鉄道旅行百景

日向灘の車窓を眺め、著名観光地を巡る日南線の旅
−鉄道旅行百景(第7回)

大隅半島周辺と日南線マップ

 2004年5月、鹿児島の鴨池港から、鹿児島湾を横断する南海郵船フェリーで約35分、垂水(たるみず)に着いた。

鹿児島〜垂水のフェリー
志布志行きのバス
 志布志(しぶし)行のバスは、垂水港に横付けされていた。ここから先、志布志まではかって大隅線が走っていたことを知らせてくれるかのごとく、時折、廃線跡が見えるが、国道を淡々と走るバスはそれほど面白くはない。耐えること約2時間、ようやく志布志に着いた。
志布志駅

 鹿児島県の東端に位置する志布志は、かって大隅線、志布志線、日南線が交わる鉄道の要所だった。大きな機関区もあり、賑わっていた思い出があるのだが、今の志布志駅はそんな時代が嘘のように小ぢんまりとした無人駅になってしまっていた。

宮崎〜志布志の行先表示板
 その志布志に唯一残った日南線は、日南海岸に沿って南宮崎までの約90キロを結ぶ非電化ローカル線である。沿線には青島や飫肥(おび)といった観光地があり、車窓からは時折、美しい海岸風景も眺められることから、観光客も意識した快速列車「日南マリーン」号が1日1往復運転されているが、それ以外は1〜2両のワンマンディーゼル列車がのんびり走っている。
車内は貸切状態に

 10時33分発の宮崎行普通列車は、2両編成だが乗客はわずか2人。鹿児島県から宮崎県へと"越境"する人は少ないのだろう。日南線は志布志と次の大隅夏井駅を除いては、宮崎県内を走る。

車窓から見た志布志湾
 志布志を出ると車窓に志布志湾が広がる
 志布志駅を出て少しすると右手眼下に志布志湾が広がり、港には大型客船の姿も見える。志布志と大阪間には定期航路があり、約13時間で結んでいる。7分かけて大隅夏井に到着。鹿児島県最後の駅である。
 他の乗客は当然のように下車してしまい、貸切状態となってしまった。

山間の中を走る

 この先、いくつか続くトンネルを越えると、宮崎県に入って最初の駅、ホーム1面だけの福島高松に着く。時折、国道越しに海が望めるが、この先は見えなくなり、のんびりとした山間部の田園風景が続く。主要駅の串間で10人ほど乗客を乗せ、列車は再び山合いの中を走る。

南郷駅
 駅には観光案内所もある南郷駅
 志布志から約1時間、「海中公園のまちへようこそ」との看板が掲げられた南郷(なんごう)駅に到着。昼食も兼ねて下車してみた。
 南郷は観光の街らしく、駅には観光案内所が併設され、タクシーも常に停まっているが、観光客は私以外に誰もいない。南郷プリンスホテルや水中観光船への客はマイカーで行くのだろう。 小さな駅舎を出ると、陽の光を浴びたフェニックスの木々が南国風情を醸し出しており、雰囲気は悪くない。
かつお飯(南郷町「松」)

 駅前の「松」という料理屋に入ると、地元名物の「かつお飯」を食べさせてくれた。ご飯の上にカツオを載せて熱いお茶と海苔をかける、という漁師料理だが、魚が新鮮なせいか味わい深い。

日南線の単行ディーゼルカー
 日南線では単行で走る列車も多い
 (2004年5月日向大束駅で)
 南郷を13時35分に出る普通列車は、古いディーゼルカー1両の単行運転。8割ほど座席が埋まっている。

 5分ほど走ると右手に白い砂浜が広がる。まだ5月だというのに賑わう海水浴場を見ながら大堂津(おおどうつ)駅に着くと、遠足帰りらしい小学生が大量に乗ってきた。車内は満員になった。

大堂津〜油津間の海岸線
 大堂津〜油津間では砂浜も広がる

 ここから次の油津(あぶらつ)までの間が日南線のハイライト区間だ。眩しいほどに光る日向灘が広がり、海原に浮かぶ緑の大島も見える。窓を開けて潮の香りを満喫したい所だが、今ではこの旧型ディーゼルカーでさえも冷房が付いている。
 遠洋漁業の基地になっている油津港を見ながら、油津駅に到着。再び、海から離れて走る。

飫肥駅
 飫肥では遠足の子供たちが下車した
 日南市の中心部にある日南駅の次は、城下町・飫肥(おび)。九州の小京都として名高い観光地だが、今日は先を急ぐ。

 今度は右手に広渡川を眺めながら走ると北郷(きたごう)駅に着く。長い谷之上トンネルを出ると伊比井駅。ここを過ぎると山壁を這うようなトンネルが続き、海岸沿いに出た。右手には「鬼の洗濯板」と言われる波状岩が広がる海岸線が続く。ここも日南線の見所だ。
青島の「鬼の洗濯板」

 青島トンネルを抜けると、青島駅に到着した。言わずと知れたかっての大観光地・青島への玄関口の駅だが、今では寂れた無人駅。列車を降りて青島に向かう。
青島神社
青島での見所は青島神社

 駅前のプロムナードを歩いて10分もすると門前土産店街に入る。ゴールデンウィークだというのに、人通りは少ない。大きなホテルが廃墟となっている風景は痛々しい。

 亜熱帯植物が生い茂る青島へ入ると、凸凹になった「鬼の洗濯板」と呼ばれる奇岩が続く。島内にある青島神社に立ち寄ると、毎年春季キャンプをこの地で張る読売巨人軍の選手らによる自筆絵馬を自慢げに飾っていた。
青島駅とディーゼルカー

 青島駅と宮崎の間は、区間運転も含めて列車本数が若干多くなる。ここから先は宮崎市街である。

 青島、飫肥などの観光を含めながら、海を堪能する、そんな楽しみ方ができるローカル線だった。

(2004/5/9公開)


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