トゥルース
1968年発売
曲目
シェイプス・オブ・シングス、レット・ミー・ラブ・ユー、モーニング・デュー、ユー・シュック・ミー、オールマン・リバー、グリーンスリーヴス、ロック・マイ・プリムソウル、ベックス・ボレロ、ブルース・デラックス、迷信嫌い

プロデューサー         :ミッキー・モスト
ギター             :ジェフ・ベック
ボーカル            :ロッド・スチュワート
ベースギター          :ロン・ウッド
ドラムス            :ミック・ウォーラー
キーボード           :ニッキー・ホプキンス
ギター             :ジミー・ペイジ
ベース、キーボード       :ジョン・ポール・ジョーンズ
ドラムス            :キース・ムーン
このアルバムでは基本的にはブルースロックをスタイルとしています。
「ロック・マイ・プリムソウル」の重くひきずるよ うなリズム感、「レット・ミー・ラブ・ユー」の絶妙のギターソロ、ロッドのボーカルとベックのギターの掛け合いが最高です。
中でも「ブルース・デラックス」での堰を切ったように繰り出す荒々しいギターワークは圧巻です。
もともとツアーである程度演奏していた曲をアルバムにしていますので、4日間で作成されたとはいえ素晴らしい出来具合です。


ベック・オラ 
1969年発売
オール・シュック・アップ、スパニッシュ・ブーツ、ガール・フロム・ミル・ヴァレー、ジェイルハウス・ロック、プリンス、ハングマンズ・ニー、ライス・プディング

プロデューサー         :ミッキー・モスト
ギター             :ジェフ・ベック
ボーカル            :ロッド・スチュワート
ベースギター          :ロン・ウッド
ドラムス            :トニー・ニューマン
キーボード           :ニッキー・ホプキンス
 
全編ロックン・ロールという作りです。荒削りでルーズな音になっています。


ラフ・アンド・レディ
1971年発売
曲目
ガット・ザ・フィーリング、シチュエイション、ショート・ビジネス、マックス・チューン、アイヴ・ビーン・ユースト、ニューウェイズ・トレイン・トレイン、ジョディ

プロデュース             :ジェフ・ベック
リードギター             :ジェフ・ベック
ボーカル               :ボブ・テンチ
ドラムス               :コージー・パウエル
ベース                :クライヴ・チャーマン
ピアノ                :マックス・ミドルトン
ボーカルにボブ・テンチを加えてよりブラックフィーリング溢れる味わいを醸し出しています。
「シチュエイション」のスピード感のあるテンション、「ニュー・ウェイズ・トレイン・トレイン」のビートとアタック感は素晴らしく、コージー・パウエルのアタックのあるドラムスにつられるかのようにベックから強力なリフがとび出します。
推薦曲は「マックス・チューン」で、ゆったりめのマックス・ミドルトンのピアノが心地よく、広がりのあるクールなサウンドが絶妙です。


ジェフ・ベック・グループ
1972年5月発売
曲目
アイス・クリーム・ケーキ、グラッド・オール・オーバー、今宵はきみと、シュガー・ケイン、帰らぬ愛、ゴーイング・ダウン、アイ・ガット・トゥ・ハヴ・ア・ソング、ハイウェイズ、デフィニットリー・メイビー

プロデューサー          :スティーヴ・クロッパー
ギター              :ジェフ・ベツク
ボーカル             :ボブ・テンチ
ピアノ              :マックス・ミドルトン
ベース              :クライヴ・チャーマン
ドラムス             :コージー・パウエル
ロッド・スチュアートとロン・ウッドのグループを解散後、1969年の事故により、予定していたティム・ボガートとカーマイン・アピスとのバンド構想がくずれたジェフ・ベックにとっての再活動は1971年となっています。
このアルバムの前作「ラフ・アンド・レディ」からコージー・パウエルという強力なリズムセクションを得て、より技術指向の強いメンバーを結集し、ジャズとソウル音楽へと傾倒が見うけられるサウンドを展開しています。そして「ラフ・アンド・レディ」とこの「ジェフ・ベックグループ」というアルバムが作られた時期が第2期ジェフベックグループと呼ばれています。
「ゴーイング・ダウン」はドン・ニックスのカヴァーで、ベックの浮遊感のある自由なギタープレイを聴くことができます。そして、お薦めは「ハイウェイズ」で、ボブ・テンチのボーカルに、ベックのコンパクトで切れのあるフレージングがからみ、ミドルトンのピアノが潤いをもたらします。


ベック・ボガート&アピス
1973年発売
曲目
黒猫の叫び、レディー、オー・トゥ・ラヴ・ユー、迷信、スウィート・スウィート・サレンダー、ホワイ・シュッド・アイ・ケアー、君に首ったけ、リヴィン・アローン、アイム・ソー・プラウド

