韓国 鉄道紀行 2005
page-2 JR九州「ビートル」(博多港〜釜山港)
ビートル二世(釜山港付近)
 ▲写真はJR九州所属の「ビートル2世」

■格安航空会社で羽田から博多へ


 2005年大型連休の二日目、羽田から国内格安航空会社の早朝便で福岡へ飛んだ。

 飛行機が苦手な身としては東京〜博多間は鉄道で移動をしたいところであるが、残念だが新幹線は運賃も所要時間も飛行機にかなわない。それに大型連休中でも、飛行機は安い運賃が使えた。

 福岡空港から市営地下鉄に乗り換え、10分少々で市内中心部の天神駅に到着。
羽田空港で

 感動さえ禁じ得ない立地の良さだが、これも鉄道にとっては分が悪い。博多駅にいたっては空港からわずか2駅5分の距離である。

 JR九州のジェットフォイル「ビートル」が発着する博多港中央埠頭へは、天神駅か博多駅から路線バスで行くことになるが、天神駅のほうが若干近い。

 西鉄天神駅付近にある「ソラリアステージ前」の停留所から西鉄バスに乗り込み15分で港に着いた。


博多港ターミナルビル
■のんびりムードの出国風景

 3階建ての白いガラス張りターミナルビルは立派だが、人気(ひとけ)も少なくどこかのんびりとしている。今から伊豆大島へでも渡るかのような感覚に陥る。

 出港1時間ほど前になってようやくチケット販売が始まった。電話で予約していた「コリア・レール&ビートルパス」をその場で購入。大型連休中でなかったなら、予約さえ不要といった雰囲気だ。

 ちなみに博多〜釜山間の片道運賃は1万3000円。平日割引や往復割引もあるが、連休中は対象外。また、日本語では触れられていないが、韓国内で購入した場合は片道9万5千ウォン(約9500円)と安くなる。
出国後の待合室

 空港のように並ぶこともなく出国審査は3分で完了。韓国入国カードと乗船名簿を書く以外に面倒な手続きはない。パスポートを見せ、出国印をもらうだけといった感じで極めて簡素だ。

 出国ゲートを出ると、中都市鉄道駅のように小ぢんまりした待合室と免税店。狭いので、香水と化粧品が入り混じった免税店独特の香りが待合室まで流れてくる。
 船を待つ人々の顔は日本人のように見えるが、方々で韓国語も聞こえ、ようやく海外へ行くという気分になってきた。
行先表示板

 このターミナルからは「ビートル」のほか、韓国の未来高速が運航する高速船「コビー」や大型客船「ニューカメリア」も発着している。
 昼はちょうど3社の出港が重なる時間帯なのだが、この出国のスムーズさやのんびりぶりには驚く。


ジェビ2世
 ▲「ジェビ」は韓国KMX(韓国高速海運)所属

■「ビートル」と「ジェビ」は同一船


 12時発の釜山行ビートル107便、韓国高速海運「KMX」所属の「ジェビ(燕)2世」に乗り込む。船内は1階と2階に分かれており、総定員は215名。多客期は1日5便も運航されているためか、7割ほどの乗船率で快適だ。

 JR九州の博多〜釜山航路は、韓国鉄道公社との共同運航の形をとっており、KMXはその子会社。船体側面には九州の赤いJRマークと韓国鉄道公社「KORAIL」の青いロゴが並んでいる。
ビートル3世
 ▲こちらはJR九州の最新「ビートル3世」

 現在、就航中のJRジェットフォイルは4隻あり、うち2隻には「ジェビ」という名が付けられているが、乗務員を含め実際の運航業務はJR九州が行っており、船体は日本の川崎重工製で性能も同じ。船舶名は「韓国人にはカブトムシ(ビートル)に馴染みがない」との韓国側の要望で変えられたもので、「ジェビ」は「ビートル」と全くの同一船と言ってよい。

 「海外に一番近いJR」であるJR九州が当時の韓国国鉄と関係を深め、博多〜釜山間に「ビートル二世」を就航させたのが1991(平成3)年3月。
 「ビートル」(カブトムシ)の名の如く、船体を真っ黒に塗ったデザインこそ斬新だったが、当初は欠航や故障が相次ぎ、知名度も乗客も少なく赤字は膨れ上がる一方だったという。
 それが、現在では大韓航空などの飛行機やフェリーを抜き、日韓海峡のリーディングキャリアとしての地位を築いている。

 だが今年、韓国が実効支配する「竹島(独島)」に対し、島根県が独自に「竹島の日」を制定したことを契機に反日感情が爆発。ここのところ、韓国人客のキャンセルが相次いでいると聞く。
博多〜釜山 航路図

 また、ちょうど昨日、JRと同様に博多〜釜山間に高速船を運航する韓国の未来高速「コビー」が海上で事故を起こし、日本人など19人が負傷している。クジラと衝突したらしいので止むを得ない事故ともいえるが、今後、航路の安全対策の課題も浮かび上がっている。


■海を「走って」3時間弱で釜山港へ


 背広姿のJR九州の社員らが岸壁で手を振る中、定刻通り12時に博多港を離れた。釜山までは海上200キロ、所要2時間55分の船旅となる。

 昨日、「コビー」の事故があったせいか、船内では「海上でクジラなどにぶつかる可能性もありますので、シートベルト着用をお願いいたします」と物騒なアナウンスが流れる。
2階船内

 右手に志賀島、左手前方には、今年3月の福岡西方沖地震で大きな被害に遭った玄海島を眺めながら、玄海灘に出る頃にはスピードメーターは最高速度の83km/hを表示。まさに海上を「飛ぶように走る」感じだが、揺れはほとんどない。

 船内は自由に歩きまわれるし、飛行機のように窮屈さがないのもいい。安定走行に入ると1階の売店と免税店が営業を開始。1本150円というビールを買い求める。船内は免税区域ゆえ、酒の値段が安い。
対馬の姿

 ただ残念なことに今日は曇天。海の色も暗く、島々や行き交う船が見えなくなると景色が単調で退屈になってきた。免税ビールを飲みながら、船内設置の週刊誌や新聞を眺めて過ごす。

 博多を出て2時間ほどすると、左手に巨大な陸地がぼんやり見えた。対馬だ。

 航路図を見ると、北側の比田勝(ひたかつ)辺りのよう。なおもしばらく続く島影に対馬の大きさを伺い知る。

釜山港の町並み
 以後、波間しか見えない海原を坦々と航行。行き交う船が多くなった頃、無数の大型クレーンや、九徳山を背に家々やビル群が蝟集する釜山の街並みが見えてきた。スピードメーターの数字が次第に落ちていき、大小さまざまな船の間を縫うように入港。

 14時55分、「ジェビ2世」は定刻通りに釜山港へ到着した。
 初めて船で海外へ渡ったのだが、わずか3時間弱で着いたせいか異国へ来た気がしない。

 しかし、港に降り立ち空気を吸い込むと、どこか埃っぽく、鼻につく。明らかに日本ではない街の香りがした。

 これまでの海外旅にはない、何か達成感を得たかのような不思議な気分になった。



>>page-3 釜山駅へ。韓国鉄道の基本解説

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