急行能登 と 北陸縦断
▼ 富山港線と氷見線、富山県内のミニ支線に寄り道

富山港線、氷見線の位置図

 富山駅から北に向かってわずか8キロ、岩瀬浜までを結ぶ「富山港線」というミニ支線がある。

 この路線は来年(2006年)2月で一旦運行を休止し、若干のルート変更を行った上で第三セクターの路面電車(LRT)化されて生まれ変わる予定になっている。JRの富山港線としては今年が最後の夏となる。

 従来からあるJR路線をLRT化するのは全国初の試みであり、変化する前の姿を一度見ておきたい。そう思って早朝の富山で下車した。
 片道切符のルートからは外れるが、追加料金は往復400円である。
富山駅 富山港線のホーム
 ▲富山駅の端から発着する富山港線

 富山駅の一番端に”おまけ”の如く設置されている7・8番線から、富山港線は発着する。戦前、富岩鉄道という別会社だったものを、後に国有化したという経緯があり、北陸本線が交流方式で電化されているのに対し、この路線は直流電化である。

 5時55分の始発列車は3両編成。
 日中はワンマンのレールバスタイプのディーゼルカーが1両で走るそうだが、通勤客の多い朝夕は、北陸
本線で走っている白地に青いラインの普通電車が「出張」してくる。
 この電車は「交直両用」であるから、都合がいいのだろう。

富山港線のホーム案内図
 まばらな乗客を乗せ、列車は1分ほどで富山駅構内のような場所にある「富山口」に停車。片側ホームだけの小駅だが、富岩鉄道時代はここが基点だったという。LRT化の際には、「路面電車」として街の中心部を走るルートに変更されるため、この駅は廃止となる。

 大きな化学工場に隣接する「下奥井」に停車後、富岩街道と呼ばれる県道に沿って坦々と走る。臨海貨物線のような雰囲気もあるが、案外沿線に家々が多い。
岩瀬浜駅のホーム
 ▲終点の岩瀬浜駅ホームは狭い

 富山港線には10駅が設けられ、1キロ未満に1駅という路面電車の停留所のような駅間隔になっている。LRT化後はさらに4駅を加える予定だというから、乗降客はそれなりに見込める住宅街なのだろう。

 わずか8キロの区間を17分かけ、列車は終点の岩瀬浜駅に到着した。

 人家の裏庭に間借りしているかのような終着駅で、3両停まるのがやっとの片側ホームと、長年風雪に耐え忍んできたと思われる古びた木造駅舎があった。
岩瀬浜駅駅舎
 ▲古びた岩瀬浜駅駅舎
 銚子電鉄の終点、外川駅に似ていて、どこか海沿い終着駅の風情がある。

 折り返し列車を一本見送り、駅前を散策。線路が尽きた先には小さな住宅地があり、そこを抜けると、灰色の雲が低く垂れ込めた漁港が見えた。

 早朝の町には特に観るべきものはなく、駅近くのコンビニエンス・ストアに入ると、浮き輪や水中眼鏡、花火などが賑やかに売られていた。付近には著名な岩瀬浜海水浴場があるとのことであった。
岩瀬浜駅は住宅街の中にある
 ▲住宅地の中にある岩瀬浜駅

 食券でも出てきそうな券売機で薄っぺらな乗車券を買い、6時55分発の富山行に乗り込む。
 各駅で通学の中学生や小学生、通勤客らが次々と乗ってきて車内は満員になった。

 富山港線が最も活気にあふれる朝の風景を見ながら、富山駅に舞い戻る。

寝台の「月光型」を改造した普通電車
寝台電車の名残が残る車内
 ▲寝台電車を改造した車両と車内

 7時19分発、北陸本線の福井行普通列車に乗り換えて西下。
 かつて「月光型」と呼ばれた寝台特急電車を改造した不思議な車両を使っており、天井が高く、座席幅も広くて4人で掛けても前席や隣の客と膝が触れることはない。

 北陸本線の普通電車は、すべて旧(ふる)い優等列車型を改造した電車ばかりで、先ほど、富山港線に「出張」していた車両も20年ほど前は急行型電車だった。

 直流用に比べ、交流用電車を製造するのはお金がかかるので、新車は作りたくないのだろう。JR西日本という会社は、儲けの少ない地方路線における節約ぶりは徹底している。
 鉄道マニアとしては、愛想のないロングシート車を導入されるよりは、旧国鉄の名残があって単純に嬉しい思いがするけれど。

 朝の通勤客を満載した普通列車は、富山から20分弱で高岡に到着した。


氷見線ホームへ向かう学生(高岡駅で)
 ▲氷見線ホームへ向かう学生
▼景勝ローカル線、氷見線に乗る

 高岡から日本海に面した氷見(ひみ)まで、16.5キロを結ぶ「氷見線」という支線がある。乗車時間は片道わずか30分足らずだが、途中、車窓から富山湾の雨晴海岸が一望できる景勝ローカル線で、今度はそこに乗ろうと思う。

 寄り道ばかりで何のための片道切符か、とも思うが、高岡まで来たのに氷見線を無視して通り過ぎるのもしのびないし、追加運賃は往復で640円。先ほどの富山港線同様に大した痛手にはならない。

 氷見線も元は「中越鉄道」という名の私鉄を国有化したという経緯があるためか、ホームは北陸本線とは若干離れた場所に位置していた。行き止まり式のホームに向かって歩いているのは、セーラー服や白い開襟シャツの高校生ばかりである。
高岡駅の氷見線乗り場