プロデュース          :TheBoys、Don Nix
ギター、ボーカル        :ジェフ・ベック
ベース、ボーカル        :ティム・ボガート
ボーカル、ドラムス       :カーマイン・アピス
ベックが結成したグループの中でも、BBAはかなりの期待をもって迎えられました。
そしてこのBBAのトリオ時代で、ベックは初来日を果たします。
1曲目は、ベックのボーカル「黒猫の叫び」は意表をつく作品ながら、全体的にソウル志向のロックに仕上がっています。2期のアルバムよりも、リズムが古典的で一般受けしやすいように思います。残念なのは、1期のようなブルースロックから遠ざかってしまったところや、これはという目立った曲が少ないという点ですが、リズム的にはメリハリがあってパワーアップしているBBA時代は1期の次に好きです。
そして、「スウィート・スウィート・サレンダー」や「アイム・ソー・プラウド」といったバラードナンバーでのベック流のバッキングが新鮮さを感じます。


ライヴインジャパン
ベック、ボガート&アピス
1973年5月公演
曲目
迷信、君に首ったけ、ジェフズ・ブギー、ゴーイング・ダウン、ブギー、モーニング・デュー、スウィート・スウィート・サレンダー、リビン・アローン、アイム・ソー・プラウド、レディ、黒猫の叫び、ホワイ・シュッド・アイ・ケア、プリンス/ショットガン(メドレー)

1973.5.18/19大阪厚生年金ホール
プロデューサー           :TheBoys、CBS/SONY YujiTakahashi
ギター、ボーカル          :ジェフ・ベック
ベース、ボーカル          :ティム・ボガート
ボーカル、ドラムス         :カーマイン・アピス
演奏曲はベック、ボガート&アピスのスタジオ版を中心にして、「ジェフス・ブギー」「ゴーイング・ダウン」「モーニング・デュー」と合間にヤードバーズの曲のリフレイン、 さらにはヴァニラ・ファッジの曲が収録されています。キーボードなし、アーミングなしの、リアルで臨場感のあるベックのギターが味わえる点ではかなりの貴重といえます。
ベック、ボガート&アピスは前々から噂され、それはジェフベックグループ1期活動停止時にティム・ボーガート、カーマイン・アピスと接触した頃に遡ります。1969年11月、ジェフはロンドンで交通事故に合い重症を負い、これが原因でその予定とされたティム・ボーガート、カーマイン・アピスとのバンド構想は消えてしまっています。この事故がなければロックの歴史が変わっていたのではないかとも思えるほどです。ただし、すでにロッド・スチュアートは脱退しており、ボーカル適任者のない状況でかなり前途多難だったと言えます。結局第2期ジェフベックグループを経て、1972年7月にまた彼らは再会し、1972年9月に3人編成のBBAの誕生となっています。


ブロウ・バイ・ブロウ
1975年発売
曲目
分かってくれるかい、シーズ・ア・ウーマン、コンスティペイテッド・ダック、エアー・ブロワー、スキャターブレイン、哀しみの恋人達、セロニアス、フリーウェイ・ジャム、ダイヤモンド・ダスト

プロデュース            :ジョージ・マーティン
ギター               :ジェフ・ベック
キーボード             :マックス・ミドルトン
ベース               :フィル・チェン
ドラムス、パーカッション      :リチャード・ベイリー
全曲インストルメンタルナンバーで固められています。
当時のロック界全体といえば、従来のロックから脱却しようとしていた時期でもあり、昔のロックはもう古臭いというような風潮がありました。常に新しい領域をめざすベックは、このときにいちはやくフュージョンを取り入れ、あっさりとやってのけたのです。それは見事に成功し、それ以来ベックは確信したかのようにボーカルなしの路線を歩んでいます。
凄いのはリチャード・ベイリーのテクニカルなドラムスです。フュージョンスタイルにイメージチェンジしたベックと互角に渡り合えています。
推薦曲はスティービーワンダーが書き、ベックがロイ・ブキャナンに捧げたスロー・バラード「Cause We've Ended As Lovers」です。

 
ワイアード
1976年発売
曲目
レッド・ブーツ、カム・ダンシング、グッドバイ・ポーク・パイ・ハット、ヘッド・フォー・バックステージ・パス、蒼き風、ソフィー、プレイ・ウィズ・ミー、ラブ・イズ・グリーン

プロデュース            :ジョージ・マーティン
ギター               :ジェフ・ベック
ドラムス              :リチャード・ベイリー
シンセサイザー           :ヤン・ハマー
ベース               :ウィルバー・バスコム
ドラムス              :マイケル・ウォルデン
キーボード             :マックス・ミドルトン
ドラムス              :エド・グリーン
全体的には、前作よりもロック色を強めた作りなっています。
ベックは腕利きのミュージシャンと共演して実力を発揮する傾向があり、このアルバムでは、ヤン・ハマーが参加し、より臨場感あふれる音を作り出しています。
「蒼き風」のナイフのように鋭く切れ込むギターリフも素晴らしく、「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」は、チャールス・ミンガスの曲ですが、その後ジェフ・ベックのライヴの定番となっています。

