神封じの巫女


 八畳ほどの薄暗い和室に、白い着物を纏った少女が座っていた。
 凜とした雰囲気を持つその姿は、一見十六、七歳であったが、美しい容姿と、神秘的な雰囲気から、大人びた印象を見る者に与えた。
 目を瞑り、何かを感じ取ろうとしている様子でジッとしている少女の前では、一人の女性が見守っている。
「此度の儀式、これまでと同じでは封印は破られるでしょう」
 不意に少女の唇から呟きが漏れた。
 女性はそれにハッとしたようにすると、居住まいを正した。
「それはお告げでしょうか?」
「わたくしの中の封印が脈動を示しています。かの神の力が、これまでに無いほど強くなっているのが感じられるのです」
「そのような……一体どうすれば宜しいのでしょう」
「今一つの封印が必要になると思われます」
「それはつまり、別の錠前の適性者が必要になる、と?」
「さようです」
 少女の言葉に、女性は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに表情を戻すと大きく息を吐き出した。
「そのような前例は聞いたことがありません。果たして上手くいくのでしょうか?」
「錠前師殿が宜しいようにして下さるでしょう。あの方にお任せしておけば間違いはありません。あなた達はあの方の指示に従って下さい」
「承知いたしました。それでは早急に錠前師殿に連絡をいたします」
「よしなに」
 少女の返答を聞くと、女性は無言で頭を下げて部屋から出て行った。
 廊下を進む姿が障子越しに見え、少しして部屋から離れたのが確認できた後、少女は小さく息を漏らした。
(二つ目の封印。鍵は同一の物を使うことになるのでしょうか……そうなれば鍵はあの方……それは悲しいことではあるけれど、これもお役目。耐えなければ……)
 悲しげな表情を浮かべて俯いた少女は、小さく溜め息を漏らした。
 そして気を取り直したように顔を上げると、遠くを見るようにしている。
(たとえ二つ目の封印が関わるにせよ、わたくしもあの方と……自由の無いこの身が偶然手に入れることの出来た喜び……それを大切にいたしましょう)
 己に言い聞かせるように心で呟いた少女は、両手を胸の上に置くと、目を瞑りながら温かな笑みを浮かべた。
(また、お逢いできる……時折お見かけするけれど、ご立派になられて……あの方の目には、わたくしはどう映っているのでしょう……美しいと、少しくらいは思っていただけているのでしょうか……)
 頬を染め、恥ずかしそうに俯く姿は、年相応の少女のものであり、先ほどまでとは異なった印象があった。
(まもなく儀式が行われる……その時あの方とわたくしは……でも気を引き締めなければ。かの神は力をつけているのだから……錠前師殿は、心配ないと仰って下さいましたが、わたくしは……)
 少女は不安げな表情を浮かべると、窓から見える月へ視線を向けた。
 満月が光を放ち、闇夜を明るく照らしている。
 それを見つめていると心が穏やかになり、いくらか不安も減ったように思えた。
 だがすぐに己の背負っているモノの重さを感じた少女は、表情を厳しくすると、何かを決意するようにして再び目を瞑るのだった。


 自分は夢を見ている。
 そう自覚した時、大樹(だいき)はそれが最近よく見る夢なのだという事に気がついた。まるで現実の自分がされているかのように感じられる夢だ。
 実は本当にされているのではないかと思う事もあったが、そのあり得なさから否定していた。
(気持ち、いい……)
 股間に起きた快感に、うっとりとした想いを抱く。
 意識は混濁していたが、股間から押し寄せる気持ちの良さだけはハッキリと感じられた。
 肉棒に刺激が与えられている。
 パジャマのズボンとパンツが引き下ろされ、顕わになった股間の一物に、細い指が絡んでいるのだ。
 まるで楽器を操るような動きで、力を入れたり抜いたりといった微妙な接触があり、そのこそばゆい感覚に鼻息が強く漏れる。
 肉棒が左右にねじられ、クイっ、クイっ、と引っ張られるようにされるのが心地良い。
 自慰をした事は何度もあるが、こうして自分以外の人間に触れられていると、それだけで快感が起きた。
 一体誰がこのような気持ちのいいことをしてくれているのだろう。
 いつもそう思い、視線を向けるのだが、周囲の暗さと意識がぼんやりしている事で、判別する事は出来なかった。
 ただ時折頭らしい部分が動くと、サラサラとしたものが触れたため、長い髪をした女性だというのだけは分かった。
 見えないのに女性だと判断したのは、髪の長さだけでなく、触れてくる指の感触が滑らかでしっとりとしていたためだ。男の指とは思えなかったのである。
 そもそも男にこんな事をされているのでは気持ち悪くて仕方ないのだから、精神衛生上も女性と思うのは当然のことだった。
 それに肉棒に触れているのが、ある人物だという推測、いや願望があったため、女性でなければいけなかった。
 その人物というのは、義理の姉である摩魅(まみ)だった。
 摩魅がしてくれているのではないか、そうであったら嬉しい、と思っていたのだ。
 昔から大樹にとり、摩魅は憧れの存在だった。
 血の繋がりは無いとはいえ、幼い頃から一緒に育ち、面倒を見てくれている優しい姉に、大樹は心奪われていた。
 無論、姉として慕っている部分も大きいため、純粋な恋心のようなものは抱いていない。
 それでも時折いやらしい妄想を楽しむことはしていたため、寝ている自分の寝床へ摩魅がこっそり寄り添い、肉棒に触れてくれている、といった願望も抱いてしまうのである。
 それにこれは夢なのだから、そうした事を望んでも問題無いだろう。
 現実ではあり得ない、摩魅の奉仕を自分は夢で楽しんでいるという訳だ。
 義理とはいえ、姉に対して何という夢を見ているのだろうとも思うが、そうしてしまうほどに摩魅は魅力的だった。
 もっと色々してくれたら嬉しいのに。いや、このまま起き上がって押し倒したりしたら駄目だろうか。どうせ夢なのだ。それくらいしてもいいだろう。
 そんな邪な想いまで起きてくるが、悲しいかな体は動くことはなかった。
 さすがは夢。妙なところで自由にならない部分があった。
 しかし股間から押し寄せてくる快感は極上であったため、これだけでも十分に楽しめるものではあったのだが。
(あ……それ、いい……)
 そんな事を考えていると、摩魅の手が包むように肉棒を掴んできたため興奮を覚える。
 そのまま上下にゆっくりとしごかれ始め、それに合わせて湧き起こる快感にうっとりとなった。
 何という素晴らしい状況だろう。何度か夢でされてきた事だが、何度味わってもたまらない行為だった。
 摩魅に肉棒をしごかれるなど夢のようだ。いや、まさに夢であった訳だが。
 少しの間そうされていると、不意に動きが止まったため、どうしたのかと思う。
 続けて吐息のような音が聞こえたと思った瞬間、肉棒にザラっとした湿ったものが触れてきたため、その事に衝撃を覚えると共に喜びが溢れた。
 舌だ。
 摩魅が肉棒に舌を這わせてきたのだ。
 これは初めてのことだった。これまで手でしごかれる夢は何度か見てきたが、舌で舐められる事はなかったからだ。
 新しい行為に興奮と緊張が高まり、そこまでしてもらえる事に歓喜の想いが起きてくる。
 舌が亀頭をチロチロと舐め、絡ませるようにしてくるのがたまらない。
 唾液で塗装するかのように肉棒全体に舌が這わされ、満遍なく、念入りに舐め回されるのに体がピクピクと震えた。
 何より初めて経験する舌による刺激は、信じられないほどに気持ちが良く、鼻息が荒くなるのを抑えられなかった。
(あっ……)
 不意に肉棒全体が、温かく湿り気を帯びたモノに包まれた。
 感触から口に咥えられたのだと気がつき、そこまでしてくれている事に喜びが溢れる。
 吸い上げられると同時に上下に擦られ始め、湿った柔らかな肉にキュウっと締め付けられ、嬲られる快感に体が硬直した。
 未知の刺激が未知の快感を呼び起こし、その魅惑の感覚に布団に爪を立てて耐えていく。
(摩魅姉さんが……俺のを咥えてくれてる……)
 まさに夢のような、いや、実際夢な訳だが、そのあまりに素晴らしい状況に、心が嬉しさで一杯になった。
 摩魅の口内に与えられる強烈な刺激で射精感も高まっており、その切羽詰まった状態に、震えるほどの快感を覚えた。
 本当に気持ちが良かった。
 自分の手で擦る時とは比較にならない、あまりに甘美過ぎる感触だった。
(これがフェラチオ……スゲェ。経験ないのに、何か本当にされてるみたいだ。何でこんな気持ち良くなってるんだ俺……)
 夢は記憶の産物だと言われているが、現実でフェラチオをされた事などないにも関わらず、その体験した事のない刺激が肉棒に起きているのに戸惑う。未知の刺激であるにも関わらず、それは見事なまでにリアルに、舌で舐められている感触を伝えてきているのだ。
 強い快感で頭が一杯になり、このまま一気に射精したいという想いが押し寄せてくる。
 肉棒の付け根から裏筋をベロリと舐め上げられ、亀頭を包むようにして舌を絡ませられ、チュウっと強く吸い上げられるのに、腰が持って行かれるような快感を覚える。
 続けて口全体で吸引されながら上下に擦られていくと、耐え難い射精感が肉棒に襲いかかってきた。
(う……うぁ……ま、摩魅姉さぁんっ!)
 心の中で絶叫すると同時に、肉棒が強く吸引され、それに誘導されるようにして精を放つ。
 一瞬頭が真っ白になり、蕩けるような快感が脳に襲いかかってくる。
 体が硬直し、ビクッ、ビクッ、と勝手に震えながら精液が放出されていく。
 その間も口による吸引は行われ、舌が絡みついてくる刺激に、大樹は顎を仰け反らせて耐えた。
 何度も射精が繰り返され、それに合わせるように動いてくる口と舌の動きに、逆らうことなく身を委ねてしまう。
(凄く、いぃ……たまんねぇ……)
 吐き出される精液を勢い良く吸い取られているような感覚があり、その腰が蕩けてしまうのではないかという気持ちの良さに意識が朦朧としていった。
 股間で摩魅と思える頭が揺れ、精液を漏らさず飲んでいる様子に、強い誇らしさが押し寄せてきた。
 飲まれている。
 自分の精液を飲まれている。
 それはこれまで経験した事のない素晴らしさを感じさせることだった。
 しばらくして射精を終えると、大きく息を吐き出して脱力する。
 肉棒をティッシュで拭かれている感触が起き、少しすると、パンツとパジャマのズボンが引き上げられた。
 布団を掛けられ、軽く叩かれると、その優しく、愛情を感じさせる叩き方が、幼い頃から知っている摩魅のものであるように思えた。
 やはりこの女性は摩魅なのだ。
 肉棒を咥え、精液を飲んでくれたのは摩魅なのだ。
 そう思うと、これまで以上の嬉しさが込み上げてきた。
 摩魅らしき女性が立ち上がり、部屋から出て行こうとしているのが感じられる。
 そしてドアを閉める寸前、「もう少しですね」と呟いたのが聞こえたような気がした。
 何がもう少しなのだろう。
 その事が気にはなったが、考えようとする前に強い眠気が襲いかかってきた。
 夢を見ている、つまり寝ているはずなのに眠気というのもおかしな話だったが、実際そうとしか思えない感覚なのだ。
 それに逆らう事が出来ない大樹は、徐々に意識が薄らいでいくのに身を任せていくのだった。


 耳元で鳴り響く目覚まし時計の音に、大樹は目を覚ました。
 慌てて時計を止めながら、何ともエッチな夢を見たものだと大きく息を吐き出す。
 最近はこうした夢を見ることが何度かあったが、今日のは格別に凄かった。
(良かったなぁ……摩魅姉さんに舐めてもらっちゃった……)
 夢とはいえ、リアルな感触があったため、思い出すだけで鼻息が荒くなった。
 こうした夢であれば何度でも見たいものだ。
 とはいえ、義理の姉相手にあのような夢を見るなど、とんでもない事であったため、罪悪感を覚えてもいたのだが。
 家族相手に性的な妄想をするなど良くないことだろう。軽いものであればともかく、フェラチオとなってはやりすぎだった。性器を咥えられるなど、あまりに淫靡すぎて、健全な家族関係が崩壊しそうに思えたからだ。
(俺って、摩魅姉さんにあそこまでしてもらいたがってるのかなぁ……)
 実際夢でされている最中は、凄く嬉しかったのだからそうなのだろう。
 何よりさらなる行為を求めてもいたのだから、自分には摩魅とのセックス願望があるのかも知れない。
 血の繋がりが無いとはいえ、姉として幼い頃から一緒に暮らしてきた相手にそのような事を考えてしまうとは、自分は異常なのではないか。
 だが摩魅は、女性として魅力的であるのだから仕方がないようにも思えた。
 実際普段はちょくちょくいやらしい視線を向けていたりするのだ。
 姉でありつつも、女性でもあるのが、大樹にとっての摩魅なのである。
 そんな事を考えながら時計を眺め、まだ余裕のある事を確認してからゆっくりと起き上がる。
 大きく伸びをすると、近くに置いてある服を取って着替え始める。
 窓からは朝日が差し込んでおり、遠くに見える田んぼや畑の緑が眩しく目に映った。
 そうした風景は、この摩那賀村(まながむら)が田舎である事を感じさせ、嫌になる事もあったが、普段は気にならない事でもあった。
 友人の中には都会へ憧れている者も居て、高校を出たら東京へ行くのだという話をされた事もあったが、大樹にはそうした想いは無かった。
 別にこの村に嫌な事もないため、おそらく一生ここで暮らしていくのではないかと思っていたからだ。
 そんな事を考えながら着替えをしていく自分。
 いつもと同じ、変わらぬ朝の身支度。
 こうした事の繰り返しが日々の生活であり、一番幸せな事なのだろうと思う。
 四年前、事故で両親を一度に亡くしてから、そんな風に思うようになっていた。
 葬式が済んで数日後、以前は朝になれば必ず会えた両親がどこにも居ない事に気づいた時、強い悲しみに包まれた。
 それまで当たり前だと思っていた日常が、何と幸せな日々であったのかを認識し、それが消えてしまったことの喪失感に泣きじゃくった。
 そんな自分を、優しく抱き締め、励ましてくれたのが摩魅だった。
(大切な人を失った悲しみは、少しすれば癒されます。そして日常が始まるんです。日常が普通に送れている事が幸せなのだと、大切なのだという事を忘れてはいけませんよ。大樹の事を愛している人はまだ居ます。そして大樹が愛している人もまだ居るんです……)
 五歳年上でしかなく、生まれた時に両親を失い、大樹の両親を親代わりとして育った少女は、自身も泣きながらそう告げた。
 摩魅は自分の事を愛してくれていた。そして自分も摩魅の事を愛している。
 そう思った時、まだ自分は幸せなのだ、まだ幸せになれるのだ、と理解し、両親を失った悲しみから早く立ち直ることが出来た。
(あれで俺は、摩魅姉さんのことを意識するようになったんだよな……)
 実の姉弟のようにして育ったため、元々家族としての愛情を抱いてはいたが、それが異性に対する恋愛感情も含んだものへと変わっていった。この女性を守りたい、愛していきたいと思うようになったのだ。
 十二歳という思春期に入った年頃というのもあったのだろう。摩魅を女性として意識し、異性として好きな気持ちが高まったのである。
 それは十六歳になった今も変わらなかった。一緒に暮らし、世話をしてもらっている事で、より強くなっているくらいだ。
 そんな想いがあるゆえに、ああした夢を見てしまうのも仕方のない事なのだった。


「おはようございます」
 居間へ入ると、心地良い声が耳に響いた。
 摩魅がキッチンに立っているのが見える。
 年齢は二十一歳。身内の贔屓目を抜いたとしても美しい容姿をしており、腰の辺りまで伸びた長い黒髪と相まって、実に魅力的な女性だった。
 細身ではあるが肉付きの良い体をしていて、特に胸の膨らみはかなり大きかったため、つい目がいってしまうほどだ。
(おっきいなぁ。やっぱり摩魅姉さんは素敵だよ……)
 魅力的なバストに満足しながら、朝から少し欲情している自分に苦笑する。
 昨夜見ていた夢のこともあって、どうにも今日は朝からいやらしい気分になっているらしい。
「おはよう、摩魅姉さん」
「うん、大樹は今日も元気ですね。朝からお姉さんのこと、いやらしい目で見るくらいに」
 にこやかに微笑みながらそう言われたのに硬直する。エッチな妄想をしていたのがバレていたからだ。
「う……朝から摩魅姉さんが素敵だからさ……俺の目は吸い寄せられちゃうんだ」
「胸に、ですね。もう、エッチなんですから」
 気取った台詞で誤魔化そうとしたが、あっさり返されてしまう。
「服の上から見るのはいいですけど、お風呂とか覗いちゃ駄目ですよ。それは犯罪ですから」
「しないよそんなの」
「覗くくらいなら一緒に入りましょうね。お姉さんなら構いませんから。昔はよく一緒に入りましたし」
「さすがにこの歳じゃ一緒に入らないって」
「そうですか。それは残念です」
 ガッカリした様子で呟く摩魅に苦笑する。
 摩魅と一緒に風呂に入るというのは魅力的だったが、さすがに恥ずかしかったし、何よりそんな事をしてはブレーキが効かなくなってしまうだろう。昨夜見た夢のような行為を求めてしまいかねなかった。
 夢で見るのはともかく、現実で義理の姉とそのような関係になるなど良くない事だ。
「そういえば、今日は舞のある日ですけど、大樹は見に行くんですよね?」
「あ、うん……」
 不意に変わった話題に、少し動揺しながら頷く。
 舞というのは、村の神社で定期的に行われている神事であり、それを見に行くのが大樹にとって特別な意味のある事になっていた。
 というのも、舞を舞う巫女というのが美少女であり、大樹にとって憧れの存在だったからだ。舞を見るというより、彼女を見るのが目的になっていたのである。
「琳霞さまをエッチな目で見てはいけませんよ? あの方は綺麗で胸も大きいですけど、神事をされているんですから」
「わ、分かってるって……」
 舞を舞う巫女。名を琳霞(りんか)と言い、年齢は大樹より一つ上の十七歳だった。
 普通であればそれだけの事でしかないが、この摩那賀村においては違っていた。巫女は特別な地位を持つ存在として村人達に敬われていたからだ。
 村に伝わる言い伝えの体現者であり、「封印の巫女」と呼ばれていて、信仰の拠り所とされているのである。
 滅多に人前に現れることはなく、まさに雲の上の存在とされており、そうした事が神秘性を高める事に繋がっていた。
 容姿は非常に美しく、舞の腕前も見事であったため、信仰心を抜きにしても神事を楽しみに見に行く者が多かった。
 大樹もその一人であり、幼い頃からしょっちゅう舞を見に行っていたのである。
(昔から凄かったよな。初めて見た時の衝撃は凄かったよ……)
 自分と同じくらいの年齢の少女が、見事なまでの舞を見せたことに、子供心に感動したものだった。
 それ以来、琳霞の舞のファンとなっている訳だが、最近はその少女としての美しさにも惹かれ始めていた。何しろ凄く綺麗であり、淑やかで可憐な少女だからだ。その上巫女という神秘的な魅力もあるのだからたまらないだろう。
 単に巫女をしているというだけでなく、オーラのようなものを感じさせるところがあり、実際神託も告げたりするため、名実共に巫女な少女なのだった。
(あなた達は、どなたですか?)
 不意に記憶が蘇る。
 可愛らしい幼女が小首をかしげ、不思議そうな顔で尋ねている姿が脳裏に浮かぶ。
 隣に居る幼女が元気に挨拶をすると、それにちょっとズレた答えを返してくるのに可笑しさが生まれた……。
 懐かしい思い出だった。あれからもう十年は経ったろうか。
 それは無邪気な幼児ゆえの冒険と、それがもたらした奇跡的な出会いだった。
「おはようございます〜〜」
 記憶の底へ沈んでいた意識が、玄関の方から聞こえた声で戻された。
「歩美(あゆみ)ちゃんが来たみたいですね。早く朝ごはんを食べないと、学校に遅れますよ」
「分かってるって」
 確かに時間に余裕が無くなっていたため、慌てて食卓に着いて箸をとり、ご飯を食べ始める。
「大ちゃん、摩魅さん、おっはようございます〜〜」
「おはようっす」
「おはようございます歩美ちゃん」
 お日様のような笑顔を浮かべながら部屋へ入ってきたのは、幼馴染みの歩美だった。
 年齢は大樹と同じ十六歳。家が近い事もあって、幼い頃からいつも一緒に居る仲の良い少女だ。
 低い背丈に丸顔に童顔、首筋までの短い髪、といった容姿の特徴と、元気で明るく、小動物のような落ち着きの無さから、可愛さに溢れている少女だった。
 少々ふっくらとした体型と、胸が大きい事から、実に抱き心地の良さそうな体つきをしているため、そそられる部分があった。
 大樹としても、胸の大きさが目立つようになった頃から意識してしまい、ついエッチな妄想をしてしまう事がよくあった。
 今も部屋へ入ってくる際に胸が揺れたため、思わず見入ってしまった。
 何しろ丸くて大きな膨らみが、ポヨンっといった感じで弾んだのだから仕方ないだろう。
 短いプリーツスカートから伸びる白い太ももも眩しく目に映り、何ともエッチな体に育ったものだと、改めて感心の想いを抱く。
「今朝も摩魅さんの朝ご飯は美味しそうです。何だかお腹空いてきちゃいます」
「ありがとうございます。良かったら歩美ちゃんも食べて下さいね」
「うわぁ、じゃあいただきますぅ」
 嬉しそうに返事をしながら隣に腰掛ける歩美に呆れる。何しろ毎朝同じ展開を見ているからだ。
「よくもまあ、毎朝うちの朝飯を食べるもんだ。自分ちでも食べてるんだろ? 太るぞ」
「これくらいなら大丈夫だよぉ。その分動けばいいんだしぃ。それにずっと体重変わってないよ」
「それならいいんだけどな」
 実際歩美は無駄に動いている事が多いため、脂肪になる前に消費されそうなイメージがあった。肉付きの良さから考えて太りやすい体質だと思うのだが、肥満にまで行かずに済んでいるのは、消費量を超えない食事量になっているのだろう。
(まあ、あまり歩美が痩せても勿体ないし……抱き心地良さそうな体じゃなくなるってのは悲しいからな……)
 前に何かで歩美に抱き付かれた際、その柔らかさにうっとりしたものだった。
 小学生の頃と違って吸い込まれるような感触があり、何故こんなに気持ちがいいのだろうと驚いたものだ。
(おっぱいも、おっきいよなぁ……ああ、揉んでみてぇ……)
 隣で歩美が動く度に微妙に揺れる乳房を横目で眺めつつ、食事を口へ運んでいく。
「美味しいっ。摩魅さんの作る朝ご飯って、どうしてこんなに美味しいんだろぉ」
 ニコニコしながら料理を平らげていく歩美の様子に、思わず顔がほころぶ。いつも明るく元気なその姿を見ていると、凄く幸せな気持ちになってくるのだ。
「そう言えば、脚の方はもう大丈夫ですか?」
「はい。摩魅さんがマッサージしてくれたから、すぐに痛くなくなっちゃいました。ほら、こういう風に動かしても全然平気です」
「そう、それは良かったです」
 楽しげに脚を動かす歩美の姿を、摩魅は嬉しそうに見ている。
 昨日歩美はテニスをした際に脚を痛めていたのだが、摩魅が施したマッサージにより、すっかり治ったらしい。
「やっぱり摩魅さんは凄いです。マッサージ師で食べていけますよ。副業で始めたらどうですか? そしたらボク、絶対行きますから」
 摩魅のマッサージの腕はかなりのもので、密かに治療を頼んでくる人間が居るくらいだった。実際下手な医者に掛かるより怪我の治りが早いため、結構な人数に慕われているのだ。
 歩美もその内の一人で、幼い頃から摩魅のことをやたらと尊敬しているのだった。
「マッサージは趣味でしているだけですからね。商売でやる気はないです。それに商売にしちゃったら、忙しくなって歩美ちゃんを看られなくなっちゃうかも知れませんし。そうなったら心配ですから」
「それは嫌だなぁ。ボク、摩魅さんに看てもらいたいしぃ」
「っていうか、お前はもう少し落ち着け。昨日のテニスにしたって、無茶しなけりゃ痛めなかっただろうが。おんぶして家まで送った俺の苦労も考えろ」
 昨日大樹は歩けない歩美を背負って家まで運んだのだ。それは大変ではあったが、おんぶすることで太ももに触れることが出来たし、背中に押しつけられる胸の感触を十分に堪能もしていたため、それほど嫌でもなかった。内心「またおんぶできないか」などと思っていたりしたのである。
「ぶ〜〜、大ちゃんはボクの魅惑のボディを堪能できたから嬉しいでしょ。意味もなく脚撫でたり、背負い直しておっぱいの感触味わってたの知ってるんだから。今だってボクが脚を動かしているの、エッチな目で見てたじゃない」
「う……あ……」
 思いきりバレバレだったのに愕然とする。
「言ってくれれば触らせてあげるのに、どうしてこっそりやるかなぁ。別に今だって脚くらい触らせてあげるよ? ね、触ってみる?」
 そう言いながら脚を突きだして来たため、制服のプリーツスカートが捲れ上がり、パンティが見えそうになったため慌てる。ギリギリまで脚線が顕わになった美味しそうな太ももに興奮が湧き起こった。
「ば、馬鹿っ。何やってるんだよ全くっ」
 落ち着き無く視線をそらし、脚が視界に入らないようにする。
 面と向かって「触っていい」と言われると、逆に動揺してしまうものだ。何より歩美は性的なことに無防備過ぎるところがあったため、安易に誘いに乗るのは酷い事をしているように思えてしまうのである。
「歩美ちゃん、大樹にそういう事するのはいいですけど、他の男の子にしちゃ駄目ですよ? 他の男の子は大樹みたいに我慢してくれませんから。襲われちゃいます」
「はい、分かってます。こういう事は大ちゃんにしかしませんから。大ちゃんだから触らせてあげようって思っただけですし」
 摩魅の信用してくれている言葉と、歩美の自分を特別に思ってくれている言葉に嬉しくなるが、それゆえに摩魅の信頼を裏切る訳にはいかなかったし、歩美に安易に手を出す訳にはいかなかった。
「それよりも怪我に気をつけて下さいね。歩美ちゃんはちょっと元気過ぎるところがありますから。お姉さんは心配です」
「はい、気をつけます」
 歩美は摩魅の言葉には素直に従った。やはり尊敬している相手だからだろう。
「怪我もそうですけど、最近は事件が多いですから、そちらも気をつけて下さいね。歩美ちゃんは可愛いですから」
 この数ヶ月、近隣で犯罪が増えていた。中でも強姦や痴漢といった性的犯罪が多く、学校でも女子生徒に特に注意が促されていたのだ。
「了解です。ボクはいつも大ちゃんと一緒なので、いざとなったら大ちゃんに守ってもらいます」
「頼りにしてくれるのは嬉しいが、相手が刃物持ってたりしたら無理だぞ」
「無理でも大ちゃんは守ってくれるって信じてるよ」
「そうですね。大樹は必ず守ってくれますよ」
 強い信頼を向けてくれるのは嬉しかったが、さすがに刺されるのは嫌だった。
 とはいえ、実際に歩美が襲われでもしたら、庇うだろうとも思っていたのだが。
「俺らが小さい頃は、そんな事件なんて近くじゃ起きなかったけどなぁ。やっぱり時代が変わってるって事なのかね」
「うちのお婆ちゃんは、虞和蛇神(ぐわだがみ)の仕業だって言ってるけどね」
「何だそりゃ?」
「ほら、もうすぐ封印祭じゃない。前の祭りから百年経つから、それで虞和蛇神が人に悪ささせてるんだって」
 虞和蛇神というのは、村の言い伝えにある、人を悪行へ誘ったという神だ。
 元々村には姉弟の神が居たそうなのだが、ある日弟神である虞和蛇神が暴れだし、村はかなりの被害を被ることになったため、それを見かねた姉神の摩那賀神(まなががみ)が虞和蛇神を封印したのである。
 姉が弟を封印するというのは悲しい話だが、こうした神話では、家族間において諍いが起きるのはよくある事なので、この言い伝えもそうした流れで出来ているものなのだろう。
 この姉弟神の言い伝えから、村では百年に一度「封印祭」と呼ばれる祭りを行っており、祭りが近づくと、虞和蛇神が封印を破ろうとして災いを呼ぶのだと言われていた。そのため年寄りなどは、何か悪いことが起きると「封印されている虞和蛇神のせいだ」と言うのが口癖みたいになっているのである。
「何でもかんでも虞和蛇神のせいにするってのもどうかと思うけどな。勝手に犯罪に走るようなヤツもいるんだしさ」
「大樹の言うことももっともですけど、『魔が差す』なんていう言葉もありますからね。普段ならしないような事を何故かついしてしまう、というのは虞和蛇神がさせているのかも知れませんよ。大樹も歩美ちゃんが可愛いからって、いい加減な気持ちでエッチなことをしてはいけませんからね」
「……し、しないよ」
 実際はかなりしたいと思っているし、ついしかねないと思った事もあったため、少々動揺して答えてしまう。
「え〜〜、そうなのぉ? ボクは大ちゃんになら、別にされても構わないけどぉ」
 何とも嬉しいことを言ってくれるが、どういう事をするのか本当に分かっているのか怪しい感じでもあった。歩美は性的な知識はあまり無さそうだし、あったとしても、脳天気な性格から重く受け止めてなさそうだったからだ。軽く誘いをかけたら、遊びと同じ感覚で了承しそうに思えたのである。
「大樹、もし我慢出来なくなったらお姉さんに言うんですよ。エッチな気持ちだけで歩美ちゃんに手を出すなんて酷すぎますから。その前にお姉さんが何とかしてあげます」
 真面目な顔で言われてしまうと、何とも自分が自制の聞かない変質者扱いされているような気がしてくる。
「さすがにそんな状態にはならないって、大丈夫だよ」
「そうですか? でも大樹はいつもお姉さんや歩美ちゃんの胸ばかり見てますから、凄く心配なんです」
 本気で心配しているらしいのに悲しくなってくる。というか、自分はそんなに摩魅や歩美の胸を見ていただろうか。いや、見ていたかも知れない。
 そう考えると、こうした心配をされてしまうのも仕方がないのだろう。日頃の行いというヤツだ。
「分かったよ。本当にそうなったら摩魅姉さんに言うから」
「約束ですよ」
 にこやかに微笑みながら告げてくるのにガックリしながら、隣でよく分かってなさそうな顔で「うんうん、姉弟っていいねぇ。ボクも弟が欲しいなぁ」などと言っている歩美の言葉に、さらにガックリとなるのだった。


 家を出た大樹は、学校へ向かって歩いていた。
 隣の歩美は、何が楽しいのか鼻歌交じりにスキップ気味に歩いており、その度に胸の膨らみが揺れるのに興奮を覚える。
(ホント揉みてぇな。歩美ってば何でこんなにいいおっぱいしてるんだよ)
 先ほども思ったことだが、自分との仲の良さと物事に頓着しない性格から、「揉ませて」と頼んだら了解してくれそうな雰囲気が歩美にはあった。だがそれは逆に、性的な事に意識の薄い歩美を騙しているように思えたため、躊躇する事でもあったのだが。
 もし歩美と恋人同士になれば、そうした事を考えることなく性的な行為も出来るのだろうか。
 実際かなり仲が良いのだから、そうなっても良いのではないかと思うこともあったが、「おっぱいを揉みたいから恋人にする」というのでは酷すぎるし、何より歩美には家族のような感覚も持っていたため、そこまでする踏ん切りが付かなかった。今のままで十分良い関係なのだから、それを崩す必要はないように思えるのだ。
(でもそれだと、おっぱい揉めねぇんだよな……)
 隣でぽよんぽよん揺れる胸を見ていると、揉みたくてたまらなくなってくる。
 もう勢いのまま揉んでしまおうかと思うほどに、それは魅力的な膨らみだった。
「そういや大ちゃん。面白い話を思い出したんだけどね」
「ん? どんなんだ?」
 不意に話しかけられたため、いやらしい視線に気づかれたのではないかと思って体を硬直させるが、どうやら大丈夫だったようなので、ホッと息を吐き出しながら力を抜く。
 とはいえ、先ほどの摩魅との会話を考えれば、気づかれているのかも知れなかったが。
「さっきの虞和蛇神の話でさ、封印したのは摩那賀神だけど、それを手伝った人が居たっていうの」
「へぇ、そりゃ初耳だな。そんな話があるんだ。あの話に関わってるのって巫女さまだけかと思ってたよ」
「ボクもそう思ってたんだけどね。でもそういう人が居て、その人はそれから村で巫女さまを見守る役職に就いたんだって」
「そんな役職あったっけ? 役職の名前は何て言うんだ?」
「う〜〜ん、分かんない」
「何だよそれ、そこが一番のポイントじゃんか。摩那賀神の手伝いしたなんて凄いんだからさ、それがどの役職なのか分からなきゃ面白くないだろ」
「しょうがないじゃん。昔お婆ちゃんに聞いたの思い出しただけなんだから」
 歩美の祖母は言い伝えなどに詳しく、大樹も幼い頃はよく話を聞かせてもらったものだ。
 これは別に大樹達だけでなく、村の子供全員がそうして育つのである。
 言い伝えを聞かせることで、子供達の中に村に対する愛着や、村の役職に対する尊敬の念を培う目的があるらしい。
 言い伝えの内容は冒険譚のようになっていて、話のオチとして「主人公達が村の役職に就く」というものになっていたため、そうした想いが芽生える効果があったのだ。
 実際多くの村人が村に強い愛着を抱いていたし、村の役職についても強い敬意を抱いており、中でも巫女に関する事は強烈で、信仰心として尊崇の念を抱くようになっていた。
 実際面としても、巫女は権威ある存在として位置づけられていて、村長よりも立場は上だった。
 何しろ村の指針は巫女の告げる言葉によって定められているのであり、他の役職の合議による決定を覆すほどの力があるのだ。
 まさに巫女は、村の君主とも言うべき存在なのである。
「今度お婆ちゃんに聞いてみるよ。そしたら教えてあげるね」
「別にそこまでしなくてもいいけどな。そんなに興味無いし」
「うわっ、酷い。せっかく大ちゃんに喜んでもらおうと思って話したのにぃ」
 悔しそうに唇を尖らせるのが何とも可愛らしい。
 桜色の小さな唇が突き出されているのに思わずドキリとしてしまう。昔から同じ仕草を見てきているというのに、最近はどうにも性的な印象を持ってしまっていた。
(キスもしてぇなぁ……歩美だったらさせてくれそうだけどなぁ……)
 お願いしたら「うん、いいよ」とあっさり言いそうで怖かった。歩美はそういう事に無頓着過ぎるからだ。
 そしてそれは、「自分が相手だから」という信頼の強さを感じさせる事でもあったため、それを裏切り、性欲目的でする事に躊躇の念が起きるのである。
(やっぱり付き合うべきなのかな……歩美なら恋人にするのに全然問題ないんだけどさ……でも……)
 そうした事を考えると、頭に浮かぶのは一人の美しい少女だった。
 白衣と紅い袴に身を包み、金色の髪飾りを付けて舞う姿。それは天女のような神秘さに溢れていた。
 心臓を鷲掴みされたような衝撃と、叫びたくなる衝動。
 美しい舞姫、琳霞の姿には、歩美に対する想いを躊躇させる効果があった。
(歩美よりも好きって訳じゃないんだけどな……何しろほとんど話したことないし……)
 とはいえ、その心を満たす喜びにも似た興奮は、恋なのではないかと思える部分もあった。
 歩美に対しては、一緒に居て幸せになれる想いがあったが、琳霞に対しては、強い執着を感じさせる部分があったからだ。
 どちらが恋かと言えば、琳霞との方に思えたが、だからといって歩美に対する想いも軽いものではなかった。歩美と一緒に過ごさないで居るなど、悲しくて仕方がないだろう。
(要するに二股なんだよな、俺……)
 好みの女を自分の物にしたい欲望。
 そうしたものを琳霞に感じているのかも知れない。すでに身近な歩美には求める欲求は起きないが、高嶺の花である琳霞に対しては、強く欲する想いが起きているのだ。
(ま、どうせ遠くから眺めるだけの関係なんだけどさ……)
 相手は村で最も敬われている巫女。自分のような人間と恋に落ちるような存在ではないのだ。
「巫女さまって言えば、今夜の舞も見に行くんでしょ?」
「ん? まあな……」
 琳霞の事を話題にされたため、内心動揺しつつも平静を装って応える。
「大ちゃん好きだもんねぇ、巫女さまの舞。ボクも大好きだよぉ。特に琳霞さまの舞は凄いもんねぇ。小さい頃から素晴らしかったもんなぁ……」
 琳霞は歴代の巫女の中で、最も優れた舞の技量の持ち主だと言われており、実際その舞う姿を見た者は、惚けるほどに惹き付けられてしまうのだ。
 実際今も記憶にある琳霞の舞う姿を思い出すと、自然と顔がニヤけるほどに幸せな気分になった。
 それはあまり人に見せられる表情ではなかったため、慌てて気を引き締めつつ、見られてなかったかと歩美へ視線を向ける。
 どうやら大丈夫だったようで、歩美も舞を思い出しているのか、うっとりとした表情を浮かべていた。
 両手を胸の前で組んでいるため、大きな胸が寄せられて、さらに大きさを増しているのに興奮してしまう。
「お前の舞も結構良かったけどな。琳霞さまのには及ばないけど、そこそこ良かったぞ」
 最近歩美は巫女の手伝いをしていて、その一環として舞にも参加していたのだ。
「ホント? それなら嬉しいなぁ。でも琳霞さまの見ちゃうと恥ずかしくなっちゃうからねぇ」
「別に後ろで舞うくらいならいいだろ。引き立て役なんだしさ」
「う……それはそうなんだけど、ストレートに言われるとキツいものがあるよ……」
 歩美はそう言いながらガックリしたようにしている。
 その表情も実に可愛らしく、思わず抱き締めて頭を撫でたくなる衝動を覚えた。歩美には小動物のような魅力があるのだ。
「ま、お前はお前でいいところがあるんだから気にするな。清楚可憐な琳霞さまと比較してもしょうがないぞ。元気で明るいのがお前の取り柄なんだからさ」
「うん、そうだよね。ボクのいい所は元気なところだもん。お淑やかな琳霞さまと比べてもしょうがないや。うんうん、今日も元気に頑張っていこうっ」
 腕を空に突き上げ、楽しげにはしゃぐ姿に苦笑する。何とも切り替えの早いことだ。そんなところが歩美の魅力であり、自分が惹かれている部分でもあった。
(おっぱいもおっきいしな……)
 体をぴょんぴょん跳ねさせているせいか、胸元の膨らみもポヨンポヨンと揺れており、それが実に素晴らしい光景になっていた。
 いつか歩美と恋人になり、このおっぱいも揉んだりできるようになるだろうか。
 そんな事を思うと嬉しさが湧き起こり、大樹はにやけた表情を浮かべながら学校へと歩いていくのだった。


