さわやかな五月の風が頬 をくすぐる日

病院の一室で86年の生涯を静かに静かに最後の眠りについた老女がいました。

元気な頃
老女は一人の子を抱いた女を前に、子供時代の苦労話しを聞かせました。
そして、老女が結婚をしてからの幾つかの苦労話しも聞かせました。

戦争で家が焼け、住む所も無く、食べることが出来なかった事
四人の子供を抱えての耐乏生活。
内職をし夫を支え続けた日々。
夫の病気。
姑に仕えてきたこと。
長女の死、不出来な子供のこと。
たくさんの苦労を抱えて此処まで生きてきたこと等等。

それでも老女は夫に微塵も苦を訴えなかったそうです。

そんな苦労を子供を抱え懸命に聞いている女にはさせまいと
女を心から理解し、女と共に子供を育てました。

女が仕事といえば小さい子をおんぶし、手を引き
暑くても寒くても公園で遊ばせ、食事をさせてくれた。

熱が出たといえば、女から預かった子供に何かあったら
大変だからと優しい笑顔を女に向けました。

女も老女に感謝をし仕事に励むことができました。

「ありがとう」を何度言っても言い足りません。

人を想う心を教えてくださって  ありがとう

優しさを教えてくださって     ありがとう

我慢強さを教えてくださって   ありがとう

笑顔の素敵さを教えてくださって ありがとう

生きることの大切さを、尊さを教えてくださって ありがとう

  死して尚、人間が生きることの偉大さを伝えてくださって
       
     「30年間、本当にありがとうございました」

そして、いまなお元気でいる実母の健康を祈りつつ
これからの人生を「かず子さん」あなたの様に生きていきたい。 

私の4人の子供たちはお義母さんのおかげで優しい子に育っています。


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