旅日記のコーナーです。

酒と肴と夜汽車と言い訳。 長い夜を越える旅
2002/3/3更新 (第4回)

 「ウチのカミさんがさあ、“寝台列車には二度と乗りたくない!”なんて言うんだよな。オレは酒が飲めて楽しかったけどなあ…」。
 「でもあれは“酒飲み”と“鉄道好き”くらいしか乗らねえという気もするなあ」。

 
土曜の昼下がりの電車、行楽へ出かけようとする中年男性2人が、そんな話をしていました。

 ……

 「夜汽車は“酒飲み”と“鉄道好き”しか乗らない」。
 少々、大袈裟な表現という気もしますが、「なるほどな…」と心の中では大きく頷いてしまいました。
 私などは、「鉄道好き」にも「お酒好き」にも該当しており、その上、こよなく夜汽車を愛し続けているからです。

 心地よい揺れと美しい車窓は、どんな酒の肴もかなわないほどお酒がおいしくいただけます。ほろ酔い加減で眺める車窓。光の帯が流れ、月の明かりが見知らぬ小さな駅の駅名板を照らす…。日常のすべてを忘れ、夜の旅に誘われる瞬間です。

 少々二日酔い気味で迎える翌朝も、透明な蒼い空に飛び立つ鳥の群れを眺め、普段とは違う朝の幻想的な世界の中で目覚めるのです。
 こんな体験は夜汽車ならではのもので、普段ではなかなかできません。いつもなら、二日酔いの頭痛と後悔の念にただ苛まれることになってしまいます。

 …

 飛行機なら1時間半で結ぶ東京-札幌間。そこを16時間もかけて走っているのが寝台特急「北斗星」です。

 この列車が出た当時(10年くらい前)には、時間の長さを逆手に取り「鉄道の旅をゆっくり楽しむ豪華列車」という触れ込みでしたが、今ではその役割を「カシオペア」に譲り、時間に余裕のある出張族や団体旅行客、修学旅行生の利用が多くなっています。

 先日、その「北斗星」で幾度となく東京-札幌間を往復する機会がありました。
 元「豪華列車」の名残?で列車に1両だけロビーカーが連結されているのですが、そこに北海道へ温泉旅行に出かける5人の老人団体がいました。彼らは上野を出発するとすぐに箱でビールを持ち込み、以後延々と飲み続けました。

 宇都宮、郡山、福島、仙台…と着いた駅名を見ては「宇都宮の餃子食べに行ったなあ」「笹かまぼこが…」云々、仲間との思い出話に花が咲き、そして上機嫌に「いや〜鉄道の旅っていいよなぁ…飛行機じゃこんなに飲めねえからな」と一言。

 「その通り!」。
 私もビール片手に、心の中で拍手を送っていました。

 ……

 最近では夕方の国内線飛行機でもビールを売り始めました。国際線ではビール、ワイン、ウイスキーなどが「飲み放題」となっています。しかし、あの狭いエコノミーシートでは隣の人に気を使ってしまいますし、窓の外は雲ばかりの別世界で「肴」には程遠い状況です。

 国際線の「飲み放題」では、少し飲んだだけで“悪酔い”してしまい、後は寝ることしかなくなってしまいます。長時間の退屈な機内、いわば客を早く寝させるための「寝薬」として、飲まさせているだけなのかもしれません。

 夜の駅、自動販売機や売店へ、わずかな停車時間と闘いながらお酒や肴を買いに走るスリルは鉄道にしかありません。運が良ければ、沿線各地の駅弁を肴に飲むこともできます。

 ……

 もちろん、お酒を飲まれない方にも夜汽車の旅は楽しめます。
 一般のお酒飲みがよくするような「言い訳」かもしれません。その証拠に、私のパソコンの横からはウイスキーの氷が溶ける音が「カラリ」と…。

 飲む方も、飲まれない方も、夜汽車の長い夜は同じですから。ぜひ良い旅を。


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