……!」
 起き上がって逃げようとし、腕に力が入らない事に気がつく。
 ガクッと崩れる腕を叱咤して、何とか少しだけ兄から離れた。
「今更何言ってるんだ。俺はするぞ。涼たんとする」
「俺は涼たんじゃないよっ。弟の涼だっ。正気に戻れっ」
 手を上げて兄を制する。
「分かってるよ。涼だろ。俺の妹だ。ようやくできた理想の妹」
「妹だって駄目だろっ。これは現実だぞっ。しちゃ駄目だってっ」
 ゲームではいくら近親相姦しようがしょせんは作り物。
 だがこれは現実だ。
 しても犯罪ではないが、倫理的によろしくない。
(というより俺がしたくないんだよっ)
「しちゃ駄目って言われると余計にしたくなるんだよ。それに俺のここはお前としたくてギンギンなんだ」
 兄は己の一物を見せる。
(うわっ、スゲェ……)
 思わずそれに見惚れてしまう。
 兄の一物を見たのは小学生以来だったが、同性から見てもかなり立派な持ち物に育っていた。
「ほら、お前のここだって俺としたがってる。こんなに濡れて……」
 そう言いながら涼の秘所を指で刺激してくる。
「あぅんっ、ば、馬鹿止め、ああっ……これは、あんっ、仕方な、やぁんっ……あっ、はぅっ、ああんっ……」
 快感が復活し、体から力が抜けてしまう。
「そんな可愛い声で鳴かれたら俺イっちまうよ。何たってお前の声ははるるんソックリなんだからな。さっきっからはるるんの喘ぎ声を聞かされて、もう我慢できないんだ。ヤらせてもらうぞ」
 兄は再び肉棒を押し付けてくると、探る様に秘所の上で滑らせる。
「ああっ、あんっ、あっ……はぁっ……」
 それだけで感じてしまい、体を震わせてしまう。
「あ、ここだな。いくぞ、入れるぞ、涼たんいくよ」
 最後だけまたゲームのキャラに対する言葉遣いになって、兄は腰を進めた。
 ズプッといった感触と共に、何かが体の中に入ってくるのを感じる。
(うぁっ、痛い痛い痛いぃ〜〜止めてくれぇ〜〜)
 言葉にならない痛みに苦しみながら、動く事さえできない涼はジッと耐えるしかなかった。
「うぁっ……スゲェ、スゲェぞ涼……お前のここって最高だぁっ……」
 兄は恐らく生まれて初めて感じるだろう快感に興奮して叫んでいる。
 一方耐え難い苦痛に硬直していた涼は、完全に挿入されたためか治まった痛みに力を抜いた。
「うぉっ、やべっ、出るっ、出ちまうっ!」
 その拍子に肉棒が擦れたのか、兄は射精しそうになり、しばらくジッとして動きを止めた後、深い息を吐いている。
「よし、大丈夫だ。動くぞ、いいな?」
 涼に返事をする気力はない。
 よもや返事をし、止めてくれと言っても兄が聞くとは思えないのだからその問いは無意味だろう。
 兄の腰が動き出し、それに合わせて肉棒と膣が擦れ合い始める。
(!……ってあれ?)
