パナマの民族

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パナマの人々

人口 : 2,815,644人 [2000年] 出典

民族
 メスチソ : 70% (先住民と白人の混血)
 黒人系  : 14% (黒人、黒人と先住民との混血)
 白人   : 10%
 先住民  :  6% (ノベ族、クナ族など)

黒人奴隷は、16世紀から地狭部の労働力として使われた。
1850-55年にはパナマ横断鉄道の建設やパナマ運河建設で、アフロ系(特にバルバドス、ジャマイカ)、白人、中国人労働者などが入ってきた。

宗教
 カトリック   : 85%
 プロテスタント : 15%(黒人系に多い)

言語
 公用語はスペイン語。英語14%、他に先住民族の言語がある。

先住民族

概要
 16世紀に始まるスペイン人らの侵略により、病気が蔓延したり、奴隷として酷使されたため、 先住民の種族は79から7つに激減したという悲しい歴史がある。
 侵略以前には、先住民は15万〜22万人と推定されているが、 現在ではノベ族とブグレ族が合わせて約12万、クナ族が約4万人、エンべラ族とウォウナーン族が2万弱、ナソ族が約2千人とされる。
民族名は、呼び名が非常に多いので、代表的な名前は覚えておいたほうがよい。
 ノベ族とブグレ族は、呼び名が多く、公的にはこの言葉が使われているが、文献ではグァイミー族もよく使われている。 また、チョコ族はダリエン地方に住む先住民を一括して指す言葉であり、エンべラ族とウォウナーン族のことである。 語族は、チブチャ語族がテリベ、ノベ、ブグレ、クナであり、チョコ語族が、エンベラ、ウォウナーンである。

ノベ族 Ngäbe
 文献ではグァイミー(Guaymí)とも良く書かれている。 グァイミーとは、消滅したムオイ語で「人」という意味である。村での自称はンガウベ(Ngawbe)である。 ノベ族は、ボカス・デル・トーロ県(Bocas del toro)、チリキ県(Chiriquí)、ベラグアス県(Veraguas)の山地と一部の平地に住んでいる。
伝統儀礼は、クルン(Krun)と称され、杖投げ競争がある。黒、白、赤の幾何学模様の顔面塗色が儀礼用に行われる。
植物繊維で編んだチャカラという編みカバンが有名である。近年は、パナマの公用語であるスペイン語とノベ語の両方を話せるようになっている。
・ノベ・ブグレ自治区(コマルカノベブグレ Comarca Ngobe Bugle)
1997年、ノベ族とブグレ族のコマルカ法(comarca)が成立し、自治が認められ、コマルカ(自治区)を得ました。
ボカス・デル・トロ県、チリキ県、ベラグアス県にまたがる面積6,700km2の自治区です。 人口は110,619人(2000年国勢調査)。10歳未満人口が36%を占め、平均年齢は15歳。 一人あたりの所得は、推定で100〜200ドルと言われている。

ブグレ族 Bugle(他にBokotáともいわれます)
 パナマ西部のボカス・デル・トーロ県(Bocas del toro)、ベラグアス県(Veraguas)、チリキ県(Chiriquí)の境、 カロベボラ川沿いや山地に約2,500人(1986年)住んでいるが、多くの地域でノベ族と混住している。
ノベ族に同化して失われた文化もあるが、ノベ族より身長が低く、言葉(同じチブチャ語族に属する)や住居様式が異なる。 ブグレ語は、急速に失われつつある。

クナ族 Kuna,Cuna
 クナはスペイン人による命名で、自称はトゥーレ(Tule)かトゥレマラ(Tulemala)という。  現在は、サン・ブラス地区(San blás)に約2万9千人、パナマ市(Panamá)とコロン市(Colón)に約1万人、 ダリエン県(Darién)のジャングルに2千人、コロンビア共和国に若干の村がある。 ダリエン横断の通り道となっているPúcuro,Payaはクナの村である。
 クナ族は、モラで有名であり、サンブラス諸島に住むクナ族だけでなくダリエン県に残っている人々もモラを作っており、技術やデザインにはそれほど差はない。

歴史
 スペインの侵略前は、コロンビア共和国のウラバ湾(Golfo de Urabá)にいた。
 侵略後に奴隷狩りや金を求めるスペイン人から逃れて、北上しダリエン地方に移動した。
 ダリエンには、クエバ族がいたが、スペイン人に滅ぼされ、クナ族は18世紀には全ダリエンに居住していた。
 また、商業活動を求めダリエン北部のクナ族は、18世紀中頃にはイギリス人やフランス人と交易し、銃、服などを手に入れた
 更に、ダリエンの奥地に入った。(一部は現在もダリエンに残る。)
 1740年代 フランスはクナの労働力を使ってカカオの栽培を行い、クナの反乱が起こった
 1790年スペインとクナの平和的共存が約された
 1800年代半ばに徐々にサン・ブラス諸島に移住した。
島に渡った理由は、ジャングルの湿気と蚊を避けるためだという。 19世紀初頭にはジャマイカのイギリス人とべっ甲、木材、カカオと引き換えに、金属製の道具、布地、ビーズを入手した
 1821年ヌエバ・グラナダ副王庁は、クナの独立を承認した
 1907年カトリックとプロテスタントの宣教師がサンブラスに入り、布教・教育活動を始めた
 1925年クナの反乱が起こり、クナはアメリカ合衆国の支持を得て、半自治の地位を獲得した。
 1938年クナ人保留地がコマルカ(comarca;地域)として法的に認可された。
 1945年クナの憲法が承認された。これは、クナでない者には土地購入・賃借・使用を禁止するものである。
 1953年関連法案が通過し、保留地の境界線、パナマ共和国との政治・経済関係が明文化された。
 1968年コロン県からサン・ブラス地域が離脱し、新しい境界が設定された。
ネレ・カントゥーレ(1868-1944)
 1925年のクナ族の乱(クナでは革命)でリーダーである。ウストゥプ島(Ustupo)出身の酋長であり、尊敬を集めた。 命日の9月3日はクナ族最大のお祭りとなっている。
 ネレとは、霊界を透視し、未来を予言する特別な能力を生まれながらに備えた人を指す言葉である。 ネレは病気の治療も行うが、単に薬物を調合するだけのイナトゥレディや、香や人形で祈祷するアプソゲディよりも位が上である。
 カントゥーレは、祭礼の歌をうたって儀式を司どり、クナの歴史を語る語り部である。 ネレ・カントゥーレは、ネレとカントゥーレを備えた人を指すが、固有名詞化したものであり、本来の名はイグアイビリキーニャという。

