台湾鉄道紀行 台湾新幹線開通前夜の在来線風景
page-8 台中・台南の風景と「自強号」
台中駅舎
 ▲日本統治時代に作られた台中駅舎
■パワーみなぎる第三の都市・台中を歩く

 次の列車まで1時間半ほどあるので、台中の街を歩く。
 日本時代に建てられたという赤レンガ造りの駅舎を出ると、すぐさまタクシーの客引き。道路ではクラクションが鳴り響いている。

 喧騒と埃っぽい空気の中、駅前に立っていると、首都・台北とは違う種類のエネルギーが充満しているように感じた。

 台中は100万近い人口を誇る台湾第3の都市。街を歩いていると、1999年9月に起こった大地震の影響だろうか、崩れかけた古建物も散見される。
台中駅付近の風景

 駅近くにある9階建てビルは幽霊屋敷のようになっているが、1階部分だけは普通に店舗として使っている。建て替えや取り壊す余裕がないのだろうか。

 店先に突き出した看板は、台北に比べると派手で香港の街並みのよう。都市間高速バス会社の看板もまた大きい。熾烈な競争があるためか、乗場近くを通ると、どこの社も声をかけてくる。

 台中公園まで行って引き返す。帰路、駅近くにある「建国市場」に迷い込んだ。

建国市場付近の風景
 人一人がやっとすれ違える程の路地に、店先から商品が限界までせり出す。野菜と魚と肉が交じり合った独特の匂いが充満。日本では絶滅寸前となっている生活市場の風景がここにはあった。

 そして、こんな場所でもスクーターが堂々と入ってくる。台北でもそうだったが、台湾人にバイクは欠かせないようで、その数は半端ではない。狭隘な路地に、排気ガス臭が漂っている。

 パワーに圧倒された台中市街散策を終え、駅に戻る。列車乗り継ぎの間に、ちょっとした街巡りが楽しめる。これも鉄道旅行の良さではないかと思う。


台中駅に停車中の自強号
 ▲台南まで自強号で1時間40分の旅

■特急「自強号」で第四の都市・台南へ


 台中10時33分発の特急「自強1009号」高雄行に乗り込む。次は台南まで1時間40分間の旅。すでにデッキで立っている客もいて、混んでいる。

 流線型のプッシュフル式電車は、快適に飛ばす。台中郊外の街並みが坦々と続く。
 途中、新幹線のものとおぼしき真新しいトラス橋と交差。まだ架線は張っていないようだが、秋までに間に合うのか心配になる。
台中〜台南間の路線図

 「海線」と再び合流し、大肚渓を越えると彰化県。台中から15分ほどで彰化(Changhua)に到着した。人口22万人の県庁所在市だ。若干の乗降の後、すぐ発車。特急ゆえ、停車時間が非常に短い。

 彰化を過ぎると、沿線には蘇鉄やバナナの木々が目立ち始め、南国的な雰囲気に溢れてきた。天気が良ければ楽しそうだが、今日も曇天。列車は灰色の南の島を高速で走り抜ける。

 特急ならでは速さと、密閉された空間から眺める車窓は、感動度合いを減少させてしまう気がするが、時間の有効活用には仕方がない。

南国らしい風景になってきた
 赤い服と赤い帽子をまとった女性パーサーが、ワゴンを押して車内販売にやってきた。かっての自強号では、乗客全員にお茶のサービスがあったという。その名残か、車端部には飲料水の入ったタンクと紙コップがある。

 左手に山々が迫り来る街の中を走り、二水(Ershuei)を通過。この駅から、景勝地の湖「日月潭」に近い車呈(本来は「土」偏が付く)まで、「集集(Jiji)
線」という支線が分岐している。赤字ローカル線で、廃止の危機もあったが、住民の熱意で存続したのだという。車窓も良いらしいので、非常に興味がある。

濁水渓の鉄橋を越える
 列車は、水量がほとんどない「濁水渓」の鉄橋を越える。ここから雲林県となる。中心都市の斗六(Douliou)を通過。この自強号は停車駅が少ない「速達便」なので止まらないが、ここは特急停車駅だ。平野部の市街地が途切れ田園風景が見えると、また県境。嘉義県に入った。

 11時36分、嘉義(Chiayi)に到着。日本、いや、世界でも著名な「阿里山(A-li-shan)線」という登山鉄道の乗換駅だ。標高差2000メートル以上を駆け上る列車は1日1本だけ。乗車券の入手は困難を極めると聞くが、鉄道マニアなら一度は行かねばならぬ路線かもしれない。

阿里山鉄道(絵葉書より)
 ▲阿里山鉄道(絵葉書より)
 嘉義を出るとすぐに北回帰線の塔を越えた。ここから先は熱帯地域ということになるが、少しの間は市街地を走る。

 3つ目の後壁駅から台南県に入り、サトウキビ畑が広がり始めた頃、主要都市の新営(Sinying)を通過。ここには日本統治時代に建てられた大きな製糖工場があったが、今は閉鎖したとの事。南部の主幹産業である製糖も厳しさが増している。
 ただ、この駅から路線バスが通ずる烏樹林という村では、製糖鉄道を観光用に転換して人気を集めているそうである。

台南駅ホーム(月台=ユエタイ)
 ▲台南駅ホーム(月台=ユエタイ)
 善化(Shanhua)、永康(Yongkang)を通過し、市街地にマンション群が見えてきた。

 12時13分、定刻通りに台南へ到着。ホームに降り立つとやはり暖かい。ようやく南国らしい空気に触れられた気がする。

■古都・台南の街と「担仔麺」

 一見すると東南アジア系の顔立ちをした人々が多い。
 原住民・平埔族の血が濃いのだろうか、それとも出稼ぎの人が多いのか。いずれにしても、台北、台中では見られなかった顔である。
南国の風情漂う台南駅駅舎
 ▲南国の風情漂う台南駅駅舎

 台南は人口74万、台湾第四の都市だ。1661年までのオランダ統治、鄭成功の占領を経て1663年から清朝の直轄地として、その政庁が台南に置かれた。いわば古都である。そのためか、先ほどの台中に比べると心なしか落ち着いた街のように感じる。

 次の列車まで1時間強。まずは昼食場所を探さねばならない。
 旅行ガイドブックを参照すると、台南は、担仔麺(ダンツーミエン=汁そば)発祥の地だそうである。
担仔麺(ダンツーミエン=汁そば)

 「門外不出の肉味噌の味
は絶品」との由。「門外不出」や「絶品」などという言葉をいとも簡単に連発する紹介文は、にわかに信じがたい。そう思いつつも、駅から徒歩10分程の場所にある著名店へ向かう。

 メニューには日本語での説明もある。店も綺麗で店員の愛想もいい。要注意だ、と感じたが、明朗会計で大して高くはなく、味も悪くはない。たまにはガイドブックを信用するのもいい、そう思った。

台南の孔子廟
 店の近くにある台湾最古という「孔子廟」を見学。ガジュマルの木々と赤煉瓦の本堂を瞥見して退散。ガイドブックには「無料」と書いてあったのだが、本堂へ入るには25元が必要とのことであった。

 堂々とした洋風造りの市庁舎を眺めながら、駅に戻る。

 このほか、台南運河沿いにも見所は多いのだが、残念ながら1時間超ではほとんど見ることができない。改めてゆっくり歩きたい街だと感じた。

 そもそも、一日で3都市を巡るのは、欲張り過ぎなのであろう。


次のページへ続く
「台南から高雄へ各駅停車の旅」

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