青春18きっぷで北海道へ 鈍行列車に揺られて東京−旭川1400キロの旅
page-3 冬の日本海 羽越本線の旅(1)
新潟駅駅名板

■日本海沿いに秋田まで270キロの旅


新潟−秋田間 羽越本線路線図
 羽越本線の旅はここ新潟から始まる。正確には羽越本線は、新潟の手前の新津から秋田まで270キロ余り、新潟、山形、秋田の3県を日本海沿いに縦貫する路線だ。

 ゆえに「ムーンライトえちご」を新津で降り、起点から羽越本線の列車で行くのが正当なのだろうが、新津−新発田間は電化してはいるものの、ディーゼル列車が2時間に1本程度通るだけの"ローカル区間"になっている。

 新潟から羽越本線の新発田(しばた)を結ぶショートカット的な白新線を通った方が近くて速い。新潟発の秋田方面行・特急列車も白新線を通るので、羽越本線とも錯覚してしまうが、別路線である。この付近は新潟を頂点に新津、新発田の3駅を信越、白新、羽越の3線で三角形を描いている。少々、分かりづらい。


 新潟駅を4時56分に出る村上行の快速列車は、新宿からの夜行快速「ムーンライトえちご」で寝過ごした乗客を待ち、定刻より5分ほど遅れて新潟を出た。列車は夜明け前の白新線を走って新発田へ向かう。

村上行快速列車のロングシート車内
 ▲村上行の快速列車はロングシート
 10分少々で新潟隣接のベットタウン、豊栄(とよさか)に到着。白新線沿線に活気があるのは、人口5万余のこの街の存在も大きい気がする。新潟と豊栄の間は30分に1本の電車が走っている。新潟へ通勤、通学の乗客が多いのだろう。

 豊栄から10分程走ると、新発田に着く。快速列車だとわずか20分余りで白新線の旅は終る。特急列車なら豊栄にも止まらないので、白新線を走っていることすら分からないかもしれない。
 優等列車にとっては完全な"抜け道"線だ。関西でいう所の昔の播但線(姫路−和田山)みたいなものか。

 列車は新発田から羽越本線に入る。まだ朝の5時を過ぎたばかりで外は暗く、何も見えない。車内はロングシート。正直、寝る位しかすることがない。列車は中条、坂町と羽越本線の主要駅に停車しながら、各駅でまとまった乗客を降ろしていく。新潟と村上以外でこれだけの下車客がいるとは知らなかった。「ムーンライトえちご」が村上まで延長運転していた理由も分かる。


村上駅とディーゼルカー
 ▲村上からはディーゼルカーに乗換え

■村上から先が羽越本線の真髄


 5時48分、終点の村上に到着。ここまでは「電車」が走る新潟への通勤・通学区間。この先が真の意味での「羽越本線の旅」となる。

 村上市は人口3万1千余、村上藩ゆかりの古い城下町。私のような鉄道マニアにとっては、村上と聞くと単なる乗り換え駅としてか、直流と交流の電化方式が変わる場所としての印象が強い。新潟−村上間に通勤型の電車が走っているのも、都心部と同じ直流方式で電化していることにある。

 この先、酒田までの区間は乗客が少ないゆえに、交流型電車を導入する余裕がないのだろうか、電化しているにもかかわらずディーゼルカーでの運転。羽越本線で最高の景勝区間で、昔ながらの気動車に乗って車窓を楽しめるのはありがたい。

 新潟からの"快速電車"が到着した隣のホームでは、6時3分発の酒田行普通列車が停車している。

酒田行ディーゼルカー車内

 新潟地方でお馴染みの白地に濃い青のディーゼルカー3両と、最後尾には赤と白色の車内全面ロングシートの車両まで連結している4両編成。「ムーンライトえちご」からの乗り継ぎ客を意識しているのか、乗客の少ない区間にしては長編成である。

 4両編成の大半の座席が埋まり、村上を出発。座席はもちろん進行方向左側。いよいよ冬の日本海と向き合える。

 列車は村上の街並みを後に、三面(みおもて)川の鉄橋を渡る。短いトンネルから出ると、闇の中に岩ケ崎の海岸線。打ち寄せる白波が見えた。

闇の中に見える白波

 夜明け前の海、窓に額をつけると海原に映る月の光。車内が密閉されていないので、唸るエンジン音とレールを打ち鳴らす響きも心地良い。お仕着せの観光列車では決して味わえない鈍行列車の醍醐味だ。

 10分程走って間島に到着。ここは駅間が長い。この先は日本海と国道345号線が車窓の友となる。国道とはいえ、上下2車線の細い道路。時折、長距離トラックが列車を抜いて行く。

 幾度かトンネルを抜け、越後早川を過ぎると複線になる。海が迫る地ゆえ、土地が確保できなかったのか、予算が足りなかったのかは分からないが、羽越本線は複線と単線区間が入り混じっている。

