『学校の怪談 春のたたりスペシャル』


* TV公開作品
* ビデオ化済み

ビデオ発売タイトル
『学校の怪談
たたりスペシャル』

第二話『たたり』を監督

TV
1999年製作作品
制作・著作 関西テレビ放送
制作協力 アルタミラピクチャーズ
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ビデオ
(C)1999関西テレビ放送
カラー91分/HIFIステレオ/スタンダードサイズ
発売元・大映株式会社
販売元・東宝株式会社
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第二話『たたり』スタッフ&キャスト
[スタッフ]
原案
脚本
監督
撮影
音楽


中山市朗/木原浩勝
高橋洋
鶴田法男
柴主高秀
尾形真一郎

[キャスト]
岡本綾/鈴木砂羽/阿部サダヲ
田中千絵/山本エレナ/伴大介
妻と旦那のオシャベリを読む































《妻と旦那のオシャベリ》

妻:これ、あなたの初のテレビ作品だね〜。

旦那:2時間枠の4話オムニバスの1話を担当させてもらったんだけど、僕、まさかね、自分が全国ネット放送の、しかも、ゴールデンタイムの作品を撮るなんてことが起きるなんてね、本当に思ってもみなかったから、オファーが来たときは最初、ちょっとビックリしちゃった。それに、'96年の『亡霊学級』の後、大失敗しちゃって、自分は監督を二度としちゃいけないと思ってたから。

妻:ねーえ?その話を始めると、また長くなるから・・・。

旦那:うん、でもね、励ましてくれる人がいっぱい居て、その人たちには深く深く感謝をしないといけないからね。

妻:そうね。ありがたいよね。さてさて〜、脚本家・高橋洋さんと初めて組んで、どうだった?

旦那:え? それは、雑誌のインタビューとかでかなり詳しく答えたことだから。簡単に言うと、すっごく楽しかったけど、すっごく大変だった。

妻:ふぅ〜ん?そう言えば、「高橋さんの脚本は奥が深い」って言ってたよね。

旦那:本当に、そうなの。それに、拳をギュッと握って、顔面にバコッ、バコッと殴りつけてくるような脚本でね、スゲェー大変なの。

妻:な、なんちゅー表現!(-_-)/ でもさ、あたしさ、これ観たときに、自分の旦那だからひいきしてるわけじゃなくて、マジで「この監督さんの劇場映画が観たいなぁ・・・」って思っちゃった!

旦那:あ、いや、妻と言えども、その言葉は嬉しいですよ。なんかさ、みんなに「これって映画っぽいよね」って言われる。

妻:そう言や、“スティック・トゥ”のマスター茂さんも「映画には詳しくないけど、なんだか映画っぽい」って言ってたよね〜。

旦那:なんでかなぁ? 現場を仕切ったのが『Shall we ダンス?』の会社で、ほとんどのスタッフが映画の人だったんで、そうなったのかしら? いや、嬉しいけど、でも、テレビ作品なんだから、良い事じゃない気もするし、ちょっと悩む。

妻:茂さんが言ってたのは「学校帰りの道路のシーンを見て映画っぽい、って感じた」だったっけ・・・。

旦那:ああ、あそこねぇ。キャメラが動いてる間に時間経過をしちゃうカットね。でも、あれは映画と言うより演劇だけどねぇ〜。うーん。

妻:あなたさー、なんだかさー、さっきから返事遅い〜。何かこの作品に不満でもあるの?

旦那:あ、いや、そうじゃないんだけど、とにかく久しぶりの作品だったし、とにかく無我夢中で作ってたし、スタッフもキャストも優秀な人ばかりで、いったいどうやってあの作品を完成させたのか、なんだか思い出せないのよ。

妻:ふ〜ん?