 7時45分発の氷見行普通列車は、濃赤色に塗られたディーゼルカーを4両もつなげて停車中。

 どの車両も制服姿の高校生を満載しており、スクールバスにでも闖入するかのような気分になりながら、ようやく先頭車で空席を見つけた。

 沿線には幾つかの高校があるらしく、車内ではとりどりの制服が見られる。暗黙のうちに学校ごとで座る場所が決まって勢力バランスが保たれているのか、朝ゆえ元気がないのかは知らないが、これだけの高校生が乗っている割には静かである。

 定刻通りに高岡を出発した列車は、4分で越中中川に着く。わずか1駅だけで4割ほどの学生が下車し、ホームには人が溢れている。
伏木の工業地帯

 次の能町を過ぎると、右手には製紙工場の赤白模様の煙突と、石油精製でもしているのか筒状のタンクや幾何学的なプラントが目についてきた。

 白い煙をもくもくと空へ吐き出し、寄り添ってきた痩せたレールが工場地帯へ吸い込まれていく。

 臨海工業地帯独特の雑然とした風景の中を通り抜け、伏木、越中国分と過ぎると、ようやく右手一面に海原が広がった。
氷見線から見える富山湾

 列車は能登半島の付け根部に沿って、海岸線ぎりぎりのところを走る。

 ポツリと浮かぶ二つの岩礁と松の木はいかにも日本海然としているが、富山湾内のためか、山陰や羽越本線ほどの荒々しさはなく穏やかだ。

 乗客が少なくなったのを見計らって窓を開けて潮風を浴びた。眠気が一瞬、飛んでいくような気がする。
海へ向かう線路(氷見線)

 「雨晴(あまはらし)」の名の如く、晴れてくれればさらに美しい紺碧の海が楽しめるのだが、今日は曇天。

 空気が透き通れば、湾越しに立山連峰が望めるという。そんな絶景を一度は車窓から見てみたいと思うが、未だ叶ってはいない。

 氷見線一の景勝ポイントは5分もしないうちに通り過ぎ、海岸に近い小駅に2つほど停まって、8時12分、列車は終点の氷見にたどり着いた。

氷見駅駅舎
 ▲平べったい氷見駅駅舎

 ローカル線の小都市駅にありがちなコンクリートの平屋建て駅舎には、テレビアニメ「忍者ハットリくん」の人形が飾られていた。作者の藤子不二雄(安孫子)氏が氷見の出身だということで、「ハットリくん」のイラストを描いたディーゼルカーもあり、人気を集めているという。

 こうした「ペイント列車」は、話題性や地域振興の面だけでなく、車両の古さを誤魔化すにも最適なのだろう。
こちらとしては、国鉄時代の朱色やクリームと赤地の塗色に戻してほしいと思ったりもするが。
氷見駅に入るディーゼルカー
 ▲氷見駅に入るディーゼルカー

 折り返し列車を1本見送り、無目的の駅前散策。
 線路の尽きた先にある集落の裏路地を抜けると、道路越しに朝の陽を浴びた日本海が光っていた。

 氷見発8時46分の列車に乗り、再び雨晴海岸や伏木の臨海工業地帯を眺めながら、9時13分、高岡に到着した。


 さらに城端(じょうはな)線や路面電車の万葉線にも寄り道をしたいところだが、そろそろ大阪へ近づかねば今日中に帰れなくなる。本編の片道切符の旅に戻る。

特急「サンダーバード」
 ▲特急「サンダーバード」

 ▼特急列車で北陸本線を高速移動

 9時26分発の特急「サンダーバード」18号大阪行の自由席に乗車。列車名を直訳すると「雷鳥」号。福井までの追加料金は1780円。今日は「18きっぷ」ではないので、楽をしようと思う。

 倶利伽羅峠を軽く越えると、あとは坦々とした田園風景が延々と続く。
 北陸新幹線の高架橋が目立つ金沢市街を抜けると、再び緑がまぶしい水田地帯。
北陸新幹線の高架橋が寄り添う(金沢市内)
 ▲北陸新幹線の建設現場(金沢市内)

 北陸本線の富山から福井間の車窓は、新幹線の工事状況を確認するという鉄道マニア的な見所はあるが、倶利伽羅峠以西は大きな変化がないように思う。
 リクライニングを倒して、夜汽車の睡眠不足を補う。

 10時43分、福井に到着。このサンダーバードなる特急列車は敦賀に停車しない。

 隣のホームに停車中の敦賀行普通列車に乗り換える。また寝台車改造の電車である。元々の用途を意識したわけではないが、乗車してすぐにひたすら眠りこけてしまい、気がつくと敦賀の駅名板が見えていた。

 北陸トンネルを越える轟音さえ聞こえず、車窓は何一つ見ていない。瞬間移動をしたかのように感じる。
 よく晴れた平日の午前、世間の人様が一生懸命に仕事をしている時間帯ゆえ、余計に眠れたのかもしれない。


※北陸本線の車窓や様子などについては拙稿
「東京〜大阪 青春18きっぷの旅 湖西・北陸本線に揺られて」をご覧頂ければ幸いです。


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「一瞬の青さ輝く若狭湾、今は昔の「鯖街道」、小浜線を行く」

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