 夜。
 村の神社は、集まった多くの人でごった返していた。
 琳霞の舞が披露される予定であるため、かなりの人数が訪れていたのだ。
 特に今夜は琳霞一人による舞であり、それは選ばれた巫女のみが許された特別な舞であったため、いつもより多くの村人が来ているようだった。
「うわ〜〜、凄い人だねぇ。舞の日は毎回来てるけど、こんなに人が居るのは、やっぱり琳霞さまの封印の舞だからだろうねぇ。あれって凄く綺麗だもん」
「そうだな。あれは凄く綺麗だ」
 隣に居る歩美が、周囲を見回しながら呟いている言葉に同意する。
 幼い頃初めて見た琳霞の舞も、封印の舞だった。
 それはあまりに見事であり、また己と変わらぬ年頃の少女が舞っているという事実に衝撃を受けたのを覚えている。
 舞が始まると同時に目が惹き付けられ、終わるまで意識が無くなったように見入ってしまい、終わった後に歩美に揺さぶられてようやく気がついたくらいだった。それほどまでに強烈な印象を与えられたのである。
 先代の巫女よりも見事な舞だと絶賛されたのを知った時は、当然だと思いながら、我が事のように嬉しくなった。
 自分より一つ上でしかない七歳で、大人を感動させる舞を舞える琳霞のことを誇らしく思い、この少女のために自分も何かしたいと強く欲するようになった。今すぐにでも駆けつけ、「自分を何かに使って欲しい」とお願いしたくなったりしたのだ。
 とはいえ、相手は滅多に人前へ出ることのない巫女。そうそう会う機会などなく、ただ毎回琳霞の姿を見るために、舞の日に神社を訪れることしか出来なかった。
 会うことが可能になったのは、両親が亡くなってからだ。
 大樹の家は、村の運営に関わる役職を担っている家柄であったため、跡継ぎとしてその職を引き継いだ事から、会うだけであれば可能となったのである。
 まだ子供という事で、仕事のほとんどを叔父が代行してくれているが、会合などには出席するため、琳霞の姿を見ることが出来るようになった。
 そうした場で見る琳霞は、舞をしている時とは異なり神秘的な雰囲気は強く感じさせなかったが、その美しさと淑やかさは、一人の少女としてあまりに魅力的だった。
 時折目が合うことがあり、それだけで緊張し、「この人のために何かしたい」という衝動が強く起きることがよくあった。
 琳霞は自分にとって女神であり、仕えるべき主君なのだ。などといった時代錯誤的な想いを抱くこともあったりしたのである。
 実際、村における琳霞の地位はかなり高く、会う際には平伏し、言葉遣いも謙譲的なものとなっていたため、そうした想いは間違っていないだろう。
 そんな環境であるせいか、琳霞には普通の女の子に対するような感覚は持てず、それゆえに「恋をしている」といった想いを抱きにくくなっていた。
 もしこれが単純に学校の先輩であるなら、一人の淑やかな少女として恋いこがれたに違いない。だがあまりに神秘的な印象と、村で敬われている立場が、恋をしてはならない相手だと認識させているように思えた。
「琳霞さま、舞うのが好きだって仰ってたよねぇ」
 不意に歩美がそんな事を言ってきたため意識を戻す。そしてその内容に驚きを覚えた。
「お前、琳霞さまと話したのか?」
 巫女は限られた人間としか会うことはなく、会話に至ってはさらに選ばれた人間のみが許されていた。
 最近一緒に舞をしているとはいえ、その程度では会話は許されるはずがなかったため、どういう事なのかと気になった。
「うん、話したよ。っていうか、大ちゃんも話したじゃない。ほら、小さい頃に神社に迷い込んだ時にさ」
「ああ、何だあの時の話か……」
 そう言われて思い出す。
 あれは六歳の頃。歩美と一緒に山で遊んでいた時に、偶然神社の奥へと入り込んだのだ。
 許可無く入れる場所ではなかったが、幼さゆえの無知と行動力からどんどん奥へ進んでいき、そこで出会ったのが琳霞だった。
 まだ巫女の職を引き継ぐ前であり、名前も顔も知らなかったため、ただの少女として話しかけ、会話したのである。
 琳霞は驚いたように目を丸くし、同じ年頃の子供と話したのは初めてだと言った。
 その様子がどこか寂しげであったため、「何かしてあげたい」という衝動を覚えた自分たちは、とにかく色々と話していったのだ。
 時折微笑む様子に嬉しくなり、もっともっと楽しくさせてあげるのだと、必死になったのを覚えている。
 そんな中、唯一楽しげに琳霞が語ったのが舞のことだった。舞っている時だけは凄く楽しいのだと笑ったのだ。
 その笑みは、それまでと違って強い喜びを感じさせるものであったため、本当に舞うのが好きなのだというのが感じられた。
 おそらくその想いが、あれほどの見事な舞へと繋がっているのだろう。
「でも学校へ通えないってのも大変だよねぇ。いくらしきたりでも、今時そんなんじゃ可哀想だよ」
「ああ、そうだな」
 この摩那賀村において巫女の存在は特別なものとされており、安易に人前へ出ることはなかった。当然学校へ通うこともなく、勉強に関しては専門の教師が付いているらしい。
 ゆえに会合などへ出てきても、少しすると退席してしまうので、大樹は悲しく思っていたのだ。
 もしそんなしきたりなどなく、琳霞が学校へ通っていたりしたら、会話するような関係にもなれたのだろうか。幼い頃の出会いから親しみを持ってもらえて、仲良くなっていけたのだろうか。
 そしてやがては恋人に……。
 などという妄想を繰り広げていると幸せな気分になってくる。
 あの清楚で可憐な琳霞が自分を愛するようになる。それは何と素晴らしいことだろう。
 だがそれは所詮妄想。現実は会話すら出来ず、こうして一ファンとして舞を見ることくらいしか出来なかった。
 何とも悲しい事ではあったが、自分の立場を考えればそれが至極当然のことなのだ。村で尊崇されている巫女さまと親しくなるなど無理なことなのだから。
 そんな悲しい現実を認識しつつ落ち込み気味になっていると、不意に鐘の音が響いたため、体をビクッと震わせてしまう。
「あ、始まるみたいだね。楽しみ〜〜」
 歩美の言葉から、始まりを告げる鐘が鳴ったのだと認識し、意識を舞台へと向ける。
 騒がしかった周囲が徐々に静かになっていき、やがて物音一つしなくなった。
 シャンっ、シャンっ、といった鈴の音が聞こえ、舞台に一人の少女が現れた。
 白衣と紅い袴に身を包み、頭には金色の髪飾りを付けたその少女、琳霞は、表情の無い顔で正面を見ていた。
 小さく聞こえる太鼓の音に合わせ、軽やかな、それでいて重々しさを感じさせる動きで舞台上を移動している。
 腕と脚、全ての動きに美しさがあり、そこには見る者を惹き付けずには居られない魅力が存在していた。体全体から神秘的なオーラが発せられていて、それが広がって会場全体を覆っているような印象があった。
 大樹の心臓はドクンドクンと強い鼓動を示しており、舞を見ていると、まるで魂が吸い取られてしまうのではないかという感覚を覚えた。
 目は琳霞から離れることはなく、何も考えられなくなっている。
 心を奪われ、意識が真っ白になっていた。
 不意に琳霞の目がこちらへ向き、グイっと迫ってきたように思えて硬直した。まるでカメラがズームしたように、琳霞の顔が近づいてきていたからだ。
 だが実際は、琳霞は舞台の上で舞を続けており、大樹の近くになど来ていなかった。
 しかし何故か目の前には琳霞の顔があり、こちらをジッと見つめている。
(な、何だこれ……?)
 あまりに異常な状況に訳が分からなかった。
 今まで舞を見ていてこのような事は無かった。何故今日に限ってこんな現象が起きているのだろう。あまりに琳霞に意識を向けるあまり、幻覚でも見ているのだろうか。
 そんな事を思っていると、今度は琳霞の体が光を放ちだし、白衣と袴が透けていくように思えた。
 体の線がぼんやりと見え、その美しい裸身が目に映るのに強い興奮を覚える。
 服の下に隠れているはずの肌が何故か認識でき、その白さにごくりと唾を飲み込む。
 胸元には大きな膨らみが存在しており、それがぼんやりとではあるが生で見えていることに鼻息が荒くなった。
 服を身につけているが、身につけないないように見える状態であり、それは背徳的ないやらしさを感じさせ、落ち着かない衝動を呼び起こし、股間の一物が硬く大きくなっていった。
(琳霞さま相手に何考えているんだ。今は神聖な舞の最中なんだぞ……)
 理性がいやらしい意識を叱責するが、目には琳霞の可憐な裸身が映っているため止まることはなかった。
 しかもそれは瞼を閉じても見えており、その事から自分が異常な状態になっているのが分かった。
 やはりこれは幻覚なのではないか。そうでなければ目を瞑っても見えているなどおかしいだろう。琳霞に対する想いが強まるあまり、このような幻覚を見てしまっているに違いない。
 そんな己に恐怖を覚えもしたが、それと同時に目の前に存在する魅力的過ぎる裸身に魅了されてもいた。
(琳霞さま、綺麗だ……こんな体を抱けたら、幸せすぎるだろ……)
 肉欲の意識が高まり、股間の一物が痛いほどに勃起していく。恋する想いではない、女肉を求める雄の本能が盛り上がっているのだ。
 肉棒を押し込み、喘がせ悶えさせたい意識で一杯になり、琳霞を犯す妄想が広がっていく。
 その美しい肉体に手をかけ、押し倒し、美麗な両脚を開いて、ピンク色の秘密の花園へ、己の怒張を押し込みたい。
 そんな妄想が頭に広がった瞬間、強烈な甘美な刺激が湧き起こり、頭が真っ白になった。
 まるで本当に琳霞の中へ肉棒を入れたような、女体の中の気持ちの良さを味わったような感覚を覚えたのだ。
 それは蕩けるほどの快楽であり、フワフワとした心地いい状態であり、それによって徐々に意識が薄れていくのが感じられた。


「大ちゃん、終わったよぉ。ほら、目ぇ覚ましてぇ」
 不意に起きた頬を叩かれる衝撃に驚く。
 ハッとして見ると、目の前には苦笑した表情の歩美の顔があった。
 自分がどうしていたのか分からず、動揺しながら頭を軽く振る。
「もう、いくら琳霞さまの舞が素晴らしいからって意識なくしちゃうかなぁ。すっごい幸せそうな顔してボーッとしてたよぉ。ホント大ちゃんって琳霞さまの舞に夢中だよねぇ」
 どうやら意識を無くしていたらしい。もしかしてあれは夢だったのだろうか。いや、あの時は意識はあったはずだから、夢というより幻覚とした方が合っているか。
 どちらにせよ、あのような内容は酷いと思った。
 あれが自分の望んでいる事なのだろうか。神聖な琳霞を犯そうとするなど、何と畏れ多いことだろう。
 だがその一方で、ああして琳霞を抱いてみたいという想いも起きたため、慌ててそれを振り払う。
 そのような事は許されないからだ。あまりにも不敬すぎる想いだった。
「ねぇ、大丈夫? 何かぼんやりしてるけど。ちゃんと意識ある?」
「あるよ、ある。それより俺、どれくらいボーッとしてた?」
「う〜〜ん、ボクも舞の最中は舞台の方見てたからなぁ。終わってからしか分からないけど、五分くらいだよ」
「そうか……」
 そんなにおかしくなっていたとは驚きだった。疲れているのだろうか。
「もしかして、体の具合でも悪いの?」
「いや、大丈夫だって。多分舞に感動してボーッとしちゃったんだろ」
「そうなんだろうね。今日の琳霞さまの舞って何か凄かったし。意識が吸い寄せられるっていうか、凄い見入っちゃった」
「お前もそうなのか? じゃあ、琳霞さまが近づいてくるみたいな感じは?」
「う〜〜ん、それは無かったなぁ。大ちゃんはそんな感じがしたんだ。さすがだね。琳霞さまの熱狂的ファンだけのことはあるよ」
「お前だって似たようなもんだろが」
「まあ、そうだけどね」
 どうやら妙な幻覚を見たのは自分だけのようだ。やはり疲れているせいなのだろうか。
「そろそろ帰ろ。いつまでも居たら邪魔だし」
「そうだな」
 歩美と連れだって歩き始めると、かなり意識がハッキリしてきたため、先ほどの幻覚が嘘のように思えてくる。
 まるで夢を見ているような状態だったが、やはり半分寝ていたのかも知れない。そのせいで幻覚を見たり、意識が無くなったりしたのだろう。
(それにしても、何だってあんなの見たんだ。いやらしすぎるぜ。確かに琳霞さまの体をスケベな気持ちで見ちゃう時もあるけど、舞の最中には無かったのに。あ〜〜、何かとんでもなく不敬なことしちゃった気分だよ……)
 そんな反省をしつつも、「幻覚で見た琳霞さまの裸は素晴らしかったなぁ」とも思ってしまう。あれほど美しい裸は初めて見たように思えたからだ。まさに神秘的な裸身と言えただろう。
 何より幻覚とはいえ、生の乳房を見たことに、今更ながら強い興奮を覚えた。
(歩美と、どっちがおっきいかな……?)
 そんな事を思いながら、隣を歩く歩美の胸元へ視線を向けてしまう。
 歩くのに合わせてプルンプルンと揺れ動いている膨らみが目に映り、その事で落ち着かない衝動が起きてくるのを認識する。
 そしてそれが、かなり強いものであるのに気づいた大樹は動揺した。
 エッチな目で歩美の胸を見ることはしょっちゅうあるが、何やらいつもと違って強烈に興奮しているように思えたからだ。何しろ股間の一物が勢い良く勃起しており、ビクンビクンと強く震えているのである。
 歩美の可愛らしい容姿を舐めるように見てしまい、抱き締めたくて仕方のない衝動が押し寄せてきている。
 白い首筋に色っぽさを覚え、舐め回して吸い付きたくなり、豊満な乳房を鷲掴んで揉みしだきたくてたまらなくなっていた。
 ついにはそこらの茂みへ連れ込んで、犯しまくりたい気持ちが強烈に湧き起こってきたため驚愕する。
(お、俺おかしい……何でこんな……いつも歩美にはエッチなこと妄想するけど……こんな酷いのなんてないよ……強姦したくなってるなんて……)
 何かきっかけがあれば、押し倒してしまうのではないかと思えるほどに肉欲が昂ぶっていた。大切な幼馴染みを無茶苦茶にしたいという、冷静であれば許し難い行為をしたくてウズウズしてしまっているのである。
(このままじゃ俺……歩美を……歩美をどうにかして……うぅ、我慢出来ない……)
 腕がゆらゆらと歩美の方へと伸び、そのまま肩に手を掛けてしまいそうになる。
 意識が朦朧とし、体が勝手に動いて歩美に襲いかかろうとしているのが感じられた。
 このままでは強姦してしまう。そんなのは駄目だ。許されないっ。
 だがその想いとは裏腹に、手はあと数センチで肩に触れるところまで来てしまっていた。
「あっ! 忘れてたっ!」
 不意に歩美が大声をあげたため、体に震えが走り抜けると共に、意識が覚醒したようにハッキリした。慌てて手を下ろすと、大きく息を吐き出して力を抜く。
「な、何だよビックリした。どうしたんだ?」
「ドラマの録画、忘れてたのっ。だからごめんっ。ボク、先に行くからっ。走ればまだ間に合うからさっ。じゃあねっ」
 そう告げると共に、歩美は凄い速さで走り去っていった。
 その後ろ姿に呆気にとられつつ、とんでもない事をしでかす所だったとホッと息を吐き出す。
 一体今日はどうしたというのだろう。琳霞に続いて歩美に対しても、普段ではあり得ないほどに欲情してしまった。
 しかも強姦までしそうになっていたのだから、あまりにおかしすぎるだろう。
 やはり疲れているのかも知れない。今日は早く寝る方が良いかも知れなかった。
 そんな事を思いながら、夜空に浮かんでいる月を見上げた大樹は、再び大きく息を吐き出すと、家へ向かって歩いていくのだった。


 だが家へ着いても大樹の状態はおかしいままだった。
 出迎えた摩魅を見た瞬間、治まっていたはずの肉欲が強く湧き起こり、襲いかかりたくなる衝動を覚えたからだ。
「舞はどうでしたか?」
「あ、うん。良かったよ」
 尋ねてくるのに生返事をしつつ、目は舐めるようにその肉体を見つめ、特に大きく膨らんだ柔らかそうな胸には意識が集中してしまった。
 この豊満な乳房に顔を埋め、好き放題貪ったらどれほど気持ちがいいだろう。
 そのような事を考え、股間の一物が硬く大きくなっていく。
 そうした妄想は普段からしている訳だが、それはあくまで妄想であり、本気でしようと思ったことはなかった。
 しかし今の自分は、すぐにでも摩魅に抱き付き、押し倒したいという強い衝動に包まれていた。それは何かきっかけさえあれば、実際に襲いかかりかねない状態だった。
 摩魅は大樹の異常な様子に気づかないらしく、いつもと同じように優しげに話しかけてくる。
「リンゴでも食べますか? そうそう、テレビ観ましょう。いつものあれ、始まりますよ」
 そう言いながらテレビの電源を入れた摩魅は、キッチンへ移動してリンゴを剥き始めた。
 後ろ姿を見ると、スカートを押し上げる形のいい尻に目が集中し、撫で回し舐め回したくなる強い衝動が起きたため、慌てて視線をそらす。
 放っておいたら、そのまま抱き付いて押し倒しかねない状態だった。
 呼吸を荒げながら、おかしくなっている自分に恐怖しつつ、どうすればいいのかと混乱する。
「はい、リンゴですよ。あ、始まりますね。今日のゲストは誰ですかね。あ、この人、この間のドラマで人気出た人ですよね」
 剥いたリンゴを皿に乗せて戻ってきた摩魅は、テレビのお笑い番組を観てそんな事を呟いている。ゲストに出ているのは、以前摩魅と歩美がハマっていたドラマの主演俳優らしい。
 そのドラマは大樹も一緒に観ていたため盛り上がれるはずだったが、今日は全く意識が向かなかった。
 何しろ少しでも油断すると、摩魅のことをいやらしい目で見、襲いかかりたくなる衝動が起きてしまうからだ。ゆえに視線が摩魅へ向かないよう、必死にそらしておかなければならなかった。
 そのためお笑い番組の内容は認識できず、摩魅が時折大笑いしていても、全く笑うことが出来なかった。
「やだ、面白すぎですよぉ。この人可笑しすぎです」
 ありがたい事に、摩魅はテレビに集中していたため、笑わない大樹の様子には気づいていないようだった。
 摩魅が笑うと胸の膨らみが揺れ動き、そのたびにそこへ目が行き、欲情が高まってしまうのを必死に抑える。
 本来なら摩魅から離れた方がいいのだろうが、いつも楽しみに観ている番組の途中でそうしては、不審がられてしまうだろう。
 大樹は必死に欲情を抑えながら、番組が終わるのを待った。


「それじゃ俺、今日はもう寝るよ。何か疲れちゃってさ……」
 番組が終わると、不自然にならないよう気をつけながらそう告げ、ゆっくりと立ち上がる。
「そうですか。それじゃお風呂、先にどうぞ。お姉さんは後で入りますから」
「う、あ……うん……」
 一瞬摩魅の入浴する姿、つまり裸を想像してしまい、欲情が強烈に跳ね上がった。
 手が震えるのを隠しつつ、押し寄せてくる襲いかかりたくなる衝動を抑えながら部屋を出て行く。
 摩魅の姿が視界から消えると欲情が治まったため、フーッと息を吐き出す。
 何とかしのげた、と思いながら深呼吸をし、脱衣所へ向かうと、服を脱いで浴室へと入っていく。
 お湯に浸かっているとゆったりとした感覚を覚え、気分が落ち着いてきた。
(俺、ホントどうしちゃったんだろ……)
 摩魅に対してあまりに欲情しすぎだった。
 以前からある程度は欲情していたが、これほどまでに強烈になっているのは異常過ぎるだろう。
 もし摩魅に襲いかかってしまっていたらと思うと、その恐ろしい想像に本当に抑えられて良かったと思った。大切な摩魅を陵辱するなど、とても許せることではないからだ。
 少し落ち着きを取り戻した大樹は、いつもより長めの風呂を終えると、摩魅を見ないようにしながら「おやすみ」の挨拶をして、自室へと向かった。
 部屋に入ると、取り敢えず一度処理しておこうと自慰をしてみる。
 おかしくなっているのは、性欲が高まっているせいに違いないと思ったからだ。出してしまえば治まると思ったのである。
 数度擦るとあっという間に精が迸り、体が脱力する。
 しかしいつもと違ってスッキリ感が起きず、モヤモヤとした感覚が残った。何か物足りなさがあるのだ。
 もしかしたら、先ほど幻覚で味わった甘美な刺激のせいでそうなっているのかも知れない。何しろあれは物凄く気持ちが良かったからだ。
 だがあれをまた味わうなど無理な話であったため、取り敢えずこれでいいだろうと、早々に寝てしまうつもりでベッドへ横になる。
 明日になればこのおかしな状態も治まっているだろうから、今夜だけの辛抱だった。 そう思い、寝ようとするのだが、どうにも目が冴えてしまって眠ることが出来ない。
 どうしたものかと思いながら時折寝返りを打つのを繰り返し、悶々とする状態がしばらく続いた。
 そうしてどれくらい時間が経った頃だろうか、不意に部屋のドアが開く音がした。
 摩魅が入ってきたのだろうが、今頃どうしたのだろう。
 そして摩魅の事を意識した途端、股間の一物が硬く大きくなった事に焦った。
 未だ摩魅に対する欲情は治まっておらず、沸々と襲いかかりたくなる衝動が起きてきたのだ。
 このままではマズい、とは思うが、どうする事も出来なかった。
 何とか摩魅に襲いかからないよう、自分を抑える事に意識を向ける。
 電灯は消してあったが、窓から差し込む月明かりで摩魅の姿が見え、こちらへ近づいてきているのが分かった。
 一言も喋らないのは、大樹が眠っていると思っているからだろうか。
 やがて傍まで来た摩魅は、ベッドへ腰掛けると、覆い被さるようにして顔を近づけてきた。
「大樹、辛いのでしょう? お姉さんが楽にしてあげます」
 不意に告げられた言葉にドキリとする。
 それはまるで、強く欲情している大樹の状態に気づいていて、性処理をしてあげる、と言っているように思えたからだ。
 何よりこちらを見つめる顔には色気を感じさせるものがあり、その見たことのない女としての顔に、心臓が激しく鼓動した。
「摩魅、姉さん……」
「大丈夫。お姉さんには全部分かってますから。お姉さんとしたくなっているんでしょう? エッチな事がしたくてしたくてたまらなくなっているんでしょう? 大丈夫、全部受け止めてあげます。お姉さんとしましょう」
 そう囁いてくるのに、自分の推測が間違っていない事に驚きを覚える。何故突然そのような事を言い出すのだろう。いくら何でも無茶苦茶すぎた。
「だ、駄目だよ……摩魅姉さんとそんな……」
 内心「したい」という想いが強く起きていたが、それ以上に家族である摩魅を性の対象にする事への嫌悪感の方が強かった。
 普段から摩魅の肉体に対して欲情を向けてはいるものの、それはあくまで妄想であり、実際にするとなれば別だった。
 義理とはいえ、姉として慕ってきた相手と性行為をするなど、凄く良くないことに思えたからだ。
「いいんです。お姉さんは構いませんよ。大樹とするのなら気になりません。お姉さんは大樹のことが大好きですからね」
 その言葉に温かな気持ちが溢れてきた。家族としての愛情を感じたのだ。
「お、俺も……摩魅姉さんが大好きだよ……」
 恥ずかしくなりながらも、正直な気持ちを告げる。
 幼い頃はしょっちゅう言っていた言葉であったが、最近は全く言っていなかった。さすがに年頃になると、こうした言葉は口にしにくいものだからだ。
「大好きな者同士がするんですから、何も問題ありません。お姉さんは大好きな大樹に抱かれたいって思っているんですよ」
 微笑みながら告げてくるのに、心臓がドクンっと鼓動する。
 摩魅が抱かれたいと、自分に抱かれたいと望んでいる。それは何と素晴らし過ぎる状況だろう。美しくてスタイル抜群の姉が、その肉体を自由にして良いと言ってくれているのだ。
「大樹は、こういう事は初めてですか?」
 そう尋ねながら美しい顔が近づいてくる。大樹は落ち着かない衝動を覚えながら、コクコクと縦に頭を動かした。
「そう。ならお姉さんが初めての相手になるんですね。ふふ、凄く嬉しいです」
 満足げに微笑む顔が眼前に迫り、ぶつかると思った瞬間、唇に柔らかな感触が広がった。
(あ……う……摩魅姉さんと、キス……しちゃってる……)
 あまりに感動的な出来事に頭が真っ白になる。
 押しつけられた唇に体温を感じつつボーッとしていると、少しして感触が離れていった。どうやらキスが終わったらしい。
「可愛いです。大樹、小さい頃みたいな顔してますよ」
 その言葉に顔が熱くなる。きっとだらしない表情を浮かべているのだろう。
「それじゃ、続けていきますね。今度は大人のキスですよ」
 そう囁かれると共に再び唇が重なる。先ほどと異なって強く押しつけられている感じがしたと思った瞬間、歯を割ってニュルリと何かが入り込んでくるのが分かった。
(これって、舌……)
 こちらの舌に絡みつき、強く吸いついてきたため、思わず体を硬直させる。そのまま摩魅の舌は、こちらの舌を弄ぶように蠢き、舐めて吸ってきた。
 顔が左右に動き、角度を変えて唇を擦り付けてくるのに快感が走り抜けていく。
 柔らかな肉体がのし掛かってきて、その重みと心地良い感触に、肉棒がビクンビクンと激しく震える。
 胸元では豊満な乳房の潰れている感触があり、あの魅惑の膨らみが押しつけられているのだという事に鼻息が荒くなった。
(気持ち、いぃ……摩魅姉さんの体、気持ちいいよぉ……)
 柔らかい肉をもっと味わおうと、背中に手を回して強く引き寄せる。
 すると今までより押しつけられる感触が強まったため、うっとりとした気持ちになった。
 さらに快感を味わうのだと、こちらからも舌を絡ませ、唇を擦り付けつつ、摩魅の体を強く抱き締めていく。
「んっ……んんっ……んふぅっ……」
 甘ったるい吐息が耳に響き、その感じていると認識させる音色に益々興奮が高まった大樹は、ゴロリと転がると、体の位置を入れ替えて上になった。
 震える手を胸元へ持って行き、豊満な膨らみへと乗せる。
 触れた瞬間指先に力を入れると、フニュリといった感じで吸い込まれるのに悦びが溢れた。
(や、柔らかい……それに何て気持ちいいんだろ……)
 たまらず思いきり掴むようにし、それによって発生したさらなる柔らかな刺激に頭がおかしくなりそうになった。
 ついに触れた。憧れの摩魅の乳房を揉んだのだ。
 思春期になってからずっと、触れたい、揉みたいと妄想し続けてきた摩魅の乳房に、今自分は触れ、そして揉んでいる。そのあまりの感動に涙が出そうになった。
「んんっ……んふ……大樹……もっと色々して、いいんですよ……」
 唇を放すと、摩魅が潤んだ瞳で見つめながら告げてきた。
 色っぽい表情を浮かべているのに鼻息を荒くしつつ、頷いてから服を捲り上げると、ブラジャーに包まれた大きな膨らみが現れた。
 それに一瞬見惚れながら、続けてブラジャーを引き下ろすと、プルンっといった感じで乳房が顕わになった。
(お、おっぱい……摩魅姉さんの、おっぱい……)
 目の前には白い肉の塊があった。
 柔らかな印象を与えるそれは、あまりにも美麗であり、そしてあまりにも大きかった。
 白い中で二箇所だけ桜色をした部分があり、そのプクンっとした突起は、存在によって膨らみの美しさを高めているように感じられた。
 初めて見る生の乳房は、強烈な印象があった。これまでグラビア写真などで見たことはあったが、実際に見るのとでは迫力が違っていた。
 触れんばかりの距離にあるという事と、呼吸に合わせて上下に動いている生々しさがそれを感じさせるのかも知れない。
 叫び出したくなる衝動を抑えながら、生の双乳に両手を添えていく。
 スベスベとした肌触りと、指が食い込んでいく柔らかさ、そして伝わってくる体温に感動を覚えると共に、肉欲が高まった。
 鷲掴むと形が歪み、二つの乳首が前にせり出してくるのに鼻息を荒くする。
 そのままヤワヤワと両手を動かしていくと、蕩けるような感触が手のひらに広がり、興奮して何度も揉んでいってしまう。
 それに合わせて桜色の突起が位置を変え、フルフルと揺れている様子を見ている内に、吸い付きたい衝動が高まった大樹は、片方の乳首に唇を寄せていった。
 硬い感触の突起をベロリと舐め上げ、そのまま回すようにして舌を這わせながら、チュウっと吸い付いていく。
 さらに弾くようにして舐め、何度もチュパチュパと吸い上げる。
「あっ……あぁっ……」
 摩魅の唇から甘ったるい吐息が漏れ、体を小さく震わせるのにゾクゾクとした想いを抱く。
 自分の行為で摩魅が反応を示している。自分の与えている刺激に感じているのだ。
 それは何とも言えない誇らしさを感じさせ、自分が摩魅を支配しているのだという感覚をもたらした。
「摩魅姉さんっ……摩魅姉さぁんっ……」
 擦れた声で叫びながら、夢中になって乳首に吸い付き、舐め回し、乳房を強く揉んでいく。
 時折吸い付く乳首を変えながら、左右の膨らみを、まるで飢餓状態の者が食べ物にありついたような勢いで貪る。
「あっ、あんっ……大樹ぃ、あっ……大樹落ち着いて、ああっ……大丈夫、お姉さんは逃げませんから、あっ、あんっ……」
 そう言われても止まらなかった。
 何しろ生まれて初めて女体に触れ、乳房を自由にしているのだ。この震えが起きるほどの悦びを、抑えることなど出来るはずがないだろう。
 そのまま荒い鼻息を吹き出しながら、大きな乳房の間に顔を押しつけ、頬ずりするようにし、繰り返し吸い付き、舐め回し、揉みしだいていく。
「あんっ、やっ……もう、大樹ったら、あっ……こんなに、やぁっ……」
 刺激を与えるたびに綺麗な顎が仰け反り、白い首が見えるのに興奮を覚える。
 摩魅がかなり感じているらしい事に欲情が昂ぶり、さらなる行為へ進みたい欲求が高まっていく。
「摩魅姉さんっ……俺っ、俺ぇっ……」
 抑えきれない興奮を体全体で表しながら、大樹は摩魅に訴えかけた。
「ふふ、お姉さんの中に入れたいんですね? いいですよ。いらっしゃい」
 いやらしく微笑むのに、受け入れてもらえる悦びを感じながら、震える手でスカートを捲り上げ、パンティを脱がしていく。
 黒い陰毛と、貝を思わせる肉襞が目に映り、その事にゴクリと唾を飲み込む。
「落ち着いて下さいね。初めてでは分からないでしょう? ほら、ここに入れるんですよ?」
 M字に脚を開脚し、指で秘所を広げるようにして、穴がどこにあるのかを示してくる。
 長年家族として暮らしてきた相手の性器を見るというのは、何だかいけない感じがし、さらにそれを敢えて見ている事に背徳的な想いを抱く。
 すでに愛液が垂れており、テラテラと光っているのに、摩魅が女なのだという認識が強まった。
 これから自分は摩魅を抱く。摩魅の中に肉棒を押し込み、性器同士を結合させるのだ。姉である摩魅と、セックスをするのである。
 そう思うと、ゾクリとした恐怖と強い興奮を覚え、体が震え出してきた。
「さ、入れてごらんなさい。お姉さんが、大樹の初めての相手になってあげます」
 その言葉に嬉しさが溢れる。自分の初めての女性が、幼い頃から憧れていた摩魅だという現実に、幸福感が押し寄せてきた。
「ま、摩魅姉さぁんっ……」
 大樹は慌ててズボンとパンツを脱ぐと、震える手で肉棒を掴み、落ち着かない状態で膣穴へと近づけていった。
 摩魅が穴の位置を示してくれているため、迷うことなくそこへ亀頭を押しつけることが出来、触れる事で起きた快感に、ブルッと体を震わせる。
「そう、そこ。そこへ入れるんです……押してみてください、あんっ……入った、入りましたね……」
 摩魅に言われるまま腰を前へ押し出すと、ズブリといった感触と共に肉棒の先が膣穴にハマった。
 亀頭が何かに包まれているのが分かり、その温かさと蕩けるような快感にうっとりとなる。
(あったかい……それに何て気持ちいぃ……)
 湿った肉に締め付けられている感覚が信じられないほどに気持ち良く、ハァハァと呼吸を乱す。
「そのままもっと奥へ入れて……全部入れるんですよ」
 優しく促す摩魅に頷き、さらに腰を進めると、肉棒が襞をかき分けて奥へ入り込んでいくのが感じられた。
(ふあぅ……き、気持ち良すぎるぅ……摩魅姉さんの中って、凄ぃ……)
 肉棒全体が包まれ、膣襞が絡みつき吸い付いてくる快感に頭を仰け反らせる。
 何しろジッとしているだけでも肉棒が刺激を受け、射精してしまいそうになっているのだ。
 これほどの快感は、今まで感じたことはなかった。自慰の時とは比較にならない素晴らしさがそこにはあった。
「全部入りましたね。立派ですよ……大きくて硬くて素晴らしいです……大樹のオチンチンは、素敵です……」
 体を硬直させ、微妙に体を震わせながら摩魅が絶賛してくるのが嬉しくてたまらない。
 これまで色々褒められることはあったが、今の言葉ほど嬉しく感じたことは無かった。
「摩魅姉さんの中も、すっごくいいよ。素晴らしいよ。素敵すぎるよ……」
 こちらも絶賛の言葉を返しつつ、押し寄せてくる射精を促す刺激に耐える。何しろ油断していると精を漏らしてしまいそうになるほど強い刺激が与えられているのだ。
 たまらない快感に腰が勝手に動き出し、肉棒を突き込んでいく。
「いぅっ……ちょ、ちょっと待って下さい、く……動くのはまだ……」
 その瞬間、摩魅が腰を強く掴んできたため動きを止める。どうしたのだろう。
 見れば辛そうに顔を歪めているのが目に映った。どうやら苦痛を感じているらしい。
「摩魅姉さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫ですよ……大樹のが大きいから、くっ……ちょっと苦しいだけです……だからあとちょっとだけ、動くのは待って下さい……」
 女性は初めての時は痛い、というのは本当だったらしい。あまりに慣れた感じで誘導してくれたため、すっかりその事を忘れてしまっていた。
「すぐに大樹が気持ち良く動けるよう……お姉さんの体を合わせます、から……」
 涙目になりながら、無茶苦茶なことを言ってくるのに苦笑しつつ、そうまでして自分の事を優先してくれているのに嬉しくなった。
(でも動かなくても、くっ……入れてるだけで、気持ちいぃ……)
 繋がったままジッとしていると、肉棒が膣襞に絡みつかれているのが感じられ、微妙に吸い付かれるのに気持ちの良さを覚えた。動かずとも蕩けるような快感が押し寄せてくるのだ。
 ウニュウニュと膣襞が蠢き、嬲るようにしてくるのに、思わず射精しそうになって頭を仰け反らせる。
 これだけでも十分気持ち良かったため、今回はこれで満足しようと思った。摩魅が苦しむのは見たくないからだ。
「摩魅姉さん、俺……」
「大丈夫ですから……もう大丈夫です。ほら、動いていいですよ」
 大樹が止めるよう言いかけると、それを遮って摩魅が動くことを了承してきた。
「で、でも痛いんでしょ?」
「大丈夫です。調整しましたから。だからもう思いきり動かしていいですよ」
「調整って……何言ってるんだよ。そんなの出来る訳ないじゃん」
「実はお姉さんには出来るんです。だから大丈夫なんです。試しに動いてみて下さい」
 どう見ても強がりを言っているようにしか思えなかったが、それを無下にするのも悪いように思えたため、出来るだけ痛みを与えないよう、ゆっくりと動いてみる事にする。というより、ゆっくりな動きにしないと精を漏らしかねなかったのだ。
 腰を引いてみると、肉棒が強く吸い付かれたため、腰が持って行かれるような快感を覚える
(ふぁぅ……出ちゃう、出ちゃうぅっ……)
 射精感が急激に高まり、「もう出してしまう」といった切迫感が押し寄せ、摩魅の痛みを確認するどころではなかった。
「うぁっ!」
 不意に腰の後ろに鈍い痛みを感じたため、心臓が跳ねると共に体が硬直する。
 どうやら摩魅が指で突いたらしい。
 そしてその途端、精を漏らしそうだった切迫感が無くなり、余裕のある状態になったのに驚く。
「射精を抑えるツボを突きました。これでしばらくは大丈夫なはずですよ」
 楽しげな笑みを浮かべながら言ってくるのに呆気にとられる。
「今のって、摩魅姉さんがしたせいなの?」
「そうですよ。お姉さんにはこういう事が出来るんです。体の調整は得意なんですよ。お姉さんがマッサージ得意なの知っているでしょう?」
 確かにそれは知っていたが、まさか射精の衝動を抑えることまで出来るとは思わなかった。
「お姉さんの体もそれで調整しましたから、もう思いきり動いても大丈夫です」
 実際痛そうな顔はしていなかったため、試しにゆっくりと腰を押し込んでみる。
 すると奥へ引き込むように吸引してきたため、その気持ちの良さに唇をワナワナと震わせてしまう。
「あっ……あんっ……ふぅ、痛みが無くなると気持ちいいですねぇ。大樹のおっきいのが感じられて、凄く幸せです……」
 甘い吐息を漏らしながら嬉しそうな笑みを浮かべるのに、本当に痛みが無くなっているのだと驚くと共に喜びが溢れた。これならば思いきり動いても問題ないからだ。
「ほら、大丈夫でしょう? だから遠慮しないでいいんですよ? 大樹のしたいように、お姉さんのこと、好きにして下さい」
「う、うん……」
 頭を優しく撫でながら告げてくるのに、摩魅の愛情を強く感じて嬉しくなった。何と素晴らしい姉なのだろう。
 快感と喜びに震えながら、今度はゆっくりと腰を引いてみる。
 すると逃すまいとするように膣襞が強く吸い付いてきたため、頭を仰け反らせながらその気持ちの良さに耐える。
 続けて押し込んでいくと、そこからは意識せずとも勝手に腰が前後に動き始め、肉棒が膣襞と擦れることによる快感で頭が一杯になった。
「あっ、あっ……いいですよ、あんっ……大樹上手です、あぁっ……その調子です、やんっ……」
 甘い吐息と褒め言葉が耳に響いて嬉しさを覚える。そして「もっと摩魅姉さんを喘がせるんだ」という想いが強く起こった。
 自然と腰の動きも速まっていき、大樹は摩魅の肉体に夢中になっていった。
「あんっ……そう、そうです、あっ、ああっ……そうやってもっと、あっ……大樹いいです、ああっ……」
 こちらの動きに合わせ、胸元で豊満な乳房が前後左右に揺れ、その振動が伝わってくるのに、摩魅と繋がっている実感を得て興奮を覚える。
 今自分は、憧れの摩魅とセックスをしているのだ。素晴らしい女性である摩魅の中に肉棒を押し込み、擦って喘がせているのである。
 それは実に素晴らしく、甘美な状況だった。
(チンポがおかしくなりそ……気持ち良すぎるよ……蕩けちゃうよぉ……)
 膣内で動く肉棒は、絡みついてくる膣襞によって嬲られていた。
 強い快感を与えられ、体の中の何かを吸い取られるような感覚を覚えているのだ。
 肉棒が融け、摩魅の体の一部になってしまうような、そんな快楽があった。
 大樹は惚けた顔で気持ちの良さに浸りつつ、腰だけは激しく動かしていた。
 というより、勝手に腰が動いている感じだった。意識せずとも体が快楽を貪ろうとしているのだ。
「ああんっ、やっ……大樹、ああっ……大樹いいっ……お姉さん、あっ……お姉さんいいのぉっ……」
 頭を左右に激しく振り、甘く悶える摩魅の姿はあまりにいやらしかった。長い黒髪が乱れ、汗で額に張り付いているのが色っぽい。
 初体験でいきなり摩魅を感じさせられている事に誇らしさを覚えつつ、それとは別に射精感が限界まで高まっているのが分かった。
「うぅっ……出ちゃうっ……摩魅姉さん出ちゃうよぉっ……」
 先ほど射精感を抑えてはもらったが、やはり初心者であるため、これほど快感を与えられては我慢するのは無理だった。
「いいですよ、あっ、あんっ……出して、あっ……大樹出してぇっ……お姉さんの中に、ああっ……大樹のを出して下さいぃっ……」
 膣内射精を要求された事に強い興奮を覚える。
 避妊具を付けていなかったため、中に出すのはマズいと思っていたのだが、摩魅の了解が得られたのなら別だった。このまま一気に思いきり射精するのだ。
 そう思った大樹は、最後とばかりに、それまで以上に腰を激しく振っていった。
「あんっ、ああんっ……いいっ、いいっ……お姉さんイくっ……イっちゃうぅっ……イっちゃうのぉっ!」
「うぁっ!」
 摩魅が絶叫と共に体を硬直させた瞬間、膣内がキュウっと締まり上がり、それに吸い出されるようにして精が迸った。
 ドピュッ、ドピュッ、と精液が吐き出され、凄まじい快感が全身を走り抜けていく。
 頭が真っ白になり、体がガクガクと震えて快楽の塊を吐き出していくのが伝わってくる。
 やがて長く感じられた射精が終わり、ガックリと力を抜いた大樹は、そのまま摩魅の上に倒れ込んだ。
 ハァハァという己の荒い呼吸を聞きながら、体の下にある柔らかな肉体を意識する。
 目の前には摩魅の美しい顔があり、その見慣れている顔が、見慣れぬ淫靡な表情を浮かべているのにドキリとする。
 そんな姿を見つめていると、小さくなったはずの肉棒が再び硬く大きくなっていくのが感じられた。
 摩魅の肉体が欲しくてたまらなくなり、大樹は鼻息を荒くしながら体を起こした。
「まだしたいんですね? いいですよ、いらっしゃい」
 優しく受け入れてくれる摩魅の言葉に歓喜が湧き起こる。
 それに反応して肉棒もビクンビクンと脈打っており、その元気一杯の怒張を掴むと、今度は誘導されることなく膣穴へと押し込んでいく。
 摩魅の「ああんっ……」という甘い吐息が漏れ聞こえ、それに欲情をさらに高めた大樹は、激しく腰を振っていくのだった。