旦那:主要舞台になる主人公の部屋ね。隣の家に物干し台があるでしょ。

妻:うんうん、男が首吊りする物干し台ね。

旦那:そう。あれさ、準備を始めた当初は、脚本の条件を満たす家を見つけるのは、かなり難しいだろうと、思ってたの。でもね、スタッフが一生懸命さがして、見つけてきてね。脚本が指定していた位置関係とは、ちょっと違ってたんだけど、よくも見つけたと感心して。それに、あの学校も撮影に貸してくれるのは初めてで、まさか本物の職員室で撮影をさせてくれるとは、思いもよらなかったしね。『霊のうごめく家』と同じで、今から思えば奇跡的な作品だよ。

妻:へぇ・・・。当事者にしてみると、そういうもんなのかしらねぇ?

旦那:思い返すと、そう感じちゃう。結局、良い作品が作れるかどうかは、優秀なスタッフ、キャストに恵まれるかどうかに掛かってるんだと、つくづく思う僕なのよ。それに、撮影の柴主さんのおかげで「僕はドーナツの穴が撮りたいンだぁ」って事も気付いたしね。

妻:ああ、あの、「ドーナツの穴」の話ね(笑)。

旦那:説明し始めると長くなるので止めるけどね。

妻:あら、いいわよ?「ドーナツの穴」の話。私、最初あなたからそれを聞いた時、面白い表現だなぁ・・・って思ったもん。(すこぉし、わけわかめ!でもあったけど・・・) 以前、雑誌にもその話、載ったことあるけどさぁ、あなたさえ面倒臭くないんだったら、ここで話しておいてもイイんじゃない?

旦那:あ、そうすかぁ? うーん、つまりね。だからさ。ねぇ、長くなりそうだよ、やっぱり。

妻:いいって、言ってるじゃな〜い!(しつこいゾッ!)

旦那:あ、はい。すんません。つまり、まず、僕は「本当の恐怖」って人間とは無関係に存在していると思ってるのね。なんでかって言うと、原因は何もないのに、突然、怖くなる事ってあるでしょ。

妻:ふにふに。

旦那:例えばさ、子供のときに、トイレに行くのがなぜか怖かったりする事ってあるじゃない。あとさ、夜道を歩いていてさ、痴漢とか暴漢に襲われるかも知れない危険性とは別に、なんか怖く感じる事ってあるじゃない。誰かに教えられたわけでもないのに、なんか怖いって感じるでしょ?

妻:ああ、それは今でもあるぅ〜。

旦那:でさ、その感覚を、人間は「恐怖」って言葉で表現してるんだけど、人間が存在してなければ「恐怖」という言葉は全く無意味で、人間を「なぜかゾッとさせる存在」の本質を捉えてはいないわけでしょ。って、分かる?

妻:うーっ、うーっ、んーっ うん、多分・・・

旦那:でさ、僕が撮りたいのは、「人間をなぜかゾッとさせる存在」なの。でも、それって、存在していない存在というか、分かり易く言えば、「目に見えない存在」だからさ、そうすると「目に見える存在」を脇に置いてあげないと、そこにある「目に見えない存在」を、人間に認識させることはできない。で、例えば、ドーナツがあって、その真ん中に空いてる「穴」は、単なる空間でしかなくて、食べることが出来ないし、人間にとっては無意味な代物なわけでしょ。でもね、そこに僕の考える「本当の恐怖」、「絶対的恐怖」があると思うわけ。

妻:はぁ。

旦那:『学校の怪談/たたり』を撮ってるときに、撮影の柴主さんに「理由は良く分からないんだけど、役者の動きを追わないでください」ってお願いしたのね。これってさ、ひどい話で、映画というのは普通は役者の芝居を撮影して成立するものなのに、極端な言い方をすると「芝居を撮らないで!」って言ってるようなもんだから、柴主さんも当然「なんで?」って話になって。キャメラマンも納得しないとキャメラ廻せないからね。で、僕、困っちゃって、で、とっさに思いついてたのが「ここは空間が主役なんです。僕はドーナツの穴が撮りたいんです」って台詞だったの。そしたら、柴主さんが「ああ、そうか」ってニッコリして撮影してくれて、あの時、はじめて僕が撮りたいと思っていたものを明確に人に伝えることが出来たなぁ、って実感したのね。まぁ、たださ、「言葉は本質を捉えていない」とか、「人間以外の存在が撮りたい」とか言いつつ、「人に自分のテーマを伝える明確な言葉を見つけた」って喜んでるわけだから、全く矛盾してて、困ったもんなんだけどね。って、やっぱり長くなっちゃった、分かりました?