 痛みに耐えようと気合を入れていたにも関わらず、いつまで経っても何の苦痛も起きてこない。
 ただ、股間がパンパンに膨れた感触しかないのだ。
 体の中を太いものが出し入れされるのが伝わってくる。
(おっ、痛くない、痛くない……良かったぁ……ってあれ、何か変だぞ……)
 ホッとするのも束の間、何やら変な感覚がジワジワと股間から沸き上がってくる。
「あんっ、え? はぅっ……ちょっとこれって、やんっ……何だ、ああんっ……嘘、あぁっ、やんっ……」
 言葉に甘い喘ぎが混じる。
 痛みが消え、快感が起き始めているのだ。
「うぉっ……涼たんっ……涼たんとセックスしてるぅっ……」
 可愛い声を上げたためか、兄は再び涼とゲームのキャラクターと重ねている。
 だがその興奮が肉体に作用したらしく、腰の動きが激しくなった。
「やっ、やんっ、はぅっ……ちょっと、あんっ……何か凄いよぉっ……こんなの、あっ……こんなの凄すぎぃっ……」
「うぉぅっ、うぉっ……凄いっ……凄いぞぉっ……気持ちいいっ……!」
 兄弟で「凄い」を言い合い、肉体を擦り合わせていく。
(うわぁっ……信じられねぇっ……嘘だろこんなのぉっ……チンポ入れられて動かれるのが……こんなに気持ちいいなんてっ……)
 男の時に肉棒を女の体に入れた事は無かったが、入れられる快感はそれまでの愛撫でさえ物足りなくなるほど凄まじい快感だった。
(兄貴も同じなのかな?……スゲェ気持ちいいんだろな……でも……でも俺の方がきっと気持ちいいっ……)
 体中に気持ちの良さが広がる女の体は、肉棒にしか快感を感じなかった男の体に比べて何倍もいいに違いない。
 涼はそう思い、女の体になった事に初めて幸福を感じた。
「涼っ……涼っ……兄ちゃん気持ちいいぞぉっ……スゲェっ……お前の体、スゲェよぉっ……!」
「俺も、あんっ……俺も気持ちいい、ああんっ……兄貴のチンポ、やぅんっ……最高だぁっ……!」
 お互いの肉体を褒めあい唇を合わせる。
 涼の頭からは兄とキスしている気色悪さは当に無くなっていた。
 それよりも、とてつもない快感を与えてくれている兄に対する感謝の気持ちと愛情が湧きあがっていたのだ。
「んっ、んんっ……んっ、ぷはぁっ……お兄ちゃん、やぁっ……お兄ちゃん凄いよぉっ……もっと、はぅっ……もっと激しくしてぇっ……」
 兄に対する呼び方も「兄貴」から「お兄ちゃん」になっていた。
 別に芝居をしている訳ではない。
 小学生まではそう呼んでいたのだ。
 中学の途中から照れくさくなり「兄貴」と呼ぶ様になったのである。
 意識が朦朧とし、快感で兄に対する甘えが出ているせいか、呼びなれた「お兄ちゃん」が出てしまっているのだ。
 だがそれは兄にさらなる興奮を与えた様だ。
 狂わんばかりに腰の速度が上がり、叩きつける勢いで肉棒が出し入れされていく。
「ひゃぅんっ! やぁっ、はぅっ……おにぃ、やんっ……激し、あっ……激しいよぉっ……やんっ、はぁっ、いやぁんっ……」
 もう自分が男だった事を忘れたかの様な可愛らしい声を上げ、兄の体をギュッと抱きしめる。
 快楽を逃すまいと自然と脚も腰に絡んでいった。
「はぐぅっ、やっ、ひゃぁんっ……おにぃちゃぁ、はぅっ……おかし、やんっ……おかしいよぉっ……ああっ、やぁっ、ああんっ……」
 密着感が高まったせいか快感も強くなった。
(ああっ……俺おかしいっ……頭がおかしいぃっ……気持ち良すぎてっ……どうにかなるぅっ……!)
