財政学特殊講義V
医療・介護の経済学
(2003年度前期:昼夜)


連絡事項


基本情報


シラバス(March 18, 2003)

【講義内容】日本の社会保障制度は、諸外国に比類なき充実した内容を誇っています。しかし最近では、社会保障制度が人々の行動に望ましくない影響を与える側面があることが指摘され、経済学者による政策提言が行われるようになっています。この授業の目的は、特に医療保険制度と介護保険制度に注目して、社会保障制度の概要とその改革提案の内容について理解することにあります。授業の前半では医療保険制度とその問題点について、後半では介護保険制度とその問題点について説明します。講義では、授業参加者が日常生活を送るなかで接している社会保障制度や、最近の話題を理解できるようになることを目標としています。

【使用するテキスト・読書リスト】講義は、授業開始時に配布するハンド・アウトを利用して行います。このため指定するテキストはありません。。また参考までに過去の講義で利用したレクチャー・ノートを以下にアップ・ロードします(少し情報が古くなっているかも知れません)。疑問を感じた点や興味を持った点があれば、レクチャー・ノートや参考文献にあたってみてください。

以下のレクチャー・ノートやハンド・アウトは、PDFファイルで保存されています(PDFファイルとは、ページ設定のあるノート形式の文書で閲覧できるファイル形式です)。PDFファイルを読むためには、Adobe Acrobat Reader(free)をダウンロード・インストールする必要があります。ファイルのサイズが大きいので、CD-ROM付きパソコン雑誌の付録に入っていることがあるので、それを購入してインストールする方がいいかも知れません。なお琉球大学のアカウントを持つ学生は、総合情報処理センターもしくは経済学コンピューター室(法文517号室)のPCで見ることができます。

参考文献1は経済分析の基礎を参照のため、参考文献2は社会保障制度の理念について、参考文献3は標準的な社会保障制度の経済分析について、参考文献4は近年の経済分析、そして参考文献5は社会保障制度の詳細とそのデータについてまとめたものになります。

【他の授業科目との関連】社会保障制度は、政府財政と密接な関係がありますので『財政学』や、経済分析の基礎となる『ミクロ経済学』の理解があると、より興味を持つことができます。また社会保障制度に対する見方には様々な立場がありますので、法学専攻や社会学専攻の社会保障関連科目も有意義です。

【単位要件】成績評価は、中間試験と期末試験、出席状況にて行ないます。

【その他】この授業では、授業参加者に医療保険と介護保険制度に関心を持ってもらうために、授業は質問や議論を中心に行いたいと考えています。このため授業に関する資料や情報は、このウエブにアップ・ロードもしくはリンクする予定です。授業参加者は、事前に授業資料やホーム・ページを読み、いくつかの疑問点等を考えてみてください。前期の授業期間中は、このURLで授業情報を掲載します。


講義予定(逐次更新します)

この講義では、多くの社会保障関係法令を参照しています。基本的な実務法ですので、興味を持った場合にはぜひ読んでみてください。この講義で取りあげている社会保障関係法令は、以下の二つの方法で検索することができます。

