「もずく」 ボクは、もずくが好きである。 そう書くと多分、 「ゲッ、なんでそんなもん・・・・・・。」 などと言う人が出てくるだろう。 そう、もずくを嫌う人は結構いる。 その数は納豆嫌いの人口に迫るものがあるかもしれない。 世の中に普及している食材を蛇蝎のように嫌うのもどうかと、 好き嫌いの全くないボクなんぞは思うのだが、 ともあれ、全国津々浦々の一億二千万人の中に、 もずくフリークが必ずやいるであろうと信じて、 もずくの醍醐味を綴ってみようと思う。 その前に、少し横道にそれるが、 最近、ミツカン「追いがつお・もずく」のCMが面白い。 もずくのCM自体珍しいので、興味をそそられるのだが、 内容もボクの心をくすぐるような、マイナーさが漂う。 一言で言うと、朝(昼?)の連ドラ風仕立てのCMなのだが、 最後に、「つづく」ではなく「もづく」というスーパーが、 画面の右下にさりげなく出るところが、もう、なんというか、 実にクダラナイというか、よいのである。 さて、それはさておき、話題を「もずく」そのものに戻そう。 もずくは、よく食される海藻の中では明らかにマイナーである。 海藻界のメジャーどころといえば、コンブやワカメだが、 これらは、野球で言えば巨人の3,4番(江藤・松井)、 相撲で言えば、貴乃花、雅山のようなものである。 戦国武将で言うなら、信長、秀吉といったところだろう。 対してもずくは、日ハムの3、4番(片岡・オバンドー)、 寺尾、智ノ花、といった感じである。 武将で言えば、蜂須賀小六、直江兼続ぐらいだろう。(アホな例えやなあ。) 味の方も、コンブ・ワカメはもうやたらとはっきりした味だが、 もずくは、あまりはっきりしない。 そう、もずくの味はどうもはっきりしない。 もずくは、一般に三杯酢に和えて食される。 ボクの周囲には、もずく嫌いが何人かいる。 彼らにどこが嫌いなのかと訊くと、この酢がイヤだという者と、 ヌルッとしたもずくの食感がイヤだとういう者がいた。 なら、もずく自体の味はどうかと尋ねると、わからないと言う。 ということは、もずく嫌いの人々は、酢か或いは、ヌルッとした ものが嫌いなのであって、もずく自体が嫌いなわけではないんじゃ ないか、と訊くと、いや、もずくが嫌いなのだと言う。 ウキーッ!なんなんだ、いったい、もう。はっきりしなさい。 という感じである。 ちなみに、ボクがもずくのどこを好きなのかと言うと、 酢・ヌルヌル感・もずく自体の微妙な味のすべてが融合してできた、 何とも言えない全体の風味が好きなのである。 これ以上具体的に、どこをどう好きだとは言えない。 とにかく、三杯酢に和えた「もずく」という食べ物が好きなのである。 本来、好き嫌いとはそういうものなのかもしれない。 そんなことをのたまっているうちに、 段々と気になってきたことがある。(きたきた(^^;)) もづくは、何ゆえ「もずく」という名前なのだろう。 コンブ・ワカメ・ヒジキなどは、海藻らしいカッコイイ名前である。 けど、もずくは・・・・・・。 「もずく」て! ダサイを通り越してワビサビが入っとるわ! ゴホン。(咳払い) うぉっほん。(ちょっとエラそうに咳払い) いかん、取り乱してしまった。(オイオイ) と、とにかく、「もずく」とは、 その名前のことを考えただけでも、取り乱してしまうほどの マイナーなインパクトをもつ海藻である。 ともあれ、もずくの出ている文献にあたってみた。 (さすがに、『もずく』というタイトルの本はなかったが。) 幾つかあったが、その中の、 「藻類の生活史集成 第2巻 褐藻・紅藻」 堀 輝三 編 というイカツイ本に、 天然では、ホンダワラ類のヤツマタモク、マメタワラ、エンドウモク の3種にのみ着生する。このため、「モズク」「モヅク」の名が与えら れている。・・・・・・ という記述を見つけたのである。 要するに、藻{も}に付くから、「モヅク」で、「モズク」だと。 目からウロコ、である。 そんな、イヤ〜ンな名前の由来だったとは。 このことを知ってボクは、何だか妙に納得してしまい、 もずくのミステリアスなイメージが薄れてしまったような、 次に口にするときには美味くなくなりそうな、 そんな、やるせなくも切ない気持ちになったのである。 End
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