 脳に送られてくる刺激は、もう涼の許容限界を超えつつあった。
「うぅっ……俺っ……もうイくっ……イくぞぉっ……!」
 兄は我慢できなくなったのか、射精寸前の最後の一押しとばかりに腰を高速で動かし始めた。
「やぁんっ、あっ、はぐぅっ……あっ、ああんっ、いやぁんっ……はっ、ああっ、あぅんっ……いやっ、あっ、何か来るっ……何か来るよぉっ……あんっ、はぅっ、やぁんっ……お兄ちゃん、あぅっ……おにぃ、やぁあんっ……助けて、あっ……助けてぇっ……やぁっ、あぅんっ……ああああっ、おにぃちゃぁんっ……!」
 得たいの知れない恐ろしいモノがやって来るのを感じ、幼い頃にお化けが怖くて兄を頼った記憶がそうさせたのか、涼は兄の体にギュッとしがみつき助けを求めた。
「出るっ、出るぅっ……!」
 兄の叫びと共に、何かが股間に注ぎこまれているのを感じる。
 ドクドクドクと勢い良く体内に放出されるその感触は、涼にさらなる快感を感じさせ、そしてそれが恐怖をますます増加させた。
(お兄ちゃん……お兄ちゃん……僕を助けてよぉ……)
 涼の意識は恐怖に染まり、頼りになる兄を求めながら意識は真っ白になっていくのだった。


 気がつくと、布団の上で横になっていた。
「お、気がついたか……良かった……」
 兄が安心した様な表情をしてこちらを見ている。
「え? 俺、どうしたんだ……?」
「何だ、覚えてないのか? 俺が出したすぐ後に意識を失っちゃったんだよ」
 その言葉に一気に記憶が蘇る。
「おいっ、兄貴っ……とんでもない事をしてくれたなっ……」
 ドスの利いた声を出したつもりが可愛い声にしかならない。
 その事にガックリしながらも取り合えず睨みつける。
「あ、え〜〜と、その、スマン……確かにやりすぎた。ごめん……」
 兄は素直に頭を下げた。
 開き直るかと思っていたので、その態度に涼は少々拍子抜けを感じた。
「いや……それだけ素直に謝られちゃうと……こっちも怒る気力が無くなるんだが……だけどそれでチャラになると思うなよ……兄貴はヒデェことしたんだからなっ……」
 すぐに許してはいけないと、涼は怒りを保とうとした。
「ヒデェことって何だよ? 気持ち良かっただろ?」
「なっ?」
 どうやら分かってないらしい。
「お前、最後は『激しくしてぇ』とか言ったじゃないか。俺のチンポが最高だとも言ってたぞ」
「うっ……」
 それを言われると何も言えない。
「あれはしょうがないだろ……おかしくなってたんだから……それに途中はどうあれ、兄貴は俺の気持ちを無視してしたんだから許せないんだよっ」
「いや、まあ、それはそうなんだけどさ……だってお前、あんな風に誘われたら、男だったら襲っちゃうよ……お前も男だったんだから分かるだろ……?」
「ううっ……」
 またもや言い返しにくいことを言ってくる。
 確かにあれはやりすぎだった。
 自分が女の体である事をすっかり忘れていたのだ。
 可愛い女の子に「抱いて」と言われたら、そのまま押し倒しちゃうのは男の性というものだろう。
 それは涼にも理解できる。
 自分が同じ事をされても我慢できるとは思えないからだ。
「まあ、しょうがない……確かに俺にも否があったからな……だけどもうこれっきりだ。二度とこんなことするなよっ」
「え〜〜?」
 てっきり「分かった」と返事するかと思いきや、兄は不満そうな声を上げた。
「な、なんだよ? 何か文句でもあるのか?」
「だって……せっかく妹ができたのに……せっかくエッチできたのに……これっきりなんて……」
 何かブツブツ言っている。
「馬鹿野郎っ……相手の気持ちを無視して無理やりするなんてただの強姦だっ……それに兄貴はほのぼの恋愛系が好きだったろがっ……『俺は陵辱系は女の子が可哀想で嫌いだ』って前から言ってたろっ」
「うっ……」
 今度は兄が黙り込む番だった。
 好きなゲームの事で例えられては反論できないのだろう。
 何せ兄の趣味は、ヒロインと恋人関係になってから結ばれるタイプの作品であり、相手を強引に襲うタイプの作品は嫌いだったからだ。
「無理やりするなんてなぁ、女の子に一番嫌われるんだよっ。いくらお兄ちゃんラブラブの妹だってその日から避ける様になるわっ。『トキめ』で言えば、爆弾爆発だぁっ」