宗教
 自然を崇拝する。世界は、8層の天界と8層の地下界から成り、多様な精霊や悪霊が住んでいるとされる。

身体装飾(ボディーペインティング)
 かつては、身体装飾を行っていたが、現在はサン・ブラスのクナだけが鼻梁に黒線を引く。 身体装飾の伝統は、彩色腰巻に受け継がれ、さらに女子の作るアップリケ刺繍のモラに発展したと推測される。

女性の服装
頭には、ムスエという赤と黄色のプリントした布を被る。
鼻筋には、サブドゥルという木の実の汁で黒い線を描く(昔は魔除けのためだったが、今は美人に見えるためという)。
頬には、アチョーテという木の実の赤い汁を塗る。サブドゥルもアチョーテも島のあちこちに自生している。 金の鼻輪。生後数日で開けられる
モラを腹と背中に取りつけたブラウス
下半身には、サオレッティという紺系統のプリント地の一枚布を巻き付けている
腕やふくらはぎには、ウィニというビーズ飾りを巻く
各種の素材を使ったネックレスやイヤリング

男性の服装
西洋人と同じようにシャツとズボン

住居
 壁は、野生のサトウキビの茎を並べ、屋根は、ヤシの葉でふかれた素朴な家である。 トイレは、海に突き出た小屋で、排泄物は海へ返される。

クナ語のひとこと
 ありがとう:ヌエディ(Nuedi)
 こんにちは:ヌエディ(Nuedi 又は Na 又は Degitte)
 お元気ですか:Nuegambi bee? 又は An nuegambi
 いらっしゃい:Nuegambi uese be noniki
 日本から来ました:アンハポンギダニキ
 ありがとう:Dot nuet
 はい/いいえ:Elle/Suli
 わかりません:Aku ittoe
 ○○といいます(○○は名前):アン○○ヌガ(An nuga...)
 なんていう名前?:イギベヌガ(Igi be nuga?)
 英語が話せますか:Be sumake merki galla?
 さようなら:デギマロ

エンベラ族・ウォウナーン族(Emberá y Wounan)
 16世紀以来、パナマの東部から隣接するコロンビア北西部にかけて住むチョコ(Chocó)と言われてきた人々は、 現在は、エンベラとウォウナーンと呼ばれている。チョコという名前は、コロンビアのチョコ地方に由来する。
 パナマには、ダリエン地方(Darién)にコロンビアから北上してきたエンベラが14,659人、ウォウナーンが2,605人(1990年)いる。 1983年自治が認められ、二つに分かれたコマルカ(Comarca Emberá)を得た。
 幾何学的な模様のチュンガというカゴを作っていることで知られ、おみやげとしても売られています。チュンガは、チュンガという椰子の皮の繊維で編まれています。また、アメリカゾウゲヤシに彫刻を施したタグアという工芸品や、ココボロという堅い木材に彫刻を施した工芸品もおみやげとして有名です。
 女性は全員が、木の実の汁を使った幾何学的なボディーペインティングをしている。
 経済は、男性による農業、トウモロコシ、コメ、サトウキビ、バナナを栽培する農耕民で、狩猟・漁業も行っています。
 

ナソ族 Naso
 彼ら自身はナソと呼ぶが、別名は代表的なものがテリベ(Teribe)、その他にtlorios, tojar, terbi, terebe, terraba, terraba, tiribi, tirribi, nortenyo, quequexque
居住地
 居住地は、パナマ西部のテリベ川(Teribe)、サン・サン川(San San)、チャンギノラ川(Changuinola)、ジョルキン川(Yorkín)沿いである。 人口は、1,853人(2000年)で、その他コスタリカに数百人いる。 パナマでは、27個所の村などに住んでいるが、行政的な指導もあり6つの場所(Dry, Zoron, Bonyic, Cieyic, Cieykin, Santa Rosa)に人々は集中している。
生計
 生活の基盤は、男女とも農業に関わり、platano, corn, rice, cocoa, coffee, pixbaeを栽培し、 果物(jobo, guanabana, pinapple, guayaba, citrics)を採取する。 ライフルあるいは弓矢を使って狩りを行い、あひる、鶏、七面鳥を飼っている。
手工芸
 ハンモックのようなもの、美しいカゴ、木製品を作っている。

リンク集

S_trip: チョコ族モゲ村に旅したイチローさんのHP。20枚ほどの写真と解説があります[2000/8]
★なお、ダリエンのコロンビア国境地域は、外務省の危険度2観光旅行延期勧告が出されています

Emberá: カゴなどを通販しているHP。エンベラの人々の写真が多数あります。(英語)

Languages of Panama:パナマで話されている言語について(英語)

Los problemas de la fonología cuna:クナ音韻論の問題