「あっ、ああっ……大樹、あっ……大樹ぃっ……」
 ベッドの上で胡座をかいた大樹の腰を挟むようにして跨り、肉棒を受け入れている摩魅が、美麗な尻を上下させながら甘く喘いでいる。
 裸で抱き締め合って絡み合い、求めるように自分の名前を呼ばれるのに強い満足感を覚えつつ、夢中になって腰を突き上げていく。
 そのたびに形のいい顎が仰け反り、長い黒髪が白い肌をした体にかかるのが色っぽい。
 与えられる快楽に耐えかねたように頭を左右に振って悶えるのに、摩魅を支配している感覚を覚えて嬉しくなる。
 胸元では大きな乳房がタプンタプンと揺れており、それを掴んで揉みしだくと、心地良い感触が手のひらに広がった。
「やんっ……大樹、ああっ……いいです、あんっ……大樹ぃっ……」
 摩魅がこちらを見つめ、甘えた口調で言ってくるのに頷きつつ、その淫靡さを感じさせる表情に、ゾクリとした想いを抱く。
 潤んだ瞳は焦点が合っておらず、快楽に蕩けているのが感じられ、だらしなく半開きになった唇からは、赤い舌がチロチロと覗いていていやらしかった。
 普段の様子からは想像出来ないその淫猥な顔は、男であれば見ただけで勃起してしまうだろうと思えるほどに淫らだった。
 たった一人の家族である姉に、このような顔をさせ、快楽を貪っている自分は一体何なのだろう。
 一度だけの過ちならばともかく、もう何度も抱いてしまっている。一向に治まらない肉欲に流されるまま、精液を摩魅の中に注ぎ込むことを繰り返しているのだ。
 異常に盛り上がった欲情は、大切な姉を性欲処理の道具のように扱わせ、その魅惑的な肉体を貪り、味わい尽くすようにして何度も求めさせた。
 自分はどうしてしまったのか。
 何故こんなに発情してしまっているのか。
 訳の分からない状態のまま、摩魅を抱くことを止められず、受け入れてくれるのをいいことに、夢中になって己の劣情をぶつけてしまっている。
 摩魅もどうして受け入れてくれているのだろう。
 弟として愛してくれているからといって、ここまでする必要は無いだろう。
 本来セックスは男女の愛でするものだ。家族愛でするものではない。
 しかし摩魅は家族愛から、弟である自分の暴走した欲情を受け止めてくれている。おかしくなった自分を、強い愛情で包んでくれているのだ。
(大樹は気にしなくていいんです……お姉さんは大樹が大好きですから……何度でも受け止めてあげます……だから好きなだけ、満足するまでしていいんですよ……)
 二度目の射精を終えた時に、摩魅はそう告げ、それからもずっとセックスの合間に同じような事を口にし、大樹の罪悪感を薄めてくれていた。
 実際その言葉でどれほど救われただろう。大切な姉を、愛する姉を性欲処理の道具のようにしてしまっている苦悩を、摩魅は優しく癒してくれているのだ。
(摩魅姉さんっ……俺の、俺の摩魅姉さんっ……)
 摩魅への強い想いから、それまで以上に肉棒を強く突き上げていく。
 愛情が高まると肉欲も強まり、その結果激しく求めてしまう。
 家族として、してはいけない行為だと理解しているのに、その家族としての愛情が欲情を呼び起こし、強く求めさせる事に繋がっていた。
「ああんっ、あっ……そこ駄目、ああっ……大樹、そこ駄目ですっ……あっ、ああんっ……」
 摩魅は耐えられない、という感じで一瞬仰け反ったが、すぐさま体を前のめりにすると、大樹の頭を包むように抱き締めてきた。
 それが己の与えた快楽の強さ、摩魅の自分への愛情の強さのように感じられ、強烈な誇らしさと温かさを覚える。
「これがいいのっ?……こうかいっ?……摩魅姉さん、これがいいのっ?」
「やっ、やぁんっ……それ駄目、ああっ……それされると、あんっ……お姉さんおかしくなっちゃいますぅっ……」
「駄目」と反応した動きを重点的に行うと、頭を左右に激しく振り、涙声で喘ぐのに、心臓がドクンっと強く鼓動する。
 こうして愛らしく悶える摩魅を見るのは最高だった。
 他のことがどうでもよくなるほどに、夢中になってしまう魅力があった。
 自分には摩魅さえ居てくれればいい。摩魅さえ自分を愛してくれれば、それだけで幸せになれるのだ。
 摩魅に対する強い執着が起こり、己の物にしておかずには居られない衝動が押し寄せてくる。
(摩魅姉さんは……摩魅姉さんは、俺の物だぁっ……)
「ああんっ、あぅっ……駄目、ああっ……駄目駄目ぇっ……大樹駄目なのぉっ……」
 それまで以上に強く大きく突き上げると、敏感に反応を示した摩魅は、頭と体を思いきり仰け反らせて喘いだ。
 体を支えるために後ろに突いた腕がブルブルと震えており、長い髪が振り乱れて数本の髪が顔にかかっているのが色っぽい。
 虚ろでありながら、熱さを持っている瞳がこちらへ向けられ、そこに「もっと激しく突いて」と訴えている光があるのに、ゾクッとした興奮を覚える。
「ああっ、あっ……そんな、あっ……凄い、ああっ……大樹凄いぃっ……大樹凄いですぅっ……」
 その要望に応えるべく荒々しく突き込んでいくと、摩魅は体をブルブルと震わせ、ベッドに突いた手を握り締め、シーツを引き寄せている。
 それはまさに、こちらの与える快楽に身を委ね、染まっている女の姿であり、実に愛らしく、愛おしい存在だった。
 摩魅は自分の物だった。自分に従う、自分だけの女なのだ。
「あんっ、やっ……はぅっ、はぁっ……もう駄目、ああっ……もう駄目なのぉっ……」
 腕がガクリと崩れ、摩魅が後ろへ倒れていく。
 ベッドへ横たわり、甘い吐息を漏らすその姿からは、快楽で満たされている悦びが感じられ、己がいかに摩魅を夢中にさせているのかが感じられた。
 これからもこの美しく淫らな女をずっと抱いていこう、愛していくのだ。
 そう決意しながら美麗な肉体に覆い被さっていき、淫らな表情を浮かべている美しい顔を眺める。
「大樹ぃ……」
 とろんっとした瞳がこちらを見つめ、甘く名前を呼んでくるのに、快楽をおねだりする女の媚びを感じた。
「摩魅姉さぁん……」
 名前を呼び返しながら、ゆっくりと腰を動かし出し、徐々にスピードを上げていく。
 もうかなりしているというのに、まだこれほどの元気があるのかと驚くほどに、腰は勢い良くピストン運動を繰り返した。
「やっ、やんっ……そんな、あぅっ……そんな凄い、あっ……駄目、やぁっ……凄くて駄目ぇっ……」
 背中に両腕が回され、腰に両脚が絡みつき、逃がすまいとするようにしがみついてくるのに、摩魅の自分に対する執着を感じて嬉しさを覚えた。
 それに合わせるように膣内の収縮も強烈になり、締まり上がり、吸い付き嬲ってくる蠢きに、大樹の耐久力は限界に達した。
「あっ、ああっ……もうイくっ……イっちゃう、やっ、やぁっ……大樹っ、大樹ぃっ!」
「摩魅、姉さぁんっ!」
 互いを呼び合う声と共に、肉棒の栓が解放され、精が迸った。
 衰える事のない勢いと量の精液が放出され、摩魅の膣へと注がれていく。
 肉棒の律動と共に、ドピュッ、ドピュッ、と精液が迸り、強烈な快感を伴って頭を真っ白にしていった。
 いつまでも続くように思える射精を繰り返し、朦朧とする意識に染まりながら、少しして放出を終えた大樹は、力を抜いて柔らかな体に身を預けた。
 そのまま荒い呼吸を繰り返しつつ、強烈な快感の発露を反芻していく。
 生の肌同士が擦れる気持ちの良さと、こちらの体を受け止める温かく柔らかな肉の感触にうっとりしていると、気分が落ち着いていくのが感じられた。
 それまでは射精し終わってもすぐに欲情が高まったのだが、今回はそれが無いのだ。
(これで……終わり、か……)
 ようやく治まった肉欲に、ホッとするような残念な想いを抱きながら、これまで自分の劣情を受け止め続けてくれた摩魅に対し、強い感謝の念と、今まで以上の強い愛情を抱いた。
 そしてそれと共に、姉である摩魅とセックスしたのだという現実が強く認識され、取り返しの付かないことをしてしまったような想いを覚える。
 摩魅のことは大好きであるため、抱いたこと自体に後悔は無いが、肉欲に流されて抱いてしまったのが辛かったのだ。愛情ではなく、肉欲で結ばれたのが許し難く感じられたのである。
 摩魅にしても、大樹の事が好きだから抱かれた訳ではなく、欲情を抑えられなくなった弟を、楽にさせるために抱かれたのだろう。ずっとそのような事を言っていた点からもそう思えた。
 無論好きである事には違いないだろうが、それはあくまで家族としての好きであり、一人の男として愛しているのではないのだ。
 実際自分にしても、摩魅は姉として好きなのであり、女性として好きであるのとは違っていた。
 お互い家族として愛し合っているのであり、そんな状態でセックスしてしまった事に、大樹は許されない事をしてしまった後悔にも似た想いが起きているのを感じた。
「大樹……お姉さんとしたこと、後悔してるんですか?」
「え……?」
 不意に、まるで心を見透かしたように尋ねてきた摩魅の言葉にドキリとする。どうして分かったのだろう。
「そんな顔してますよ。まあ、姉弟でしたのだから仕方ないでしょうね。でも気にしなくていいんです。この事は誰にも分からないんですから。私たちだけの秘密。お姉さんと大樹の、二人だけの秘密なんです」
 その言葉に嬉しくなる。「二人だけの秘密」という言葉に、擽ったいような喜びを覚えたからだ。
「それに、大樹はそうしないでは居られなかったんでしょう? お姉さんを抱きたくてたまらなくなっていたんでしょう? オチンチンが硬くなって、どうしようもなくなっていたんでしょう? お姉さんは、可愛い弟が苦しんでいるのを助けたかったんです。だからこれは正しい事なんですよ」
 そうは言われても、やはり「いけない事をした」という想いは払拭できなかった。湧き起こった欲情を抑えきれずに摩魅にぶつけてしまったのだから当然だろう。自分さえちゃんとしていれば、摩魅にこのような事をさせないで済んだのだ。
「ふふ、大樹はいい子ですね。お姉さんに対して申し訳ないと思ってくれているんでしょう? そんな大樹だからお姉さんは抱かれたんです。大好きな大樹が気持ち良くなってくれるように、お姉さんの体で元気になってくれるように、そう思って抱かれたんですよ。これはお姉さんにとって、凄く凄く嬉しいことなんです。だから気にしないで下さい。お姉さんは嬉しかったんですから……」
 優しく抱き寄せ、頭を撫でてくるのにホッとした想いを抱く。
 昔から大樹が泣いていると、こうして慰めてくれたものだった。摩魅の体に抱き締められていると、心地良くなって涙が止まったのだ。
 今も摩魅に対する罪悪感が軽くなっており、それと同時に、強い愛情が起きてきているのが感じられた。
 この素敵な姉を、大好きな姉を、これからも愛していきたい。ずっと傍に居たい。そんな想いが押し寄せてきていたのである。
「俺、摩魅姉さんのことが大好きだ……だから、その……け、結婚しよう。こんな事しちゃったし、俺、ちゃんと責任とりたいから……」
 摩魅に対する愛情が高まったせいか、そんな言葉が意識せずに発せられた。
 自分でも驚いたが、そうするのが正しいようにも思えたため、言って良かったとも思った。
 摩魅となら結婚しても全然構わないし、今までだって一緒に暮らしていて、夫婦と似たような状態なのだ。戸籍上婚姻していないだけの話なのである。
「ふふ、嬉しいですね。素敵なプロポーズをありがとうございます。でも駄目ですよ、こんな状態の時に言っては。大樹は今、初めてセックスをしたせいで、頭が混乱しているんです。そんな時に言う言葉は、後で後悔する事もあるんですよ。だから無かった事にしておきましょう。もししばらくしても気持ちが変わらなければ、改めて申し込んで下さい。そうしたらお姉さんも考えますから」
 勢いで言ったことがバレバレであったのに赤面する。確かに今の言葉はかなり軽かった気がした。
 何よりセックスした責任を取る、というのは一見カッコ良く聞こえはするものの、それ以前の無責任な行為に対する誤魔化しのようにも思えた。
「ご、ごめん……俺、摩魅姉さんに迷惑かけてばっかりだ……情けない弟でごめんよ……」
 凄く悲しくなり、つい甘えるように体を押しつけてしまう。
 こうした態度が駄目なはずなのに、どうしても摩魅に対してはしてしまうのだ。幼い頃から自然にしてきたせいだろう。
「いいんですよ。お姉さんはそれが嬉しいんですから。大樹はいつまでもお姉さんの弟です。いつまでも甘えていいんですよ」
 そんな事では駄目だろう、と思う一方、いつまでも自分を甘えさせてくれるという言葉に強い喜びを覚えた。
 結局自分はシスコンなのだ。
 摩魅に依存している駄目弟なのだ。
 だけどそれのどこが悪いのか。
 自分は摩魅が大好きで、摩魅に依存したくてたまらないのだから、これからも甘えていってしまえばいい。
 そんな想いが湧き起こり、豊満な膨らみに頬ずりしていく。
 温かで柔らかな感触が感じられ、摩魅が優しく抱き締めてくると、心と体全てが包まれているように感じられた。
「これから何があっても、お姉さんを信じて下さい。大樹のことを愛しているお姉さんを。大樹に何があっても、お姉さんは大樹を助けてあげますからね」
「うん……俺、摩魅姉さんを信じてるよ。だって摩魅姉さんを愛してるもん……」
 全てを委ねる気持ちでそう呟くと、摩魅は嬉しそうに微笑んだ。
「大好きですよ、大樹……」
「大好きだよ、摩魅姉さん……」
 姉弟は見つめ合うと、どちらからともなく唇を重ねていった。
 触れている部分からお互いの存在が感じられ、愛情が高まっていくのが分かる。
 大樹は、目の前でうっとりと目を閉じ、優しく抱き締めてくれている摩魅の存在を改めて見つめると、その大切な、愛おしい女性を、いつまでも愛していくのだと決意するのだった。


 ぼんやりした風景の中を大樹は走っていた。
 何が楽しいのか顔は笑顔で固定されており、とにかく走りまくっている。
 隣に視線を向けると、そこには見慣れた顔があった。
 歩美だ。
 今よりかなり幼い。五、六歳くらいだろうか。やはり笑顔を浮かべてキャッキャッと楽しげな声をあげている。
 その事で「ああ、これは夢なのだ」と思った。何しろ自分も歩美も今は十六歳。もっと大きくなっているからだ。
 昔の夢を見ている。
 懐かしい、遊ぶことだけを考えていたような、無邪気な頃の思い出。毎日が楽しくて仕方がなかった頃の記憶だ。
「大ちゃん、あっち行こ、あっちぃ」
 歩美が指さす方へ、何も考えず頷いて走り出す。
 そちらに何があるのか分からず、大人であれば引き返すであろう所へでも、とにかく入っていった。
 時折両親に叱られることもあったが、それでもまだ「子供だから」と許される特権のあった頃だ。
 何がいけない事なのか本当の意味で理解できないゆえに免責される年頃。
 幼い頭でもそうした事は分かるもので、大樹は歩美と一緒に、大人であれば許されない所へ足を踏み入れた。
 おっかなそうな大人が居れば、すぐに隠れ、見つかるかも知れないという事にドキドキし、見つからないで済んだ後に喜び、どんどん奥へと入っていく。
 珍しい建物が沢山ある中を、ワクワクしながら進み、一つの部屋の窓を覗き込む。
「あ、女の子がいるぅ」
 歩美の指摘通り、そこには幼女が居た。自分たちと同じ年頃の、白衣と紅い袴を身につけた、長い髪の美しい幼女だ。
 どこか弱々しさ、儚さが感じられ、その壊れてしまいそうな雰囲気に心臓が強く鼓動する。
 歩美の言葉に驚いたのか、目をまん丸にしてこちらを見ているのが何やら可愛らしい。
「あなた達は、どなたですか?」
 幼女は小首をかしげ、不思議そうに尋ねてくる。
「ボクは歩美だよぉ。こっちは大ちゃん」
「大ちゃん? かわったお名前ですね」
「名前は大樹だって。大ちゃんはあだ名。歩美ぃ、ちゃんと名前言えよなぁ」
 駄目な紹介をする歩美の脇腹を小突きつつ訂正する。
「だってぇ、大ちゃんは大ちゃんだもぉん」
「そんなの初めて会った人には分からないだろ。だから名前言えっての」
「う〜〜、ごめんぅ。今度から気をつけるぅ……」
 泣きそうな表情を浮かべながら謝るのに溜め息を付く。今は反省していても、少し経つとすぐに忘れるのを知っているからだ。
「あだ名? あだ名とは何でしょう?」
 不思議そうに尋ねてくる幼女に呆れる。何を言っているのだろう。
「あだ名はあだ名だよ。知らねぇのかよ」
「すみません。わたくしは知らないのです」
 申し訳なさそうに俯きながら謝ってくるのに慌てる。本当に知らないのだという事が伝わってきたからだ。
「し、知らないならしょうがないな。教えてやるよ、あだ名ってのはだな……えっと、え〜〜……何だろ?」
「わ〜〜、分からないのに偉そうにしてたんだぁ。大ちゃんカッコ悪いぃ」
「うるさいな、いいだろ別に……そ、そうだよきっとあれだ、言いやすい呼び方だよ。うん、そうだなそうだよ」
「え〜〜? 本当? 嘘じゃないのぉ?」
「お前は呼びやすいから俺のことあだ名で呼んでるんだろ。だから合ってんの」
「うわぁ、嘘臭い〜〜」
「ほっとけ」
 幼い頃にいつもしていたどうでもいい会話。本気ではないからかいの言葉のやりとり。そんな関係が心地良さを生んだのを覚えている。
 そしてそれは未だに歩美との間で続いており、成長が無いなと思う一方、それゆえに心地良さがいつまでもあるのだろうとも思う。
 そしてそんな心地良さを幼女も感じたのだろう。楽しげな笑みを浮かべてこちらを見つめている。
「うわぁ、可愛いねぇ。あなた可愛いよぉ。凄い可愛い……」
 歩美が驚いたように感嘆の言葉を述べるほど、幼女の笑みは魅力的だった。
 実際その時の自分は、意識を奪われたようにボーッと幼女の顔を見つめてしまっていた。強く惹き付けられるような、そんな素敵な笑顔だったからだ。
「ね、大ちゃん可愛いよね?」
「え? あ、うん……」
 軽く叩かれてようやく意識を戻しつつ、ぼんやりと答える。
「わたくしの事ですか?」
「そうだよぉ。あなたは可愛いの。ね、ボクたちと友達になろぉ」
「友達……友達とは、何をするのでしょう?」
「何って……う〜〜ん、何だろ? 大ちゃん、いつも何してたっけ?」
「今してるような事だろ。話したり、遊んだり……」
「そうだね。うん、こうして話すの。それが友達だよぉ」
「そうですか。こうして話すことが。では、わたくしがいつも話している方は友達なのでしょうか?」
「へぇ、どんな人?」
「わたくしの世話をしてくれている方や、指導をして下さっている方です」
「え? それって大人なんじゃないの?」
「そうです。大人です」
「大人じゃ友達じゃないよ。やっぱり子供同士じゃないと」
「そうでしたか……しかしわたくしは、子供の知り合いはおりませんので」
「え? 子供の知り合いがいないのぉ?」
「はい。子供と話したのも今日が初めてです」
 そう呟く幼女の様子には、どこか寂しさを感じさせるものがあり、それを見ていると何やら強い衝動が湧き起こるのを感じた。それは、「何かしてあげたい」という想いだった。
「じゃ、じゃあさ、ボクたちが初めての友達ってヤツだね。ならもっと沢山話そう。一緒に遊ぼうよっ」
 歩美も同じように感じたのか、テンションを上げた様子で明るく喋っている。
「は、はい。そうですね。宜しくお願いいたします」
 そう返事をする幼女は、戸惑いつつも楽しげであり、その事に大樹は嬉しさを覚えた。
「じゃあさ、あなたの、って、そう言えば名前聞いてなかったね。名前何ていうの?」
「わたくしですか? わたくしは琳霞と申します……」
 小さく名前を告げてくる幼女、琳霞に、大樹はうっとりとしながら見惚れていた。
 寂しげだった顔に笑みが浮かび、それが自分に向けられていることに幸福感を覚える。
 その後も歩美が何か喋るのに適当に茶々を入れつつ、その事で琳霞が可笑しそうに笑うのを幸せに感じた。
 それが琳霞との出会いであり、今もずっと記憶に残り続けている、大切な思い出だった。


 朝。
 何やら懐かしい夢を見たな、と感慨に耽りつつ、昨晩の琳霞の舞の事が頭に浮かんだ。
 こんな夢を見たのは、いつもより琳霞に強く惹き付けられたせいだろうか。
 意識が奪われるほどになったのは、初めて見た時以来か。
 そんな事を思いながら体を起こす。
 そして自分の位置が布団の中心からズレている事に違和感を覚える。まるで隣に誰かが寝ていたかのように、一人分の空間が空いていたからだ。
 その瞬間ハッとなり、昨夜の摩魅との事を思い出す。
 あれは夢だったのではないかと思うが、体に残る柔らかな肉体の感触と、布団から漂う摩魅の匂い、そして体の怠さ、特に腰の怠さから、昨夜の事が現実だったのだと認識する。
(摩魅姉さんと、しちゃった……)
 凄く嬉しい気持ちが起こり、何度も貪った綺麗な肉体や、自分の与える刺激で喘ぎ悶える淫らな姿が脳裏に浮かぶ。
 あの美しく、素晴らしい女性である摩魅を自分は抱いたのだ。それも何度も。愛情を確認し合い、これからも愛し合っていくのだと約束したのである。
 嬉しくて仕方のない衝動が押し寄せ、大樹は飛び上がるようにして起き上がると、服を身につけていった。
 スキップ気味に部屋を出て廊下を進み、居間へ入ると、美味しそうな匂いが鼻を擽った。台所へ視線を向ければ、摩魅が朝食を作っているのが見える。
 その後ろ姿は実に麗しく、そんな女性が自分の物になったのだという喜びから、思わず叫び出しそうになった。
「あ、大樹。おはようございます」
「お、おはよう……」
 振り返り、こちらを見つめて微笑んでくるのに恥ずかしさが高まり、顔が熱くなる。面と向かうと照れくさかったのだ。
「あと少しで出来ますからね。もうちょっと待ってて下さい」
「あ、うん……」
 そう告げてくるのに頷きつつ、続けて何か言ってくるのではないかと身構えて待つが、摩魅はそのまま朝食作りをしているだけだった。
 その後ろ姿を眺めながら、こちらから何か言おうとして止め、もう一度言おうとしてやはり止めると、朝食が出来るまで待とうとテーブルの前に腰を下ろした。
 そのまま大きく息を吐き出して力を抜くと、先ほどまであった高揚がすっかり無くなっているのに気がつく。
 妙な違和感だった。
 というか、拍子抜けしたと言うべきか。摩魅があまりにいつも通り過ぎたため、肩すかしを食らったように思えたのだ。
 あれだけ激しく愛し合ったのだから、顔を合わせれば恥ずかしがったり、甘えてきたりするのではないかという期待を抱いていたのだが、それが全く無かったのである。
 例えるなら、新婚夫婦のような、ラブラブな朝の会話が展開されるのではないかと期待していたと言うべきか。
 大樹の方はまさにそんなテンションであったため、そうではない摩魅の態度に、期待を裏切られたような感覚を覚えていたのだった。
 視線の先では、摩魅が淡々と食事の用意をしており、こちらを見ることもなく作業している様に何だか悲しくなってくる。摩魅は自分の事を「愛している」と言ってくれたのに、どうして今はこんなに冷たい態度なのだろう。
 いや、いつも通りなのだから冷たい訳ではなかったが、もう少しこれまでとは異なる何かを感じさせる素振りを示してくれてもいいではないか。そうすれば昨夜の愛情の繋がりを再確認出来て嬉しくなるのだから……。
「さあ、出来ましたよ。いただきましょう」
 朝ご飯を食べるように促してくるのにボンヤリ視線を向けると、摩魅が優しく微笑んでいるのが見えた。
 それはいつも通り自分に対する愛情を感じさせるものだったが、まさにいつも通りでしかなかったため、その事にさらに力が抜けていく。
 摩魅は何も感じていないのだろうか。昨夜の自分とのセックスは、摩魅にとってどうでもいい事でしかなかったのだろうか。
 そんな事を思いながら力なく肩を落とし、大きく息を吐き出した大樹は、「いただきます」と呟いてから食事を開始した。
 しかし朝食を食べている間も摩魅の様子が気になり、料理の味が全く分からない。
「摩魅姉さん……その……昨日のことなんだけど……」
 もうこうなったら尋ねてみるしかない、と話を振ってみることにする。摩魅がどんな意識で居るのか知りたかったのだ。
「昨日のこと、ですか?」
「うん……何であんな風に、させてくれたのかって……」
「必要だったからですよ」
 そう言われた瞬間、心臓がキュウっと縮み上がるような感じがした。
 淡々と、事務的な行為の理由を告げてくるかのような口調であったため、まるで「大樹を愛してなど居ないが、必要に迫られたから抱かれた」と言っているように感じられたのだ。
「必要だったからって……それって、俺のことは別に愛してないけど、仕方なく抱かれたってこと?」
 辛くなりながらそう告げると、摩魅は驚いたようにして目を見開いた。
「どうしてそうなるんですか。お姉さんが大樹を愛してないはずがないでしょう? 昨日何度言ったと思ってるんです?」
 続けて怒ったように告げてきたため慌てる。そして同時にホッとした。どうやら摩魅が自分を愛してくれているのは確実なのだと分かったからだ。
「いや、その……必要だったからって言われたからつい……」
「それも事実ですからね。大樹があんまり辛そうだったから、楽にしてあげたくてしたんですから。昨日もそう言ったでしょう?」
 そう言えば、最初にそう告げながら誘惑してきたのだ。
「お姉さんと大樹は、義理とはいえ姉弟なんですから、ああいう事は本当はしてはいけないんです。でも大樹が辛いのは見ていられないので、特別にしたんですよ。それなのに、それでお姉さんが大樹を愛していないと思うなんて……全くもうっ。愛してない弟のために、性欲の捌け口になってあげる姉がいるはずないでしょうっ」
 呆れたように大きく息を吐き出す摩魅に、何とも申し訳ないことを尋ねてしまったと悔いる。
「ごめんよ……俺、起きた時にさ、摩魅姉さんとああなったのが嬉しくて、それで凄くはしゃいでたんだ。でも摩魅姉さんはいつも通りで、昨日の事なんか無かったみたいに普通にしてたから、それで何だか寂しくなっちゃって……」
 正直に告げながら、何とも情けない事を言っているな、と思う。勝手に盛り上がって、勝手に失望しているのだから、あまりに駄目過ぎるだろう。
「なるほどそういう事ですか。でもお姉さんとしては、今までの大樹に対する想いと変わらないですからね。だから態度に出なくても仕方ないでしょう」
「変わらないって、あんな事があったのに?」
「あれも大樹に対する愛情表現の一つですから。特に普段と変わるところはありませんよ」
 そう告げてくるのに呆気にとられる。セックスしたのを特別な事ではない、と言い切れるなどおかしすぎるだろう。
「それだけお姉さんは、普段から大樹を愛しているって事です」
 心臓が大きく跳ねる。何とも強烈な愛の告白に感じられたからだ。
「でもそうですねぇ……言われてみれば、確かに満足感が無いとは言えません。小さい頃から可愛がってきた大樹が、男としてお姉さんを抱いてくれたんですからね。逞しい腕に抱き締められた時、女として凄く充実した想いを得られましたよ。その事は凄く嬉しかったです。ありがとうございます」
 そんな風に礼を言われると、こそばゆいような恥ずかしさが起きた。何しろこちらは高まり過ぎていた性欲を処理してもらったのであり、その事で感謝されるのでは、あまりに申し訳なさすぎたからだ。
「お、俺だって……ずっと大好きだった摩魅姉さんを抱けたのは、凄く凄く嬉しい……でもその理由が酷いよね。ごめん……それからありがとう。俺、摩魅姉さんのおかげで凄く助かったし、凄く嬉しかった。本当に本当にありがとう」
 感謝の気持ちを込めて告げると、摩魅は嬉しそうに笑った。
「大樹が喜んでくれたのなら、お姉さんは嬉しいです。これからも辛くなったら言って下さいね。昨日と同じ事、またしてあげますから」
 その言葉に股間の一物が反応してしまう。
 今夜にでもまた摩魅を抱きたいという想いがよぎり、その事を想像すると鼻息が荒くなった。
 とはいえ、さすがに二日連続は抵抗があったし、義理とはいえ、姉弟であるのだから、やはりこうした関係は良くないのではないかと思った。
 摩魅は望めば抱かせてくれるだろうが、それに甘えていたら、ただれた関係になってしまうだろう。
 何より「必要だから」という理由で抱かせてもらうのでは悲しすぎた。性欲を処理する事が目的のセックスではあまりに酷すぎるからだ。
 そうではなく「愛しているから」という理由で抱くのを了承してもらうようになりたかった。
 そのためには、もっと自分が男として摩魅に意識してもらえるようにならなければいけないだろう。
 そんな事を思い、これからそうなれるように頑張ろうと決意する一方、いつまで経っても摩魅には弟としてしか見られないような気もして、難しそうだとも思った。
「おはようございます〜〜」
 不意に玄関の方から声が聞こえたため、思わず体を震わせてしまう。
 この時間に歩美が訪れるのはいつもの事であるのだが、話している内容が、知られてはマズいことであったため動揺したのだ。
「大ちゃん、摩魅さん、おっはようございます〜〜」
 元気な足音と共に可愛らしい姿が現れ、ニコニコしながら挨拶してくるのに苦笑する。
(歩美は、いつも元気だな……)
 そう思いながら挨拶を返しつつ、朝飯を褒めた歩美が、摩魅に食べるように勧められている普段通りの流れを眺める。
 視線が歩美の胸元へいき、その大きな膨らみに、思わず昨夜何度も揉んだ摩魅の乳房を重ね合わせてしまった。
(歩美のも、揉んでみてぇなぁ……)
 というか、歩美は抱いたらどんな風に喘ぐのだろう。
 色気など感じさせない少女ではあるが、感じ始めたらやはり普通にいやらしくなるのだろうか、などと思うと不思議な感じがした。この元気少女のそうした様子は想像出来なかったからだ。
「美味しいねぇ。摩魅さんの料理はホント美味しいよぉ」
 嬉しそうに朝ご飯をパクパク食べている姿を見ていると、そんな意識はどこかへ行ってしまい、楽しい想いが起きてくる。
 歩美を女として意識するのも楽しかったが、こうして変わらぬ幼馴染みとしての姿に心地良さを覚えるのも大切なことなのだろうと思う。
 そう考えると、摩魅が今までと変わらぬ態度で居てくれたのは、良かったことなのかも知れない。
 やはり摩魅にはいつまで経っても姉であって欲しかった。何しろ自分は、姉である摩魅の事が大好きなのだから……。


 そうして表面上は普段と変わらぬ朝食を終えた大樹は、歩美と共に学校へ向かおうと家を出た。
 見送りに出てきた摩魅が、どことなくいつもより綺麗に見えたのは欲目のせいだろうか。自分に対する愛情を改めて感じた事で、そんな風に思えているのかも知れない。
 意識も浮かれ気味になっていたため、ウキウキしながら歩いてしまっているのが分かる。
「何か今日の大ちゃんと摩魅さん、いつもより仲良さそうだったね。何かあったの?」
「!……」
 歩美の言葉に、心臓が止まるかと思った。鋭い指摘すぎるだろう。
「そうか? そんな風に見えたか?」
「見えたよぉ。二人とも妙に楽しそうだったし、時々目を合わせたりしてさ。ボク、何だか疎外感覚えちゃった。ねぇねぇ、二人で何楽しいことしたのさぁ」
 確かに二人で楽しい事はしたのだが、それを口にする訳にはいかなかった。
 というか、自分はともかく摩魅は楽しそうだっただろうか? いつもと同じようにしか見えなかったのだが。
「ちょっとした姉弟の愛情確認をしたんだよ」
「ふぅ〜〜ん……まあ、姉弟の問題じゃボクが入る余地はないかぁ。じゃあ、今度は幼馴染みとの愛情確認をしようよぉ。ね、いいでしょぉ」
 仲間外れにされるのが好きではない歩美はそんな事を言っている。
 その際に体を大きく動かしたため、胸の膨らみが揺れたことに興奮してしまう。
(エロい体だよなぁ。愛情確認だって言ってエッチな事していったら、歩美ならヤらせてくれそうだけど……)
 性的なことに抵抗の少なそうな歩美であれば、楽しく誘えば軽く「うん、いいよっ」とか言ってきそうな気がした。
 そうした雰囲気があるのが歩美の魅力であり、つい性的な妄想をしてしまう原因でもあった。
 とはいえ、さすがに実際に手を出す訳にはいかないだろう。自分が主導権を握るとなれば、騙している罪悪感を覚えるように思えたからだ。
「別にいいけど、具体的に何するんだ?」
 自分からの提案は避け、歩美がしたい事をやってあげようと思って尋ねてみる。
「摩魅さんとは何したの?」
「それは秘密だ。俺と摩魅姉さんの姉弟としての大事な事だからな」
「う〜〜、疎外感……まあ、いいや。今日帰ったらゲームしよゲーム」
「それじゃいつもと同じじゃんかよ」
「そうだけどぉ。じゃあ、どうしろって言うのさ」
 確かに他に思いつかなかった。何しろ歩美とは年がら年中一緒に居るため、特別なことなど思いつかないからだ。
(まあ、セックスすれば、特別なことになるけどな……)
 実際摩魅としたのもそれであり、少なくとも大樹の中では摩魅に対する想いは強まっていた。もし歩美の言った通り摩魅もいつもより楽しそうであったのなら、摩魅の中でも変化があったという事だろう。
 まあ、セックスしたのに何も変化が無いというのもあり得ないだろうから、先ほど口にしていた言葉とは裏腹に、摩魅もこれまでとは意識が変わっていると思いたいところだった。
「どこかへ行くってのも手だけどさ。最近物騒だからそれも無理だしね。お母さんに怒られちゃうよ」
「そういやそうだったな。っていうか、一人で人気の無い所とか行くなよ? お前は落ち着き無いからな」
「わ、酷いよぉ。まあ、自覚あるけどさ。でもそれなら大ちゃん一緒に居てよね。そうすればいいでしょ?」
「頼まれなくてもいつも一緒だけどな。って、そういや今日は摩魅姉さんの手伝いする日だったっけ? 終わったら待ってろよ。家まで送ってってやるから」
 歩美は半年前から週に一度、摩魅の仕事の手伝いをするようになっていた。
 摩魅の仕事は神事に使う器具などを作る事で、結構気を遣う作業が多いらしいのだが、そのような事に落ち着きのない歩美が関わって大丈夫なのかと以前から思っていた。しかし長続きしているところからすると上手くいっているのだろう。
「うわぁ、ありがとう。大ちゃんがそんな風に言ってくれるなんて嬉しいよぉ」
「実際物騒なんだからそれくらいするさ。摩魅姉さんを迎えに行くついでだしな」
「本命は摩魅さんかぁ。シスコンだねぇ」
「ほっとけ」
 実際自分は相当なシスコンなのだと思っていた。肉体関係を持ってからはそれは加速したと言えるだろう。
 とはいえ、同じくらい歩美の事も大切に思ってはいるのだが。
「今は何作ってるんだっけ? 摩魅姉さんは凄く大変だとか言ってたけど」
「う〜〜ん、ボクもよく分からないんだけどね。錠前と鍵らしいよ」
「らしいよって、お前、手伝ってるんだろう? 何で分からないんだよ」
「だって実物見せてもらったことないんだもん。ボクがやってるのって作業の時にやる儀式の手伝いだしさ」
「へぇ、そんな事してるんだ。さすが神事の道具だな。儀式なんかするんだ」
「うん。ボクくらいの歳の女の子が一緒にする必要があるんだって。しかも特殊な資質のある子じゃないと駄目なんだってさ。ボクはそれにピッタリだから頼んだって言ってたよ」
「へぇ、歩美にそんな資質がねぇ。驚いたなぁ」
「ボクも最初言われた時には驚いたけどね。でも摩魅さんの役に立てるなら嬉しいから、喜んで手伝ってるの」
 歩美は幼い頃から摩魅に憧れていたため、その摩魅の手伝いが出来ている事が本当に嬉しいのだろう。儀式の手伝いなどという単調そうな仕事を、そうした事が苦手な歩美が続けていられるのも、その想いがあるからに違いなかった。
「もうすぐ完成するって言ってたから、仕事の手伝いも終わりかもしれないけどね」
 少し寂しそうに呟いている様子にドキリとしてしまう。普段見られない雰囲気であったため、妙な色気を覚えたのだ。
 元気で明るくしている歩美も良かったが、こうして憂いを感じさせる表情を浮かべているのもなかなかのものだった。
(エッチする時は、こういう顔するのかな……)
 思わずそんな事を考えてしまい、視線が胸元の大きな膨らみへと向いてしまう。
「大ちゃん、スケベな顔してる。エッチなこと考えてるでしょ?」
 図星を指されたため激しく動揺する。いつもはボケているくせに、たまに鋭い指摘をしてくるのだ。
「うるさいな。ほっとけ」
「ふふ、でもそんな大ちゃんがボクは好きだけどね」
 これまたいつもと違って落ち着いた感じで言われたため心臓が跳ねる。
 元々美少女といって十二分な顔立ちであるため、そうした態度を取られると強烈な破壊力を伴うのだ。
「あ、もうこんな時間。何か話している内に歩くの遅くなってたみたい。早くしないと遅刻しちゃうよ。急ご、大ちゃん」
 不意に普段と同じ雰囲気に戻って告げてくるのに、慌てて気を取り直して頷く。何とも今日の歩美は変化の激しい事だった。
 というより、大樹の方が意識してしまっているのかも知れない。何しろ昨夜の摩魅との事で、少しおかしくなっていたからだ。
 歩く速度を上げた歩美に遅れまいと、こちらも早足になりながら後を追う大樹は、この状態も明日になればいつも通りになるさ、などと考えながら学校へ向かっていくのだった。


 ロウソクの光に照らされた薄暗い部屋。
 上座には一人の少女が座っていて、その前に数人の大人達が腰を下ろしていた。
 場には重苦しい空気が漂っており、会話する声も自然と小さくなっている。
「鍵の調整は終了しました。新しい錠前の仕込みも万全です。後は時を待ち、現行の錠前に鍵を差し込むだけです」
 一人の女性が告げた言葉に、その場に居た全員が少し興奮したように頷いた。
「半年……思っていたよりもかかりましたね。やはりかの神の妨害があったと考えるべきでしょうか?」
「否定はできません。封印する力を感じれば、それに対し何かしらの事はしてくるでしょうから。ただ鍵に関しては、その兆候が見られたのがごく最近ですので、そこからの調整と考えれば、かなり早期に仕上げられたと言えるでしょう」
「さすがは錠前師殿です。お見事ですね」
「いえ、この度は優秀な助手を得られましたので、思ったよりも楽に行うことが出来ました」
「彼女ですね……彼女には、辛い想いをさせてしまうかも知れませんね……」
 少女は悲しげな表情を浮かべると俯いた。
「止めますか? 今ならまだ間に合いますが」
「いえ、わたくしの個人的な感傷で判断を変えるつもりはありません」
「感傷を抜きにしても、今回行うことは前例の無いことです。上手くいくかどうかの保証はありません。改めて確認しますが、それでも行うつもりですか?」
 その言葉に場の空気が引き締まった。
 皆の視線が少女へ向けられ、答えを待つようにしている。
「もちろんです。そうしなければ村に甚大な被害が出るのですから」
 そう告げる少女の雰囲気には、年齢以上の大人びたものが感じられた。
「次の機会まで待つ、という選択肢もありますが」
「それまで封印が保つという保証はありません。すでにその兆候が現れています。近隣で犯罪が増えているのも、かの神の力が住民の情緒を不安定にさせているためでしょう。ゆえにわたくし達には時間がないのです。今回こそが、新たな封印をすべき時と判断いたします」
 毅然と言い放った少女の言葉に、一同は感銘を受けたように頭を下げた。
「それに……二つの錠前と鍵。これらの関わりを考慮すれば、今が最も適した機会と思われます。それはわたくし達が行う事において、何より重要な要素ですから」
 少し恥ずかしそうに俯きながら呟く少女の様子には、それまでとは違った、年相応の幼さを感じさせるものがあった。
「では、頃合いを見て儀式を始めることにします。かの者については、何も知らせずに召すことになりますが、それで宜しいですか?」
「構いません」
「全てを知った時、かの者が恨みを抱く可能性もありますよ? 道具として扱われたと」
「承知しています。しかしたとえ恨まれる結果になろうとも、此度のことは成さねばならぬのです」
 少女は一瞬悲しげな表情を浮かべたものの、すぐに毅然とした態度で言い放った。
「辛いですね」
「それはあなたも同じではないのですか? かの者への想いは、わたくしなどよりも強いでしょう?」
 そう尋ねられた女性は、一瞬視線をそらしたが、すぐに小さく笑った。
「そうですね。ですがその事はすでに割り切っていますから。それに、かの者との今の繋がりは、とても強いものになっています。それは非常に好ましいことなのです」
「わたくしもあなたのようになれたら、どんなに幸せでしょう」
「今回のことが上手くいけば、それも可能になるかも知れませんよ?」
「あまり期待はしておりません。わたくしには、かの者との繋がりなど無いに等しいのですから。あるのは幼き頃の思い出のみです。それを支えにこれまで生きて参りました」
 悲しげに、それでいてどこか安堵しているような笑みを浮かべ、少女は俯いた。
「思い出はこれからも作れますよ。そのためにもあなたは村を守ろうとされているのでしょう? その中にはあなたご自身も含まれているのですよ?」
 女性の言葉に、少女はハッとしたようにして顔を上げた。
「繋がりの形は人それぞれ。錠前と鍵が一つ一つ違うように、あなただけの人との繋がりの形があるはずです。それを求めて下さい。そうした想いの強さが、錠前と鍵を結びつけるのです。この度のことには、それが重要だと考えます」
「わたくしの想いが、あなたの錠前と鍵の力を強める、と?」
「はい。想いこそが力です」
「想いこそ、力……」
 少女は女性の言葉に感銘を受けたように黙ると、ジッと何かを考えるようにした。
「分かりました。此度の儀式の際には強い想いを抱きます。個人的な想いなど弊害になるだけと考えておりましたが、錠前師殿が申されるのでしたら、わたくしは、わたくしの想いを強く抱くようにいたします」
 そう告げる少女は、胸元に両手を当てると、楽しげに、幸せそうに微笑んだ。
 その様子を温かい表情で見守っていた女性は、何かの確信を得たように頷くと、少女に負けないほどに幸せそうな笑みを浮かべるのだった。


 あれから数日が経ったある日の夜、大樹は摩魅に呼び出されていた。
 場所は、摩魅がいつも仕事をしている作業場だ。
 案内されたのは作業をしている区画ではなく、神事に関する器具を作る際に使用している儀式を行う部屋だった。
 作業場には何度も来たことがあったが、この部屋へ入ったのは初めてであったため、少々緊張しながら周囲を眺める。
 さすが儀式を行う場所だけあって余計なものは一切置いておらず、部屋の奥には祭器が飾られてあった。
 おそらく歩美もここで儀式を手伝ったのだろう。
 そう思うと、歩美が神妙な顔をしている姿が頭に浮かび、妙に可笑しくなってしまった。
 何しろかなり重々しい、神聖な雰囲気のある場所であったため、落ち着きの無い歩美には不似合いであるように思えたからだ。
「待たせましたね」
 不意に声が聞こえたため視線を向けると、そこには白衣に紅い袴といった装束に身を包んだ摩魅が立っていた。
 見慣れていない服装であったため、思わずドキリとしてしまう。実に似合っていて普段より美しさを感じさせたからだ。
 かなり魅力的である事から肉欲を覚えてもおかしくなかったが、さすがに神聖な雰囲気のある場所であるせいか、そうした事は起きなかった。
 摩魅の顔にも真剣な表情が浮かんでおり、それが中性的な印象を与えるようで、あまり女性として意識出来なくなっているのも大きいだろう。
「今日大樹に来てもらったのは、ある儀式を手伝ってもらうためです。その説明をこれからしますので、よく聞いて下さいね」
 それはあらかじめ知らされていた事なので、黙って頷き、続きを待つことにする。
「お姉さんを抱いた日のこと、覚えてますか?」
 突然何を言い出すのかと思って動揺する。いくら何でも予想外過ぎる質問だった。普段ならともかく、このような場所と状況で尋ねてくるにはあまりに不似合いな内容だろう。
「覚えてるよ。忘れられるはずがない。でも何で今そんな事を聞くのさ」
「今回の儀式に関係した事だからです」
「え……?」
 まさかそんな風に返されると思わなかったため呆気にとられる。何故摩魅とセックスした事が儀式に関わってくるのだろう。
「あの日の大樹は、普通ではありませんでした。自覚はありましたか?」
「え? あ、うん……」
 自覚はあった。何しろ強烈に肉欲が高まって、歩美と摩魅に襲いかかりたくなったからだ。そしてその辛さに気づいた摩魅に誘われ、セックスに至ったのである。
「あの日の大樹は強い欲情に囚われていましたが、それには理由があるんです。大樹の体の中には、ある特殊な物が隠されています。その物の力が強まると、どうしても性的な意識が強まる状態になってしまうんです」
「な、何それ……?」
 訳が分からなかった。
 自分の体の中に隠されている物がある? 異物が混入している感覚など無いのだが、あるというのはどういう事なのだろう。
「それは実体があるものではないんです。だから実感は無いと思います。だけど確かに大樹の中に存在していて影響を与えています。欲情してしまうのはその物の特質ですから、無くす事が出来ない副作用なんです。そのせいで大樹には辛い想いをさせてしまいました。ごめんなさい」
「何で摩魅姉さんが謝るのさ。別に摩魅姉さんのせいじゃないだろ?」
「お姉さんのせいなんです。何しろその物を大樹の体に入れたのは、お姉さんですから」
「え……?」
 その言葉に固まる。一体どういう事なのか。
「詳しくは後で別の方が説明してくれます。今日はその橋渡しをするためにここへ呼んだんですよ。そして、大樹を利用してしまった事への謝罪をするために……」
 辛そうな顔をして告げてくるのに、どうしたらいいのかと困ってしまう。摩魅のせいだとは思えないことで謝られても困惑するだけだからだ。
「大樹の中に入っているのは、鍵です。とても大切な役割を持つ鍵……それをお姉さんは大樹の中に入れました。そのせいで大樹が苦しむことは分かってましたから本当は嫌でしたが、多くの人の幸せがかかっている物ですから、一番信頼出来る人の中へ入れるべきだと考えたんです。お姉さんにとって、大樹ほど信頼できる人はいませんからね」
 その言葉に嬉しくなる。よく分からない内容だが、信頼してくれた結果なのだという事だけは分かったからだ。
「鍵は、その存在自体に強い力があります。そして鍵が本来の力を発揮する状況が性的な場であるため、鍵の力が強まると、必然的に鍵の所有者の性欲も高まってしまうんです。大樹があの日おかしくなったのは、鍵の力が急激に強まったせいなんです。おそらく琳霞さまの舞の影響でしょう。あの方の舞にはそうした力がありますから」
 不意に琳霞の名前が出たため動揺する。この話には琳霞も関わっているのだろうか。
「これまで鍵の調整は、大樹に気づかれないよう、少しずつしてました。でもあの日はあまりに急激な変化だったので、通常のやり方では足りなくて、直接接触する形で行うしかなかったんです。お姉さんが大樹に抱かれたのは、そういう理由なんですよ」
「え? 何で鍵の、その調整ってのに、摩魅姉さんが抱かれる必要があるの?」
「先ほども言いましたけど、鍵が本来の力を発揮するのは性的な場です。簡単に言えばセックスしている時なんです。鍵というのは、男性器の中に入っているものですから」
「ええっ? お、俺のここに、そんなのが……入ってるっての?」
 思わず自身の股間を見つめてしまう。
「はい。だから大規模な調整をするとなると、大樹の性器をお姉さんの性器の中に入れる必要があるんです。お姉さんの性器には、鍵を調整するための力がありますから」
 そうは言われても納得できる事ではなかった。何しろ見えないのでは認識出来ないし、さらにその調整をセックスの最中にしたというのは、余計訳が分からなかった。
「大樹には、鍵の所有者としての使命を果たして欲しいんです」
「使命?」
「ええ。ある儀式をしてもらいたいんです。そのためにこれからある方と逢ってもらいます。全てはその方に聞いて下さい。その結果、大変な事になると思いますけど、大樹なら必ず乗り越えてくれると信じてます」
 昔から見慣れた、温かく優しい目で見つめられるのに心地良さと安堵を覚える。大樹にとって摩魅のそうした視線は、何物にも代え難い大切なものだった。
 未だに訳が分からなかったが、この世で最も信頼できる摩魅の言うことであれば、何でも受け入れることが出来た。
「何だか分からないけど、取り敢えず頑張ってみるよ」
「ありがとうございます。そしてごめんなさい。本当は大樹にこんな事をさせたくはなかったです。お姉さんがいつまでも守ってあげたかった。そう出来ない自分が情けないです……」
「よく分からないけど、俺が何かすれば摩魅姉さんは助かるんでしょ? だったら俺は全然構わないよ。摩魅姉さんを助けられるなんて嬉しいもん」
「大樹……」
 摩魅は困ったように、そして嬉しそうに俯いている。
 その表情は実に美しく、また可愛らしく、大樹は摩魅こそが自分にとって絶対的な存在なのだと確信を持った。
「それでは、これから儀式の行われる場所へ連れて行きます。頑張って下さいね。お姉さんは大樹を信じてますから」
「うん、俺も摩魅姉さんを信じてるよ。だから頑張るさ」
 正直なところ、何を頑張ればいいのか未ださっぱり分からなかったが、摩魅が頑張って欲しいのであれば頑張るのみだ。
 大樹はそう強く思うと、どこか誇らしげに自分を見てくれている摩魅の様子に嬉しさを覚えながら、力強く立ち上がるのだった。


