似非職人工房


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似非DSPシステム(仮称)の紹介

――― 似非職人工房の提案する MSXシステム拡張の新提案 ―――
updated: Apr 12, 1999
似非DSPシステムとは |
開発の背景 | システム構成 | 多用な応用例 | 開発進行状況 | 技術解説書 | お問い合わせ先

プロセッサ

パソコンの多くはCISC-CPU、セガサターンプレイステーション 等はRISC-CPUを搭載している。DSPはAV機器などで採用されている。

DSP
(Digital Signal Processor)

デジタル信号処理に適したプロセッサ。ハーバードアークテクチャのメモリ構成や高速な積和演算機能を特徴とする。DSP機能の一部は Pentium にも MMX命令 として入っている。

ADSP-2106xシリーズ

アナログデバイセズ社 製の32bits浮動小数点DSPのシリーズ。メモリ空間は4Gワードある。今回の試作版では評価キットの関係で21061(40MHz)であるが 21065(60MHz)も検討中。SD-RAMとの接続性や価格、速度面で有利だからである。

(http://www.analog.com/SHARC/attack/)

■似非DSPシステムとは

似非DSPは、MSXにDSPと呼ばれるプロセッサを搭載するためのシステムです。このDSPを用いて何をするのかというと、PSGやSCC、マッパRAM等、いろいろなカートリッジの真似(エミュレーション)をさせたりするのです。

多くのカートリッジを1つの似非DSPで実現させることが出来れば、あなたの机の上もスッキリとします。

それだけでなく、DSPの高い演算能力を利用して、今まで出来なかった様な高品質な画像や音声の処理をMSXで実現する事も夢ではありません。

■開発の背景

MSXカートリッジの多くは、ハードディスクへのアクセスやメモリの増設、FM音源など、1つの機能しか果たさないものでした。何らかの専用LSI(FM音源チップなど)を核として作られていたからです。

近年は半導体技術の進歩により、汎用プロセッサで従来の専用LSI相当の機能が実現出来る状況となってきました。他機種でのMSXエミュレータはその一例です。似非職人工房ではMSXのAV機能に着目し、プロセッサの中でもDSPに着目しました。

DSPは信号処理の面ばかりが注目されがちですが、実際はC言語やアセンブラで作成したソフトを動作させる汎用プロセッサであります。DSP上でリアルタイムなエミュレーションを行い、MSXから見て全く同じ動作をする様にできれば…と考え、似非DSPシステムの開発に着手しました。

もちろん既存のカートリッジのエミュレーションばかりではなく、三次元画像の演算や音声認識などもDSPで処理させるといった、さまざまな応用の可能性も併せ持っています。

■システム構成

似非DSPシステムは、 ADSP-2106xシリーズのDSP を核とした、MSXカートリッジバスのエミュレーション部およびホストインターフェース部から構成されています。

バスエミュレーション部は、MSX本体からのメモリやI/Oアクセスが発生した時に、DSPに対して割り込みを発生させます。この割り込みによって駆動されるDSP内部のバスエミュレーションプログラムは、MSXからのカートリッジに対するアクセス要求を判断し、適切なカートリッジのエミュレーションを行います。

ホストインターフェース部は、単なるカートリッジのエミュレーションに限らない、MSX(ホスト)とDSPとの共有メモリやDMAを介した密な結合を実現します。この時には、バスエミュレーションに使用していたDSPのプロセッサパワーを他の処理に回すことが可能になり、DSPの処理能力をフルに発揮させることができます。このホストインターフェース回路を使用した場合、MSXと似非DSPを含めたシステム全体を、一種のマルチプロセッサシステムとして動作させることが可能となります。


