財政学特殊講義W
日本の医療供給制度
(2002年度後期:昼夜)


連絡事項


基本情報


シラバス(August 27, 2002)

【講義内容】日本の医療保険制度では、消費者に医療サービスを給付する現物給付方式を採用しています。このため医療サービスを供給する医師や病院行動を理解することは、医療保険制度を考えるにあたって重要な知識となっています。講義では、医師や病院行動を規定する医療制度を説明し、日本の医療供給体制の概要とその問題点を理解できるようになることを目標としています。

【使用するテキスト・読書リスト】講義では、特定のテキストを利用しません。ただし疑問を感じた点や興味を持った点は、以下の参考文献を利用して調べてみてください。

医療供給制度や医療経済学は、各研究者の背景や経歴によって、そのアプローチや問題の捉え方が大幅に異なります。上記の参考文献は、代表的な考え方が示されている文献を取り上げています。参考文献1は、応用経済学のひとつとして医療サービスを分析しているテキストです(ただしミクロ経済学や計量経済学の知識がないと、多少難しい側面があるかも知れません)。参考文献2は、著者が元厚生省官僚であったことから、病床数規制や医療機器規制と言った医療規制や、医療研究開発投資に強い関心を持って書かれている文献です。参考文献3は、どちらかと言うと医療従事者(医師など)が診療にあたる視点を重視して、医療問題を解説しています。参考文献4は、医療保険制度や医療供給制度と言った制度の役割に注目して、経済学的な分析と提言を行っている文献です。参考文献5は、社会保障(現物給付)としての医療サービスの役割を分析している文献です。なお上記の参考文献は、すべて琉球大学附属図書館の指定図書として用意しています。

【他の授業科目との関連】指定はありませんが、日本の医療供給制度は社会保障制度と密接な関係がありますので、政府財政と社会保障の関係を考える『財政学』や、経済学分析の基礎となる『ミクロ経済学』の理解があると、より興味が持つことができます。なお本講義は、昨年度・後期開講の「年金・医療・介護の経済学」の続編となりますが、講義の受講経験がなくとも理解できるように準備しています。

【単位要件】成績評価は、中間と期末のテストと出席状況にて行ないます。

【その他】この授業では、授業参加者に医療供給制度に関心を持ってもらうために、授業は質問や議論を中心に行いたいと考えています。このため授業に関する資料は、すべて上記のウエブにアップ・ロードする予定です。授業参加者は、事前に授業資料を読み、いくつかの疑問点等を考えてみてください。また履修登録は、第1回目の授業時に行いますので、履修登録用紙を持参して参加してください。後期の授業期間中は、このURLで授業情報を掲載します。


講義予定(逐次更新します)

毎回の講義は、以下の授業資料を読んできていることを前提とします。講義では資料を復誦することはせず、問題演習や問題解説が中心となります。内容についての質問は、授業中に行なうことを原則としますので、何の準備もせずに出席するだけではついてゆけないでしょう。なお以下の日程には、予備日を入れて余裕を持たせていますので、実際の進度に応じて変更する可能性があります。

この講義では、多くの医療関係法令を参照しています。基本的な実務法ですので、興味を持った場合にはぜひ読んでみてください。この講義で取りあげている医療関係法令は、以下の二つの方法で検索することができます。

ただし以下の講義予定で「沖縄法令」と明記されているものは、直接に法規集にあたる必要があります。沖縄法令を検索する場合には、琉球大学附属図書館の沖縄関係資料コーナーに足を運んでください。琉球大学附属図書館にないものや、詳しく知りたい場合には、沖縄県立図書館沖縄県公文書館に行ってみてください。

以下のレクチャー・ノートは、PDFファイルで保存されています(PDFファイルとは、ページ設定のあるノート形式の文書で閲覧できるファイル形式です)。PDFファイルを読むためには、Adobe Acrobat Reader(free)をダウンロード・インストールする必要があります。ファイルのサイズが大きいので、CD-ROM付きパソコン雑誌の付録に入っていることがあるので、それを購入してインストールする方がいいかも知れません。なお琉球大学のアカウントを持つ学生は、総合情報処理センターもしくは経済学実験室(530号室)のPCで見ることができます。