 摩魅に連れて行かれたのは神社だった。
 儀式を行う、と言っていたためそうなのではないかと予想はしていたが、どんどん奥へと入っていくのには驚いてしまった。何しろそこは、神社の中でも限られた人間しか入ることが許されていない区画だったからだ。
 かなり奥まで連れて行かれた後、小さな薄暗い部屋へ入ると、摩魅は「ここで待っていて下さい」と言い残して行ってしまった。
 何やら取り残された寂しさと、慣れない場所、しかも自分が来てはいけないと思える場所に居る事に、強い緊張が起きてくる。
 そしてそれとは別に、この部屋へ入ってから妙な感覚を覚えていた。
 常に何かが体に触れているような、ゾッとした嫌悪感があったのだ。
 例えるなら、ホラー映画を観た後に暗闇に恐ろしさを覚える感じ、と言ったらいいだろうか。すぐ傍に、得たいの知れない何かが潜んでいる感覚。そういった本能的な恐怖を抱かせる雰囲気が、この部屋にはあったのである。
(何なんだよこれ?……何でこんな……)
 落ち着かず、周囲にチラチラと視線を向けてしまう。
 だがいくら見回してみても、特に変わったものは存在しなかった。
 ゆえに気のせいだと思いたいのだが、そうは出来ないほどに感覚が違和感を主張していた。
(摩魅姉さん……)
 怖くなったせいか、摩魅の事を意識してしまう。
 自分を絶対的に庇護してくれる存在であり、そしてそれゆえに依存している相手である事から、どうしてもそうなってしまうのだ。
 摩魅に抱き締めてもらえば、この恐ろしさも消えて無くなるだろう。
 そうした強い確信から、脳裏に優しい笑顔が浮かび、抱き締めてもらった際の柔らかな肉体の感触が蘇ってくる。
 すると先日味わった性的な記憶と快感までもが蘇り、股間の一物が硬く大きくなっていった。
 白く美しい裸身と、吸い込まれるような肉の感触。
 こちらの与える刺激に反応し、喘ぎ悶えるいやらしい姿。
 普段からは想像出来ない女としての淫靡な様。
 摩魅を支配している、己の物としている男としての悦びが心と体を包み込み、快楽で一杯になったあの夜の思い出……。
 次々と押し寄せてくる実感を伴った淫猥な記憶の渦に、大樹は溺れていきそうになった。
 こんな時に何を考えているのだ、と思い、慌てて意識を戻そうとするが、どうしても抗うことが出来ず、その淫らな記憶と感触に流されていってしまう。
 股間の一物は痛いほどに勃起し、ビクンビクンと震え、すぐにでも精を放出させろと訴えているかのようだった。
 異常なまでに肉欲が昂ぶり、心も体もそれに包まれているのが分かる。
 その一方、恐ろしさも残っていたため、恐怖から逃れる意味からも、摩魅という絶対的庇護者に包まれたいとする意識が働いていた。
 恐怖と快楽。
 その相反するはずの感覚が、今大樹の興奮を高めていた。
 訳の分からない状態に困惑しつつ、湧き起こってくる肉欲を抑えられず落ち着きが無くなっていく。
(!……)
 不意に部屋の襖が開いたため、ビクッと体を震わせてしまう。
 慌てて視線を向けた瞬間、あまりに予想外な人物が登場した事に硬直する。
 ここは神社なのだから、居ておかしくないのだが、まさか自分が会うのがその人物だとは思ってもみなかったからだ。
(り、琳霞さま……何で……?)
 部屋へ入ってきたのは、この神社の主であり、村において尊崇の対象とされている、巫女の琳霞だった。
 白衣に紅い袴を身につけた、舞の際に見るのと同じ服装であり、違うのは髪飾りが簡易な物になっている点くらいだろう。
 美しい顔がこちらへ向けられ、澄んだ黒々とした瞳がジッと見つめてくる。
 まるで全てを見透かされるような視線に目をそらしたくなったが、それ以上にもっと見ていたいという想いが強まったため、そのまま凝視し続けた。
「お待たせいたしました」
 風鈴の音のような心地良い、か細い声が耳に響き、軽く頭を下げたことで膝の辺りまである美しい黒髪がサラサラと動いた。
 抱き締めたら折れてしまいそうな華奢な体と、それに不似合いな胸元の大きな膨らみに心臓が強く跳ね、股間の一物が反応を示すのを抑えられない。
 ただでさえ強まっていた肉欲がさらに強まり、それまでの妄想と異なって、目の前に生の女体がある状況に、おかしくなりそうな衝動を覚えた。
 今すぐにでも琳霞を押し倒し、その可憐な肉体の中に肉棒を突き込みたくてたまらなくなっている。
 神聖な琳霞相手に何という反応をしているのだろうと抑えようとするのだが、呼吸は乱れ、体は震えまくり、落ち着きはどんどん失われていった。
 これはあの日、舞を見た時と同じだった。恐ろしいまでに欲情がたぎり、歩美や摩魅を襲いたくなったあの時と……。
 このままでは琳霞を押し倒しかねなかった。神聖な、村における尊崇の対象を犯すなど、あまりに畏れ多い大罪だったが、それをしかねない状態になっているのだ。
 早くここから去らなければ、自分は取り返しの付かないことをしてしまうだろう。
 シャンっ……。
 不意に鈴の音が響き、それを聞いた瞬間、力が抜けるのを覚えた。
 驚いた事に肉欲が薄らいだのが分かる。先ほどまでの興奮が嘘のように、落ち着いてきているのだ。一体何がどうなっているのだろう。
 呆然としていると、琳霞が部屋の中央へ進み、大樹の正面まで来ると腰を下ろした。
 そして床に三つ指を突き、深々と頭を下げてきたため、こちらも慌てて平伏する。
 これまでずっと頭を上げたまま見ていたのはあまりに非礼な行為であったため、大丈夫だろうかと不安になった。
「此度はまことに申し訳ありませんでした。村のためとはいえ、あなたには多大なご負担をおかけしてしまいました」
 いきなり琳霞に謝られたため、どうすればいいのかと訳が分からなくなった。
「いえ、その……とんでもないです……」
 取り敢えずそれだけ口にし、頭を床に擦り付けるようにする。
「これからあなたには、ある儀式に参加していただく訳ですが、その儀式についての説明を、わたくしからさせていただきます。顔を上げて下さい」
 そう言われて少し視線を向けると、さらに手で促されたため、ゆっくりと頭を上げる。
 琳霞はその様子に頷くと、真剣な眼差しでこちらを見つめてきた。
 体全体からオーラのようなものが感じられ、舞を見ている際に存在する神秘的な雰囲気が起きているのに動揺する。
「儀式は、封印に関することです。ゆえに封印について知っておく必要があります。これからわたくしが語るのは、公にはされていない、ごく少数の者しか知らぬことです。それを覚えておいて下さい」
 つまり口外するなという事だろうか。儀式などという格式張った行為に参加する以上、そういった事があるのは分かっていたため、大樹は黙って頷いた。
「摩那賀村には、一つの言い伝えがあります。虞和蛇神の封印に関することです……『その昔、村には摩那賀神と虞和蛇神という姉弟の神が居た。ある日のこと、弟神の虞和蛇神は、人々を悪行へと導くようになり、村人の心は乱れ、悪行を成す者が村に溢れた。人々は嘆き悲しみ、自らの意思では抑えられない悪行への衝動を恐れる日々が続いた。その状況を憂えた姉神の摩那賀神は、弟神の虞和蛇神を封印し、人々を救った。それ以来、村人は村の名を摩那賀村とし、摩那賀神を祭っていった。摩那賀神の力により、村は栄華を得ることとなり、村人は幸せに暮らしていくことが出来るようになった』……こうしたものですね」
 その話は幼い頃から何度も聞かされたものであるためよく知っていた。
 もっと詳しく語るならば、摩那賀神に助けを願い出た一人の少女がいて、その少女が後に巫女となり、封印を守っていくのだ。
「封印は、一人の少女の体に錠前を施すことで行われました。それが巫女です。封印とは、巫女そのものにされている物なのです」
 それは初耳だった。巫女自身が封印になっているという話は聞いたことが無かったからだ。
「そして百年ごとに封印を施し直す必要があり、それが封印の儀式と呼ばれているものです」
 その話は知っていた。形式的には毎年行われており、封印の錠前に見立てた大きな古い錠前に、鍵を刺して回すのだ。
 今年はちょうど前回の封印の儀式から百年経っていたため、正式なものとなるのだが、どういった事をするのだろう。
「封印の儀式には、封印の鍵が不可欠です。そしてあなたは鍵の適性者。ゆえに本日お呼びしたのです」
 いきなり話が自分のことになったため慌てる。先ほど摩魅に鍵を持つ存在だと言われてはいたが、巫女である琳霞に言われると、かなり違和感を覚えたからだ。
「いきなりの事で驚かれたでしょう。ですから堅苦しい話はひとまず置いておくことにいたします。あなたとは、儀式の事とは別にお話をしたいですから」
 不意に琳霞が微笑みながらそう告げてきた。
 それまで存在した神秘的なオーラが弱まり、そのせいか体から力が抜けたため、思わず大きく息を吐き出してしまう。
「改めまして、お久しぶりでございます。幼い頃にお会いしたこと、覚えていらっしゃいますか?」
 忘れるはずが無かった。大樹にとり、あの時のことは強烈な記憶として残っていたからだ。歩美と共に神社の奥へ迷い込み、偶然琳霞と出会ったのである。
「覚えています。畏れ多くも、巫女さまとお話をさせていただきました」
「ふふ、そのような堅苦しい物言いはされなくて宜しいですよ。もっと楽にして下さい。わたくしの事も、どうぞ琳霞とお呼び下さい。わたくしも、大樹さん、とお呼びしますので」
「あ、はい……じゃあ、その、琳霞さま……」
 琳霞に名前を呼ばれたことに動揺しつつ、こちらも名前で呼んでみる。普段琳霞の話をする際はそうしているものの、本人に対してするとなると恥ずかしかった。顔が少し熱くなっていたため、赤くなっていないかと気になる。
「大樹さん達は突然現れ、わたくしを賑やかさ、楽しさの中に引き込んで下さいました。あのような充実した時間は初めてのことでした。あの時一緒だった歩美さんとは、今も仲良くされているのでしょう?」
「はい、仲良くしています」
「羨ましいことです。わたくしは、大樹さん達と知り合えても、一緒に過ごすことを許されません。ゆえにあの時のことだけが唯一の思い出です。大樹さん達と過ごしたひとときは、何物にも代え難い素晴らしい時間でした……」
 目を瞑り、思い出に浸るようにしている琳霞に居心地の悪さを覚える。自分達の自由さに比べ、琳霞は友人を作ることも、遊ぶことも許されていない立場である事が意識されたからだ。
「歩美さんとは、恋人になられたのですか?」
「いえ、なっていません。友達です」
「そうですか。とても仲が良ろしかったですから、今頃はそうした関係になられているのかと思っていたのですが」
 急に下世話なことを尋ねてくるのを意外に思う。神秘的な巫女とはいえ、やはり年頃であるから、そうした事に興味があるのだろうか。そう考えると何だか身近に感じられて嬉しくなった。
「歩美は姉弟みたいなものですからね。恋愛感情なんてのは起きないような気がします。あいつも同じなんじゃないかな」
「そうですか。ではわたくしが大樹さんの恋人に立候補しても、問題はありませんね?」
「え……?」
 あまりに予想外な発言に心臓が跳ねる。まさか琳霞は自分に気があるのだろうか。だとしたら嬉しすぎることだった。
 しかしまともに逢うのは二回目でしかなく、どちらも凄く短い時間でしかないのに、そのような事があり得るだろうか。いや、一目惚れされたと考えれば可能性が無い訳ではなかった。先ほど幼い頃に逢った時の事を大切に思っていると言っていたではないか。ならばそうなっていてもおかしくはないだろう。
「ふふ、冗談です……」
 物凄い勢いで素晴らしい可能性を模索していた大樹は、その一言でガックリとなった。何とも強烈な肩すかしだ。
「わたくしの事を意識して下さいましたか? 巫女ではなく、一人の女の子としてのわたくしを……わたくしを見て下さい。ただの女の子であるわたくしを……幼い頃、新しい友人として扱って下さった、ただの女の子として遊んで下さった、あの時のように……」
 琳霞は少し寂しげな笑顔を浮かべると、ジッとこちらを見つめている。
 確かに大樹は琳霞を「巫女さま」として意識していた。それはこの村で育った人間であれば自然な事であったが、琳霞はそうではなく、一人の人間として見て、接して欲しいと望んでいるらしい。
「分かりました。琳霞さまを一人の女の子として見ます」
「ありがとうございます」
 嬉しそうに笑みを浮かべる琳霞の姿に心臓が強く鼓動する。何と可憐で麗しい少女なのだろう。このような少女を己の物に出来たらどんなに素晴らしいことか。
「こちらへ、いらして下さい」
 不意に琳霞はそう告げると立ち上がり、背後の襖を開いて隣室へ来るよう促した。
 視線を向ければ、そこには布団が敷かれてあったためギョッとなる。
 まるで琳霞が誘っているとしか思えないこの状況は一体何なのか。
 さほど親しい訳でもない間柄、しかも巫女という立場のある琳霞が、このような事をしてくるはずもない、と分かってはいるのだが、あまりに都合の良すぎる展開に、歓喜しているのも否めなかった。
 このままこの素晴らしい少女を、抱いてしまう事が出来るのだろうか。
 そのあり得ない状況に疑惑の念を抱きつつも、是非ともそうしたい、いや、強引にでもそうすべきだ、と欲する想いが起こっていた。
 琳霞は布団の傍まで移動すると正座し、こちらへ三つ指を突いて頭を下げた。大樹も慌てて腰を下ろして平伏する。
「これより儀式を始めさせていただきます」
「え……?」
 突然儀式と言われたため混乱する。いや、儀式のために来ていたのだから、何もおかしくない事なのだが、琳霞を抱くことばかりに意識が向いていたせいで意表を突かれたのだ。
「こちらにある石は、封印の石です。虞和蛇神が封印されていると伝えられております」
 そう言われて示された方向へ目をやると、琳霞の背後に、祭具によって装飾されたサッカーボール大の丸い石が置かれてあった。
(!……)
 意識を向けた途端、クラッとするような衝撃を覚え、一瞬目の前が真っ暗になる。
「お気を付け下さい。封印されているとはいえ、虞和蛇神は人を惑わす力を持つ神です。意識を向けすぎると自我が薄れてしまいます。特に大樹さんは封印の鍵の所有者。虞和蛇神の影響を受けやすいですから」
 その言葉に慌てて視線をそらし、別の事を考えると意識がハッキリしていった。
 それにしても、虞和蛇神が封印されている石とは驚いた。封印自体は言い伝えで何度も聞いていたが、そのような物があるとは知らなかったからだ。
 とはいえ、普通であればそうした来歴があるだけの、ただの石としてしか認識しないだろう。しかし今そこにある石は、確実に異常だった。
 何しろ強烈な存在感があったし、部屋へ入ってから感じていた得体の知れないモノに対する本能的な恐怖は、その石から伝わってきているように思えたからだ。
「数百年もの間、封印は問題なく行われてきました。しかしここ数年、封印はその力を弱めてきているのです。そのため新たな封印を施す事となり、その儀式のために大樹さんの協力が必要になったのです」
「俺の協力……?」
「はい。此度の儀式は、大樹さんの体内にある封印の鍵が必要なのです。色々と不審な点もありますでしょうが、どうぞわたくし達を信頼下さって、儀式に協力下さいますよう、お願い申し上げます」
 そう言いながら深々と頭を下げられては断る事は出来なかった。
 摩那賀村に生まれ育った人間であれば、巫女は絶対的な存在であったし、琳霞個人に対しても憧れ以上の想いを抱いている大樹にしてみれば、従うしか選択肢が無かったからだ。
「分かりました。協力します」
「ありがとうございます」
 大樹の言葉に、琳霞は嬉しそうに微笑んだ。
 そして不意に顔を赤らめると、モジモジと恥ずかしそうに体を揺らし始めた。
「わたくしはその、このような状況は初めてなので、いささか動揺しております……神聖な儀式に世俗的な発想をし、羞恥心を抱くなど本来あってはならぬこと。己の未熟さを痛感いたします……」
 世俗的な発想というのは、セックスの事だろうか。男女が布団の敷かれた部屋で二人きりとなれば、そう連想するのが普通だからだ。
 巫女とはいえ、琳霞も年頃だけにそんな発想をするのだと思うと身近に感じられ、それと共に「性的に意識されている」と認識した事で興奮が高まった。
 しかしこのような状況で行う儀式とは何なのだろう? 普通であればセックスな訳だが、琳霞の言葉からすると別のことのようにも思えたため分からなかった。
「ふつつか者ではございますが、どうぞ宜しくお願いいたします……」
 そう言いながら深々と頭を下げてきたのにドキリとする。
 まるで新婚初夜のような態度と発言をされてはたまらなかった。そうでなくとも興奮しているというのに。
 そんな風に思った瞬間、ゾクッとするような快感が体に走り抜け、肉棒が強く反応を示した。弱まっていた肉欲が再び高まってきたのだ。
(!……)
 不意に何かが絡みついてきたような感触が起きたため、その生理的嫌悪感に体が震え出す。
 例えるなら、大きな蛇が肌の上を這いずっている感じ、と言ったら良いだろうか。そうした気色の悪い感触に体全体が覆われ始めたのだ。
 それと同時に股間の一物が硬く大きくなり、先ほどと同じく抑えられない衝動が押し寄せ、ドクンドクンっと心臓の音が大きく響き、落ち着かない意識に包まれる。
 目の前に座る琳霞の姿に欲情が高まり、今すぐにでも押し倒したい欲求で一杯になっていく。
(俺、琳霞さまにエッチなことしたくなってる……そんなのいけないのに……いけないのに……いけないんだけどしたいっ……)
 神聖な巫女に対し、いやらしい想いを抱いているなど不敬な行為だったが、だからこそ強い肉欲を覚えてしまってもいた。
 神聖ゆえに犯したい。可憐な少女ゆえに淫らにさせたい。
 そうした美しいものを汚したいと欲する荒々しい衝動が、大樹の中で爆発しそうな状態になっていた。体が震え、今すぐにでも目の前の美しい少女を押し倒し、その肉体にむしゃぶりつきたいとする、恐ろしいまでの肉欲が湧き起こっていたのである。
(駄目だ、抑えないと……琳霞さまに何かしたら、大変なことになっちゃう……)
 自分を案内してきた摩魅に迷惑をかけてしまうだろう。いや、それ以上に大問題になり、村に住めなくなるのは確実だった。というより、そもそも強姦ともなれば犯罪なのだから、警察に捕まってしまうのだ。
 そんな恐ろしいことは出来るはずがなかった。出来るはずがないのだが、湧き起こってくる肉欲は、お構いなしに目の前の少女を犯せと要求していた。
(したい……したい……琳霞さまとエッチが、したい……この素晴らしい体を抱き締めて、揉みしだいて、舐め回して、吸い付いて、チンポを押し込んで擦りあげたい……)
 摩魅の肉体を貪った記憶が蘇り、魅力的な女体を好き放題しまくった悦びが、心と体を包み込んでいく。
 柔らかで気持ちのいい女の体。
 それは忘れられない魅惑的なものだった。
 何より目の前の少女は、本来自分などが触れられるはずもない神聖な巫女であり、今を逃したら二度と抱けることなどないだろう。
 ならばこの機会を逃す訳にはいかなかった。今すぐにでも押し倒し、その可憐な肉体を己の物とするのだ。
 強烈な所有欲が湧き起こり、爆発しそうな肉欲と共に頭をクラクラさせ、意識を朦朧とさせていく。
 股間の一物が痛いほどに勃起し、ビクンビクンと脈打って、精を放出させろと主張しているのが認識出来る。
 ぼんやりとした視界の中で、麗しい容姿をした少女の姿が目に映り、その白く美しい顔がこちらへ向けられているのが見えた。
 布団の傍に座る、可憐な美少女巫女。
 頬を赤く染め、目をあらぬ方向へ向け、時折こちらを見ては恥ずかしそうにそらしている。
 先ほどまで感じられた神秘的なオーラは鳴りを潜め、ただの一人の少女がそこには鎮座していた。
 しかしそうであっても感じられる神秘的な印象は、この少女が稀少な存在であり、手を出すなど畏れ多い高嶺の花である事を意識させ、その汚れのない肉体を犯し貪りたいとする強烈な欲求が生まれていた。
 大樹の自制心は、あっという間に消え去っていった。
「琳霞さまっ……」
 体を震わせながら勢い良く膝立ちになると、琳霞に抱き付いていく。
「あ……」
 か細い声を上げるものの、全く抵抗してこないのをいいことに、そのまま強く抱き締める。
(や、柔らかい……気持ちいぃ……)
 華奢でありながら、予想以上に肉の感触があるのに驚きつつ、その心地良さにうっとりとなる。
 可憐な顔が眼前に迫り、黒々とした瞳にジッと見つめられるのに心臓が強く鼓動していく。
 桜色をした小さな唇が半開きになっているのに色気を覚え、そのプックリとした肉付きに強い肉欲が湧き起こった。
(綺麗だ……それに何かエッチで、たまんない……)
 憧れの琳霞を抱き締めていることに強い満足と興奮を覚えつつ、美麗な唇にむしゃぶりついていく。
 フニっとした感触が感じられ、少し震えているのが感じられると、初々しさを覚えて呼吸が荒くなった。
 細い体を強く抱き締め、貪るようにして唇を擦り合わせ、舌を押し込んでいく。
「んっ……んんっ……んふっ……」
 鼻から可愛らしい吐息が漏れるのに興奮しつつ、奥の方で縮こまっている舌に吸い付いてから、荒々しく絡ませて口内を舐め回す。
 背中におずおずと回された手に力が入り、強く引き寄せられるのに嬉しさを覚える。体の前面に女肉の感触が広がり、それを味わうようにして体を擦り付けていく。
 ゆっくりと布団の上に押し倒し、のし掛かる状態になりながら唇を放すと、唾液が糸を引いたため、いやらしさを覚えた。
 琳霞はボーッとした様子であらぬ方向を見つめており、顎が仰け反っていて白い喉が見えるのにゴクリと唾を飲み込む。
 可憐な巫女の白い首筋には、清らかな色気を感じさせるものがあり、その様子に興奮を高めた大樹は、顎に舌を這わし、舐め、吸い付いていった。
「あ……やぁ……」
 擦れた声が漏れるのに愛らしさといやらしさを感じつつ、首全体をベロベロと舐め回しながら、右手を胸元の膨らみへと触れさせる。
 フニュリといった感触と共に、白衣越しに膨らみがへこむのが感じられ、今自分が琳霞の乳房を掴んでいるのだという実感を得た。
(琳霞さまの、おっぱい……)
 憧れの、神聖な巫女の乳房を手にしたのだという事実に、おかしくなりそうなほどの興奮を覚えた。
「あ……」
 そのまま手に力を入れ、指を食い込ませると、琳霞が可愛らしい吐息を漏らしたため、その事に心臓が跳ね上がる。
 続けてフニフニと揉みしだくと、柔らかな感触が手のひらに溢れ、その心地良さに幸せな想いに包まれていく。
(おっぱい……琳霞さまのおっぱい……琳霞さまのおっぱい見たい……)
 鼻息を荒くしながら体を起こし、白衣の合わせをグイッと開くと、形のいい肉の膨らみが零れ出た。
 あまり外出していないせいだろう、日焼けしていない、透き通るほどに白い肌をした上半身が顕わになり、胸元の柔らかい膨らみに目が釘付けになる。
 真っ白な双乳の頂点には、桜色をした突起が可愛らしく鎮座し、そのプクンっとした形は、美しくもいやらしさを感じさせた。
 憧れの、神聖な琳霞の乳房を見たことに感動の震えが起き、その予想以上に綺麗な造形と色合いに、肉欲だけでなく芸術的な素晴らしさも覚えた。
「あ……やぁ……」
 手に余るほどの大きさの双乳を両手で鷲掴みにし、強く握り締めると、琳霞がピクっと体を震わせ、甘い吐息を漏らすのに興奮が高まっていく。
 そのまま回すようにして揉みしだくと、心地良い弾力が押し寄せ、形がムニュムニュと歪むのに嬉しさを覚える。
(たまんね……琳霞さまのおっぱい……おっぱいスゲェ……)
 可憐な美少女の魅惑的な乳房を自由にしている事に、落ち着かない衝動が湧き起こり、もっともっと色々したくてたまらなくなった。
「あんっ……やっ、はぅ……」
 衝動に押されるまま乳首に吸い付くと、琳霞が体をガクガクと震わせ、それまで以上に甘い声をあげた。
 柔らかい乳房とは異なって硬めの感触のある乳首は、口に含むと独特の良さがあり、チュパチュパと吸うのを止められない。
 突起を回すようにして舐め、何度か強く吸い付いた後、今度は弾くようにして舐めていくと、琳霞がピクピクと体を震わせながら、「あっ、あっ……」と可愛らしく喘ぐのに、おかしくなりそうなほどの興奮を覚えた。
(琳霞さまがエッチだ……スゲェたまんね……)
 白衣をはだけ、美麗な双乳を晒して快楽の吐息を漏らす琳霞は実にいやらしかった。
 潤んだ瞳でこちらを見つめ、白い頬を上気させている様には、普段の巫女としての姿からは想像できない色気に満ちた雰囲気があった。
「今度は、こっちを見せて下さい……」
 そう呼びかけながら下半身へ移動し、袴を捲り上げて太ももを丸出しにする。
「やぁ……」
 その途端、琳霞が恥ずかしそうに両手で顔を覆ったため、その可愛らしい仕草に興奮が高まった。
 白く美しい脚が目に映り、その肉付きの良い太ももの様子に、口の中に唾液が湧き起こる。
 片脚を持ち上げ、太ももに吸い付いてベロベロと舐め回し、顔を両脚で挟むようにして頬ずりすると、滑らかな感触が広がってたまらなかった。
(琳霞さまの脚……太もも……スベスベだぁ……最高だよ……)
 膝から付け根辺りまで舌を這わし、チュッチュッと軽く吸い付きつつ、肉を甘噛みしながら貪っていく。
「あっ……やぁっ……そんな、あっ……」
 顔を真っ赤にし、恥ずかしげに頭を左右に振る琳霞の姿は、実にそそるものがあった。清楚なイメージがあるだけに、そうした快感に反応する姿は、いけない事をしているようでたまらないのだ。
 実際神聖な巫女の脚をさらけ出し、舐め回しているのだから、とんでもない不敬行為だろう。だがそれゆえに凄まじい興奮があるのも確かだった。
 そしてこれから自分は、もっと許されない行為をするのだ。
(いよいよここを……見る……)
 最後の砦とも言うべきパンティに手をかけ、ゆっくりと引き下ろしていく。
 琳霞の手が一瞬止めるように伸びてきたが、途中でそれが停止した事で、受け入れてくれているのだと理解して嬉しくなった。
 何故自分にここまで許してくれるのか分からなかったが、このような機会など二度とないのだから、最後までするしかないだろう。この事が公になれば、ただでは済まないという想いもあったが、それゆえに燃え上がってしまっている部分もあり、止まることが出来なくなっていた。
(これが……琳霞さまの……)
 両脚を左右に開くと、ピンク色をした襞が丸見えになった。
「恥ずかしいですぅ……」というか細い声が可愛らしく耳に響き、秘所の初々しさと相まって、これから自分がこの可憐な少女を汚すのだという歪んだ悦びを覚えた。
「あっ……そんな、あっ……駄目です、ああっ……そんな所を舐めては、やぁんっ……」
 襞に舌を這わせると、甘い吐息を漏らして逃げるように動いたため、それを抑え付けながらさらに舐めていく。
「あんっ……そこをそんな、やぁっ……そんなの、ああっ……そんなのいけませんっ……」
 プクンっとした突起に舌を寄せ、吸い付くようにしていくと、琳霞はガクガクと体を震わせ、勢い良く頭を仰け反らせた。
 初めて体験しているだろう性器への愛撫に、敏感に反応を示す姿が実に可愛らしくもそそる。
 そのまま何度も刺激を与え、その度に琳霞が激しく体を震わせ、喘ぐのを楽しみながら、秘所から愛液が垂れていくのを眺める。
(琳霞さま……こんなエッチになってる……)
 一旦体を起こし、自分が組み敷いている少女を見下ろすと、荒い呼吸をしながら、虚ろな顔で脱力している姿が目に映った。
 それはこれまで見たことのない、神聖な巫女の、あまりに淫らな姿だった。
 そうさせたのは自分なのだと思うと、誇らしさを感じると共に恐怖も覚える。
 もうすでに取り返しの付かない行為をしてしまっていたが、これから自分がしようとしているのは、さらに決定的な事だった。
 これをしたら、もう後には引けなくなってしまう。誤魔化しも効かないだろう。
 だがしない訳にはいかなかった。もしこの清楚可憐で美しい、神聖な巫女である琳霞を抱かずに終わらせたら、自分は狂ってしまうに違いないからだ。
 肉棒を押し込み、擦り、白くドロドロとした精液を注ぎ込まずには居られなかった。
 おそらく、いや、絶対に処女である琳霞の初めてを、自分が奪うのだ。
 そのあまりに素晴らしく、恐ろしさを伴う行為に、体が歓喜と恐怖でガタガタと震え出す。
(でも、入れたい……入れたいよ……琳霞さまの中に入れたいぃ……)
 己が入れるべき穴を見ていると、強烈に惹かれるものを感じ、体が勝手に動いて細い両脚を開き、間に腰を入れてから肉棒を取り出して手に掴む。
 挿入の体勢が完了し、後は腰を前に押し出すだけの状態になった大樹は、大きく息を吐き出した。
「琳霞さま……入れます……入れますから……」
 覆い被さるようにしながら告げると、快楽に朦朧としている琳霞の瞳が意思の光を見せ、小さくコクリと頷いた。
 受け入れてもらえた。
 その事は凄まじい喜びとなり、歓喜の渦となって体を動かしていく。
 ズブリ……。
 亀頭が膣穴にハマった感触が起きると共に、股間に快楽の刺激が走り抜ける。
 肉棒に膣襞が絡みつき、吸い付き、蕩けるような快感を与えてくるのに頭を仰け反らせる。
「あっ……いぅっ……」
 そのまま奥へ押し込んでいくと、琳霞が苦悶の声を漏らし、体を硬直させるのに、処女膜を破るのだと認識した。
 やはり初めてだった。
 琳霞は処女だったのだ。
 初体験の相手は自分なのである。
 そう思うと、強烈な誇らしさと支配欲が湧き起こり、肉棒がさらに猛った。
 この可憐で美しく、神聖な巫女の少女を、今自分は己の物としたのだ。
 それは信じられないほどの悦びとなって、大樹の心と体を包み込んでいった。
「いっ……痛っ……」
 ズブズブと肉棒を押し込んでいくと、琳霞が体を硬直させて苦痛の声をあげた。
 その様子に申し訳なさを覚えるものの、押し寄せてくる快感には抗しきれず、一気に奥まで入れてしまう。
 全ての肉棒が収まったのを確認し、一旦動きを止めて大きく息を吐き出す。
(俺……琳霞さまの中に、入ってる……)
 体を起こして結合部分を見ると、綺麗なピンク色の襞を押しのけ、肉棒が埋まっているのが見えた。それはまさに、美しい肢体を陵辱する、汚らわしい物体という感じだった。
 自分は今、神聖な巫女と繋がっているのだ。犯してはならない神聖な巫女である琳霞の中に、肉棒を押し込んでいるのである。
 それは巫女に対して強い尊崇の念を抱くよう育っている摩那賀村の住人にとり、強烈な罪悪感を呼び起こす状況だった。今大樹の中では、「とんでもない事をしてしまった」という恐怖の嵐が荒れ狂っていた。
 その一方、その許されざる行為をしている事に対し、それ以上の甘美な背徳的快感を覚えているのも確かだった。
 絶対に手を出してはならない、犯してはならない巫女を、今自分は陵辱しているのだ。村の守護神に仕える清らかな巫女を、淫猥な肉棒で貫き、苦悶の吐息を漏らさせているのである。
 それは、おかしくなりそうなほどの悦びを感じさせる状況だった。
(たまんね……最高だよ……琳霞さまを……あの琳霞さまを俺が汚してる……)
 視線を下へ向ければ、悩ましげに眉根を寄せ、涙ぐんだ瞳でこちらを見上げている美しい顔が見えた。
 白衣をはだけ、美麗な乳房をさらし、紅い袴を捲り上げられて陰部を丸出しにしているその姿は、普段の清らかで神秘的な巫女の姿からは想像できない、あまりに淫靡で淫らなものだった。
 見ているだけで精を漏らしそうになるほどの、禁忌な背徳的快楽がそこにはあり、歓喜の叫びを上げたくなるほどに、落ち着かない衝動が押し寄せてくる。
(それに、スゲェ気持ちいぃ……チンポが蕩けそうだ……)
 膣内に入った肉棒は、周囲の柔肉に包まれ、襞に覆われ、ジッとしていてもウニュウニュと嬲られ、吸い付かれ、もうそれだけで射精してしまいそうなほどに追い詰められていた。
 摩魅の時にも似たような感覚を味わったが、それも何度か抱く内に慣れたはずだった。
 しかし今の自分は、まるで初めての時に戻ったかのように、恐ろしいまでの甘美な刺激に耐えがたいものを感じていた。これではすぐにでも出してしまうだろう。
「大樹さんと一つになれて……わたくしは、幸せです……」
 不意に告げられた言葉に、心が歓喜に包まれる。
 無理矢理抱いてしまった感覚があっただけに、それを受け入れるどころか、喜んでいると言われる事には、強烈な嬉しさを感じさせるものがあったのだ。
「俺も、琳霞さまと一つになれて、スゲェ幸せですっ……」
 大樹が答えると、琳霞は泣きそうな顔に笑みを浮かべ、両腕を伸ばしてきた。
 体を近づけると引き寄せられ、強く抱き締められる。
 それと同時に膣内も締まり上がったため、大樹は快楽の呻きを漏らした。
「どうぞわたくしを、存分に味わって下さいませ……わたくしの全ては、大樹さんの物です……」
 目を瞑り、全てを捧げるとして身を委ねてくるのに、強烈な悦びが起こった。
 この素晴らしい少女の全てが自分の物。
 そう考えるだけで爆発しそうなほどの衝動が湧き起こり、それに流されるまま肉棒を思いきり突き込んでいく。
「あっ……いぅっ……」
 琳霞が苦痛の声を漏らすものの、悦びで頭が一杯の大樹は止まらなかった。湧き起こってくる歓喜と肉欲をぶつけずにはいられなくなっていたのだ。
 とにかく腰を振り、肉棒を擦り付け、快楽を味わいたい。
 そうした想いを発散しようと、夢中になって腰を振っていく。
(スゲェたまんね……琳霞さまの中……最高だよ……おかしくなりそ……)
 肉棒を引くと逃がすまいと絡みつき、押すと奥へ引き込もうと吸い付いてくる。
 まるで己の全てが吸い出されるようなその感覚は、蕩けるほどにたまらなかった。
 大樹は頬をだらしなく緩め、口を半開きにして涎を垂らしながら、意識せずに腰を振りまくっていった。
 その間も琳霞の苦痛の吐息は漏れていたが、気遣う余裕なく思いきり動いてしまっているのを申し訳なく思う。だが緩めようとしても勝手に腰が勢い良く前後するのだからどうしようもなかった。
 まるで腰だけが別の生き物になってしまったかのように、意識せずとも動きまくっているのだ。そしてそれによってもたらされる快楽は、抑えようとする意思を奪うほどに強烈だったのである。
(止めらんね……だってスゲェ気持ちいいんだもん……)
 脳が蕩けるというのはこういう事ではないかと思えるほど、股間から湧き登ってくる快楽は極上だった。
 とにかく腰が動くたびに、肉棒が擦れるたびに押し寄せてくる気持ちの良さは、何をおいても求めずには居られない、強烈な執着を呼び起こすほどにたまらないものだったのだ。
 何より苦痛が原因とはいえ、琳霞が悩ましげに体を震わせ、こちらの与える刺激に反応して喘ぐ様は、精神的な悦びを呼び起こした。可憐な巫女を支配している、といった実感が得られるためだろう。
(俺、琳霞さまを好きにしてる……犯しまくってるんだ……)
 腰を突き込むたびに、胸元にある美麗な双乳がプルンプルンと揺れ、その振動が肉棒を通じて伝わってくる。
 それに合わせて可愛い唇がピクピクと震えを示し、耐え難いように頭を左右に振るのにゾクゾクとした想いを抱く。
 華奢な体に不似合いな豊満な乳房に両手を伸ばし、鷲掴んで回すように揉んでいくと、顎を仰け反らせて淫らに喘ぐのに興奮を覚える。
(スゲェ、スゲェよぉ……凄すぎるぅ……)
 村の皆が敬う巫女を、今自分は好き放題に扱っている。自分は何と凄いのか。
 恐ろしいまでの高揚と自信が、体の奥底から湧き登ってきていた。
 もう止まらなかった。とにかく無茶苦茶に琳霞を犯したかった。このままどんどん琳霞の中をえぐりたかった。
 しかし悲しいかな、経験不足の肉体はあまり保ってはくれなかった。
 ただでさえいつもより興奮しているのだから当然だろう。必死に耐えていた射精感が、いよいよ限界に近づいているのが分かった。
「琳霞さまっ……琳霞さまぁっ……」
 己の熱い想い、爆発しそうなほどの肉欲を込めて名前を叫ぶ。
 それは琳霞に対するものであったが、同時に自身へ向けてのものでもあった。
 琳霞という名の女を自分は手に入れた。これからその証を注ぎ込む。
 そうした男としての自尊心と満足感を刺激する、自身への呼びかけだったのである。
「大樹さんっ……どうぞわたくしの中にっ……わたくしの中にぃっ……」
 その想いが伝わったのか、琳霞が中へ出すよう促してくる。
 それはまるで自分の全てを受け入れてくれたように思え、精神、肉体の両方が歓喜に包まれていった。
「出るっ……琳霞さまっ……出ますぅっ、うぁっ!」
「大樹さぁんっ!」
 二人の叫びが重なった瞬間、肉棒の栓が開かれ、歓喜の迸りが弾けた。
 ドピュッ、ドピュッ、と勢い良く放出される精液の感覚と共に、強烈な快感が脳を痺れさせる。
 たまらない気持ちの良さに頬がだらしなく緩み、両手を激しく震わせて押し寄せてくる快楽に身を委ねる。
 数度の射精を繰り返した後、最後の放出を終えると脱力して倒れ込む。
 琳霞の上に重なると、柔らかくて温かな肉体が受け止めてくれ、その心地良さにうっとりとなった。
 荒い呼吸が耳に響くのを意識しながら、目の前にある美しい顔に見とれる。
 汗で髪の毛が額に張り付いているのが色っぽく、悩ましげな表情を浮かべ、満足そうな笑みを浮かべているのに嬉しさを覚えた。
(琳霞さまも……喜んでくれた……)
 男としての自尊心が刺激され、大きなことを成し遂げた達成感と充実感を覚える。
 自分はヤったのだ。琳霞とセックスしたのだ。何と素晴らしいことだろう。
 そうした幸せな想いを感じながら快楽の余韻に浸った大樹は、もう少しこうして居ようと大きく息を吐き出していくのだった。


