『旧字旧かな入門』を讀みながら

日本語は難しい。ますます日本語がよく分からなくなつたやうな氣がする。

序文だけが正字正假名遣ひで記されてゐて、當然のやうに本文は現代假名遣ひと新字體で書かれてゐる。本書の内容は三章に分けられ、第一章では舊字體、第二章では舊假名遣ひ、そして第三章では用字と用語に就いてそれぞれ書かれてゐる。

たゞ入門書とは云つても、初心者がこの本を讀んで正字正假名をすらすらと、使用出來るようになるかと云ふと、さうは思へない。例へば二章の正假名遣ひでは、まづ音韻に觸れられてゐないのが疑問であるし、何より用例は多く載せているのだが、正假名遣ひがどのやうにしてこのやうに記されるかといつた、それらに對する原則や原理が何も説明されてゐないのである。たゞ用例を擧げて、これは大概何々の場合で遣はれます、これは例外ですので何々を用ゐます、といつておしまひにして了ふのである。受驗の際に讀んだ參考書を思はせる。

この本はどちらかと云へば、著者が前書きで述べてゐるやうに手引書として用ゐる他に、普段から正字正假名遣ひを用ゐる人こそが、使用するのに適してゐるかもしれません。文字も大きいのでとても讀みやすい。

『旧字旧かな入門』府川充男、小池和夫著、柏書房、2001。

2002/01/15記す。