急行能登 と 北陸縦断
▼ 東京〜大阪間の「移動」を「旅」に変える"一筆書き片道切符"

 東京〜大阪間の移動を「旅」にしたいと思った。

 これまで「青春18きっぷ」を使って昼間の東海道本線走破を皮切りに、夜行快速「ムーンライトながら」にも乗ってみたし、中山道を通る「中央本線」経由や、少々無茶にも思える「北陸本線回り」など、できうる限りの工夫をして「移動の旅」を楽しんできたが、ルート選びも限界に近づいてきた。
今回の東京〜大阪"一筆書き"片道切符のルート
 ▲今回の東京〜大阪"一筆書き"片道切符のルート

 飯田線(辰野<長野県>〜豊橋)や高山本線(富山〜岐阜)経由はまだ試していないが、列車本数が少ない上に時間がかかり、大阪へたどり着くまでに疲れ果てそうな気がする。

 そもそもの目的は「帰省」であるから、いつまでも阿呆なことばかりもしていられない。  

 今回こそは新幹線で大阪へ帰ろう。
 いつもそう思って時刻表の新幹線のページを眺めるのだが、気がつくと上越線や信越線、北陸本線のページを開いて、次の瞬間には赤いページで周遊きっぷを調べたり、電卓片手に運賃の計算を試みていたりする。

 この病気は生涯治りそうにないし、治す気さえも起こらない。そこで考えついたのが「一筆書き」となる片道切符の旅である。

 JRの運賃は「遠距離低減制」という国鉄時代の数少ない優良遺産によって今も運用されており、遠くへ行けば行くほど、つまり、乗れば乗るほど運賃の上昇が抑えられる仕組みになっている。同じ駅を二度通らなければ「通し運賃」で計算されるので、単純に往復するよりも安くなるのである。

 東京を出発し、同じ駅を二度通らずに大阪を経由して東京へ戻る―。

 鉄道マニアにとっては独りでニヤニヤしてしまうような楽しい難問を解き、導き出したのが以下のルートである。

 東京(高崎線・上越線・信越本線・北陸本線)→富山(北陸本線)→福井(北陸本線)→敦賀(小浜線)→西舞鶴(舞鶴線)→綾部(山陰本線)→福知山(福知山線)→大阪→東海道本線→東京

 以上で総乗車距離は1450.1キロ、運賃は1万5540円となる。
 東京〜大阪間の普通片道運賃が8510円(556.4キロ)であるから、単純往復よりも安いことは間違いないし、私のような鉄道マニアの価値観からすると、これだけ乗ってこの値段は安いようにも感じる。


▼山陰本線経由や青森経由・日本海縦断ルートなども可能

東京〜大阪 北陸・山陰本線経由のルート地図
 ▲同じ駅さえ通らなければこんな経路も…。これで総距離2461.6キロ、運賃は22,890円。

 片道切符の制約は「同じ駅を通らない」ことだけ。

 極端に言えば上記ルートの福知山から山陰本線で幡生(門司の一つ手前の合流駅)まで行き、山陽本線で大阪へ戻ってくることだってできる。

 さらに極端すぎる例を挙げれば、東京から大阪へ向かうのに東北本線で青森まで行き、日本海を縦断しながら幡生まで行ったっていい。

 想像は膨らむ一方であるが、帰省という本来の趣旨を踏まえ、先のような現実的ルートで妥協することにした。

 普通乗車券なので、新幹線や特急、急行に乗る際の料金は別に支払わなければならないが、「18きっぷ」使用時のように血眼になって快速や普通列車を探す必要もなく、ある意味、卑屈な旅路とならずにすみそうである。


▼切符発行までには時間の余裕が必要?

 最近、国営放送で「最長片道切符」を使った旅番組が放映されたので、JR側でも、無茶とも思える片道切符に対しての理解が深まっているだろう、と勝手に推測してみたりもするが、やはり面倒な客には違いない。
 この所、JR東日本では「みどりの窓口」の合理化が進み、係員が1人しかいない駅も多い。旅行会社に丸投げすることも考えたが、手間がかかるだけの儲からない仕事をさせるのも気がひける。

 近所の駅に行くと、1つしかない窓口は長蛇の列。若い女性係員が必死になってさばいているが、ここで私の切符を申し込めば、係員や並んでいる客から白い目で、「これだから鉄道マニアは……」と呆れられるに違いない。

 そんなことを憂慮し、あらかじめ乗る路線名と名前と電話番号を紙に記しておき、「暇な時に作っておいてほしい」と窓口に差し出した。
東京都区内〜東京都区内の片道切符

 「そうですか、助かりますー。私、カワムラといいます。出来上がったら電話しますね」。
 20代前半とおぼしき期間雇用社員のカワムラ嬢は、可愛らしい笑顔でそう答えた。

 翌朝、「出来上がったので、いつでも取りに来てください」と留守番電話に入っていたので受け取りに行くと、カワムラ嬢とは別の女性係員が「東京都区内→東京都区内」と書かれた怪しげな切符を淡々と発券した。

 有効期間は7月7日から9日間。経由地の欄は「東北・高崎線・上越・北陸・小浜線・舞鶴・福知」となっており、その先「東海道本線」はスペースの都合上、券面には表示できなかったようである。


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「今も残る上野発の夜汽車、座席急行「能登」金沢行で北陸路へ」

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