 胡座をかいた大樹の股間で、琳霞の小さな頭が動いていた。
 周囲には脱ぎ散らかした互いの服が散らばっており、いやらしさを醸し出している。
 裸になった琳霞の肉体は実に素晴らしく、染み一つ無いその肌は、まさに雪のように真っ白だった。
 所々に大樹の付けた赤くなっている箇所があり、それが神聖な巫女を自分の物としている証に思えて最高だった。
 視線を股間へ向ければ、琳霞が桜色の小さな唇を大きく開き、血管の浮き出た醜悪な肉棒を咥えているのが見えた。
 それは美麗な少女を汚している行為に思えて、ゾクゾクとした背徳的な気持ちの良さを感じさせた。
 黒々とした瞳が肉棒を見つめ、時折長い髪をかき上げながら、ゆっくりと頭を動かしている様は実に素晴らしく、口内が微妙に動き、愛らしい舌が亀頭に絡みついて肉棒を舐めているのに興奮が増していく。
 拙い舌の動きに物足りなさを感じる時もあったが、村で尊ばれている巫女さまに己の肉棒をしゃぶらせている光景は、それを補って余るほどの強烈な精神的快感を呼び起こすものがあった。
「んんっ……んぐっ、んっ……んんぅっ……」
 亀頭に舌を絡ませ、ねっとり舐め回されていると、自分がこの可憐な少女を支配しているのだと思えて最高だった。
 綺麗な黒髪に覆われた頭を掴み、少し腰を前後させると、一瞬辛そうな表情を浮かべるものの、すぐに嬉しそうに微笑んで、自ら頭を動かしてくるのがたまらない。
 まさに大樹に奉仕するのが嬉しくて仕方がないという感じであり、その従順な姿は嗜虐心を擽り、もっと色々したくなってくる。
 普段神聖な巫女として敬っているだけに、そんな相手を従えていることに、震えるほどの悦びがあった。
「んんっ……んっ……んぐっ、んぐぅっ……」
 潤んだ瞳が上目遣いに見つめ、「これで宜しいですか?」という感じで見つめてくるのに射精感が高まっていく。
(琳霞さまの口に……俺のドロドロの精液を、注ぎ込むんだ……あの清楚で可憐な琳霞さまの口にぃ……)
 小さな頭を両手で掴み、興奮から荒々しく腰を前後させる。
 肉棒が喉に当たるのが感じられ、琳霞が苦しげに呻くのを聞きながら、口内の粘膜と、舌のザラっとした感触に擦れるのに快感を覚えていく。
 泣きそうな顔で肉棒を咥え、それでいて幸せそうな笑みを浮かべているのに、ゾクッとした快楽を覚えつつ、大樹は一気に射精しようと、それまで以上に腰の動きを速めていった。
「くっ……琳霞さまぁっ!」
「んぐっ……んっ……」
 腰を浮かせるほどに勢い良く突き込んだ瞬間、肉棒の栓を解放する。
 ドピュッ、ドピュッ……。
 放出と共に体が硬直し、甘美な快感を意識しながら震える。
 琳霞は一瞬苦しげにしたものの、ゴクンゴクンと精液を嚥下しており、その様子に美しい少女を従えている悦びが起こって幸せな気分になった。
 少しして射精を終えると、力を抜いて腰を落とす。
(ふ〜〜、気持ち良かったぁ……)
 膣内に射精するのも良かったが、こうして口に出すのも素晴らしかった。
 何より清楚な顔を歪めさせ、そこに精液を注ぎ込むという行為には、背徳的な快感があって良かった。自分のような男が、村で崇拝されている巫女を汚しているのだ。何と許されざる行為だろう。
 膝の上では脱力した琳霞が頭を乗せており、その惚けた表情は色気を感じさせてたまらなかった。
 桜色をした小さな唇が痙攣するように震え、赤い舌が覗いているのが何ともいやらしい。
 そうした様子を見ていると、再び肉棒が硬さを取り戻し、沸々とまた抱きたい想いが込み上げてくる。
「琳霞さま、次は後ろから入れますよ?」
 言葉自体は優しいが、強く引っ張って体を起こして四つんばいにさせる。
 つい乱暴にしてしまうほどに、抑えられない荒々しさが心の中で渦巻いていたからだ。
 この可憐な少女を無茶苦茶にしたい。快楽に染めて淫猥な姿にしたい。
 そうした強い想いが体を突き動かしていたのである。
「凄く濡れてますね。俺のを舐めて興奮してたんですね」
 秘所から愛液が垂れていたため、苦笑しながら告げると、琳霞の顔が真っ赤になった。耳まで赤くなっている事から、相当恥ずかしがっているらしい。
 その可愛らしい姿に肉棒を昂ぶらせながら、一気に押し込んでいく。
「あぅんっ……あっ……やっ、やぁっ……」
 すでに快感を覚えるようになった琳霞は、入れただけで甘ったるい喘ぎを漏らし、肉棒を突き込み始めると、媚びるように尻を捻った。
 腰を振るたびに小さな頭が跳ね上がり、耐えるようにシーツを握り締めるのに興奮が高まっていく。
 真っ白な背中に、長い黒髪が滝のようにかかっているのが色っぽく、華奢な腰を掴んで肉棒を叩き付けていると、爽快感が起きて最高だった。
「やっ、やぁっ……それ駄目、あっ……それ駄目ですぅっ……」
 強めに突き込むと、ビクンっと頭を仰け反らせ、泣き声混じりに喘ぐのに気持ちの良さが湧き起こった。
 そのまま同じように腰を振っていくと、琳霞は頭を激しく左右に振り、耐え難いように体を震わせた。
 美麗な少女を喘がせ悶えさせ、快楽に染めていると実に爽快だった。
 村人に尊崇の念を持たれている巫女であろうと、こうして肉棒で貫いてしまえば、そこに居るのはただの女でしかない。
 普段神聖だ、神秘的だ、などともてはやされていても、一旦男根の快楽を知ってしまえば、その要素など消え失せ、快楽を求める雌の本性が顕わになるだけだ。
「あぁんっ、あんっ、あんっ……そこ、そんなにしたら、やぅっ……凄くて、あっ……凄くて駄目ですぅっ……」
 腕をガクガク震わせ、必死に耐えるようにしているのが愛らしい。
 少しすると限界になったのか、腕を崩して上半身を布団に押しつけ、尻を掲げる姿勢になった。
 それは自分の与える快楽が、かなり強いものだという認識を持たせて嬉しさが込み上げてくる。
 そのまま尻が背中に付きそうなほどに強く突き込み、押し寄せてくる快感に浸っていく。
「やぁっ、やっ、やぁんっ……そんなの、あっ……そんなのぉ、ああっ……そんなぁっ……」
 頭を左右に激しく振り、長い黒髪を乱して悶え喘ぐ琳霞の姿は、まさに自分に夢中になった女の姿だった。
 村で敬われている巫女をここまで快楽に狂わせているとは、何と素晴らしい事だろう。
 一人の少女として考えても、可憐な美少女をここまで好きに出来ている事は、強い満足を感じさせる事だった。
「わたくしもう、ああっ……わたくしもう駄目です、あっ、ああっ……わたくしもう駄目なんですぅっ……」
 琳霞がか細い声で限界を告げ、シーツを強く引き寄せているのに射精感が高まっていく。このまま絶頂に合わせて精を放つのだ。
「あっ、あっ、ああっ……わたくし、あっ……わたくしぃっ……大樹さんっ、大樹さんっ、大樹さぁんっ!」
「琳霞さまっ!」
 可愛らしい喘ぎが漏れ、華奢な体が硬直するのと同時に、膣内が強く締まり上がった。
 その刺激に耐えきれず精を放つ。
 ドクドクドクと放出されていく精液を感じながら、それと共に押し寄せてくる快感に浸る。
 また琳霞の中に、神聖な巫女の中に精液を放ったのだ。
 強い背徳感と満足感に支配されながら、何度も何度も精液を注ぎ込んでいく。
 数度射精を繰り返した後、最後の放出を終えた大樹は、挿入した体勢のまま荒い呼吸をしながら、精を存分に吐き出した余韻に浸った。
 快楽に意識をボーッとさせつつ、己が精液を注ぎ込んだ美しい肉体を眺める。
 そうして少しの間ジッとしていると、不意に何か、妙な感覚を覚えた。
(何だ……これ……?)
 股間から、未だ琳霞の中に収まったままの肉棒から、何かが入り込んでくるような感じがしたのだ。
 尿道を通り、遡ってくる何か。
 そのゾッとするような異物感に恐怖を覚えていると、次の瞬間、肉棒が急に熱くなり、まるで射精している時のような脈動が感じられた。
 しかしそれは、こちらから放出しているのではなく、あちらから、琳霞の膣内から何かが放出されているように思えた。
 ドクンドクンっと脈動が起きるたびに、何かが肉棒の中に入り込んでくるのが分かる。
(うぅ……気持ち、悪い……)
 異質なものが体内に入り込んでくる生理的嫌悪感が起こり、慌てて肉棒を引き抜こうとするが、まるで固定されているかのように動かす事ができない。
 そうしている間も次々と肉棒の中に何かが入り込み、さらにそれが腹の辺りまで来ているのに強い恐怖を覚える。
 そのまま腹から胸へ、そして四肢へと広がっていき、最後に頭へと這い登って来た。
「くがっ……ぐっ……」
 呻き声を漏らし、体中に広がっていく異様なモノの感覚に恐怖と嫌悪を覚える。
 ついにそれが頭に達したと思った瞬間、電気ショックを与えられたように体がビクンっと大きく跳ねた。
 意識は朦朧とし、何も考えられない状態になっている。
 そうしてしばらくジッとしていると、不意に何かうなり声のようなものが聞こえてきた。
 それは周囲のどこからか聞こえているのではなく、体の内から響いてくるような、そんな感じだった。
 どす黒く、冷たい感覚をもたらすものであり、恐ろしさに自然と体が震え出す。
 次の瞬間、肉棒がドクンっと大きく脈動し、勢い良く何かが放出されていくのが感じられた。精液ではない、異様な何かが吐き出され、琳霞の胎内へと注ぎ込まれているのだ。
 そのたびに琳霞の体がビクンビクンと跳ねるのに恐怖を覚える。
 一体何がどうなっているのか。自分はどうしてしまったのか。何が体から出ているのか。
 頭が恐ろしさで一杯になり、錯乱しそうになっていく。
(琳霞さま……って、え……!)
 救いを求めるように琳霞へ視線を向けると、そこにあった顔にギョッとなった。
 先ほどまでの悩ましげな雰囲気は欠片もなく、非人間的な能面のような顔がこちらを見つめていたからだ。
 その両眼は、何も見ていないようで見ているような、神秘的な雰囲気を纏っており、普段舞を舞っている際に見られるものと同じだった。
 琳霞という人格ではなく、別の何かに見られているような、そんな恐ろしさを感じさせるものがあった。
 再びうなり声のようなものが頭に響き、それと共に強い肉欲が湧き起こってくる。
 それは今までとは比較にならない強いものであり、抑えきれない衝動から体がブルブルと震え出す。肉棒は痛いほどに勃起し、ビクンビクンと脈動し、まるで単体の生き物であるかのような存在感があった。
 目の前にある女体に対する執着が強烈に強まり、膣に収まったままの肉棒をどうにかしたい、この女を無茶苦茶にしたい、とする欲求が爆発的に盛り上がっていく。
「!……」
 声にならない叫びを発すると同時に、大樹は猛烈な勢いで腰を振り始めた。
 途端、蕩けるような快感が押し寄せ、琳霞が苦悶にも似た快楽の表情を浮かべるのに歓喜の想いが湧き起こる。
 歪んだ悦びが体を包み、この華奢な少女を好き放題し、肉棒を擦り付け、快楽で狂わせたいとする衝動が、津波のように押し寄せてきた。
(したい……したい……したい……この女を陵辱したい……したいんだぁっ……)
 琳霞に対する強烈な執着が溢れ出し、無茶苦茶にしたくてたまらない想いで一杯になっていく。
 大樹は目を虚ろにさせながら細い腰を強く掴むと、貫かんばかりの勢いで、肉棒を叩き付けていくのだった。


 目が覚めた大樹は、見慣れぬ周囲の風景に、一瞬自分がどこに居るのか分からずギョッとなった。
 しかしすぐに昨夜神社へ来ていた事を思い出し、あのまま寝てしまったのだと理解する。
 安堵しつつ時刻を確認すると、夕方であったため驚く。
(俺、夕方まで寝ちゃってたのか……)
 琳霞を何度も抱き続けている間、周囲が明るくなり始めたのはうっすら覚えていたが、その後は記憶が無かった。いつの間にか寝てしまったらしい。
 琳霞はどうしたのかと思い、部屋の中を見回すが、可憐な巫女の姿はどこにも無かった。
 その事に残念な想いを抱きつつ、改めて昨夜の事を考えた大樹は、何とも言えない状況に大きく息を吐き出した。
(何で俺、こんな事になってるんだろ……)
 儀式をしに来たはずなのに、肉欲に流されて琳霞を抱いてしまった。自分がここまで理性の無い人間だとは思ってもみなかった。
 確かに昨夜のあの状況は興奮しても仕方ないと言えたが、それでも我慢しきれないほどではなかっただろう。
 だが自分は肉欲を抑えきれず、琳霞に襲いかかってしまった。それはとんでもない事だった。
 村において神聖な存在である巫女を抱いた事もそうだが、儀式をするために神社を訪れたのに、それをほったらかしにして琳霞を抱いたのだから最悪だった。自分は儀式を台無しにしてしまったのである。
 とはいえ儀式に関しては、何をすれば良いのかよく分からなかったのだが。
 結局琳霞からは儀式についての説明は無く、ただ協力して欲しいと頼まれただけだからだ。
(って、説明する前に、俺が襲いかかっちゃったんだっけ……)
 本来であれば、あの後儀式について語られ、琳霞と共に行っていたに違いない。それを自分は己の肉欲を抑えきれずに襲いかかってしまった。完全に儀式の邪魔をしてしまったのだ。
 何よりあのように襲いかかるのは強姦なのであり、許される事ではなかった。
 とはいえ抵抗はされなかったし、むしろ積極的に受け入れられていた感じもしたため、問題無いようにも思えた訳だが。
(わたくしは、幸せです……)
 不意に琳霞の言葉が蘇る。
 そう、琳霞は繋がり合った時、確かにそう言ったのだ。喜んでくれていたのだ。嫌がっていたらそのような言葉は告げないから、少なくとも強姦にはなっていないだろう。
 その事にホッとした想いを抱くものの、琳霞の想いはあくまで個人的なものであり、儀式を台無しにしてしまった事には変わりなかった。
 自分は非常にマズい状況に置かれていると言えただろう。それはここへ連れてきた摩魅の面目を潰すことであったし、村の役職に名を連ねている人間としても失態だった。
(大体、何で布団なんか敷いてあるんだよ。あの状況じゃ、どうぞヤって下さいって言っているようなもんじゃんか。琳霞さまみたいに可愛い女の子と一緒に居たら、我慢なんか出来る訳ないでしょ)
 そんな言い訳が思いつくが、そうであっても肉欲を抑えられるのが一人前の男というものだろう。据え膳などという言葉もあるが場合によるのだ。自分がしに来たのは儀式なのであり、セックスではないのである。
 あの布団にしても、何かしら理由があって敷かれていたものなのかも知れない。例えば体を横たえた状態でするような儀式であれば、そうであっても不思議はないからだ。
 それを勝手に性的に解釈して興奮し、襲いかかってしまったのだから、駄目過ぎるとしか言いようがなかった。
(そういや琳霞さまも、エッチなことを意識してる自分を恥じてたなぁ……)
 巫女とはいえ年頃の娘なのだから、布団の敷かれている部屋で男と二人きり、などというのは相当な恥ずかしさがあったに違いない。それに耐えて儀式をしようとしていたのを、自分は台無しにしてしまった。何と愚かしいことだろう。
 それにこれから自分はどうなるのか。何しろ大事な儀式を台無しにしてしまったのだから、責任を取らされる可能性はあるのだ。
 それを思うと辛くなってくる。
(摩魅姉さんに、逢いたい……)
 不意にそんな想いが起きてくる。
 困った事があると、すぐに摩魅を頼ってしまうのは情けない事だったが、幼い頃からそうなのだから仕方ないだろう。
 それ以前に、辛さを癒してもらいたいと思っているのだから、さらに情けなかった。やはり自分はシスコンなのだ。
 そんな己に溜め息をつきつつ、近くに置いてあった畳まれた服を身につけ始める。確か脱ぎ散らかしていたはずであったため、琳霞が畳んでくれたのだろうか。
 そう考えると嬉しくなり、甲斐甲斐しく服を畳んでいる姿を想像して顔がだらしなくニヤける。
 儀式を台無しにしてしまったのはともかく、琳霞を抱けたのは幸せすぎることであり、さらに素直に受け入れてもらえた事を考えれば、かなりの好意を抱いてもらえているという事だろう。それは凄まじく嬉しい事だった。
 そうした素晴らしすぎる事に喜びを噛みしめながら服を着ていた大樹は、ふとある方向へ視線を向けた瞬間、違和感を覚えて動きを止めた。
 そこには石が、虞和蛇神が封印されているという石があるのだが、どうにも昨夜とは違った印象を覚えたのだ。普通の石にしか見えず、あれほどあった強烈な存在感が無くなっていたのである。
 昨夜は見ただけで意識が遠のくような衝撃を受けたが、今はいくら見つめていても何も感じなかった。
 そう言えば、この部屋へ入ってから感じていた恐怖感も無くなっている。得たいの知れない何かからの、本能的な恐怖とも言うべき恐ろしさが無くなっているのだ。
 あれもこの石から発せられているように感じられていたが、やはり関係があるのだろうか。石が普通の石になっているため、恐怖も消えているという事なのだろうか。
 だがどうしてそのような変化が起きているのだろう。訳が分からなかった。
(夜にしか感じられない、って事なのかなぁ……)
 幽霊や化け物といったものは、夜に出ると相場が決まっているため、そう考えると何となく納得できたが、とはいえ、それが神にも当てはまるのかと思うと微妙だった。
 やはり何か別の理由があるのかも知れない。
(まあ、考えてもしょうがないんだけどさ……)
 自分はこの石の存在を昨夜初めて知ったのだから、その程度の知識で考えてみたところで分かるはずも無かった。
 それより重要なのは、これからの自分の身の振り方だ。早く帰って摩魅に相談しなければ。
 再び不安が強まった大樹は、素早く服を身につけると、誰にも見つからないよう祈りつつ、部屋から足早に出て行くのだった。


 自宅へ辿り着いた大樹は、玄関ドアの前で大きく息を吐き出した。
 誰にも見とがめられず家へ帰れた事に安堵したのだ。
 日頃から神社には人があまり常駐していないとはいえ、居た場所が奥の間であった事を考えれば、途中で誰かに出くわしてもおかしくはなかった。そうならなかったのは運が良かったと言えるだろう。
 それとも琳霞が何か手を打ってくれたのだろうか。
 そう思うと嬉しくなったが、儀式をしなかったことの誤魔化しをしてもらっているようで申し訳なさを覚えた。
 実際他の人間にはどう報告しているのだろう。
 琳霞に余計な気遣いをさせていると思うと、己の身の上ばかり気にしている自分が情けなくなってくる。
 そんな事を思いながら玄関のドアを開けた大樹は、少し大きめの声で「ただいま」と告げた。
 だが何の返事もない事に、摩魅が留守なのだと思って悲しくなる。
 家の中を探してみたが、やはりどこにも姿が無かった。買い物にでも出かけているのかも知れない。
 いや、もしかしたら儀式のことですでに呼び出されているのではないか。琳霞の誤魔化しなど効果がなく、事は露見して、巫女を犯したことに関して、保護者である摩魅の責任が問われているのではないか。
 そう考えると、恐ろしさにゾッとなった。
 何より摩魅に迷惑をかけているのだと思うと、辛くてたまらなくなっていく。あの優しい姉が責められるなど、想像したくもない状況だからだ。
 しかし実際そうなっている可能性はあるのだ。
 そしてその後は、自分も罪を問われることになるのである。それは実に恐ろしい状況だった。
 そんな不安を抱えながら居間のソファに腰を下ろした大樹は、これから自分はどうしたらいいのかを考えようと思った。
 だが思考を働かせようとしても上手くいかなかった。意識がぼんやりしてしまい、視界まで虚ろになったからだ。
(疲れてるのかな……それも当然か。昨日は凄くしたもんな……)
 そう考えると、琳霞との交わりが頭に浮かぶ。
 しかしその記憶はどうにもあやふやで、ハッキリしなかった。初めの数回は覚えているのだが、途中からがよく思い出せないのだ。
(どうしたんだっけ……確か何だかよく分からないけど、凄く興奮したのだけは覚えてるんだけど……って、うぅ……)
 不意に股間の一物が勢い良く勃起し、痛いほどに張り詰めた状態になった。
 それと同時に、あやふやだった記憶が徐々に思い出されてくる。
 脳裏に琳霞の淫らな姿が浮かび、まるで目の前に居るかのようにその姿や声、感触や匂いまで感じられてくる。
 息も絶え絶えに悶え狂い、肉棒を突き込まれるたびにいやらしく喘いでいる可憐な巫女。
 その美しい肉体を舐め回し、揉みしだき、肉棒を激しく擦り付け、初々しい蜜壺に何度も何度も精液を注ぎ込んでいる自分。
 まさに肉欲に狂ったとしか思えない状態となり、強烈に昂ぶり、荒々しい気分になって華奢な体を好き放題扱い、小さな尻を叩いて肉棒を無茶苦茶に突き込んでいる。
 そうしていると凄く気分が良く、また従順に従っている琳霞を見ていると、もっとせずには居られない強い高揚が起きた。
 あの時の自分は、琳霞の清純な顔を快楽に染め、男を求めて喘ぐ淫らな姿に変えてやりたい、という想いで一杯になっていた。
 実際快楽に蕩けたような表情を浮かべ、従順にしている琳霞の姿を思い出すと、震えるほどの悦びが溢れてきた。
 もう一度あの可憐で淫らな肉体を味わいたい。
 強い興奮が湧き起こり、抱きたい、肉棒を押し込みたい、女を喘がせ悶えさせ快楽に狂わせたい、とする衝動に頭がクラクラとし、意識が肉欲に染まっていくのが分かる。
 視線が居もしない琳霞を求めて彷徨い、今すぐにでも神社へ行って襲いかかりたい欲求が押し寄せてきた。
 いや、それでは間に合わない。とにかく誰でもいいから女を犯したい。この落ち着かない衝動を発散するために、手当たり次第女を犯すのだ。
 そうした肉欲に狂った意識が高まり、それに押し流されそうになっていく。
(だ、駄目だっ……駄目だそんなのっ……)
 頭を強く振り、その恐ろしい考えを振り払う。
 呼吸が乱れ、大きく息を吐き出しながら、異常なまでに昂ぶった肉欲に呆然となる。
 考えてみれば、昨夜の自分もこうなっていたのだ。この抑えられない肉欲のせいで、儀式を台無しにしてしまったのである。
 何故自分はこんな風になってしまうのだろう。
(鍵、だったっけ……?)
 ふと、昨夜摩魅に言われた言葉が思い出される。
 自分の肉棒には鍵なるものが入れられていて、それの力が増すと性欲が高まるのだと教えられたのだ。
 そんな事は信じられなかったが、今の自分の状態が普通ではない事を考えると、鍵が影響を与えているようにも思えてくる。
 だが本当にそうだったとしても、それでどうしたらいいと言うのだろう。
 分からない。全く分からなかった。
 しかし摩魅ならば何か知っているはずだった。だから早く摩魅に帰ってきて欲しかった。
「こんにちはぁ〜〜っ」
 不意に玄関の方で声が聞こえたため、思わず体を震わせてしまう。
 陽気な声である事から、歩美がやって来たのが分かった。
 摩魅ではなかった事を残念に思いつつ、そう言えば今日は学校をサボってしまったのだという事に気がつく。
 もしかして歩美は、その事を気にしてやってきたのではないだろうか。
 考えてみれば、歩美と会わないでいる日などほとんど無いほどにいつも一緒に居るのだから、大樹が朝から居なかった事を気にしていても当然だった。
 どう言って誤魔化せばいいかと焦るが、言い訳を思いつく前に、歩美は居間へと来てしまった。
「あ〜〜、大ちゃん居たぁ。何か今日は神社でお勤めがあったんだってぇ? 大変だったねぇ」
 だがこちらが何か言う前に、歩美はそんな事を言ってきた。
 どうやら摩魅が上手く誤魔化してくれたらしい。いや、儀式をする事になっていたのだから本当の事ではあった訳だが。
「今日の授業のノート見せてあげるねぇ。宿題も出てるからやらないと駄目だよぉ」
 そう言いながら隣に腰を下ろし、鞄からノートを取り出している。
 その様子を見ていると、何やら明るい気持ちになってくるから不思議だった。
 昔から歩美にはそういう所があり、一緒に居ると心地良さを覚えるのだ。
「お前のノート、変な落書きあるから見にくいんだよな」
 安堵感から、そんなからかいの言葉を告げてしまう。いつもの雰囲気にする事で、さらに安心を得たかったのだ。
「だって授業中にさ、飽きた時に絵を描くと集中力が戻るんだもん。まあ、その分、黒板を写すのが遅れるから、先に消されちゃって困る時もあるんだけどねぇ」
 確かにそうした理由で、何度か歩美にノートを見せた覚えがあった。
 いつもならそれについても何か言うところだが、今はそうした日常的な会話が嬉しいせいか、特に何も言わずにその暢気な顔を見つめ続けた。歩美の顔には、見ているだけでホッとさせる部分があるのだ。
「大ちゃん変だよ。妙に嬉しそうな顔しちゃってさ。もしかして何かあった?」
 不意に怪訝そうにこちらへ視線を向けて尋ねてくるのに動揺する。何とも鋭いことだ。
「別に無いけどな。まあ、神社での仕事で疲れたのかもな」
「そうなんだ。じゃあいいけどねぇ。んじゃこれノートね。今日中に写して明日返してよ?」
「おお、ありがとうよ」
 そう言いながらノートを受け取ると、偶然歩美の手に触れる状態になった。
 その瞬間、ドクンと心臓が鼓動する。
 視線が童顔の可愛らしい顔を見つめ、肉付きのいい体、特に制服の胸を押し上げる膨らみに集中する。
 肉欲が高まっていくのが感じられ、歩美を抱き締めたくてたまらなくなった。
「あ、大ちゃんスケベな顔してる。ボクのことエッチな目で見てるね」
 そう言われたため、ハッとなって自己嫌悪に陥る。
 いつもは大して気にする事ではないのだが、今は本気で襲いたくなっていたため、罪悪感を覚えたのだ。
「いや、その、スマン……何か変なんだ俺。ちょっとおかしくてさ。だから今日はもう帰ってくれ。お前に嫌な想いさせちゃうと悪いし……」
 いくら仲のいい歩美とはいえ、襲いかかったりしては取り返しがつかなかった。そうなる前に帰ってもらった方がいいだろう。
「嫌な想いって何だよぉ。ボクは大ちゃんに嫌な想いなんかさせられたこと無いよ」
「でも、エッチな目で見られたら嫌だろ?」
「別に嫌じゃないけど?」
 あっさり言ってくるのに苦笑する。歩美はどうしてこう無邪気なのだろう。
「馬鹿、女の子だったらそこは嫌がれよ」
「大ちゃんだったら別にいいもん」
 その言葉に嬉しくなるが、それはマズいだろうとも思う。女の子としてはもう少し羞恥心や警戒心を持つべきだからだ。
「お前はどうして俺に寛大なんだ? 俺だって男なんだからな。狼になる事だってあるんだぞ? 襲われたらどうするんだ」
「大ちゃんだったら別にいいよ。ボク、大ちゃんになら襲われてもいいもん」
「ば、馬鹿……そんなこと言うなよ……」
 そんな風に言われては、抑えが効かなくなってしまうではないか。ただでさえ強く欲情しているというのに。
 何より歩美は、日頃から性的な事に対して意識が薄い部分があり、今の言葉にしてもよく分かっていないで言っているように思えたため、そんな相手に手を出してしまっては、酷く悪いことのように感じられるのだ。
「大ちゃん前からボクのこと、エッチな目で見てたよね。特に胸をさ。凄く触りたそうな目で見てた。いいんだよ、触っても。触りたいんでしょう?」
 そう言いながら胸を前に突きだしてくるのに動揺する。大きな膨らみが強調される事でさらに大きくなったように見え、触りたくてたまらない欲求が湧き起こった。
 摩魅や琳霞の胸には触れたが、歩美の胸はどんな感じなのだろう。感触は違うのだろうか。
 そうした想いが瞬時に頭を駆けめぐった。
「ば、馬鹿……駄目だってそんなの……」
 そう答えつつも、目は歩美の胸から離れずにジッと見つめてしまっていた。ハッキリ言って触りたくてたまらなかったからだ。
「フハッ、大ちゃん無理してるぅ。すっごい触りたいって感じのくせに、駄目とか言っちゃってる。おっかしいの」
「そ、そりゃお前……こういう事は安易にしちゃいけないって思ってるんだよ……」
「ボクがいいって言ってるのに? 本人が触ってもいいって言ってるんだから、別にいいじゃん」
「そういうところが駄目だって言ってるんだ。お前はもっと自分を大切にしろ。男に安易に胸を触らせるなんて良くないんだぞ」
「他の男の子だったら触らせないよぉ。大ちゃんだから触らせてあげるんだもん」
 何という殺し文句だろう。先ほども思ったが、歩美はあまりに自分に対して寛大すぎた。
「どうして俺だと、そんな風にするんだよ。俺はお前の恋人でも何でもないぞ」
「うん、そうなんだけどね……」
 歩美はそう答えると、急に押し黙った。
 そして珍しく真面目な表情を浮かべてから小さく微笑んでいる。
「でも大好きなんだもん……ボク、大ちゃんのこと大好きだから、大ちゃんが触りたいって思ってるなら、触らせてあげたいなぁって……」
 その言葉に硬直する。いつもなら冗談っぽく告げてくるのに、何ともしんみりとした口調だったからだ。
「……気持ちは嬉しいけど、そういうのは恋人とするもんだ。友達でする事じゃないぞ」
「じゃあ、なろうよ恋人に……」
 再び硬直する。真面目な顔で告げてきたため本気であるように思えたからだ。今日の歩美はどうしたというのだろう。
「恋人ってお前……分かってるのか?」
「分かってるよ。ボク、ずっと前から大ちゃんの事が好きだもん。恋してたの。だから恋人になるのに全然問題ないんだから。っていうか、恋人になれたら嬉しいし」
「お前、そんな……今までそんなこと言わなかったじゃないか」
「そりゃそうだよ。言ったら大ちゃんが困ると思ってたもん」
 確かに言われた事で大樹は困ってしまっていた。
 歩美のことは好きだが、いざ恋人にするのだと考えると、琳霞のことが浮かんだし、何より家族のような存在である事から、本当に恋人として思えるかどうか分からなかったからだ。
「やっぱり困ってるね。だから言わなかったんだよ」
「すまん……お前のことは好きだけど、恋人って言われると、どう思えばいいのか分からないんだ……大体今と何が違うんだよ。お互い好きで、いつも一緒に居て、楽しくしてるってのと……」
「そうだね、変わらないね。だからこういうのはさ、結局『恋人だ』って思ってるかどうかじゃないかってボクは思うんだけどね。そう思った時から何かが変わるんだよ。今まで以上に大切な、特別な存在になるんじゃないかと思う。だってボク『大ちゃんに恋してる』って思った時から、そうした想いが凄く強くなったもん」
 言われてみればそうかも知れない。何となく好きな気持ちが、「これは恋だ」と認識したことで変わるように思えたからだ。
「だから問題はね、二人して『恋人になる』って思えるかどうかって事だと思う。実際告白ってそういうことでしょ? 『私はあなたと恋人になりたいです。あなたはどうですか?』って確認作業なんだから。ボクは大ちゃんと恋人になりたいよ。大ちゃんはどう?」
 歩美にしては理屈っぽい事を述べているのに驚きつつ、その内容に説得力を覚えた。
 果たして自分は歩美と恋人になりたいのか。
 そう考えると、やはりよく分からなかった。
「ごめん。分からねぇや」
「そう言うと思ったよ。だって特別な何かがあった訳でもないのに、ボクに対する意識だけ変えるなんて無理だもん。やっぱりこういうのってのはさ、何か特別なことが必要なんだよ」
 なるほど確かにその通りだろう。それまでの関係では起きえない、衝撃的な出来事でもあれば、相手に対する印象も変わるはずだからだ。
「だから胸に触らせてあげようって思ったんだよ」
「え? 何だそれ?」
「今までしたことが無かったエッチな事をしたら、ボクに対する意識が変わるかなぁって思ってさ」
 それは確かに変わるだろう。強烈に変わるに違いなかった。実際肉体関係を持った摩魅に対しては、意識がかなり変わっているのだ。
 その事を思い出したせいで、何やら後ろ暗さを覚えてしまった。純粋に好きだと言ってくれている歩美に対し、裏切りを働いたような感覚が起きたからだ。
 摩魅との事は、歩美に告白される前の出来事だから問題ないはずなのだが、そう思えてしまったのである。
「それに……早くしないと取られちゃうし……」
「え? 何のことだ?」
「摩魅さんと琳霞さまのことだよぉ。ぼやぼやしてたら大ちゃんとの間で何か起きちゃうかも知れないでしょ。そうなったら大変だからね。その前に早くボクを意識してもらっておかないとさ。大ちゃん摩魅さん大好きだし、琳霞さまにも憧れてるし、無茶苦茶強力なライバルだよ」
「摩魅姉さんは姉だぞ。琳霞さまは……そんな関係になれる訳ないだろが」
 だがすでに二人とは肉体関係になっている事を考えると、それほど強くは否定できなかった。
「摩魅さんは姉だけど義理じゃん。義理の姉弟なら結婚だって出来るんだよ。そういう意味じゃボクと立場は変わらないんだから。っていうより、大ちゃんの甘えぶりを考えると、かなり負けてるよ。摩魅さんが大ちゃんのこと異性として意識したら、凄くピンチだよ」
 言われてみれば、摩魅が今の歩美みたいに告白してきたら、自分はあっさり受け入れてしまいそうな気もした。それだけ自分にとり、摩魅は全てを委ねてしまう存在だからだ。
「琳霞さまの場合は、確かに立場はあるけど、恋の前ではそんなの関係ないよ。こっそり付き合えばいいだけだしさ。憧れの琳霞さまに告白されたら、大ちゃんフラフラ〜〜っと受け入れちゃいそうな気がする」
 それは実感があった。実際昨夜はそんな感じで夢中になって抱いていたからだ。その上「好きです」と告白されたら、あっさり応じてしまうだろう。
「そういう意味でボクが一番ヤバいの。だって告白しても、大ちゃん困るだけだもん。実際嬉しいっていうより、困っちゃってるでしょう?」
 その通りであるため何も言えなかった。歩美が自分のことを好きだというのは嬉しいのだが、それで恋人だとか言われると、どうしたらいいのか分からなくなるのだ。
「だからそれを何とかするのに、エッチなことが必要なんだよ。ボクを意識してもらうために。ボクが女の子だって、大ちゃんに強く意識してもらうために」
 少し恥ずかしそうにしながら告げてくるのに可愛さを覚える。
 何より性的な行為を望んでいるのだと意識する事で、いつもと違ってブレーキが効かなくなりそうな気がした。
 なるほど、確かに歩美に対する意識が変わってきているように思えた。「エッチなことが出来るかも知れない」と考えただけで、歩美を見る目が違ってきたからだ。
「ね、いいでしょう? ボクとエッチなことしよう? それともエッチなことも出来ない?」
 ソファに手を付き、こちらへ乗り出すようにして尋ねてくるのにドキリとする。
 何しろ可愛らしい丸顔に泣きそうな表情を浮かべ、すがりつくように迫ってきているからだ。
 胸元で大きな膨らみがポヨンっと揺れるのに興奮が高まっていく。
「大ちゃん、好きだよ……ボク、大ちゃんのことが大好き……」
 潤んだ瞳でこちらを見つめ、さらに顔を近づけてくるのに心臓が強く鼓動する。
 可愛かった。
 あまりに可愛らしかった。
 これほど歩美を可愛いと思ったことなど初めてではないだろうか。
「大ちゃん……」
 童顔がうっとりとした表情を浮かべ、ぽってりとした唇が迫ってくるのに動揺が起きる。
 これはキスをねだられている。キスをして欲しいと求められているのだ。
 歩美とキスをする。
 それは一体どんな状況なのか全く想像が出来なかった。
 だが気持ちがいいに違いないことだけは確信できた。何しろ歩美の体は、どこに触れても柔らかそうな感じがしたからだ。
 眼前に迫った瞳が閉じられていき、唇が心持ち前へ出されるのに、もう後には引けないのだと思えてくる。
 ここまでされて無下になど出来るはずがなかった。というよりキスをしたくてたまらなかった。自分はこれから歩美とキスをするのだ。
 そう決意し、肩に手をかけてこちらからも唇を寄せていく。
 瞼が閉じるのと同時に、唇が重なった。
「ん……」という吐息が聞こえ、歩美の体が一瞬震えたのを感じつつ、そのままジッとしている。
 少ししてからゆっくりと放し、目の前にあるボーッとした顔を眺める。
 そこには今まで見たことのない、女の顔をした歩美が居た。
 幼馴染みで、家族のような存在だった歩美。それが今や一人の女として存在していたのだ。
(何てエッチな顔してるんだ……)
 いつも元気で明るく、馬鹿なことばかり言っている歩美が、色気を感じさせる大人っぽい表情を浮かべている。
 それには無性に落ち着かない、どうにかしたくてたまらない衝動を呼び起こすものがあった。
「歩美ぃっ……」
 擦れた声で叫びながら、その柔らかな肉体に襲いかかっていく。
「あっ、大ちゃん……」
 首筋に舌を這わせ、ずっと触れたいと願っていた乳房に手を乗せる。
 ギュッと掴むと、「やんっ……」と可愛らしい声をあげるのに、ドクンっと心臓が跳ねた。
 柔らかさが手のひらに広がり、その心地良さに何度も揉みしだいてしまう。
 プニプニとした感触に鼻息を強く吹き出し、服の上から荒々しく乳房を回すように揉んでいく。
 顎の下を舐め回し、数ヶ所に吸い付くようにしてから、再び唇を重ね、今度は舌を押し込んで絡ませる。
「んっ……んんっ……んふっ……」
 鼻から甘い吐息を漏らし、背中に腕を回して強くしがみつくようにしてくるのが愛らしい。
 こちらからも抱き締め、体を密着させながら、顔を左右に入れ替えてねちっこいキスを繰り返していく。
 胸元で潰れる乳房の感触がたまらず、また体全体がクッションのように柔らかく受け止めてくるのにうっとりとなった。
 歩美の体は何と気持ちがいいのだろう。こうして抱き締めているだけでも最高だった。
「大ちゃぁん……」
「歩美ぃ……」
 互いの名前を呼び合いながら見つめ合っていると、何とも言えない温かい気持ちが起きてきた。
 自分は今歩美を抱いている。幼い頃からずっと一緒だった大切な幼馴染みを抱いているのだ。
 そう思うと強い愛情が湧き起こり、もっと歩美を求めたくなってくる。
「あ……脱がすの?」
 ソファに押し倒し、制服のボタンに手をかけると、歩美が恥ずかしそうに尋ねてきた。
「ああ、いいだろ?」
「いいけど……でも、何か変な感じだよぉ……」
 歩美は戸惑った様子で視線をそらしている。
 大樹にしても変な感じだった。やはりよく知っている相手だけに、服を脱がせる行為に妙な感覚を覚えるのだろう。
 ゆっくりとブラウスのボタンを外していくと、薄ピンク色のブラジャーに覆われた乳房が顕わとなり、その大きさに一瞬見とれる。
 何よりブラウスをはだけた姿というのがたまらず、ゴクリと唾を飲み込んでしまう。
 そのままブラジャーを押し下げると、プルンっといった感じで大きな膨らみがまろび出た。
(おっきい……それにスゲェ綺麗だ……)
 思っていた以上に大きく、また形が良く、そして真っ白な膨らみがそこにあった。ピンク色をした二つの突起がフルフルと揺れており、その様子に肉欲が強く昂ぶっていく。
「あっ……やんっ……大ちゃん、ああっ……」
 両手でギュッと鷲掴み、回すように揉んでいくと、歩美が体をクネクネさせて喘いだ。
 その反応に鼻から息を大きく吹き出しつつ、手のひらに広がっている柔らかで弾力のある感触を味わっていく。
 力を入れると形を変え、力を抜くと元に戻るその膨らみは、魅惑的なおもちゃだった。
(たまんね……歩美のおっぱい最高だよ……スゲェ……)
 手に余るほどの大きさの乳房を、好き放題揉みしだくのに夢中になってしまう。
 頂点ではピンク色の二つの突起が、動きに合わせて位置を変えており、そのプックリとした造形は、吸い付かずには居られない衝動を呼び起こした。
「あんっ……大ちゃんそんな、あっ……」
 乳首に吸い付くと、歩美が顎を仰け反らせた。
 その様子に色っぽさを覚えつつ、舌先で弾くようにして舐めてから、チュウっと吸い上げる。
「あっ、やっ……そんなの、あぁっ……」
 頬を上気させ、色っぽい声で喘ぐ歩美の姿は実にたまらなかった。見慣れているはずの顔が、見慣れぬ女の表情を浮かべ、潤んだ瞳で見つめてきている。
 目が合うと強烈な恥ずかしさと罪悪感を覚え、背徳的な悦びが押し寄せてきた。
 今自分は、幼い頃から一緒に遊び育った、大切な幼馴染みの体を貪っているのだ。
 それには何とも言えない悦びがあった。
(次はこっちを……)
 いよいよ乙女の大切な部分を見せてもらうのだと、下半身へ移動し、プリーツスカートを捲り上げる。
 薄ピンク色のパンティが顕わになり、その魅惑の三角形にゴクリと唾を飲み込む。
 そのままパンティも引き下ろしていき、秘密の花園を顕わにする。
 幼い頃一緒に風呂へ入り、何度か見たことのあるそこは、記憶していた縦筋とは異なる女の割れ目として存在していて、歩美の性徴を感じさせた。
(こいつも、女になってるんだよな……)
 外見的な意味では、以前から胸の膨らみなどで女という認識は強まっていたが、生殖器であるこの部分を見たことで、改めて女として認識する意識が起きた。
「あっ、あんっ……そこ、あっ……そんな、ああっ……」
 秘所に指を這わせると、歩美がビクッと体を震わせる。
 その反応に興奮を高めつつ、今度はプックリとした突起を擽るように撫でると、さらに激しく悶えたため、鼻息を荒くしながら愛撫を続けていく。
「あんっ、やっ、やぁっ……大ちゃん、あっ……大ちゃぁんっ……やっ、やぁんっ……」
 肉付きのいい太ももをクネクネと動かしながら、頭を左右に激しく振って喘ぐその姿は実に淫らであり、自分が歩美を好きにしているのだという感覚を強めた。
 特に普段の元気少女とのギャップが強く感じられ、もっともっと快楽に狂わせ、女の顔を見せて欲しいという欲求が湧き起こっていく。
「あっ、あぁっ……そんなとこ舐め、ああっ……舐めたら駄目ぇ、やっ、やふっ……」
 クリトリスに舌を這わし、吸い付いていくと、歩美は泣きそうな声で甘ったるく喘いだ。その様子には実にそそるものがあり、肉棒が猛って止まらなくなる。
(もう入れたい……歩美の中に、入れたい……)
 目の前でヒクヒクと蠢く割れ目を見ていると、その気持ち良さそうな蜜壺の様子に、股間の怒張を押し込みたくてたまらなくなった。
 体を起こして落ち着き無くズボンとパンツを下ろすと、肉棒を手に持ち、腰を前へ進めて亀頭を秘所へと近づけていく。
「歩美、入れるからな……」
 囁くように告げると、歩美は一瞬ハッとしたような表情を浮かべたが、すぐに小さく頷いた。
 それを確認してからゆっくりと怒張を押し込んでいく。
 亀頭が割れ目にハマり、そのまま襞をかき分けて中へと入っていくのが見える。
 湿った膣襞と擦れることで快感が起こり、うっとりとした感覚を味わいながらさらに腰を前へと進める。
「いぅっ……痛い、ぐっ……大ちゃん痛いよぉっ……」
 歩美が泣きそうな声で苦痛を訴えてくるのを可哀想に思ったが、眉根を寄せて呻く姿には色気を感じさせるものもあったため、肉棒が猛ってしまった。
「ちょっと我慢しろ。もう少しで全部入るから」
「うん、我慢するぅ。でも痛いよぉ……」
 無理矢理笑みを浮かべながら告げてくるのを可愛らしく感じつつ、ゆっくりと最後まで肉棒を押し込んでいく。
 全て収まると同時に、大きく息を吐き出して動きを止める。
 ついに繋がった。歩美と一つになったのだ。
「ほら歩美、全部入ったぞ。お前の中に俺のが入ったんだ」
「うん、うん、入ってる……大ちゃんのが入ってる……おっきいのがドクンドクン言ってるよぉ……」
 涙目でそう告げながら、嬉しそうに微笑むのに愛おしさを覚える。
 幼い頃から仲の良かった歩美と繋がった事に、強い感動が起こり、喜びが押し寄せてくる。これまで以上に歩美の存在を近くに感じ、愛情が高まっているのだ。
「歩美っ……歩美大好きだっ……俺は歩美が大好きだぞっ……」
 思わずそう叫ぶと、歩美は一瞬驚いたようにした後、すぐさま満面の笑みを浮かべた。
「ボクもっ、ボクも大ちゃんが大好きだよっ。すっごくすっごく大好きぃっ……」
 そのまま泣きそうな顔になりながら、背中に腕を回して抱き付いてくる。
 強く引き寄せられ、その温かで柔らかな肉の感触を味わいつつ、染みいるように感じられる歩美の想いに、大樹は心地良さを覚えた。
(何だろうこれ……歩美のことが好きで好きでたまらねぇ……)
 繋がり合った状態で愛の言葉を交わすことで、今までに無い強い愛情が起こっていた。
 それと共に肉欲も昂ぶり、無茶苦茶にしたい衝動が押し寄せてくる。
 処女を失ったばかりで未だ痛みを感じるであろう相手に、あまり乱暴にしては良くないと思うのだが、抑えられないほどに肉欲が激しくなっているのだ。
(俺、ヤバい……俺ヤバいよ……何でこんな……思いきり突き込みてぇ。チンポをスゲェ擦り付けたくてたまんねぇ……)
 沸々と湧き起こってくる荒々しい衝動に、我慢できなくなっている自分を感じる。
 このままでは歩美を傷つけてしまうだろう。
 だが止まれない。止まらない衝動が体中を駆け巡っていた。
 脳裏に琳霞を乱暴に抱いた記憶が浮かび、それを歩美にもしたくてたまらなくなっているのが分かる。
(俺のチンポを思いきり歩美に……歩美に味わわせて……精液を、白くてドロドロしたヤツを……思いっきり注ぎ込みてぇ……)
 琳霞にしたように、歩美を従わせ、服従させたくて仕方がなかった。
 先ほどまであった愛おしさゆえに抱きたくなっているのとは異なる、肉欲、征服欲から起こる、陵辱し、蹂躙し、支配したいという想いで一杯だった。
 女を、この目の前の女を己の物だと強く認識したい。無茶苦茶に抱くことで、肉棒を思いきり突き込むことで、その証明をしたい。
 そうした狂わんばかりの想いが溢れてきていた。
「歩美っ……歩美ぃっ……」
 勢い良く体を起こし、己の肉欲を発散せんばかりに腰を前後に動かしていく。
「いっ……うぐっ……痛いっ……大ちゃん痛いよ、いっ……」
 歩美が苦しげな声をあげるが、それによって益々肉欲が昂ぶった。
 苦痛とはいえ、自分が与える刺激で反応を起こし、逆らえない状態にしているというのが興奮をそそるのだ。
 可哀想だという意識も起きるが、それ以上の興奮がその想いを消し去り、夢中になって腰を振っていってしまう。
「歩美っ……歩美たまんねっ……歩美気持ちいいぞぉっ……」
 肉棒が膣内で強く締め上げられ、襞に絡みつかれて吸い付かれているのに、蕩けるような快感を覚える。
 口がだらしなく開かれ、涎が垂れそうになるのを抑えながら、とにかく腰を振らずには居られない気持ちの良さを得ていた。
(ふへぇ……チンポが気持ち良くてたまんねぇ……何でこんなんなってんだ……?)
 いつもより肉棒が敏感になっているのが感じられ、その異常なまでの刺激の大きさに少し怖くなる。
 何しろ強烈な快感が脳を揺さぶるほどに押し寄せてきているのだ。
 それは肉棒が膣内で擦れているから、というより、怒張自体が快感を発しているかのような、そんな妙な感覚だった。
「いぅっ……あぐっ……大ちゃんの、ぐっ……大きくなって、いっ……何か変な感じが、あぐっ……あっ、熱い……熱いよぉっ……」
 歩美の言った通り、何だか肉棒が大きくなっているように思えた。先ほどより締め付けられる感覚が強まったからだ。
 それと同時に、まるで怒張が燃えているかのように熱を発し出したのに驚く。
(何だこれ? 熱い……チンポが熱いぞ……それに、何かスゲェ気持ち良くなってきた……)
 さらに蕩けるような快感が押し寄せ、意識がぼんやりとしてくる。腰はそれまで以上に激しく前後に動いており、その度に強烈な気持ちの良さが全身を駆け抜けていった。
「やだ、何これ変……何か変な感じが……あっ、やっ……これどうして、あっ、あんっ……」
 不意に歩美が、快感を得ている喘ぎを発し始めた。どうやら痛みが無くなったらしい。
 その事に益々興奮が高まり、今度は意識して腰を強く振っていってしまう。
 するとさらに快感が高まったため、頭を何度も仰け反らせながら呻く。
「あんっ、やっ……やだ凄い、あっ……大ちゃん凄いの、あっ、ああっ……大ちゃんのが気持ちいいよぉっ……」
 歩美はすっかり甘い吐息を漏らすようになり、気持ち良さそうな表情を浮かべて体を震わせている。
 一突きごとに頭を左右に振り、短い髪の毛を乱しているのが色っぽく、こちらの突き込みに合わせ、はだけた制服から覗く白い膨らみが揺れ動いているのに興奮が高まっていく。
 可愛い歩美の色気ある姿は、日頃の様子とのギャップを強く感じさせ、肉欲が強まって仕方がなかった。
(スゲェ……歩美が可愛くて……スゲェエロい……こんな歩美……たまんねぇよ……)
 肉棒から押し寄せる快感だけでなく、視覚的にも気持ちの良さを得ており、それが強烈な興奮を呼び起こし、射精感を一気に高めていった。
 もう我慢できないところまで来ているのに気づき、このまま一気に精を放つのだと腰をさらに激しく振っていく。
「歩美っ……歩美、俺もうっ……出すからなっ……出すぞっ……」
「大ちゃん、あっ、ああっ……大ちゃん、やぁっ、あっ、あふっ……大ちゃぁんっ……」
 聞こえているのかどうなのか、歩美は名前を呼びながら激しく喘ぎまくっている。
 ソファの縁を掴んで辛そうに、それでいて気持ち良さそうに喘ぎ悶えているその姿は、歩美を支配しているのだという認識を高めて最高だった。
 今歩美はこちらの与える刺激に夢中になっている。そしてこれから自分は、歩美の中に精液をぶちまけるのだ。
 そう考えると強烈なワクワク感が押し寄せ、大樹はソファに両手を付くと、貫かんばかりの勢いで肉棒を叩き付けていった。
「あっ、ああっ……凄い、あっ……凄いよぉ、あんっ……凄くてボクぅ、やっ、やっ、やぁあああああああんっ!」
「うぁっ!」
 快感が最高潮に達した瞬間、肉棒が暴発した。
 まだ少し保たせるつもりであったため、その己の意思を無視した射精の感覚に、強い衝撃と気持ちの良さを覚える。不意打ちであったがゆえに、快感が強まっているのだ。
 ドクドクドクと放出されていく精液を意識しつつ、律動のたびに襲いかかってくる快楽の津波は、大樹の意識を真っ白にしていった。
(な、何だこれ?……何か出てる……何か出てるよぉ……)
 そして次の瞬間、肉棒が大きく膨らんだように思え、それと共に自分が何かを放出している感覚が起きる。精液のはずなのだが、そうではないような妙な感覚があるのだ。
 射精と異なり、放出の感覚はすぐには終わらず、長い間放っている感じだった。
 何か大きなものが体から出て行っているような、そんな異常な事態が起きている。
「うぉっ……くっ……」
 少ししてそれが全て出て行った、という感覚が起きると共に射精が終わる。
 強烈な脱力感が押し寄せ、大樹はガックリと倒れ込んだ。
 歩美の柔らかな肉体が受け止めてくれ、その心地良さに誘われるままに、意識が薄れていくのが感じられた。