 
ライヴ・ワイアー
1977年発売
曲目
フリーウェイ・ジャム、アース、シーズ・ア・ウーマン、フル・ムーン・ブギ、闇、スキャッタープレイン、蒼き風

プロデュース               :ヤン・ハマー
ギター                  :ジェフ・ベック
ドラムス、ボーカル            :トニー・スミス
ベース、リズムギター           :フェルナンド・サンダース
バイオリン、シンセサイザー、リズムギター :スティーヴ・カインドラー
ムーグ、シンセサイザー          :ヤン・ハマー
ここでのベックのギターサウンドは、BBAの日本公演のライヴ盤でのレスポールとは対照的な、繊細で伸びのある音です。
冒頭の車のクラクションに似せたギターとシンサイザーの掛け合いから、期待感が高まります。
このライヴは1976年の10月、11月のUSツアーでの録音です。
ベックに限らずライヴアルバムのいいところは、スタジオ盤とはまったく違う演奏を聞けるという点です。この点ではベックは徹底していて、ほとんどがひらめきによるフレージングを重要視しています。そして、ツアーごとにギターサウンドや奏法をガラリと変えているので、聴く方は面白みが倍増します。
聴き所は「蒼き風」でのヤン・ハマーのシンセサイザーとのバトルです。間奏に突然「トレイン・ケプト・ア・ローリン」のリフが飛び出す所はまさにライヴの醍醐味です。

 
ゼア・アンド・バック
1980年発売
曲目
スター・サイクル、トゥ・マッチ・トゥ・ルーズ、ユー・ネバー・ノウ、ザ・パンプ、エル・ベッコ、ザ・ゴールデン・ロード、スペース・ブギ、ザ・ファイナル・ピース

コ・プロデュース           :ジェフ・ベック、ケン・スコット
ギター                :ジェフ・ベック
キーボード、ドラムス         :ヤン・ハマー
ドラムス               :サイモン・フィリップス
キーボード              :トニー・ハイマス
ベース                :モー・フォスター
このアルバムの製作途中でスタンリー・クラークとのツアーを開始し、1978年に来日もしています。
「ゼア・アンド・バック」アルバムリリース後に開始した1980年のツアーはよりロック志向になったベック。1983年にはロニー・レイン・チャリティライヴでクラプトン、ペイジとの競演が実現します。ここで見せたベックの「スター・サイクル」を始めとするギタープレイは強力でした。このリズムセクションはサイモン・フィリップスとフェルナンド・サンダースという布陣で、ベックに一番合っているように思えました。
曲としてはやっぱりリズムでノレル「スターサイクル」、「ザ・パンプ」、「スペース・ブギ」が好きです。

 
フラッシュ
1985年発売
曲目
アンビシャス、ゲッツ・アス・オール・イン・ジ・エンド、エスケイプ、ピープル・ゲット・レディ、ストップ、ルック・アンド・リッスン、ゲット・ワーキン、エクスタシー、ナイト・アフター・ナイト、ユー・ノウ、ウィ・ノウ、ナイト・ホーク、バック・オン・ザ・ストリート

プロデュース            :ナイル・ロジャース、アーサー・ベイカー、ジェフ・ベック、トニー・ハイマス
ギター、ボーカル          :ジェフ・ベック
ギター               :ナイル・ロジャース
ボーカル              :ジミー・ホール
ボーカル              :ロッド・スチュワート
ボーカル              :カレン・ローレンス
キーボード             :トニー・ハイマス
キーボード             :ヤン・ハマー
キーボード             :デュアン・ヒッチングス
ベース               :ダグ・ウィンビッシュ
etc
前作「THERE AND BACK」から約5年後にリリースされたこのアルバムは、久々のボーカル付きのアルバムとなっています。
この「フラッシュ」はナイル・ロジャースがサポートしており、比較的聴きやすい曲で占められていますが、本当にこれがジェフ・ベックがやりたかったのかと少し疑問が湧いてくるのも事実です。
1985年といえば、映像文化が爆発していたときで、ロックミュージックのプロモーションフィルム全盛期でもあり、このジェフ・ベックもそんなビジュアル音楽シーンにのせられ「ピープル・ゲット・レディ」と「アンビシャス」でカッコイイ姿を披露しています。その「ピープル・ゲット・レディ」では旧友ロッド・スチュワートが参加し、貫禄のある落ち着いた演奏となっています。
1986年に軽井沢のプリンスホテル特設会場でおこなわれた、サンタナとの野外コンサートは歴史に残るシーンでした。このときは、サンタナとジェフ・ベックのバンドにそれぞれスティーブ・ルカサーがゲストで参加し、最後は「スーパー・ブギ」、「ピープル・ゲット・レディ」、「ジョニー・B・グッド」が3人揃いぶみでの共演となり、サンタナとジェフ・ベックの圧倒的な存在感にスティーブ・ルカサーがタジタジのようでした。
この「フラッシュ」アルバムからジェフ・ベックはピックを使用しないフィンガーピッキングに切り替えていて、そしてアーミング奏法と合わせ、独自のギター奏法を会得し新しいジェフ・ベックに生まれ変わっていたのです。