「トキめ」とは、ブームを作ったと言われる元祖恋愛ゲームの略称であり、爆弾爆発とは、ほったらかしにされた女の子が主人公を嫌いになる現象のことである。
「た、確かにそれはそうだ……ゲームで例えてくれると分かりやすい……俺は……俺は途中をすっ飛ばしてしまったんだな……努力して妹の心をゲットせず、強引に言わせた偽りの言葉に興奮して襲ってしまったんだ……バッドエンドだ……それは確実にバッドエンド……一度終わらせた後に試しに見るのならともかく、いきなり選ぶ選択肢じゃない……ううっ、スマンっ……許してくれぇっ……」
 兄はガックリと肩を落とし、自分の行為を反省している。
 もうこれで大丈夫だろう。
 涼はホッとして深い息を吐き出した。
「だけど違うんだ……もう違うんだ……」
 しかしまだ何かブツブツと言っている。
「何が違うんだ?」
 気になって尋ねてみる。
「俺は目覚めたっ……確かにほのぼの恋愛系が好きだったが、いやこれからも好きだがっ……陵辱系にも目覚めたんだっ……」
「な、何を……」
「さっき無理やりお前を襲った時に、今まで経験した事のなかった興奮を感じたんだっ……これは男として、たまらない快感だぁっ……」
 そう叫ぶと同時に涼に飛び掛ってくる。
「お、おいっ……嘘だろっ、目覚めたって何だよっ……」
「お前との関係は陵辱系だってことだよっ……お前はヤってしまえば喜んでよがるタイプの女だってことだっ……そういうタイプはヤらなきゃ始まらないっ……ヤらなきゃ話だって進まないんだぁっ……」
 そう言いながら乳房を掴んでくる。
「あんっ……馬鹿っ、何だそ、やんっ……誰が陵辱系だっ、あぅんっ……何言って、ああんっ……」
 逃れようと必死に体を動かす。
 だが兄は逃すまいとのしかかかって来る。
「そうやって最初は嫌がるけど、そのうち気持ち良くなって『もっとしてぇ』って言う様になるんだっ……それがお前が陵辱系キャラだってことさっ」
「そんなこと、やぁっ……ある訳な、ああっ……」
 体を反転させて兄の手から胸を庇う。
「逃げたって無駄だっ……しょせんお前は陵辱キャラっ……いくら否定しようがこうしている内に、俺のチンポが恋しくて自分からおねだりしてくる様になるんだっ……」
 スカートが捲くられ、指が秘所を撫で上げる。
「あっ、はぅんっ……そ、そこは駄目、あんっ……駄目だって、ああっ……駄目なのにぃ、いやぁんっ……」
 ついに可愛い声を上げてしまう。
 そしてそれがスイッチであったかの様に、ガクンと体の力が抜けていく。
(だ、駄目だ……このままじゃまたヤられちまう……何とか逃げないと……)
 そう思う途中からも、ジワジワと気持ちの良さが体に広がり、逆らおうとする意識を駆逐していく。
「あふぅっ、あっ、ああっ……脚を、やっ……そんな、やぁんっ……」
 太ももに舌が這い、吸い付かれ、甘く噛まれる。
 その感触が膣に響き、直接触れてこないジレったい快感が切なさを呼んだ。
(うぅ……もっと……もっとして……もっと近づいて……アソコを……アソコを舐めて……吸って……舌を入れてぇっ……)
 思わず兄の愛撫を求めてしまう。
 だがその事を口にしたら思う壺だと必死に耐える。
「ふふっ……どうだ? 舐めて欲しいか?……俺の舌で、アソコを舐めて欲しいか?」
 兄がいやらしく尋ねてくる。
「だ、誰が……そんなこと……して欲しいもんか……」
 快感に乱れた息を整えながら否定する。
「ふ〜〜ん、そうなの……じゃあ、止めちゃおうかなぁ……」
「!……」
 その言葉に体がピクッと反応してしまう。
(しまった……)
 いくら頭で否定していても、体は兄の愛撫を欲しがっているのだ。
 兄は今の反応に嬉しそうな表情を浮かべている。
「涼たんの体は正直だねぇ。心の方ももっと素直にしてあげるからねぇ……」
 そう言うと、いきなり秘所に舌を這わせた。
「ああんっ! あっ、はぅっ……いや、あっ、ああっ……止め、あっ……駄目、やぁんっ……」
 求めていた刺激に突然襲われ、涼の体は跳ね上がった。
 心とは裏腹に、肉体はその愛撫を喜んで受け入れ、くねくねと激しく腰を動かす。
「はっ、ぅんっ……やぁっ、あぁっ、いやぁんっ……ひゃっ、はふっ、あぁっ……」
 舌が最も感じる場所を捉え、舐め上げ、弾いてくる。
 先ほども何度か触れはしたが、今回はそこを重点的に愛撫され続ける。
(こ、ここが……クリトリス……?)