 目を覚ますと、至近距離に歩美の顔があった。
 その事に驚くが、すぐに歩美とセックスしたのだという事を思い出し、自分が眠っていたのを認識する。
「おはよ、大ちゃん。よく眠れた?」
「俺、どのくらい寝てた?」
「五分くらいだよ。いきなり寝てるからビックリしちゃった。疲れてたんだねぇ」
 そう言われて思い出す。昨夜はずっと琳霞を抱いていたのだという事を。
 それですぐに歩美を抱いているのだから、疲れているのも当然、というか何とも節操のないことだった。
(俺、歩美としちゃったのか……)
 冷静になると、歩美とセックスしたのがとんでもない事のように思えてきた。
 それまでの幼馴染みとしての関係を、壊してしまったような気がしたからだ。
「ボクとしたの、後悔してる?」
「え?」
「だって今、そんな顔してたから」
「分かんねぇ……」
 実際どうなのだろう。
 確かに幼馴染みの関係を壊してしまったような想いもあるが、こうして歩美の顔を見て、会話していると、いつも通りという感じもするからだ。
 違っているのは、歩美の体の上に重なるように乗っている事くらいだろうか。
「あ、重いよな。どくわ」
「うん。実は重かったんだよね」
「だったらどかせば良かったのに、何でしなかったんだよ」
「だってせっかく大ちゃんとくっついて居られるんだもん。それにこんなアップで顔も見られるしさ。ふふ、寝顔可愛かったよ」
「馬鹿、何言ってるんだよ」
 寝顔を見られてしまった事に恥ずかしさを覚えつつ体を起こす。
 すると制服をはだけた歩美の姿が目に映ったためドキリとした。
 胸元に白い膨らみが二つ見え、その事で手のひらに柔らかな感触が蘇ったため、興奮が起きてくる。
「あ、スケベな顔してる。またしたくなってるんでしょ?」
「ば、馬鹿。違うって……それより大丈夫か? 痛がってただろ?」
「大丈夫だよ。最初は凄く痛かったけど、途中からその、気持ち良くなったし……」
 恥ずかしそうに視線をそらしながら言ってくるのに心臓が跳ねる。
 その仕草が女の子らしさを感じさせ、今までの歩美とは違うように思えたからだ。実に可愛らしかったのである。
(ヤベェ……俺、歩美を凄く可愛いって思ってる……)
 意識するとドキドキしてしまい、慌てて視線をそらす。
「大ちゃん……ボク、大ちゃんのこと大好きだよ。だから、こういう事になったの、すっごく嬉しいからね」
 その言葉にドキリとする。自分に抱かれて嬉しいと言われたため、歩美に対する執着が強まるのが感じられた。
「ね、もっとしてもいいんだよ……ボクの体、もう大ちゃんの物だから……」
 あまりに嬉しすぎる言葉を言われ、心が歓喜に包まれると共に、股間の一物が硬く大きくなった。
 そうなると歩美を抱きたくてたまらなくなり、思わずその肉体を舐めるように見てしまう。
「大ちゃん……来て……」
 そう言われながら手を引っ張られると、もう耐えられなくなり、のし掛かって唇に吸い付いていく。
 歩美が快感の吐息を漏らすのを心地良く聞きながら、勃起した肉棒を手に持った大樹は、先ほど荒らしたばかりの花園へ、再び押し入っていくのだった。


 裸になった状態で絡み合っていると、どうしてこんなに気持ちがいいのだろう。
 大樹はそんな事を思いながら腰を振っていた。
 そこは大樹の部屋のベッドの上。あれから場所を移し、お互い生まれたままの姿になって抱き合っているのだ。
 滑らかな肌と擦れると蕩けるような気持ちの良さが溢れ、こちらの体を柔らかく受け止めてくる肉の感触に心地良さを覚える。
 こうして肌を重ねていると、ホッとするような想いが起きてくるから不思議だった。
(それにしても、ホントぷにぷにでエロい体だよ。小さいくせに何でこんなに肉が付いてんだか……)
 これまで服に隠されていた部分が全てさらけ出され、その想像していた以上に女らしい肉体が目に映っている事に興奮が高まっていく。
 歩美の裸身は、見ているだけで抱き心地の良さを感じさせる肉付きをしており、実際抱き締めると、極上のクッションのような素晴らしい感触があった。特に胸元の豊満な膨らみは、両手で鷲掴むとたまらない良さを感じさせるのだ。
(歩美のおっぱい……スゲェいい……)
 むにゅむにゅと形が変化する乳房を見ていると、それだけで幸せな気分になった。
 以前から揉みたくてたまらなかった膨らみを、今自分は好き放題にしているのだ。
 それは実に素晴らしい事だった。
「あんっ、あっ……大ちゃん、あぁっ……大ちゃんいいよぉ、やっ、やぅんっ……」
 肉棒を突き込まれ、可愛らしく喘ぐ姿を見ていると、興奮が高まって抑えが効かなくなってくる。
 自分でも驚くほどに、歩美に対する愛おしさが強まっていた。性器で繋がり合い、快楽を与え合っていると、信じられないほどに愛情が強まっていくのだ。
 歩美の言っていた「エッチなことで意識が変わる」というのは本当だったらしい。今や大樹の中で、歩美は以前とは異なった意味で特別な存在となっていた。愛すべき女の一人となっていたのである。
「ああっ、あんっ……大ちゃん大好き、やっ、あっ……大ちゃん大好きだよぉっ……」
 背中に両腕を回し、腰に両脚を絡みつかせ、しがみつくようにして抱き付いてくるのを可愛らしく思う。
 歩美も自分の事を愛してくれている。それがたまらなく嬉しかった。
「やっ、やぁんっ……そんな凄いの、あぅっ……大ちゃん凄い、ああっ……そんなにしたらぁ、やっ、やんっ……」
 小刻みに勢い良く突き込むと、背中に爪を立ててしがみついてくる。
 ビクッ、ビクッ、と白い裸身が痙攣しており、強い快感を得ているのが分かった。 膣内の蠢きも激しさを増し、肉棒が絞られるように締め付けられている。
「うぉっ……いい、くっ……歩美、スゲェ気持ちいいぞぉっ……」
 押し寄せてくる強い快感に体が一瞬硬直し、そこから勢い良く肉棒を突き込んでいくと、膣襞との擦れが蕩けるような気持ちの良さを呼び起こし、意識せずとも腰が動いて止まらなかった。
「あんっ、あっ、ああんっ……大ちゃんもう駄目、あっ……ボクもう駄目だよ、ああっ……イっちゃう、あんっ……イっちゃうのぉっ……」
 涙を流しながら喘ぎ悶える歩美の姿に、大樹の射精感も限界まで高まっていた。
 このまま一気に精を放とうと、それまで以上に肉棒を強く大きく突き込んでいく。
「歩美っ……歩美出すからなっ……お前の中にっ、出すからぁっ……」
「うん、来て、ああっ……来て大ちゃん、やっ……大ちゃんの出してぇっ……あっ、ああっ……ボクも、ボクもぉっ……やっ、やぁっ……やぁあああああああんっ!」
「うぉっ!」
 快楽の笑みを浮かべながら射精を求め、嬉しそうに微笑む歩美の姿に悦びが溢れた瞬間、肉棒の栓が解放された。
 ドピュドピュと勢い良く精液が迸り、体が勝手に強く震えるのを感じつつ、押し寄せてくる快感に浸る。
 肉棒が強く締め付けられ、吸い出されるようにして射精していくのに、苦痛のような気持ちの良さを覚える。
 歩美が体を硬直させ、時折「あ……あぁ……」と吐息を漏らしているのが可愛らしい。
 数度の射精を繰り返した後、満足した大樹は、歩美の体の上へと身を預けた。
 ハァハァという互いの呼吸が耳に響くのを聞きながら、体を起こして横にごろりと転がる。
 呼吸を整えつつ天井を見上げ、こうして歩美と肉体関係に至っている状態を感慨深く思った。
 何しろほんの少し前までは、いつもと変わらぬ幼馴染みの関係でしかなかったのが、ちょっとした事がきっかけで、セックスする間柄になったのだから。
 それにここ数日起きている事を考えると、あまりに変化が多過ぎるような気がした。
 姉である摩魅に導かれて童貞を卒業し、憧れの存在である琳霞を抱いたのだ。
 この幸運すぎる状況は一体何なのだろう。好意を抱いている女性達ばかり抱けるなど、あまりに異常過ぎた。
 特に琳霞との場合は、それほど親しい訳でもないのに抱いたのだ。
 摩魅にしても、義理とはいえ姉なのだから、普通はあり得ないことだろう。
 歩美に関しては自然な流れとも言えたが、とはいえこれだけ可愛い少女と幼馴染みである事や、さらに強い好意を持たれているという事を考えれば、凄く幸運な事だった。
(まあ、摩魅姉さんと姉弟ってのも幸運なんだけどさ……)
 琳霞との事にしても、偶然の出会いや、儀式に関わったことが原因なのであり、そういう意味では様々な要因が重なって、今回の状況が出来上がっているように思えた。
「大〜〜ちゃんっ。大好きぃ〜〜」
 不意に歩美が抱き付いてきたため意識を戻す。
 温かで柔らかな肉体が押しつけられているのに心地良さを覚えつつ、短い髪をした頭を優しく撫でてあげる。
 愛おしかった。
 凄く愛おしかった。
 歩美に対しては以前から大切な想いはあったが、それが凄く強まっている感じだった。
 やはり体を繋げ合ったことで、それまで無かった強い愛情を得たのだろう。
 歩美にしても、こうして甘えてくるのはいつもと同じだったが、見つめてくる瞳に熱が籠もっているように思えた。
 何よりどことなく色気を感じさせる雰囲気があり、自分が歩美を女として強く意識しているのが分かる。これは自分の女なのだ、と思えてきて、愛おしさが爆発しそうになっているのである。
「ねぇ、大ちゃん……ボクのこと、恋人にしてくれる?」
「え……?」
 だがその想いとは裏腹に、告げられた言葉に動揺してしまう。
 本来であれば、かなり愛情が高まっているのだから、すぐに了承しても良いはずだったが、言われた瞬間、摩魅と琳霞の姿が頭に浮かんだのだ。
「ふ〜〜、駄目かぁ。エッチしても大ちゃんはボクだけを見てくれないんだねぇ。ショックだよぉ……」
 悲しげに言ってくるのに申し訳なさを覚える。
 しかし歩美を恋人にするのだと意識すると、摩魅と琳霞に対する想いが反応して、どうにも踏ん切りが付かなかった。
 もし摩魅達に同じように言われても、他の二人のことが頭に浮かんでハッキリ応えられないかも知れない。
「すまん……何か俺、駄目だな……」
 本当に駄目だった。これでは歩美だけでなく、摩魅と琳霞も悲しませかねなかった。
「しょうがないよ。大ちゃんってそういう人だもん。でもボクはそんな大ちゃんが好きなんだし。気長に待つことにするよ」
「すまん……」
 もう一度謝ってから大きく溜め息を付く。
「いいんだってば。でもその代わり、沢山エッチしてよ。そうすればボクへの愛情が一番強くなる感じがするしぃ。ふふ、ちょこちょこエッチできる立場だから有利だよねぇ」
 確かに言われてみれば、摩魅とは姉弟という関係から安易にするのは抵抗があるし、琳霞にいたっては逢うのすら難しい相手だ。そういう意味では歩美との関係が一番進展しやすいのである。
「でもお姉さんは、大樹と一緒に暮らしてますからね。毎日誘惑しちゃうかも知れませんよ」
 不意にドアが開く音と共に、聞こえてきた声にギョッとなる。
 視線を向けると、部屋の入り口に摩魅が立っているのが見えた。
「ま、摩魅姉さん……な、何で……」
「何でって、自分の家ですからね。居て当然でしょう?」
 それは確かにその通りだった。
 先ほどまでは居なかったが、歩美とセックスを始めてからだいぶ経っているのだから、摩魅が帰って来ていてもおかしくなかった。
「それより驚きました。二人がこんな関係になっていたなんて。二人にどうやって性行為をさせるかと思っていたんですけど、手間が省けて良かったです。結果オーライってやつですね」
「な、何じゃそりゃ? 摩魅姉さん、俺と歩美にその、エッチさせようって思ってたの?」
「そうですよ。そのために歩美ちゃんに色々手伝ってもらってたんですから」
 そう言えば、以前から歩美は摩魅の手伝いをしていた。そして先日、摩魅は儀式のために自分に抱かれた。そうなると今回の事も、歩美は儀式の手伝いとして抱かれたという事なのだろうか。
 そんな推測をした大樹は、何やら悲しくなってしまった。
「え?……え?……何? 何なの?……摩魅さんがボクと大ちゃんにエッチさせようとしてた?……え? ええっ?」
 だが予想に反して、歩美は硬直した様子で呆然としている。それは今の摩魅の言葉が、寝耳に水なことであるのを感じさせた。
「歩美ちゃんは何も知りませんよ。教えないで手伝ってもらってましたから。これから儀式の事について話して、それで大樹に抱かれる事を了承してもらおうと思ってたんです。それなのに自分で抱かれるなんて、さすが歩美ちゃんですね。お姉さん驚きました」
 大樹の疑念を感じたのか、摩魅はそう答えながら微笑んでいる。
 つまり歩美は自分の意思で大樹に抱かれた訳だが、それが摩魅にとっては好都合な事だったらしい。
 しかしその儀式というのは何なのだろう。どうして歩美とセックスする必要があるのだろうか。
「摩魅姉さん、儀式って何なのさ。俺、訳分かんないよ」
「琳霞さまから聞きませんでしたか?」
「聞いてないよ」
「そうですか。儀式の事を話されていない、と……まあ、琳霞さまにとっては大切な時間だったのでしょうから、そうであっても仕方ないですね。それではお姉さんから話すことにします……でもその前にちょっと確認させて下さい。大樹、オチンチンを見せて下さい」
「え? 何でさ。って、ちょっと止めてって……」
 摩魅はベッドへ近づいてくると、大樹の股間の一物に触れようとしてきたため慌ててかわす。二人きりであれば喜んで受け入れるところだが、歩美が居たので恥ずかしかったのだ。
「いいからジッとしてなさい。これは大切なことなんですから」
 真面目な顔で言われたため、仕方なく大人しくする。
 ほっそりとした指が伸びてきて、肉棒に触れてくるのに興奮を覚える。そのせいでムクムクと大きくなってしまったため恥ずかしくなった。
 摩魅は肉棒の角度を変えたりしながら、しげしげと見つめている。
 その動きが刺激となって大きさと硬さが増してしまうのに困惑する。摩魅に触れられているだけで、どうしてもそうなってしまうのだ。
「大樹、我慢できないほど欲情してたりしませんか?」
「え? してないけど……」
「こうしても大丈夫?」
「うぁっ……ちょ、駄目だって……」
 不意に握り締めて上下にしごき始めたため慌てる。こんな事までしては、摩魅と肉体関係があった事を歩美に悟られてしまうではないか。
「お姉さんを襲いたくなってません?」
「なってない、なってないよ。だから止めてって……」
「うん、どうやら大丈夫のようですね」
 摩魅はようやく肉棒から手を放してくれた。
 それにしても、一体何をしていたのだろう。
「次は歩美ちゃんです。ちょっとお姉さんに見せて下さいね」
「は、はい……」
 今の大樹に対する行為に面食らった様子で歩美は返事をしている。当然だろう、いきなり姉が弟の一物を掴んでしごいたのだから。
 摩魅は歩美の傍へ寄ると、股間へ手を伸ばし、秘所に触れようとした。
「!……」
 次の瞬間、突然歩美の体が大きく跳ね、ガクンガクンと揺れ動いたためギョッとなった。
 驚いて歩美の顔を見ると白目を剥いており、顎が何度も仰け反って体が激しく震え始めたのに、何が起きているのかと呆然となる。
(って、チンポが、うぅ……熱い、熱いぃ……)
 突如肉棒が一気に勃起し、強い熱さを感じさせるほどになったため慌てる。
 さらに股間から強烈な肉欲が湧き起こり、女が欲しくてたまらなくなった。
 抑えきれないほどの欲情が体を突き動かし、フラフラと摩魅の方へと体が近づいていく。
 意識はすでにぼんやりしており、まるで曇りガラス越しに認識しているような感じだった。
 ただ目の前にある摩魅の柔らかそうな肉体を抱き締め、貪りたいという衝動だけはハッキリしており、それに逆らえない、いや、率先して従いたい気持ちに包まれていた。
「うぁぅ……うぅ……くぁ……」
 口から意味をなさない言葉が漏れ、摩魅の体にしがみつくようにして抱き付くと、強い力で押し倒してしまう。
「大樹止めなさ、んっ……駄目で、んんっ、んっ……」
 制止の言葉を告げてくるのを唇で塞ぎ、そのまま強く貪りつつ、豊満な乳房を揉みしだきながら柔らかな肉体を味わっていく。
 首筋に舌を這わし、服の中へ手を入れて直接膨らみを掴むと、うっとりするような気持ちの良さが手のひらに溢れた。
 荒い鼻息が漏れ、涎を垂らしながらその魅惑の肉体を貪っていく。
「やはりまだ、んっ……種子を残していましたね、あっ……小賢しいことです、あんっ、やっ……」
 摩魅は与えられている刺激に喘ぎながら、そんな事を呟いている。
 一体何を言っているのか分からなかったが、自分もどうしてしまったのかと大樹は怖くなった。
 何しろいくら欲情したからといって、いきなり摩魅を押し倒して襲いかかっているからだ。それも自分の意思とは無関係に。
 だが止めようと思っても体が言うことを聞かなかった。まるで肉体の欲求そのものに動かされるように摩魅の体を貪っているのだ。
「このような手は通じません。大樹の体を返してもらいます」
 摩魅はそう告げると、こちらを突き飛ばすようにして勢い良く起き上がった。
 そしてそのままベッドへ押し倒してくると、腰に跨って馬乗り状態になり、肉棒をギュッと握り締めてくる。
「うっ……」
 急所を掴まれたことで体が硬直し、動きが止まった隙に摩魅の腰が持ち上がり、パンティがずらされて、肉棒が秘所へと咥え込まれていく。
「あぅんっ……ふぅ……浄化の儀、始めます……あっ、ああっ……」
 意味の分からない言葉を言いながら、摩魅はゆっくりと腰を上下させ始めた。
 肉棒が擦り上がる快感にうっとりしつつ、摩魅の体からぼんやりと光が放たれているのに驚く。
 ウニュウニュと肉棒が揉みしだかれるようにされ、先端が強く吸引され、何かが吸い出されていくような感覚が走り抜ける。
(うはぁ……気持ち、いぃ……)
 射精した時と似てはいるが異なる快感が押し寄せ、それが体中に広がっていくのが分かる。
 ドクンドクンと、吸引によって吐き出されていく何かの感覚と共に気持ちの良さが脳を揺さぶり、意識が朦朧としていった。
 少しして吸引が止まると、体中が脱力し、まるで射精後の気だるさのような感覚で一杯になり、気がつけば、それまであった強い肉欲が治まっているのが分かった。
「大樹、大丈夫ですか?」
 優しげな笑みを浮かべ、こちらを見下ろしている摩魅に、ぼんやりしながら頷いて答える。
「これで種子は排除しました。もう大樹を操るのは無理ですよ」
 摩魅はそう呟きながら、肉棒を引き抜いて大樹の上から降りた。その表情には普段は見られない厳しいものが浮かんでいる。
(!……)
 不意に歩美の方から妖しげな雰囲気が感じられたためギョッとなった。
 見れば歩美の顔が無表情になっており、その瞳は強い光を放っていて目を合わせることが出来ない。
 体全体からオーラのようなものが出ており、ゾクッとするような恐怖が湧き起こってくるのが感じられる。
 歩美の手が、求めるようにこちらへ伸ばされてきたのを思わず避けてしまう。そうせざるを得ないほどに、恐ろしげな雰囲気があったからだ。得体の知れない存在に、本能が恐怖を抱いている感じだった。
 これは昨夜、あの部屋で感じたのと同じものだろう。封印の石から伝わってきた恐ろしさが、今歩美の体から発せられているのだ。
 実際歩美の様子は尋常ではなかった。目の前に居るのは、大樹のよく知る幼馴染みの少女ではなく、何か別の存在だった。
(!……)
 突如強い圧力のようなものが起こり、大樹と摩魅は壁に押しつけられた。
 そのまま見えない何かによって、壁に貼り付け状態にされてしまう。
「無駄です。封印されかかっているあなたでは、大した力は出せないのですから」
 摩魅の冷静な声が聞こえてくる。いや、これは本当に摩魅の声だろうか。声は確かに摩魅のものではあるのだが、凄く重々しく、圧力を感じさせるものだったからだ。
 見れば顔も無表情になっており、瞳から強い光が放たれていた。
 摩魅の手が滑らかに動き、空中に模様を描くようにしている。
 それが終わると同時に圧力のようなものが無くなり、腰がベッドへと落ちる。
「これで終わりですっ」
 小さくそう叫んだ摩魅は、素早い動きで歩美の傍へ寄り、秘所へ手を当てると、グイッと押し込むような動きをした。
 次の瞬間、歩美の体がガクンガクンと震え出し、何度も仰け反るような硬直を示したかと思うと、不意に動きを止めた。
 瞳から光が消えると共に、それまで感じられていた妖しげな雰囲気が無くなっていくのが分かる。
 静けさが広がり、今起きた異常な状況に呆然となった大樹は、大きく息を吐き出しながら摩魅の顔を見つめた。
 無表情で瞳から光を放っている姿は、やはり摩魅とは思えなかった。
 しかし摩魅であるようにも感じられ、その違和感に困惑の想いを抱く。
「これで大丈夫です。もう何も起こりませんよ」
 その声は摩魅のものだった。厳しさはあるものの、いつも通りの声だったのだ。
 瞳の光も消えており、どうやらあの異常な状態は終わったらしい。
 その事に安堵しつつ、再び大きく息を吐き出す。
「今のは何なんだよ摩魅姉さん。訳分からないよ」
 体から力を抜きながら問いかける。少々情けない感じになっているのは仕方ないだろう。
「ごめんなさい。これからちゃんと説明しますから」
 摩魅はそう告げながら、意識を失っている歩美の体に布団をかけている。その様子にはいつもの優しさが感じられ、先ほどの妖しい雰囲気は欠片も無かった。
「今回のことは、全て虞和蛇神の封印に関わることなんです。そのために二人には協力してもらいました。承諾を得ないでしてしまったのは申し訳ないんですけど、説明したら儀式が失敗する可能性もありましたから」
 その言葉に、「また儀式か」と思いつつ、具体的にはどう関わったのだろうと疑問に思う。
「結局俺は何をしたの?」
「大樹には依り代になってもらいました」
「依り代?」
「ええ……実は虞和蛇神の封印が弱まっていたので、もう一つの新しい封印を施す計画があったんです。そのためには従来の封印を一旦解く必要があって、大樹にはその間、封印の代わりとして虞和蛇神の依り代になってもらった訳です」
「それってもしかして、俺の中に虞和蛇神が取り憑いていたってこと?」
「そうです。封印を解いた際、虞和蛇神が鍵の所有者に取り憑くように仕掛けを施しておきましたから、琳霞さまの封印を解いた大樹には、虞和蛇神が取り憑いていたんですね」
「え? 琳霞さまの封印って、俺が解いたの?」
 それは予想外の言葉だった。いつ自分は封印を解いたのだろう。全く覚えがないのだが。
「大樹の持つ鍵で、琳霞さまの封印の錠前を開けたんです」
「鍵って……俺のここにあるっていう……」
 股間に視線を向けながら告げると、摩魅は頷いた。
「封印解除の結界の中で、封印の鍵を封印の錠前へ差し込むこと、つまり特別な場におけるセックスによって封印は解けるんです」
 その言葉に呆気にとられると同時に、納得している部分もあった。それならば儀式として呼ばれて、琳霞を抱いた以外の事をしなかったのも理解出来るからだ。
「かなり欲情してしまったのでしょう? 虞和蛇神は人を悪行へと誘う力がありますけど、特に性的な事に関して作用しますからね。取り憑かれているのでは、その影響も強かったと思いますから」
 あの異常なまでの興奮には、そうした原因があった訳だ。とはいえ、「虞和蛇神に取り憑かれていた」というのは信じがたい話でもあったが。
 しかし実際に強く欲情したのは事実であり、また、その事で琳霞を荒っぽく扱ってしまったのも事実だった。その事を思うと申し訳なさが起きてくる。
 あれは巫女に対してするには、あまりに非礼な行為であったし、何より一人の少女、しかも処女だった相手にしたのだとしても、宜しくない行為だからだ。
 その事を琳霞はどう思っているのだろう。怒っていないだろうか、悲しんでいないだろうか。そう考えると辛くなってくる。
「琳霞さまは、気にしないで下さいと仰ってましたよ」
 摩魅が口にした言葉に固まる。
 まるで今大樹が考えていた事に対して言っているように思えたからだ。
「虞和蛇神の影響が出てからの大樹は、かなり荒っぽくしてしまったのでしょう? その事を気にしないで下さいと仰ってたんです。あれは仕方のない事なのだから、と。琳霞さまも覚悟の上なんです。封印を解いた際にこうなる事は予想されていましたから」
 何ということだろう。琳霞はこうなる事が分かっていて抱かれたというのか。
「相手が大樹さんで良かったです、と仰ってましたよ。他の誰かに同じ事をされるより、大樹さんにされたのなら幸せだと」
「何でそんな……」
「それはやっぱり、大樹の事が好きだからでしょう。抱かれるのなら好きな男の子にされたいし、好きな男の子がするのなら、荒っぽくされても我慢できるものですから」
 そう言われて顔が熱くなる。
 本当に琳霞は自分の事が好きなのだろうか。抱いている最中、そうなのではないかと思える雰囲気を感じてはいたが、それは間違っていなかったという事なのだろうか。もしそうだとすればあまりに嬉しい事だった。
「それって、どういう事ですか?」
 不意に歩美の声が聞こえたため驚く。
 視線を向ければ、体を起こした歩美が不安そうな目でこちらを見ていた。
「あ、気がついたんですね。体の方は大丈夫ですか? 異常はありません?」
「あ、はい。大丈夫です。何か変な感じはありますけど……って、それより教えて下さい。琳霞さまと大ちゃんが、どうしたっていうんですか?」
「後で改めて話すつもりだったですけど、もうこうなったら今言っちゃった方がいいですね。歩美ちゃんには申し訳ないんですけど、儀式のために大樹には琳霞さまを抱いてもらいました。そしてついでだから言っちゃいますけど、お姉さんも大樹に抱かれました。儀式に必要だったからです」
「!……」
 摩魅の言葉に歩美は硬直し、目を大きく開いて呆然としている。
 それはそうだろう。たった今大樹とセックスをしていたというのに、その前に摩魅と琳霞も抱かれた、と言われたのだから。
「え? あの……ええ? 何ですかそれ? ええ……?」
 混乱したように、目を彷徨わせながら驚きの声を漏らしている。
「もう一度言いますよ? お姉さんと琳霞さまは大樹に抱かれました。儀式に必要だったからです」
 繰り返された言葉に、歩美は再び固まっている。
 そして少ししてから脱力したように肩を落とすと、大きく息を吐き出した。
「えっと……要するに摩魅さんと琳霞さまは、儀式のために大ちゃんに抱かれたって事ですか?」
「はい、そうです」
「って、何で? 何で大ちゃんがそんな事……する必要があるんですか?」
 納得いかない様子で歩美は尋ねている。
 歩美にしてみれば、儀式がセックスというのも分からないだろうし、それを大樹が行うというのも分からないだろう。実際に行った大樹にしても、未だ納得していない部分があるくらいなのだから当然だった。
「大樹の中には封印の鍵があるんです。その鍵は、巫女の中にある封印の錠前に差し込む必要があって、それは要するにセックスする事なんですね。だから大樹には琳霞さまを抱いてもらったんですよ」
「な、何でそんな物が大ちゃんの中に……」
「お姉さんが大樹の中に入れました。封印の鍵は大切なものですから、信頼出来る人の中に入れたかったんです」
「摩魅さんが……」
 歩美は困ったように押し黙った。尊敬している摩魅がした事となると反発しにくいのだろう。何より「信頼している人間という理由で大樹を選んだ」という事に納得してしまう部分もあったに違いない。
「お姉さんが大樹に抱かれたのは、その鍵を調整するためです。お姉さんの性器には鍵を調整する力がありますから。調整のためには、鍵をお姉さんの性器の中に入れる必要があって、それでお姉さんは大樹とセックスしたんです」
「じゃあ摩魅さんは、そのために大ちゃんに抱かれたんですか? 好きって気持ちじゃなく、必要だからって理由で……」
 歩美が悲しげな表情を浮かべながら尋ねている。
「必要だったから、というのはもちろんあります。でもそれだけじゃありませんよ。大樹のことが好きだからです」
「それって……異性として好きって事ですか?」
 摩魅の言葉に、歩美は睨み付けるような表情をしながら尋ねている。
「どうでしょう?……異性として好き、という気持ちも無い訳じゃありません。お姉さんは大樹が大好きですからね。でも弟ですから、完全に異性として意識するのは無理です。どうしても弟だと思っちゃいますし……だから好きって気持ちが弟に対するものなのか、一人の男性に対するものなのかは、よく分かりません。多分両方が混ざっていて、ハッキリしないんだと思います」
 大樹にしてもそれは同じだった。摩魅の事は愛しているし、女性としても意識はしているが、やはり姉としての意識の方が強いように思えたからだ。
「それ、何となく分かります。ボクも大ちゃんのこと、家族みたいに思っている部分もありますから……」
 歩美は表情を暗くしながら呟いている。
 幼馴染みとしての付き合いが長い事から、摩魅の言っていることに共感する部分があるのだろう。実際抱く前にも、そうした曖昧な状態から異性として意識させるために抱かれるのだと言っていたのだ。
「そ、それじゃ琳霞さまは、琳霞さまはどうなんですか?」
 その言葉に心臓が跳ねる。大樹としても凄く知りたい点だったからだ。
 セックスしている最中は「幸せです」と言ってはくれたものの、それが自分に対する恋愛感情ゆえとは限らないのだ。
「琳霞さまも大樹のことが好きみたいですよ。もちろん恋愛的にですね」
「ええっ?」
「幼い頃に逢ってから、ずっと好きだったと仰ってましたし、その話をされていた時の表情は、恋する乙女って感じでしたから」
 その言葉に嬉しさが起きると共に、そのような昔から好かれていたのだという事に驚く。幼児の頃に逢って以来、会話すらほとんどした事がないというのに、どうしてそんな状態になっているのだろう。
「幼い頃に逢った、って、それって一度だけですよ? それで何で……あ、もしかして大ちゃん、ボクに内緒で琳霞さまと逢ってたの?」
 睨み付けるようにしながら問いただしてくるのに慌てる。
「逢ってないって。そりゃ会合で逢ったりはしたけど、遠くから見てるだけだし。話だってしてないからな」
 父の役職を引き継いでから、会合などで琳霞に逢うことはあったが、たまに目が合う程度で、好意を持たれるような出来事は何もなかった。
「あの方は、外部と接触することなく暮らしてますからね。幼い頃の出来事でも、ずっと思い続けているんだと思います。それだけ大樹や歩美ちゃんと逢った事は、あの方にとって凄く大切な思い出なのだと、以前に伺ったことがありますよ」
 まさかそんな事になっているとは思ってもみなかった。
 たまたま偶然、一度逢っただけであるのに、その事を大切にし、恋心にまで昇華させていたとは。
 だがそうした想いがあったのだとすれば、昨夜抱いた際の様子にも納得がいった。凄く幸せそうにしていたからだ。
「大ちゃんはどうなの?」
「え……?」
「大ちゃんは琳霞さまの事が好きなの? 前から憧れてるのは知ってたけど、もうそういう関係になってるんでしょ? 一人の女の子として、好きになっているのかって聞いてるの」
 そう言われてもよく分からなかった。
 何しろ琳霞を抱いたことは、あまりに夢のような出来事で、今思うと本当にあったのかと思うくらいだからだ。ましてや恋愛感情があるかどうかなど分からなかった。
「分かんねぇ。分かんねぇよ……」
「それじゃ、摩魅さんの事は? 摩魅さんの事はどう思ってるの?」
「摩魅姉さんは、家族だ。大好きだけど、姉なんだ。異性としても好きだとは思う。だけど姉なんだよ。さっき摩魅姉さんが言ってたのと同じだな」
「ボクはどう? ボクのこと、好き?」
「それも同じだ。お前のことは好きだけど、家族みたいなもんだし、完全に一人の女の子としてなんて見られないよ。それはお前も言ってただろ?」
「そうか、そうだよね。やっぱりそうなるよね……」
 歩美は納得したように呟きながら、悲しそうに微笑んでいる。
「そう思ったからエッチしたんだけどなぁ。でも先に摩魅さんや琳霞さまとしちゃってたなんて……う〜〜、ショックだよぉ……」
 大きく息を吐き出し、寂しげな表情で床を見つめているのに申し訳なさを覚える。
 もし儀式のことが無ければ、自分は摩魅とも琳霞ともセックスはしていなかっただろう。そうなったら歩美とだけした状態になり、今頃は歩美だけを意識していたのかも知れない。
「話を戻してさ、俺は虞和蛇神に取り憑かれてたんだよね? それって結局どういう事なの?」
「虞和蛇神は、神社にある特別な石にずっと封印されてました。それが今回封印を解いた事で大樹の中へ移動したんです。その際に自由にさせないための仕掛けを施しておいたのですが、それが大樹の中にある鍵の特性なんです」
「特性?」
「そう。封印の錠前が開かれると、そこを通じて虞和蛇神は解放されます。その際、鍵に簡易の封印能力を持たせておいて、外へ出ようとした虞和蛇神を捕らえておく、という仕組みです。だから鍵の所有者である大樹の中には、少し前まで虞和蛇神が居たって訳です」
 先ほども同じように言われたが、やはりどうにも信じがたかった。異常な現象が起きている事を考えれば信じられなくもないのだが、あまりに現実離れした内容であるため、いまいち実感が持てないのである。
「大樹が歩美ちゃんを抱いたことで、虞和蛇神は今度は歩美ちゃんに吸い寄せられました。歩美ちゃんの中にある、新しい封印の錠前にはそうした力がありますから」
「え? ボクの中に封印があるんですか? でもそれって巫女さまにあるものじゃないんですか?」
 歩美がビックリしたように尋ねている。大樹にしても同じだった。何故歩美の中にそのようなものがあるのだろう。
「本来は一人の巫女にしか施さないものだったんですけど、封印の力が弱まったので一つの封印では足りなくなったんです。それで巫女の適性のある女性にもう一つの封印を施すことになって、その適性者が歩美ちゃんだったんですよ」
「じゃあ、もしかして歩美が摩魅姉さんの手伝いをしてたのって、これのためだったの?」
「そうです。歩美ちゃんの中に封印の錠前を少しずつ作ってました。それがこの間完成したので、儀式が行われたんです」
 以前から歩美は摩魅の仕事の手伝いをしていたが、まさかそんな理由があったとは思ってもみなかった。
「ど、どこにあるんですか?」
「歩美ちゃんの女の子の部分です」
 摩魅は歩美の股間を示しながらそう告げた。
 なるほど、だから先ほど触れていたという訳だ。封印するには、封印の錠前が存在する場所に触れる必要があったのだろう。
「でもそんなの入ってて大丈夫なの? 歩美は巫女さまじゃないんだから、何かあったりとか……さっきだって凄くおかしくなってたしさ……」
 先ほどの歩美は、まさに妖しげなモノに取り憑かれているという感じだった。まるでホラー映画のように白目を剥いて痙攣していたのだ。
「封印が破られない限りは大丈夫です。もし影響が出てきたとしても、いきなり大変なことにはなりません。そうですね、欲情しやすくなる程度です。性器に施しているだけに、どうしてもそうした影響が出るので。ほら、大樹も前にそうなっていたでしょう? あれは封印が弱まっていたことで、鍵の所有者の大樹にも影響が出ていたんですよ」
「そうだったんだ。でも前は琳霞さまの舞の影響とか言ってなかったっけ?」
「巫女の舞には封印を強める力がありますからね。封印が弱まったことと、強める力の両方が作用していた、という事でしょう。相反する力がぶつかることで、大樹の欲情を高めていたんですね」
 それであの日はあんなに欲情してしまっていた訳か。
 というか、その理屈でいくと、琳霞もあの時欲情していたのだろうか。「封印が弱まっていると欲情する」というのなら、そうであっておかしくないからだ。
 そんな事を考えると、昨夜の乱れた姿を思い出して興奮してしまう。
「大樹、エッチなことを考えてますね?」
「大ちゃん、真面目な話してる時に何考えてるの? やらしいんだから」
 二人にバレバレであった事に恥ずかしくなる。まあ、いつもの事ではあるのだが。
「そう言えば摩魅さん、不思議な力を使ってましたけど、あれは何なんですか? 超能力?」
 それは大樹も気になっていた。摩魅にあのような力があるなど知らなかったからだ。
 それに雰囲気が変わっていたのは何なのだろう。歩美のようなホラー的な怖さは無かったが、別人になっているような印象はあったからだ。
「お姉さんは、錠前師という仕事をしています。封印のための錠前と鍵を作る役職ですね」
 その事は何となく知ってはいた。たまに神社や村の偉い大人達が、摩魅の事を「錠前師殿」と呼んでいるのを聞いた事があるからだ。
「言い伝えでは、摩那賀神が虞和蛇神を封印する際、その手助けをしたのが初代の錠前師と言われてます。それ以降、封印の巫女を見守り、封印の錠前と鍵を作り、封印を監視していく役職として存在しているんです」
「それって、前にお婆ちゃんに聞いた話だ……」
 先日歩美が話していた「封印の手伝いをした人」とはこの事だった訳だ。あの時はどんな役職の言い伝えなのか分からなかったが、どうやら錠前師の事だったらしい。
「錠前師の役職は、その者が亡くなると、次代の錠前師に引き継がれますが、その方法が普通じゃないんです」
「普通じゃない?」
「そう。錠前師は、その身に取り憑いている神が、新たな錠前師の身に取り憑くことによって引き継がれるんです」
「か、神って……?」
「摩那賀神……虞和蛇神を封印した神です」
 その言葉に驚く。つまり摩魅の中には、摩那賀神が居るということなのだろうか。
「お姉さんの中には摩那賀神が居ます。普段は存在を感じさせませんけど、虞和蛇神が関わる事になると出てくるんですね。それでああした力も出せるんです。ただその際に、お姉さんはお姉さんじゃないような状態になるのでビックリさせちゃったと思いますけど」
 確かにあれにはギョッとさせられた。
 別人のような雰囲気があったのは、摩那賀神の存在が強く表に出ていたという訳だ。
 何とも信じられない話だったが、いわゆる神懸かりの状態になっていたという事なのだろう。
「摩魅姉さんっていつからその、錠前師ってのになってたの?」
「四年前からです。大樹のお母さんが亡くなられたので、お姉さんがその後を引き継いだんです。先代の錠前師は大樹のお母さんでしたから」
「そうだったんだ……母さんが錠前師を……」
 それは驚きだった。まさか母がそのような事をしていたとは思ってもみなかったからだ。
「あの日から、お姉さんは錠前師として生きることになりました。辛く感じる事もありましたけど、今では嬉しく思ってます。何しろ鍵の調整という名目で、大樹に抱いてもらう事が出来ましたから。その事もあったので、お姉さんは大樹を鍵の所有者にしたんですよ」
「え……?」
 それではまるで、以前から自分に抱かれることを求めていたみたいではないか。
 あまりの事に驚くと共に、嬉しさが込み上げてくる。
「ちょ、ちょっと待って下さい。摩魅さん、大ちゃんのこと、昔からそんな風に思ってたんですか?」
「はい。大樹の事は昔から大好きでしたけど、大樹が中学生になった頃ですか、男っぽさを感じるようになって、それで異性として意識するようになったんだと思います。姉としての立場を考えると凄く悩んだりもしましたよ」
 そんな悩みを持っていたとは想像もしなかった。摩魅はいつも明るく自分に接していたからだ。
「実際に鍵の調整を始める事になった時は困りました。仕事でするのだから、好きだって気持ちに流されちゃいけないって思いましたので。でも結局駄目でしたね。凄く嬉しくなっちゃいましたから。それに、抱かれた事で完全に吹っ切れちゃった部分もありますし」
「そ、それってどういう意味ですか?」
 歩美が恐る恐るといった感じで尋ねている。
 大樹にしても気になった。自分の事を異性としても好きだという摩魅が、吹っ切れたとはどういう事なのだろう。
「抱かれた事で女性として見られたせいか、大樹の事が今まで以上に好きになったんです。それでこうなったらもう、奥さんになっちゃおうかなって……だから大樹さえ良ければ、お姉さんをお嫁さんにして下さい」
 優しげな笑みを浮かべながら告げてくるのにドキリとする。いつも向けられる笑み以上に、強い想いが籠もっているように感じられたからだ。
「い、いきなりプロポーズって、摩魅さん積極的……じゃなくて、ボク、ボクも大ちゃんのお嫁さんになりたいっ。大ちゃんいいよねっ?」
「いいよねって言われてもなぁ……」
 突如として二人にプロポーズされ、どうしたらいいのかと困惑してしまう。
 ただでさえセックスした事で色々問題が起きているというのに、それで今度は結婚となっては訳が分からなかった。
「ふふ、困ってますね大樹。まあ、取り敢えずこの件は保留という事にしましょう。大樹を好きなのは、お姉さんと歩美ちゃんだけじゃないですから」
「あ、琳霞さまか……うぅ、琳霞さまが相手なんて厳しいよぉ」
「きっと琳霞さまも同じように思っていると思いますよ」
「え? 何でですか?」
「ずっと一緒に居る歩美ちゃんには勝てない、っていつも仰ってますから。あの方は大樹とほとんど逢ってませんからね。そう思うのも当然です」
「そっか……そうだよね。全然逢えてないんだ……」
 不意に歩美は、辛そうな表情を浮かべると押し黙った。
「ね、摩魅さん。琳霞さまが大ちゃんとしょっちゅう逢えるようになる方法ってないですか?」
「どうしてそう思うんですか? 大樹が琳霞さまと逢わない方が、歩美ちゃんには都合がいいでしょう?」
「そ、それはそうだけど……でもこのままじゃ琳霞さまが可哀想だもん。好きな男の子に逢えないなんて可哀想すぎるよ。ボクが同じ立場だったら悲しすぎると思う。だから逢わせてあげたいんです。それでもし大ちゃんが琳霞さまを選んじゃっても、しょうがないです……」
「ふふ、歩美ちゃんならそう言うと思ってました。その事についてはお姉さんに任せて下さい。ちゃんと方法を考えてありますから。というより、実は元々大樹と歩美ちゃんには、琳霞さまと頻繁に逢ってもらう必要があるんです」
「え? 何で?」
「歩美ちゃんには新しい封印になってもらいましたけど、それはまだ不安定なんです。従来の封印、つまり琳霞さまの封印との同調をしなければいけないので。それと大樹の中の鍵も、同じく同調させる必要があります。だから大樹と歩美ちゃんには、琳霞さまと逢ってもらう必要があるんですよ」
「そうなんですか。じゃあ、ボクも琳霞さまに逢えるんだぁ。嬉しいなぁ」
 素直に喜んでいる歩美と違い、大樹には微妙な想いがあった。
 二人きりで逢うのならともかく、歩美と、そしておそらく摩魅とも一緒に逢う事になるのだと思うと、気まずい雰囲気になるのではないかと思えたからだ。
 好きだ何だという話がなければ気に病むことはなかったのだろうが、恋愛的に自分の事が好きだという女性三人と一緒に居るというのは、大変そうに思えたのである。
 とはいえ、儀式のことが絡んでいる以上、断ることも出来ないだろう。
 願わくは、何事もなく済んでくれればいいのだが。
 などと思った大樹は、琳霞と逢えることにはしゃぐ歩美を眺めつつ、嬉しそうに自分を見ている摩魅に微笑み返すのだった。


