東海道本線 青春18きっぷの旅
page-4 東海道の絶景・富士山に感激
熱海行の古い普通電車
 ▲熱海行の列車は古いタイプの電車だった

 浜松発・熱海行の普通電車は、オレンジとグリーンの古い直角シートの電車だった。大阪から豊橋までは、特急列車のような座席の車両だったのだが、東に行くほど車両が悪くなる「西高東低」である。

 熱海までは約150キロ、32の駅に停まりながら約2時間半の旅。3両しかない車内はほぼ満員。発車を前に少々、憂鬱な気分になってきた。

 この列車の車掌は女性だった。北海道にはほとんどいなかったためか、女性車掌のアナウンスには違和感を覚える。そういえば、昨年、名古屋駅の「みどりの窓口」では全員が女性係員で、驚いたこともあった。鉄道は男の世界、なんていうのは昔の姿なのだろう。

 列車は磐田、袋井、掛川、と静岡の中都市で乗降を繰り返しながら東へ進む。茶畑の緑がまぶしい。焼津を過ぎると、駿河湾が姿を見せたと思ったら、新日本坂トンネルに入った。

 駿河湾から注ぎ込む大河・安部川の鉄橋を渡ると、静岡に到着した。

 残念ながらわずか1分間の停車。売店に行く暇もない。「各駅とも停車時間が大変短くなっております」。どこの駅でも着くたび念を押すように女性車掌の声が車内に流れる。普通列車といえど日本の大動脈、東海道。遅れる訳にはいかないのだろう。

 清水を過ぎると、再び右手に駿河湾が現れる。海岸沿いの街は走っていて楽しい。

 帰省の車で渋滞気味の東名高速道が、右に左に寄り添う。その昔、東名道を走るJRの高速バスによく乗った。かっての周遊券では、JRバスなら無料で乗れた。普通列車で行くのと同じ位の時間がかかるのだが、快適だった。
富士川駅からの富士山の眺め
 ▲車窓から見えた富士山。本日は絶景。

 ある時、大事故の渋滞に巻き込まれ、トンネルの中で立ち往生したことがあった。
 バスを降り、トンネルの中を歩いて、この近辺の駅にたどり着いた。列車で近くを通ると、当時の出来事を思い出すのだが、必死に歩いていたためか駅の名前が思い出せない。

 そんな古い思い出に浸っていると、睡魔が襲ってきた。眩しいほどの駿河湾の蒼さにウトウトし始めた頃、不意に妻に起こされた。

 左手の窓を指差している。何も見えないが、と言いかけて、あっ、と声を上げた。3776メートル、日本一の富士が街に覆い被さるように屹立している。
 その高さは威圧する様でもあり、どこか心の中で安心させる不思議な風景。

 先日、生まれて初めて富士の姿を見た70歳の祖母が「長生きして良かった…」と感動していたが、この姿はいつしか日本人の心の中に刷り込まれて神格化されているのだろう。

 幾度も乗った路線なのに、私もこんなに美しい富士山を見たのは初めてだった。これだけで、普通列車の旅をした甲斐があったようにも思えた。
吉原付近

 富士の姿をみて以来、車窓にはそればかりが気になる。
 いつしか沼津に到着。7分の停車。息抜きにホームに降りてみる。こういった無駄とも思える停車時間こそが普通列車の旅を楽しくしてくれる。

 御殿場線からやってきた特急列車の接続を待ち、さらに多くの乗客を乗せて発車。次の三島でも再び乗客を乗せ、函南に着く。長い新丹那トンネルに入る。終点、熱海が近づいてきた。
熱海駅駅名板
大混雑する熱海駅

 トンネルを抜けると、夕暮れ近い熱海駅に着いた。
 乗客が一気に吐き出され、ホームは身動きさえできない混雑ぶりとなった。

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