 その場所を認識してはいないが、肉体がそこが一番感じる場所だと知らせてくる。
「あっ、あぅんっ……はぁっ、はふんっ……ああんっ……」
 チューっと吸い上げられ、激しく体が跳ね上がった。
(ああ……き、気持ちいい……もっと……もっとして……もっと凄いので……もっと凄く……)
 涼は快楽に浸りながらも、何か物足りなさを感じ始めていた。
(あ、あれが……あれが欲しい……太い……太いあれ……)
 頭に浮かぶ求めてはいけないモノ。
「どうだ?……そろそろ欲しいか?……俺の……ぶっといチンポが欲しいか……?」
 それを見透かしたかの様に兄が尋ねてくる。
 一度見、そして膣に押し込まれ、擦られた兄の太い肉棒。
 その外見、そして感触は、涼の脳と膣を痺れさせた。
(あ、あれが……また入ってくる……そしたら……どんなに気持ちいいんだろ……)
 股間が熱くなり、まるで肉棒を求めるかの様に腰がクネクネと蠢きだす。
 体をうつぶせにし、腰だけが高く突き出た形で尻を揺り動かす様は、まさに肉棒を押し込んでくださいと言わんばかりの姿勢だ。
「ふふっ……お前のここ、ビチョビチョだ……それに、中がヌメヌメ動いてるぞ……欲しいんだろう?……お兄ちゃんのぶっといのが……欲しくてたまらないんだろう……?」
 その通りだった。
 だがそれを口には出せない。
 出したらお終いだ。
 言ってしまったら、兄との行為を認める事になる。
 それは自分が男を捨て、また、兄弟でセックスするのを受け入れる言葉になってしまう。
「おいおい、我慢は良くないぞ……ほら、欲しくないのか?……この太いチンポ……」
 何かが膣穴に当たり、少しだけ入り込んできた。
(ううっ……そ、そのまま入れてっ……入れてぇっ……)
 だが、それはすぐに抜けていった。
「ああ……」
 思わず溜め息が漏れる。
「なぁんだ、やっぱり欲しいんじゃないか……でも入れてやらない……ちゃんとおねだりしなきゃ駄目だ……『お兄ちゃん、涼のここにお兄ちゃんのオチンチンを入れて下さい』ってな」
 それだけは言えない。
 無理やりならともかく、自分から兄の肉棒を求めてセックスしたとなったらお終いだ。
 もう兄の行為を責められなくなってしまう。
「ほらほら、どうするんだ?……言わないのか?……いらないのか?……欲しくないのかぁ……?」
 兄は亀頭の先を入れたり出したりして刺激してくる。
(ああぅ……止めて……止めてくれ……そんな事されたら……おかしくなっちゃう……)
 まさに寸止め、ヘビの生殺し、といった具合に涼の意識は追い詰められていく。
(欲しい……欲しい……チンチンが……欲しい……もう何でもいい……とにかくこの疼きを何とかしたい……突っ込んで……ゾリゾリ擦って……激しく突いて……気持ち良くなりたいぃっ……チンチンが欲しいっ……!)