 大樹は、以前通された儀式を行った部屋に居た。
 裸で布団の上に横たわっている状態だ。
 周囲には、同じく裸になった摩魅、琳霞、歩美の三人がおり、大樹に絡みつくようにして体を触れさせている。
「大樹、んっ……可愛いです大樹、んんっ……大樹は何て可愛いんでしょう……」
 唇に何度も吸い付き、舌で唇を舐め回しながら、摩魅がうっとりと見つめてきている。
 胸元でたわわな膨らみが揺れ、手を伸ばして掴むと、心地良い感触が手のひらに広がった。
「あんっ……もう、エッチなんですから。大樹は昔からそうです。お姉さんの体に触ってばかりです」
「誤解を招くようなことを言わないでよ。そんなに触ってないだろ」
「いいえ、触ってました。小さい頃は近くに寄ると、必ずギュッて抱き付いてきて、その時にお尻に触ってましたから」
「それはたまたまだって……それに小さい頃なら抱き付いたって別にいいだろ」
「別に悪いなんて言ってません。昔からそうだったって言っただけですから。大樹が触ってくれるの、お姉さんは昔から嬉しいんですよ、んっ、んふぅっ……」
 ついばむように唇を触れさせ、舌を絡ませて口内を舐め回してくるのに、ゾクッとした快感を覚える。
 目の前にはぼんやりとした表情を浮かべている美しい顔があり、そんな相手とキスしている事に幸せを覚えた。
 やはり摩魅は素敵だった。愛さずには居られない女性だった。姉であることから強く甘えてしまう存在だった。
(摩魅姉さん……ああ、大好きだぁ……)
 大樹はうっとりとしながら、何度も何度も口づけをかわしていった。
「琳霞さま、ボクがここを舐めますから、そっちをお願いしますね。半分づつってことで」
 歩美の声が聞こえたため視線を向けると、大樹の股間で肉棒を手に持ちながら、琳霞に向かって喋っている姿が見えた。
「はい。宜しくお願いいたします」
「ふはっ、そんな丁寧な言葉遣いじゃなくていいですよぉ。もっと砕けた感じで喋って下さい」
「は、はい。申し訳ありません。どうしてもこうした口調になってしまいまして……」
「わ、わぁ。謝らなくていいです。別に悪いことじゃないですから。ただ琳霞さまが気を遣われているんじゃないかと思っただけですから」
「そうですか。それならば良かったです。それでは一緒にご奉仕をいたしましょう」
 ニコリと微笑みながら舌を伸ばし、肉棒に這わせてくるのに興奮を覚える。
 琳霞に肉棒を舐められるのには、たまらなくそそられるものがあった。淑やかな印象があるだけに、そんな相手に舐められているというのが良いのだろう。
 隣では歩美がそれに合わせるように舌を這わせており、その様子もゾクゾクとするものがあった。
 ずっと一緒に育ってきた相手だけに、こうした女としての行為をさせている事にギャップを感じ、興奮を覚えるのだ。
(ああ、琳霞さまも歩美もいいなぁ……二人とも大好きだぁ……)
 摩魅に対して「大好き」と思ってすぐに、琳霞と歩美に対しても同じくらいの愛情を抱いている自分に苦笑する。
 しかしこれほどまでに可愛い少女達に熱心に愛撫されて、好きにならずに居られる男など居やしないだろう。
 二人の口からは「んっ、んぐっ……」といった声が漏れ、愛おしげに肉棒を舐めているのに満足感が押し寄せてくる。
 美少女達に肉棒を舐めさせている自分は、何と凄い存在なのか。そうした高揚が自尊心を刺激し、強い悦びを生んでいた。
 美しい三つの裸身がクネクネと動き、自分の体を愛撫している。そのいやらしい様子を見ているだけで肉棒の硬度が増していった。
 三人の滑らかな肌を撫でさすり、豊満な六つの乳房を順番に揉みしだくと、手のひらに極上の感触が溢れ、鼻息が荒くなった。
 可愛らしい吐息と共に魅力的な肉体が蠢き、押しつけられるのにうっとりとなる。
(ああ……天国だ……ここは天国だよ……)
 蕩けてしまいそうなほどに心地良い状況に、大樹は頬をだらしなく緩めた。
 そして自分が得ることの出来た幸運過ぎる状態に、改めて悦びを覚える。
 何故大樹が三人とこのような事をしているのかと言えば、これこそが摩魅の言っていた同調のための儀式だったからだ。
 一見性行為でしかないが、その性行為こそが同調のために必要な事らしい。封印の錠前と鍵の所有者同士の接触と、錠前と鍵自体の接触により、同調が可能になるというのである。
 考えてみれば、封印自体が性行為によって行われたのだから、同調が性行為であってもおかしくはないだろう。
 以前琳霞と交わった際は、この部屋には封印解除の結界が張られていたそうで、今は逆に結界を強化する結界が張られているらしい。そうした場でセックスする事により、同調と共に封印の補助もしているというのだ。
 何にせよ、美しい女性三人を相手に性行為を出来るという点で、大樹には何の文句も無い事だった訳だが。
 心配していた「恋敵三人が一緒に居る」という事に関しても、元々互いを好意的に思っている間柄であるせいか、軽い競争意識程度しか出ていないのにも安心した。
 むしろ大樹の寵愛を得ようと、熱心にいやらしい事をしてくるのに嬉しくなったくらいだ。
(これって、いわゆるハーレムってヤツだよね……ああ、俺ってばハーレムに居るんだ……)
 魅力的な女性三人に裸で愛撫され、愛おしそうに見つめられるというのは、何と身も心も蕩けさせる状態だろうか。このままずっと三人相手に快楽に浸っていたかった。
「大樹ぃ……大樹可愛いですよぉ、んっ、んんっ……」
 大樹の顔を両手で挟み、愛おしそうに見つめながら唇を押しつけ、舌を絡めてくる摩魅を見ていると、信じられない想いが起きてくる。
 昔から憧れだった摩魅と、自分は今何度もキスをしているのだ。強く求められ、貪るように唇を擦り合わせているのである。
 男として求められ、愛されているのが、こそばゆくも心地良かった。
「それじゃ琳霞さま、ボクはこっちを……」
「はい。ではわたくしはこちらを……」
 歩美と琳霞のそうした会話が聞こえたと思うと、亀頭が温かくて湿ったものに包まれるのを感じた。
 見れば歩美が亀頭を口に含んで吸い付いており、琳霞は肉幹に舌を絡ませるように這わし、ペロペロと舐めている。
 見事な連携に思わず射精しそうになった大樹は、慌ててその衝動を抑えた。
「大ちゃんどう? 気持ちいい?」
「これで宜しいでしょうか?」
 尋ねてくる二人に頷いて答えつつ、優しく頭を撫でてあげる。
 少女達は目を細め、嬉しそうにしながら、さらに熱心に口での奉仕を続けていった。
「大樹、おっぱい吸って下さい。大樹に吸って欲しいんです」
 そう言いながら、摩魅が口元へ乳房を寄せてきた。
 大きな二つの膨らみが目の前に現れ、その造形の美麗さに一瞬見とれてしまう。
 桜色の乳首がプクッと立っており、無性に吸い付きたい衝動を覚えた大樹は、勢い良く唇を押しつけていった。
「あんっ……大樹、あっ、ああっ……お姉さんのおっぱい、あっ……どうですか?」
「いいよ、凄くいい。摩魅姉さんのおっぱいはたまんないよ」
 思春期になってから、ずっとしたいと妄想していた摩魅の乳房を吸っていることに幸せな想いを抱く。何よりこうしてチュウチュウ吸っていると、安堵の想いが込み上げてくるのが素晴らしかった。
「ふふ、まるで赤ちゃんみたいですね、あんっ……可愛いです大樹、あっ、ああっ……」
 甘く喘ぎながら愛おしそうにこちらを見つめ、頭を撫でてくるのにホッとした想いを抱く。
 やはり摩魅にこうされていると最高だった。
「摩魅さんばっかりズルいぃ。ボクも大ちゃんにおっぱい吸ってもらいたいよぉ」
「ふふ、じゃあ交代しましょう。今度はお姉さんがオチンチンを舐めますから」
「やったぁ。それじゃ琳霞さま、一緒に大ちゃんにおっぱい吸ってもらいましょう」
「あ、はい。宜しくお願いいたします」
 摩魅が股間へ移動し、歩美と琳霞が体を寄せてくる。
 三つのむっちりとした女肉が動くたびに揺れ、その淫靡な蠢きに肉棒が猛る。
 視界一杯に白い肌と柔らかな肉が広がっており、今己が魅力的な女性三人を従えているのだという事に強い満足感を覚えた。
「はい、大ちゃんおっぱいだよぉ。吸ってぇ」
「お願いいたします」
 微妙に大きさと形は異なるが、どちらも美麗で瑞々しい膨らみが眼前に突き出される。
 それだけで幸せな気持ちが溢れてくるのだから、乳房というのは実に男を魅了するものと言えただろう。
(歩美と琳霞さまのおっぱい……スゲェ……たまんねぇよ……)
 両腕を広げ、二人の体を抱き寄せ、顔を魅惑の四つの膨らみに押しつけていく。
 ムニュっといった感触と共に乳房の肉がへこみ、顔がめり込んでいくのが分かる。
 滑らかな肌の感触が顔中に広がり、柔らかで温かな肉に包まれるのが素晴らしかった。
(ふぁ……最高……)
 おっぱいに包まれると、どうしてこう幸せな気持ちになるのだろう。
 そんな事を思いながら、夢中になって顔を擦り付けていく。
「大ちゃん可愛い。ちっちゃい子みたい」
「本当ですね。可愛いです」
 そう言われると男としては微妙な部分もあるが、甘えるように顔を乳房に押しつける行為は凄く良かったため気にならなかった。肉棒もさらに勃起し、ビクンビクンと震えているのが分かる。
「大樹のオチンチン、凄く元気です。歩美ちゃん達のおっぱいがよほど気持ちいいんですね。それじゃ、お姉さんがもっと気持ち良くしてあげます」
 摩魅の声が聞こえると共に、肉棒が温かくて湿っているものに包まれた。口に含まれたのだ。
 舌が絡みつき、擽るように舐めてくるのに、ゾクゾクするような快感を覚える。歩美達のとは異なるねっとりとした動きに、思わず射精しそうになるのを慌てて抑えた。
 続けて強く吸い上げられながら上下にしごかれるのに、腰が蕩けるような良さを感じつつ、美しい摩魅が自分の肉棒を咥えて舐めてくれている、奉仕してくれている、という状況に、嬉しさで一杯になった。
「あっ、あんっ……やだ、感じちゃう、あっ……大ちゃんに吸われると感じちゃうよぉ……」
「わたくしも、ああっ……感じます、あんっ……大樹さんの口が、やぁっ……」
 歩美と琳霞の乳房を掴み、交互に乳首を吸って舐め回すと、二人がいやらしく悶えた。
 桜色をした乳首が勃起し、唾液で光っているのに淫靡さを覚えつつ、強く吸い上げながら回すように舐め、可愛い突起を愛撫していく。
 元気な歩美と可憐な琳霞が悶える様はたまらず、普段とのギャップを感じて興奮が高まり、さらに股間では摩魅の口技により肉棒が追い詰められていて、今にも射精しそうな状態になっていた。
「んっ、んぐっ……大樹、いいんですよ。んんっ……出して下さい、んっ……お姉さんに、大樹のを飲ませて、んっ、んんっ……」
 限界を察したのか、そう告げてくるのに嬉しさが起きてくる。自分の全てを受け入れてくれているように思えたからだ。
「摩魅姉さんっ……くっ、うっ……出るっ、出るぅっ!」
 まるでこちらの射精のタイミングが分かっていたかのように、放つ瞬間に強い吸引が行われた事に驚きつつ、その腰が持って行かれるのではないかという気持ちの良さに意識が遠のきそうになった。
 ドクンドクンと放出を繰り返している肉棒を意識しながら股間に目をやると、頭を揺らして精液を漏らさず飲んでいる摩魅の姿が見えたため、強烈な満足感を覚えた。
 しばらくして射精を終えると、綺麗にするように肉棒が舐め回され始め、それがまた実に気持ち良かった。
(これって……何か覚えがあるなぁ……)
 今されている一連の行為に、大樹は既視感を覚えた。
 それは夢だった。少し前に見たフェラチオをされる夢。その相手である夢の中の摩魅がしたやり方と同じだったのだ。
 もしやあの夢は、本当にされていた事だったのだろうか。
 以前であれば信じられない推測だったが、今の状況を考えるとあり得ないことではないように思えた。
「摩魅姉さん、もしかして俺が寝てる時に、同じことしてた?」
「はい、してましたよ」
 大樹の問いをあっさり肯定するのに、やはり、と思いつつ、何故したのだろうかと疑問に思う。
「前にも話したと思いますけど、お姉さんは大樹の中にある封印の鍵を調整してました。そのために必要だったんです」
「そうなんだ」
 また儀式絡みか、と少し残念に思いながらも納得する。
「というのは建前で、実は途中から大樹のオチンチンをいじりたくてやってました。それでついには舐めちゃったりして……別にそうしなくても調整できるんですけど、大樹のオチンチンがあんまり元気なもので、つい射精させてあげたくなっちゃったんですよ」
 その言葉に摩魅の自分に対する愛情を感じて嬉しくなる。儀式のことが無くても望めば抱かせてくれたのではないかと思えたからだ。いや、きっと抱かせてくれただろう。
「ボクだって、言ってくれればいつでも舐めてあげたよぉ」
「わたくしも、大樹さんがお望みでしたら、いつでもお舐めいたします」
 摩魅に対抗意識を燃やしたのか、歩美と琳霞がそう言ってくる。
「それじゃ今度は三人で舐めましょうか。大樹のオチンチンを早く大きくしましょう」
「はい」
「分かりました」
 摩魅の提案に、歩美と琳霞は返事をすると下半身へ移動している。
「でも摩魅姉さん、こんなんで本当に封印の調整になってんの?」
 そもそもこうして三人に愛撫されているのは、大樹の中の封印の鍵と、歩美と琳霞に施された封印の錠前とを、摩魅が同調させるためだった。
 それは分かるのだが、先ほどから摩魅が何かしている様子はなく、単に四人で性行為を楽しんでいるようにしか思えなかったのである。
「これでいいんですよ。お姉さんはちゃんとやってますから。錠前を持つ歩美ちゃんと琳霞さまと触れ合うことで、大樹の中の鍵が反応を示してます。その流れを導くのがお姉さんの役割ですから」
 そう説明されると、そうなのかと思うしかないのが困ったところだった。何しろ大樹にはその状態が分からないからだ。
「納得してない顔ですねぇ。分かりました。それじゃみんなにも分かるようにしてあげましょう」
 摩魅はそう告げると、大樹の肉棒に手をかざし、念じるようにした。
「うわ……」
 すると驚いたことに、肉棒がぼんやりと光を放ち始める。
「さ、これで見えるようになったでしょう? では歩美ちゃんに琳霞さま、大樹のオチンチンを舐めてあげて下さい」
「は、はい」
「分かりました」
 歩美は動揺したように、琳霞は落ち着いた様子で頷いている。琳霞は巫女だけに、こうした現象に慣れているのかも知れない。
 歩美が舌を這わせると光が少し強くなった。
 続けて琳霞が舐めるとそれがさらに強くなる。
「錠前の所有者が触れると、こうして鍵の反応は大きくなります。それをこうして、錠前に繋げると……」
 摩魅がそう言いながら手を振ると、光が歩美と琳霞の股間へと伸びていった。
「あ、これってさっきからあった変な感じだ……」
「わたくしの中にある錠前が反応を示しています。大樹さんの中の鍵の存在が強く感じられます」
 歩美は戸惑ったように、琳霞は確認するように告げている。
「琳霞さまが今仰った通り、二人の中にある錠前が、鍵の存在を関知して反応を示したんです。ほら、二人のここも同じように光っているでしょう?」
「あ、ホントだ。歩美と琳霞さまのあそこが光ってる」
 二人の股間が、大樹の肉棒と同じようにぼんやりと光を放っていた。
「さらにこうしてお姉さんがすると……」
 そう言いながら摩魅が亀頭をチュウっと吸い上げると、二人の股間へ伸びる光量が増した。
「大樹の鍵と、歩美ちゃんと琳霞さまの錠前の同調が強まったんです。お姉さんはさっきからこうしてたんですよ。分かってもらえましたか?」
 摩魅の言葉に大樹が頷くと、歩美と琳霞も同じように首を縦に振っている。
「それじゃ、歩美ちゃんと琳霞さまも、一緒に大樹のオチンチンを舐めて下さい。もう少し同調を強めたいですから」
「はい」
「分かりました」
 三人が肉棒に舌を這わせ始めると光が強くなった。
 歩美と琳霞は鍵の反応に刺激を受けているのか、感じている様子で体を震わせながら熱心に舐め続けている。
 三つの舌が重なるように肉棒に絡みつき、時折吸い付いてくるのに大きく鼻息を漏らす。
 美しい女性達に肉棒を舐められているこの状況は、何とも素晴らしかった。
 何より白くて柔らかな三つの肢体が押し合いへし合いしている様は、見ているだけで肉欲を高めてたまらないのだ。
 三人の舌と口による愛撫によりすっかり力を取り戻した肉棒は、痛いほどに勃起し、さらなる行為を求めるようにしてビクンビクンと震えている。
 それに合わせるように光量も増し、歩美と琳霞の股間との同調が強まっているのを感じさせた。
「それではそろそろ、大樹に入れてもらいましょう。二人ともここへ並んで下さい。順番は、申し訳ないですけど、まずはお姉さんからにさせて下さい。調整がありますので」
 その言葉に無言で頷いた琳霞と歩美は、摩魅の横に並んだ。
 美しい裸身が三つ並んでいる様子は実に素晴らしく、その中にこれから入ることが出来るのだという悦びに、心臓が激しく鼓動を示す。
「さ、いらっしゃい大樹。お姉さんの中に入って来て下さい」
「う、うん……」
 横たわり、脚をM字に開いた状態で促してくる摩魅に、ゴクリと唾を飲み込む。
 久しぶりに摩魅と繋がれる事に嬉しさが高まった。
 考えてみれば、初めて交わった日以来、欲情しても手を出さずに我慢していたのだ。
 義理とはいえ姉弟である事を気にしての事だったが、こうなるともうどうでもいいように思えてくる。
 とはいえ、やはり禁忌の想いは感じていたため、摩魅の中へ肉棒を入れる事には強い背徳感を覚えた。
 肉付きのいい両脚を左右に開き、肉棒を持って秘所へと近づけていく。
 亀頭の先を膣穴へ付けてから、グイっと腰を前へ進める。
 ズブリという感触と共に、亀頭が温かで湿った肉に包まれるのが分かった。
 そのまま一気に奥まで押し込むと、擦れることで快感が起き、唇がワナワナと震え出す。
「あ……ん……入りました……おっきい、です……あ、んふ……」
 色っぽい声にドキリとしつつ、強く締め付けられ、絡みつかれる刺激に顎を仰け反らせて耐える。
 摩魅と体を繋ぎ合わせたことへの悦びが溢れ、眼下にある美しい顔と体に見惚れてしまう。
 自分は今、この素晴らしい肉体と繋がっているのだ。何と幸せなことだろう。
「さ、腰を動かしてごらんなさい。大樹の好きなように、思いきりしていいんですよ?」
「う、うん……」
 こちらの自由にして良いと、優しく促してくるのに激しい興奮が起こる。
 昔から摩魅は、自分のために何でもしてくれた。そうして全てを受け入れてきてくれたのだ。
 まさかセックスまでさせてくれるようになるとは思ってもみなかったが、それが現実のものとなっている事に、大樹はたまらなく嬉しくなった。
「あっ、あんっ……そう、そうです、ああっ……大樹上手ですよ、あんっ……気持ちいいですぅっ……」
 腰を前後に動かし始めると、摩魅が甘い声をあげた。
 その褒めてくる言葉と、気持ち良くなってくれている様子に鼻息が荒くなる。
 自分のしている行為で快感を得ているという事実が、男としての自尊心を擽るのだ。
 もっと摩魅を喘がせたい、悶えさせたい。
 そうした衝動が激しく高まり、大樹は肉棒を強く突き込んでいった。
「あんっ、あっ……それいい、ああっ……それいいです、あっ……大樹、前より上手くなってます、ああっ……歩美ちゃんと琳霞さまとのことが、あっ……生かされてるんですね、あっ、あんっ……二人にちょっと嫉妬しちゃいます、やっ……でも、気持ちいぃっ……」
 琳霞と歩美を抱いた経験の成果が出ているのだろう。さらに嫉妬してもらえている事に、摩魅の自分に対する独占欲を感じて嬉しくなった。
 その事で益々腰の動きを速めると、耳に響く嬌声が強まっていく。
「あっ、やんっ……おっきい、ああっ……大樹のおっきいです、やっ、あぅっ……お姉さん、ああっ……お姉さん駄目ぇっ……」
 膣内をゾリゾリと擦り上げるようにして肉棒を突き込んでいくと、摩魅が激しく頭を左右に振り、シーツを強く掴んだ。
 いつも穏やかな摩魅の乱れる姿は、何度見てもたまらなかった。
 そしてそうさせているのが、他でもない自分なのだと思うと、誇らしくて最高の気分になった。
 肉棒も膣襞にウネウネと絡みつかれ、吸われており、大樹は蕩けるような気持ちの良さを味わっていた。
「あぁっ、はぅっ……もう、ああっ……もうイっちゃいます、あっ……イっちゃう、ああっ……大樹っ、大樹ぃっ……」
 絶頂が近いらしい摩魅は、背中に両腕を回し、腰に両脚を絡ませてくると、逃がすまいといった感じで強く引き寄せてきた。
 そうされると膣内が強烈に締まり上がり、思わず精を漏らしそうなほどの快感が押し寄せてくる。
「やっ、やんっ……お姉さん、ああっ……お姉さん駄目なのぉ、あっ、あぅっ……イく、あっ……大樹、やっ……一緒に、ああっ……あっ、あぁあああああああっ!」
「摩魅姉さんっ!」
 勢い良く迸る精液を感じながら、そのたびに押し寄せてくる快感に朦朧となる。
 肉棒が律動し、脳内に痺れるような気持ちの良さの塊が届くのを、頭を真っ白にしながら味わっていく。
 少しして射精を終えて脱力すると、荒い呼吸を吐き出しながら、触れている柔らかな肉の感触にうっとりとなった。
 またヤれた。摩魅とセックスをし、その素晴らしい肉体の中に精液を注ぎ込むことが出来たのだ。
 それは何とも言えない悦びを感じさせることだった。
(って、あれ? まだ何か硬いぞ……)
 膣内に収まっている肉棒が、未だ硬く大きいままである事に気がつく。
 しかも無性にセックスしたくなる衝動が押し寄せてきており、それはまるで、まだ射精をしていないかのように強いものだった。
(だったらもう一回……)
 この愛する姉を悶え喘がせ、気持ち良く射精したい。
 そう思いながら体を起こし、再び腰を振り始める。
「あっ、ああっ……大樹、ストップ、あんっ……お姉さんと連続は駄目です、あっ、あんっ……やっ、もぉ、ストップっ、ストップですよぉ、あっ、ああんっ……」
 焦ったように発せられた摩魅の言葉に、ハッとして腰の動きを止める。
(そうだった。歩美と琳霞さまとしなきゃいけないんだったっけ……)
 摩魅への想いと体の気持ち良さから、つい他の二人を相手にするのを忘れてしまうところだった。
「ふぅ……お姉さんに夢中になってくれるのは嬉しいですけど、それは別の機会にしましょうね。今は歩美ちゃんと琳霞さまとの同調を優先しなくちゃいけませんから」
「ご、ごめん……」
「謝らなくてもいいんですよ。気持ち良くしてもらって、お姉さん嬉しかったですから」
 優しく微笑んで言ってくるのに心が温かくなるのを感じる。
 やはり摩魅とのセックスは幸せだった。長年一緒に暮らし、姉弟として愛し合ってきた積み重ねが、そうした想いを高めるのだろう。
「摩魅姉さん、どうして俺のこれ、こんなに元気なんだ? 出してもそのままだったから、ついまたしたくなっちゃったんだけど。やっぱり鍵のせいなの?」
「そうです。錠前との同調が行われてますから、それが落ち着くまでは常に使えるようなっているんですよ。ほら、小さくて柔らかいと入れられないでしょう?」
 つまり鍵としての役割を果たすために、勃起したままの状態になっているという事だろうか。それは何とも異常というか、体に悪そうに思えた。
「だ、大丈夫なのそれ……?」
「大丈夫ですよ。まあ、鍵の影響が無くなった後、凄く疲れちゃうかも知れませんけど。何しろこれから何度も射精する事になりますから」
「う……」
 それは凄く大変そうに思えた。
 だが股間では未だに肉棒が勢い良く屹立しており、肉欲も激しくなっていたため、止めようと思っても無理だったのだが。ここまで欲情している状態で、目の前にある魅力的な三つの女体を無視するなど不可能だろう。
「そういう訳で、頑張って下さいね、大樹」
 にこやかに言われ、どう答えればいいのか分からず、力の無い笑みを浮かべる。
「では次は、琳霞さまです」
「はい。宜しくお願いいたします」
 摩魅の言葉に目を向けると、琳霞は布団の上で正座をし、三つ指をついて頭を下げている。このような時にも礼儀正しい人だった。
 しかし裸でそうしている姿には妙ないやらしさがあった。真っ白な肌に長い黒髪がかかっていて何とも色っぽいのだ。
 外へほとんど出ないせいか肌の白さは透き通るほどであり、手入れがされている髪も、艶のある黒々としたもので美しかった。
「横になれば宜しいでしょうか?」
「はい。あとは大樹がしますので」
 摩魅に促され、琳霞は華奢な体を横たえると、恥ずかしそうに脚をモジモジとさせている。
 神秘的な雰囲気を持つ淑やかな少女が、頬を紅潮させ、そうした仕草をしていると、強烈にそそるものがあった。
「琳霞さま、お願いします」
「は、はい。こちらこそ宜しくお願いいたします」
 のし掛かりながら告げると、琳霞は恥ずかしそうに微笑みつつ、全てを委ねるようにして力を抜いた。
 細い両脚に手を掛けて左右に開くと、美麗な秘所が顕わになり、琳霞が吐息を漏らすのに興奮が高まる。
 そのまま肉棒を近づけ、膣穴へと一気に押し込んでいく。
「あ……」
 入り込んだ瞬間、琳霞がビクビクっと体を痙攣させた。
 その感じている様子に鼻息が荒くなる。大人しい琳霞が性的な反応を示すのには、強くそそるものがあるのだ。
「あっ、やっ……あっ……はぅっ……」
 腰を動かし出すと、こちらの突き込みに合わせてか細い喘ぎが漏れ聞こえた。
 白い体が微妙な震えを示し、豊満な乳房が揺れるのに肉欲が高まっていく。
 膣内に収まっている肉棒は、キュウキュウと締め上げられつつも、柔らかな襞に絡みつかれ、快感を味わっていた。
 大人しい外見とは裏腹に、琳霞の中は男を咥え込もうとする蠢きが強く感じられ、その奥へ奥へと吸引するような感触はまさに絶品と言えた。
「やっ……わたくし、あっ……恥ずかしいです、あっ、あんっ……」
 感じている表情を見られるのが恥ずかしいのか、両手で顔を覆うようにしているのが実に可愛らしい。
 その様子に満足感を覚えつつ、細い腰を掴んだ大樹は、肉棒をさらに突き込んでいった。
「あっ、あんっ……そんな、あっ……それ駄目です、あっ、ああっ……」
 華奢な体に不似合いの豊満な乳房が、こちらの動きに合わせて前後左右に揺れるのがたまらない。
 どうして体は細いのに、胸はこんなに大きいのだろう。
 神秘的な雰囲気のある琳霞だけに、そのギャップは妙な色気を感じさせた。
「ああっ、胸をそんな、やんっ……あっ、駄目、ああっ……駄目ですぅっ……」
 豊満な乳房を両手で鷲掴み、ムニムニと揉みしだくと、琳霞は顔を左右に振って悶えた。
 手のひらに心地良い弾力があり、美麗な膨らみが歪むのに、琳霞を支配している感覚を覚えてゾクゾクとした想いを抱く。
 今自分は、村で尊崇されている巫女を喘がせているのだ。その胸を思いのまま揉みしだき、肉棒を突き込んでいるのである。何と素晴らしいことだろう。
「あっ、ああっ……大樹さん、ああっ……大樹さんが凄く、あっ……凄くて、あんっ……わたくしは、あっ……おかしくなってしまいますぅっ……」
 上方へ逃げるようにして動くのを、腰を掴んで引き戻す。その際に深く突き込む状態になったため、琳霞が体を大きく仰け反らせた。
「ああんっ……やっ、やぁっ……奥に当たって、ああっ……大樹さんのが奥に、あっ、あふぅっ……」
 長い髪を振り乱し、琳霞はシーツを掴んでピクピクと悶え狂った。
 清楚な巫女のそうした様子は、他の男は見たことのないものであり、自分だけが得られている特権だった。
 神に仕えし巫女を、今自分は好きにしているのである。
「わたくし、あっ……わたくしもう、あんっ……駄目、あっ……駄目です、ああっ……限界です、あっ、あぅんっ……」
 興奮から強く大きく突き込んでいると、琳霞の体が激しく揺れ動き、桜色をした唇から涎が垂れるのにいやらしさを覚える。
 慎ましい琳霞が完全に肉欲に狂っていた。快楽に染まり、男を求めて腰を振っているのだ。
 肉棒に対する吸引も強烈なものとなっており、襞が絡みつき吸い付きながら蠢くのに、意識が遠くなりそうなほどの気持ちの良さを覚える。
 限界まで高まった射精感に、このまま一気に精を放つのだと、大樹は強くピストン運動を繰り返していった。
「やっ、やぁっ……わたくし、あっ……わたくしぃっ……大樹さんっ、大樹さぁんっ……あっ、あっ、あぁああああああああっ!」
「琳霞さまっ!」
 大きく体を仰け反らせて絶頂に至った琳霞に合わせ、大樹も肉棒の栓を解放した。
 ドピュドピュっと勢い良く精液が迸り、快感の塊が脳に襲いかかってくる。
 蕩けるような刺激の氾濫に、意識が真っ白になったまま肉棒が律動するのをぼんやりと知覚する。
 数度の射精の後に脱力して倒れ込むと、琳霞の柔らかな肉体が受け止めてくれ、その心地良い感触にうっとりとなった。
 荒い呼吸を繰り返しながら、硬いままの己の肉棒を認識する。
 摩魅の言葉通り、本当に勃起は治まらないらしい。
 そして肉欲も同じように高まったままであり、意識せずとも勝手に腰が動き始めた。
「やっ、やっ……大樹さん、あっ……いけません、ああっ……次は歩美さんです、あっ……わたくしでは、ああんっ……」
 か細い声で指摘されたのを頭では理解したが、その様子が愛らしかったため、余計に肉棒が猛ってしまい、止めることが出来なかった。この可憐で淫靡な肉体を、もっともっと味わいたいとする衝動が激しくなっていたのだ。
 しかも肉棒が強く吸い付かれ、融けてしまうような気持ちの良さがあったため、これほどの快感を得られる行為を止めるなど勿体なさ過ぎるだろう。
「大樹、落ち着きなさい。錠前の力に引っ張られては駄目ですよ」
「うぉっ!」
 不意に腰の後ろを指で強く突かれ、ヒヤッとするような感覚を覚えた大樹は、体を硬直させた。
 同時に後ろへ引っ張られたため、肉棒がズルリと抜ける。
「かはっ……」
 その際に起きた吸引、まるで掃除機で吸われているような強い引き込みに、腰ごと持って行かれたのではないかという錯覚を覚える。
 荒い息を吐き出しつつ、信じられない吸引をしてきた琳霞の秘所を見つめる。
「錠前は鍵を引き寄せます。同調が強まるとその力も強まるので、下手をすると封印解除の結界無しでも封印が解けかねないんです。注意して下さいね」
「えっ、そうなの? それってヤバいじゃん……俺、自分で止められるかな? 今も摩魅姉さんに止めてもらったくらいだし……」
「だから私が同席しているんですよ。こうした事があるので、止める力を持った人間が必要なんです」
 なるほど、そういう役割としても摩魅が居るのが重要という訳だ。
「それじゃ、次は歩美ちゃんです。歩美ちゃん、いいですか?」
「はいっ」
 元気良く頷いた歩美は、いそいそと横になった。
 豊満な乳房がぽよんっと揺れ、改めて歩美が魅力的な肉体であるのを意識する。
 全体的に肉付きのいい体は、抱き締めたら気持ちがいいと思わせる雰囲気があり、実際に凄く気持ちがいいのだという事を、つい先日知ったばかりだった。
 童顔であるのと、首筋までの短い髪である事から幼さを感じさせるが、その体はすでに女として十二分に性徴しており、男の肉欲を強く刺激する部分があった。
「入れるぞ」
「うん」
 大樹の言葉に、嬉しそうに微笑むのに愛らしさが溢れる。何と可愛いのだろう。
 以前からそう思ってはいたが、こうして性行為をする関係になってから、その想いはさらに強くなっていた。
 むっちりとした肉体を見下ろしながら、肉棒を秘所へ押し込んでいくと、すぐさま膣襞がウニュウニュと絡みついてくるのに思わず顎を仰け反らせる。
 そのまま肉棒を全部押し込むと、歩美が背中に手を回して引き寄せてきたため、体が密着する状態になった。
「はぅ……入った……大ちゃんのが入ったよぉ……」
 そう言いながら微妙に動いたため、肌同士が擦れ合って気持ちの良さが溢れた。
 こちらの体を受け止める肉の柔らかな感触がたまらず、溜め息を漏らしてしまう。
 体の前面が女肉に包まれており、そうしているだけでも最高だった。
「あんっ、あっ……やだ凄くいい、あっ、ああっ……いきなり凄くいいよぉ、ああんっ……」
 腰を動かし始めると、歩美は可愛らしく喘いだ。
 どうやらかなり気持ちが良いらしく、すでに息も絶え絶えな状態になっているのに驚く。
「同調が強まってますからね。まだ錠前の力に慣れていない歩美ちゃんは、凄く感じちゃってるんです。大樹も前にそうだったでしょう?」
 摩魅の言葉に納得する。おそらく歩美は、以前大樹が琳霞の舞の影響で、異常なまでに肉欲が高まったのと同じ状態になっているのだろう。
 ならばもっと激しくしてあげないと物足りないのではないかと思い、腰の動きを大きくしてみる。
「ああんっ、あっ……いいっ、いいぃっ……大ちゃんいいよぉ、やっ、やぅんっ……それもっと、ああっ……それもっとしてぇっ……」
 涙ぐみながら笑みを浮かべて強く訴えてくるのに苦笑する。よほど気持ちがいいのだろう。
 与える刺激に敏感に反応してくれるのは嬉しかったため、さらにもっと良くしてやるのだとばかりに、肉棒を荒々しく突き込んでいく。
「あっ、ああっ……凄くいいっ、凄くいいの、あんっ……凄く良くて、あっ……おかしくなっちゃうぅっ……」
 頭を左右に激しく振り、耐えられないといった様子で喘ぎ悶える姿は、まさに肉欲に染まった女という感じだった。
 昔からよく知っている幼馴染みのそうした姿は、隠されていた女の部分を暴き出しているように思えて征服欲が刺激された。
 自分の腰の動き一つで歩美は女になり、雌になり、従うようになるのだ。
 何と素晴らしいことだろう。
「大ちゃぁん、あっ、ああっ……好き、好きぃっ……大ちゃん大好きだよぉっ……」
 ギュッとしがみつき、愛の告白をしてくるのに嬉しさが爆発する。
 まさに自分に全てを捧げているというのが感じられ、それにより肉欲が恐ろしいほどに高まった。
 この可愛らしい少女を、もっと自分に夢中にさせたい。自分に従う女にしたい。
 そうした雄としての欲望が強烈になり、腰の動きを激しくさせていった。
「ああぅっ、あっ、ああんっ……ボクもう駄目、ああっ……ボクもう駄目だよぉ、やっ、やぅっ……ボクもうイっちゃうのぉっ……」
 背中に爪を立てられるのに痛みを感じながら、それ以上に押し寄せてくる快感に身を委ねる。
 肉棒は強く締め付けられつつも、膣襞の蠢きによって吸引され、嬲られ、女肉の中で翻弄されていた。
 抜き差しすることで歩美を悶え狂わせてはいるものの、こちらも耐え難いほどの快楽を与えられているのだ。
 それは先ほどの琳霞の中でも感じたことだが、やはり封印の錠前と鍵の同調ゆえなのだろうか。
「やっ、やんっ……大ちゃんっ、大ちゃ、あふっ……大ちゃぁんっ……イくっ、イくっ、イくぅっ……やっ、やぁああああああんっ!」
「うぉっ!」
 歩美が体を大きく仰け反らせるのと同時に、膣内が締まり上がり、その刺激に耐えかねた大樹は精を放った。
 ドピュッ、ドピュッ、と精液が迸り、勢い良く注ぎ込まれていく。
 押し寄せる快感に身を震わせながら、何度も何度も射精を繰り返していると、意識が朦朧としてきた。
 強い吸引のせいか、こちらが吐き出しているというより、あちらに吸い取られているような感覚を覚えたため、このまま延々に射精し続けるのではないかと思えてくる。
 当然そのような事はなく、少しすると精の放出は止まったが、肉棒は硬く大きいままであり、肉欲も激しく高まったままだった。
 荒い呼吸をしつつ歩美を見ると、頬を上気させ、とろんっとした目であらぬ方向を見ているのにドキリとする。
 その普段は見られない淫らな色っぽい表情に、落ち着かない衝動が昂ぶり、腰を前後に振り始めてしまう。
「あっ、あっ、ああっ……大ちゃんまだ、あっ、あんっ……凄い、ああっ……」
 うっとりとこちらを見つめてくる瞳に色気を覚え、益々肉棒が猛った。
 プルンプルンと揺れる乳房を掴み、そのまま腰の動きをさらに加速させていこうと張り切っていく。
「大樹、ストップ。ストップですよ。ホントお姉さんがいないと駄目なんですから」
「うぁっ!」
 どこか嬉しそうに告げる声と共に、先ほどと同じく腰の後ろを指で突かれ、硬直したところを後方へ引っ張られた。
 それによりセックス自体を止めることは出来たが、膣穴から出てもいきり立ったままの肉棒は、落ち着かない様子でビクンビクンっと震えている。
「ふふ、元気ですね。よっぽど歩美ちゃんの中が良かったんですね。でもお姉さんだって負けませんよ。さ、続けていきましょう。大樹、お姉さんを気持ち良くして下さい」
「う、うん……」
 四つんばいになり、美麗な尻をこちらへ向けて誘ってくる摩魅に頷いて応える。
「琳霞さまと歩美ちゃんも四つんばいになって並んで下さい。今度は短い間隔で交代して行いますから」
「それって、ちょこちょこ相手を変えてやれってこと?」
「ええ。同調とその調整を行うには、短い間隔で交代した方がいいですからね。それにその方が、順番が早く来ていいでしょう?」
 琳霞と歩美を見ながらそう告げた摩魅は、楽しげに微笑んでいる。
「ボクもその方がいいです。実は順番待ってるの、つまらなかったんだよねぇ」
「わたくしもそれで構いません。皆さんとご一緒に楽しめるのは素晴らしいですから」
「二人の了解も得られましたし、大樹、お願いしますね」
「うん、分かった」
 美しい女性達の四つんばいの裸身が並び、ピンク色の三つの秘所がこちらへ向けられているのに、ゴクリと唾を飲み込む。
 これからこの体を交互に抱き、順番に穴に押し込んでいくのだと思うと、何とも言えないワクワク感が押し寄せてきた。
「それじゃ、まずは摩魅姉さんから……」
 そう言いながら細い腰を掴み、ゆっくりと肉棒を押し込んでいく。
 亀頭がハマると襞が捲れ上がり、肉棒を咥え込んでいくのが見え、その様子にいやらしさを覚える。
 それと同時に、蕩けるような快感が肉棒から湧き登って来たため、うっとりとなった。
 気のせいだろうか、先ほどまでとは違う刺激があるように感じられ、思わず体をピクッと震わせてしまう。
「摩魅姉さん。何かさっきより、気持ちいぃ……」
 唇をワナワナ震わせながら、締め付け嬲ってくる膣内の感触に浸る。明らかに先ほどより快感が強いのだ。
「二人の錠前との同調が上がってますからね。その状態でお姉さんの中に入ると、それが快感として感じられるんです。ふふ、たまらないでしょう?」
 確かにたまらなかった。
 こんな気持ちの良さが味わえるなど、あまりに幸せ過ぎた。しかも相手が大好きな摩魅となればなおさらだろう。
 勝手に腰が動き出し、さらに快感を上げていくのに意識が白くなりそうになる。
「摩魅姉さん。ヤバい、ヤバいよ俺……何か止まらない……スゲェしちゃいそ……」
「いいんですよ。何度でも相手をしてあげますから。大樹が満足するまでしていいんです。お姉さんはいつまでも大樹に抱かれますからね」
 全てを受け入れてくれるその言葉に、心地良さと幸福感を覚える。
 やはり摩魅は最高だった。このような女性と姉弟なのは何と幸運なことだろう。しかもセックスまで出来ているのだから何も言うことはなかった。
「ボクだって何度でもいいよ。大ちゃんがしたいならずっと抱かれるから」
「わたくしもです。わたくしも、大樹さんがお望みでしたらいつまでも構いません」
 歩美と琳霞も同じように言ってくるのに嬉しさが増す。
「ふふ、大樹はモテモテですね。お姉さん、ちょっと嫉妬しちゃいます。でもそれこそが、封印の錠前と鍵の所有者との関係としては最善ですから、凄くいいことです」
「想いこそ力、ですね?」
 摩魅の言葉に、琳霞が嬉しそうに応じているのを不思議に思う。この事について何か話でもした事があるのだろうか。
「琳霞さま、それってどういう意味ですか?」
 同じように疑問に思ったのか歩美が尋ねている。
「以前錠前師殿が仰っていたのです。『想いの強さが錠前と鍵を結びつける』と」
「想いが繋がり合っている錠前と鍵は力を強めますからね。親しい者同士、特に愛し合っている者同士であれば、その力は格段に増すんです。お姉さんが歩美ちゃんを錠前の所有者として選んだのも、単に錠前に対する適性だけじゃないんですよ。鍵の所有者である大樹との関係を考慮したんです」
「そうだったんだ」
 何故歩美が選ばれたのか不思議だったのだが、そうした要素があるのだとすれば納得だった。
「琳霞さまとの関係も良好でしたしね。結果として今回の封印はかなり強固なものに出来たと思います。だからもっともっとしていきましょう」
 満足げにそう告げた摩魅は、振り返ってこちらを色っぽく見つめた。
 すると膣内が微妙に蠢き、肉棒が嬲られるのに快感が走り抜ける。
 それに我慢出来なくなった大樹は、勢い良く腰を振り始めた。
「あっ、ああっ……大樹、あんっ……大樹いいっ……」
 すぐさま摩魅が甘い声を漏らし、頭を軽く振って気持ち良さそうにしているのに嬉しくなる。
 肉棒に加わる刺激も強くなったため、快感の鼻息を大きく吹き出しながら、腰を前後に動かしていく。
「あっ、あんっ……いいですよ大樹、あっ、あっ……その調子、あんっ……もっと、もっと下さいぃっ……」
 甘えるように求められると、嬉しさと誇らしさで一杯になる。
 いつもこちらが甘えている摩魅だけに、そうした反応は、立場の逆転のような快感を覚えてたまらなかったのだ。
「あんっ、あっ……気持ちいいですけど、ああっ……そろそろ琳霞さまへ、あっ……琳霞さまへ入れて下さ、あんっ……急にそんな、ああっ……駄目っ、駄目ですぅっ……」
 一旦抜かなければならない名残惜しさから強く突き込むと、摩魅が頭を仰け反らせて喘ぐのに嬉しくなる。
 これを途中で止めるのは勿体なさ過ぎたが、琳霞の中にも早く入れたいという想いもあったため、最後に激しく突き込んだ後、一気に引き抜く。
「ああんっ……もう、残念ですねぇ。もっとしたかったのにぃ……」
 脱力しながら不満そうな声を漏らす摩魅に苦笑する。自分で抜くように言っておいて、それを残念がるというのが面白かったからだ。
 だが不満なのは大樹の体も同じようで、気持ちのいい女肉の中から抜かれたことを責めるように、肉棒がいきり立ち、早く再び収まりたいとする衝動が股間から押し寄せてきた。
 大樹は落ち着かない状態になりながら、体を横へズラすと、琳霞の真っ白い尻を掴んだ。
「琳霞さま、入れますよ?」
「はい。宜しくお願いいたします」
 振り返り、ゆっくりと頭を下げてくるのに苦笑する。
 こんな時でも礼儀正しい巫女さまだった。
 だが目の前にある秘所は、結合を待ち望んでいるように愛液が垂れており、清楚な外見とは裏腹なその様子にゴクリと唾を飲み込む。
 琳霞は抱いている最中も慎ましさは消えないが、それはあくまで精神の事であり、肉体自体は男を求めて熱くなっているのだ。
 そのギャップに興奮を高めつつ肉棒を押し込んでいく。
「あ……」
 か細い吐息を漏らすのに鼻息を荒くしながら、ゆっくり奥へと突き込む。
 すると湿りを帯びた膣襞が、絡みつき吸い付いてくるのに、大樹は思わず頭を仰け反らせた。
「あっ、あっ、ああっ……大きいです、あんっ……大きくて硬いのが、あっ……わたくしの中に、ああっ……」
 勢い良く腰を前後させ始めると、琳霞は可愛らしく喘ぎながらそんな事を呟いている。
 男性器を褒められている事に本能的な喜びが湧き起こり、それをもっと味わわせてあげようと、擦り上げるようにして肉棒を突き込んでいく。
「あっ、あんっ……奥に、ああっ……奥に当たります、あっ、ああんっ……大樹さんのが奥にぃっ……」
 亀頭の先に何かが当たるのが感じられ、それが子宮なのだと思うと、ゾクッとした興奮を覚えた。神聖な巫女の子宮まで達しているという事実に、最も大切な部分を蹂躙している悦びを感じたからだ。琳霞を相手にする際には、そうした特殊な快感が存在するのである。
「ああんっ、あっ、ああっ……奥が擦れて、やぅっ……大樹さんのがわたくしを、ああっ……わたくしを擦ってますぅっ……」
 頭を大きく仰け反らせ、美麗な黒髪を振り乱しながら喘ぐ琳霞の姿は、美しくもいやらしかった。
 この淫らな巫女さまを、もっともっと蹂躙したい。
 そうした想いに包まれながら、大樹は腰を激しく振っていった。
「大樹、そこまでです。歩美ちゃんに移って下さい」
 摩魅の言葉に、名残惜しさがやはり起こる。
 この美しい肉体に射精する前に抜くなど、勿体なさ過ぎるだろう。
 だが隣に居る歩美の肉付きのいいプニプニとした肉体に目をやると、そこへ入れたい気持ちも起きてきた。
「大ちゃん、早くぅ……」
 甘えるように言いながら、我慢できない様子で尻を振っているのを見ると、途端に肉棒がグンっと力を増した。
「ああんっ……大樹さんのが大きく、あっ……急に大きくなりました、あっ、ああんっ……」
 琳霞の中に入れているのに、歩美の事で欲情するなど実に失礼だと思いつつ、その事で興奮が起きて腰の動きが勝手に速まっていった。
「大樹、交代ですよ。ほら、抜いて下さい。全く、琳霞さまにご執心すぎです」
「うおっ!」
 腰の後ろを強く突かれ、それによって仰け反った瞬間、後方へ引かれて強引に肉棒を抜かれる。
 その際に膣襞に強く吸い付かれたため、思わず射精しそうになるほどの快感を覚えた。
「摩魅姉さん、急に抜いたら危ないって。出しちゃうところだったよ」
「こうでもしないと止まらないじゃないですか。全く琳霞さまに執着持ちすぎです。お姉さんの時はあっさり抜いたくせに」
 不満そうに告げてくるのに可笑しくなる。こうした態度はこれまで見たことが無かったが、やはり男女の関係になった事で甘えるような感覚が起きているのだろうか。
「またすぐに入れてあげるから我慢してよ。その時は摩魅姉さんにも執着するから」
「執着したら駄目なんです。そうじゃないと短い間隔でしている意味が無くなるじゃないですか」
「う〜〜ん、じゃあ、後でゆっくり抱いてあげるからさ。家に帰ってから。それならいいでしょ?」
「え?……そ、そうですね。家に帰ったらゆっくりと……ふふ、しょうがないですね。大樹はエッチなんですから……」
 嬉しそうに微笑むのを可愛らしく思う。
 そうなのだ。摩魅とは家でもセックス出来るのである。それこそ朝まで何度しても構わないのだ。神社でするのと異なり、人目を気にせず出来るという点で素晴らしいだろう。
「いいなぁ。ボクも大ちゃんと一晩中したいぃ……」
 歩美が不満そうな声をあげた。
 考えてみれば、歩美とだけ一晩中セックスした事がなかった。それは何だか可哀想な気がしてくる。
「それじゃ今度、うちに泊まりに来いよ。一晩中抱いてやるから」
「え? いいの?」
「ああ。俺としても、お前を好きなだけ抱いてみたいしな」
「うわ、大ちゃんエッチ……そんなにボクのこと求めちゃったりしてぇ」
 歩美は両手を頬に当てながら、恥ずかしそうに体をクネクネと動かしている。
「馬鹿、俺はお前が可哀想だと思って……」
「誤魔化さなくていいんだよ。大ちゃんがエッチなのは昔から知ってるんだから」
「そうですね。大樹は昔からエッチです」
「そうなんですか? 大樹さんは昔からエッチなんですか?」
「うわぁ、違いますって。琳霞さま違いますから」
 琳霞が不思議そうな顔をして尋ねてくるのを慌てて否定する。摩魅や歩美は冗談交じりだが、琳霞は大まじめに受け取るからだ。
「何が違うんだよぉ。大ちゃん昔からエッチじゃん」
「そうです。大樹は昔からエッチですよ」
「大樹さんは昔からエッチなんですね」
 三人に連続で言われたため、否定する気力が萎えてしまった。
 それに実際エッチなのは本当なのだから、否定するのも微妙に思えた訳だが。
「エッチな大ちゃんは、ボクと一晩中エッチするの。ふふ、楽しみだなぁ……って、それはともかく早く入れてよぉ。待ちくたびれちゃった……ボク、大ちゃんのが欲しい……」
 最後だけしおらしく告げてくるのにドキッとしてしまう。
 普段元気少女なだけに、たまに見せるこうした態度には強烈なインパクトがあるのだ。
「よ、よし……入れてやるからな……」
 少し動揺しつつ、肉付きのいい尻を掴む。
 すると手のひらに柔らかな肉の感触が広がったため、その心地良さに鼻息が荒くなった。
 童顔なくせに、どうして体はこんなにふくよかなのだろう。そんな事を思いながら肉棒を押し込んでいくと、柔らかで湿った肉がじんわりと締め付けてきたためうっとりとなった。
(中もぷにぷにでたまらん……こいつ、何でこんなに気持ちいいんだよ……)
 肉付きの良さ、という点では摩魅よりも優れているだろう。まさに女肉としての魅力は歩美が一番だった。
 何より肉棒を締め付けてくる肉の感触は、絶品と言えるほどに心地いいのだ。
「あっ、あんっ、ああんっ……来た、来たよぉっ……大ちゃんのオチンチン、ああっ……凄くいぃっ……」
 腰の動きに合わせて小さな頭を仰け反らせ、短い髪を揺らしながら悶えるその姿は、容姿が幼いだけに実にそそった。
 小さい体でありながら、胸元でプルンプルンと存在を示す膨らみは大きく、その事も肉という印象を強めた。
 まさに気持ちのいい女肉の塊に肉棒を突っ込んでいるという感じがして、それだけで射精しそうなほどの快感と興奮が押し寄せてくるのだ。
「やっ、やんっ……大ちゃん凄い、ああっ……凄いよぉ、あっ、あっ……大ちゃん凄いのぉっ……」
 振り返り、泣きそうな顔で褒め称えてくるのに鼻息が荒くなる。
 童顔の歩美が淫靡に顔を歪める様は、背徳感を呼び起こしてたまらなかった。
 肉棒も膣内で強く締め付けられ、嬲られており、その吸い付くように擦り付けてくる感覚は、涎が垂れそうになるほどに最高だった。
(あ、やべっ……出ちまいそ……抑えないと出ちまう……)
 短い間隔で相手を変えるこのやり方は、経験のない行為だったせいか興奮が高まっているらしく、限界が近づいてきているようだった。
 まだ精を漏らしたくない大樹は、射精感を抑えるために意識をそらそうとした。
「やっ、やぁんっ……大ちゃんいいよぉ、あっ、ああっ……大ちゃんいいのぉ、ああんっ……そこ、そこぉもっとぉっ……」
 だが歩美が可愛らしく喘ぎ、いやらしくねだってくるのに意識が引き寄せられ、その魅惑的な肉体が目に入ると、射精感が一気に高まってしまった。
「ちょ、歩美待て、くっ……お前吸い付きすぎ、うぅっ……気持ち良すぎだってっ……」
 さらに膣内がキュウっと締まり上がり、包み込まれた肉棒が揉みしだかれるようにされると抑えきれなくなった。
 このままでは出してしまう。というか、もう出る。
 そう思った時だった。
「ふぐぁっ!」
 不意に腰の後ろの辺りを思いきり指で突かれたため、体が硬直し、ヒヤッとした感覚が走り抜けると同時に、それまであった射精感が一気に消え去った。
「摩魅、姉さん……それ止めてよ。何かキツい……」
 何度かされているが、この止める方法は心臓に悪い刺激であるため、どうにも好きになれなかった。
「でもこれやらないと出しちゃうでしょう? まだ出しちゃ駄目ですから我慢して下さい」
「出しちゃ駄目って、何でさ?」
「同調を強めるには、射精するまでに交互に入れるのを三回は繰り返して欲しいからです。短い間隔だから言わなくても出来ると思ったんですが、どうやら大樹にはまだ無理だったようですね。刺激が強すぎたみたいです」
 そう言われると、自分が男として未熟だと認識されているようで悲しくなった。
「ふふ、そんなに落ち込まないで下さい。これから経験を積めばいいんですから。それまでお姉さんがお手伝いしてあげますからね」
 それは嬉しい言葉であったが、いつまでも摩魅に甘えっぱなしというのも情けないだろう。
 とはいえ、歓喜に包まれてもいるのだから、やはり自分はシスコンなのだ。
「ほら、こういうところで摩魅さんには勝てないんですよ。あの顔見てください。甘えん坊って感じでしょう? 大ちゃんは摩魅さん大好き、っていうか、凄く依存しちゃってるんです」
「よく分かりました。錠前師殿は大樹さんの正室という事ですね。ではこれからは正室としても敬っていくようにいたします」
「うわ、正室って何ですかそれ? 時代劇みたい。でも確かにそうですねぇ。摩魅さんは正室って感じだもんなぁ。じゃあ、ボクと琳霞さまは側室? う〜〜ん、何だか変な感じ」
 馬鹿な事を言っている歩美に苦笑しつつ、真面目に正室だと考えているに違いない琳霞にどう応じたものかと思う。
 というか、実際自分たちの関係は何と表せばいいのだろう。
 恋人、という訳でもないし、そもそもそうであるなら三股状態だろう。しかも合意の上での三股だ。
 そういう意味では正室や側室というのは合っていることになった。
 実際大樹にとり、三人に対する想いは優劣を付けることが出来ないのだから、同じように愛しているとしか言えなかった。
「お姉さんが正室ですか? それはいいですねぇ。大樹とは一緒に暮らしてますし、確かにそうかも知れません。それでは大樹とお姉さんが結婚するって事で宜しいですね?」
「え? そ、それは駄目ですよぉっ。それは別ですからっ……ほら、琳霞さまも何か言わなくちゃ駄目ですって」
「ですが錠前師殿が正室である以上、婚姻されるのは当然の事なのでは?」
「あれは冗談ですってば。ちゃんとした話ならボクは譲らないです」
「ですが大樹さんが依存しているという意味では、錠前師殿が正室になられるのが最も適していると思われるのですが」
「で、でも結婚はやっぱり依存とかじゃなく、一番好きな人とするものだし……そういう事でなら、ボクはまだ勝負捨ててないから……」
「一番好きな人と? そうなのですか?」
 歩美の言葉に、琳霞はきょとんとした表情で疑問を口にしている。
「そうに決まってますよぉ。琳霞さまは違うと思ってたんですか?」
「はい。わたくしはずっと、皆が決めた相手と結婚する事になっておりましたので」
 その言葉に、歩美は鼻白んだように黙り込んだ。
 大樹にしても驚いたが、巫女という立場を考えれば、そういうものなのかも知れない。
「そ、そんなの駄目だよぉっ。絶対駄目ぇっ……結婚は、ちゃんと好きな人としなくちゃっ」
 歩美は琳霞の肩を掴むと、真剣な表情で見つめている。
 その態度に驚いたのか、琳霞は目を丸くして戸惑ったようにしている。
「いい? 結婚ってのは女の子にとって一番大切なことなんだからね。それを他人任せにするなんて絶対駄目。琳霞さまには立場とか色々あるの分かるけど、でもこれだけは譲っちゃ駄目だよ。何があっても駄目。いい? 強制されそうになったら断固反対するのっ。そうしなきゃ駄目だからねっ」
 泣きそうな顔になりながら琳霞に告げている歩美に驚く。どうしてこれほどまでに拘っているのだろう。
 だがすぐに、歩美は昔から人に強制されるのを凄く嫌うところがあるのを思い出した。大抵のことは嫌なことでも受け入れるのだが、相手が強制的にしようとしてくると、猛烈に怒って反発するのだ。
「分かりました。結婚は自分の好きな人といたします」
 琳霞はニコリと微笑み、嬉しそうに歩美に頷いている。
 そしてこちらへ視線を向けてくると、真剣な表情で見つめてきた。
 その瞳には強い意志と、執着を感じさせるものがあったため、思わずたじろいでしまう。
 一見気弱そうに見える琳霞だが、その実、芯の強さを感じさせる部分があり、その迫力にはかなりのものがあった。さすがは巫女といった所だろう。
「うん、これで琳霞さまも加わって三人で勝負って事だね。負けないぞぉ」
 歩美は、琳霞が結婚相手を自分で決めることにしたのが嬉しいのか、両手を胸の前で合わせてニコニコしている。
「はい、わたくしも負けません」
 それに楽しそうに応じる琳霞を見ていると、何やら微笑ましくなってきた。
 とはいえ、選ばなければならない立場としては、どうしたものかと困ってしまうのだが。何しろ結婚は一人としか出来ないからだ。
「でもお姉さんは、もう大樹からプロポーズされてるんですよねぇ」
 摩魅の言葉に、歩美と琳霞は同時に停止した。
 そしてそのままゆっくり首をこちらへ向けてくると、どういう事なのかという目で見つめてくる。
 そう言えば最初に摩魅とセックスした際、結婚を申し込んだのを思い出した。
 だがそれは摩魅の方から無かったことにするよう言われていたため、何故今更持ち出してくるのかと疑問を抱く。
「あれは摩魅姉さん断ったじゃないか。頭が混乱して言ってるだけだからって」
「そうですけど、プロポーズされた事には変わらないでしょう? お姉さんはその事を言っただけですよ。で、どうなんですか? 今もまだお姉さんと結婚、したいですか?」
「う……そ、それは……」
 したいことは確かだった。しかしここで頷いては、何だかマズいような気がしたため口ごもる。
「大ちゃんどうなの? 摩魅さんと結婚したいの? 教えてよ」
 歩美の言葉に、琳霞も同意するように見つめてくるのに、どうしたものかと固まってしまう。素直に口にするのには抵抗を覚えたからだ。
「もちろんしたいですよねぇ。お姉さん、大樹との結婚なら大歓迎ですから。今まで通り大樹のお世話をしてあげますよぉ。あ、違いますね、奥さんになるんですから、今まで以上に凄ぉくお世話してあげます。もちろんエッチなことも。朝から晩までお姉さんが可愛がってあげますからねぇ」
 甘ったるい口調で誘うように告げられるのに、体が震え出し、引き寄せられるような感覚を覚える。
 何しろ幼い頃からずっと甘えて育ってきた相手なのだ。そんな摩魅に今まで以上に甘えることができ、さらに性的な意味でも可愛がってもらえるとなれば、それはまさに天国とも極楽とも言うべき素晴らしい生活に思えたのである。
「ああ、大ちゃんがフラフラしてる。凄くだらしない顔で笑ってるよぉ。摩魅さんに強烈な甘えていいですよオーラ出されて、完全に虜になってるぅ……」
「さすがは錠前師殿。正室でいらっしゃいます。心の奥底まで大樹さんを虜にされておられるのですね」
 困ったように告げる歩美と、感嘆したように告げる琳霞に、何だか自分が完全に摩魅のものにされている感覚を覚えた。
(って……自覚あるけどさ……)
 依存している、という意味では摩魅に敵う者は居ないだろう。ゆえに甘える対象として考えるのであれば、何も悩むことはなかった。
 だが結婚となれば別だ。結婚はそうした事ではなく、女性として愛せる相手とするべきだからだ。
「でもでもぉ、結婚はそういうのとは違うもん。ちゃんと好きな人とじゃないと駄目だもん。大ちゃん、分かってるよね?」
「あ、ああ……そうだな……」
 同じ考えを歩美が告げてきたのに驚きつつ、その通りだと頷いて応じる。
「大樹はお姉さんのこと、好きじゃないんですかぁ? お嫁さんにするほど、愛してくれてはいないんですかぁ?」
「う……」
 そう言われると、そのくらい愛しているようにも思えた。確かに摩魅には強く依存してはいるものの、それと同時に女性としても十二分に惹かれている相手だからだ。そもそもそうでなければセックスしたいとは思わないだろう。
「ふふ、やっぱりお姉さんが一番ですよね。お姉さんと結婚しましょう」
「うわぁ、駄目だよぉ。それは駄目ぇ。ほら、琳霞さまも何か言って下さい。このままじゃ大ちゃん取られちゃいますよぉ」
 慌てた様子で否定する歩美の言葉に、琳霞は何ごとかを考えているようにすると、少ししてから口を開いた。
「結婚は、一人としか出来ないものなのでしょうか? 先ほどからお話を伺っていると、そのように思えたのですが」
「え……?」
 琳霞の予想外の問いに、思わず思考が停止する。何故そのような当然のことを尋ねてくるのだろう。
「当たり前ですよ。結婚は一人とするものですから」
「そう、なのですか……わたくしが読んだ書物には、複数の女性を妻としている内容のものがありましたので……錠前師殿のことを正室と思いましたのも、妻の筆頭として感じられたからなのですけれど……」
 確かに正室、側室という話になれば、妻は複数持てることになるだろう。だが現在の日本においては妻は一人きりであり、複数の妻を持つなどという事は許されていなかった。
「別に複数の女性を妻にすることは出来ますよ。まあ、戸籍に登録するのは無理ですけど。でも勝手に奥さんを沢山持っても問題にならないですからね」
 摩魅の言葉に、言われてみればそうだな、と納得する。
 戸籍上の結婚は重婚を禁止されているが、勝手に妻とするだけなら問題ないのだ。要するに国に届け出ているかそうでないかという違いでしかないだろう。
「そうなのですか。それは知りませんでした。歩美さんが気にされていたのも、戸籍への登録という意味なのですね?」
「え?……あ、はい。そうです……でも何かそういう言い方されると、結婚が形だけって感じがしてくるなぁ。拘ってるのが馬鹿らしくなってくるっていうか……」
「でしたら戸籍のことは考えずに、仲良く三人で大樹さんの妻になるというのはどうでしょう。そのようにしても問題はないのでしょう?」
「ええ、問題ありません」
 確認するように摩魅を見た琳霞は、肯定の返事をされた事に嬉しそうに微笑んだ。
「ではそれで宜しいではないですか。いかがですか歩美さん」
「大ちゃんの奥さんになれるなら、ボクは嬉しいけど……う〜〜ん、だけど何か変な感じ……でもま、いっか」
 歩美は納得いかないような表情を浮かべていたが、すぐに気を取り直したのか明るく笑っている。そうした切り替えの早さと思いきりの良さが歩美の魅力だった。
「それでは早速夫婦として愛し合いましょう。三人で大樹さんを愛していくのです」
 琳霞が威厳のある口調で告げてきた事で、セックスがまるで儀式のように思えたため変な感じを覚えた。
 歩美も同じなのか、目を白黒させてギクシャクと頷いている。
「ふふ、さすがは琳霞さま。こうした事の仕切りはお見事です。二人ともすっかり従っちゃってますね」
「何かおかしな事を申してしまいましたでしょうか?」
「いえ、実に的確なご指示だと思いましたよ。三人で大樹を愛していく。そして大樹にも愛してもらいましょう」
「う〜〜、摩魅さんや琳霞さまと一緒ってのは楽しいけど、何かやっぱり変な感じ」
 かしましく会話をしている三人を見つめつつ、大樹は彼女達が自分の妻になるのだという事に嬉しさを覚えた。
 戸籍上は結婚せず、関係性は夫婦になるというのは妙な感じではあったが、誰か一人に選択できない、いや、選択したくない大樹としては実にありがたい提案に思えた。
 何より三人がそれに同意してくれているのだから何の不満もなかった。もし「一人を選べ」と迫られていたら困ってしまっていただろう。
「それでは続きをしましょうね。大樹、お姉さんに入れて下さい」
 そう誘ってくる摩魅の言葉に頷きながら肉棒を押し込んだ大樹は、ズブリとハマり込む感触にうっとりしつつ、勢い良く腰を振っていくのだった。