  1. 10月8(夜)・10(昼)日:イントロダクション 講義方針と医療供給制度とは何かを説明します。この授業時間中に履修登録を行いますので、履修登録用紙を持って参加してください。
  2. 10月15(夜)・17(昼)日:医師の仕事と医師法 日本で医業(医療サービスの提供)を行うには、医師法に基づく医師免許を有していることが必要となります。この講義では、医師の仕事とその義務を医師法に則して説明します。
  3. 10月22(夜)・24(昼)日:沖縄県の日本復帰と医師法の適用 日本復帰以前の沖縄県では、独自法令(沖縄法令と呼ばれます)によって医師免許を与えていました。そして日本復帰以後には、現行の医師法が適用となりました。このとき沖縄法令の医師免許基準が現行の医師法規定と多少異なっていたため、その適用に関する調整が必要となりました。この講義では、沖縄県の復帰に伴う医師法適用の特別措置について説明します。
  4. 10月29(夜)・31(昼)日:病院・診療所と医療法 日本では、医療施設の基準や義務はすべて医療法によって規定されています。この講義では、病院と診療所の違いは何かを説明した後、最近の規制緩和の動きで注目されている医療法人の仕組みと広告規制の概要について説明します。
  5. 11月12(夜)・14(昼)日:医療機関の収益構造 日本の医療機関の収入の大半は、診療報酬収入であると言われています。診療報酬とは、医療保険制度から医療機関に支払われる料金(医療費)のことです。この講義では、診療報酬制度の概要と、医療機関に与えられている優遇税制の仕組みについて説明します。
  6. 11月19(夜)・21(昼)日:政府の医療供給規制 日本では、1985年以後に医療費抑制の手段として、医療供給(病床数)を規制する手段が採用されました。この講義では、医師数や病床数に対して、どのような規制が実施されているかを説明します。
  7. 11月26(夜)・28(昼)日:医師誘発需要仮説 一般に日本の医療供給規制は、医療費の抑制を目的として実施されていると考えられてます。これは、医療供給(医師数・病床数・医療機器数)の増加こそが医療費高騰の原因であり、その抑制によって医療費抑制を実現できると考えられているためです。医療供給の増加が医療費高騰を引き起こすメカニズムは、医師誘発需要と呼ばれる仮説によって説明されています。この講義では、医師誘発需要仮説の概要とその問題点について説明します。
  8. 12月3(夜)・5(昼)日:(予備日)この授業では、前半授業の復習を行ない、質問のあった点や補足的な内容の説明を行ないます。
  9. 12月10(夜)・12(昼)日:救急医療 日本の救急医療体制は、数多くの問題を抱えていると言われています。この講義では、救急搬送体制と救急医療体制の現状とその問題点について説明します。
  10. 12月17(夜)・19(昼)日:小児医療 近年の日本では、小児科医の不足による小児科閉鎖が大きな社会問題となっています。この講義では、小児医療の現状と政府が実施している対策について説明します。
  11. 1月7(夜)・9(昼)日:へき地医療 沖縄県には、沖縄本島から離れた島嶼や、市街地から遠く離れたへき地が多く存在します。これらの地域は、昔から不十分な医療サービスしか受けることができず、沖縄県における大きな問題となっています。この講義では、沖縄県のケースを中心にして、へき地医療の現状を説明します。
  12. 1月14(夜)・16(昼)日:災害医療 阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件をはじめ、近年では大規模な都市型災害が多発しています。このような大規模災害に直面した場合、政府・地方自治体が敏速に医療供給体制を確立することは、住民の生命を守る上で重要な対策となっています。この講義では、近年の大規模災害のケースを利用して、災害医療活動の概要と、その後に抱えた問題点について説明します。
  13. 1月21(夜)・23(昼)日:公立病院 日本では、民間病院が中心となる医療供給体制となっているため、公立病院の役割は非常に限定的なものでした。しかし近年において多くの医療サービスを民間病院が提供できるようになった昨今、改めて公立病院の意義が問われています。この講義では、沖縄県の公立病院体制を中心にして、公立病院の抱える問題点について説明します。
  14. 1月28(夜)・30(昼)日:(予備日)この授業では、後半授業の復習を行ない、質問のあった点や補足的な内容の説明を行ないます。

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