韓国鉄道紀行
page-4 大田(テジョン)と急行列車
大田(テジョン)駅舎
 ▲韓国第6の都市・大田(テジョン)の駅舎
 ソウルから約160キロ、「セマウル」で約1時間半のここ大田(テジョン)は、韓国第6位の120万都市で、数年前には万国博覧会も開かれている。

 降りる人々の流れに乗って、改札口を出ると、いかにも中都市といった感がある2階建ての平べったい駅舎で、異様に広い駅前広場があった。

 帰りはどうしても急行列車(ムグンファ)に乗ってみたいと思い、時刻表のそれらしい列車に丸印をつけて窓口に出してみたが、何やら韓国語で長々と説明された。こちらが首をかしげているうちに切符が手渡された。よく見ると、3時間後の列車だった。

 時刻表を見ても該当する時刻に列車名はなく、不安になって案内所の女性にたどたどしい英語で話しかけると、裏から若い女性が出てきてダイヤ改正の旨を日本語で説明してくれた。

 すぐにこの駅を出るソウル行列車に乗りたい、と言ってみたが、「セマウル号ハ空イテイマスガ、ムグンファハコノ時間マデ満員デス」との言葉が返ってきた。日本とは違い、運賃が安い急行列車の方が人気のようだ。

 鉄道に乗りたいがために、何の目的も知識もなくやって来た街。3時間とはいえ、途方に暮れる。とりあえずは駅前の「ロッテリア」で遅い朝食を取る。日本と変わらないセットと、指差しだけで通じる写真付きメニューは嬉しい。ファーストフード特有の若い店員の笑顔も同じ。
大田駅構内の様子
 ▲大田(テジョン)駅構内の様子。


 時間つぶしに、と駅近くの路上市場に行って見たが、旅慣れない異国人が1人で散策できるような雰囲気ではなかった。ふと目にした駅前のゲームセンターに吸い込まれるように入った。

 日本で一昔前に流行したゲーム機が並んでおり、そのほとんどが日本製だった。10代から20歳代風の若者が、日本と同じようにゲーム熱中しており、私がいても何の違和感もない。

 そういえば、昨日訪れた「韓国の原宿」と呼ばれる明洞(ミョンドン)では彼らのような年代の若者が携帯電話やPHS片手にウインドウショッピングを楽しみ、若者向けファッションデパートでは 輸入禁止のはずなのに、日本のファッション雑誌やCD、ビデオ、ゲームが店頭に並び、SMAPやキンキキッズなどのアイドルグッズも平気で売られていた。衣料品雑貨フロアではルーズソックスまで売られていた。

 先ほど、列車で隣に座った老人には気まずい思いをしたが、彼らとは将来、上手くやっていけそうな気もする。

 ただ少し違和感を感じたのは、迷彩服を着た若者をよく見かけること。韓国国民の義務である2年間の徴兵生活。今日は土曜だから外出が認められているのだろうか、このゲームセンターでも迷彩服のまま戦闘ゲームに熱中していた。戦闘はゲーム中だけであってほしいと願った。

 結局、3時間、駅付近で何となく過ごした。かって、日本全国の鉄道を乗り歩いていた中高生の頃、知識もなく危険だから、という理由でほとんどを駅と列車の中で過ごしたが、言葉さえ通じない地では、10数年を経た今も子供の頃の旅に戻れるらしい。見るものすべてが新鮮だ。
ソウル行きのムグンファ号(大田駅)
 ▲ムグンファ号。韓国では急行が人気。(大田駅)


 「(急行)ムグンファ112号」ソウル行は10両近い長大編成でやって来た。

 丸みを帯びたステンレス製の客車が線路スレスレの低いホームに滑り込む。アメリカンな感じもするが、車内は日本にありがちな古い特急列車風の座席が並んでいた。

 すでに満員となっており、指定された私の席にも先客がいた。迷彩服の若者2人だった。

 チケットを見せると、彼らは立ち客となって私の座席の横に立った。

 軍人に監視されているような雰囲気だが、韓国の「日常」が感じられ、悪い気はしない。

 この窮屈な混雑ぶりも、少々垢抜けない車内も、停車駅の多さもかっての日本国鉄の急行列車のようで懐かしく嬉しくなる。行きと同じ所を見ているはずなのに、風景を近く感じた。



 ※上記は1999年当時の状況を記したもの。韓国の新幹線「KTX」の公式情報はこちら
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