 あれから数ヶ月が経った。
 その間、大樹は摩魅達を毎日のように抱いていた。
 三人を同時に相手にし、何度も射精している訳だが、衰えることなく性欲が湧き起ってくるのには、驚きを通り越して異常としか思えなくなっていた。
 摩魅によるとそれも鍵の影響らしい。錠前との同調が上手くいっているため、エネルギーが循環し、そうした状態になっているというのだ。
 体力自体も上がっているようで、何度射精をしても疲れが起きず、繰り返し抱く事が出来ていた。
「あっ、ああっ……大樹いいです、あんっ……凄くいいですよぉっ……」
「やっ、やぅっ……大樹さん、ああっ……素晴らしいです、あっ……大樹さん、素晴らしすぎますぅっ……」
「あんっ、ああっ……大ちゃん凄い、あんっ……大ちゃん凄いよぉっ……」
 裸で三人と絡みながら、肉棒を押し込んでは引き抜き、相手を交代する事を大樹は的確に行っていた。
 入れていない相手には常に手や口で愛撫を行い、気持ち良い状態でいるようにしてあげている。
 普通に考えればかなり無茶な行為だったが、一度に三人を相手にする事を続けていた結果、自然とそうした事が出来るようになっていた。妻として付き合い、抱いているだけに、不平等になってはいけないと意識して頑張った成果だった。
 今や三人は大樹の妻だった。
 これは冗談ではなく、本当にそうなっていた。
 正室だなんだという話をした際は、自分たちの間だけでの決めごと、として受け取っていたのだが、数日後には村の会議で決定され、村公認の関係として三人を妻とすることになったのだ。村人に盛大にお披露目までしたのだからとんでもないだろう。
 とはいえ、後で学校の友人達と話した感じでは、どうやら儀式の一環として捉えられているらしく、要するに見せかけだけのものとして解釈されているようだった。
 確かに戸籍上は結婚していないのだし、そう捉える方が合っているだろう。
 しかし摩魅達の想いは真剣であり、見せかけなどではなく夫として愛してくれていたため、大樹としても彼女たちを妻として愛するようになっていた。四人の間では、本当の意味で夫婦の状態になっていたのである。
 毎日のようにセックスをしているのも、同調作業のためだけでなく、お互いが愛し合っているがゆえだった。
「あんっ、あっ……大樹あんまり押すと、赤ちゃんが、あんっ……」
「そうですね。もう少しゆっくりお願いしま、やっ、やぁっ……」
「お腹重いんだから労ってよぉ、あっ、ああっ……」
 三人の言葉に慌てて腰の動きを緩める。気持ち良くてつい力を込めてしまったが、あまり強くしてはいけなかったのだ。
「そう、それくらいですよ、あっ、あぁっ……」
「これならばお腹の赤子も大丈夫でしょう、やっ、やぁっ……」
「まったく、始めると夢中になっちゃうんだから大ちゃんは、あんっ、ああっ……」
 歩美の指摘に苦笑しつつ、胎児に影響の無いであろう突き込みをしながら快感を味わっていく。
 数ヶ月前、三人は妊娠した。しかも同時にだ。
 まるで一人だけを妊娠させては問題があるだろうと、何かの力が作用したかのように見事なまでに一緒だった。
 まさか摩魅が何かしたのかと思って尋ねてみると、「さすがにそこまでは出来ませんよ」と笑いながら応え、続けて楽しげに「でももしかしたら、お姉さんの中に宿っている摩那賀神がしてくれたのかも知れませんね。お姉さん達がもっと仲良く出来るように」というような推測を述べた。
 確かにこの凄い偶然は、神の力が働いていると考えると納得する事が出来た。
 もし一人だけ妊娠したり、一人だけ妊娠しなかったり、といった状態になっていたら、色々大変な事になっていただろう。
 それを防いでくれたのだとすれば非常にありがたい事であり、大樹としては摩那賀神に感謝の想いを抱かずにはいられなかった。
 三人の仲の良さを考えれば、嫉妬に狂って争いを始めるという事はないだろうが、寂しい想いをさせてしまう事はあり得たため、そうならないで済んだことにホッとしたのである。
「あんっ、それもっと、あっ……大樹それもっとです、ああっ……」
「やっ、やぁっ……そこをそんな、あっ……そこは駄目ですぅっ……」
「あっ、ああっ……大ちゃん激しい、あんっ……大ちゃん激しいよぉっ……」
 大きな腹をした三人が、激しく喘ぎ悶えている。
 少々歪んだ体型になってはいても、美しさは変わらず、逆に妙な色気を感じさせるのだから不思議だった。
 元々綺麗な容姿であるのもその要因だろうが、何より神秘的な雰囲気を持っているのが大きいのかも知れない。
 摩魅は神の宿る女性であり、琳霞と歩美はその神に仕える巫女だった。
 三人は普通の人間ではなく、神と深い関わりを持つ存在なのだ。
 そのような神聖な女性達を、今自分は抱いている。肉棒を突き込んで喘がせ、悶えさせているのだ。
 三人は自分の妻だった。
 摩那賀神に関わる存在を己一人の物とし、従わせ、妊娠までさせているのである。
 それはまるで、自分が神より上の存在になったかのような錯覚を覚えて最高だった。
「ああっ、大樹いいっ……大樹のがお姉さん、ああっ……たまらないです、あっ、ああっ……大好きですよぉっ……」
「こんな、やっ、やぅっ……大樹さん、ああんっ……わたくし、ああっ……お慕い申しておりますぅっ……」
「あんっ、あんっ……来るよ、ああっ……大ちゃんのが来るぅ、やっ、やんっ……大好き大好きぃっ……」
 三人の自分に対する好意の言葉に心が温かくなり、肉棒がグンっと力を増した。
 見れば股間から光が放たれており、封印の鍵が反応を示しているのが分かる。
 琳霞と歩美の股間も光を放っていて、それらが摩魅の股間で渦巻いた後、大樹の股間へと向かう流れが出来ていた。
 これが摩魅の言っていた力の循環らしい。
 最近はこうした現象を摩魅の手助けなく知覚出来るようになっており、自分が異常な存在に変わっていっているように思えて少し怖く感じる事もあった。
 だが愛する三人と共に生きていけるのであれば、そのような事は微々たることだろう。己が強い愛情に包まれているのが感じられ、恐れることなど何も無いのだという安心感が起きてくるからだ。
(これが、想いこそ力、って事なのかな……)
 以前摩魅と琳霞が話していた言葉を思い出し、四人の中で渦巻いている力を意識する。
 日々強まっている力。これが封印の力なのだろう。
 封印の錠前と鍵である自分たち、そしてそれを管理する摩魅。
 四人が一体となっている事で、封印の力は強まっている。
 だがそれとは異なるものが、四人の繋がりにはあるように思えた。
 人に対する愛情。
 幼い頃、両親を亡くした時に摩魅が示してくれたもの。
 あれこそが、自分をこれまで明るく生きさせる力になっていたように思えた。
 摩魅の告げた「想いこそ力」とは、そういった意味の事なのではないだろうか。
 封印の力はそれを利用したものであり、それゆえに摩魅は、封印の錠前や鍵の所有者として、互いに好意を抱き合い、さらに琳霞からも親しみを持たれている自分と歩美を選んだのではないだろうか。
(別に封印のことだけじゃない。こうして愛し合って、お互いに好意を持つことってのは、凄い力を生むんじゃないか……?)
 そんな事を考えながら摩魅を見ると、まるでこちらの心の声が聞こえたかのように、優しく微笑んで頷いてくるのに驚く。
 しかし神が宿っているのであれば、そうした事が出来ても不思議ではないのかも知れない。以前から心を見透かされているような印象を覚えることがあったが、実は全てお見通しだったという事だろうか。
 そう思うと恥ずかしくなったが、それ以上に摩魅に見守れていたのだという事を感じて嬉しくなった。
(俺は摩魅姉さんのおかげでこれまで生きてこられた。これからは摩魅姉さんを助けていけるようになろう。そんで琳霞さまをもっと元気にさせて、歩美とももっともっと楽しくやっていくんだ)
 皆への強い愛情を抱きながら腰を激しく振り、愛撫をしていくと、三人の妻達は幸せそうに喘ぎ悶えた。
「ああんっ、愛してますよ大樹、ああっ……お姉さんは大樹を、あっ……愛してるんですぅ、あっ、ああっ……」
「わたくも、やんっ……大樹さんを、あっ、あっ……愛してます、ああっ……愛しておりますぅ、ああっ……」
「ボクだって、あっ、あっ……ボクだって大ちゃん愛してるもん、ああっ……一番愛してるんだからぁ、やぅっ、ああんっ……」
 自分を愛おしく見つめ、求めるように愛の言葉を告げてくる妻達を見つめながら、大樹は己の中に強い愛情と、力が湧き起こってくるのを感じた。
「俺も、俺もみんなを愛してるっ……摩魅姉さんっ、琳霞さまっ、歩美っ……凄く凄く愛してるぞっ……おかしくなるくらい愛してるぅっ……」
 三人を強く抱き締め、柔らかで温かな肉体を感じながら、その中に存在する心にも強く触れ合っているような感覚を覚える。
 まさに心も体も一つになったように感じられ、爆発しそうなほどの愛情が湧き起こった大樹は、愛する妻達を何度も何度も貫いていくのだった。











あとがき

 少し不思議な要素を入れた話を書いてみました。
 妖しげな出来事も起きますけど、基本は主人公がウハウハしている内容になったのではないかと。
 要はハーレムにするのに都合の良い設定を作っただけだったりして(笑)
 ヒロインは三人になってますけど、摩魅姉さんに一番力が入ってしまったような気がします。
 やはり姉キャラには弱いのですよ。
 甘えられる相手は、書いていて楽しいのでありますわ。
(2015.12.30)



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