■多様な応用例

まず、既存のカートリッジのエミュレーションが考えられます。PSG、SCC、MSX-MUSIC、MSX-AUDIO、MoonSound、マッパメモリや 似非RAM などのカートリッジのエミュレーションは、似非DSPの基本的な利用と言えます。特に音声カートリッジのエミュレーションでは、DSPからの音声出力をMSX本体を介さずに直接取り出すことが可能であるため、音声回路の貧弱な機種でも高品位サウンドを満喫することができます。もちろん、「と〜く○ん」といった、あまり普及しなかったカートリッジのエミュレーションをさせる事も楽しみ方の一つとしてあるでしょう。さらに拡張スロットもエミュレーションし、似非DSP一台で複数のカートリッジをエミュレーションしてしまう事も、利便を考えると必要になってきます。

また、300音同時発音が可能なPSGやステレオ出力のSCCなど、一見冗談のようなカートリッジを実現してしまうといった荒技も考えられます。「拡張スロット+グラディウス2+沙羅曼蛇+新10倍カートリッジ+SCCのステレオ化=新20倍カートリッジ(仮称)」といったすさまじいエミュレーションも可能でしょう。

もちろん、MPEGやJPEG展開、三次元処理機能つきの画像プロセッサというような新しいオリジナルのハードウェアを実現することも可能です。DSPのプログラミングによって、ふと思い付いたオリジナルのハードウェアを半田ごて無しで実現してしまうことができるというのも、似非DSPの大きな特徴と言えます。

■開発進行状況

現在は見た目通りで試作の段階、しかもハードウェアの組み立てがようやく終わった所です。まだ皆さんにデモンストレーションを行えるレベルには至っていません。

冬までにはある程度(PSGやSCC)のエミュレーションを実現させつつ、画像プロセッサとしての可能性も検討して行く予定です。製品化に関しては、これはまだメドが立ちません。似非DSPシステムはMSXにおけるもっとも革新的なシステムと自負しており、じっくり腰を据えて開発してゆきたいと考えています。

Prototype
似非DSP (プロトタイプ) 近景

MSX-MUSIC

FM-PACやMSX2+/turboRに搭載されているFM音源。広く普及した。

MSX-AUDIO

MSX-VIDEO(V9938)と共に開発されたFM音源ユニット。PCM/ADPCMの録音・再生が可能。価格の関係か、先のMSX-MUSICが主流。

MoonSound

Sunrise Swiss から発売されていたFM+WAVE音源カートリッジ。現在販売されていない。

と〜○まん

Talkman

エミールソフト開発から発売されていたPCMの録音と再生が出来るカートリッジ。おしゃべり時計などのアプリケーションがあった。

画像プロセッサとしての可能性

MSX内蔵VDPと置き換わるというのは技術的に困難。別のI/O番地を利用したものになる見込みが高い。

DSPのアセンブラプログラミングの練習と評価を兼ねて、DSP単体で動作するSCC音源のエミュレーションプログラムを書いてみました。DSPボードにつないだスピーカーから、MSXの香りあふれるSCCサウンドが流れた時には、感慨深いものを感じました。開発機材揃えたいな。 (柏崎) 半年前の 似非セミナー や個人的な機会に、今まで少なくない数の人に似非DSPの説明を試みたのですが、正直言って誰にも理解してもらえていない気がします。今回のペーパーでも不十分であることは否めず、やはり実物を用意する必要性を痛感しています。テクトロのTDS220欲しい。 (辻川)


■ 技術解説書のご案内

似非職人工房では、似非DSPシステムの仕組みから応用までを解説した冊子、“似非DSPシステム技術解説[1] − バスエミュレーション・SCC音源エミュレーション編”(B5・28ページ)を発行しました。

この冊子は、各種MSXイベントでの直接販売の他に、通信販売でもお求めいただけます。通信販売での頒価は送料込みで500円、代金の支払い方法は郵便振替(ゆうびんふりかえ)で後払いとなっています。

興味を持たれた方は、宛名シール同封でご注文ください。冊子および代金支払い用の振替用紙をお送りします。

技術解説書は売り切れました。再販の予定はありません。申し訳ありません。(1. July. 2001)

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■ お問い合わせ先

〒346-0016
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辻川和広 方 似非職人工房
e-mail: tujikawa@hat.hi-ho.ne.jp


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