韓国 鉄道紀行 2005
page-5 東海南部線・浦項、大邸線とKTX
トングン形ディーゼルカー
 ▲浦項行の「トングン列車」

■完乗目指し「トングン列車」で浦項へ


 慶州まで来たからには、東海南部線を完乗したいと思う。終端駅の浦項(ポハン)までは約40分で行ける。そうした理由で「乗りつぶし」を試みることにした。鉄道マニアによくありがちな行動ではある。

 13時49分発の浦項行「トングン列車」2105号に乗車。
 トングン列車とは通勤列車の意。昨年廃された「トンイル号」と頭文字の「トン」が同一であることから名付けられたものだという。
 JRで言うところの普通・快速の種別に当たり、全車自由席のローカル列車。指定券を取らずに気軽に乗られるのがいい。
トングン型ディーゼルカーの車内

 列車は白地に緑と黄色の花柄ディーゼルカーが3両。トングン列車はすべてこの近郊型ディーゼルカーで運行されている。

 車内は、関西のJRでよく見られるような転換型の2人掛けシートになっており、出入口ドア付近は窓に背を向けるロングシート。
 冷暖房を完備し、窓は上部がほんの少しスライドするだけで、「鈍行列車」という雰囲気ではない。
安康駅
 ▲中心駅の安康(アンガン)

 慶州の小さな市街地を抜けると、眠くなるような田園風景が続く。20分かけて中心駅の安康(Angang)を過ぎると、整地した広大な土地が広がる。

 住宅地か工場団地でも作るのだろうか。高速道路の建設風景も見え、次に来た時には風景が一変しているかもしれない。

兄山江(ヒョンサンガン)
 ▲兄山江(ヒョンサンガン)
 浦項市内に入り、迎日湾へ流れ込む兄山江(ヒョンサンガン)が右手に寄り添ってきた。古代、慶州からここを通じて出雲に文化が伝えられたとされる重要な河。一方、左手は山壁に沿って崩れかけのような古い家々も散見される。

 視界が開けると、のっぺりと空に伸びた高層アパート群が見え、吸い込まれるように終着駅の浦項へとたどり着いた。

浦項(ポハン)駅
 ▲「ヘ」の字形屋根の浦項駅

 折り返しの列車まで30分ほどある。雪国でもないのに「へ」の字型屋根の小駅舎を出ると、狭い駅前広場と観光案内所。暇つぶしに観光案内所を覗いて見ると、浅丘ルリ子似の案内員が流暢な英語で喋り出した。

 「あなた方はどこへ行きたいのか」と至極当たり前の質問をされたが、目的などないのだから答えられない。地図だけもらって駅前逍遥。
 浦項市は人口51万、東洋最大という製鉄所がある港街だというが、数十分ではそうした風情を感じることはできなかった。
浦項駅発のムグンファ号

■将来発展の雰囲気漂う「大邸線」を行く

 浦項15時ちょうど発の「ムグンファ」1734号東大邸行で折り返す。

 再び、緑の水面の兄山江(ヒョンサンガン)と併走。慶州駅手前で三角線を通り、中央線に入る。韓国の鉄道は短絡線が多く、上り下りともに進行方向を変えないで別路線に入られるようになっていることが多い。ここもそうだ。
金丈駅
 ▲慶州市の外れにある金丈駅

 兄山江を挟んで西対岸、慶州市街の外れにある金丈(Kumjang)に停車。10人程度が下車。ベットタウンなのだろうか、駅前には蒲鉾板のような高層アパートが幾重にも立ち並んでいる。東海南部線とは違った角度から慶州の街並みを眺める。

建設途上の高層アパート
 列車は、中央線と分岐する永川(ヨンチョン)までノンストップで走る。時刻表上では、慶州から東大邸までが大邸線であるかのように掲載されているが、実際には慶州〜永川間は中央線だ。

 永川から大邸線に入ると、小都会の風景が続く。
 近い将来にはKTXが乗り入れるのだろう、真新しい鉄道高架線や、建設途中のコンクリートが剥き出しのアパートがしきりと見える。
 発展途上の街並みを眺めながら、16時38分終点の東大邸に着いた。

東大邸駅とKTX
 ▲東大邸駅に入線する「KTX」

■東大邸から釜山まで「KTX」に初乗車

 東大邸(トンテグ)から釜山までは、「KTX」に初乗車することになっている。

 「KTX」は昨年(2004)4月に開業した韓国初の高速鉄道。「Korea Train eXpress」を略したものが列車名になった。セマウル号時代には4時間10分もかかったソウル〜釜山間(約400キロ超)を最速2時間40分で結ぶ。

 16時48分発、KTX19号釜山行は、低いホームに白地にブルーの尖形高速列車20両で入線してきた。両端を頭でっかちの電気機関車で挟んだ欧州タイプの高速列車で、客室18両のうち、日本のグリーン車に当たる特室が4両、一般車の指定席が12両、自由席も2両ある。
KTXの一般室 車内
 ▲すれ違うのもやっとのKTX車内

 緑色の2人掛けシートが並ぶ一般室の車内は異様に狭い。空気抵抗を抑えるために小型化したのだろうが、同じ軌道幅なのに、先ほどのムグンファ号に比べても何故にここまで窮屈なのか不思議に感じる。

 日本の安物特急のような座席に座るが、リクライニングもろくにしないし、座席と窓が合っていない点も気になる。フランス製のためか、車内の半分は進行方向と逆向き席になっている。日本でもそうだったが、逆向きの座席は不評なようで、ここだと運賃が5%引きになるという。

 高速鉄道の国際入札に敗れた国の国民ゆえ、何を言っても負け犬の遠吠えに聞こえてしまうが、かって初めて乗ったセマウル号の豪華さに深い感動を覚えた身としては、落胆を禁じ得ない。

 ただ、省みると、我が国の新幹線も5列シートや二階建てという詰め込み主義だし、ジャパンレールパスで「のぞみ」に乗せないなど、外から見ると恥ずかしいことは多々ある。他国のことばかり悪く言っていてはいけないと反省し、大人しく車窓を眺めることにした。
「在来線」を走るKTX

■専用線完成までは「在来線」を走る

 ソウルと釜山を結ぶKTX京釜(キョンブ)線は、現在、最高時速300kmでの走行が可能な専用線はソウル〜大邸間にしか完成していない。

 この先、東大邸から釜山までの間は山形・秋田新幹線のごとく、在来線区間を走っているが、線路を改良したためか140〜150km/hで快調に飛ばして気持ちが良い。

 慶尚北道(キョサンプクド)と慶尚南道(キョサンナムド)を隔てる山あいを、蛇のような長大編成が、右に左に曲がりながら走り抜ける姿は暫定開業中ならではの見所。専用線になった暁にはカーブは消えるものと思われる。
釜山駅駅名板

 最初の停車駅・密陽(ミリャン)に停車し、右手に雄大な流れの洛東江が見え始めると亀浦(グポ)到着。

 釜山市街の密集した街並みを眺めながら、17時58分、終着釜山駅の長大ホームに滑り込んだ。

 1時間10分のKTX試乗を終え、これで釜山から鉄道を使った慶州一日散歩を終えた。

 明日からはさらに、移動と乗りつぶしを兼ねたハードな行程となる。釜山の夜、焼肉でも食して体力を付けておかねばならない、と思う。


>>page-6 韓国最南部を縦断、慶全線、鎮海線への旅

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