 
ギター・ショップ
1989年発売
曲目
ギター・ショップ、サヴォイ、ビハインド・ザ・ヴェール、ビッグ・ブロック、ホエア・ワー・ユー、スタンド・オン・イット、デイ・イン・ザ・ハウス、トゥー・リヴァーズ、スリング・ショット

プロデュース            :レイフ・メイセス、ジェフ・ベック、トニー・ハイマス&テリー・ボジオ
ギター               :ジェフ・ベック
キーボード             :トニー・ハイマス
ドラムス              :テリー・ボジオ

このアルバムでは本来のインストナンバーの頃のジェフ・ベックへ回帰した作品となりつつも、さらに次のベックに進化した音楽を繰り広げています。
アルバム全体としては、トーンはハードながらもアーミングでハーモニー的なトーンを出していて、キーボードなのかギターなのかわからないサウンドとなっています。実際のところ、このアルバムではベースプレイヤーがおらず、かわりにトニー・ハイマスがキーボードでベースもこなしています。
1989年に、チャック・ベリー、スティーブ・ルカサー、バッド・イングリッシュらとのイベントで来日したとき、そのパワフルな演奏とメリハリのあるギター音に圧倒されました。
サウンドは押しが強く、メリハリがありますが、もう少し柔らかい音もほしいところです。


 
フー・エルス
1999年発売
曲目
ホワット・ママ・セッド、サイコ・サム、ブラシ・ウィズ・ザ・ブルース、ブラスト・フロム・ジ・イースト、スペース・フォー・ザ・パパ、エンジェル(フットステップス)、ティー・エイチ・エックス138、ヒップ・ノーティカ、イーヴン・オッズ、デクラン、アナザー・プレイス

プロデュース            :トニー・ハイマス&ジェフ・ベック
ギター               :ジェフ・ベック
ギター               :ジェニファー・バトゥン
キーボード             :トニー・ハイマス
ドラムス              :スティーヴ・アレクサンダー
ベース               :ランディ・ホープ・テイラー
「ギター・ショップ」以来実に10年ぶりという長い空白期間を経てリリースされたこのアルバムは、あまりに長かったというのが実感で、アルバムを出してくれるだけで嬉しいという状態です。
ただ、実際には1990年からいくつかのアルバムには参加していて、ライヴも1995年にサンタナとのツアーもしており、まったくなにもしていなかったわけではありません。ようやく1999年5月には来日をしています。
このアルバムで参加していたトニー・ハイマスは不在でしたが、女性ギタリストのジェニファーがMIDIギターで見事にトニーの代役をしていました。
このアルバムでは「ブラシ・ウィズ・ザ・ブルース」、「スペース・フォー・ザ・パパ」がライヴ録音となっていて、これはレコーディング前のツアーでのトニー不在時のライヴが収録されています。

 
ユー・ハッド・イット・カミング
2000年発売
曲目
アースクエイク、ロイズ・トイズ、ダーティ・マインド、ローリン・アンド・タンブリン、ナディア、ルーズ・キャノン、ロースバッド、レフト・フック、ブラックバード、サスペンション

プロデュース            :アンディ・ライト
ギター               :ジェフ・ベック
ギター               :ジェニファー・バトゥン
ドラムス              :スティーヴ・アレクサンダー
ベース               :ランディ・ホープ・テイラー
前作から1年で早くも新作がリリースされ、日本からの世界ツアーもスタートさせました。
ジャケット写真は車いじりの好きなベックの油まみれの手です。
よくカヴァーされる曲の「ローリン・アンド・タンブリン」はまさに今のベック風アレンジとなっていて、アルバム内の「ロイズ・トイズ」の先頭で車の排気音が聴かれたり、いろんな音をデジタル的に処理している点がより多くなっている以外は、基本的には前作とあまり変わらないようで、メンバーもほぼ同じことからも前作の創作意欲の勢いが継続しているようです。
推薦曲は「ルーズ・キャノン」で、ベックらしいリズム感でギターソロが絶妙です。
ただ、ライヴ収録があった分、ギターの音圧とかリアルさでは前作が上のような気がします。