旅日記、徒然に。

鉄道ブーム真っ盛り?ついにNHKや文芸誌でも…
2004/6/6更新 (第28回)

 約1カ月ぶりの更新となりました。GWも終わり、連休がなくなり旅へ出づらいシーズンとなりました。
 昨年2月に当コーナーでも少し触れましたが、最近、本当に鉄道ブームなんだなあ、と感じる番組や書籍などが多くあります。今回、その一端を実感したテレビ番組と文芸雑誌を紹介します。


▼NHKが現代版「最長片道切符の旅」を放送



 放送スタートの5月6日稚内駅にて
 (放映中のテレビ画面より)
 NHKのBSハイビジョン(7:45〜8:00)で放映されている「列島縦断 鉄道12,000km〜最長片道切符で行く42日」という番組はご存知でしょうか。(NHK BS2で19:45〜20:00などに再放送。毎週土曜深夜にはNHK総合24:50〜25:15でダイジェスト版放送)
 この番組は、稚内から肥前山口まで一筆書き(同じ駅を二度通らないと片道切符)となる全国の様々な路線を経由し、日本最長となる1万2千kmの最長片道切符を使い、それを俳優の関口知宏さん(あのニュースキャスター・関口宏さんの息子さんです)が実際に旅しながら各地から生中継するという番組です。


 最長片道切符については番組中でも
 詳しい説明が行われていた。
 (放映中のテレビ画面より)
 同番組内でも言っていますが、まさに我が国は"鉄道ブーム"真っ盛り!その流れに乗って、ついにNHKでも鉄道番組を放送することになりました。しかも"最長片道切符"という、かって宮脇俊三さんがその著書『最長片道切符の旅』で行ったことでも有名な旅を、現代版にアレンジし、番組としてNHKが行うというのです。

 宮脇さんの頃とは違い、四国に渡る経路が瀬戸大橋線だけしかなくなった今では、"一筆書き"では四国には行けませんが、同番組内では特別編と称して放送するなど、毎日、生中継を交えながら、日本全国の鉄道風景をリアルタイムで放送するという鉄道マニアには"たまらない企画"となっています。


本当にロングシートで駅弁が食べられるか
どうかは別にして…駅弁食すシーンも多い。
(放映中のテレビ画面より)
 この番組の感心する点は、関口さんが鉄道に乗っている最中のシーンは比較的自然なつくりになっており、我々が一人旅をしているのと同じような視線で捉えた映像をふんだんに挿入されていることです。
 同番組のプロデューサーが、「NHK各局にもやっぱり鉄道好きがいて、中継も張り切って協力してくれる」(東京新聞2004年5月7日朝刊16面)というように、我々と同好の人たちがNHK職員として、各地で張り切って番組作りをしているのでしょう。鉄道の旅に対する「愛」のようなものを感じます。また、NHKハイビジョンといういわば発展途上の媒体を中心に放送されていることから、実験的な試みもあるのかもしれません。


 番組中、最長片道切符を見せる関口さん。
 (放映中のテレビ画面より)
 そして何と言っても我々にとって有難い?と思えるのが、「最長片道切符」が認知されたことではないでしょうか。
 同番組内では、実際に最長片道切符を購入するため、JR東日本の東京駅の窓口を訪れるシーンが放送されています。
 宮脇俊三さんの著書では、当時の渋谷駅旅行センターの職員に「いいですよ、やりますよ、どうせ誰かやらなきゃならないんですから」(宮脇俊三『最長片道切符の旅』1979新潮社)と、世にも嫌な乗客が来たかのような"捨てゼリフ"まで吐かれて出来上がったという最長片道切符が、同番組の中ではいとも簡単?(数日間は待たされたとのことですが、テレビに映った窓口の人の態度はいたって平然としていました)に対応され、発券されたことです。

 最長片道切符ではないにせよ、一筆書きの切符では、窓口の人にさんざん"白い目"で見られてきた私にとっては、今回の放送は、一筆書きのいわば"面倒な乗車券"の発券に対し、まさに国営放送の力強いバックアップを得たようで、嬉しくてなりません。
 これを機に、一筆書きの片道切符が市民権を得られれば有難いなあ、と思います。

