急行能登 と 北陸縦断
▼ 連なる丹波の山々抜けると新興住宅地 福知山線に乗る

特急「北近畿」(福知山駅)
 ▲福知山線のビジネス特急「北近畿」

 東舞鶴からは、隣のホームに停車している舞鶴線経由・福知山行の普通列車に乗り換える。
 西舞鶴を通り、綾部から山陰本線を西に下って40分超で福知山に到着。ようやく大阪に近づいてきた。

 福知山からは、福知山線に乗って大阪へ向かう。
 今や「JR宝塚線」などと呼称されることもあり、頻繁に通勤電車が走る福知山線だが、福知山と篠山口(ささやまぐち)の間だけは大阪通勤圏から外れた単線区間である。普通と特急がそれぞれ1時間に1本程度が走るにすぎない。

 ちょうどよい普通列車がなく、16時44分発の特急「北近畿16号」で篠山口まで行くことにした。
 4両編成のうち2両が自由席で、客層は背広姿が8割を占める大阪行のビジネス特急電車である。

福知山〜谷川間の車窓
 ▲福知山を出ると山間田園風景が続く

 福知山を出た列車は、土師川と付かず離れず走る。塩津トンネルを抜けると、次の丹波竹田駅からは兵庫県。車窓には、幾重にも折り重なる丹波の山々に囲まれた田園風景が続く。

 堂々とした家や蔵が見えたかと思うと小集落と駅があり、特急列車はけだるそうに通過していく。この区間だけ見ると、スピードの遅いローカル特急の様相だ。行き違いの普通列車から降りた制服の学生が、一人二人と夕暮れの目抜き通りへ消えていく姿が見える。どこかディーゼルカーが似合いそうな風景である。

福知山線の路線図

 列車は、右に左に大きく迂回しながら、日本で一番低いという分水嶺を越え、加古川線が分岐する谷川をゆっくり通過。篠山川と寄り添い、トンネルを幾つか抜けると小さな盆地が見え、そのまま篠山口に到着した。

 「口」という駅名が示す通り、篠山口は篠山市への入口駅。デカンショ祭りの会場にもなる丹波篠山城跡や市役所は駅から離れており、バスで15分ほど要する。

 都会風の橋上駅舎から構内を眺めると、側線が7本ほどあって広い。大阪への電車が1時間に3本程度走ってはいるだけのことはある。しかし、付近に家々は少なく、いかにも乗換駅然としている。


221系の快速電車(篠山口駅)
 ▲篠山口〜大阪間は新しい電車も
 17時32分、大阪行の快速列車は、東海道本線で走っている白い電車が6両でやってきた。

 最近まで「新快速」として使っていたJR西日本自慢の車両で、車内は2人掛けのシートが並ぶ。この電車が投入される路線は、同社が将来有望株と評価している証であろう。

 とはいえ、篠山口を出てからも相変わらず沿線に人気(ひとけ)がなく、車窓から見えるのは山と田んぼばかり。

 南矢代、古市、草野……、扉を開くと瞬(またた)く間に閉じてしまう駅が続く。その昔、この付近の駅は客車の鈍行列車でさえよく通過していた。
南矢代駅
 ▲沿線には乗降客の少ない駅も

 だが大阪〜篠山口間は「宝塚線」と呼ばれる通勤路線。大阪駅から快速で1時間以内の距離である。近い将来、どう変化するかは分からない。

 大学の校舎が見える相野駅からは人家も乗降も次第に多くなり、遠くに新興マンション群が見える新三田(しんさんだ)で車内の座席がほぼ埋まった。この駅より先は列車本数が格段に多くなる。

 特急停車駅の三田を過ぎると、列車は武庫川に沿って渓谷の中に入っていく。かつて山陰本線の保津峡と双璧を成す渓谷美が見られる区間であったが、今ではどちらもトンネル化してしまい、通勤電車が猛スピードで走り抜けていく。

 長いトンネルの合間にある道場駅を通過し、西宮名塩なる駅に停車。乗客が一層増える。トンネル化した際に設けられた駅だと思うが、旧型客車の鈍行列車や急行「だいせん」、特急「まつかぜ」が武庫川渓谷の中を走っていた頃以来、私の時計はまったく進んでいないので、先ほどの新三田と同様に馴染みがない。

東西線乗り入れの福知山線電車
鉄道の要衝となった尼崎駅
▲東西線乗り入れ用の電車
 (上)と尼崎駅の駅名表
 さらにトンネルを越えると宝塚に着く。立ち客が車内に溢れ、完全に大阪の通勤電車区間となった。列車は幾つかの駅を飛ばしながら中山寺、川西池田と乗降を繰り返していく。2ヶ月ほど前、列車からの「展望映像」をテレビで散々見させられた区間である。

 塚口を過ぎると、スピードが突如落ちて脱線事故現場の急カーブに入った。列車が突っ込んだマンションの地上部は白いシートで覆われている。花束を抱えて歩く人の姿も見える。

 空き地や工場が目立ち始め、弧を描くように東海道本線と合流。尼崎駅に到着した。
 すぐ隣には東海道本線の快速列車が停まっており、それに乗り換える人も多い。今や尼崎は鉄道の要衝である。

 福知山線の列車の多くはこの駅から東西線に乗り入れ、片町線(学研都市線)方面へ通じているが、我らが列車は大阪行となっている。

新淀川鉄橋から見る梅田の風景
 ▲新淀川鉄橋の向こうに梅田のビル街

 尼崎を出て東海道本線に入ると、ヤンマーやグリコの工場など、右も左も見慣れた風景が広がる。
 列車は最終コースとなる新淀川の鉄橋にかかった。対岸には梅田のビル街がそびえている。
 ようやく大阪に帰ってきたなと思った。

 片道切符の旅は、まだ東海道本線経由で東京まで残っている。
 が、往路は疲れ果てて東海道新幹線に乗ってしまった。大阪で途中下車してから2日後、新大阪始発の「のぞみ」自由席に乗り込むと、わずか2時間半であっけなく東京に舞い戻った。

 件の怪しい切符を自動改札機に入れると、そのまま吸い込まれた。

   <終>

(2005年7月旅行)
(2005年8月公開)

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