妻:あい。多分わかりました。でおじゃる。(でもまたきっと、同じこと「聞かせて?」って蒸し返すかも・・・)

旦那:それは全然構わないよ。だって、僕もこれが全てじゃないと思ってるから、今後も考えていかないとならないだろうしね。あ、それで_補足したいです。つまり、「ドーナツの穴」っていうのは、「ドーナツ」が存在してるから「穴」が存在するのであって、ドーナツは絶対に必要な要素なのね。で、その「ドーナツ」がとっても美味しいドーナツ、見た目にも綺麗なドーナツであれば、人は「穴」をより注目してくれるわけでしょ。だから、人間描写は非常に重要だと思ってます。

妻:なるへそぉ〜。そうやって“確かに存在はするけれど、しかとは目に見えないもの”が、映像化されていくのね。 あ、それからさぁ、今までのお話のなかでね、ずっと聞き逃していて、でもずっと聞きたいなぁ〜って思ってたこと、あるんだぁー。

旦那:なんざんしょ?

妻:んとね、んとね、ホラー作品を作る上では避けて通れなさそうな、“仕掛け(合成とかの特殊効果)”のこと。

旦那:はぁ、仕掛けねぇ?

妻:漠然としか判らないんだけどさぁ、そういうのって、すんごくお金が掛かるんでしょ? 仕込みっていうの?も、すんごく時間掛かるんでしょ? そんな中でイメージ通りのモノを作るには、どんな工夫をしてるの?&どんな壁でつまづいたりするの?

旦那:君はなにかい? 『学校の怪談/たたり』のラストに出てくる窓いっぱいにある顔の合成カットの為に、僕が作ったイメージを公開したいわけ? あれはマズイよ。知人の顔を勝手に使って作ったんだからさ。

妻:いや、そういうわけじゃぁないよぉ?(んでも、もし公開する気があるなら、&、個人が完全に特定できちゃうタイプじゃなければ、いいかも・・・。と、思う) あ、脱線しそう! 話戻すべー。

旦那:はい、戻してください。

妻:ともかくね、仕掛けについてはどんな風に考えてるのかを聞いてみたかったの・・・。(^^ゞ

旦那:僕さ、CGとか作中で使ったの『学校の怪談』が初めてなの。それまでは、思いっきりローテクで、ホームビデオカメラでも出来るような方法でばかり作ってきたのよ。正直言うと、俗に言う特殊合成とか、特殊メイクってあんまり好きじゃないの。もちろん、しっかりしたレベルで出来るなら好きなんだけど、「下手にやるなら、やらない方がいい」と思っちゃうのね。普通なら特殊な方法でやらないとならないときでも、まずはローテクで物理的な方法で処理できないかと考えちゃう。だから、今までの作品で、特殊に見えるシーンでも、大抵の場合はそんなにお金は掛かってないよ。

妻:へぇ〜、そうなんだぁ〜? でもそうかもしんないね。下手にやったら、かえって安っぽくなっちゃうのかもしんないね。 なんか不思議。おっかない映像作品も、実は“シンプルイズベスト!”なんだ?

旦那:あ、それは僕の作品にとっての「真理」よ。なぜかというと、恐怖シーンの描写において、僕がいつも重視してるのは「幽霊」などの現象ではなくて、それに遭遇した「人間のリアクション」だからね。極論を言うと、「幽霊」を描写せずに、「人間のリアクション」だけで怖い作品は作れるのよ。その方が、観客の想像をかき立てるからね。下手に「幽霊」を描写するより、見せない方がよっぽど怖い作品が作れると思ってるの。ちなみに、今度公開される『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』っていう洋画は全くその方針で作られたホラーらしいけど。つまり化け物が出てこないってホラーなんだって。

妻:そそ、今度、ビデオになるんでしょ、テレビ『学校の怪談』。

旦那:そう。正確な発売日はまだわからないけど。ありがたいよね。また色んな人に観てもらえるんだから。

(1999/8/3・自宅にて)



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