以下の日程には、予備日を入れて余裕を持たせていますので、実際の進度に応じて変更する可能性があります。

  1. 4月15(昼)・17(夜)日:イントロダクション 講義方針と、医療保険制度と介護保険制度をどのように経済学の枠組で分析するかを説明します。この授業時間中に履修登録を行いますので、履修登録用紙を持って参加してください。
  2. 4月22(昼)・24(夜)日:医療と健康 講義の前半では、医療保険制度を考えます。日本の医療保険制度は、国民の健康や長寿に多大な貢献をしてきた制度と考えられています。この講義では、日本の健康長寿の現状と医療保険制度の概要について説明します。
  3. 5月1(夜)・6(昼)日:強制加入制度 日本の医療保険制度は、国民に加入選択の自由を認めていない制度となっています(強制加入制度)。強制加入制度は、世界各国がみんな採用している制度ではなく、日本の医療保険制度における最大の特徴と言えます。この講義では、強制加入制度の意味について、逆選択(アドバース・セレクション)の議論を利用して説明します。
  4. 5月8(夜)・13(昼)日:健保(健康保険) 日本の医療保険制度の基礎は、労働者に対して医療保険を提供する制度が基礎になっていると考えられています。この労働者とその家族をカバーする医療保険は、健保(健康保険)と呼ばれます。この講義では、大企業等が保険者となる組合健保(組合管掌健康保険組合)と、政府が保険者となって中小企業労働者に保険を提供する政管健保(政府管掌健康保険組合)の2つの仕組みについて説明します。
  5. 5月15(夜)・20(昼)日:国保(国民健康保険) 日本では、全国民をカバーするため、労働者以外の国民に提供する医療保険が創設されました(国民皆保険制度)。この医療保険は、国保(国民健康保険)と呼ばれ、原則として市町村が保険者となって運営しています。この講義では、国保制度の概要と、現在に直面している問題について説明します。
  6. 5月27(昼)・29(夜)日:自己負担率 医療保険は、保険加入者(被保険者)の医療費負担リスクをカバーする保険です。しかし保険者(保険会社)は、被保険者(保険加入者)の無駄な受診を抑制するために、医療費全額を保険でカバーしない仕掛けを用意しています。この保険適用から外された医療費負担を自己負担と呼び、その医療費に占める割合は自己負担率と呼ばれます。この講義では、医療保険制度における自己負担率の役割について検討します。
  7. 6月3(昼)・5(夜)日:保険者機能 医療保険を運営する保険者(保険会社)は、被保険者(保険加入者)の不用意な行動や不注意を抑制するために、自己負担率の設定以外に、保険適用の拒否や保険適用となる医療機関の指定、その治療水準や料金について、様々な仕掛けを設定することができます。これらの手段は保険者機能と呼ばれていますが、日本の医療保険制度では政府方針によって大幅に規制されてきました。この講義では、保険者機能が規制されてきた理由と、近年の規制緩和の動きを説明します。
  8. 6月10(昼)・12(夜)日(予備日) この授業では、前半7回の授業の復習を行ない、質問のあった点や分からなかった点、補完的な内容の説明を行ないます。さらに時間的余裕がある場合、不妊治療の保険適用問題を説明します。
  9. 6月17(昼)・19(夜)日:高齢者世帯と介護 講義の後半からは、介護保険制度を考えます。この講義では、介護保険の給付対象となる高齢者とその世帯環境、そして介護の現状について説明します。
  10. 6月24(昼)・26(夜)日:老人保健と社会的入院 日本では、様々な理由によって、家族が看ることが難しいと考えられた高齢者は、長期間にわたって入院生活を余儀なくされてきた側面がありました。これら高齢者の入院実態は社会的入院と呼ばれ、近年の医療費高騰の主因とも考えられています。この講義では、高齢者医療を担ってきた老人保健制度の概要と、社会的入院の実態について説明します。
  11. 7月1(昼)・3(夜)日:介護保険と保険料 厚生労働省は、高齢者の社会的入院の解消を目的とし、その受け皿として介護保険制度を創設しました。この講義では、その介護保険制度の概要と、過去の医療保険制度の反省から設計された介護保険料の仕掛け、そして近年の保険料高騰問題について説明します。
  12. 7月8(昼)・10(夜)日:介護サービス 厚生労働省は、高齢者の退院を促し、最終的に在宅介護ケアによって看ることを目標としています。しかし制度創設当時の医療機関の反対もあり、まず医療機関の特定のベット(療養型病床群)を介護施設を認定し、老人保健(医療保険)から介護保険への移行を進めました。このため施設介護サービスは、非常に複雑な制度となっています。この講義では、施設介護サービスの現状と、厚生労働省が進める在宅介護サービスへの移行策を説明します。
  13. 7月15(昼)・17(夜)日:終末期医療 日本の高齢者医療において、死亡時直前に投入される医療費の高額さが近年問題となっています(終末期医療)。この講義では、高額医療費の現状を説明した後、尊厳死やホスピス、医療行為と安楽死要件の問題について説明します。
  14. 7月22(昼)・24(夜)日(予備日) この授業では、後半5回の授業の復習を行ない、質問のあった点や分からなかった点、補完的な内容の説明を行ないます。さらに時間的余裕がある場合、沖縄における医療保険と介護保険の現状について説明します。

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