平成18年度市民公開講座(名古屋市立大学)「健康と福祉」
第3講座(経済学研究科):健康と福祉の経済学

日時:11月11日(土)

タイトル:「私たちの暮らしと医療・介護−沖縄の健康・長寿から見えてきたもの−」

講師:澤野孝一朗(名古屋市立大学大学院・経済学研究科助教授)

*本講座は、11月11日(土)・11月18日(土)・11月25(土)の計3回です。本サイトは、私(澤野)担当分のみを紹介いたします。本講座の詳細は、「名古屋市立大学 生涯学習情報誌 知の広場 第2号」をご覧ください。


○テキスト(澤野分)

タイトル:「私たちの暮らしと医療・介護−沖縄の健康・長寿から見えてきたもの−」(PDF)

○当日の質疑応答

○私の感想とコメントについて

 このたびは、本市民公開講座にご参加頂き、ありがとうございました。心より御礼申し上げます。私(澤野)の担当では、途中にパソコンの電源が落ちたりと、多少驚くことがありましたが、みなさまのご協力により、スムーズに講義が進みました。ありがとうございました。頂きました質疑には、十分にお答えできない部分も多々あり、大変申し訳なく思っております。今回、頂きました質問・疑問に関しましては、今後の研究および大学活動に活かせるよう努力したいと思います。ありがとうございました。


○講義要旨

健康で長寿でありたい、私たち誰もが切に思うことです。本格的な高齢化社会の到来を迎え、私たちの健康・長寿は、今後どのように変貌してゆくのでしょうか。残念ながら、その答えは誰も持っておりません。そんなとき“健康・長寿の島”である沖縄の事例を利用しながら、そのヒントを得ようとするのが本公開講座の目的です。本講座では、はじめに沖縄における健康・長寿についてデータを利用して概観し、次に沖縄の高齢者の暮らしと医療・介護の現状を考察します。その後、沖縄県内で「26ショック」と呼ばれる現象を説明し、沖縄の健康・長寿が抱える問題点を説明します。最後に、本講座のまとめを行い、受講生のみなさまとの質疑応答を行いたいと考えております。

○講義内容

1 はじめに(10分)
2 沖縄における健康・長寿−その概観−(20分)
3 沖縄の高齢者の暮らしと医療・介護(20分)
4 「26ショック」−沖縄の健康・長寿が抱える課題(20分)
5 おわりに(20分)

○はじめに

近年、高齢化社会の本格的な到来に伴い、健康・長寿のあり方が再び問われようとしています。この問題に答えるには、多方面かつ多くの調査・研究の進展が求められています。この公開講座では、沖縄の事例を利用して、「健康」と「長寿」の意味を考えることに目的があります。本講座では、その主題として、「健康であること」と「長寿であること」を設定したいと考えています。
 沖縄は、“健康・長寿の島”として全国に知られています。そのイメージとして、元気なおじー・おばー(闊達な高齢者像)、2001年NHK朝の連続テレビドラマ「ちゅらさん」などが、思い浮かばれます。近年では、ヘルス・ツーリズムと呼ばれる「医療と観光」の連携も盛んです。寒さを避けるための観光(避寒観光)や体によい観光、プロ野球キャンプ(中日ドラゴンズのキャンプ地も沖縄です)やマラソン、トライアスロン大会などのスポーツ活動を通じた地域振興、ドルフィンセラピーやタラソテラピーなどの健康保養型観光などがそうです。このような“健康・長寿の島”である沖縄を知ることは、今後の日本の健康・長寿のあり方を考えるにあたって、私たちに多くの示唆を与えるものになります。
 本講座の講師は、本学に赴任する以前は、琉球大学法文学部で医療サービスや地域医療に関する経済学的研究を行っていました。本講座は、以前に調査研究を行った沖縄の事例を活用し、近年の研究成果も取り入れながら、受講生のみなさまと日本の健康・長寿のあり方を考えたいと思っております。約1時間程度の本講座のなかでは、はじめに沖縄における健康・長寿(第2節)についてデータを利用して概観し、次に沖縄の高齢者の暮らしと医療・介護の現状(第3節)を考察します。その後、沖縄県内で「26ショック」と呼ばれる現象を説明し、沖縄の健康・長寿が抱える問題点(第4節)を説明します。最後に、本講座のまとめを行い、受講生のみなさまとの質疑応答を行いたいと考えております。本講座が、健康・長寿のあり方を考えるにあたっての一助になることを、そして沖縄の現状理解に貢献することができることを心より願いたいと思っております。

○本論

2 沖縄における健康・長寿−その概観−(20分)

3 沖縄の高齢者の暮らしと医療・介護(20分)

4 「26ショック」−沖縄の健康・長寿が抱える課題(20分)

○おわりに

本公開講座の目的は、沖縄の事例を利用して、健康・長寿のあり方を考えることでした。沖縄では、従前には「なぜ長寿なのか?」というテーマが最も強い関心を集め、“長寿学”という分野の展開が見られました。しかし現在では「なぜ健康でなくなったのか?」というテーマが、沖縄県内では強い関心を集めています。この現状を知るには、沖縄タイムス「長寿」取材班編『沖縄が長寿でなくなる日』岩波書店,2004年.が最も参考になると思います。
 しかしこのテーマは、沖縄だけの問題にとどまりません。この問題は、「健康とは何か?」、「長寿とは何か?」という問題を私たちに提示しているからです。近年、人間の生死で計られる“寿命”でなく、人間らしい暮らしができる期間を寿命と考える“健康寿命”などが提案されています。このように大切なことは、単純に長生きすることではなく、そこから体得される幸福度・満足度であることは、人間の尊厳という観点からも強く理解されて良い点であると考えられます。この幸福度・満足度については、行動経済学という経済学理論の新しい展開によって、その解明が進められようとしていますが、まだ道半ばというのが現状です。
 一方、公的な医療保険制度や介護保険制度は、その理念の尊重が叫ばれて久しいですが、常に財政負担すなわち財政の論理によって、その運営を制約せざる得なくなっている側面があります。この両制度が準備されたことで、日本の厚生水準が向上したことは確かな事実です。しかし近年には、その制度それ自体が、本人の幸福に影響を与えていないかと考える意見もあります。この後者については、沖縄の事例と調査報告ですが、山城紀子『人を不幸にしない医療』岩波書店,2003年.が最も参考になると思います。
 日本の社会保障・社会福祉政策は、家族を基礎的単位として考え、多くの政策が立案・実施されています。少子化による家族の変貌、そのなかでの財政・国民負担と社会保障の形、そして最も幸福度・満足度の高い健康・長寿のあり方を探ってゆくことは、今後の日本に残された大きな課題であると言えるのではないかと思っております。


名古屋における医療と介護・健康に関する研究(プロジェクト研究)

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