 6時25分に桑川へ着く。この駅からは岩船郡山北(さんぼく)町。景勝地「笹川流れ」が自慢の人口8千5百人の町だ。駅近くには旅館や民宿が立ち並び、「夕日のふるさと」との大看板も見える。この先が羽越本線のハイライトなのだが、まだ夜は完全に明けない。


夜明けの日本海
 青くなりつつあるどんよりとした空の下、海から突き出した奇岩、巨大岩と、そこに打ち砕かれる波しぶきを眺める。冬の日本海の波は激しい。短いトンネルが幾度か続き、その合間に松の木の間から見える風景も美しい。日本海には松の木がよく似合う。

 今川、越後寒川、勝木(がつき)を過ぎ、大崎山トンネルを抜けると府屋に到着。特急も停車する新潟県内最後の駅。山北町の中心地でもある。

 2つほどトンネルを越えると、山形県に入る。急に雪の量が多くなり、一面は雪景色となる。国境を越えると気候まで変わる。上手く分けられているものだと感心する。6時54分、山形県最初の駅・鼠ケ関(ねずがせき)に着く。駅名の通り、かっての関所があった所。福島県の白河、勿来(なこそ)とともに、東北三関の1つである。


羽越本線から見える日本海
 ▲ あつみ温泉を過ぎると夜が明けた
 列車は少し長い鼠ケ関トンネルに入る。かっての関所はこの付近だろうか、と考えているうちに小岩川という小駅に停車。列車と併走する道路は、いつの間にか国道7号線に変わっている。一桁数字の重要国道だけあって先ほどより道も太く、通行量も多い。

 7時7分、あつみ温泉に到着。温泉へはバスで10分足らず。その昔、同じコースで北海道へ行く途中に早朝からここの温泉へ立ち寄ったことがある。公衆浴場が24時間営業で無料(現在は200円の協力金が必要)だったことと、熱いお湯で夜汽車の疲れが癒されたことが印象に残っている。今日も寄って行きたい所だが、先を急ぐ。

 ようやく夜が明けてきた。青い空に灰色の雲が混じった冬の空。この空も冬旅の魅力の一つだと私は思う。
 列車は温海トンネルに入る。幾つかのトンネルを経て五十川(いらがわ)に到着。山陰本線に五十猛(いそたけ)という似た駅名があるが、日本海に至近距離という点で同じ。何か日本海に関係する地名由来でもあるのだろうか。

三瀬を過ぎると平野部に入る
 ▲三瀬を過ぎると平野部に入る

 長い鳶ヶ沢トンネルを越えると小波渡(こばと)に着く。黒屋根がひっそり軒を連ねる小さな集落が駅前に見えるが、ここはもう鶴岡市内。2本のトンネルの合間に、断崖絶壁から海が見える。
 ここから先は日本海とも一旦お別れ。この付近は羽越本線の前半最後の見所だ。

 次の三瀬からは海と離れ、雪化粧した田園の中を走る。村上からここまではほとんど目の離す隙がなかったので、穀倉地帯の平野部でようやく休憩といったところ。

鶴岡駅ホーム
 ▲羽越本線の中心駅・鶴岡は1分停車

 7時45分、列車は鶴岡に到着。人口10万余、庄内地方の中心地。車内の乗客もずいぶん減ってきた。わずか1分間の停車時間で発車。藤島、西袋を過ぎると次は余目に停車。陸羽西線との乗り換え駅だ。平野部になってから人口が多くなってきたのか、家々が目立つ。

 最上川の鉄橋を越え、2駅ほど過ぎると酒田の市街地に入る。
 8時25分、列車は終着駅の酒田に着いた。この先、秋田方面行の列車まで1時間強の時間がある。ようやく朝食がとれそうだ。


酒田駅ホーム
 ▲酒田に到着。この先は電車に乗換え

 庄内を代表する人口10万人の湊町・酒田市。かっては西回り航路の北前船寄港地として栄えた。大地主・本間家ゆかりの町だ。

 最近では、短大の不祥事と倒産の話題で酒田の名を全国に知らしめたが、歴史深い地である。また、観光面ではJR東日本の観光列車「きらきらうえつ」の始発駅として首都圏でもPRを図っている。

 ところが駅付近には、朝食を食べられそうな所が見当たらない。選択の余地もなく唯一空いている駅舎横の立ち食いそば店に行く。私と同じルートで18きっぷの旅を続けてきた人々が次々にやって来て、狭い店内は一杯になった。

酒田駅駅舎
 ▲駅前が寂しかった酒田駅

 「ここの駅前にはコンビニもないのか」と嘆く声も聞こえる。唯一の駅前大型スーパーが閉鎖して、建物だけが寒空の下に残っている。

 年末の朝なので活気がないのも当然なのだが、中小地方都市中心部の衰退ぶりを象徴しているかのような駅前は少し悲しい。駅前を街の顔として活性化させて欲しいと願う。


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