台湾鉄道紀行 台湾新幹線開通前夜の在来線風景
page-9 台南から高雄へ各駅停車の旅
台南駅に進入する2635電車
 ▲高雄までは各停「電車」で50分弱
■「電車2635」(各駅停車)台南→高雄

・まさに「通勤電車」 高雄まで50分の旅

 ちょうどよい時間の優等列車がなく、台南から高雄までは「普通電車」で行くことにした。自動券売機は硬貨しか使えず、窓口に並んで切符を購入。細長い切符には「通勤電車」と書かれている。あまり気分のいい響きではない。

 台南駅2番線ホームに、13時21分発の高雄行「2635電車」がやってきた。

 韓国製の青いステンレス電車の6両編成。車内には吊革がぶら下がり、窓に背を向けて座るロングシート。8割ほど座席が埋まっている。まさに「通勤電車」といえる。
「電車」の車内はロングシート

 鉄道マニアの習性で先頭車両に乗り込む。だが、運転席はほとんど見えない。面白味のない車両である。
 シートはビニール製で、何やら病院の待合室に座らされているような気分。窓も小さく、景色が楽しめるとは言い難い。ドアが閉まる時に鳴る「ビー」という音も気になる。

 旧型客車の「平快」「普通」を廃止後には、このロングシート電車が台湾中を席巻するのだろう。1990年代初頭、日本の東北地方で起こった悪夢を思い出す。客車列車を全廃し、ロングシート電車を大量投入したあの出来事である。

台南〜高雄間の路線図
 「外人」の分際でありながら、思うままに異国の鉄道の悪口を並べてしまった。車両に固執するのは鉄道マニアの悪い癖である。

 高雄までは9駅、50分弱の旅。ノンストップの自強号でも30分超の距離であるから、各駅停車にしては健闘しているといえる。

 台南を出た列車は、保安、中洲といった小駅に停まりながら軽快なスピードで南へ走る。県境の二層行渓を渡ると大胡(Dahu)に着く。ここから台南県。車窓には、ヤシの木々が頻繁に見えるようになってきた。
南国風な車窓が続く

 13時46分、岡山(Gangshan)に到着。人口10万、高雄県の衛星都市。降車する客も多い。やはりどうしても「おかやま」と読んでしまう。

 台湾鉄道の基礎は日本統治時代に作られたため、駅舎などでその面影が見られるが、駅名もそうだ。岡山は日本時代に付けられた地名であるし、高雄は京都の高雄から取ったものだという。
台湾新幹線の左営(高雄)駅
 ▲新幹線の左営(高雄)駅


 高雄に近づくと、左手に真新しい道床が寄り添ってきた。「台湾新幹線」のレールだ。

 左営(Zuoying)駅の付近には、巨大なガラス張りの橋上駅舎が整備されている。ここが台湾高速鉄道の左営駅。当面の終端駅で、高雄駅への乗り入れはまだ先になるという。

 左営から7分、高層マンションが右に左に見えた頃、列車は終点の高雄(Kaohsiung)に着いた。

 函館に着いたときのように、「はるばる来たな」という気持ちになった。


■はるばる来たり、第二の都市・高雄
近代的な駅舎の高雄駅
 ▲近代的な駅舎になった高雄駅

 プラットホームこそ多少古びて良い雰囲気を残しているが、駅舎は近代的な橋上式になっていた。
 かって、写真などでよく見た日本式建築の駅舎は2002年3月にその役目を終えている。

 高雄は人口147万、台湾第二の都市。現在、駅付近ではMRT(地下鉄)の建設工事が行われている。さらには路面電車が走る計画もあるという。
 数年後には、駅前風景がさらに激変しているのかもしれない。
駅前では大規模なMRT工事が続く
 ▲駅前では大規模なMRT工事が続く

 改札口にある「購買証明」のスタンプを捺し、駅員に切符を見せて改札を出る。台湾鉄道には、切符を手元に残せる有難い制度がある。いわば領収書代わりということだ。
切符をもらう証明印はこの看板が目印

 改札を出るとすぐに、鉄道グッズを売るワゴンがあった。1階の直営売店にもある。絵葉書やロゴ入りバッジなどを購入。実はこれで台北、台中に続いて3度目。グッズ店を見かける度に何か買っている。

 日本と西欧を除けば、これだけ鉄道グッズを売っている国も珍しい気がする。

 高雄に滞在できるのはわずか1時間。急ぎ足で駅近辺を散策する。

 台北ほどではないにせよ、やはり人の数が多い。
 そして気になったのが、物乞いの姿を幾度か見かけたことだ。台北や台中にはいなかったから、放浪するうちに暖かい南の都市へ流れついたのだろうか。


■旅の終わりの寂しさは、駅弁と台湾ビール
高雄駅ホーム

 市場でとりどりの魚を眺めて港町風情を少しだけ感じ、駅に戻る。行きたい所は無数にあるのだが、帰りの電車の発車時刻が迫っている。

 ホームには、15時20分発の「自強1032号」がすでに停車中。売店で台湾ビールを大量に買い、名残惜しい気持ちを残しつつ列車に乗り込む。

 指定された座席の前は、広い車椅子スペースになっていて仕切りもない。そこには「自願無座」の立客が溢れた。
 非常に落ち着かぬ座席だ。
高雄駅で購入した 鉄路弁当

 発車ベルもなく、列車は定刻に高雄駅を離れる。
 旅の終わりが近づいた時の言葉に出来ぬ寂しさがこみ上げてきた。

 先ほど高雄駅で買った「鉄路弁当」を開けてみる。日本円でわずか200円少々の代物だが、白飯の上には排肉と味付け卵とほうれん草。

 台北までは、あと4時間強。立客は増える一方になってきた。

 目の前で彼らに眺められながら、なんとも形容し難い味の弁当を、ビールの泡とともに流し込んだ。

(終)


「台湾鉄道紀行」DATA
■旅行日:2005年1月上旬
■「鉄道紀行への誘い」公開日:2005年1月30日
■最終更新日:2005年1月30日
■主要参考文献
「台湾の鉄道」徳田耕一著、監修:台湾鉄路管理局(1996年JTB)
「台湾鉄路千公里」宮脇俊三(1980年角川書店。1985年角川文庫)
「台湾一周鉄道の旅」結解喜幸(2002年光人社)
「台湾鉄路車站図誌」蘇昭旭(2002年人人出版=台湾)
※これらも含め、関連書籍を別頁で紹介
■文章・写真:西村 健太郎

※文中に記載した駅名の読み仮名は時刻表や駅名看板など公式のものに拠った。
※日本円で記載している場合、1元は3.5円で計算した。
※文中の時刻や内容は2005年1月現在のものである。

前のページに戻る
前のページへ
台湾鉄道紀行 トップへもどる
台湾鉄道紀行のトップへ
次のページへ進む
次のページへ
ホームに戻る 世界編のトップに戻る