鉄道旅行百景

絶景日本海、飽きることなく続く車窓 五能線を行く
−鉄道旅行百景(第2回)−

五能線列車から眺めた日本海
 車窓の大半で日本海が広がる五能線
 (2001年7月五能線内で)
 五能線は秋田県北部の東能代駅から青森県津軽地方の川部駅まで、約150キロを結ぶローカル線だった。いや、今もローカル線には違いないのだが、すっかり観光路線となってしまった感がある。

 車窓の大半で日本海が見られるという景勝路線ゆえ、一部の鉄道旅行愛好者の間では非常に有名であった。1990年にJR東日本が「ノスタルジックビュートレイン」という観光列車の運転をはじめたことで、観光客にも徐々にその人気が浸透していった。現在では「リゾートしらかみ」という名の観光列車が有名である。

 私のような偏屈な人間は、観光地化され、人気が出てしまうと急にそこへ行く気が失せてしまう。随分と長い間、五能線を避けていたのだが、昨年、2000年夏にたまたま行く機会に恵まれた。
五能線のディーゼル普通列車
 五能線全線を走破する普通列車
 (2001年7月深浦駅で)

 東能代を7時57分に出る弘前行の五能線普通列車は、42すべての駅に停車し、4時間以上かけて五能線を全線走破する。

 通学の学生らは次の能代で降りてしまい、残った乗客の多くは進行方向左手の座席に陣取る。全線に渡って、海の見える方向は同じである。

 東能代から約40分、八森駅を過ぎたあたりから海がチラチラ姿を現す。近年設置された「あきた白神」駅で登山目的らしき老人団体を降ろし、列車はいよいよ日本海の波打ち際を走る。
大小の海蝕岩が浮かぶ日本海
 大小の海蝕岩が浮かぶ日本海
 (2001年7月五能線の列車から)

 
小さな漁港と穏やかな海が続き、大小の海蝕崖の姿が海原に見え始めた頃、青森県に入る。このあたりは五能線のハイライト。迫力ある車窓が続く所で、旅人を決して飽きさせない。

 ただし今日は穏やかな蒼い夏の海、日本海の素晴らしさは、粉雪舞う灰色の冬場にはかなわない。

海沿いに走る列車
 八森より先、鰺ヶ沢までは海に沿って走る
 
(2001年7月五能線列車内から)
 その先も海岸線は延々と続き、レールは舮作(へなし)崎の出っ張りに素直に沿って北上。深浦町内に入る。

 舮作といえば、日本海の波打ち際にある黄金崎「不老不死温泉」が有名だが、最近は近くにヴェスパ椿山なる観光駅と温泉リゾート施設までできている。
 五能線観光化に便乗したのかどうかは不明だが、箱モノ好き行政によるリゾート開発の雰囲気が漂っている。

 列車は、沿線の中心駅である深浦で12分の停車。人口9000人足らずの町だが、この地方では鰺ヶ沢に次いで大きな町となっている。
 風合瀬(かそせ)という響き良い駅を過ぎると、次の見所は千畳敷海岸。五能線最後の景勝スポットを見ながら北上を続け、鰺ヶ沢(あじがさわ)駅に着く。人口は約1万4000人。この先は、木造、五所川原など西津軽内陸部の比較的人口の多い所を走る。車窓に寄り添った日本海ともお別れとなる。

 飽きることなく続く車窓には満足したが、五能線の観光地化は少し気になった。
 ただ、春夏秋冬、五能線の車窓の美しさはいつまでも変わらない事だけが救いだ。

(2002/12/1公開)

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