青春18きっぷで北海道へ 鈍行列車に揺られて東京−旭川1400キロの旅
page-4 冬の日本海 羽越本線の旅(2)
秋田行のロングシート電車
 ▲酒田−秋田間のロングシート電車

■エメラルドグリーンの日本海を車窓に


 
酒田発9時37分、秋田行の普通列車は、紫色の帯を巻いたステンレス電車でやって来た。

 車内は窓に背を向けて座るロングシートと吊革。
 東北地方ではお馴染みのこの車両は、ドア開閉ボタンとトイレがある以外は、都会で走っている電車と何ら変わらない。

 東北方面の各線区で走っていた赤いリンゴ色の客車列車を廃し、ワンマン運転、短編成化、スピードアップを目的に新たに登場した電車だ。


ロングシートの車内
 「なぜ東北にロングシート車両なのか?」。鉄道マニアをはじめ、各地の地元住民、行政なども巻き込んで一斉に疑義を唱えたのが1993年頃だった。
 JR東日本は「新型車両でスピードアップ」を必死に宣伝し、結局は東北の幹線区間ほぼ全域で導入した。あれから10年近く経つ。当時の"反対運動"に懲りたのか、最近は向かい合わせのクロスシート車両もあると聞くが、まだ数は少ないようだ。

 旅情ある赤い客車列車時代との落差が激しかったためか、この車両を見ると未だに嫌悪感をもよおすが、時代の流れだから仕方ない。

 今日はこの先、青森までずっとお付き合いせねばならない。首が痛くなりそうだ。


秋田行電車の行先表示
 今回の列車はワンマンではなく、車掌も乗務した3両編成。いつも2両ワンマンの列車が多く、常に混雑していた記憶があるが、改善されたのだろうか。
 酒田駅の発車チャイムは宗次郎の音楽。中には都心と同じチャイムが流れ、旅の雰囲気を壊す駅もあるが、ここはオリジナルで良い。

車窓から見える鳥海山
 ▲標高2236メートルの鳥海山
 酒田を出た列車は、粉雪舞う中、広い水田地帯を真っ直ぐに突き進む。右手には山頂部が雲に覆われた鳥海山が現れる。標高2236メートル、東北では隋一の高さを誇る。山が見渡せる南鳥海という駅を過ぎ、9時51分遊佐(ゆざ)に着く。飽海(あくみ)郡遊佐町。人口は1万8千人強。やはり平野部は人口が比較的多い。

 次の吹浦(ふくら)では方向を変え、日本海に接近。そのためか海風が強い。ここでは反対列車の特急「いなほ」と交換する予定なのだが、遅れているらしく列車は一向に来ない。特急の到着を待たずに定刻より少し遅れて発車。

 これより先は海岸線に沿って走る羽越本線第二の景勝区間に入る。高い位置から小さな集落とその向こうに日本海が一望できる。女鹿(めが)という小駅を通過すると、有耶無耶(うやむや)の関跡がある。山形と秋田の国境だ。


エメラルドグリーンの日本海が見えた
 秋田県に入って初めての駅、小砂川(こさがわ)を過ぎて、今度は断崖の上に出る。

 少し晴れ間も見えてきたためか、エメラルドグリーンの日本海が一面に広がる。絵画に描かれそうな美しい風景。ロングシートから首を曲げて眺めるのも面倒になり、結局は吊革につかまり、立って車窓を楽しむ。

 8時32分、象潟(きさかた)に到着。秋田県の最南端、人口は1万3千余。松尾芭蕉「奥の細道」の最北の地でもあるらしく、駅前には大きな看板も見える。
 次の駅は金浦。このうらと読む。由利郡金浦町、人口は5千人余り。

 さらに5分ほど走って仁賀保(にかほ)に着く。こちらは人口1万2千余。地方によくある一点豪華主義風な駅舎から、数多くの人が現れて乗車。車内は立ち客が出るほどの満員になった。


黒屋根の集落の向こうに日本海が見える
 ▲黒屋根の集落の先に日本海が広がる
 街へ年末の買物に出かけるのだろうか、乗客の中には10〜20代の若者も多い。彼ら、彼女らの身なりを見ていると、東京と何ら変わりない。しかもロングシートに吊革の通勤型電車。鉄道も人も東京化が進んでいるらしい。車内が賑やかになり、風景をゆっくり眺める雰囲気ではなくなってきた。

 ロングシートにぼんやり座っていると、向かいの人の顔がよく見える。肌の白さや目の細さ、小さな口、通った鼻筋などの"秋田美人"の特徴そのままの女性も目に付く。人の顔だけは"東京化"していない。ある意味、ほっとさせられる。

 仁賀保の次は西目に停車。由利郡西目町、人口は6千7百。この付近は1町1駅のペース。乗客が多い訳である。日本海からは少し離れて内陸部へ走ると、右手に第3セクターの由利高原鉄道の線路が寄り添ってきた。
 10時42分、羽後本荘に到着。

 隣のホームには、由利高原鉄道の小さなレールバスの姿も見える。本荘市は本荘由利広域圏の中核都市で、人口4万5千。特急列車も停車する。2分ほどの停車時間中、さらに多くの人が乗り込んで来た。秋田へ行く乗客だろうか。都会の混雑列車内のように窮屈な状態が続く。

運転席から見た反対列車
 ▲ロングシートだが前面展望は良好

 羽後本荘を出た列車は、山地を避けて東に迂回しながら、海から離れる。

 6分で羽後岩谷に着く。また豪華な駅舎。付近には道の駅やら温泉施設など"箱もの"が立ち並ぶ。ここは由利郡大内町の中心地。人口は1万余。
 町の顔として駅を中心に公共整備している姿は、鉄道マニアにとっては嬉しくも感じるのだが、豪勢な駅舎や公共的施設にはあまりいい気がしない。この町は違うと思いたいが、公共事業でしか活性化を図れない町の乱脈ぶりを見聞し過ぎたせいかもしれない。


 羽後岩谷を出ると、大きくカーブして列車は海の方向へ走る。大正時代に日本初のシールド工法を使ったという1,4キロ程の「折渡トンネル」を抜けると、折渡駅。誰も乗降客がいない。ここは信号所を昇格させた小駅で、普通列車でも通過することが多い。

羽後みなと駅前の風車
 ▲羽後みなと駅前の風車
 次の羽後亀田を過ぎると、列車は再び日本海と国道7号線に沿って走る。これまでの荒くれた海岸線とは一転、静かな砂浜が続く。
 6分ほど走ると、巨大な風車が目の前に見える羽後みなと駅に着く。流行の平仮名駅名で分かる通り、2001年末に開業した新しい駅。秋田のベットタウンとして駅付近では宅地開発が進む。

 9時22分、道川に到着。人口6千5百人を擁する由利郡岩城町の中心地。JTBの大判時刻表では主要駅を示す破線が入っているが、特急列車は止まらない。列車は、夏は海水浴場になる下浜の海岸線に沿って北上。飛砂防止林の合間に海も見えるが、ここはもう秋田市内だ。

 知らないうちに桂根という小駅を通過。新屋、羽後牛島と秋田市街の駅に停車した後、11時29分に終着の秋田に到着した。

 約270キロ余りの羽越本線の旅はここで終る。

 様々な日本海の姿を十二分に満喫できた路線だった。
 羽越本線こそ、特急列車や観光列車ではなく、鈍行列車で海を味わいながらゆっくりと北上したい。それが一番の贅沢のような気がした。
 ただ、酒田以北のロングシート都会電車だけは少し辛いかもしれないが。


→次ページにつづく「奥羽本線(秋田−青森)の旅」
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