財政学特殊講義U
年金・医療・介護の経済学
(2001年度後期:昼夜)


連絡事項


基本情報


シラバス(August 6, 2001)

【講義内容】日本の社会保障制度は、諸外国に比類なき充実した内容を誇っています。しかし最近では、社会保障制度が人々の行動に望ましくない影響を与える側面があることが指摘され、経済学者による政策提言が行われるようになっています。この授業の目的は、特に年金保険制度と医療・介護保険制度に注目して、社会保障制度の概要とその改革提案の内容について理解することにあります。授業の前半では年金保険制度とその問題点について、後半では医療・介護保険制度とその問題点について説明します。講義では、授業参加者が日常生活を送るなかで接している社会保障制度や、最近の話題を理解できるようになることを目標としています。

【使用するテキスト・読書リスト】講義は、原則的にレクチャー・ノートにもとづいて行われます(以下の講義予定を参照)。各レクチャー・ノートには、参考文献が掲載されていますので、疑問を感じた点や興味を持った点は各文献にあたってみてください。基本的な文献をあげると、以下のとおりです。

参考文献1は経済分析の基礎を参照のため、参考文献2は社会保障制度の理念について、参考文献3は標準的な社会保障制度の経済分析について、参考文献4は近年の経済分析、そして参考文献5は社会保障制度の詳細とそのデータについてまとめたものになります。

【他の授業科目との関連】社会保障制度は、政府財政と密接な関係がありますので『財政学』や、経済分析の基礎となる『ミクロ経済学』の理解があると、より興味を持つことができます。また社会保障制度に対する見方には様々な立場がありますので、法学専攻や社会学専攻の社会保障関連科目も有意義です。

【単位要件】成績評価は、中間試験と期末試験、出席状況にて行ないます。各レクチャー・ノートには練習問題がついていますので、各問題について習熟することが重要となります。

【その他】後期の授業期間中は、このURLで授業情報を掲載します。


講義予定(逐次更新します)

毎回の講義は、以下のレクチャー・ノートを読んできていることを前提とします。講義ではノートを復誦することはせず、問題演習や時事問題解説が中心となります。内容についての質問は、授業中に行なうことを原則としますので、何の準備もせずに出席するだけではついてゆけないでしょう。なお以下の日程には、予備日を入れて余裕を持たせていますので、実際の進度に応じて変更する可能性があります。

以下のレクチャー・ノートは、PDFファイルで保存されています(PDFファイルとは、ページ設定のあるノート形式の文書で閲覧できるファイル形式です)。PDFファイルを読むためには、Adobe Acrobat Reader(free)をダウンロード・インストールする必要があります。ファイルのサイズが大きいので、CD-ROM付きパソコン雑誌の付録に入っていることがあるので、それを購入してインストールする方がいいかも知れません。なお琉球大学のアカウントを持つ学生は、総合情報処理センターもしくは経済学実験室(530号室)のPCで見ることができます。

  1. 10月4(夜)・9(昼)日:イントロダクション 講義方針と、社会保障制度をどのように経済学の枠組で分析するかを説明します。この授業時間中に履修登録を行いますので、履修登録用紙を持って参加してください。
  2. 10月11(夜)・16(昼)日:日本の年金保険制度 年金制度の導入や拡充は、高齢者(年金受給者)の労働供給を阻害すると考えられています。本章では、余暇・所得選択モデルの初歩的な説明と、日本の年金制度の概要を説明します。
  3. 10月18(夜)・23(昼)日:高齢者の就労と年金 日本の年金制度では、高齢者が就労している場合でも、一定額の年金を受給することができます(在職老齢年金制度)。この年金受給制度が、高齢者の就労選択にどのような影響を与えているかを考えます。
  4. 10月25(夜)・30(昼)日:生活保護 以上では、年金制度によって高齢者(年金受給者)の労働供給が歪む可能性を検討してきましたが、その本質的な理由は年金制度自体にあるのではありません。実はこの種の問題は、政府が国民の間で所得を移転する政策を取る場合に、必ず発生します。ここでは、年金制度に次いで代表的な所得移転政策である生活保護制度を利用して、その労働供給阻害効果を明らかにします。
  5. 11月1(夜)・13(昼)日:専業主婦の就労と年金 日本の年金制度は、社会保険方式にて運営されており、国民は年金保険料を納付する義務を負っています。しかし政策的配慮から、一定の条件を満たす専業主婦は、年金保険料の納付を免除されることとなっています。このような優遇政策は、専業主婦の労働供給を阻害する側面を持つと考えられています。ここでは、日本の税制や社会保障制度における専業主婦優遇政策を検討します。
  6. 11月15(夜)・20(昼)日:国民年金と保険料未納者 日本では、国民全員が加入する基礎年金として、国民年金制度が用意されています。この国民年金制度は、社会保険方式で運営されているものの、近年では年金保険料の未納者が増加して、社会問題化しています。ここでは、国民年金制度における強制加入制度の意義と、国民年金制度における保険料未納者問題について考えます。
  7. 11月22(夜)・27(昼)日:厚生年金と財政運営 日本では、勤労者の大半が加入する年金制度として厚生年金制度が用意されていますが、国民年金制度と同様に多くの問題を抱えています。特に深刻なのが、急増する年金給付をどのような方式で賄って行くかについて明確な方針がなく、年金財政が安定しないことがあります。ここでは、厚生年金制度の仕組みと、基本的な財政運営方針である積立方式と賦課方式について説明します。
  8. 11月29(夜)・12月4(昼)日(予備日) この授業では、前半7回の授業の復習を行ない、質問のあった点や分からなかった点、補完的な内容の説明を行ないます。
  9. 12月6(夜)・11(昼)日:日本の医療制度 講義の後半からは、日本の医療保険制度を考えます。本章では、イントロダクションとして医療保険制度の自己負担率の役割と、制度の概要について説明します。
  10. 12月13(夜)・18(昼)日:医療費抑制 最近では、医療保険制度改革において自己負担率の改定が頻繁に議論されています。自己負担率改定の意味を、医療費の抑制の観点から検討します。
  11. 12月20(夜)・1月8(昼)日:休講
  12. 1月10(夜)・15(昼)日:医療保険財政 本章では、自己負担率改定の意味を、医療保険財政改善の観点から検討します。仮に自己負担率の改定が財政改善のみを目的とする場合、患者に医療費負担を転嫁することのみによって財政改善を実現できることを説明します。
  13. 1月17(夜)・22(昼)日:老人保健制度 現在の医療保険制度の最大の問題点は、高齢者医療に関する改革の方向性が定まらないことです。本章では、日本の高齢者医療を掌る老人保健制度の概要を説明し、高齢者医療の現状を明らかにします。
  14. 1月24(夜)・29(昼)日:介護保険制度 医療保険制度に関する講義の最後は、高齢者医療と密接な関係にある介護保険制度について説明します。介護保険制度はまだ創設されて間もないですが、その政策的意味を高齢者医療費との関係を利用して説明します。
  15. 1月31(夜)・2月5(昼)日(予備日) この授業では、後半5回の授業の復習を行ない、質問のあった点や分からなかった点、補完的な内容の説明を行ないます。

表紙