 ついに涼の中で何かが切れた。
 理性は駆逐され、肉欲を求める意識だけが体を支配する。
「お、お兄ちゃんっ……涼のここにっ……お兄ちゃんのオチンチン入れてっ……ぶち込んで激しく突いてぇっ……!」
 涼が叫ぶと同時にズブズブと一気に肉棒が押し込まれる。
「はぁんっ! ああっ……」
 じらしにじらされて、ようやく入り込んできた肉棒の感触はたまらなかった。
 入れられただけで体中が痺れ、もうイってしまいそうな快感が襲ってくる。
 それが終わるか終わらないうちに新たな刺激が押し寄せた。
 兄が激しく腰を動かし始めたのだ。
「あっ、あぅんっ、ああんっ……いっ、いいっ、いいよぉっ……お兄ちゃんいいよぉっ……あふっ、あんっ、はぐぅっ……」
 涼は頭を左右に振って悶える。
 入れられるまで妄想していたのとは比較にならない恐ろしいまでの激しい快感が伝わってくる。
「あっぐっ、ああっ、ああんっ……やぅっ、はぁっ、やぁんっ……あっ、ああっ、いやぁんっ……」
 膣穴を目一杯広げ、凄まじい早さで出し入れし、膣内を擦り上げていく兄の太い肉棒。
 こんな感触は信じられなかった。
「やぁっ、はぅっ、ああんっ……おにぃ、あっ……おにぃちゃぁんっ……はっ、ああっ、やんっ……オチンチン、ああんっ……オチンチン凄いよぉっ……ああっ、やぁっ、はぁんっ……」
 二回目のせいか、また後背位という姿勢のせいか、先ほど入れられた時より快感が増している。
(うあぁっ……気持ちいいっ……気持ちいいよぉっ……もっとっ……もっとぉっ……)
 涼の頭にはすでに兄の肉棒で突いてもらう欲求以外何も無かった。
 口から涎を垂らし、手はギュッとシーツを掴み、後ろから前に押し出すかの様に叩きつけてくる兄の腰の動きに、ビクビクと体を震わせて快感に浸っていく。
「やんっ、やっ、はぅんっ……ああんっ、あっ、はぐぅっ……おにぃ、あっ……おにぃ、ああんっ……凄い、やんっ……凄いよぉっ……」
 もう何が何だか分からない。
 凄まじい勢いで快感が押し寄せる。
 先ほどは恐怖に感じた快感が、今度はとてつもない魅惑な感触として涼の心を支配していく。
「うぉっ……そろそろ出るぞっ……もうすぐ出るぞっ……!」
 兄の腰の動きが早まる。
 また精液をかけられる。
 自分の膣に兄の精が注がれる。
「はふぅっ、ひゃっ、ああっ……たまんない、あっ……たまんないよぉっ……あっ、はぅっ、やぁんっ……」
 体は女とはいえ心は男、ましてや兄弟であるのにセックスしているという禁忌な状態に背徳感を感じながらも、その実興奮は高まり、快感が増してゆく。
 その理不尽な自分の心と体に嫌悪を感じつつ、強くなっていく絶頂の予感に気持ちは高ぶっていった。
「あんっ、はぅっ、ああんっ……おにぃ、あんっ……もう駄目、ああっ……もう駄目ぇっ……はっ、やんっ、はぁっ……イく、やぅっ……イっちゃう、はぅっ……イっちゃうよぉっ……ひゃんっ、やぁっ、ああんっ……あっ、ああっ、あああんっ……おにぃちゃぁんっ……!」
 シーツを引き寄せ、頭を仰け反らせる。
 目の前が真っ白になり、何も考えられなくなる。
「うおぅっ……俺もイくっ、イくぞぉっ……!」
 兄の叫びと共に、ドビュドビュドクドクドクと激しい勢いで膣内に精液が注がれていくのを感じる。
 その感触が涼の快感をさらに高みに押し上げ、体が自然にブルブルと震え出す。
 肉棒は、ドビュドビュっと数度放出を続けた後、ビクビクと最後にもう一度精を放ち、ようやく射精を終えた。
 兄が背中に倒れこんでくる。
 肌の触れ合う感触が心地いい。
 荒い息が重なり、しばらくそうしてジッと黙って動かずにいた。
 息を整えた涼は、兄の体の下から抜け出すと隣に横たわった。
「なあ、涼……」
 兄がぼんやりとした声を掛けてくる。
「なに……?」
 こちらもぼんやりとした声で返す。
「セックスって気持ちいいもんだな……」
「ああ……」
 それは同感だったので素直に同意する。
「またしてもいいか?」
「……いいよ……」
 一瞬どうしようかと思ったが、この気持ちの良さを忘れる事などできそうもないので了承する。
「いいのか……?」
 意外だったのだろう、少し驚いた様な声で尋ねてくる。
「まあ、もう二回もしちゃったしな……別にいいよ……」
「ホントかよっ、やったぁっ」
 嬉しそうに笑う兄の顔を見ながら、涼は以前ほど兄とする事に嫌悪感を感じなくなっている自分に気がついた。
 要は慣れなんだろう。
 それに別に男の体でしてる訳じゃない。
 自分の体は女なのだから、何の問題があろうか。
(って、兄弟なんだよな……それはマズイか……)
 そこまで考えてゾクリとした興奮を覚える。
(でもそれがいいのかな……?)