 ※なお、同番組は6月23日までNHKハイビジョンとBS2で放送中です。また8月10〜12日には総集編も行われる予定です。詳細はこちらで。

※この項の写真は同番組放映中のテレビ画面をデジタルカメラで撮影したものです。


▼文芸誌「ユリイカ」が鉄道を多角的視点から考察

 東京の青土社が発行する『ユリイカ』という月刊誌をご存知でしょうか。
 サブタイトルに「詩と批評」とあるように、主に詩に関する内容を掲載している文芸誌で、名前くらいは聞いたことがあるかもしれませんが、鉄道趣味とは縁遠い雑誌です。
ユリイカ2004年6月号

 そんな同誌が、(2004年)6月号では「鉄道と日本人 線路は続くよ」という特集を掲載しており、思わず購入してしまいました。

 鉄道好きとして有名な英文学者の小池滋氏を筆頭に、文芸批評家、日本近代文学研究者、ドイツ文学研究者、社会学者、建築家など19氏がさまざまな角度から、自らの鉄道への思いや体験、研究分野と鉄道とのかかわり、社会批評などを述べています。

 歴史や文学などのバックボーンがないと多少難解な部分も多いのですが、執筆19氏の中には、レールウェイライターの種村直樹氏や、鉄道ライター原口隆行氏といった鉄道専門誌でも馴染み深い方が登場するなど、私のように鉄道というタイトルに"期待"して購入した読者への"配慮"も感じられます。

 興味深かったのが、先般『鉄道ひとつばなし』(講談社現代新書)の著者として話題となった明治学院大教授・原武史氏と、作家・関川夏央氏による『鉄道はどこへゆくのか―地方から見る』というテーマでの対談です。
 「細分化、タコツボ化が進みつつある」という鉄道マニア像に関する話に始まり、「なぜ鉄道から女性が排除されたのか」を考える鉄道ジェンダー論、九州鉄道事情や鉄道文化論など、多岐に渡る視点から鉄道を考察しています。
 関川さんの「鉄道の旅はいつでも疲労感が混じるもので、だから文学的になりうる」との言葉には、「さすが作家の捉え方は違う」と納得したり、「奥羽本線なんかもステンレス製の山手線みたいな車両が走っていてひどいものです。(略)やっぱり鉄道会社に鉄道への愛がないですね」との原さんの指摘には、「まさにその通り!」と読みながら大きくうなずいてしまうことが多い、良い対談でした。

 このほか、鉄道車両を「擬人化」しキャラクターを作る、ということが同人誌やインターネット上などでブームになっているという現状について、サイト「新無気力」の運営者・恵知仁氏が擬人化の背景や制作例を披露しています。
 正直、このような世界があるのは知らなかったのですが、恵さんが創り出したキャラクターを見ていると、車両自体だけでなく、その背景などを深く考察していることに驚かされます。そして、鉄道趣味というものが、限りなく広がりを見せているということを思い知らされたような気がしました。

 また、同特集の中では数少ない女性筆者であるエッセイスト・酒井順子氏の『女子鉄ライフのススメ……?』は、現在ではまだ希少?ともいえる"鉄道好きの女性"の考え方や行動など、その一端を知るきっかけになるような「告白記」です。
 ―「『私をどこか別の世界へ連れていってくれる』という意味において、鉄道に乗ることは男女交際や映画鑑賞やエステ通いや麻薬吸引と似ていることを考えると、鉄道に乗ることは、決して男性だけに向いている趣味ではないと、私は思うのです」(同誌p199)
 麻薬吸引…はともかくとして、「なるほど」と納得させられるとともに、この楽しみを分かる女性が増えるかどうか、今後に注目でもあります。

 なお、同誌はバックナンバーも比較的容易に購入しやすいそうなので、興味のある方はぜひご一読をどうぞ。広告が少ないためか定価は1300円と少し高めですが、読み応えは十分です。※詳細はこちら



 以上、最近「鉄道ブーム」を感じた番組と雑誌を紹介してみました。このブーム、果たしていつまで続くのでしょうか。


▼前回5/8 周遊きっぷ、面白車両、「なは」etc…九州鉄道の話 を見る▼

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