◆ minor essay ◆




「トラとライオン」







今から相当クダラナイ疑問を投げよう。
あえて投げさせてもらおう。



「トラとライオン、どっちが強いか?」



ああ、ついに言ってしまった。
もう、幼稚園ぐらいの頃から抱えていた難題を。
まともな大人なら、「不毛」と一笑に付するようなテーマである。

そりゃ、弱いライオンもおるわい!

そう、一概にどちらが強いと言えるものではない。
そんなことは重々承知である。
たとえばである。
「ネコとライオン、どっちが強いか?」
という場合を考えてみるとどうだろう。
誰もがライオンに軍配をあげるに決まっている。
ここで、ネコの腕を揚げて「勝者、ネコ!」とか言おうものなら、
場内は、セコンド観客入り乱れての乱闘になるに違いない。(何の場内だ)
つまり、「ネコとライオン」なら白黒がハッキリするのに、
「トラとライオン」となると途端に曖昧なダンダラ模様になるのである。

つまり、個体差をものともしないほど体の大きさが違わない限り、
どっちが強いかはハッキリしないのである。
現実のトラとライオンを問題にしてもしょうがないのである。
では、何を問題にすればよいか。
それは、イメージ、即ち概念である。
人間がトラやライオンに対して抱いてきたイメージを問題にすればよいのである。
そもそも、「強い・弱い」という捉え方自体、概念に過ぎないわけだし。

まず、トラやライオンの「強さ」を想起させる言葉を考えてみよう。

「百獣の王、ライオン」(獅子王という言葉もある)
「獅子の子落とし」(獅子は千尋の谷に子を蹴落とし、生き残った子だけを育てる)
「密林の王者、トラ」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
「虎は千里を往き、千里を還る」

これらから察するに、
どうも、ライオンの方がリーダーシップを象徴しているような気がする。
あまねく獣達の王として君臨し、恐怖政治的な教育方針を持つ、
何だか、専制君主的なイメージさえ湧き起こってくる。
ううむ、まるでラオウのようである。
一方、トラはどうも、単独の強さ、孤高の獣を象徴する存在のような気がする。
単独行動を好み、協調性がなく、しかし誰もが恐れるほど強い。
という感じのイメージが湧き起こってくる。
ううむ、雲のジュウザのようと言いたいところだが、
トラはジュウザのように大らかな性格ではないし、(短気で有名)
ジュウザはトラのようなイカツイ風貌をしていない。
まあ、トラはトラとしか例えようがない…。

ラオウとトラ……。
といえば、有名なシーンがある。(北斗の拳を知らない人、すみません。)
師であるリュウケンの前で、ラオウがトラを素手でぶっ殺すシーンである。(注1を参照)
つまり、ラオウはトラより強い。
あの感じだと、百に一つも負けるとは思えない。



だから、ライオンはトラよりも強い!




のか?
ライオンはラオウのようだが、いや、さしずめ動物界のラオウだが、
ラオウそのものではない。
しかも、ボクが勝手にラオウと結び付けているだけである。

ということはつまり、イメージでトラとライオンを戦わせても、
普遍的な決着がつかないということになる。

となればやはり、結局、現実のトラとライオンを問題にせねばならないのか。
しかも、個体差を考慮せねばならない。
悩ましいかぎりである。

そこで、「トラVSライオン」でGoogle検索をしてみた。
すると、なんと、トラとライオンの対戦事例を紹介しているサイトがあるではないか!
トラとライオンがサーカスや動物園での事故で戦った事例がいくつも存在するのだ!
あるいは、インドの酔狂な皇太子が余興的に戦わせた例などもある。
詳しくは、そのサイト(ttp://members.tripod.co.jp/big_game/)を見て欲しいが、
結果から言うと、ライオンが6勝4敗なのである。



これいかに!



かなり微妙な戦績である。
4敗もしていては、実力差があるとは言えない。
ライオンの方が勝負強いということだろうか?
しかし、「勝負強いトラ」が「本番に弱いライオン」と戦えば、
トラが全勝してしまうに違いない。
人間でものび太とジャイアンぐらいの個体差があるのだから、
6勝4敗という数字で、ライオンとトラの個体差を埋められるとは思えない。
「のび太ライオン」が「ジャイアントラ」に4勝もできるはずがないのである。






うーむ。






うーむ。






うーむ。






うーむ。






やはり、不毛である。

この問題は、言わば禅問答のようなもので、
やはり、答えの出ない問いなのである。







「そもさん!」

















「せっぱ!」


















「トラとライオン、どっちが強いか?」
















とくれば、パチンと両手を打ち鳴らして、



「右手と左手のどっちから音が鳴ったか?」



と問い返すしかないのである。




End








戻る