 兄とする背徳感、それは非常に甘美な果実だった。
 そのせいで、他の男としても兄とする時ほど興奮しないかも知れない。
(それに兄貴のってデカイしなぁ……)
 男の目から見ても感心してしまう太さを持つ兄の一物。
 その太さを経験してしまった後、それより細い肉棒で満足できるだろうか。
 これほどの持ち物を持った男を捜すのは大変だろうし、気が合うとも限らない。
 やはり自分は兄とするしかないのかも知れない。
 そんな事を考えていると、兄が手を伸ばして乳房を掴んできた。
「あんっ……」
 思わず甘い声を上げてしまう。
(これぇこれぇ、この快感は男にはないんだよね……)
 胸を掴まれただけで体中に気持ちの良さが広がる。
 女の体になって良かったと思える瞬間だった。 
「何だよ、もうしたいのか?」
「だって、お前の体って凄く気持ちいいんだもん……それに顔も可愛いし、声だってはるるんじゃないか……これで興奮しない男がいるかっての……」
 そう言いながら乳首に食らい付く。
「はぅんっ、あっ、ああんっ……そうか、あっ……俺って可愛いんだよな、あぅんっ……だったら兄貴としなくても、ああっ……もっといい男を引っ掛けるって手もあるんだよね……」
「え? そ、それは止めてくれぇ……お願いだから止めて……」
 その言葉に兄は慌てて起き上がると、両手を合わせて拝んでくる。
「う〜〜ん、どうしようかなぁ……」
 本気ではないくせに、考えるフリをする。
 兄ならばともかく、見知らぬ男に抱かれるのはゾッとする。
 それに下手に惚れられてもかなわない。
 兄とはずっと家族として関係を保てるが、他人では恋人になってくれと言われかねないだろう。
 そんなのは嫌だ。
 セックスを受け入れても、心が男である事には変わりないのだから、男と恋愛などしたくないのだ。
「そうだ。あれ、あれやるよ。前から欲しがってたさくらたんのフィギュア。な、あれやるから、だから他の男は作らないでくれぇ……」
 兄は必死に頭を下げている。
(何か面白い事になってるなぁ……そうか、これからセックスをダシにして色々兄貴に頼めるな……そう考えると女ってのも悪くないかも……)
 女の体になった事を悲観的にしか捉えていなかったが、よく考えると結構得な部分もあるのではないか。
(これから可愛いコスプレもできるな……ゴスロリとかもいいかも……)
 今まで考えもしなかった女としての日々に、涼は胸を躍らせるのだった。












あとがき

 TSモノ第二弾。
 今回のはちょっと趣向を変えて馬鹿っぽくしてみました(笑)
 最初「制服を着せたいなぁ」と思った時に、普通の男が女の制服持ってるわけないから、普通じゃない様にしようということでオタクの兄貴が誕生。
 それから普通の男が女の制服着たがるとも思えないので、主人公もオタクにしようという事に。
 オタク兄弟にしたおかげで、予想した以上に馬鹿な話に出来ました。
 やはりオタクの気持ちはオタクにしか分からないですからねぇ。
 って、趣味の違う人には面白くない話だったかも知れませんが、たまにはこういうのもありって事で許してください。
 途中の兄のじらしとかは意外に自分でも大興奮。
 何か好きみたいですああいうの。
 やっぱり私はソフトサドが好きなのですな(笑)
(2004.8.18)



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